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( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
1
:
名も無きAAのようです
:2012/11/23(金) 19:46:34 ID:tFLjG.4M0
ラノベ祭り参加作品
556
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:05:44 ID:OeiHTfo.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
('A`)ノ「魔法陣が出たのは、ちょうどここだ」
(; ´_ゝ`)「つかれたもうダメ」
二人の目の前には、そびえ立つ白い壁。
もうこれ以上は進めないというところで、兄者はへなへなと座り込む。
荒く息をつき、あがった息を何とか整えると、兄者は大きく息をついた。
┐('A`)┌ 「本当にお前さんの体力は残念だな」
ヽ(#´_ゝ`)ノ「俺の体力が残念なのは、俺のせいじゃないやい! 弟者が悪いんだもん!」
('A`)「兄者……もんって言うのはやめようぜ。気持ち悪い」
(;´_ゝ`)て「しんらつ!」
緊張感のないやり取りを終えた末、兄者は壁を眺める。
白いつややかな壁には繋ぎ目など、見えない。
兄者の見たところ、この壁は巨大な一枚の岩。一体どうやってこんなものを見つけて持ってきたのか、まったく検討もつかない。
.
557
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:07:41 ID:OeiHTfo.0
――兄者は、壁に触れる。
ひやりとした感触をかえすその壁は、何の変哲もない一枚岩に思えた。
が、今の兄者ならそうではないことを知っている。
('A`;)「お、おい、危ないぞ!」
( ´_ゝ`)「俺よりも弟者やブーンの方が、そもそもからして危ない件」
(;'A`)「じゃなくてその壁はさっき、魔法陣が!!」
( ´_ゝ`)「だからだよ」
壁に触れた手には、何の変化もない。
壁の方も同様で、先程までとなんら変わりない。
( ´_ゝ`)「召喚の魔法というのは、大抵もう一つ――送還の魔法と対になっている。
そりゃあそうだ。呼び出すだけ呼び出して、帰さないってのはマズイからな」
('A`)「もっと、わかりやすく言え」
( ´_ゝ`)σ「この魔方陣を使って、あのデカブツを送還する」
('A`)「できるのか!? っていうか、わかるのか!?」
ドクオは信じられないという顔で、兄者を見やる。
兄者といえばもう息は整ったのか、平然とした顔をしている。
.
558
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:09:21 ID:OeiHTfo.0
( >_ゝ<)b +「少なくともツン者のところで、こっそりと読んだ魔法書ではそうだった。
後は魔力の流れを見ながら、勘!」
(;'A`)て「結局のところ勘かよ! 考えなしなのも、いい加減にしておけ!!」
( ´_ゝ`)「こういうのは勘が一番モノを言うのだよ、ドクオ君。
それに、……後悔するよりは試してみるべきだと、俺は思う」
最後の言葉だけを真剣な声で言ってのけると、兄者は壁を睨みつける。
星を読むように視線を動かし、やがて「ここだ」と小さく呟いた。
それから、視線をドクオに移すと兄者は小さく笑った。
( ´_ゝ`)「弟者は怒るけどな。でも、やらないよりはずっといい」
('A`)「……」
兄者の真剣な言葉にドクオは言葉を失う。
それを見て取ったのか、兄者はこれ以上何も言わず瞳を閉じる。
瞳を閉じていたのは、ほんの少しの間だけ。兄者はすぐに目を開くと、壁へと向き直る。
( ´_ゝ`)「……」
兄者は壁を見据えたまま、意識を自身の下へと落としていく。
自分の内面。自分の中心を、井戸の底を見るように深く、深く覗きこむ。
.
559
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:11:27 ID:OeiHTfo.0
意識の底。その中に横たわる、ざわりとした感触。
その感触をはっきりと意識できるところまで、手をかけ引っ張り上げる。
――兄者の場合は、そんなイメージだった。
魔力を扱う感覚。
彼にとってはかれこれ十年ほどぶりとなる、意識しての魔力行使。
しかし、その空白期間などなかったかのように、呼吸するかのように自然と兄者は魔力を自身の中から組み上げ形にする。
( ´_ゝ`)「さてと、行きますか」
(;'A`)「本気でやるのか?」
意識できるところまで引っ張ってきた魔力を、両手へと走らせる。
壁と接した手から、魔力が流れだしていく。
そして、その感覚とともに壁面に浮かび上がるものがある。
光の軌跡が円と多角形を描き上げ、今では失われた文字が刻まれていく。
それは――先程まで壁に浮かんでいたのと寸分の違いのない魔法陣だ。
(; _ゝ )「……っ」
(;'A`)「おい、大丈夫か?!」
(;´_ゝ`)「……まったく、弟者といいドクオ者といいそんなにこのお兄ちゃんが心配ですか、っと」
.
560
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:14:38 ID:OeiHTfo.0
ドクオの声にそう答えて、兄者は細い目を更に険しくする。
口調だけは軽いもののその表情は真剣そのものである。
(;´_ゝ`)「よーし、このまま言うこと聞いてくれよ」
兄者は慎重に、魔力を込めていく。
少しずつそして徐々に勢いを強く。魔法陣を見据え、こちらの意志に沿うように力を強めそしてその方向性を変えていく。
一人分の魔力で足らなければ、もう一人分の魔力を。
力が逸れそうならば、少しずつ調節を。
もともと、星を読むのは得意だ。
些細な術式と魔力の流れを、星の微かな動きを見るのと同じように読み取る。
血のように流れる魔力を操り、調整していく。
(; _ゝ )「逆に、狭く、強く――そうじゃない」
(;'A`)ハラハラ
( ´_ゝ`)「帰れ、返れ、変えれ、かえれ――還れ」
兄者の言葉が意味するところはドクオには読み取れない。
しかし、兄者はつぶやきに応じて、流れる魔力の大きさが、方向が微妙に変化していくのが見て取れた。
.
561
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:15:27 ID:OeiHTfo.0
魔法陣を描く光が白から黄。そして、緑から青と色を変えていく。
それと時を同じくして低い音が――、そしてそれを打ち消すように甲高い音が鳴り響く。
高く低くを繰り返す音達は狂った調子に鳴り響き、とてつもなく耳障りだ。
それでも、兄者は動かない。
かわりにその顔は発熱で赤く染まり、汗が一筋、二筋と地面へと吸い込まれていく。
( _ゝ )「還れ、還れ、還れ」
('A`)「……」
魔法陣の光は幾筋にも残像を増やし、そこに流れ込む魔力はどんどんと増えていく。
魔力混じりの風が兄者の足元から吹き上がり、ドクオの体は流されそうになる。
聞こえる音はドクオが耳を塞ぎたくなるほどに大きい。
兄者の体がぐらりと、大きくゆらいだ。
慌てて足を踏みしめ体を支えるが、兄者の顔色は今や紙のように白い。
壁に添えられた手は小さく震え、それでも流れだす汗は止まらない。
(;'A`)「……兄者、もういいやめろ!!」
( _ゝ )「……おもしろい冗談ですな、と」
楽ではないのだろう。兄者の顔からは表情がごっそりと抜け落ちている。
分が悪いのは明白だった。
それでも兄者は壁を睨みつけ、魔力を止めようとはしなかった。
.
562
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:17:13 ID:OeiHTfo.0
(; _ゝ )「――還れ!」
色を変えていく魔法陣が強く、弱く明滅を始めた。
その光と対応するように、ゴーレムの体に一筋、二筋と光の筋が絡み始める。
高く低く鳴る音は、暴風のように部屋中に響きわたっている。
(#'A`)「ああもう、無茶しやがって!!」
魔力の奔流は渦を巻き、大きく火花を散らし始めていた。
その魔力の流れに、吹き飛ばされそうになりながらドクオは兄者へとその手を伸ばす。
風にはためく被り布を掴み、兄者の顔へとようやく手を伸ばす。
(#'A`)「やめろ! これ以上はヤバイ!」
ようやく届いた兄者の体は、冷えきっている。
手だけではなくて、全身が震えている。
そんな状態なのに、魔力だけは際限なく兄者の体から壁へと流れだしていく。
(#'A`)「おい、やめろ」
ドクオの力では。体の大きさでは兄者を止め切れない。
その間にも、周囲に響く耳障りな音は大きくなっていく――。
.
563
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:19:16 ID:OeiHTfo.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
弟者は走る。
その歩みは弟者自身が思うよりもはるかに遅く、胸を掻き毟りたくなるような焦燥感に叫びたくなる。
まだか。
まだなのか。――弟者は自問自答を繰り返し、そして気づく。
走っても間に合いそうにないのならば、取れる手段が他にあるではないか、と。
(´<_` )「……緊急手段」
扉の前で、兄者が冗談めかして言っていたそれ。
双子だから。できそこないの産まれぞこないだからこそ取れる、唯一の方法。
(´<_` )「手段は選んでいられない、か」
弟者は走りながら、意識を下へと落としていく。
魔力を取扱うときのイメージ。もう何年も忘れていた、その感覚。
弟者=流石という名のイレモノを超えたさらに、下。
肉体という垣根を超えて、“自分”という存在そのものの中へと意識を向けていく。
.
