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ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです

1 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:05:29 ID:0tlWAR460
夢と言われれば、ただの夢。

それなりの疲労を溜め込んだ体をベッドに投げ出し、全身の力を抜いたその瞬間

浅い眠りに吸い込まれるとそこには、彼女が今生きる現実とは違う世界が広がっていた。


ただ、『それだけ』のこと―――。



ξ゚⊿゚)ξは夢を見るようです
.

2 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:07:09 ID:0tlWAR460
すまぬ地の文多め

3 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:10:24 ID:0tlWAR460
◆第1話◆

XX12年 X月

ζ(゚ー゚*ζ「………」

この窓から眺める桜も、もう三度目である。

四季の流れを肌で感じることができない少女の唯一の退屈凌ぎが、その風景の移り変わりを眺めることだったのだが、それにもだんだん飽きてきた。


『デレちゃん、お薬飲んだ?』

『ご飯は食べれた?』

『何かあったらすぐ言ってね』


遊び盛りとも言える、年端もいかない彼女がこの空間に閉ざされてから三年が経とうとしてる。

学校やら友達やらの話題を出しかねてる看護婦も母親も、もはや同じようなことしか言わなくなった。

4 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:11:44 ID:0tlWAR460
学校に通ってた頃から車椅子で登校してたデレは、確かに校内でも目立つ存在だった。

好奇の目で見るものがほとんどだったかもしれないが、もともと本人の人当たりも悪くないので、困った時に助けてくれる同級生も中にはいたはずだが、一緒に遊び回れもしないデレは、同級生にとっては『友達』といえる存在ではなかった。

現に、小学生の足でも来れる程度のそう遠くないこの病院にわざわざ見舞いに来るものは最初のうち数人程度で、三年間のトータルも片手で数えられるほどだった。

5 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:13:07 ID:0tlWAR460
ζ(゚ー゚*ζ「………」

べつに絶望はしなかった。
他人なんてそんなものだと思うしかなかった。

人見知りもしない、あえて壁も作らない。でも同時に、過度な期待はしなくなっていった。

裏切られたとも思わない。
人間不信や対人恐怖というほど人を拒絶するわけでもない。

ひっくるめてそれが自分の気質だと、驕りもせず卑屈にもならず、ただ『そういうもの』として理解していた。

6 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:15:04 ID:0tlWAR460
小学生にしては、すれてるかもしれない。

でもそんなデレだって、年相応に外で遊び回り、時にはぶつかり合いながら理解を深め、最終的には笑い合う。
そうやって当たり前に友達関係を築く同級生が羨ましいと思うのも事実だ。


入院したての頃こそ、足が治ったら、走り回れるようになったら、と思い描いた理想はあった。

しかし、いざ完治して自由に歩き回れるようになったとしても


誰と?どこに?


その疑問に答えてくれる存在を作りそびれたのが致命的だった。


結局今となっては、外への関心も以前ほどはなくなり、室内での一人遊びで事足りるという安心感に身を委ねてるだけだ。

7 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:16:37 ID:0tlWAR460
ζ(゚ー゚*ζ(できた。お城)

パズル、ブロック、プラモデルなど一人で適当に時間を潰せる遊び方を覚え、手先ばかり器用になり


『お熱計ろうねー』

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

パターン化された会話に適当に頷き


『ほら、焦らないでー』

ζ(゚ー゚;ζ「……っ」

『ゆっくりでいいよー。一歩ずつねー』

ζ(゚ー゚;ζ「………っ!!」

ζ(゚ー゚ζ「」フラ…

バタン!!

『あっ!大丈夫かい!?』

ζ(ーζ「……うん」

時々歩行訓練に励み、健常者に一歩近づく。


それが、今のデレの日常だった。

8 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:17:59 ID:0tlWAR460
泣きもせず嫌がりもしないデレを、大人たちは素直で聞き分けのいい子と見てるかもしれない。

デレ自身、健常者である同級生や家族に対するコンプレックスや羨望を抑圧してるという明確な自覚はなかったが、常に前向きでひたむきな姿勢でいるわけでもない。

ただ言葉にしないだけ。あまり顔に出ないだけ。
自分に課せられた目の前の日常を消化しようとしてるだけなのだ。

9 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:19:40 ID:0tlWAR460
ζ(゚ー゚*ζ「………」

本意でもなく、不本意でもなく。
逃げもせず、抗いもせず。





ζ(゚ー゚*ζ「………」

『そんなものだ』と自己暗示でもかけるように胸に刻みながら。


.

10 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:20:41 ID:0tlWAR460
ガラッ

ζ(゚ー゚*ζ「………」

突然、病室の扉が開いた。

個室であるこの部屋に用があるとしたら、デレを訪ねてきてるに間違いはないだろう。

べつに珍しいことではない。


ζ(゚ー゚*ζ「……?」

来客が、母親か看護婦や医者であれば。



ξ゚⊿゚)ξ



.

11 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:22:32 ID:0tlWAR460
第1話おわり

12名も無きAAのようです:2013/08/12(月) 17:46:32 ID:2PMLTX3sO
おい、第二話早く

13 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:54:24 ID:0tlWAR460
第2話書けちゃったので投下

14 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:57:23 ID:0tlWAR460
◆第2話◆

XX12年 X月

その見覚えのない客人に、デレは一瞬訝しげな表情を浮かべた。

普段は人見知りをしないデレにしては珍しい、露骨に警戒するような表情だった。


ξ゚⊿゚)ξ「こんにちは」


若い女性だ。
デレの警戒を解こうと試みるような柔らかい声色だった。

〃ζ(゚ー゚*ζ「………」

その声には聞き覚えがあるようなないような、不思議な感覚だったがとりあえずデレは黙って会釈した。

15 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 17:58:58 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「足、まだ痛むの?」


この人は、デレの足が悪いことを知っている。

何故だかは一向にわからない。
この女性を認識する要素を、デレは何も持ち合わせてないのだ。

無意識のうちに何か手がかりを探すように、目の前の女性を不躾なまでに凝視する。

16 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:00:06 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ

