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( ^ω^) ブーンが雪国の聖杯戦争に挑むようです
1
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 21:47:16 ID:U5Z4bAHs0
潮の香る港に、日本人とはかけ離れた二人の男が降り立った。
ここ、小樽の港には日本人以外にも出稼ぎにきたロシア人も多く、
外国人はそう珍しいものでもなかったのだが、
二人の異色は際立っている。
( ´_ゝ`) 「いやー気持ち悪かったなー。揺れる揺れる。
船旅ってのはどうにもすかんね、俺は」
2月末とはいえ雪のまだ積もるこの土地で、
極彩色の派手なアロハシャツを羽織り、麦わら帽子を被った短パンの男と、
(´<_` ) 「アニジャ、静かにしろ。任務中だ。目立つ様な真似はするな」
対照的に、どこに売っているのかもわからない、
足首まで丈がある、フード付きの真っ青なローブをきた男の二人組。
( ´_ゝ`) 「はいはーい、わかってますよオトジャくん。
そんじゃ、粛々と静かーに会話もなく黙々と目的地目指しますか」
アニジャ、と呼ばれたアロハ男は軽く手を振るだけで、
なんら悪びれもせずに歩き出す。
その背をオトジャというローブの男が追い、
(´<_` ) 「分かったのなら行動で示してくれ」
愛想の無い口調でそうたしなめた。
目を引く二人ではあるが、港を少し離れていくと車道を走る車ばかりで、
人通りは少なくなっていき、彼らを気に掛けるものはいなくなった。
49
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 22:54:19 ID:U5Z4bAHs0
「えぇ、急ピッチで苗床となる工程を進めていきましたから。
下手をすればこの"魂蟲"に肉も残さず食い殺されてしまっていたでしょうが、
被験体の肉体的強度と治癒力の高さのおかげで、どうやら成功しそうです」
次にしたのは女の声だ。
まだ若く、少々幼さは残るがどこか艶を感じさせる声である。
「実験中だったこの蟲が使えるとはな。
常人……いや"人間"であれば、恐らく一瞬で肉体を食らい尽くされていただろう。
俺達は良い拾い物をしたな。まだ人間でなくなってから日が浅く、上手く適応出来たようだ」
「これなら我々が聖杯戦争を勝ち抜くことも充分に可能だ。
後は、我々の命令通り動けるかどうかだが……」
「ご心配なく、三日三晩かけて私が催眠をかけましたから。
最も、この"化物"に魂蟲の苗床になった後、自我が残っていればの話しですが」
「残っておらずとも、他の六人のマスターを始末さえしてくれればいい。
聖杯が現われたところを蟲にこいつを殺させ、俺達が頂いちまえばいいのさ」
「そう言えば、残っていたと言えばこいつが持っていた魔術刻印、どうなったんだ?
欠片みたいなもので、魔術回路などは二割程度しか引き継がれてはいないようだったが」
50
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 22:56:30 ID:U5Z4bAHs0
「問題は無い、体内に入り込んだ魂蟲が魔術回路の代替物となり、
術に必要な魔術を送り込むことになるが、元々あった回路もそのまま使える。
水道の蛇口がいくらあろうとも、ダムに不都合は起きんよ」
「へぇ……なるほど。じゃあこの最終調整さえ終われば、
サーヴァントを召喚して化物を戦わせられるというわけか」
「そういうこと。呪文は催眠の時に刷り込んだし、やるべきことをやってくれるでしょ。
同じ"バーサーカー"同士、文字通り死ぬまで暴れ回ってくれるわ」
「そうなりゃ、俺達一族が根源への到達を成し遂げるってわけか……。
この土地で内藤と津出が聖杯を発見したって聞いてから、
潜伏しつづけた苦労もこれで報われるぜ。ここ、寒くて仕方がないんだよ」
「ふっふ、まだ気が早いぞ。……集中しろ、目を凝らして見ておくが良い。
そろそろ、最終調整が終わるところだ。目覚めるが良い、我らの美しき獣よ……」
最年長の者がそう言うよりが早いか、虫達に変化が起きる。
中心部へと集まるそれらが次々と吸収されていったのだ。
部屋で蠢いていた虫達の姿は徐々に消えていき、
やがて"苗床"となった化物の姿が露わとなっていくと……、
51
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 22:57:54 ID:U5Z4bAHs0
川 ) 「 」
「おぉ、四肢がついているぞ。五体満足だ」
部屋と同じ、闇色のドレスを見に纏ったその美しき化物が立ち上がり、
その様に彼らは感嘆の声を上げていく。
「なんだあのドレス。あれ、爺さんの趣味かい?」
「いや、あれは私の趣味。折角の私達の力作なんだから、
美しく着飾ってあげたいじゃない?」
「そんなことはどうでもよい、早くサーヴァントを召喚させるぞ。
