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( ^ω^)百物語のようです2013( ω  )

1 ◆Rsp62tAaew:2013/06/28(金) 14:17:25 ID:PjQGMrTo0
( ^ω^)おいすー。ここは夏の祭り、百物語専用スレだお!
      祭り開催まではルールの確認等自由に使ってほしいお!

( ^ω^)とりあえず今決まっているルールは
      以下の通りだお!

・開催日は八月九日(金)から十八日(日)まで
※ただし投下できるのは金土日のみ。投下期間以外の本スレは作品の感想などご自由に使用してください
・作品はホラーでなくても幽霊、妖怪、人外などが出るならギャグでもなんでも可
・レス制限は一作品30レスまで。それ以上は個別スレ建てをお願いします。
・ながらはNG。個別スレを建ててそこでやるのは可。
※個別スレ参加の場合
  レス制限無し。

  スレ立て
  ↓
  百物語スレにて投下開始報告、URLを貼る
  ↓
  投下終了後、百物語スレにて投下終了報告(その際、前の人の数字を引き継いで話数宣言)

・1人何話でも投下可!
※連続投下→次に投下する人がいないか確認を取り、無ければOK
※作品の投下間隔についてはルールはありませんが少し間を開けることを推奨します
・イラストでの参加も可!一話としてカウントします。
※ただし作品への支援絵は作品としてカウントしない
・開催時間は18時から翌朝7時まで
・話が終わったら本スレ(自分でスレを立てた人はそのスレでも可)で蝋燭のAAを貼る


前回百物語のスレ
( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1344607128/
( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/13029/1345353530/

( ^ω^)他に変更点、疑問点ある方はなんでもいってほしいお!

775名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 20:52:09 ID:uf2s4vaE0

これは私が本当に体験したお話です。


それは太陽が本格的に熱波で日本を滅ぼそうとしているとしか思えない、
あるクッッソ暑いお盆の日の夕方のことでした。


ノパ⊿゚)〜♪ テクテク


周囲を山に囲まれた農村地帯にある親戚宅に遊びに来た私は、
夕飯までの時間つぶしに暗くなり始めたその辺をぶらぶら歩いていました。

いくら猛暑とはいってもヒートアイランド現象などとは無縁の自然にあふれたこの地域では、
夕方にもなれば暑さもやわらいで、時折心地良い風が辺りを吹き抜けていくので、とても快適な夕暮れどきの散歩でした。

地方都市の割と都市部に住んでいる私には、農村ののどかな風景は心弾むものなのです。

昼間は軽く殺意さえ湧いた蝉の声も、こうなると夏の夕闇を飾るアクセントに感じられるのだから不思議です。


('、`*川 サクサク

ノパ⊿゚)(おー、ホントに頭に手ぬぐい巻きつけてる。あれ名前なんていったっけな)


ふと横を見れば、道の脇の畑では、ほっかむりをしたおばあさんが何やら畑仕事をなさっているところでした。

顔には深くシワが刻まれているものの足腰はしっかりしており、いかにも健康的といった様子でした。

776名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 20:53:49 ID:uf2s4vaE0

/ ,' 3 スタスタ


すると、道の向こうの方からひとりのおじいさんが歩いてきました。

そのおじいさんも目元や表情はやわらかく優しげでしたが、
これまた見た目の歳の割には堂々とした足取りで、お年寄りの力強さを表しているかのようでした。


/ ,' 3「おーい、トソンさんや」

('、`*川「ほいほい、なんですね?」


おじいさんはおばあさんのいる畑ばたで立ち止まると、おばあさんに声をかけました。



/ ,' 3「へぇ(もう)墓行ったっけ、死んでいいでよ」



ノパД゚)

.

777名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 20:54:40 ID:uf2s4vaE0

('、`*川「おや、そかね」



ノパД゚)



(゚Д゚ノハ



ノパД゚ノハ


.

778名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 20:55:22 ID:uf2s4vaE0


後で聞いてみると、アレはこの辺りの方言だったそうです。

「はかいった」=「捗った」、「しんでいい」=「しなくてもいい」、みたいな意味になるそうです。


つまり


/ ,' 3「へぇ(もう)墓行ったっけ、死んでいいでよ」


を標準語に直すと、


/ ,' 3「もうかなり作業が進んだので、今日のところはもう作業をしなくてもいいよ」


という感じのセリフになるみたいです。



ノパ⊿゚)「いやまったく、日本語というのは奥が深いですね!」





  (
   )
  i  フッ
  |_|



ノパ⊿゚)「実際に体験した話なんてこんなもんだよ!!」

779名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 20:58:07 ID:V0h7Eisw0
オチwwwwww

780名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 21:01:25 ID:V0h7Eisw0
てっきりじいさんが死んだことに気付いてないばあさんに
とっくに死んでるって事実を告げたのかと思ったらこれだよww
不覚にも笑ったわw

乙ー

781 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:04:57 ID:TB6qx7aU0
乙乙
方言って面白い。

36本目、いただきます。


  .,、
 (i,)
  |_|

782(,,゚Д゚)心霊調査のようです 1/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:06:30 ID:TB6qx7aU0
海の上に夕日が浮かんでいる。

(*゚∀゚)「きれいだねー」

横で小さな女の子が言う。
名前はつー。見た目は小学校の中学年くらいか。

(,,゚Д゚)「……」

俺はつーの横顔をずっと見ていた。
背丈のために、見下ろす形になっていたが。

頬が赤く火照っているのは、夕日のせいでもあり、
そもそもつーの頬がやや赤みを帯びているからでもあった。
彼女は顔が丸く、背の小さな女の子だった。

どこにでもいる女の子。
ただ、足の先がぼやけて消えているだけ。

(*゚∀゚)「おじさん、おじさん」

つーが俺に声をかける。

783(,,゚Д゚)心霊調査のようです 2/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:08:01 ID:TB6qx7aU0
(*゚∀゚)「今度は何して遊ぶ? お石で遊ぶ?」

(,,゚Д゚)「元気がいいな」

(*゚∀゚)「うん! 久しぶりに人と会ったから!」

無邪気な笑顔を見る。
この笑顔を見てどうして、この子が自殺を促しているなどと思えるのだろうか。


     ★     ★     ★


(,,゚Д゚)「自殺の名所?」

あの日、俺は旧友であるフサから唐突にその話を聞いた。

ミ,,゚Д゚彡「そうらしいんだ。俺らが良く遊んでいたあの海岸、少し小高い場所があっただろ?」

(,,゚Д゚)「ああ、あったな。ネズミ落としって言うんだっけ。落ちたらもう登れなさそうなところ」

ミ,,゚Д゚彡「あそこで自殺が多発したらしい」

そうか、前から危ないって言われていたものな、そう言おうとして、俺は違和感に気付いた。

(,,゚Д゚)「自殺?」

784(,,゚Д゚)心霊調査のようです 3/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:09:33 ID:TB6qx7aU0
ミ,,゚Д゚彡「そう、自殺」

どういうことだろう。
俺が学校に通っていたころは、少なくともまだ自殺者などいなかったはず。
せいぜいひとつの事故があっただけだ。

俺の怪訝そうな顔をみたからか、フサは軽く頷いた。

ミ,,゚Д゚彡「俺らのいた頃のじゃないよ。俺らがいなくなってから、自殺者が現れたらしい。
 で、すっかり不気味な場所として有名になっちゃったんだとさ」

(,,゚Д゚)「そうか……あのあとまたあったのか。
 学校も潰れているしな。廃校と自殺の名所、そりゃあ有名になるわけだ。
 しかし廃校したのならとっとと撤去すればいいのにな」

俺がぼやくと、フサもまったくだと言うように顔を顰めてくれた。

ミ,,゚Д゚彡「その事情もまあわかっている。あの頃は不景気だったし、それに……
 こういっちゃなんだけど、撤去しない方がいいこともある」

フサの言い淀み方で、俺はすぐに察した。

(,,゚Д゚)「……金か」

ミ,,゚Д゚彡「そうだと思うよ。実際全国的に有名になってきているわけだし」

人の死が金を呼ぶ、それで地元が潤う。嫌な話だ。

785(,,゚Д゚)心霊調査のようです 4/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:11:03 ID:TB6qx7aU0
ミ,,゚Д゚彡「そこで今回の依頼だ」

フサは煙草を灰皿にこすりつける。
煙が一瞬広がり、細い線となって消えた。

ミ,,゚Д゚彡「自殺の名所になっている原因を探れと」

(,,゚Д゚)「……いったい誰がそんな依頼を?」

俺は興味本位から質問した。

フサは時折依頼を受けて、霊現象の調査・解決をしている。
多少霊感があるだけなのだが、どうもこの仕事はお金になるらしく、長々とゴーストバスターズの真似ごとをしているとのことだ。