20代くらいだろうか、よくこの部屋を出入りする看護婦なんかと年は近そうだが、看護婦たちよりも化粧は濃いめらしい。

しかし原型がわからないほどでもなく、もともとそれなりに彫りもあり、顔立ちの整った美人さんに見える。

にも関わらず、バッチリ化粧をした顔とは不揃いなほどラフな軽装である。

薄手のロングTシャツにタオルのような素材の軽そうなショートパンツ。それに裸足でクロックスといった出で立ち。

家から出たら徒歩15分圏内しか歩けなさそうな、完全なる部屋着である。

17 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:01:41 ID:0tlWAR460
ここで一つ、ある可能性が浮かんだ。


ζ(゚ー゚*ζ「お姉さんも、入院患者さんですか?」


閃いた拍子に出た、若干冷静さを欠いたトーンだったが、女性は特に意に介さない。


ξ゚⊿゚)ξ「いえ?…あーまぁ昔は入院してたけどね」


一つ情報をくれたところでピンとくるわけもない。それどころか、何か大事なことをはぐらかすような物言いがやけに引っ掛かる。


なんの用ですか?
何しに来たんですか?


そんな当たり前に一番聞きたい質問が、なんだか憚れるぐらいに。

18 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:05:04 ID:0tlWAR460





ξ゚⊿゚)ξ「勿体振っても不毛だから言うわ。信じるかどうかはわからないけどね、あたしは12年後のあなたなのよ。ツンデレちゃん」

ζ(゚ー゚;ζ「!?」




.

19 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:06:15 ID:0tlWAR460
わけがわからない。
としか言いようがない。


さっきちょっとでも美人だと思ったお姉さんが、いやそうでなくても、目の前の見知らぬと思ってたお姉さんがあろうことか自分自身だと名乗って、素直に『そうですか』と納得できるわけがない。


ζ(゚ー゚;ζ「………」

デレは見るからに言葉を失ってる。





ξ;゚⊿゚)ξ「うっわ自分自身に向かって"ツンデレちゃん"とか言うのなんか変な感じ……最近デレなんて呼ばれないから余計になぁ…なんか、どうしよ……」

ζ(゚ー゚;ζ「………」


この女性の意味不明な動揺を見てると尚更だ

20 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:09:23 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「あんたの足…もっと言うと膝の骨は生れつき奇形だったのよね。小さい頃は違和感程度だったけど、小学校にあがってすぐぐらいだったかな…急に膝が痛みだして歩けなくなった。そこから少しの間車椅子で登校せざるをえなかったのよね…そうでしょ?」


女性は信憑性を高めようとしてか、デレしか知りえない情報を滑らかに語り出した。

確かにその通りだ。

でも、そんな情報どこからでも提供できそうな気がする。

21 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:11:42 ID:0tlWAR460
ζ(゚ー゚;ζ(……誰に?どうやって?)

…とも思うが、自分しか知らない情報ってわけでもない。まだデレは警戒を緩められずにいた。


ξ゚⊿゚)ξ「今10歳ってことは…3回目の手術は終わってる頃かな。もうすぐ退院できるんじゃない?リハビリは順調?…だったはず確か。」


人に質問しておいて自己完結する。さも自分が経験したことのように。

いや、この女性の前提ではその通りなのだろうが。

22 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:13:35 ID:0tlWAR460
でも確かに、大したモチベーションもなくほとんど惰性化してたリハビリが実を結び、少々危なっかしい足取りながらも車椅子どころか松葉杖さえなしで歩けるまでには回復している。

いつ退院と言われた記憶はないが、もうすぐというのもあながち間違いではなさそうなコンディションだ。

でもだからといって。


ζ(゚ー゚;ζ「急にそんなこと言われても…ただ困るとしか」

ξ゚⊿゚)ξ「ん。まぁ…しょうがないよね」


あたしも初めてのことだしね。と付け加えたのは引っ掛かったが、女性は相手が自分自身だとわかってるせいかあっさり言い退けた。

23 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:17:11 ID:0tlWAR460
女性の主張が真実だったとしても嘘だったとしても、相手は三年間も閉塞的な生活を強いられながら、同年代の子たちともまともにコミュニケーションを取ってこなかった子どもだ。そのことに変わりはない。

そんな子どもをわざわざ訪ねてきて腹割ろうって魂胆なら、とにかく言うべきことと言いたいことは言ったもん勝ちだ。

子どもが飽きて嫌がって追い出しでもしない限りは傍に居ても大丈夫だろう。

女性は勝手にそう結論付けた。


ξ゚⊿゚)ξ「まぁ、なんでもいいから聞いて。あたしが今いるこの世界はね、あたしの夢の中みたいなの」

ζ(゚ー゚*ζ「夢?」

ξ゚⊿゚)ξ「そう。まぁいろいろ言いたいのも聞きたいこともあるだろうけど、とりあえず暇潰しだと思って聞いててもらえる?」

ζ(゚ー゚*ζ「………」

24 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:20:47 ID:0tlWAR460
何をまた訳のわからないことを言い出してるんだろう。

…とも思う。でも何故か、興味が湧いてきた。

なんとなく、とりあえず最後まで聞いてみる気にはなれた。


ξ゚⊿゚)ξ「現実でのあたしは今22歳。さっきも言ったけど12年後のツンデレね。普通に仕事終わって帰ってきたら、いつの間にか寝ちゃってたみたいで…」

ξ゚⊿゚)ξ「気がついたら、あの桜の下にいたの」


と、窓からも見える満開の桜をチラッと指差す。

25 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:25:08 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「桜と言えば、病院。ってのがあたしのイメージでね。入院中はいつもそこの窓から桜見てたなーって、退院してからも毎年思い出すんだけど」


ξ゚⊿゚)ξ「桜どころか、病院まであったもんだからさ。すぐに思い出したわ。あたしが入院してた病院だーって」


ξ゚⊿゚)ξ「それまでの感覚…五感でわかるかな。すべてがやたらリアルだなぁ…とは気づいてた。でもやっぱり夢は夢だしさ、なんとなく久しぶりに病院覗いてみようかなーって入ってみたら」