564
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:21:19 ID:OeiHTfo.0
( <_ )「あの馬鹿」
そして、弟者ははっきりと悟る。
流れだしていく魔力の量が、とてつもなく多い。 ・ ・ ・
兄者=流石というイレモノの持つ量を超えて、弟者=流石というイレモノが預けていた魔力までもが流れだしていく。
魔力が向かう先は――再度出現した、魔法陣。
黄色から緑。そして、青へと色を変え、渦を巻き火花を散らす魔力の奔流。
( <_ #)「やめろぉぉぉ!!!」
弟者は“自分”の内へと手を延ばす。
実際に手を伸ばすわけではなく、魔力を扱う時と同じ、自分の内部へと手を延ばす感覚。
流れだしていく魔力を意識の中でつかみとり、それを強引に断ち切る。
意識の一角がひっかかり抵抗された気がしたが、弟者はそれすらも押し切る。
( <_ ;)「――くっ」
断ち切った魔力が、逆流する。
魔法陣のものらしき異質な流れと、魔力が弟者の中を暴れて焼く。
自分の内側を焼きつくそうとする激しい痛みに弟者は呻くが、それもすぐに止む。
どこにも損傷はない。先ほどの魔力は魔法のたぐいではなかった。
――だから、これは痛みを受けたという錯覚だ。
.
565
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:23:19 ID:OeiHTfo.0
ほんの一瞬。
魔力がほんの一瞬、逆流しただけであの痛み。
あんなふうに滅茶苦茶に魔力を扱えば、その負担は軽くは済まない。
……兄者本人の負担は、この程度で済むはずがない。
(´<_` )「くそ兄者が」
弟者は走る。
魔力を取り返そうという抵抗を押さえつけて、祭壇のその向こうの壁を目指す。
広がる魔法陣は、魔力を絶ったというのにまだ消える気配がない。
大丈夫。
まだ大丈夫。まだ、決定的な破滅が訪れたわけではない。
だから、走れ。
今は――あの時とはもう違うのだから。
(´<_` )「――俺は、決めたんだ」
内心の葛藤を振り払い、弟者は走り続ける。
その頭からは、ゴーレムや脱出という言葉は消えている。
今、彼の内心を占めているのはどうにかして、兄者を止めなければという一点のみ。
草を踏み散らし、石を蹴り飛ばして進む。
――そして、伸ばした腕はようやく、届いた。
.
566
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:25:31 ID:OeiHTfo.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
(# _ゝ )「――馬鹿弟者っ!!」
壁へと魔力を向けていた兄者が、不意に怒鳴り声を上げた。
いくら顔をひっぱたいても、たいして反応をしなかった兄者の突然の変化にドクオはたじろぐ。
(;'A`)「は、あ、え?」
(#´_ゝ`)「あいつ魔力全部持って行きやがった、こっちはまだいけるっていうのに。
戦ってるんじゃないのかよ、畜生」
ドクオには兄者の言葉の意味が分からない。
ただ兄者の荒れ様を見て、ただごとではない何かが起こったと察するだけだ。
ドクオは兄者の顔を見上げて、それから視線を壁へと移して、異変を悟る。
魔法陣に流れる、魔力が激減している。
いや、魔力そのものが止まったといったほうが正しい。
兄者は怒りを隠そうとしないままに、壁を見据えそれから瞳を閉じる。
(#-_ゝ-)「まだ取り返しがつく。ドクオお前――魔力は」
.
567
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:27:32 ID:OeiHTfo.0
瞳を閉じ意識を集中しようとする兄者の肩を、背後から伸びた手がぐいと引く。
突然のことに体勢を崩す兄者の手を、後ろから伸びたもう片方の手が掴みさらに引く。
(;´_ゝ`)て「うっひゃぁお!!」
体勢を立て直せずに、兄者は派手に尻餅をつく。
受け身などまともに取れなかったものだから、体重と落下の勢いに兄者の臀部が激しく痛む。
一体何が……と、兄者は視線を上げる。
そして、息を荒げ血相を変えた弟者の姿が兄者の目にはいる。
(´<_`#)「この馬鹿」
(;´_ゝ`)「お前、何でこっちに!!」
(´<_`#)「何ではこちらの台詞だ。
兄者は自分がどれだけギリギリだったかわかっているのか!」
(#´_ゝ`)「これが一番平和な解決方法だったのだ! ここで動かずにして何とする!」
兄者はふらつきながらも立ち上がる。
その顔色は変わらず白いままだったが、それでも体の震えはどうやら止まったようだった。
(´<_`#)「だからといって無茶をする馬鹿がどこにいる!」
.
568
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:29:48 ID:OeiHTfo.0
(#´_ゝ`)「そういうお前こそ、ブーンとゴーレムは」
弟者に向けて声を上げる兄者の背後で、ひときわ大きな金属質の音が響いた。
それが一度、二度。
兄者が慌てて音のした方向をみやると、そこには黒にそまった魔法陣。
先程まで色を変え輝いていたはずの魔法陣。その記号や円が炎をあげて、白い壁を焼いていく。
( ;゚_ゝ゚)「――って、あぁあああああああ!!!!!」
(;゚A゚)「げぇぇぇぇぇ!!」
崩壊は止まらない。
魔法陣の円が焼き切れ、浮かび上がっていた文字が消えていく。
それとともに魔法陣の術式がちぎれ崩れていくのを、兄者は瞬間的に理解した。
(; ゚_ゝ゚)「魔法陣ちゃんがぁぁぁぁぁ!!!」
(;'A`)「ゴーレムは……」
ドクオは壁からゴーレムへと目を向ける。
――そびえ立つ岩の巨人はいまだ健在で、消える気配すらない。
飛び回るブーンの目の前、ゴーレムの体に魔法陣の名残の光が一筋強く輝いてすぐに消えた。
(ノ'A`)ノ「いやぁぁぁ、とっても元気でいらっしゃるぅぅぅ!!!」
.
569
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:31:58 ID:OeiHTfo.0
(; ゚_ゝ゚)「魔法陣……魔法陣ちゃぁぁぁぁん!!!
だめだ。もう反応しないぃぃぃ!!!!!」
(;゚A゚)「あばばばばば、どうするんだよ、おい!!」
(;´_ゝ`)「この状況を打破できるとっておきの手段だったのに。
ああ、もう次だ次っ! 別の手段を考えるぞ」
そう言いながらも兄者は、取れる手段がもうほとんど残っていないことに気づいていた。
結界を崩して脱出するか。それとも、ゴーレムを倒すか。
ゴーレムを倒すのは絶望的。それは弟者とブーンの奮闘で既にわかっている。
迷っている時間はない。そんなことをしていたら、ゴーレムを引きつけているブーンが危険だ。
(´<_` )「兄者よ。真面目に考えているところでなんだが。
――要はアレを倒してしまえばいいのだろう?」
……そんな中、弟者だけがいつもと同じ口調でなんでもない事のように言った。
.
570
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:33:20 ID:OeiHTfo.0
(# _ゝ )「お前はアホか! 馬鹿か! 死ぬのか!」
(´<_`;)「えー、あー。」
兄者の剣幕に弟者は一瞬だけ、言葉に詰まる。
それでもその動揺は一瞬だけで、すぐにその表情は感情の薄いいつもの表情に戻る。
・ ・ ・ ・
(#´_ゝ`)「お前が強いのは知ってる。なにせ二人ぶんだからな。
だけど、それだけでどうにかなる相手じゃないだろうが!」
(;'A`)「おい、兄者落ち着け。それより脱出を」
(´<_` )「でもな、俺だけでもなんとかなると思う」
兄者の怒りの声にも、弟者の表情は変わらない。
怒っているのか、焦っているのか、単に余裕なだけなのか、まったく見えない表情。
.
571
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:35:41 ID:OeiHTfo.0
(´<_` )「だって、な」
弟者はどこか遠くを見るように目を細めると、小さく呟く。
その表情にはやはり、何の感情も浮かんでいなかった。
( <_ )「――俺はそういうのが嫌いなんだから」
そして、その言葉と同時に――兄者の体は崩れ落ちた。
.
572
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:36:23 ID:OeiHTfo.0
そのなな。 戦え、その命尽きようとも
おしまい
.