サーヴァントの召喚は椅子取りゲームだ。急いで準備しろ」
慌ただしく動き始める彼らの目には、もうその化物は移っておらず、
サーヴァント召喚の儀式の用意をしていく。
川 ) 「……」
今まで意識を失い、覚醒したばかりの化物は、
自分の左手の甲に宿る赤々とした紋章を不思議そうに見つめる。
その視線はどこか煽情的で、"令呪"の放つ輝きに目を奪われているようだった。
聖杯戦争の為に精製されたこの最悪の怪物は、こうして札幌の地で目覚めたのだ。
52
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:02:25 ID:U5Z4bAHs0
******
円山は市街地に面していながら、そのほとんどの面積が山と、
原生林に覆われた自然の豊かな土地であり、北上すればそちらへ、
北東へと向かえば北海道の陸路の要である札幌駅へ向かう事も出来る。
自然と科学が混然一体となり、田舎的でもない都会的でもない、
小奇麗さと小汚さが相まって不思議な静けさを醸し出す土地だ。
原生林の中には公園があり、その入り口付近にはマンションが建てられていた。
そこの一室こそが魔術師、隠田ドクオの隠れ家が一つである。
髪も瞳も黒く、日系人らしい顔立ちをしていたが、
彼の浅黒い肌の色と独自の雰囲気には日本人らしからぬものがあり、
人種を判別させることは難しかった。
しかし170cm程の身長は平均的な日本人男性のそれで、
彼はオリーブドラブのモッズコートを羽織り、裾を悠然と翻して歩く。
前を開いたままのその姿は寒そうに思われるが、しかしどこか様になっている。
それがこの男の国籍の特定を難しくさせる要因でもあった。
53
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:03:54 ID:U5Z4bAHs0
('A`)ノ 「……」
ドクオはマンションの玄関へ辿りつくと、暗証番号を押してセキュリティーを解き、
ドアをくぐっていくと階段を登って目的の部屋に向かう。
二階の203号室であり、彼がそこを選んだ理由は戦略的に優位をとれるからだ。
二階ならばいざ襲撃を受けた祭も脱出するのに適し、外部の敵を早期発見することも可能で、
風の影響も上のフロアに比べて少ない。
最上階のほうが敵の索敵に優れるという意見もあるだろうが、
それならば屋上へ行けばいい話だ。それよりも、上階に居を構え、
万が一敵に火攻めをしかけられた時に脱出できなくては困る。
リスクを最小限に抑え、最大限のメリットを得るには、
ドクオの持論では二階がベストだったのだ。
聖杯戦争に挑むにあたって、彼に妥協は一切なかった。
あらゆる事態に備え、念入りに計画を立ててきた。
その最後の一押しが今日の"仕事"である。
ドクオは目的地の前に到達すると、ノックをした。
すると5秒と待たずに扉の向こう側から気配が生まれ、
「"愛国者は?"」
そう問われた。
唐突すぎる問いであり、要領を得ないものであるが……、
54
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:05:29 ID:U5Z4bAHs0
('A`) 「"らりるれろ"」
ドクオは迷わずに合言葉を答える。
すると素早く扉が開かれていき、
('、`*川 「……尾行は?」
女性が現われるなりそう尋ねた。
砂色の髪が美しい、緑色の目をした彼女は、
ドクオの仲間であるペニサス・イトーだ。
('A`) 「一切無い。追っ手は送られていないようだ」
('、`*川 「入って」
言って、彼を招き入れると周辺を油断のない眼つきで見回し、
そっと扉を閉めていった。
廊下をドクオは進んでいき、その背後にペニサスがつく。
168cmと女性として高身長の部類に入る身体はYシャツ姿であり、
白い生地からは豊かな膨らみが作られている。
鍛えられているのか引き締まった体型をし、
しなやかな筋肉を持ち合わせているのだが女性らしさも併せ持つ。
真の肉体美というのは、こういうことを言うのかもしれない。
('、`*川 「お帰りなさい、ボス。自分の目で現地を見てきて、どうだった?」
55
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:06:41 ID:U5Z4bAHs0
('A`) 「悪くない土地だ。都市開発されていながら自然も残っていて"マナ"が豊富だ。
これなら存分に魔術を行使することができるだろう。
高層建築物も多く、偵察も容易そうだ。……もっとも、お前達はもう知っているだろうが」
ドアを開くと、キッチンとダイニングが一緒になったそこは、
左手側がダイニング、右手側がキッチンとなり、ダイニングの中心にはテーブルが置かれ、
それを囲うようにソファーが配置されていて、テレビと向き合うようになっていた。
今、テーブルの上ではトランプが忙しなく動きまわり、
6人の男女がそれぞれカードゲームに興じている。