ξ゚⊿゚)ξ「あまりにも、何もかもが当時のままなの。」

26 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:27:16 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「受付の人も、すれ違う先生や看護師さんも、みんな見覚えがあったの。おかしいでしょ?あたしが入院してたのって12年も前の話よ?それが今でも、何も変わらないわけないじゃない?」


ξ゚⊿゚)ξ「だから、来てみたの。当時のあたしがいるはずであろう、この病室にね」

ζ(゚ー゚*ζ「………」



なるほど。この女性が現れた経緯はわかった。

残念ながらその話全てを信じる決定打はなかったけども。

デレの動きのない表情を見て、女性もそれを察したようだ。

27 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:31:11 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「…まぁ、あたしの話はそんなところよ。見たところあんたはもうすぐ退院みたいだし、一番辛いピークは越えた後だったみたいね」

ζ(゚ー゚*ζ「……うん」


女性の話を鵜呑みにしたわけではない。
ただ、女性の言う『一番辛いピーク』には、経験した者にしかわからないような妙な重みがあった。

デレはこの年にして、理にかなわない現象を容易く信じることに抵抗があった。

だから女性の言葉の節々に時々感じる『重み』や『説得力』をただの『違和感』としか思わず、それが何に起因するものかまで深くは考えられなかった。

そのことに、女性も何故か納得してるように見える。

28 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:33:25 ID:0tlWAR460
ξ゚⊿゚)ξ「でもピーク越えたとはいえ、退院してからもリハビリは続くんだからあまり慢心しないことね。痛む時は痛むんだから」


と言い残して去ろうとする女性の露出された膝になんとなく目をやると

自分と同じ位置についた、三回も手術をされた痛々しい傷痕に気がついた。


ζ(゚ー゚*ζ「あっ…」


その一瞬で、女性はまるで最初からそこにいなかったかのように音もなく姿を消していた。

29 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/12(月) 18:35:07 ID:0tlWAR460
第2話おわーり

30名も無きAAのようです:2013/08/13(火) 03:54:36 ID:13/3WS560
勢いで第3話いったろ

31 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 03:56:30 ID:13/3WS560
◆第3話◆

XX24年 Q月

ξ゚⊿゚)ξ「ただいまー」
_
( ゚∀゚)「お、お帰りハニー」


ジョルジュとは、二ヶ月前から付き合い始めた。

同じ職場の同僚で、同い年ということもあり前から仲は良かったのだが、その友達関係はジョルジュからの告白により恋人関係へと発展した。

まぁ何の障害もない、平坦な道のりだった。
出会いといいこの発展の仕方といい、誰にも邪魔されることなく、拗れる要素もなくたどり着いた。

友達でいる期間が長く、同じ職場にいるものだから当然の如く喧嘩もしたし泣かし泣かされたこともあった。

既にそこそこの苦楽を共にした二人の間に、今更色気のある空気が流れにくいというのは、付き合い始めてからの小さな悩みの種ではあったが、お互いが幸せだと思ってる。それは確かだった。

32 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:00:16 ID:13/3WS560
だからこうして仕事の休み前日など週に一回は、お互いの家に遊びに行くのが通例で、今日はジョルジュがツンの部屋に来る日のようだ。


( ゚∀゚)「買い物してきたの?」

ξ゚⊿゚)ξ「うん。お腹空いちゃったからマ●クとファ●キンとフレッシュ●ス」

( ゚∀゚)「おまwwwwダーリン呼んどいて何そのものぐさwwww」


それなりには一人暮らしの経験が長いツンも、料理が全くできないわけではない。それはジョルジュも知っている。

でも、ひとたび面倒臭いと思えば容赦なく手を抜く。

そんな飾らなさも、二人にとっては居心地が良いようだ。

33 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:01:33 ID:13/3WS560
( ゚∀゚)「うはwwwwポテトだらけwwwwってかなんで各店舗でポテト調達しやがったwwwww」

ξ゚⊿゚)ξ「ご一緒に〜って言われると断れなくて」
_
( ゚∀゚)「嘘つけwwwww容赦なくNoと言える日本人のくせにwwwww」


そんな色気のなさも、二人らしいと言えば二人らしい。

そもそも二人はあまり『カップルらしさ』というものを意識したことがない。

一緒にいるのが自然で当たり前だとお互いが思える距離感に縮まった成り行きはあったが、それに任せただけなるべくしてこうなったとも言える。

34 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:03:03 ID:13/3WS560
( ゚∀゚)「うはwwwwポテトだらけwwwwってかなんで各店舗でポテト調達しやがったwwwww」

ξ゚⊿゚)ξ「ご一緒に〜って言われると断れなくて」

( ゚∀゚)「嘘つけwwwww容赦なくNoと言える日本人のくせにwwwww」


そんな色気のなさも、二人らしいと言えば二人らしい。



そもそも二人はあまり『カップルらしさ』というものを意識したことがない。

一緒にいるのが自然で当たり前だとお互いが思える距離感に縮まった成り行きはあったが、それに任せただけなるべくしてこうなったとも言える。

35 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:05:36 ID:13/3WS560
(  ゚∀゚)「まぁ不思議っちゃ不思議な気もするけどなー」

ξ゚⊿゚)ξ「?何が?」


(  ゚∀゚)「いや、こう言っちゃなんだが俺ら仕事が絡むとあんまり相性良くねぇっつーか…」

ξ゚⊿゚)ξ「あぁ…うん、まぁそうだね」


(  ゚∀゚)「だろ?しょっちゅう喧嘩してたしなw」

ξ゚⊿゚)ξ「仕事ってやっぱり性格反映されるからねー」


(  ゚∀゚)「嫌なこといっぱい言ったし言われたし、お互いの悪いところも散々見てきたはずなのに…」

ξ゚⊿゚)ξ「だからじゃない?」


(  ゚∀゚)「?」

36 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:06:58 ID:13/3WS560
ξ゚⊿゚)ξ「付き合う前に、良くも悪くもお互いのことをよく知った上で、それでも一緒にいたいからじゃない」





今更格好などどうでもいいのだ。

好きで一緒にいるという事実がブレない限りは。


それをツンが面と向かってはっきり言った時、初めてキスをした。

付き合い始めてから三週間後のことだった。

37 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:09:10 ID:13/3WS560
今でこそジョルジュが初めての彼氏というわけではないが、小学生時分、ほとんど病院に篭りきりだったツンは、その頃ほとんどの同級生が経験してる『初恋』というものに目覚めたのが遅かった。