573
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 22:37:09 ID:OeiHTfo.0
投下ここまで! しばらく休憩したらオマケ8レス投下します
574
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 23:00:14 ID:OeiHTfo.0
ゴソリ
彡⌒ミ
.( ´_ゝ`) 「ああ、良く寝た。母者さんとの交代の時間までは、と」
彡⌒ミ
(*´_ゝ`)フッフッフッ
彡⌒ミ
∩(*´_ゝ`)∩「さーて、儂の愛する植物ちゃんたちは……」
彡⌒ミ
( ; _ゝ )「……オワタどうしたんだ?! ゆうたろう、それにブームくんまで!!」
彡⌒ミ
( ; _ゝ )「フッジサーン!!」
彡⌒ミ
( ;_ゝ;)「そんな、せっかくオワタに花が咲いたというのに! 誰がこんなひどいことを!」
.
575
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 23:02:15 ID:OeiHTfo.0
,――――――ヽ
,――――、 / \ /\
_/ \ / ヽ/ \
/ ,V ━━━━━━━━┥ ◯_.\
| -'''''''''ヽ ━━━━━━━━┥ //(_冫 ⌒ヽ、
| / .−‐ 1 `\ │// | | |
| l ヽ.___ノ ,' l │/ | | ( ) |
| 、._.../ ,' │ .| | |
| /⌒ヽ く ━━━━━━━━┥ .| | 〃
! `ー‐' / ! ━━━━━━━━┥ .| | ノ
\\ / /| | .| | /
\\ / /_| / .| | /
r-― \\ / // \.| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
/ \\ ,/ / | r―――― () () () | ( )'''''''''''''''''''''''( ) |
/ \ V /―| // ̄ ̄ ̄ ̄() () () | | || |
│ ....--\/――(('_`_`_'() () () | ( )'''''''''''''''''''''''( ) |
釗 / ,..-‐‐‐l\ ヽー―――() () ()  ̄"ン ̄ ̄ ̄ ̄~.) ̄ ̄~)
ヽ、 1釗 l│ /ヽ ヽ ヽ ヽ ヽ │礀 1 │
゙ヽ ゙''\:二ニ-‐ ノ_ノ ノ ノ ノ ノ | ゝ ノ 丿
ヽ―――ヽ―――――――――――――――――――――‐''’――
マルタスニム卿/著『幻想生物研究録』よりゴーレムの図
おまけ劇場 l从・∀・ノ!リ人 でざーと×しすたーのようです
.
576
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 23:04:34 ID:OeiHTfo.0
彡⌒ミ
(つ;_ゝ;)つ「我が娘よぉぉぉ!!!!」
ガバッ
∬;´_ゝ`)て「ちょっ、父者どうしたの?
暑苦しいからさっさと離れて、気持ち悪い」
彡⌒ミ
.(;´_ゝ`)「姉者よ大変なんだ、儂の可愛いオワタが!ゆうたろうが、ブームくんが!!
それにフッジサーンまでもが大変なことに!!」
∬´_ゝ`)「……誰それ?」
彡⌒ミ
∩(;´_ゝ`)∩「オワタたちだよ。ほら儂が中庭で大事にしている!」
_,
∬´_ゝ`)「……父者。植物に変な名前をつけるなって、母者に怒られてなかった?」
彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「ああ、それについては、ちゃんと母者さんと和解したから大丈夫だよ」
.
577
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 23:06:41 ID:OeiHTfo.0
彡⌒ミ
.(;´_ゝ`)「それよりも大変なのだ、姉者。
父さんの大切なオワタたちが無残にも踏み潰されてるんだ!」
∬´_ゝ`)「へー」
彡⌒ミ
( ;_ゝ;)「ああなんてかわいそうな、オワタ……ゆうたろう、ブーム、フッジサーン」
∬´_ゝ`)「そー」
彡⌒ミ
.( ´_ゝ`)「種の時から大切に守って育ててきたのに。
悲しい思いをして泣く泣く剪定もして、ようやくその苦しみが実を結んだというのに」
∬´_ゝ`)「へー」
彡⌒ミ
( ;_ゝ;)「オワタァァァァ!!! ゆうたろうぅぅぅ!!! ブームくぅぅぅん!! フッジサーン!!」
∬´_ゝ`)「そー」
彡⌒ミ
( ∩_ゝ∩)「姉者は優しいなぁ。流石は、儂の娘。
父さんの苦しみをわかってくれるのは、母者さんと姉者くらいだよ」
∬´_ゝ`).。oO(やばい。聞いてなかった)
.
578
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 23:08:06 ID:OeiHTfo.0
∬´_ゝ`)「それで父者はどうするの?」
彡⌒ミ
.(;´_ゝ`)て「そうだ! オワタたちをひどい目に合わせた賊が、我が家に侵入したみたいなんだよ、姉者!
母者さんが出かけているこの時に、ああどうしよう?!」
∬´_ゝ`)「時に落ち着くといいわ、父者。
賊の気配なんて無いし、警備からは何の報告も入ってないわ」
彡⌒ミ
.(;´_ゝ`)「あ、そうなんだ。よかったぁ〜。
じゃあ、賊たちは儂のオワタちゃんたちだけが目的だったのかな」
∬;´_ゝ`)「……父者聞いてた? 賊は無いって言ったんだけど」
彡⌒ミ
(|||´_ゝ`)「……まさか、魔物?!
どうしよう、儂の力で娘たちを守れるか」
∬;-_ゝ-)「そんなの出てたら今頃大騒ぎでしょうが……」
彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「あ。そうなんだ、よかったぁ〜」
.
579
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 23:10:19 ID:OeiHTfo.0
∬´_ゝ`)σ +「いい、父者? こういう場合は内部犯を疑うのが鉄則よ」
彡⌒ミ
.(;´_ゝ`)「……そんな。我が家にいるのは、みんないい子だよ!
疑うなんて、父さんは嫌だよ」
∬´_ゝ`).。oO(この人、こんなんでよく人生渡ってこれたな)
彡⌒ミ
( ;_ゝ;)「オワタたちのことは心配だし悲しいけど、みんなを疑うなんてとても儂には…
いやしかし、悪いことをしたら謝ることは大切だし。
ああ、儂はどうしたら……。母者さん、儂はどうしたらいいんだろう?!」
∬#´_ゝ`) イライラ
彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「なにか動物が侵入したのかもしれないし、何か不思議な現象が起こったということも。
いやいやそもそも、これははじめから事故だったんじゃないのかな?
もしそうだったとしたら疑うのはとても悪いこと……」
∬#´_ゝ`)「ああ、もう! 私がどうにかするから!!
父者は引っ込んでて!! 犯人見つけて、母者に引き渡せばいいんでしょ!」
.
580
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 23:12:13 ID:OeiHTfo.0
・
・
・
・
|゚ノ ^∀^)「はい。今日の授業はここまでですよー」
⊂l从-∀-;ノ!リ人「つかれたのじゃー。
いつもより、いっぱいお勉強させられたのじゃ……」
|゚ノ#^∀^)「途中で寝たりするからですよぅ、もう!」
l从・〜・;ノ!リ人「……ごめんなさいなのじゃ」
|゚ノ ^∀^)「でも、途中からは頑張ってたから、先生ほめちゃおっかな〜」
l从>∀<*ノ!リ人「せんせい、大好きなのじゃー!」
|゚ノ*^∀^)「あらあら。妹者様ったら」
|゚ノ*^∀^)つol从・∀・*ノ!リ人エヘヘー
.
581
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 23:14:07 ID:OeiHTfo.0
∬ _ゝ )「……和んでいるところ悪いんだけど、ちょっといい?」
|゚ノ ^∀^)「あら、姉者様。何の御用でしょうか?
このレモナで役立てることでしたら、いくらでも」
∬´_ゝ`)「ごめんね。私が用があるのは妹者なの」
l从・∀・ノ!リ人 ?
|゚ノ ^∀^)「それはそれは、失礼致しました。
さあ、妹者様。姉者様がお呼びですよ」
;;;;∬*´_ゝ`);;;;「妹者ちゃん、お姉ちゃんとちょっとお話しようか?」
Σl从・∀・;ノ!リ人 ビクッ
l从・∀・;ノ!リ人:::. ……
つぎのはなしに つづく
.
582
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 23:15:29 ID:OeiHTfo.0
今日の投下ここまで
例によって書きため分がないので、次回の投下は未定です
完成したら来月中旬。無理でも生存報告には来ます
583
:
名も無きAAのようです
:2013/06/23(日) 23:51:23 ID:zXLEe4ag0
乙!
584
:
名も無きAAのようです
:2013/06/24(月) 02:26:39 ID:h923mA/Y0
おつ
バトルかっけぇなー
楽しみに待ってるぞ
585
:
名も無きAAのようです
:2013/06/24(月) 03:22:35 ID:.9JK1Uc6O
おつ!