_
( ゚∀゚) 「おぉ! ボス、お帰り」
(゚、゚トソン 「お帰りなさいませ、ドクオさん」
( ^Д^) 「お帰り〜。 あ、革命で」
(;><) 「ちょ……! あ、あぁ、お帰りなさいなんですボス」
( ´∀`) 「お帰りモナ、ドクオ」
('A`) 「……楽しそうだな」
_、_
( ,_ノ` ) 「お前ら、手を止めろ。ボス、すまん」
('A`) 「いや、何も悪いとは言っていない。お前達もよく働いてくれたしな。
だが……なんだそれ? ポーカーじゃないのか?」
56
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:09:16 ID:U5Z4bAHs0
( ^Д^) 「日本のゲームでな、大富豪ってんだ。ボスもやるか?」
('A`) 「後でな、今は報告と会議が先だ」
ドクオが彼らにボスと呼ばれるのは、そのままの意味だ。
ペニサスを含め、口を開いた順からジョルジュ、トソン、プギャー、ビロード、
モナー、渋澤と言い、この七名はドクオにとって仲間でもあるが同時に部下でもある。
彼の興した、ある会社の社員なのだ。
社長に対して敬意の欠いた口振りをする者が多いが、
それは生死を賭けた場面を共に切り抜けてきた仲間である、という意識からくるもので、
ドクオもまた同じ認識をしていて、仕事以外で上下関係を強要したことはない。
仕事となれば彼らの行動は素早く、散らばっていたトランプを集めて、
姿勢を整えると一斉にドクオのほうを皆が見た。
('A`) 「まずはみんな、三ヶ月前からの潜入任務、御苦労だ。
お前達のおかげで魔術師が動いてる素振りを見せることもなく、
準備を進めることが出来、俺は"サスガブラザーズ"の追跡に専念出来た」
('A`) 「ありがとう。奴らを始末することで一つ席が空き、これで聖杯戦争に参戦出来る。
令呪もこの通りだ。俺はこれから、サーヴァントの召喚を行う。
ペニサス、例の物を持ってきてくれ」
('ー`*川 「了解」
笑みを作って応えた彼女は、ダイニングから姿を消す。
ペニサスが戻ってくるまでの間、
ドクオは改めて説明をしようと口を開く。
57
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:10:47 ID:U5Z4bAHs0
('A`) 「聖杯は魔力を溜めこみ、奇跡を引き起こすことを可能にする。
英霊の召喚はその膨大な魔力による奇跡の一端と言えるだろう。
俺達魔術師は聖杯に選ばれて令呪を得ることで、マスターになる」
('A`) 「令呪とは三画からなる聖痕のようなもので、サーヴァントへの絶対命令権を持つ。
命令は単純で短期なものであるほどその効力は強く、例えば遠く離れた場所から"来い"と命じれば、
瞬間移動をしたように即座に目の前に現われる。逆に、複雑で長期にわたるものほど令呪の効果は薄い」
('A`) 「一度令呪を使うと一画が消費されてしまう。三度限りの命令権だ。
これがあるからこそ魔術師は英霊を従えることが出来る。
自害しろ、と命じられればそれまでだ。だから英霊達はマスターに従う」
('A`) 「英霊は聖杯に呼びだされ、使い魔、サーヴァントになるが元は英雄だ。
気性の荒い奴もいればプライドの高い奴もいる、扱いは気をつけろよ。
それでだ、サーヴァントにはクラスというものがあって……」
そこでドクオはペニサスが戻ってきたことに気付き、言葉を区切った。
長々とした話しではあったが、これから行う戦いのこととあって、
仲間達は真剣な面持ちで聞いてはいるが、退屈しているに違いない。
58
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:11:48 ID:U5Z4bAHs0
('、`*川 「ボス、持って来たわよ」
ペニサスはそう言って、布に覆われた棒状の何かを両手でドクオに差し出す。
受け取ったドクオは包みを解きながら、再び口を開く。
('A`) 「サーヴァントにはクラスがあり、セイバー、ランサー、アーチャー、
ライダー、アサシン、キャスター、バーサーカーの七つだ。
俺がこれから呼びだそうとしているのは……」
布を全て払い去る。
そして、皆の前でドクオは掲げた。
現われたものは3m近くある槍であり、古びたそれは中世の英雄の愛槍であったものだ。
('A`) 「ランサーだ。この遺物で俺はある英霊を召喚する」
この槍を寄り代に使えば、確実にドクオの意中の英霊を召喚することが出来るだろう。
彼はその英霊を何故狙うのか充分に説明すると、この街の中でもマナが特に豊富であり、
人気の少ない原生林へと向かい、召喚の儀式の用意を仲間と共に始めていく。
PMC(傭兵企業)"インビジブルワン"を率いる魔術師、隠田ドクオ。
傭兵を部下として使うこの魔術師は、必勝の為の布石を打っていく。
59
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:13:05 ID:U5Z4bAHs0