ある程度物心ついてから、あまつさえ同級生よりも人間を見る目に長けたツンは、ひとたび好きだと思った人への純粋でまっすぐな気持ちがブレることはまずあり得なかった。

しかしそれを素直に口に出せるかそうでないかはまた別の話で、学生時代は言いたいことも言いたいように伝えられず相手を傷つけたこともあった。

そんなこんなを経て、人並みの恋愛ができるようになったのだ。


今でももちろん欠点がないとは言えない。

基本的には真面目だが空回ることも多々あり、まっすぐさゆえの空気の読めなさは、仕事に反映されると仇となる時もある。

サバサバした物言いがなんだか冷たく感じたこともあるし、女性にしては少々だらしないとも思う。






でも、それでも一緒にいたいならしょうがないじゃないか。


そして相手も同じ気持ちでいてくれてるのだから―――。

38 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:11:17 ID:13/3WS560
_
( ´∀`)フヤ〜スピー

ξ゚⊿゚)ξ「……」


いつの間にかジョルジュが先に寝てた。

買い物ついでに、一緒に観ようと思ってた映画もたくさん借りてお酒も用意してたけど



_
( -∀-)クカー

ξ゚⊿゚)ξσ


_
プニプニσ))~∀~)ムガー

ξ゚⊿゚)ξ「………」




ξ*゚⊿゚)ξ


…まぁ、いいか。
今週はなかなかハードだったみたいだし、まだ時間はいっぱいある。

39 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:12:40 ID:13/3WS560
ξ*-⊿-)ξ( *∀*)グー


眠るジョルジュに寄り添いながら、なんとなく明日は晴れるといいな…と思った。



.

40 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:14:11 ID:13/3WS560
そしてその日の夜は


εΞΞΞ从 ^∀从ノシ

ζ(^∀^*ζΞΞΞ3


懐かしの学び舎、小学校のグラウンドで


ξ゚⊿゚)ξ「………」

ξ*゚ー゚)ξ


ただただ駆け回り戯れる少女二人の笑い声が響き渡る夢にまどろみ、ジョルジュと過ごしたかった時間が少しだけ満たされたような気がした。

41 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:28:48 ID:13/3WS560
そして第4話へ

42 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:30:22 ID:13/3WS560
◆第4話◆

XX12年 Y月

これから咲こうとしてるのか、いくらか散った後なのか

どちらにも見える中途半端な花をつけた桜並木。

こんな時期に黙ってこの桜を眺めることなどなかったが、それに頼らないと季節の流れを掴めない彼女は少し焦った。


ξ゚⊿゚)ξ「………」

今いつだ?
寒くもなく暑くもない穏やかな気候と、このいまいち盛り上がりに欠ける桜だけでは、それを測る判断材料としては些か心許ない。


ξ゚⊿゚)ξ(…まぁ、いいか。)


彼女は近くのベンチに腰を下ろした。

43 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:31:14 ID:13/3WS560
変わったはずもない風景。それなのになんだか昔見た印象と若干違う気がするのは自分が変わったからだろうか。

そしてその変化を、一概に『成長』と言っていいものなのか。

そんな不毛な哲学が頭の中でゆらゆらしてるのをぼんやりと受け流して、ただ目の前に聳え立つ威圧的な建物を眺める。

44 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:32:28 ID:13/3WS560
かつて生活の拠点となっていた病室からは、手の届きそうな桜が毎年拝めた。

確か、あの辺だった気がする。と、おぼしき一つの窓に焦点を絞った。

もちろん中の様子までは伺えないが、あの部屋で誰がどんな思いで何をしてるかは手に取るようにわかる。

外ならぬ過去の自分が過ごした病室なのだから。


それを、12年経った今でもやたら鮮明に覚えてるのは、感情があまりにも凪いでたせいだと思う。

45 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:33:24 ID:13/3WS560
ξ゚⊿゚)ξ「………」


何をされても、何を言われても…というように基本的に常に受け身で、自分から何かしたり言ったりがほとんどなく

感情や言動を突き動かすような刺激もなかった。

良くも悪くも『感動』することがなくただただ日々の消化に身を委ねてる生活パターンを三年間も繰り返した結果、忘れる方がかえって難しいほど体が覚えてしまったのだ。

ただその生活を命じられ、それだけをインプットされてしまった機械のように。

それすらも『そんなもの』だと簡単に飲み込む癖も、その生活を強いられた過程で身についた一つの自己防衛なのだと思う。

46 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:34:20 ID:13/3WS560



ζ(゚ー゚*ζ「お姉さん?」


恐る恐るこちらを伺うような声色に、彼女は振り向いた。

デレだ。院内用の寝間着でなく、外出する仕様の私服だ。

そうか、今日が…


ξ゚⊿゚)ξ「ツンデレだってば」

ζ(゚ー゚;ζ「だからぁ…」

ξ゚⊿゚)ξ「今は専らツンと呼ばれてます」

ζ(゚ー゚;ζ「………」


未来のあんただと名乗っても完全には信じなかったデレは、この期に及んでなお譲らない年上の女性の大人げなさに露骨に呆れた。

47 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:35:23 ID:13/3WS560
ξ゚⊿゚)ξ「遊びたい盛りの小学生がさ、三年間もこんなところに閉じ込められて、痛いこともいっぱいされて美味しいものもろくに食べれなくて。本当に大変な思いしたよ」


女性は何の気無しにデレから目を逸らし、独り言のように呟く。


ξ゚⊿゚)ξ「だからさ、こんな生活が終わって自分の足で普通に歩けるようになれば、自由になれるはずだって。少なくともそう思ってた」

ζ(゚ー゚*ζ「…大人になっても自由になれなかったの?」

ξ゚⊿゚)ξ「そんなことないよ。今のあんたよりはよっぽど自由。ただね、もっと普通の人になれるのかと思ってた。人が経験すべき"大変なこと"はもうし尽くした気でいたのに。なのにさ…」