だいぶ佳境になってきたなあ
読むのが毎回楽しみすぎる
586
:
名も無きAAのようです
:2013/06/24(月) 03:24:38 ID:6AKer0lU0
待ってるよ!
587
:
名も無きAAのようです
:2013/07/06(土) 20:36:32 ID:TSDGt/8U0
一気に読んだわ。面白いなー。うまい
588
:
名も無きAAのようです
:2013/07/18(木) 10:27:45 ID:NKICDSnc0
おひさしぶりです
現在書きためは、そのはち。本編が116レス(タイトル等も含む)で仮完成、オマケは作成中です
この話は、その次に投下となる、そのきゅう。と、後日談で完結の予定です。
なので、最後まで書きためを完了させてから、間を開けずに少しずつ投下する形にしようと思います
間に百物語があるので、書き上がるには時間がかかると思いますが、気長にお待ちいただけたら幸いです
589
:
名も無きAAのようです
:2013/07/18(木) 20:13:41 ID:aGpjsXN.0
待つぜー!
590
:
名も無きAAのようです
:2013/08/20(火) 21:38:26 ID:GSrsGdds0
こっそり生存報告
書きため状況は
>>588
から変化なしです
百物語のために中断していましたが、ぼちぼちこちらの書きためも再開しようと思います
完成してても、してなくても9月の中旬にはまた生存報告にくるので、気長にお待ちを
591
:
名も無きAAのようです
:2013/08/25(日) 04:23:22 ID:PjSo4plkO
生存報告ありがたい
待ってるぜー
592
:
名も無きAAのようです
:2013/09/19(木) 13:50:56 ID:rp85/IssO
│д゚)チラリ
593
:
名も無きAAのようです
:2013/09/19(木) 13:52:52 ID:IgGcJTyI0
おや、生存報告かい?
594
:
名も無きAAのようです
:2013/09/19(木) 20:10:28 ID:qxOQxKPA0
あがっていたので生存報告をば
百物語での燃え尽きが思いの外ひどくて、ちょっと難航中です
現在書きためは、そのはち。本編が122レス、オマケが10レスで完成(本編が少し伸びました)
そのきゅう。は、現在12レスまで作成中(仕上がってない部分も含めると合計40KBくらい)です
次の生存報告は、10月中旬の予定。それまでには書き上げたいですが、予定は未定です
595
:
名も無きAAのようです
:2013/09/19(木) 23:05:55 ID:N9fvjisY0
量が増えるのはウェルカム
遅くなってもいいぜ待ってる
596
:
名も無きAAのようです
:2013/09/20(金) 09:11:36 ID:1D497UkU0
報告乙
完結まで付き合うよ
597
:
名も無きAAのようです
:2013/09/21(土) 03:41:21 ID:ZEHxh6Vc0
おつおつ、生存報告ほんとに安心するから嬉しいよ。
俺もそれまで、今までの話を読み返したりしながら待ってる!
598
:
名も無きAAのようです
:2013/10/18(金) 11:40:44 ID:Kix5NC0.0
影|A`)マダキテナイ…シエンスルナライマノウチ…
影|A`)つ
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_1303.jpg
完結楽しみにしてるよー
支援
599
:
名も無きAAのようです
:2013/10/18(金) 20:00:32 ID:xI3Xq1FcO
>>598
ありがとうございます!!
ものすごい力作で、すっごくうれしい。キャラもだけど、背景とか小物の書き込みも素敵
それと、せっかくなので生存報告をば
そのはち。本編が122レス、オマケが10レスで完成
そのきゅう。本編が96レス、オマケが20レスで仮完成(見直しはこれから)
現在、後日談を作成中です。これが出来たら、見直しをして投下予定です
11月は生存報告ではなくて投下ができるといいとは思いますが、例によって予定は未定です
600
:
名も無きAAのようです
:2013/10/18(金) 21:01:40 ID:b5pT.gBY0
楽しみにしてるよん
601
:
名も無きAAのようです
:2013/10/18(金) 23:21:46 ID:3LUClPpU0
すごい書きため量……楽しみー!
602
:
名も無きAAのようです
:2013/10/18(金) 23:51:39 ID:Hdx31PwgO
生存報告乙!
いつまでだって待つから納得のいくのを書いてくれ。
こまめな生存報告と進捗を教えてくれるのほんとに安心するわ。
603
:
名も無きAAのようです
:2013/10/19(土) 00:23:10 ID:cvPVITB60
おお、楽しみに待っとく!
604
:
名も無きAAのようです
:2013/11/20(水) 00:47:59 ID:mUNaYCps0
こっそりと生存報告。某イベントに浮気してましたゴメンナサイ
書き溜めの方は、
そのはち。本編が122レス、オマケが10レスで完成
そのきゅう。本編が96レス、オマケが20レスで仮完成(見直しはこれから)
後日談が、71レス相当で仮完成の状態です
レス数がレス数なため、見直しにかなり時間がかかりそうです
年内に投下を目指したいですが、例によって予定は未になります
605
:
名も無きAAのようです
:2013/11/20(水) 19:36:41 ID:03SKVqzU0
報告乙!
凄く楽しみにしてる
いつまでも待つよ
606
:
名も無きAAのようです
:2013/11/21(木) 01:09:57 ID:LlNxGI4AO
報告きてた!乙乙!!
じわじわと確実に書き溜め増えてるなあ…楽しみにしてるよー
607
:
名も無きAAのようです
:2013/12/04(水) 21:36:02 ID:rZZdxbms0
長いことお待たせしました、12月6日(金)の夜8時頃から投下します
608
:
名も無きAAのようです
:2013/12/05(木) 06:32:16 ID:mVnClryc0
時は来た
609
:
名も無きAAのようです
:2013/12/05(木) 08:08:09 ID:8WmKYcdMO
イヤッッホォォォオオォオウ!
* + 巛\
〒| +
+ 。||
* + / /
∧_∧ / /
(´∀`/ / +
/~ |
/ュヘ |*
+ (_〕) |
/ | +
ガタン / /ヽ |
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―――――――――――
610
:
品質は
:2013/12/05(木) 11:41:05 ID:B0XG./Ug0
買います!
http://u.ttj.cc/2J
http://u.ttj.cc/2K
http://u.ttj.cc/2M
611
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:04:59 ID:ttGVJWA.0
俺と兄者は、二人になりそこねた一人だ。
.
612
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:06:06 ID:ttGVJWA.0
まともに産まれなかった、人間のできそこないと、言い換えてもいい。
俺ともう一人の俺――兄者は、つながったまま産まれてきた。
感覚や力を共有しているとでも言えばいいのだろうか。
肉体というイレモノこそ二つあるけれども、俺たち二人は根っこのところでは一つだった。
(´<_` )「なあ、おれ」
片方が怪我をすれば、どれだけ遠くにいたとしてもわかったし、その痛みを引き受けることだってできた。
力が足りないのならば借りればよかったし、貸すことだってたやすくできた。
足りないのならば二人ぶんの力を使い、負担はそれぞれ分けあう。
そうやって俺らはずっと過ごしてきた。
( ´_ゝ`)「どうした、おれ?」
俺たちにとってはそれが普通。
だから、感覚や力を分け合う“もう一人”がいない他の人間がいつも不思議だった。
それは、今だって変わらない。
.
613
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:08:27 ID:ttGVJWA.0
俺は兄者で。兄者は俺。
俺の考えることが兄者の考えることであり、兄者の考えることが俺の考えることだった。
十年前……少なくとも、あの日が来るまでは。
(´<_` )「なあ、おれ。探検にいかないか」
今でも、思い出す。
どうやっても、忘れ去ることが出来ない。
――その言葉が、すべての始まりだった。
( ´_ゝ`)「それはよくない。母者におこられる」
+(´<_` )「でも、気になるだろう。おれはそうじゃないのか?」
(;´_ゝ`)「……」
(´<_` )「なあ、おれ。おれはどうなんだ?」
( ´_ゝ`)「……そうだな、おれ。おれもそうだ」
俺は少し考えて、それから小さく頷いた。
.
614
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:10:27 ID:ttGVJWA.0
打ち明け話を一つするならば。
――元々、鏡なんてものは大嫌いだったのだ。
誰も彼もが、鏡に写るのは現実とそっくり同じ風景だと言う。
だけど、そんなものは嘘っぱちだ。
物心ついたときからずっと、鏡に写る全ての光景はニセモノだった。
そうでなければ、俺ともう一人の俺がこんなに違って見えるはずがない。
薄水色と、若草色。
青と、緑。空の色と、草の色。
似ているけれど、全く違う毛並みの色。
鏡は、俺と俺が違うものだと突きつけてくる。
兄者と弟者という名前と同じだ。俺は、俺ともう一人が違うものだと突きつけるもの全てが大嫌いだった。
だから、かもしれない。
屋敷の一角。
使われなくなったものをしまうための、一室。
そこにある鏡に、当時の俺は惹きつけられた。
.