別に何か衝撃波でも出してお化けを吹きとばしたり、そういうことはできない。
できるのはお化けの悩みを聴く、それだけ。

ミ,,゚Д゚彡「依頼をしてきたのは新しい村長だよ。前まであそこを牛耳っていた地主の一族が絶えたから、村長が変わったんだ」
 それで、村をもっと発展させたい、もっと明るく、ぱーっと。古いものもぶっ壊したい」
 廃校も壊したいけど既得権益がある。だからまず霊現象から解決したい。こういうわけさ」

786(,,゚Д゚)心霊調査のようです 5/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:12:42 ID:TB6qx7aU0
(,,゚Д゚)「はー、なるほどね。良いんじゃないの、俺も辛気臭いよりその方がいいや」

ミ,,゚Д゚彡「じゃあ協力してくれるよな?」

(,,゚Д゚)「ああ、そういうことか。またか」

俺には別に霊感は無い。でも腐れ縁ということもあり、フサの携わった依頼の手伝いを良くしていた。
まったく霊感が無いからこそ、下手に反抗もされずに無事でいるらしい。


     ☆     ☆     ☆


俺の前にいるつーには足は無い。どうみても、幽霊だ。
俺のことを霊感なしと判断したのフサである。あいつの読みは違ったんだろうか。

(*゚∀゚)「おじさん、あそこ言ってみようよ」

つーはそう声を上げると、指を指した。件の崖がある。

(,,゚Д゚)「……」

俺は自分の顔がこわばるのを感じた。
まさか自分をつれていこうとしているのか。

787(,,゚Д゚)心霊調査のようです 6/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:14:36 ID:TB6qx7aU0
(*゚∀゚)「どうしたの?」

つーいつの間にか足元に来ていた。さっきまで岩場の方でしゃがんでいたのに。
やはりこの子は幽霊なのだと感じ、微かに寒気を感じた。


     ★     ★     ★


俺の仕事は某情報誌のライターだった。
いまどきは情報誌だけで生きていけるわけではない。ネットに記事を書いていたりもする。

政治や社会問題を扱う仕事は競争が激しい。
しかしライターになりたいやつは誰だって、そのような問題に接し、世の中の役に立つような情報を発信したいと思うはずだ。
もちろん俺だってその一人だった。

でも時期も機会も悪く、与えられたのは胡散臭い会社の胡散臭い記事の仕事だった。
配属された時、ちょうど幽霊特集を組む仕事に回された。
心の中では嘲っていたものの、仕事とあらば仕方が無い。
お化けの話のネタのために、小学校時代からの旧友だったフサに相談した。

本当は余計に借りをつくりたくはなかったのだが。

788(,,゚Д゚)心霊調査のようです 7/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:15:36 ID:TB6qx7aU0
崖の話を聞いてから、俺はフサに言われた通り、まずは村長と接触した。
村長は若く、力に満ち溢れた青年だった。
古い因習をたたき壊すにはこれくらいやる気に満ちていないとならないのだろう。

(`・ω・´)「それで、ギコさん。聴きたいこととは?」

ちなみにフサは俺のことを自分の調査の部下などと紹介していたらしい。
話はスムーズにいくが、あまり気持ちのいい身分ではなかった。

(,,゚Д゚)「心霊調査のためにはまず、その心霊が現れる理由を知らなくてはなりません。
 幽霊というのは何かこの世に未練があるから現れるんです。ですので、その未練とは何なのか知りたい」

全てフサの受け売りである。

(,,゚Д゚)「何か昔、幽霊と関係あるような事件とか、ありませんでしたか」

(`・ω・´)「事件、ですか……自殺がまず最初に騒がれたのが15年前なんですよね。
 15年前、あの近くの小学校がまだやってましてね、そこにいたつーという女の子が身を投げて」


     ☆     ☆     ☆


(*゚∀゚)「あの丘の下にね、ほら穴があるの」

つーは説明してくれた。

789(,,゚Д゚)心霊調査のようです 8/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:17:08 ID:TB6qx7aU0
(,,゚Д゚)「そこに俺を連れていくのか?」

(*゚∀゚)「うん。連れていったほうがいいって」

(,,゚Д゚)「いい?」

(*゚∀゚)「きこえるの」

誰かが呼んでいるのか。

岩場が歩きにくかったが、足のないつーは空中に浮かんで、すーっと進んでいく。
俺もなんとかついていく。
革靴にはつらい。


     ★     ★     ★


(`・ω・´)「15年前に、心当たりでもあるんですか」

(,,;゚Д゚)「いえ……実は私もそこの小学校にいたのですが」

(`・ω・´)「なんと、ではまさかあの自殺も」

(,,;゚Д゚)「いいえ、その頃は高校生でしたし、もう引っ越していました」

790(,,゚Д゚)心霊調査のようです 9/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:18:35 ID:TB6qx7aU0
(`・ω・´)「引っ越し……?」

村長が首を傾げた。
自殺があってから離れるのはわかる、その前に引っ越すのはどういうことなのだ。
そう疑問を抱いた顔だった。

(,,゚Д゚)「実は、仲の良かった子が亡くなったんです」

そういえば、俺はふと思い出した。
むしろどうして今まで忘れていたのだろう。

(,,゚Д゚)「その子、あの岩場で発見されたんです」

気付いたことを言いながら、俺は自分の心臓が少しだけ鼓動を速めるのを感じた。
まさか彼女が関係あるというのか。

(`・ω・´)「気になりますね。いったいどうして岩場で発見されたんですか?」

(,,゚Д゚)「改修中の川に、落ちたんですよ……それで海まで流れていって」
海流に乗って偶然岩場へ。沖にいってしまわなくてよかった」

 ギコくん……

はっとして、振り返る。
村役場の応接室、何もない。何も聞こえるはずない。

791(,,゚Д゚)心霊調査のようです 10/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:20:02 ID:TB6qx7aU0
(`・ω・´)「大丈夫ですか?」

村長が心配そうに声をかけてくれた。

(,,;゚Д゚)「え、ええ。ちょっと。こんな話題をするもんですから」

自分には霊感は無いはず。危険なこともないはず。
あのとき死んだ、しぃになんて会わないはず。


     ☆     ☆     ☆


ほら穴は薄暗かった。
ぎりぎり差し込んでいる太陽の光も、もうじき消えてしまう。
深い青に入口は閉ざされてしまうだろう。

彼女はいた。
あの頃と変わらない、小学生の姿のまま。

「ギコくん」

声は確かに聞こえた。あの応接室のときよりもはっきりと。
暗いせいだろうか、青白く見えるのは。
もともと肌の白い子どもであったが、殊更にそう見える。

792名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 21:21:01 ID:IpPUIiRg0
ぞくぞくしてきた

793(,,゚Д゚)心霊調査のようです 11/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:21:32 ID:TB6qx7aU0
(,,゚Д゚)「しぃ」

俺はあのときと同じように名前を呼んだ。


     ★     ★     ★


俺は役場の外に出て電話をかけた。相手はフサだ。
電話には出ない。あいつはいったい何を考えているんだ。
俺は焦った。嫌な予感がした。
もし岩場にいる幽霊がしぃだというのなら、彼女は自分を狙っているに違いないのだから。

二回目、三回目、連続してコールする。
舌打ちして、それからはっとして、あたりを見回す。
すると時代錯誤のような公衆電話がひとつ見つかった。

一回目のコールでけりがついた。

ミ,,゚Д゚彡「……あ、ギコか」

しまったーとでもいうような冗談めいた声がする。

(,,゚Д゚)「なんで俺の電話にでねえんだよ」

ミ,,゚Д゚彡「いやー、びびってるかなーって思って」

フサの口調からよくわかる。あいつはわかっていたのだ。
この事件の裏側にしぃがいることを。

794(,,゚Д゚)心霊調査のようです 12/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:23:01 ID:TB6qx7aU0
(,,#゚Д゚)「ふざけんなよこら」

ミ,,゚Д゚彡「いやいや、別にふざけているわけじゃないよ」
 逆に、正直に言ったところで君はそこにいかないでしょ」

俺は黙った。

ミ,,゚Д゚彡「心当たり、あるんでしょ」

図星だった。
何も言い返すことは無い。

ミ,,゚Д゚彡「だから、行きなって。大丈夫、君の体力なら生きていけるはず」

(,,゚Д゚)「なんでそう言えるんだよ」

ミ,,゚Д゚彡「100%見た目だけで判断してるよ」

(,,#゚Д゚)「てめえ」

何を言う前に、電話は切られてしまい、もう二度と繋がることはなかった。


     ☆     ☆     ☆

しぃ。
あの日、俺は彼女に会っていた。まだ雨が降り出す前だ。

795(,,゚Д゚)心霊調査のようです 13/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:24:33 ID:TB6qx7aU0
俺たちは小学校三年生だったか、それくらいだった。
川で遊んでいたんだ。暑かったから。
それで、雲行きが怪しかったから、陸に上がろうとしたんだ。

