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ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです

1名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 20:57:11 ID:WM1TjCNg0


 たとえば『人外』と聞いて人はどういうものを想像するのだろうか。
 細かな辞書的あるいは専門的定義を抜きにするのなら『怪異』や『妖怪』や『魑魅魍魎』でも構わない。
 だがにべどころか取り付く島すらなさそうな言い方である『化物』だけは私個人的には止めて欲しいものである。
 兎にも角にも今から綴られる文章はそういった世の理を外れた……
 いや存在している以上は物理法則ではなくとも何かしらの法則には基づいている。
 基づいているのだが、そんなことは健全なる読者諸君には関知し得ないことであろうことである故指摘しないでおく。
 だからつまりこれは――夜の理に生きる人以外の者々の物語。
 より正しくは人と人以外のモノの関係によって引き起こされる問題を集めたもの、ということになる。

 問題を集めた、問題集。
 フィクションではなくノンフィクション。
 フェイクではなくファクトな物語だ。



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2名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 20:58:06 ID:WM1TjCNg0


 あなた達は人外のように何百年も生きるわけではない。
 また生きたわけでもないだろう。
 しかしそれでもある程度の人生経験を積んだ賢明なる読者諸君ならば理解しているだろうが、あなたは世界の中心ではない。
 当然私が世界の中心というわけでもない。
 かといって何処かの誰かが世界の中心にいるわけでもない。
 私が伝えたいことは端的に言えば「あなたの知らない世界は存在する」ということだ。
 『世界』は『物語』に置き換えて貰っても構わない。
 むしろその方が分かりやすいかもしれない。

 あなたが信じようと信じまいと人ならざるモノはこの世界に存在し、あなたの知らない場所で物語を紡いでいる。
 きっとこの拙い文を記している私があなたのことを知らずともあなたはそこに生きているように―――。



 自己紹介が遅くなってしまった。
 私の名前は朝比奈でぃ。半分はあなた達と同じ『人間』で、もう半分はあなた達とは違う『妖怪』である『半妖』だ。



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3名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 20:59:06 ID:WM1TjCNg0




ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです



※この作品には性的な描写が(たまに)出てきます。
※この作品は『天使と悪魔と人間と、』他幾つかの作品と世界観を共有しています。
※この作品は推理小説っぽいですが、単なる娯楽作品です。





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4名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:00:06 ID:WM1TjCNg0



 第一問。
 穴埋め問題編。

 「あなたのお名前なんですか?」





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5名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:01:07 ID:WM1TjCNg0




 嘆くとも 痛むものから くゆまじな



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6名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:02:06 ID:WM1TjCNg0
【―― 0 ――】


「―――『名前』っていうのはさ。結局、存在の弱点なんだよね」


 散々勉強を見てあげたのにあろうことかテスト本番で名前を書き忘れるという小学生みたいなミスをし赤点になった後輩――つまり私を視界の端に収めながら、会長は言う。
 その視線が窓の外に固定されたままのことから察するに課題を手伝ってくれる気はないようだ。


「ほらなんだっけ? 『名は体を表す』とかさ。そういう言葉、あるよね?」


 ありますね、と口だけで応じて手は休めない。
 馬鹿みたいな量出された課題をどうにか処理しないと私は近々留年が決定してしまう身だ、会長のどうでもいい話に付き合っている暇はなかった。
 試験勉強を付き合ってもらった身なのに……我ながら我が儘だ。 

 まあ会長の方も私がそうだと知って付き合っているところがあるから、これでいいのかもしれない。
 良くないかもしれないけれど少なくとも私に良くする気はなかった。

 とりあえず今のところは。


「僕からすれば記号でしかない名前が存在の本質を表すなんておかしいと思うんだけど……結局ね、だからこそ名前は大事なんだと思うよ?」

7名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:03:07 ID:WM1TjCNg0

 薄々気づいてはいたが、どうやらこの見目麗しい会長様は私に説教をしているらしい。
 「テストで名前書き忘れるとかありえねぇだろボケ!」……というのを、遠回し遠回しに、オブラートに包んで言っている。
 あるいは単に思いつきで喋っているだけか。その可能性も無きにしも非ずだ。

 ……うん、そうだな。
 どっちかって言えばそっちの可能性の方が高い気がする。


「人間は本質がないうちに名前をつけられちゃうから、必然的に存在の根幹に名前がきちゃう」


 そして。


「その本質に準じて名前をつけられる『人外』は……当然のことながらそれが弱点になっちゃうってわけだね」


 先に付けられよう、後に付けられようと。
 どっちにしろ『名前』というものは弱点になってしまうんだよ、と会長は微笑み言った。


ミセ*-3-)リ「じゃー、弱点にしかならない名前なんていらないんじゃないですかぁ?」

8名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:04:10 ID:WM1TjCNg0

 ぐでーと机に突っ伏しながら訊いた適当そのものな言葉にも、その人は大真面目な顔でこう返した。


「そんなことはないと思うよ?」

ミセ*゚ー゚)リ「ぇえ? どうしてですかぁ?」

「それはそうだよ」


 だってね、と前置いて結論を述べる。



「強くなければ生きていけない以上に――――弱くなければ生きている意味がないのが人間だから」



 あるいは人外かもね、と。
 また会長は知った風に笑った。

9名も無きAAのようです:2013/04/13(土) 21:05:08 ID:WM1TjCNg0
【―― 1 ――】


 学校にはいじめというものがある。 

 品のない人間が能力のない人間を詰ったり無視したり、場合によってはそれ以上の馬鹿馬鹿しい嫌がらせをするような、アレだ。
 私もこれまでと何回か目にしてきていて、高校に入れば流石にそんな幼稚なことする奴はいないでしょーと思ってたら中学より多い人数がより酷い形でいじめに関わっていて辟易したのを覚えている。

 「女子高生」という幻想を抱いていられたのはこの学校に入学して一ヶ月くらいのものだった。
 一ヶ月も経てばグループができ、即ちいじめができる。
 もう本当に嫌になる。あんな人達とは話したくもないけど、それでもニコニコ話さないと私もいじめられるので話すしかない。

 私が所属するグループは率先してやっていないことが唯一の救いだった。


 なんでこんなことをいきなり話し出したかと言えば、彼女――「朝比奈でぃ」というクラスメイトのことを語ろうとする際、まず最初の思い出として連なっている事柄がいじめに関するものだからだ。

 高校二年生になって、同じクラスになって、席替えで隣の席にもなっちゃって。
 その時に何かしらのこと(「これからよろしくねー」とか「部活何やってるのー?」とか)は話したと思うんだけど、申し訳ないが全く覚えていない。
 多分、向こうも覚えていないと思うのでおあいこだが。

 友達未満のクラスメイト、話さないわけではないが決して仲が良いわけではない。
 私と彼女はそういう関係だった。

 とりあえずは――――その時までは。


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