615
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:12:28 ID:ttGVJWA.0
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( `Yミ=}_ _{彡Y´ )
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〈彡´ ̄ )) ) ( ((  ̄`ミ〉
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(ミ、.Y Y.,彡)
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l圭ヽ / 圭l
`l圭 ! ! 圭l´
(三=`, 、´=三)
lミミ i_ / _i彡彡l
`lミミ l / .l彡彡l´
lミミ l / / .l彡彡l
(ヽヽ } / / { / / )
/__ノ .ヽ / / / ゝ__ヽ
\三≡、\ / / /,≡三/
 ̄\彡ヽ / /ミ / ̄
\彡ヽ r−-' 二二`-−ヽ /ミ /
ゝ圭⌒ヽヽ ノ...|...ヽ //⌒圭ノ
〈彡´`ヽ_/..|..\_/´`ミ 〉
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616
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:14:16 ID:ttGVJWA.0
ありとあらゆる装飾で飾り立てられた、古い鏡。
金属で作られた蔦や鳥の姿。
金剛石や紅玉、青玉などの高価な石たち。
湧き出る泉をそのまま形にしたような、透き通る鏡面。
その鏡に映る、俺と俺の姿は――まるっきり同じ真っ白な毛並みをしていた。
本当の俺。
緑色なんかじゃなくて、本物の俺の色。
それは物心ついてからずっと抱えていた違和感を打ち消す、魔法の鏡だった。
――まだガキだった俺が、その鏡に夢中になるのにさほど時間はかからなかった。
(´<_` )「なあ、おれ。おれはどうなんだ?」
( ´_ゝ`)「……そうだな、おれ。おれもそうだ」
探検という名目で俺は兄者を連れ出し、暇さえあればその鏡を見に行った。
.
617
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:16:12 ID:ttGVJWA.0
――馬鹿だったのだ。
俺は屋敷の中に、危ないことがあるなんて思っていなかった。
怪しいものに近づくとどうなるのか、わかっていなかったのだ。
だから、罰を受けたのだ。
.
618
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:18:36 ID:ttGVJWA.0
それはいつもと同じ、何でもない一日だった。
あの日も、俺たちは部屋に忍び込んで、鏡を見ていた。
( ´_ゝ`)「なあ、おれ。誰かに、呼ばれてないか」
(´<_` )「……?」
そして、兄者は『何か』の声を聞いたのだ。
兄者に聞こえる声は、他の奴らには聞こえなくても、俺にだけは聞こえる。
――でも、あの日のあの時だけは違っていた。
(´<_` )「……聞こえない。聞こえないぞ、おれ」
( ´_ゝ`)「じゃあ、気のせいか……」
そう言って、兄者が何気なく触れた鏡の表面が、水面のように揺れた。
水に触れたように、その手が鏡に溶けていた。
不思議に思ったのは、ほんの一瞬。
(;゚_ゝ゚)「逃げろ、おれ」
次の瞬間には、俺は兄者のもう片方の手によって突き飛ばされていた。
何が何だかわからないまま兄者へ視線を向けると、そこには――真っ黒な腕がいた。
.
619
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:20:47 ID:ttGVJWA.0
そう、腕だ。
鏡の中、水の様に揺れる鏡面から、黒い腕が伸びている。
鋭くとがった爪。
それはまだ子供だった俺たちの胴をあっさりと捕まえられるくらいに大きかった。
(´<_`;)::「……何?」
肌がざわざわと粟立っている。
魔力を感じた時と同じ感じ、それなのに「これは嫌だ」という言葉が頭を駆け巡る。
とても寒かった。
あの黒い腕以外、部屋の中は何も変わらないはずなのに体が震えて止まらない。
赤や青の光がぐるぐると回り、視界を邪魔する。
(♯ _ゝ )「いいから早く、逃げろ!」
――なんなのだ。なんなのだこれは。
もう一人の俺はそう呼びかけるだけで、自分は逃げようとはしない。
(´<_`;)「おれ! おれもいっしょに」
.
620
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:23:00 ID:ttGVJWA.0
そして、俺はようやく気づく。
兄者の手は鏡の水面に飲み込まれたままだ。
その鏡面は水のように揺れているのに、兄者がどれだけもがいても腕を引きぬくことが出来ない。
連れ戻さなければと思った瞬間には、俺の体はさらに遠くに突き飛ばされていた。
他ならない、兄者自身の手によって。
俺は、俺から拒絶された。
(;<_; )「おれ!」
(*´_ゝ`)「おれはほんとに、泣き虫だよな。
男だし直さなきゃはずかしいよなぁ、やっぱり」
俺は、こんな状況だというのに笑っていた。
俺がこんなにも泣いているというのに、笑っていたのだ。
わけがわからなくて。
それでも、俺はもう一人を連れだそうとして立ちあがった。
――今でも、その瞬間を覚えている。
.
621
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:24:10 ID:ttGVJWA.0
( ´_ゝ`) 《止まれ》
俺の口がはっきりとそう動き、言葉じゃない言葉がその音を響かせた。
魔法。
先生に教わったわけじゃないのに、もう一人のおれは魔法がとても巧かった。
(;<_; )「――っ」
動かそうとした足が、その動きを止める。
抵抗しようとする動きは全て、魔法によって抑えられてしまう。
止まれ
短くて強い、制止の魔法。
その短い言葉が、魔力がどうしても振り払えない。
黒い腕が、動けない兄者の体をがっちりと掴む。
もう一人の俺はどうにかして腕を外そうと、体を動かしていた。
だけど、鏡面と黒い腕の力はそれよりもずっと強かった。
(;´_ゝ`) 《 》
そして、最後の抵抗にとおれが放った魔法は――黒い腕には届かず、
.
622
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:26:28 ID:ttGVJWA.0
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八.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;/  ̄  ̄
ヽ_.;.;.;.;_.;.;.;_.;.;.;.;/
.
623
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:28:13 ID:ttGVJWA.0
オ レ
兄者は、俺の目の前で――鏡の中から出た手に引きずられて
鏡の
なかへ
落ち――
……ぽちゃん
.
624
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:30:06 ID:ttGVJWA.0
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.
625
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:32:42 ID:ttGVJWA.0
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「弟者っ、どうしたんだい弟者っ!!」
( <_ )「――おれがいない!」
@@@
@# 、_@
( ノ ) 「しっかりしなっ、弟者っ!! ちゃんとそこにいるだろう!!」
( <_ )「ちがう、おれがいない!
おれはここにいるのに、おれがいないんだ!!!」
(;<_; )「おれはいるのに、どこにもいない
おれ……返事をしてくれ、おれ!」
彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「ああ、しっかりしろ弟者。兄者はお前じゃない。
兄者のことはちゃんと父さんたちが探すから、弟者はしっかりと気を持ちなさい」
∬´_ゝ`)「……馬鹿みたい」
彡⌒ミ
(#´_ゝ`)「姉者っ!」
(;<_; )「おれ……おれはどこ?
おれがいなきゃ、おれはここにはいないのに……」
.
626
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:34:32 ID:ttGVJWA.0
……そこからのことは、思い出したくもない。
誰も信じてくれなかった。
兄者は、鏡の中に落ちたのだと。あの黒い手に引きずり込まれたのだと。
どれだけ言葉を尽くして訴えても、無視された。
誰も、鏡のことなんて調べようとはしなかった。
ξ゚ -゚)ξ「元気出して」
(´<_` )「……」
ξ゚ -゚)ξ「いっしょにさがそ、兄者」
俺の言葉は、誰にも届かない。
母者の周りのヤツラの言葉を借りれば、俺はおかしくなってしまったのだそうだ。
なんでも一緒にしたがるくらい懐いていた兄が失踪し、正気を失ってしまったかわいそうな弟。
――どうでもよかった。
俺にとって大切なのは、どうやったら俺が見つかるのかというその一点だけ。
だけど、俺は見つからなかった。
誰もが見当違いの場所を探した。俺を探して出て行ったヤツラは、誰も俺を見つけられなかった。
(´<_` )「……おれが探さないと」
.