でも、そこで風が吹いて、しぃの帽子が飛んでいった。
しぃはそれを追って、また川に入って、そして突然転んだ。

それっきり、浮かんでこなかった。

(,, Д )「俺は、すぐあがるだろうと思って、一回だけ名前を呼んで、みていた。
 でもお前は出てこなかった。もう、俺は怖くて怖くて」

(,, Д )「すぐに大人でもなんでも呼べばよかったんだ。そうすれば助かったかもしれない。
 だけど俺は足がすくんで動けなくて。たまたま自転車で通りかかったおっちゃんに、あぶねえぞーって声を掛けられて」

(,, Д )「それでタガが外れたように、駆け出した。聴いたことない大きな音も鳴ってて、怖くて逃げた。
 家に帰って、布団にこもって、ガタガタ震えていた。
 きっと助かる、きっと、俺は悪くない、そう言って」

(*゚ー゚)「見捨てたんだ」

 最後の言葉はしぃが紡いだ。薄暗くてよく見えないが、口元が微笑んでいるように見えた。

796(,,゚Д゚)心霊調査のようです 14/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:26:02 ID:TB6qx7aU0
(,, Д )「しぃ……」

俺は今、目の前でまた彼女を見ている。
彼女もまた足が無い。


     ★     ★     ★


フサとしぃは家が近所だったはずだ。
それでずいぶんと仲良かったのを覚えている。

しぃが死んで、葬式場でずっとフサは泣いていた。
俺はその姿を見て、居た堪れなくなって、中学生になったころになって、ようやくフサに打ち明けた。

ミ,,゚Д゚彡「見殺しにしたのか。臆病者め」

フサは俺のことをそう評していた。
でも、そこで猛り狂うにはもう時間が経ち過ぎていたようだ。

ミ,,゚Д゚彡「おまけに行動も遅い、どんくさい、面倒な奴め」

俺はその言葉を悔しく聴いていたことを覚えている。

ミ,,゚Д゚彡「それじゃあ約束してくれ、これからはなんでも俺の言うことを聴くって」

それがフサとの腐れ縁だった。

797(,,゚Д゚)心霊調査のようです 15/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:27:32 ID:TB6qx7aU0
そうだ、そのはずだ。まさかフサが俺を自殺に追い込もうなどとするはずはない。
俺は一瞬頭に浮かんだ疑問を、そうして理屈で跳ね返した。
あいつにはきっと、俺としぃが会った方がいいと考えたんだ。

それはたぶん、しぃを供養するため。


     ☆     ☆     ☆


しぃがすーっと、近づいてくる。
岩場も水辺も関係ない。宙を浮いてくる。

すでに日は沈んでいる。
あたりは暗く、星の光はほら穴を照らすには明らかに弱かった。

しぃは、髪が少しだけ長いようだ。濡れていて、ふわりと浮かない分、伸びているように見えた。

(*゚ー゚)「ギコくん」

もう一度、しぃが言う。徐々に俺に近づきながら。

俺は眼を開いていた。

何があろうとも閉じるつもりはない。だってあのとき見捨ててしまったのは本当なのだから。

しぃの体が後数十センチ、数センチ、数ミリ……

798(,,゚Д゚)心霊調査のようです 16/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:29:02 ID:TB6qx7aU0
背筋に悪寒が走る。
いったいどうして、しぃが自分を殺さないと断言できる。どこにそんな確証がある。

フサを信じるのか。でも、俺は。

感触はなかった。
でもしぃの体はもう、俺の体に触れていた。見た目では、そうだ。感覚がないだけなのだ。


     ★     ★     ★


岩場についた。すでに夕暮になろうとしている。

波の音が静かだ。今日の天気は穏やか。雨は降らないで済むだろう。

岩場に女の子が見えた。
今は夏休みだ。子どもがいても不思議ではない。

でも、どうしてこんなに不安になるのだろう。

女の子がこちらを向いた。手を振っている。

(*゚∀゚)「待ってたよ、おじさん」

女の子の名前はつーと言った。


     ☆     ☆     ☆

799(,,゚Д゚)心霊調査のようです 17/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:30:42 ID:TB6qx7aU0
(*゚ー゚)「間違ってるよ」

しぃはあまりにも小さかった。
当時でも小さかったのだから、今ではなおさら。

俺のお腹のあたりから、しぃの声がした。
消え入るような、か細い声。

俺はしぃの頭の上だけを見ていた。
つむじが見える。濡れ髪なので、はっきりと。

(*゚ー゚)「私はギコくんをびっくりさせようとしていたの」

しぃは静かに話しだした。

(*゚ー゚)「転んだのは本当だけど、あのあとすぐに起き上がったら恥ずかしいだけだった。
 だから、ちょっと我慢して、それでギコくんが近づいてきたらびっくりさせようと思ったの」

しぃが淡々と話を続けていく。

(*゚ー゚)「だけど来なくて、しょうがないなあって思って、顔を上げようとしたら、急にすごい力がかかって」

800(,,゚Д゚)心霊調査のようです 18/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:32:28 ID:TB6qx7aU0
(,,゚Д゚)「鉄砲水っていうんだ」

あの時のことを俺は思い出した。
聴いたことのない大きな音が鳴っていた。
あれが鉄砲水が来ることのサインだと知った時、すでに俺はこの村にはいなかった。

(,,゚Д゚)「そのときは、知らなかった」

(*゚ー゚)「いいよ」

 顔は見えないが、しぃの声は笑っているように感じた。

(*゚ー゚)「死んじゃうとね、だんだんと難しいこと考えられなくなるの。
 寂しいって感じたら、ほんとにそれしか考えられなくなって」

(*゚∀゚)「あたしはそれで、姉ちゃんに呼ばれたんだ」

つーが横から言う。

ギコはそちらを見やる。
相変わらず、つーは笑っていた。
しかしその体はずいぶんと薄くなっている。

(,,゚Д゚)「妹、いたんだな」

少しだけ似ている。頬の赤いところとか。

(*゚ー゚)「うん」

801(,,゚Д゚)心霊調査のようです 19/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:34:25 ID:TB6qx7aU0
(*゚∀゚)「あたしが死んじゃってから、なんだかやたらと飛び込む奴がいたけど、
 姉ちゃんに呼ばれたのはあたしだけだよ」

これだけ明るいつーが自殺すれば、何か怪しいものがこの丘にあると思われたのだろう。
真相はそんなところなのだろう。

(*゚∀゚)「姉ちゃん。あたしこそ姉ちゃんが心配で、それだけが気がかりでここにいたんだ。
 でももう大丈夫みたいだな」

その言葉が聞こえた。
そしていつの間にか、霧が晴れるようにして、つーはいなくなっていた。
未練がなくなれば幽霊は消える。いつぞやのフサの言葉を思い出した。

(*゚ー゚)「ギコくん」

しぃの声。

(*゚ー゚)「ありがとう」

それが最期の言葉だった。
顔を向けた時には、もうしぃの姿も無くなっていた。

最初からいなかったようでもあった。

波の音だけが静かに、ほら穴に響いていた。

802(,,゚Д゚)心霊調査のようです 20/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:35:33 ID:TB6qx7aU0
後日、フサに会った。

ミ,,゚Д゚彡「ありがとー」

ずいぶんと調子のよさそうな声で礼を言われた。
俺からはとても話す気になれない。

ミ,,゚Д゚彡「しぃの幽霊が人を呼ばないようにしているのはなんとなく感じたんだ。
 それでも人が来ちゃう。いったん名所と名付けられたら、なかなか払拭できないんだから困るよ」

(,,゚Д゚)「……本当にな」

ミ,,゚Д゚彡「お、ようやくしゃべったね。ひどい声だね」

(,,゚Д゚)「うるせえな」

ミ,,゚Д゚彡「その歳になって喉をからすほどなんて、よっぽど」

俺は手振りだけでフサを止めた。
もういい。反論するのも疲れた。喉も痛い。

俺とフサはあのほら穴に来ていた。
花を供えるためだ。

これからは自殺者が来ないように、村が盛り上がってくれればいい。

波の音がまた聞える。
昔と変わらない。人の思いをすべて包み込むように、音を響かせて。

余談だが、事故現場に献花をするのは、まだ自覚のない霊魂に死んでいることを自覚させるためらしい。
もう未練など断ち切ってしまえと伝えるために。




〜おわり〜

803(,,゚Д゚)心霊調査のようです 20/20 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 21:36:23 ID:TB6qx7aU0


  (
   )
  i  フッ
  |_|

804名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 21:41:30 ID:IpPUIiRg0
おつ
恨んでなくてよかった

805名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 21:46:27 ID:bzN4gqik0
切なぁ……乙。

806名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 22:18:00 ID:IpPUIiRg0
三十七本目、頂こう

807名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 22:18:56 ID:IpPUIiRg0

  .,、
 (i,)
  |_|

808名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 22:19:55 ID:IpPUIiRg0



ζ(゚ー゚*ζ引っぱるようです



.

809名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 22:20:51 ID:IpPUIiRg0


 『それ』を初めて認識したのは、ひと月ほど前だろうか。


っζ(゚ー゚*ζ

ζ(゚ー゚*ζ「……ん?」


 最初は視界の隅に何かがよぎる、というものだった。
 だから本当のところは、いつ頃からあったのか分からない。

 次に気付いたのは、通学途中。


ζ(゚ー゚*ζc
      ゛
ζ(゚ー゚*ζ「?」


 後ろから髪を引っ張られ、振り向いた。
 誰も、いない。


ζ(゚ー゚*ζ(……気のせい?)