女性は、屈託のない笑顔で足をブラブラさせた。その落ち着きのなさがやっぱりあどけなさを残し、今し方修羅場を潜り抜けてきた自分よりよほど大人げなく見えるとデレは思った。

48 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:36:51 ID:13/3WS560



ξ゚⊿゚)ξ「大人になっても、こうも信じられないことが起こるなんて思ってなかった」



その目はまっすぐデレを見据えていた。

49 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:38:16 ID:13/3WS560
ζ(゚ー゚*ζ「…もしも、だけどさ」


デレが怖ず怖ずと口を開いた。けど『もしも』を強調したいのは彼女にも伝わった。


ζ(゚ー゚*ζ「お姉さんが本当に大人になったあたしだとして、こうして今のあたしに会って何を伝えようとしてるの?」


なんとなく懐疑的な声色だがどこか遠慮がなくなってきてる。
その変化は今まで凪いでた感情に僅かな波をもたらしたはずだ。


ξ゚⊿゚)ξ「わからんよ」


彼女は考える素振りさえ見せずあっけらかんと答えた。


ξ゚⊿゚)ξ「あたしがあんたに会えたのは、前にも言ったけどあたしがそういう夢を見てるからなの。ここまでリアルに干渉するとは思ってなかったし自分の意志で来たわけでもない、ただの不可抗力。そのために用意してる土産なんかないわ」

ζ(゚ー゚ζ「………」


一見冷たくも聞こえるその言葉に、デレの表情が一瞬曇った。

50 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:39:17 ID:13/3WS560


来たくて来たんじゃない。
会いたくて会えたんじゃない。


母親以外に見舞いに来てくれた唯一の珍客にそう言われてしまうと、その新鮮さにあの時少し嬉しく思った自分が嫌になりそうだ。

でも何故か、女性が言いたいことには続きがあるような気がして、それを全部、ちゃんと聞かなきゃいけないような気もした。

51 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:40:57 ID:13/3WS560


ξ゚⊿゚)ξ「…傷ついた?」


あまり悪びれてるようには見えないが、彼女は静かに聞いた。


ζ(゚ー゚ζ「…少しね」


デレは一瞬のうちに考えたことすべてをその一言にまとめた。

それだけで女性はデレの気持ちを粗方理解してくれたと、何故かそんな気がした。

52 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:41:55 ID:13/3WS560





ξ゚⊿゚)ξ「…もっとそう言ってもよかったのに」

ζ(゚ー゚*ζ「……!」





…呟くようなその声に、頬を打たれた気分だった。

53 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:43:09 ID:13/3WS560
確かに思い当たる節はある。でも、親にさえずっと包み隠し、気づかれもしなかったことだ。不意打ちで指摘されるとは思わなかった。


デレは今まで強いられてきたものすべてを受け入れ、無意識のうちに感情を抑え込んで傷つくことを避けてきた。

なまじ賢いからこそ身についた防衛策なのかもしれないが、それが退院後少なからず障壁となることを彼女は知っている。


痛い時は叫び、寂しい時は泣く。そしてたまに嬉しいことがあったら、当たり前のように笑う。

そんな子どもらしい感情の起伏を良しとせず、泣く前に全てを諦める可愛げのない癖は、人はあまり快く思わない。

デレのように、遊び盛りの頃に輪から外れ、遅れを取った子どもにしてみたら致命的な欠点となるのだ。

54 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:44:06 ID:13/3WS560
ξ゚⊿゚)ξ「そんな可愛げのなさが性格と認識してもらえるのは大人になってからだよ。あんたはまだ子どもなんだから、これから学校に戻ったらまた友達作れるんだから…」

ξ;゚⊿゚)ξ「……だから…?」


素直になるのを頑張れというのもなんだか酷な気がして

そういう子どもらしさを演じろと言えるほど器用な年齢でもなくて

急に、歯切れの悪い言い方しかできなくなる。


ξ;゚⊿゚)ξ「その……えっと……」

ζ(゚ー゚*ζ「………」

55 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:44:55 ID:13/3WS560
でも、デレには伝わった。

少なくとも、このまま頑固な自分を貫いても誰も同情はしてくれない。
今まで通りまた一人ぼっちで過ごすのが関の山だと理解した。


それが、退院後に理想としてた自由?


嫌だ。違う。そうじゃない。

今までできなかったことが多かった分、これからやりたいことだっていっぱいあるはずなんだ。

56 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:46:14 ID:13/3WS560


ξ;゚⊿゚)ξ「だから…あー…いや、うーん……」


ζ(゚ー゚*ζ(…まだやってる)

そうやって、土産はないと冷たく言い放つわりには、催促すれば答えようとしてくれて

かと思えばなんて言えば伝わるかわからなくて言葉を詰まらせる女性が、




単純に、素直に面白かった。

.

57名も無きAAのようです:2013/08/13(火) 04:46:38 ID:UKgN9zIw0
おもしろいな

58 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 04:47:56 ID:13/3WS560


ζ(ー*ζ「……ふふっ」

ξ゚⊿゚)ξ「?何よ?笑った?」


なんとなく膨れっ面の女性も、何故か嬉しそうで





ζ(^ー^*ζ「ははっ、あははは!!」


自分自身に対して、なのに一生懸命言葉選んでくれて





ξ*゚⊿゚)ξ「なんだよもーあんたちゃんと笑えるんじゃん!」





その笑顔に、つられて久しぶりに笑ってしまった。

59 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:01:26 ID:13/3WS560
第5話とか…いっちゃおうかな

60 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:09:31 ID:13/3WS560
◆第5話◆

XX12年 Y月


三年振りの登校。緊張しないわけがない。

ただあの不思議な女性の言う通り、その緊張を包み隠さずにいればそれはそれでただ挙動不審な気もする。


ζ(゚ー゚;ζ(……でも、仕方ないじゃない。)


そう言い聞かせて改めて、自分の置かれた状況を静かに飲み込んだ。

61 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:10:38 ID:13/3WS560


三年前登校した時は、車椅子だった。もちろん学校中が物珍しいものを見るような目だった。

中には気を利かせて名も知らぬ上級生が車椅子を押してくれたり、階段の上り下りを親や先生がおぶって助けてくれたり、誰かしらの協力があって成り立ってた学校生活だった。


…でも、あの先生はまだいるのだろうか?あの上級生は卒業してしまってないか?