627
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:37:58 ID:ttGVJWA.0
兄者は死んだのだというヤツもいた。
――そんなはずがない。
兄者が死ぬときは、俺が死ぬ時だ。
そのくらい俺と、俺の半分はつながっている。
二人のなりそこない。できそこないの一人。
人間として不完全な俺は、片割れなしでは自分の肉体どころか精神さえも保つことさえできない。
(´<_` )「おれが、おれを見つけないと」
ξ;゚ -゚)ξ「どこ行くの、弟者!?」
誰もわかっていない。
わかっているのは、俺と俺だけだ。
( ´ー`)「どうしたかな、坊ちゃん?」
(´<_` )「おれが、おれを探さないと。おれじゃないと、おれを探せない」
俺だけが、俺が生きていることを知っている。
俺だけが、俺のいる先を知っている。だから――、
(´<_`#)「おれに、魔法を教えてください!」
.
628
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:38:54 ID:ttGVJWA.0
俺が頼ったのは母者と長い付き合いのある魔法使いだった。
大導師とも呼ばれていた彼――先生は、戸惑いながらも魔法を教えてくれた。
今にして思えば、ツンと先生だけは俺の話を聞いてくれたように思う。
しかし、その時の俺は、俺のことだけで頭がいっぱいだった。
( ; ー )「……魔神に呼ばれたか。これは厄介ダーヨ」
( <_ )「魔神」
――そして、俺は。
俺から俺を奪い取ったのが、人ではないと知った。
魔神
――魔力を振るい好き放題をする、神に等しい存在。
そんなものの気まぐれで、俺は俺を失ったのだ。
( ´―`)「……これは、生半可なことではいかないダーヨ」
(´<_`#)「それでもいい! おれは、おれがもどるなら何でもする」
.
629
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:40:40 ID:ttGVJWA.0
それから、二年の月日が過ぎた。
その間に俺の身長は伸び、体重も増えた。
先生について簡単な魔法なら扱えるようになったし、力だってつけたはずだ。
しかし、そんな俺をあざ笑うように、鏡は何を試しても俺を返すどころか何の反応も示さなかった。
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「いいから、呪術師でもなんでも連れてきな!!」
.彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「すいませんが、協力をお願いします」
母者や父者も何をしなかったわけではなかった。
その頃になると、ようやく俺の言葉を信じ始めた母者たちは試せる手段はなんでも取るようになった。
旅回りの魔術師や、魔道具を使いなんとか俺を取り戻そうと手を打った。
しかし、その甲斐なく日々は過ぎ――その日。
(´<_` )「……ぁ」
何がきっかけだったのかはわからない。
それこそ、単なる魔神の気まぐれだったのかもしれない。
ただひとつ確かなことはその日、鏡と外との間に道が出来たということだ。
.
630
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:43:18 ID:ttGVJWA.0
ほとんど使われない、ガラクタだらけの部屋。
微動だにしなかった鏡面が揺らいだ。
銀色に波打つ水面が、かすかに光を放つ。
そう思った瞬間、鏡の中からあの青や赤に光るとても嫌な魔力がして。
そして、
目が開けられなくなって、
( ´_ゝ`)
土埃が舞うその部屋。
そっと目を見開いた先に、二年前と同じ姿の俺が立っていた。
あの日からまったく成長しない姿で、俺の顔を見上げた俺はぽつりと呟いた。
・ ・
――おれじゃなくて、弟者と。
( ´_ゝ`)「お……弟者、なのか?」
( <_ )「……おれ」
あの時のままの俺と、成長した俺。
――俺と兄者の間では、今でも二年の時がずれたままだ。
.
631
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:44:45 ID:ttGVJWA.0
(;´_ゝ`)「ああ、泣くなってば弟者。
ほれ、俺はここにいる。そんな顔するなってば、おい」
( <_ )「……」
俺は――、いや兄者は少しだけ、困った顔をした。
返事ができないでいる俺の顔を見て、少しの間黙りこみ。
そして、あの馬鹿は言ったのだ。
(*´_ゝ`)「……鏡の中ってさ、すっげぇ楽しかったよ」
こっちは泣きそうだったのに。……いや、泣いていたのかもしれない。
それなのに、兄者はへらりと楽しそうに笑って、言ったのだ。
(<_`#)「……」
(;´_ゝ`)>⊂(<_`#)
( ;゚_ゝ゚)「いだいいだいぃぃ!!!! 耳! 耳引っ張るのやめてぇぇぇ!!!」
.
632
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:46:53 ID:ttGVJWA.0
なんてことはない。
頭がおかしくなりそうな二年間を過ごした俺とは違い、兄者はどこまでも気楽だった。
そうでなければ、こんなにも陽気に笑えるはずがない。
・ ・
( <_ )「……兄者」
だから、俺は決めた。
(´<_` )「俺が、弟者というなら。俺は、弟者でいい。
だけど、……もう二度と魔法とか、変なものに近づくな」
( ´_ゝ`)「……」
( <_ )「頼む……兄者」
こんな鏡は、いらない。
人ではない生き物はみんな、敵だ。
――魔法だっていらない。使わせたりだって、しない。
嫌いだ。死んでしまえばいい。壊れてしまえばいい。消えてしまえばいい。
俺を、俺から引き離そうとするものは全部全部なくなればいい。
そうすれば、俺は俺でいられる。
できそこないの一人ではなくて、普通の一人のようにしていられる。
.
633
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:48:45 ID:ttGVJWA.0
そう。
あの日から俺は――もう二度と”そちら側”に兄者を近づけないと決めたのだ。
.
634
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:49:26 ID:ttGVJWA.0
( ´_ゝ`)デザート×キャラバンのようです(´<_` )
.
635
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:50:07 ID:ttGVJWA.0
そのはち。 できそこないの一人
.
636
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:53:15 ID:ttGVJWA.0
(゚A゚)「兄者、どうした?!
やっぱさっきので、無理がっ!!!」
(; _ゝ )「……」
糸が切れた人形のように、兄者は動かなくなった。
何の前振りもなく崩れ落ちたきり、兄者の体は決して動こうとはしない。
いや、動かそうとはしているのだろう。
兄者は地面に倒れ伏しそうになる体をかろうじて支えながら、かなりの時間をかけて顔だけをかすかに上げた。
(´<_` )
表情を歪めた兄者が睨みつける先は、弟者。
弟者は動かなくなった兄の姿に、少しも表情を変えようとはしない。
まるで、そうなるとわかっていた様だった。
(#´_ゝ`)「弟者ぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
兄者が、吼える。
637
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:54:11 ID:ttGVJWA.0
直接、危害を与えられたわけではない。
魔法が発動したような形跡もなかった。
(#´_ゝ`)「やめろ、いいから今すぐに返せ!!」
(´<_` )「――俺が、それを許すとでも?」
しかし、兄者ははっきりとした確信を持って弟者を睨みつけている。
怒りと焦りを隠そうとしない瞳。
それに答える弟者の言葉も、自らが元凶であると認めているかのようだった。
(#´_ゝ)「馬鹿野郎。死ぬつもりかっ!!」
(´<_` )「……死ぬ気はない。俺が死んだら意味が無いからな」
弟者の視線が兄者から外れる。
その瞳が向くのは、岩で作られた人と荷馬車の中間のようなイキモノ。
ゴーレム。魂を持たない、機械のようなまがいものの生命。
(<_` )「……」
弟者が背を向ける。
兄者は弟を止めようと手を伸ばし――その手が動かないことに舌打ちをする。
.
638
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:56:18 ID:ttGVJWA.0
(#´_ゝ`)「ドクオ、弟者を止めろっ」
( )「その時は、ドクオを殺す」
(;'A`)「……」
弟者の低い声に、伸ばしかけたドクオの手が止まる。
弟者の表情は見えない。しかし、その声にはっきりとした殺意を感じてドクオはたじろぐ。
(#´_ゝ`)「どうしても行くっていうなら、力づくで止める」
(<_` )「兄者はおとなしく、ここで寝ていろ」
(; _ゝ )「――っ」
その言葉と同時に、兄者の頭がガクリと落ちた。
その表情が苦しげに歪み、荒げられた言葉は途中で止まる。
(; _ゝ )「――ばかやろう」
それでも兄者が辛うじて上げた声は、とても小さかった。
,
639
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 20:58:04 ID:ttGVJWA.0
弟者は兄者の姿を見ようとはしない。
その視線が向かう先は、相も変わらず岩の巨人の姿だ。
( )「知ってる」
自分に言い聞かせるように呟くと――、弟者の足は地を蹴った。
弟者が向かうのは、ゴーレムのいる先。
そこではブーンが魔法を放ち、奮闘を続けている。
(;'A`)「弟者っ!」
今度こそ弟者を制止しようとドクオが動く――が、その手は宙を切った。
弟者の姿はドクオが予想したよりも、はるかに先にある。
弟者の足は早い。ドクオもそれを知っていて、羽を動かし手を伸ばした。
間に合った、と思った。
それなのに――間に合わなかった。
('A`)「……あいつ、あんなに足速かったか?」
伸ばした手を引っ込め。ドクオはごくりと息を呑む。
弟者の動きは――、ドクオが今日一日で見た中で群を抜いて速かった。
.