 次はカバン。


ζ(゚д゚;ζ「きゃっ!」

从 ゚∀从「どした?」

ζ(゚、゚;ζ「誰かが手を掴んだの!」

从 ゚∀从「はあ? カバンの中でどーやって掴むってんだよ」

ζ(゚、゚*ζ「……」

ζ(゚、゚*ζ(でも、本当に誰かが掴んだんだもの)
.

810名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 22:21:45 ID:IpPUIiRg0

 家で、学校で、道で、段々と『それ』は場所も頻度も増えていく。
 授業中も、掃除をしている時も、ご飯の時も。
 引っ張るだけ、撫でるだけだが、気味が悪い。


 暫くして、休みの日に友人と遊ぶ約束をして、待ち合わせ場所に向かっている時だった。
 信号が青になる。


ζ(゚ー゚*ζ....
      
!?ζ(゚ー゚;ζヾ⊂


 横断歩道の途中で、強く髪を引っ張られた。


ζ(゚、゚;ζ「いっ、」


 あまりの勢いに、耐え切れず尻餅をつく。
 ――その目の前、ほんの数センチ先を、車が走り抜けた。


ζ(゚- ゚;ζ「……うぇ」


 ぞっとした。もし、引っ張られてなかったら。
 ぱぱ、と短くクラクションが鳴る。
 慌てて立ち上がり、横断歩道を渡りきった。
.

811名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 22:22:38 ID:IpPUIiRg0


ζ(゚ー゚*ζ(もしかして、助けてくれたのかな)


 そう思うと、何だかほっとした。
 『あれ』は自分を守る為に、傍に居てくれるのかもしれない。
 気味悪く思っていたのが申し訳ないくらいだ。


 相変わらず髪を引っ張られながら(手や足を掴まれたりもするけど、これがダントツで多い)
 『それ』と共に生活を送っていた。
 最近は頻度はあがっていない。ただちょっと、力が強くなってきた気がするけど。

.

812名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 22:23:59 ID:IpPUIiRg0

ζ(゚ー゚*ζ「ふう」


 お風呂からあがって、髪にドライヤーをかける。
 終ったら保湿とブラシ。
 明日は何だったかな、そうだ数学の宿題あったんだ。


 П〜♪


 ケータイが鳴る。
 ドライヤー片手に、もう片方の手を伸ばして、


ζ(゚ー゚*ζ「あっ」


 ベッドからケータイが転がり落ちる。
 滑るようにベッドの端から降りて、ケータイに手を伸ばす。
 瞬間。
 風が頭の上を薙いだ気がした。
 首を捻ってみると。


 大きな手が、あった。


 ぎらりと輝く鋭い爪。
 『それ』は中途半端に開いていた。
 まるで何かを握り損ねた、とでもいうように。

.

813名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 22:25:01 ID:IpPUIiRg0


ζ(゚- ゚;ζ


 ち、と確かな舌打ちを残して(そうとしか聞こえなかった)、手は消えた。


 けむくじゃらで、爪が尖ってて、そして、指と指の間には。
 あれは、ああ、
 ――髪に繋がった、しゃれこうべ、だった。


.

814名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 22:25:44 ID:IpPUIiRg0

  (
   )
  i  フッ
  |_|

815名も無きAAのようです:2013/08/15(木) 22:27:58 ID:bzN4gqik0
おうふ……結局しゃれこうべはデレを連れてこうとしてたのか

乙乙

816 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:42:19 ID:TB6qx7aU0


38本目、いただきます。



  .,、
 (i,)
  |_|

817( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです1/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:43:30 ID:TB6qx7aU0
乳の親(ちーのうや)


外見は優しい顔立ちの女性で、洗いざらしのような黒髪を長く垂らしており、乳房が非常に大きい。
国頭村や大宜味村には、小児を葬るための童墓(わらべばか)という墓があるが、
ここには乳の親がいて、葬られた子供に乳を飲ませて養うと信じられている。
そのために6歳以下の子供が死ぬと、乳の親に頼むために重箱を盛って祀るという。


一方で今帰仁村などでは、童墓や水中にいる乳の親が、まだ生きている子供を奪い去るといわれる。
幼児に鏡を見せると、水面を鏡と思って水面に行きたがり、
その挙句に乳の親に引きずり込まれるので、鏡を見せるべきではないとされている。



( ・∀・)「こんな妖怪もいるんだって、じいちゃんが教えてくれたんだ」

( ゚∋゚)「へー、なんか良い奴なのか悪い奴なのかよくわからんな」

( ・∀・)「沖縄の妖怪は特にそういうのが多いよ。人の善悪では判断しきれないようなの。
 諸島だしいろんな文化とも触れていたから、独特な話が派生したんだろうな」

( ゚∋゚)「なるほどね。ん? どうしたジョルジュ」
  _
( ゚∀゚)「いや……誤解じゃなければ乳房が大きいと聞えたような」

818( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです2/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:44:27 ID:TB6qx7aU0
( ・∀・)「ああ、特別に大きいと伝えられているらしいけど」
  _
( ゚∀゚)「ほほう」

(;・∀・)「……」

(;゚∋゚)「おい、落ちつけよジョルジュ。妖怪だぞ?」
  _
( ゚∀゚)「ふふ、私は紳士なのでな。形さえ良ければ差別はしない」

大学一年の夏休み、三人は沖縄に旅行に来ていた。
高校生活では味わえなかった長期の暇な時間、有意義に使わなければもったいない。
そういう意気込みで唐突に旅行に来たものの、現実には男三人のむさいものとなっていた。

沖縄についたのはお昼過ぎ。それから軽く食事して、ホテルに移動し、荷物を下ろした。
そこでこれからどうするか話し合っていたのだが、妙に疲れていて乗り気になれず、
お寺出身のモララーが中心となり、いつの間にか妖怪談義に興ずるようになっていたのである。
  _
( ゚∀゚)「あー、お墓に行けば見えないかな」

(;゚∋゚)「なんという罰当たりな」
  _
( ゚∀゚)「いいじゃん、女っ気のない旅なんだし、肝試しみたいで夏っぽいだろ?
 でも簡単には会えないだろうなー子どもとか連れてないし」

(;゚∋゚)「目的が不純過ぎてなんも言えねえ……」

( ・∀・)「あ、妖怪に会いやすくなる方法ならあるよ」

819( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです3/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:45:27 ID:TB6qx7aU0
モララーは自分の鞄の中からお札を取り出した。

( ・∀・)「じいちゃん特製の呪いのお札だ。妖怪を呼び寄せる力があるらしい。
 とはいえ本気で呪い殺すものでもなく、旅行が盛り上がるかなーってことで持たされたんだけど」
  _
( ゚∀゚)「おおー! なんてぴったりな! これ持ってれば飛び出してくるに違いない」

(;゚∋゚)「モンスターじゃないんだぞ」

( ・∀・)「まあまあ、本人楽しそうなんだから、いいじゃない」

気分を良くしたジョルジュは寝ていた身体を弾ませて立ちあがる。
  _
( ゚∀゚)「じゃ、ちょっと墓探してくるわ」

( ・∀・)「夜までには戻れよー」

( ゚∋゚)「こっちは明日以降の予定組んでおくから」
  _
( ゚∀゚)「おー」

ジョルジュは元気に返事をして、煙草とライターをポケットに入れた。
呪いのお札も折り曲げていいとのことだったので、ポケットに詰め込んだ。ご利益が薄れるものでもないしいいのだろう。
それからサンダルに履き替えて、部屋の外へ出ていく。

夏の暑さと潮の香りが、南国らしい空気を醸し出していた。

820( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです4/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:46:27 ID:TB6qx7aU0
ホテルの入り口の傍に枝を広げた大きな木があった。ぱっと見ではいくつもの細い木が絡まっているようにも見える。
ガジュマルの木という名前ということをホテルに到着したばかりの頃モララーに教えてもらっていた。
熱帯地方に生息する樹木であり、幸せを運ぶと言われているそうだ。

お墓探しは適当に道行く人に聞いた。やはり最初は不思議がられたが、観光客慣れしているのか気軽に教えてくれた。
もっともさすがにそこまで熱心に妖怪に会おうとしているわけでもなかった。
お墓への散歩がてら、沖縄の雰囲気を浴びて楽しみたいというのがジョルジュの本音であった。

養鶏場の角を曲がったところで潮の香りが一層強くなった。
ここが海沿いの街であることを自覚する。ここは岩場だが、海水浴場も近くにあったはずだ。
あまりにも混んでいて味気なければ、車を借りて沖縄を回ればいい。

どうにしたって、観光シーズンなんだから女子と触れ合える機会はあるだろう。
だいたい元々は大学で知り合いたての女子も連れてこられるはずだったのだ。
それが急用で来れなくなり、しかたないから高校時代の友人を連れてきた。部屋で待っている二人には悪い話だ。