自分の足で歩ける以上、親の付き添いもない。



ζ(゚ー゚*ζ(一人だ)


同級生がみんな当たり前にしてる学校生活を、これからは一人でやらなきゃいけないんだ。…いや、できるようになったはずなんだ。

62 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:12:54 ID:13/3WS560


ξ*゚⊿゚)ξ


あの女性の顔が浮かぶ。

まさか自分自身とは知らなかったので、最初は綺麗に化粧して垢抜けた印象だった。

あまり覇気は感じなかったけど、何故か説得力と年不相応の貫禄があって、でも時々見せる落ち着きのない動作や綻びが、『絶対的』でも『全知全能』でもない人間くささを感じさせる。


そうだ。あの人も、これを経てきたはずなんだ。


自分自身だといい加減理解しなきゃいけないとは思いつつも、一人じゃない。そんな気がしてきた。

63 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:15:04 ID:13/3WS560


ζ(゚ー゚*ζ(それぐらいは、いいよね…)


この期に及んで、まだ疑ってるわけじゃないんだよツンさん。

でも今だけは、もう少しだけあたしの背中を押してください………



.

64 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:16:57 ID:13/3WS560
ガラッ。と予想外に響いた音がした。自分の手で初めて開けた扉だった。




从 ゚∀从「!」

o川*゚ー゚)o「!………」

从'ー'从「あっ……」

('、`*川「……」




同級生は、疎らにいる。
一瞬驚いたような目で見るが、話しかけて来ようとはしない。

既に完成されてしまってる友達グループの囲いは予想以上に頑丈らしい。

65 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:18:12 ID:13/3WS560
ζ(゚ー゚;ζ「………」


デレは心のどこかで、退院を祝う同級生側から歓迎してくれるんじゃないかと密かに期待してた。

しかし三年間の溝は一瞬では埋まらないものだ。


小学生にとっての三年間は、成長が著しい。デレはデレがいた環境で、同級生は同級生と過ごす学校生活の中で身についた知恵の質が違うのは当然のことだった。

違う環境で過ごした人間に対して、どうしてあげれば誰も嫌な思いをしないで済むか。
なまじ人間関係には神経質な女子達には、年相応にまだうまく立ち回る術がないらしい。


満場一致で触れないのが一番。
そこに悪気がなかったとしてもだ。

66 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:19:38 ID:13/3WS560



ζ(゚ー゚*;ζ「…ぉ、おはよっ!」


それでも、デレは屈しなかった。


こんなのは想定の範疇。
でもそれでも、年頃の女の子がみんなしてるように友達を作って輪になって、たわいもない話に花咲かせて笑い合いたかった。

今までできなかったから、これからはそうしたかった。
本当はずっと憧れてたのだ。

67 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:25:12 ID:13/3WS560



从 ゚∀从「…デレちゃん、足治ったの?」


('、`*川「よかったね!」


o川*゚ー゚)o「もう痛くない?」


从'ー'从「おめでと〜!」




次々に降ってくる歓迎の言葉。
もとより人見知りをしないデレは、殻さえ破ってしまえばあとは何も怖くはなかった。

68 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:26:43 ID:13/3WS560



ζ(^ー^*ζ



それから火が点いたかのようにいろいろ話した。


同級生が経験してない苦労話も、あっけらかんと話せば興味持ってくれた。



その邪心のない興味が嬉しかった。


忘れられてたと思ってた、自分を見てくれるその目をずっと求めてた。

69 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:28:15 ID:13/3WS560



o川*゚ー゚)o「デレちゃん、大変だったね。でもよかったね」


グループの中心的存在の女子が穏やかな口調で言った。柔らかい笑顔だった。


o川*^ー^)o「おかえり」



ζ(^ー^*ζ「…ただいま!」




その一言で、全てが報われた気がした。





















それが後の薬物、売春、恐喝など素行不良の問題児にしてメンヘラ、キュートと繋がりを持つルーツとなった。

70 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/13(火) 05:30:53 ID:13/3WS560
第5話おわーり

71 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 11:32:51 ID:zdEValtA0
こっそり第6話

72 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 11:33:49 ID:zdEValtA0
◆第6話◆

XX24年 R月

ξ´⊿`)ξ「………んぁ」


特に音もなく、ツンは目を覚ました。

いつもの時間、体が覚えてる時間だ。


昨日帰宅してから、食事もせず風呂に入った記憶もないが、何故か服だけは部屋着に着替えてる。

無意識のうちに、体が覚えてるままに動かしてみてもどうも中途半端で不可解だ。

でもまぁ、べつに気にするほどのことではない。

73 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 11:35:03 ID:zdEValtA0
働かない頭を覚ますべく重たい体を無理矢理起こすが、どうしても冴えない。

昨日は定時で仕事を終えたはずだが、体の中にまだ疲労が抜け切らず燻ってるようだ。

うっすらと桜の樹が出てきた夢を見たような気もするし、全体的に眠りが浅かったのかもしれない。

寝起きなのにひどく体が疲れてるが、とにもかくにも出勤しなければ……


ξ゚⊿゚)ξ(メールだ)


何の気無しに手にした携帯には、一通のメールが届いてた。

昔の悪友からの、なんてことない食事の誘いだったが、ツンは舌打ちでもしそうなほどに露骨に面倒臭そうな顔をした。


今でこそお互い大人になったはずだ(と思いたい)が、学生の頃はひどいもんだった。

74 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 11:36:17 ID:zdEValtA0

小学生の頃長期入院し、退院後に初めてできた友達だったからか、今考えたら意地みたいなのもあったかもしれないが、確かに一時的には、殊更に大切だった。

その友達グループの中でのそいつの子どもじみた独裁にはいつからか薄々感づいてはいたが、せっかくできた友達を手放す勇気もないまま、惰性で中学生になってからもずっと付き合ってた。