640
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:00:59 ID:ttGVJWA.0
弟者はゴーレムを相手にしてから、ここまで疾走した。
それからろくに休んでいないのに、あの速さ。弟者の動きは落ちるどころかむしろ明らかに上がっている。
――兄者が動けなくなったのとは、ちょうど逆だ。
(-A-)「……」
ドクオは瞳を閉じて考える。
同じような光景を見たことがある、……ような気がする。
……たしか昼、二人組の盗賊に襲われた時だ。
盗賊の男を縛り付け、兄者を人質にした少女を拘束した弟者。
魔法使いである彼女を弟者は殺そうとして――、
ありえないほどに、弟者の動きが鈍った瞬間があった。
(´<_`; )「――な、」
弟者は信じられないという顔をしていた。
弟者の顔に張り付いて妨害していたドクオは、その姿をはっきりと見ている。
(*´_ゝ`)b「ちょっと、持って行かせてもらった」
動きの落ちた弟者。それとは対照的に、魔力封じを持った兄者の動きは別人のように速かった。
まるで、弟者のように。兄者と弟者が、そっくり入れ替わったように。
それこそあの時の動きは、――弟者の素早さが兄者へと『持って行かれた』ようだった。
.
641
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:04:10 ID:ttGVJWA.0
思えば、ずっと前から妙だなと感じることはあったのだ。
ニンゲンにしては恐ろしく素早い弟者と、並以下の兄者。
軽々と曲刀を振り回す弟と、弱い兄。
魔力に反応する罠の中で平然としていた弟と、意識を失い操られた兄。
単なる資質や鍛錬による成果だと思っていたそれらの違いが、違うことに起因しているのだとすれば。
弟者の速さや、並外れ体力は――何の上に成り立っていたのか。
「……仕方ないだろう。運動と名のつく能力の大半は弟者が持ってるんだから」
「ちょっと、持って行かせてもらった」
「根性を見せろって言われてもな……お前さんが加減さえしてくれれば、俺ももうちょっと」
「俺の体力が残念なのは、俺のせいじゃないやい! 弟者が悪いんだもん!」
「お前が強いのは知ってる。なにせ二人ぶんだからな。
だけど、それだけでどうにかなる相手じゃないだろうが!」
その答えを、ドクオはとうに知っていたのかもしれない。
兄者はずっと言っていた。それでも、ドクオはありえないのだと、その可能性をずっと却下してきた。
.
642
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:04:54 ID:ttGVJWA.0
――二人は同じだと、ブーンは言った。
人を構成する上で最も重要な要素。決して同じであるはずのない魂が、同じなのだと。
「同じだよ。弟者にとっては、な」
「――そうだろう、俺?」
双子。
人のできそこない。
二つの肉体がありながらも、魂を同じくするこの兄弟は――、その腕力を、脚力を、体力を、魔力を、
('A`)「――共有、しているのか」
(; _ゝ )「……そんなに、御大層なものじゃない」
('A`;)「兄者!?」
兄者は俯いたまま、苦しそうに声を上げる。
そこにいつも浮かべている陽気な笑顔の、面影はない。
(; _ゝ )「……考えてることがはっきりわかるわけでもない……性格だって全然違う……」
それでも、歯を食いしばるようにして兄者は声を上げた。
.
643
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:06:29 ID:ttGVJWA.0
( ´_ゝ`)「……俺と弟者は、別人だ」
動かない体を抱えて、それでもきっぱりと。
自分と弟者は違う生き物なのだと、兄者は告げた。
まるでそれだけは譲れないと言うように、兄者の言葉は強かった。
(#´_ゝ`)「そもそも……あの馬鹿、自分が死にかねんってわかってない!」
(;'A`)「おい、兄者。大丈夫なのか」
( ´_ゝ`)「もうだいじょ――っ、ぅ」
兄者の声の一旦明るくなるが――すぐに、うめき声に変わる。
ドクオは慌てて兄者の傍らに舞い戻り、「無茶するからだ」と、その肩を叩く。
(; _ゝ )「……あんにゃろ、容赦なく持ってきやがって」
(;'A`)「持って行って――って、やっぱりお前」
額から流れる冷や汗を、兄者は拭う様子すら見せない。
兄者は俯いたまま、苦しそうに顔を歪めて言う。
.
644
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:08:23 ID:ttGVJWA.0
(; _ゝ )「……問題ない。認めたくはないが、……概ねドクオの考えている通りだ」
兄者は笑い声を上げるが、それもどこか空々しかった。
体は動かさないまま、瞳を閉じ。兄者は、ぽつりぽつりと語っていく。
(; -_ゝ-)「俺とあいつは、双子だからな。……悔しいけど、こういうのだけは融通が利くんだよ」
('A`)「それじゃあ、」
(;´_ゝ`)「……弟者が言っていただろう、人間のできそこない。
イレモノは二つあるのに、魂は一つ。そのイレモノだって完全に別れているとは言えない欠陥品」
どうしてなんだろうな――と、兄者は呟いたのかもしれない。
しかし、その声は小さくて、本当に聞こえたのか、それとも気のせいだったのかドクオには判断ができなかった。
ドクオは少し考え込んだ末に今、一番確認したいことを尋ねることにした。
('A`)「単刀直入に聞く。
お前が動けないのは、弟者がお前の力を奪ったからなのか?」
(; ´_ゝ`)「……そう言うと、なんかエグいな。
せめて持って行ってるとか、借りてるとかもっとこうさ……」
兄者が少しずつ力を込めて、なんとか座る体勢まで体を引き起こす。
しかし、それで限界だったのか。兄者の口からは言葉が消え、動きも止まる。
.
645
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:10:22 ID:ttGVJWA.0
かなり長いこと沈黙した末に、兄者はようやく明るい調子の声を上げた。
(;´_ゝ`)「一つの体でふたりぶん動けるからな。使いようによっては便利なんだー。
できそこない様々。大いに万歳、だ」
(#'A`)「それで片方動けなくなってたら、ざまあねえだろ!」
(; _ゝ )「……まあな」
兄者は、ため息をつく。
反論の言葉が少ないのは、辛いからなのだろう。
どうしてそんな状態で、ペラペラしゃべろうとするかね。と、ドクオは怒りを通り越してもはや呆れにも似た気分になる。
兄者の言葉は、これまでの意見とぜんぜん違う。軽口を叩こうとするなら、せめて意見くらい統一しやがれというのに。
('A`)「さっきの、できそこない万歳っての。本気じゃないだろ」
( ´_ゝ`)「……おまえさんは、人の嫌がってるとこばかりに食いつくな」
('A`;)「うるせー」
兄者は、弟者の走り去った方向と視線を向ける。
弟者は既にゴーレムへと接触し、手にした武器を振るっている。
火花が上がり、風と魔力が渦巻く感覚が部屋には満ちている。
.
646
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:12:42 ID:ttGVJWA.0
( ´_ゝ`)「……弟者を頼む」
岩と床が起こす鈍い音。剣戟、魔法、草、風――あらゆる音が部屋中に響く。
その中で、兄者の小さな声はドクオにはっきりと届いた。
( ´_ゝ`)「虫のいい頼みだとはわかっている。
それでもあいつは、――俺にとっては弟なんだ」
('A`)「オレはブーンと違って、戦う力なんてないぞ」
ゴーレムが引き起こしたのか、床が震動する。弟者たちと岩の巨人の戦闘の影響はここまできている。
それでも兄者の表情だけは、とても静かだった。
( ´_ゝ`)「何かあったら、大声を上げるだけでいい」
._,
('A`)「それだけなら、」
(; _ゝ )「……少しだけ、休む…そ…間、……任せ……」
そのやりとりで、限界だったのだろう。ドクオの返答に小さく笑みを浮かべると、兄者は瞳を閉じた。
気絶したのか。それとも、眠りに落ちたのか。彼はそれ以上は喋ろうとはしない。
兄者の様子をひとしきり見てから、ドクオは顔をあげる。
視線を向けるその先は――、空気を噴き上げるゴーレムと弟者。そして、ブーンの姿だ。
.
647
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:14:15 ID:ttGVJWA.0
――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――――――――
――――――――――――
耳元で風が鳴る。
駆ける足は軽く、体から重さというものが消失したようだった。
軽すぎてかえってふわつく体を、腹に力をいれて支えながら、弟者はまっすぐ前を目指した。
一歩、もう一歩と走りながら、腰からシャムシールを引き抜く。
いつもならばずしりと手にかかる重みも、今の自分にとっては鳥の羽のようだ。
(*^ω^)「――オト、」
d(´<_` )「……」
ブーンの声に、弟者は静かにしろと身振りで告げる。
ゴーレムは背後を向いている。
駆け寄る弟者に気づく気配は、ない。
/◎ ) =| )
見上げるような巨体に向けて、弟者は利き足に力を込めた。
.