しかし、だからといってずっと悶々としているわけにもいかない。
この散歩が終わったらさっさと気持ちを切り替えて楽しまなきゃなあと、ジョルジュはぼんやり考えていた。
たまには真面目に考えるのも悪くない。

もちろんこの状況に大きな乳房が加われば文句なしなのだけど。
そんなわけで足取りは軽い。

821( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです5/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:47:41 ID:TB6qx7aU0
海からかなり近い場所に、お寺と墓地があった。
海難事故等で亡くなった名前知れずな方々のお墓もあるらしい。
そういや水に子どもを誘いこんだりするんだっけかなと思いだし、期待を込めてお札をひらひらさせてみる。

そのままお墓をぐるっと回ってみたものの、何かが起こる気配も無い。
モララーは境内の椅子に腰を下ろした。呪いのお札はすでにいくつも折り目があり、虚しさを感じさせた。
良く見れば文字の並びが綺麗すぎる気がする。もしかしてプリンターを使ったんじゃないだろうか。
異様に薄っぺらいのも単なるコピー用紙だからか。

ジョルジュは弱々しく息を吐いた。本当に軽く吐いたのに、そのお札は手元を離れて飛ばされてしまった。
これじゃ妖怪も出てこないだろうなと、頼りなさげに空中を漂うそれを目で追いかけながら思う。

すると、お札が人の前に落ちるのが見えた。
自分以外に境内に誰かいたかなと首を傾げた。

ノパ⊿゚)「にーにー、落ちたよー!」

見知らぬ少女はさっと屈んでお札を取ると、ジョルジュに元気よく声を掛けた。
ぼさぼさの赤い髪型が象徴的な、肌の浅黒い子どもだった。

822( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです6/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:48:27 ID:TB6qx7aU0
ジョルジュはつい本能的に、少女のボディラインをチェックした。
が、すぐに目を閉じて頭を振る。さすがに子ども相手にはまずい。ロリに走るつもりはない。

目を開けたらいつの間にか子どもが目の前に来ていて驚いた。
緑色の衣服が目に映る。

ノパ⊿゚)「一緒に魚を捕ろうよー!」
  _
( ゚∀゚)「へ?」

言葉を前に、小さな手によって袖が握られ、ぐいぐいと引っ張られた。

境内を後にして、道を進んでいく。
少女は海へと向かっていった。
  _
( ゚∀゚)「岩場で魚捕るの? 危ないぞー」

ジョルジュの声にも子どもはまったく関心を示さなかった。

岩場について、海へと出っ張ったところで立ち止まる。

少女は目を輝かせてジョルジュを振り返った。

ノパ⊿゚)「わーがとってくるから、やーは見ててねー」

そう言うと間髪いれずに、少女は走り出してしまう。
転んだら危ない、そうジョルジュが思う前に、さっさと少女は服を着たまま、姿勢正しく海へと飛び込んでしまった。
  _
(;゚∀゚)「……え、素潜りなの?」

823( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです7/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:49:26 ID:TB6qx7aU0
唖然としていること、数秒。
今度は海からしぶきがあがって、何かが飛び出してきた。
それは空中を回転しながら弧を描いてくる。
びたーんっと気持ちのいい音を響かせてジョルジュの横に叩きつけられたそれは、まぎれもなく魚であった。
  _
(;゚∀゚)「……捕ったのね」

海水を滴らせながら跳ねている、腹の赤い不思議な魚を眺めつつ、ジョルジュは呟いた。
そしてこうも思う。これはどう考えても普通じゃない。
あの子もまた妖怪の類なのではないだろうか。

そうか、きっと呪いのお札の効力であの子が出てきてしまったんだ。
だったらあれがちーのうや? でも乳房は別に大きくないよな。
子どもだしな、成長でもするのかな。あれ、妖怪って成長するの?

わからないことだらけである。
とにかくすぐに殺しにかかってくるような妖怪ではないことだけは確かだ。
今も海の上に上半身を出して、ジョルジュに向けて手を振っていた。

とりあえず妖怪と会えたのならば好都合だ。ジョルジュはポジティブに考えることにした。
上手くいえばちーのうやと会わせてくれるかもなあと思いながら。

日が傾くまで時間が過ぎた。
よほど魚が好きなのだろう。
モララーに聞けばどんな妖怪か教えてくれるだろうな。

824( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです8/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:50:27 ID:TB6qx7aU0
しかし時間がかかり過ぎだ。
ジョルジュは既にわずらわしさを感じていた。
そろそろこの場から退却したいのだが、どうしたものか。

ノパ⊿゚)「はー、疲れたー!」

少女は岩を上ってジョルジュの元へと歩いてきた。
全身水浸しのまま、にーっと楽しそうに笑っている。
その足取りは元気であり、跳ねているようにも見え、とても疲れたようには見えなかった。

少女はジョルジュの隣であぐらをかいた。
良く見れば衣服は葉っぱを重ね合わせて作られているようだ。
小さな艶やかな葉であり、どうもどこかで見たような気がした。

ノパ⊿゚)「食べよー」

少女はさっと魚に手を出した。
未だに跳ねまわろうとする魚を強引に手で抑え込む。

随分と力があるように見て取れた。
しかし食べるということは、そのままかじりつきでもするんだろうか。
うろことか痛くないのかなと思いつつ、ジョルジュは眺めていた。

ノパ⊿゚)「ではー」

少女は魚の左側面を上にする。
片手で魚を抑え、もう片方の手を高く上に伸ばす。
人差し指がぴんと伸ばされ、一瞬それが一本の棒のように見えて、そして……


振り下ろされた指の先が勢いよく魚の左目に差し込まれた。

825( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです9/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:51:27 ID:TB6qx7aU0
骨の砕ける音がした。
流体物が噴き出すのが見てもわかるし、音も聞こえてくる。

少女は肩から下の部分を熱心に動かしていた。
その激しい動きに連動するように、魚も痙攣を始めている。
さっきまでの跳ね方とは種類が違う。もっと荒々しく、最期の力を振り絞る跳ね方。
きっと魚に発声器官があれば耳を劈く悲鳴が聞えたことだろう。

ノパ⊿゚)「できたー!」

少女は魚の左目に手を突っ込んだ。もはや原型は無い。大きな穴ができている。
魚はもはや生きてはいなかった。
少女の手が思いっきり引かれ、魚の左目が取り出された。神経が何本も切れる音がする。

少女は魚の左目を自分の前に持っていき、口を開けた。
ゆっくりと口の中に、大きな目を入れていく。
少女の口は小さく、一定限度に達すると歯で目を噛みちぎった。

水晶体が陽光を反射して綺麗に光っていた。

少女は口の中でじっくりと目を咀嚼していた。表情はとても恍惚としている。
ふと、ジョルジュと目があった。少女はきょとんとして、それからはっとして、目をジョルジュの前に持っていった。

ひび割れて、崩壊を始めようとしている目玉がジョルジュに向けられた。
輝きのないそれがさっきまで生物の中にあって機能していたなんて、にわかには信じ難かった。

ようやくジョルジュの痺れた思考が戻ってきた。
少女の手を払いのけると、喚きつつ猛然とジョルジュは駆け出した。

826( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです10/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:52:26 ID:TB6qx7aU0
普通じゃないにも程がある。
吐き気がこみ上げてくるのを必死に堪えた。
見た目が子どもだから油断していた。そんな自分を後悔した。

ノパ⊿゚)「おじさんー」

後ろから声が聞えてくる。
振り返るわけにもいかない。あの手で掴まれたら最期、どうなることか。
さっきの魚の姿が頭に何度も蘇る。

岩場に足を取られそうになりながら、階段を上り、道路へと戻った。
無理をして走ったため、サンダルが切れかかっている。
大丈夫かなと心配になり、足元に目をやった。

鶏がいた。

(;´∀`)「あ、ちょっと! 捕まえてくれモナ!」

養鶏場から声がする。
鶏が逃げ出したのだろう。周りにはもう二、三匹鶏が歩いていた。

時間があれば拾ったかもしれない。でも今はそれどころじゃない。

ノパ⊿゚)「どこー」

背後から声がする。
彼女が階段を上ってきているのか。

827( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです11/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:53:26 ID:TB6qx7aU0
ジョルジュは咄嗟に足元にいた鶏を階段に向けて投げ込んだ。

(;´∀`)「あ! お前、何をするモナ!」

養鶏場の人が怒鳴ってきたが、耳には入らなかった。
それと同時に悲鳴が聞こえてくる。少女の悲鳴だ。
上手いこと鶏に襲われでもしてくれたのか。よかった。

ジョルジュはサンダルを放りだした。
もう頼りない状態になっていたからだ。
アスファルトの上を裸足で走りだす。

ホテルを目指す。部屋に入ってしまえば大丈夫だろう。
まさかこんなに夏らしい経験をするなんて思いもよらなかった。
モララーやクックルたちに話してやろう。あいつらどうせ暇しているから。