それから暴走し始めた彼女に付き合わされ、振り回されたその頃が、一番堪えた。



万引きに付き合わされれば、生れつきの健常者にはやや劣る脚力がハンデとなり、もちろん助けてももらえないまま真っ先に捕まった。

親に絞られ体罰至上主義の暑苦しい担任にバレては殴られ、無理がたたった足の痛みにしばらくの間耐える羽目になった。


それでもそいつは、詫びひとつせずケロッとしてる。



またある時は、男に振られたと夜中泣きながら電話かかって来たと思えばその話の流れで何故か駅まで呼び出され


公衆の面前で泣きわめきながら死んでやると暴れ回りながら線路に飛び込も
うとするのを、無関係の人間を巻き込んでまで止めさせる始末。



その後どこから入手したかわからない怪しい薬を、嗅いではトリップしまた自殺未遂。

そんな時駆り出されるのは、何故かいつもツンだった。

75 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 11:37:47 ID:zdEValtA0
どこがこっそりや…
しばし中断

76名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 13:32:45 ID:A8F7SctU0
引き込まれる設定と地の文、キャラの設定だ

77 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 17:48:35 ID:UYi6L9jc0
嗚呼時々レスいただけるとほんと嬉しい再開

78 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 17:49:48 ID:UYi6L9jc0


得てしてそんな素行不良な連中は『仲間』や『友達』という単語をやたらとひけらかす。

そいつの場合、何故かそこに支配欲が相俟って大義名分か何かと勘違いしてるようだ。

ことツンに至っては、純粋に『友達』という概念を正常に持ってた頃のそいつに、一瞬でも救われてしまったから尚更だ。

関わりたくないと思ったその瞬間に、関係を絶つことができればどんなに楽だったかといつも思うのだが、どういう腐れ縁か今でも時々こうして連絡が来るほどの距離感は保たれてしまっているのだ。

79 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 17:50:47 ID:UYi6L9jc0



ξ;-⊿-)ξ=3


面倒だ。はっきり言って嫌な予感しかしない。


学生時代そうやって散々振り回された挙げ句、今現在に至るまでもそいつから一言でも謝罪らしい謝罪の言葉を聞いたことなどついぞ皆無なのだ。


『学生時代にちょっとヤンチャしてただけ』程度の話であればまだいいのだが、その頃の印象はいまだに払拭する機会もなく、結局浅はかで低悩な独裁者のまま今に至るんだろうと思わずにはいられない。




だとしても、自分に迷惑がかからなければいいのだ。

だからあの誘いは適当に断って忘れよう。

そう思い直して顔を洗うと、2時間弱はかかるであろう化粧に着手した。

80 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 17:52:19 ID:UYi6L9jc0
おわたった

81 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:25:53 ID:UYi6L9jc0
◆第7話◆

XX19年 T月


例によっての薄着のツンには、少し肌寒かった。

でもこの季節は、どこにいても間違えようのない匂いがする。



この匂いがする季節はすなわち、ツンの誕生日が近いことを知らせてくれるのだ。


ξ*゚⊿゚)ξ「……」


ξ゚⊿゚)ξ(でも、何歳の?)


.

82 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:28:17 ID:UYi6L9jc0
今ツンが踏み締めてる世界が、現実のものではないことはわかってる。

夢から覚めた瞬間は覚えてないことがほとんどだが、ひとたび夢の世界に入ってしまうと、その中で起きることや感じること全てが相変わらずリアルだ。

しかも前回、前々回で起こったことや、誰と何を話したかも踏襲したまま今この場に立っている。


この風景も例外なく、少なからず馴染みのある場所に違いない。


というか地元圏内だ。

社会人になってから地元を離れたから、ここに拠点を置いてるということは、この世界に住む自分はまだ学生なのだろう。

しかし、前回の病院前やら小学校やらとは違い、住宅が並ぶだけの土地にポツンと立たされたところで、どこに向かえば自分に会えるのか、検討がつかない。

行動範囲内ゆえに的が広すぎるのだ。

83 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:30:14 ID:UYi6L9jc0


ξ゚⊿゚)ξ「べつに急いでもないからいいんだけど」


夢と分かると独り言も大きい。
見たところ人通りはないし、誰にも聞かれてないだろう。

特に目的地も決めず、適当に歩みを進めると、住宅街から抜けて大きな川が見えてきた。

その河川敷に、うずくまるように三角座りする女子高生が見えた。


あの金髪は、間違いない。


ツンは無遠慮に女子高生に近づき、無言で隣に座った。

84 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:31:30 ID:UYi6L9jc0
Σζ(;ー;*ζ「!?」


ほとんど密着に近い隣人に気づき、驚いた女子高生は思わず顔を上げた。



ξ゚⊿゚)ξ(……高校生ぐらいにもなればいい加減今ぐらいのあたしの面影ありそうなもんだけど……)


ξ゚⊿゚)ξ(あんたまだデレなのかよ)

.