648
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:16:36 ID:ttGVJWA.0
弟者の足が、地から離れる。
腕を振り大きく勢いをつけて、ゴーレムの体を支える足――、無限軌道へ。
そして、そこからさらに跳躍し、巨人の細い腕を支える部品の一つへと着地する。
(´<_` )「……」
左手で体を支え肩へとよじ登ると、弟者は頭頂部へと駆け上る。
足に岩の硬い感触が伝わり、視界が一気に開けた。
風が、薄紫のフードを揺らす。
慣れ親しんだ、土埃混じりのぼんやりとした世界ではない。
そよぐ草、穏やかな日差し、空気は透き通り、吸った息に砂の味はない。
――ああ。
弟者は目の前に広がる光景に一瞬、言葉を失った。
白い壁に囲まれた、楽園のような箱庭。
心臓が、ひときわ大きな音を立てて動く。
高みから見下ろす世界は、未知であふれていた。
外にはこんな光景があるのか――。
胸に浮かんだ、動揺は一瞬。
憧憬にも似た思いは、足元から伝わるゴーレムの震動によって打ち切られる。
.
649
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:18:52 ID:ttGVJWA.0
(´<_` )「行けっ!」
弟者の腕がひらめき、シャムシールが巨人の頭へと突き立てられる。
勢いよく振り下ろされた刀は、それでも岩の肌を貫くことはできなかった。
鋭い音とともに、火花が飛び散る。
ただ、それだけ。
/◎ ) =| ) i...i...gi gi
――しかし、ゴーレムは音を上げ、その体を大きく揺らした。
(´<_` )「――きいた!?」
ゴーレムの腕が頭上の弟者を捉えようと、激しく動き始める。
しかし、弟者がどこにいるのかはっきりとわからないのか、伸びた腕が弟者に届くことはなかった。
一度、二度と、腕は執拗に振るわれる。
効いている。
そう、弟者は確信した。
兄者の言うとおり、頭部が弱点なのだ。
はっきりとした手応えこそ感じられなかったが、確かにゴーレムは頭への攻撃を嫌がっている。
.
650
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:20:41 ID:ttGVJWA.0
(´<_`#)「存分に、喰らえ!」
弟者は腰に下げたもう一振りの刀を抜き、その頭へと叩きつけた。
大きな衝撃と共に、弟者の腕を攻撃の反動が駆け上る。
まるで自身が攻撃を受けたかのような痛み。しかし、弟者はそれでも手にした刀に力を込め続けた。
刀はやはり、岩の表面に傷をつけることすらかなわない。
それでもゴーレムは体を震わせると、弟者を追い立てるようにその体を右へ左へと大きく傾けた。
/◎ ) =| )
――ぎちり、ぎちりという音とともに、ゴーレムの上半身が回りはじめる。
次第に速度を増し始めた動きに、弟者は膝をつき足に力を込める。
(´<_` ;)「くそっ」
宙へと弾き飛ばされそうになる体を、弟者はかろうじて支える。
しかし、その背後から音を上げて巨人の腕が迫り来る。
弟者は立ち上がり退避をはじめようとするが、その動きは一歩遅かった。
ゴーレムの体の動きと震動に、弟者の体が大きく傾ぐ。
体勢をなんとか整えようと踏み出した足は、何もない宙を踏む。
.
651
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:23:09 ID:ttGVJWA.0
( <_ ;)「――あ、」
そのまま、弟者の体は落下をはじめる。
体勢を整えることも出来ない。
胃がせり上がるような不快感と、全身の毛が逆立つ感触。
落ちる。
それでも、弟者は目をしっかりと見開き――、
/◎ ) =| )
(´<_` )つ==|ニニニ二フ
視線が交差する。
その瞬間、弟者の左手が動いた。
無骨な刀が驚くほど正確な動きで、ゴーレムの顔面を捉える。
/◎ ) =| ) ――a a a A a AAAA ! ! !
橙の光をあげ、火花が散る。
背を下にした、不恰好な姿勢で振るわれた刀。
力なんてろくにこもってないはずの一撃は、岩の巨人にこれまでとは比べ物にならないほどの衝撃を与えた。
.
652
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:24:56 ID:ttGVJWA.0
攻撃の勢いを利用して、弟者は上半身を、そして下半身をひねる。
そして、どうにか体勢を整えると、獣のように地に着地した。
ざっと地を踏む音とともに弟者の両足が、そして刀を握ったままの両手が地につく。
それと同時に風が止む。
その時、弟者ははじめてブーンが力を貸してくれていたのだと気づく。
(#^ω^)「――オトジャ、いくらなんでもムチャだお!」
(´<_` )「すまん」
必死過ぎてわからなかったが、あの無謀な着地が成功したのもブーンのおかげか。
弟者は心のなかで、感謝を告げる。
(´<_` )「行くぞ」
立ち上がり、動きに支障がないのを確認すると、弟者は再び地を蹴る。
それと同時に、振り下ろされたゴーレムの腕が弟者のいた場所へとめり込む。
(;^ω^)「おおおお、おうだお!」
ゴーレムの目――頭部の装甲に穿たれた溝がじっと弟者の姿を追いかける。
それを見やり、弟者は小さく笑みを浮かべた。
.
653
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:26:29 ID:ttGVJWA.0
/◎ ) =| ) i i a A
弟者が、再びゴーレムへと接近する。
右手がひるがえり、次いで左手に持った青竜刀が唸りをあげる。
シャムシールも青竜刀も本来、片手で振るうための武器だ。
しかし、それを一本ずつ両手に持つとなると話は別だ。
(´<_` )つ==|ニニニ二フ
重みのある刀身を力で強引に振るいながら、弟者はゴーレムを睨みつける。
ギチリと音を立てる無限軌道に、二度シャムシールで刺突を繰り出す。
間髪入れずに、青龍刀の横薙ぎ。
ゴーレムの腕を三歩下がり回避すると同時に、軸足をめいっぱい踏み込み跳躍する。
(´<_` )「……」
高く飛び上がった体は、巨体の腕へと落下する。
着地もそこそこに、弟者はゴーレムの岩の腕を駆け上がると、再度踏み切り二度目の跳躍を遂げる。
勢いを上げて吹く風が、弟者の耳元でうなりをあげる。
しかし、恐れることはない。
今の弟者にとって、風は弟者を守る盾であり、武器だ。
.
654
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:28:47 ID:ttGVJWA.0
そして、二度の跳躍をはたした弟者の眼前にゴーレムの“顔”が迫る。
先ほどの攻撃で一番効果があった、顔の装甲。
後ろに流された弟者の右手が流れるように弧を描いて、シャムシールの刀身をゴーレムへと叩きつける。
一際上がる、大きな火花。
焦げ臭い匂いが鼻をつくと同時に、体勢が崩れ弟者の体は落下を――
(#^ω^)《足場になるお!》
風が、弟者の背と足元を抱きとめるように渦巻く。
柔らかい寝台を踏むかのようなおぼつかない感覚。しかし、体を支えるにはそれで充分だった。
(´<_`#)「いけぇっ!!!」
足を踏み出す。
目に見えない風の足場に、弟者がためらうことはなかった。
左手に携えた青竜刀を、顔面へと突き出す。
銀の刀身は光をあげ、顔にあけられた溝へと吸い込まれていく。
.
655
:
名も無きAAのようです
:2013/12/06(金) 21:31:03 ID:ttGVJWA.0
手にかかる鈍い衝撃と、刀身が何かを傷つけた感触。
その瞬間、確かに手応えがあった。
弟者は手にした刀を更に深く、押し込んでいく。
/◎ ) =| ) Ga gi ga GA
ゴーレムが、悲鳴じみた音――声を、上げる。
一際、大きなその声とともに、巨人は体を捻るように動きはじめた。
弟者は右手のシャムシールによる突きを繰り出そうとして、ゴーレムの二本の腕が臨戦態勢となっていることに気づいた。
(´<_`#)「ちっ」
舌打ちとともに、背後へと跳躍する。
ブーンが上手く支えているのか妙な具合に足元が揺れるが、弟者の体が落下することはない。
宙へと逃げた弟者の体をかすめるようにして、岩の腕が振り回される。
そして、巨人の二本の腕はそのまま顔をかばうように、構えられた。
(; ^ω^)「ずるいお! あいつ弱点をかくす気だお!!」
(´<_` ).。oO(……どうする?)
.
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