坂道を駆けのぼり、曲がり道を抜けていく。
道行く人はきっと怪訝そうな顔を向けているだろう。
よくは見えないけど。

ようやくガジュマルの木が見えてきて、ジョルジュは速度を緩めた。
すでに息切れをしていた。煙草を吸いすぎたからか、体力は随分と落ちたようだ。

後ろを恐る恐る振り返る。坂道の上には誰もいない。
上手く少女を撒けたようだ。

828( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです12/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:54:27 ID:TB6qx7aU0
荒い息づらいのまま、ゆっくりとガジュマルの木に近づく。
とにかく日陰に入りたくなった。あの大きな枝の下ならば涼しいだろう。

根元に辿りついて、木を背にして座りこむ。
坂から上り切ったところがちょうど見える。
ここからなら少女が現れても、急いでホテルのロビーに逃げ込めるだろう。

ポケットから煙草を取り出し、火を付けた。
煙が立ち上る。

ロビーにはきっと誰かいるだろうし、妖怪だって簡単には人を襲えないはず。
頭では無理やり結論付けているが、実際はここで休みたいだけだった。

やれやれ、酷いことに巻き込まれた。
ただ俺はただ乳房を見たいだけだったのに。


     ☆     ☆     ☆


( ゚∋゚)「なあモララー、ジョルジュ遅いなー」

( ・∀・)「あいつのことだし、女の子でも追いかけまわしてるんじゃないの?」

( ゚∋゚)「ありえる。なあ、もっと別の妖怪の話ないか?」

( ・∀・)「うーん、それじゃ、有名どころでいくか」

829( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです13/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:55:27 ID:TB6qx7aU0
キジムナー(キジムン)

沖縄諸島周辺で伝承されてきた伝説上の生物、
妖怪で、樹木(一般的にガジュマルの古木であることが多い)の精霊。


多くの妖怪伝承と異なり、極めて人間らしい生活スタイルを持ち、
人間と共存するタイプの妖怪として伝えられることが多いのが特徴。
「体中が真っ赤な子ども」あるいは「赤髪の子ども」「赤い顔の子ども」の姿で現れると言われることが多いが、
また、手は木の枝のように伸びている、一見老人のようだがよく見ると木そのものである、などともいう。

跳びはねるように歩く。 男女の性別があり、
大人になって結婚もすれば、子どもを生んで家族連れで現れる、あるいは人間の家に嫁ぐこともあるなどとされる。

魚介類を主食とする。
とくに魚の目玉(左目)が大好きで、目玉だけがない魚の死骸があったら、それはキジムナーの食べ残しと伝えられる。
また、グルクンの頭が好物だともいう。 自ら海に潜って漁をする。

( ゚∋゚)「グルクンてなに?」

( ・∀・)「タカサゴっていって、沖縄の県魚なんだ」

( ゚∋゚)「へえ。てか、話長いな」

( ・∀・)「もうちょっと掻い摘んで話そう。
 基本的には人間と共存して暮らしている。漁師には大量をもたらす嬉しい妖怪でもある。
 その他にも人々に良いことをもたらす面もあったりするんだ」

830( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです14/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:56:27 ID:TB6qx7aU0
( ・∀・)「言ってみれば沖縄版の座敷わらし」

( ゚∋゚)「ほー、島国でも似たような伝説があるってのは面白いな。
 でも良いことをもたらすってことは、例えばジョルジュがおっぱい欲しいって思っていたら叶えてあげたりするのか」

( ・∀・)「あー……ある意味正しい」

( ゚∋゚)「ある意味?」

( ・∀・)「まあまあ、まだ続きがあるんだ」


     ☆     ☆     ☆


横にサンダルが落ちてきた。
すぐには頭が働かなかった。ずっと坂の方に目を向けていたからだ。

ジョルジュはそのサンダルが自分のであることを確認した。
背筋が凍る。歯が震えだす。
時間をかけて、顔を真上へと向けた。

赤い髪が見えた。
木の洞から、例の少女が顔を出して、ジョルジュを見下ろしていた。
無表情で。

ジョルジュは思わず煙草をそのまま木に投げた。
少女はさっと木から下りる。
ジョルジュは立ちあがって、身構え、少女と向かい合った。

831( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです15/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:57:28 ID:TB6qx7aU0
ノパ⊿゚)「ここ、わんぬやー」
  _
(;゚∀゚)「……家ってこと?」

少女はこくこくと頷く。

ノパ⊿゚)「にーにー、ゆくさー」
  _
(;゚∀゚)「? な、なんのこと?」

ジョルジュにとってわけのわからないまま、少女は首を横に振った。
相変わらず冷たい目線が突き刺さってくる。
もう彼女に何を言っても無駄なことは明白だった。

と、焦げ臭いにおいがするのに気付いた。
  _
(;゚∀゚)「あ」

少女の後ろで火が見えた。
先程投げた煙草の残り火のために、ガジュマルの木が燃えはじめたのだ。

逆光のため、少女の顔はわかりにくくなった。
眼だけが赤く光っている。

ふと、少女は自分の脇に手を伸ばして、もぞもぞと動かした。
葉っぱでできた衣服が肌蹴る。ちゃんとした陽光の下ならば少女の素肌が見えただろう。
ジョルジュはうっかりその上半身を凝視してしまっていた。

832( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです16/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:58:27 ID:TB6qx7aU0
すると、異変が生じた。
少女の上半身の、ちょうど胸のあたりがみるみるうちに膨張し始めたのである。
  _
(;゚∀゚)「お、おお……」

ジョルジュは呆気にとられ、言葉にならない声を発した。
小難しい思考はかき消される。二つの目線が目の前の二つの膨らみに集中する。
光の加減をこれほどに憎んだことがかつてあっただろうか。

少女にとって不釣り合いなそれは、まさしく自分の追い求めていたものであった。
容姿とのバランスなど大した問題ではない。
ジョルジュにとってはその膨らみだけが判断対象であり、自分を満たす存在だったからだ。

そのもののみの張り、色艶、弾力、可動域、大きさ、硬さ、力強さ、膨らみ具合、垂れ具合などなど
各要素の組み合わせた総合評価によってその神聖さは図られる。
容姿を蔑にしても膨らみによりその女性全てを愛するという度量、気概、そして信仰心が彼にはあった。

敬虔な信者が神と対峙するが如く、腕を広げ、全身をわなわなと震わせる。
  _
(;゚∀゚)「おっぱいだ……」

ジョルジュにとっては偉大なるその名前を口に出す。
恍惚とした、あるいは赤子のような無邪気な表情を浮かべた。

833( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです17/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/15(木) 23:59:26 ID:TB6qx7aU0
もはや他の俗な考えはいらなかった。

少女が歩み寄ってくる。それに伴って豊満な幸せの塊が上下に揺れる。
ああ、私の元に来てくれるというのか。
ジョルジュはもう逃げるという選択肢を打ち消していた。

そうだ、どうして私はこの妖怪から逃げたのだろう。
本当はとても心優しい良い妖怪かもしれないじゃないか。
たまたま魚の目玉が大好きな妖怪だっているかもしれないのに、ちょっとグロかったからって逃げていいはずがない。

人間だって千差万別なのだ、偏見は良くない。
現に彼女は私に対して裸体を晒し対峙してくれているのだ。あまつさえ近づいてきている。
つまり彼女は、あのおっぱいは、私を許してくれているのだ。なんと慈悲深いことか。

ジョルジュは身をかがめ、少女を受け止める体勢へと移った。
乳房の膨張は拡大の一途を辿っており、ジョルジュの全身を包み込むには十分すぎる大きさへと変貌していた。
これぞ人間には真似できない妖怪ならではの技巧ではないかと、ジョルジュは感心し垂涎する。

褐色の肌が顔に触れ、温もりがジョルジュを包み込んでいった。
息もできないほどの昂揚感が頭の中でスパークする。
流れ出るアドレナリンを堰き止められない。目の前が真っ暗になり、そして……


     ☆     ☆     ☆


( ・∀・)「一度キジムナーに好かれるとうっとおしいほどについてこられてしまう。
 物語の多くの主人公はそのうっとおしさから、キジムナーと縁を切ろうと画策するんだ」

( ゚∋゚)「なんだか勝手な話だな。それで、どうするんだ?」

834( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです18/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/16(金) 00:01:22 ID:YdZR4Pzo0
( ・∀・)「キジムナーと縁を切るには、そいつらが嫌いな蛸や鶏、鍋蓋、放屁などをぶつけなくちゃならない。
 でもキジムナーと仲良くなってからこれらのものを使うと逆にキジムナーを騙したことになって恨まれてしまう。
 それと、住処を燃やすこともやっちゃいけない。これがもっとも恨まれる。
 一度キジムナーに恨まれた人には大きな復讐が待っている」