85 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:33:03 ID:UYi6L9jc0


ζ(;ー;*ζ「………何?」


無言で見つめ続けられることに耐えかねた女子高生は、声を絞り出した。
自分が泣き顔だったことを気にしてか、伏し目がちだ。



ξ゚⊿゚)ξノ「やぁ、また会ったね」

しかしやっぱりツンは意に介さず、意味深な挨拶をするのみだった。



ζ(つー;*ζ「………グスッ」


女子高生は幾らか考えた素振りを見せてから涙を拭った。

86 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:34:16 ID:UYi6L9jc0


ζ(゚ー゚*ζ「…そうだね。なんか、前にもこんなことあった気がする」


ξ゚⊿゚)ξ「……」



ζ(゚ー゚*ζ「…あんた、成長してないんだね」


ξ゚⊿゚)ξ「いやお前もな」



意外にも、覚えてたらしかった。

87 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:35:22 ID:UYi6L9jc0



ζ(゚ー゚*ζ「………」


ξ゚⊿゚)ξ「………」



二人は無言で肩を並べながら川をぼんやり眺めていた。


前回のように、自分の存在を説明する手間がないというものはそれはそれで話の切り出し方に困るものだ。

例によって今回ツンがここにたどり着いたのも、自分の意志とはあまり関係のない不可抗力だったから。

着いたら着いたでこの世界に生きる自分を訪ねたことは事実だけども、いざ顔を合わせたところで、これといった目的や用件など持ち合わせていないのだ。


ついでに、財布も持ち合わせてなく完全な手ぶらなので、缶コーヒーでも買って間を持たせるなどの手段も選べない。



ξ゚⊿゚)ξ「……あ。そういえば」

ツンは一つ思い出したことを口にした。

88 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:36:27 ID:UYi6L9jc0


ξ゚⊿゚)ξ「今日って何日?」


ζ(゚ー゚*ζ「は?」


ξ゚⊿゚)ξ「いやだってさ、あたしもうすぐ誕生日なんじゃないかと思って」


ζ(゚ー゚;ζ「………はぁ」



女子高生は、アメリカナイズを思わせる深い大袈裟な溜め息をついた。



ζ(゚ー゚*ζ「まずはさ、とりあえず目の前でうら若き女子高生が泣いてたら先にそっちが気にならない?」


ξ゚⊿゚)ξ「あー…いやまぁ、うーん……」

.

89 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:37:45 ID:UYi6L9jc0


ツンのその煮え切らない返事に、女子高生は一つの仮説を立てる。


ζ(゚ー゚*ζ「あ、もしかして覚えてた?この日この場所で泣いてた理由」


ξ゚⊿゚)ξ「いいえ?」


ζ(゚ー゚*ζ「即答かよ。ですけど何か?みたいな顔すんなよ」



なんだか舌打ちが聞こえた気がしたが、女子高生はまるで無表情だった。



ξ゚⊿゚)ξ「でもなんか思い出しそうな……なーんか煮え切らない感じなのよね…」


ζ(゚ー゚*ζ「本人もそれ思ってたんだ」

.

90 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:39:08 ID:UYi6L9jc0
高校生。金髪。
おそらくツンの感情の起伏が一番激しかった時期だ。


付き合いこそ完全には切れなかったものの、違う高校に進学したあのメンヘラに触発されたわけでも感化されたわけでもないが

まだそいつの手綱を握らされてた頃ならば、心当たりがありすぎる。

でも一つ一つは思い出すに足るほどのことじゃないような気がして、もっと他にあるんじゃないかとも思うが…

91 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:41:06 ID:UYi6L9jc0


ζ(゚ー゚*ζ「あーーーったく嫌になっちゃうよなぁ…」


女子高生は、弱々しい声でうなだれた。


膝を抱え込んだその指先や手の甲には、猫に引っ掻かれたような細い切り傷や絆創膏が目立つ。痛々しい手先だ。



ξ゚⊿゚)ξ「…………」


ξ゚⊿゚)ξ(……あぁ。そうだ)



焦点が合ったようなツンの表情に気づいた女子高生は、『思い出した?』と目で訴えかけた。

92 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:42:46 ID:UYi6L9jc0



昔から、手先は器用だった。

だから今でもその気にさえなれば、家事や自炊もそつなくこなせるほど、手作業において失敗することはあまりない。

そのルーツは、入院中の遊び相手だった、お城や飛行機のプラモデルなどの細かい作業に慣れたことに起因してると思う。



それを生かして、高校では美術部に入り主に彫刻に精を出した。



木や石に彫刻刀を入れ、形にしていくプロセスの中では、余計なことや考えたくないことは一切考えずにいられた。

93 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:44:14 ID:UYi6L9jc0
一つ、また一つと作品を仕上げていったが、もちろん怪我もたくさんしたし、他人と勝負できるほどの特別な才覚が開花したわけでもない。

でも高校生にもなり進路希望を問われると、まず視野に入ったのが美術関係だった。


興味があるから。
突き詰めたいから。
それだけで充分だ。


欲しいものがある時に、手を伸ばす勇気を出した代わりに得られるものの大きさを、ツンは知っていたから。

94 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:45:22 ID:UYi6L9jc0




o川*^ー^)o




今となっては、その頃の友達ほとんどに見限られ

『仲間』や『友達』、この歳になると『幼なじみ』という単語を振りかざして人を縛る、どうしようもないかまってちゃんだ。

絶縁しようものなら、何をしでかすかわからない。ある日突然後ろから刺されてもおかしくはないだろう。



それでも、当時のツンには嬉しかった。



o川*^ー^)o『おかえり』



勇気を出したから、もらえた言葉。
それで報われた気がしてた。

95 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:46:28 ID:UYi6L9jc0


今でも迷惑は被ってる。できることなら関わりたくない。

でも当時、完全に袖を分かつにはいいチャンスだと思った。


あいつとはもう違う道を歩いて、そこがツンもまだ知らぬ素晴らしい世界ならどんなに素敵だろう。


それを目指して、頑張ってたつもりだったが


.

96 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:47:39 ID:UYi6L9jc0









母が、倒れた。


過労だったそうだ。




.

97 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:49:08 ID:UYi6L9jc0


ζ(゚ー゚*ζ「………」




薄々気づいてた。

三年間の入院、治療費、個室に入り三回も手術して、退院後もリハビリを続けて、そして。



それが、家計を少しずつ圧迫していってるということに。



ζ(;ー;*ζ「…………」



高校生には重すぎた。

美大どころか受験云々も怪しくなってきたとか、そんなことより………


.

98 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:50:11 ID:UYi6L9jc0
ξ゚⊿゚)ξ「…あの頃入院してた時、楽しいことなんて一つもなかったのに」


ξ゚⊿゚)ξ「入院してたからこそ身についたこの器用さも、後になって無駄じゃなかったんだって、思ったけど」


ξ⊿)ξ「結果的にその時あったことが、進路を絶つ原因になっちゃって」


ξ⊿)ξ「…お母さんの体まで……壊しちゃって…」



そうだ。そうだったのだ。

高校生にして初めて、人生に絶望した日だった。


.

99名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 18:50:32 ID:n9X2ib9I0
なんと……

100 ◆7mt.DZ.sYo:2013/08/14(水) 18:51:22 ID:UYi6L9jc0



ζ(ーζ「…………」


頑張れ?諦めるな?まだ若いんだから?

いくらでも道はあるんだから―――?


22歳になった今でも、当時の自分にかけてあげられる言葉はなかった。

.


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