( ゚∋゚)「復讐?」

( ・∀・)「そう。なんだか人間臭いやつだろ。しかもそんじょそこらの妖怪よりよっぽどえげつないやつ」

( ゚∋゚)「なんだよ、もったいぶらずに教えろよ」

( ・∀・)「まあそう急ぐなって。そもそもやり方は一つじゃない。
 ただ不運が続くように呪われることもあれば、人に化けて隙を見て目玉を焼きつぶしに襲いかかることもある。
 海沿いにいりゃ引きずり込んで怖い目にあわせたりするよ」

( ・∀・)「それと、他にも言い伝えがあるんだ。
 お話の種類によるけど、雄のキジムナーにはその体格に不釣り合いな睾丸が、
 そして雌のキジムナーには不釣り合いな乳房がある場合もある」

( ・∀・)「その場合、キジムナーはそれぞれの膨んだものを利用して、裏切り者の人間の顔面に押し当てるんだ。
 そのままものすごい力でそいつを窒息死させるんだとさ」

835( ゚∀゚)o彡゜沖縄旅行のようです19/19 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/16(金) 00:02:27 ID:YdZR4Pzo0
( ゚∋゚)「なーるほど、雌のキジムナーに絡まれていれば、どっちにしろジョルジュには幸せだというわけか」

( ・∀・)「そういうこと。あの呪いのお札もキジムナーにはぴったりな意味だと思うし」

( ゚∋゚)「なんて書いてあったんだ?」

( ・∀・)「妖怪さん、お友達になりましょう」

( ゚∋゚)「呪いっぽくないな」

( ・∀・)「そんな本気で呪われるようなこと書かないさ。でも人間と遊びたいキジムナーはよってくるかも」

( ゚∋゚)「そしたら今頃ジョルジュは楽しんでいるかもなー。
 あれ、なんか窓の外明るくないか?」

( ・∀・)「あれ、なんだろ……うわ、ホテルの前の木が燃えてる!」

(;゚∋゚)「ええ!? ここ大丈夫か?」

(;・∀・)「さすがに何かあったら連絡が来るだろうし、もう消防隊来てるみたいだから大丈夫だろうけど。
 誰だろう、煙草とかの残り火かな。危ないことしやがるぜ」

「まったくなー」

最後に誰の言葉が聞えたのか、結局二人はわからないままだった。




〜おわり〜

836名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 00:05:10 ID:9OyKUJDU0
くそううらやましい

837 ◆MgfCBKfMmo:2013/08/16(金) 00:05:38 ID:YdZR4Pzo0


  (
   )
  i  フッ
  |_|

なんかムラムラして勢いで書いた。
きっと明日には羞恥心で消してしまうから今のうちに投下する。
ゆくさー=うそつき

838名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 00:06:30 ID:HotGtFBA0
沖縄の妖怪は本土と一味違って危ないのが多いよな、乙

839名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 00:06:34 ID:54Y4jdIk0
間髪いれないようで悪いけど39本目いく



  .,、
 (i,)
  |_|

840名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 00:09:07 ID:54Y4jdIk0
 
 
 
  某日、地元の夏祭りにて。
  ナンパ目的で祭りに臨んだジョルジュは、さっそく好みの女の子を見つけた。
 
 
(゚、゚;トソン「で、デート?」
  _
( ゚∀゚)「ここで会ったが何かの縁! たのんます、名も知らぬ可愛い人!」
 
(゚、゚;トソン「え、えぇぇ……?」
  _
( ゚∀゚)「! じゃ、じゃあ、せめて写真だけでも!」
  _
( ゚∀゚)「花火を背景に! あ、きた! じゃー撮るから!」
 
(゚、゚;トソン「え、あ、ちょ……」
  _
( ゚∀゚)「はいしゃがんで、笑ってー!」
 
(゚、゚;トソン「あ、え……、……こ、こう?」
 
 
カシャッ http://imepic.jp/20130815/860640
 
 
.

841名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 00:10:11 ID:54Y4jdIk0
 
 
  _
( ゚∀゚)「やっべ、花火撮り逃した」
 
(゚、゚トソン「え、ええと…?」
  _
( *゚∀゚)「いやあ、ひと夏の思い出をありがとうございます!」
 
(゚、゚トソン「あ、その……はい」
  _
( ゚∀゚)「じゃ、縁があったらまた会いましょう! そんときはデートでも!」
 
(゚、゚トソン「………」
  _
( ゚∀゚)「…?」
 
(゚、゚トソン「そ、その……」
  _
( ゚∀゚)「あ、はい」
 
(゚、゚;トソン「え、えっと、い、いまから………、……その。」
 
(、 ;トソン「暇だったり……ゴニョゴニョ」
  _
( *゚∀゚)「!!! 暇!! 暇ですとも!!」
 
(゚、゚;トソン「よっ、よかったら、ちょっと山道でも散歩したいなー、って……」
  _
( ゚∀゚)「ここら、祭りで騒がしいすもんね。 俺でよかったら、喜んで!」
 
(、 *トソン「………!」
 
 
.

842名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 00:11:03 ID:54Y4jdIk0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  ――― 初見で、いや、せめて写真の時点で気づくべきだったのになあ。
 
 
  のちにジョルジュがのこした、誰にも聞かれることのない言葉である。
 
 
 
 
 
 
 
.

843名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 00:12:26 ID:54Y4jdIk0
  (
   )
  i  フッ
  |_|



顔がでかく四肢がちいさいのは、不気味さを演出してるんじゃなくてただの画力不足です。
女子中学生が描きそうな絵だけど、まあわかる人にだけでもわかってもらえたら幸いです。

844名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 00:27:19 ID:JCijkI5w0
死装束ってことか


845名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 00:31:31 ID:54Y4jdIk0
もうひとつ
細かいからこっちはどうでもいいんだが

846名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:16:06 ID:D1A5bmlw0
投下してもいいのかな……

847名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:19:18 ID:NLn1zrRs0
こいや

848名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:19:28 ID:Ql9jkjn2O
いいんじゃないかな

849名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:24:05 ID:pSzcEu2I0
おいまだか

850名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:24:53 ID:D1A5bmlw0
おk、じゃ投下します40本目!
  .,、
 (i,)
  |_|

851名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:25:39 ID:D1A5bmlw0


( ><)「ある朝のことなんです!」

( ><)「僕が中学校に入学して二年目の夏休み!」

( ><)「その初日に友達と遊ぶために起きたら」


((●))


( ><)「ちっこい目玉のお化けが僕の前にいたんです!」


((●))「おい若太郎!やっと見つけたぞい!」


( ><)「彼……かれ?が言うには、僕はこの目玉の息子だというんです!」

( ><)「しかし!しかしですよ!?」

( ><)「『若手 若太郎』14歳!僕には父と母がいます!こんな奴が僕の父親!?」

( ><)「ありえないんです!」


( ´ー`)「え?若太郎は僕らの息子じゃネーヨ?そこらへんに落ちてたから拾ったヨ」

( ><)「これから宜しくなんです目玉の……いや、『父さん』!」

852名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:26:23 ID:D1A5bmlw0



( ><)ビビビの若太郎のようです



.

853名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:27:10 ID:D1A5bmlw0

( ><)「前々から変だなぁとは思ってたんです!」

( ><)「なんか皆には見えないものが見えていたり!」

( ><)「たまたま抜け落ちた髪の毛が妙にトゲトゲしくて、床に突き刺さったり!」

( ><)「聞けば僕は、ナントカ族の生き残りなんだそうです!」

( ><)「で、なんの生き残りでしたっけ父さん」


((●))「ビビスカテルソ=霊長=ソネスベルグ=幽霊族じゃ!」


( ><)


( ><)「幽霊族の生き残りなんだそうです!」


((●))「略すな若太郎!!」

( ><)「うっせー!!長ったらしいのは大っ嫌いなんです!!!!!!」

854名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:28:12 ID:D1A5bmlw0

( ><)「そんな父さんが、僕に使命を言いました!」


((●))「お主はここらで悪さをしている妖怪を退治できるほどに成長したようじゃ!」

((●))「じゃから、妖怪がらみで困った人がいたら、助けてやってほしいのじゃ!」


( ><)「今までさんざ放っておいた人げ……妖怪が何をとも思いましたが……」

( ><)「その言葉を聞いた僕は、その言葉に打ち震えました!」


( ><)「なんか力が有り余ってたので!」

( ><)「日頃のうっぷんやストレスを妖怪にぶつけるには絶好だったので!」

( ><)「僕は快く了解したんです!」

( ><)「でもそんなことよりまずは遊びに行かなきゃなんです!」

( ><)「もう待ち合わせ時間が予定より30分も過ぎてるんです!」

855名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:28:53 ID:iMXVWuVI0
おいなんか始まったぞ……

856名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:28:55 ID:D1A5bmlw0

公園


( ><)「僕は公園へとやってきました!」

( ><)「公園では友達がイライラしながら僕を待っててくれたのですが」


 ∧_∧
(*‘ω‘ *)「遅いっぽ!ビロード!」

 ∧_∧
( <●><●>)「もう時間が間もなく1時間になることはワカッテマス」


((●))「こ、こやつら……妖怪じゃ!!」


( ><)


( ><)「何言ってんだこいつ!」

857名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:29:58 ID:D1A5bmlw0

( ><)「こちらも前々から違和感を感じてましたが!」

( ><)「なんか猫耳付けてるなーとは思ってましたが!」


( ><)「僕と同級生の椿歩(ツバキ アユム)ちゃん!」

( ><)「通称ちんぽちゃん!」

( ><)「同じく同級生で苗字が同じの若手升(ワカテ マス)くん!」

( ><)「通称マスかくん!」

( ><)「僕の友達が妖怪だなんて、信じられるわけがないじゃないですか!」


((●))「何を言っておる!こやつ等は凶悪な妖気を放っておる!」

((●))「ここいらの人間たちが『よくタンスの角に足の小指をぶつけている』のも、こやつらの仕業じゃ!」


( ><)「凶悪だとのたまっている割には、凄く地味なことしかやってない気がするんです!」

858名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:30:53 ID:D1A5bmlw0

((●))「こんなことをするのは奴らしかおらん!妖怪……」


((●))「妖怪……妖怪……」


((●))


((●))「妖怪『よくタンスの角に足ぶつけるようになる』じゃと思うな!」


( ><)「こいつ、絶対分かんなかったから適当に言ったんです!」

( ><)「そして、即席で作ったネーミングにしてはクソが付くほど悪いんです!」


(*‘ω‘ *)「ふふふ、よもやバレちゃ仕方ないっぽ!」

( <●><●>)「いかにも!私たちが妖怪『よくタンスの角に足ぶつけるようになる』……」


        バアアーーーーーーーーーーーーーアアン!!!!!

      (*‘ω‘ *)「「通称妖怪『タン足』!!」」(<●><●> )


( ><)「名前が当たっててしかもこのネーミングの悪さ!」

( ><)「もう救いようがないんです!!」

859名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:31:49 ID:D1A5bmlw0

(*‘ω‘ *)「それで?」

( ><)「え?」

( <●><●>)「私たちが『タン足』だから、どうしようっていうんです?」

( <●><●>)「『タン足』でも、侮れないですからね!?」ゴオォォ

( ><)「うわっ!なんかマスかくんから黒い煙が!これが妖気というものなんですか!?」

( ><)「でも『タン足』って言うだけで威圧感が無くなるんです!クソネーミングに感謝なんです!」


(*゚ω゚ *)「短足の何が悪いってんだああああああああああああああ!!!!」ゴォォオォ!!

( ><)「うわぁ!なんか勝手にちんぽちゃんが怒り始めたんです!ならどうしてそう略した!」


((●))「彼奴等を放ってはおけん!今こそお主に宿る力を発揮するんじゃ!」

( ><)「僕に宿る力!?それはいったい何なんです!?」

((●))「知らん!なんか内側に潜んでるっぽいのを外に出すイメージをすれば出るはずじゃ!」

( ><)「こいつクソほども使えない親父なんです!もう勝手にやるから黙ってろなんです!」

860名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:33:02 ID:D1A5bmlw0

( ><)「う……う……」


   「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
        \  ヽ     ! |     /
     \    ヽ   ヽ       /    /       /
        \          |        /   /
    ゴワァァァァ!!!             ,イ
 ̄ --  = _           / |              --'''''''
          ,,,     ,r‐、λノ  ゙i、_,、ノゝ     -  ̄
              ゙l            ゙、_
              .j´ . .  .  .   (.     ゴワァァァァァ!!!
    ─   _  ─ {    (><#)   /─   _     ─
               ).  c/   ,つ   ,l~
              ´y  { ,、 {    <
               ゝ   lノ ヽ,)   ,


(*‘ω‘ *)「なっ……!」

( <●><●>)「これは!強大な妖気が発せられている!」


(#><)「くらえぇぇぇ!!!必ィィィィ殺ッッッッ!!!」


      パァァン!!
(#><)     「レイガン!!」
 ⊂彡☆))゚ω゚ *) 「なんでっぽべらっ!?」


      パァァン!!
(#><)      「体内電気!!」
 ⊂彡☆))0><●>)「関係ねぇべふ!!」

861名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:35:40 ID:D1A5bmlw0

( ><)「はぁ……はぁ……」

(#)ω; *)「痛いっぽ……」

( #)><●>)「な、なぜ!私たちに手加減をしたんですか!貴方なら私たちを……!」

( ><)「それは!しょうもないからに決まってるじゃないですか!」

((●))「どストレートに言うのぉ若太郎」

( ><)「それに!今までずっと遊んできた人間……じゃないけど!」


( ><)「『友達』を!消せるわけが無いんです!」


(#)ω; *)

( #)><●>)

( #)><―>)「……まったく、あなたという人は」

(*><)「……えへへ」


「さ、遊びに行くんです!」

「痛いっぽ、これは弁償を要求するイタァ!!」パァン!!

「全くもう……」

862名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:38:09 ID:D1A5bmlw0

( ><)「その一件以来、僕たち三人は『若太郎ファミリー』として活躍を始めました!」

( ><)「今日も今日とて、妖怪に困ってる人間のために学校に通いつつ頑張ってるんです!」


( ><)「クソほども使えない目玉の親父!」

( ><)「同じくちんぽちゃん!」

( ><)「同じくマスかくん!」


( ><)「戦闘要員は僕しかいないけど、相手にストレスぶつけてるので気にしてないんです!」

( ><)「ちなみに、ビンタでどんな妖怪も張り倒すので、こんな名前で人間には伝わってるそうです!」


( ><)「『ビビビの若太郎』」


( ><)「夜中に乾いた張り倒した音が鳴り響いたら、それは僕かもしれないんです!」

( ><)「それでは!またどこかでなんです!」




( ><) ビビビの若太郎のようです

  (
   )
  i  フッ
  |_|

ギャグパクリスペクトしました鬼太郎さんごめんね

863名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:40:23 ID:Uvn0Cjjk0
綺麗にまとめやがったwwww乙!

864名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:40:23 ID:E7uFVXSk0
くそわろたwwww
意外と言う子なビロードも可愛いなprpr

865名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:40:59 ID:u5jfw6AE0

テンポが良かったと思う

866名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:45:37 ID:NLn1zrRs0
そういや本家鬼太郎のビンタの擬音はビビビだなwww

乙乙

867名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:51:39 ID:tghfWQP.0

ワカッテマスのあだ名がひでぇ

868名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 01:54:21 ID:E7uFVXSk0
>>440
間違ってからすまん
左胸のとこに血みたいなの着いてないか?
単に浴衣の模様かも分からんが

869名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 02:10:53 ID:NLn1zrRs0
>>868
俺はトソンに影が無いのが気になったな
あと、背後のサンドワームみたいなトゲトゲしたの何だろうかと

870名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 02:14:51 ID:rA6TgEHU0
乙! ネーミングセンスに吹いたwww
次、投下しても大丈夫かな……?

871名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 02:22:17 ID:NLn1zrRs0
こいやこいや

872名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 02:22:55 ID:rA6TgEHU0
では、41本目……いただきます。

  .,、
 (i,)
  |_|





('A`)はしあわせな村の一員になるようです

873名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 02:24:34 ID:rA6TgEHU0

 行方不明になったはずの親戚から手紙が来た。

 内容はとても簡素なもので、家族に対する謝罪もなければ安否を確信できる言葉もない。
 あったのは記録――日記だけだった。

('A`)「このあたりのはずなんだが」

 手紙には村の場所と、その村での出来事が記されていた。それだけだ。
 まあ、親戚の行方を知る手掛かりになる何かがないかと、ダメもとで来てみたってわけだ。
 家族の中で一番暇だった俺が。うるさいニートで何が悪い。

('A`)「帰りたい」

 見渡す限り木。右も木。左も木。上も木。
 生き物の姿はどこにもなく、背の高い針葉樹林が静かに立ち並んでいる。
 足元はぬかるんでいて歩くたびにピシャピシャ音を立てる。
 道中で拾った緑の実をかじる。独特の甘さが口の中に広がった。首筋を掻く。

('A`)「何もなさそうだし……帰ろうかな」

874名も無きAAのようです:2013/08/16(金) 02:25:35 ID:rA6TgEHU0

 森は静かに葉を揺らすばかりで、村のむの字はどこにも見当たらない。
 そもそも手紙の内容だっておかしかったのだ。きっとだれかのいたずらだったに違いない。
 んで、俺はありのままを伝えればいいんだ。責められはしないだろう。手掛かりは何もなかったと。

 さて、日が落ちる前に森を抜けなければ。木の実を口の中に詰め込む。
 針葉樹林は日中でも薄暗い。日が暮れてしまえば帰れなくなってしまうだろう。
 180度回転して来た道を戻る。

 足が止まる。

('A`)

 ……グス……ッウ……ッ……

(;'A`)

 人の声が聞こえた。子どもの泣き声、のようだ。
 放置して帰るのも良心がいたむので、とりあえず声の方を覗いてみる。

(;<;*)「いたい、あつい。あついよ」

 いたのは男の子だった。
 膝に顔をうずめて泣きじゃくっている。


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