******
その夜、聖杯戦争に挑むべく、
五人のマスターがサーヴァント召喚の儀式を開始する。
ある者は自宅にある魔術工房で―――――
( ^ω^) 「大丈夫、大丈夫だお。この聖遺物があれば、確実にあの英霊が召喚できる。
とーちゃんとかーちゃんに託された物、今こそ全て引き継ぐお」
ブーンは、自ら描いた召喚の陣と向き合い、集中力を高める。
魔方陣の中央には母より預かったあのサブマシンガンが設置され、
それを一瞥したブーンは頭の中で召喚の手順を反芻していく。
ある者は人気のない大地で―――――
(*゚ー゚) 「ギコくん……待ってて。今度は、私が力になるから……」
シィに願いなどは無かった。だが想いだけはある。
かつての恋人の力となるべく、病院からこっそりと拝借した輸血パックから血を垂らし、
魔方陣を描いていき、それを終えると万が一の為に用意しておいた聖杯戦争の文献をもう一度読みこみ、
召喚の呪文を間違えぬよう、しっかり脳へと刻む。
60
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:14:19 ID:U5Z4bAHs0
ある者は整えられた闇の中で――――
「いい? 貴女はこれからサーヴァントの召喚をするの」
川 -) 「……」
黒いドレスを見に纏う、かつて"クー"と名付けられた"化物"は、
召喚の陣に向かわされて、催眠に従ってサーヴァントの召喚に備えていた。
「魔方陣は用意した。後は狂化の一文を忘れずに挟むこと――――始めて」
女に指示されるがままに、化物は一度だけ頷くと、口を開いていく。
口ずさむのは召喚の呪文だ。
ある者は最もマナの豊富な場所で―――――
('A`) 「サーヴァントの召喚に大掛かりな術式は必要ない。
聖杯が魔力を供給してくれるから、魔術師は呼びだすだけだ」
そう語るドクオではあるが、魔方陣に手抜かりは無く、
彼はその出来に満足すると再び口を開く。
水銀を用いて作られた魔方陣へと向かい手をかざし、
('A`) 「どんな大魔術が使われるのか、と期待してたんだろうがな」
61
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:15:49 ID:U5Z4bAHs0
('A`) 「じゃあ、儀式を始めるぞ――――」
その言葉に部下達は首肯を返し、ドクオが呪文の詠唱を開始していく。
('A`) 「告げる」
( ^ω^) 「告げる」
(*゚ー゚) 「告げる」
川 -) 「告げる」
( ^ω^) 「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に――――」
(*゚ー゚) 「聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば答えよ――――」
('A`) 「誓いを此処に。我は常世全ての善となる者、我は常世全ての悪を敷く者――――」
川 -) 「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
汝狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――――」
( ^ω^) 「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
呪文の結びをつけるとともに、ブーンは身体を流れる魔力の奔流を限界まで加速させた。
サーヴァントをこの世に導きだし、そして繋ぎとめる為に大量の魔力を必要とする為だ。
62
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:16:54 ID:U5Z4bAHs0
逆巻く風と稲光。
吹き飛ばされそうな風圧に耐えるブーンの前で、召喚の紋様が輝きを放つ。
魔方陣の中に出来た道はついに"あの世"へと繋がったのだ。
工房から溢れんばかりの光の奥から、現われ出でるものがある。
(;゚ω゚) 「成功……した?」
(<`十´>
それは――――白き戦闘服を纏う立ち姿。
(*゚ー゚) 「これが、サーヴァント……!」
|/▼)
それは――――純白のローブに防具を備えた男の姿。
川 -) 「……」
以#。益゚以
それは――――禍々しき輝きで黄金の鎧を曇らせた狂戦士の姿。
63
:
名も無きAAのようです
:2012/04/02(月) 23:18:43 ID:U5Z4bAHs0
目,`゚Д゚目
それは、男の狙い通りの鎧武者の姿。
険しい眉間に荒々しさを感じさせる相貌は、
快活さを感じさせる笑みを一瞬見せ、膝を突く。
目,`゚Д゚目 「問おう。貴殿が拙者を招いたマスターか?」
全て思うがままにことが運び、達成感から笑い声の一つでも上げてもおかしくないのだが、
ドクオは憮然と己の召喚したランサーを見返し、仲間を見渡すと宣言した。
('A`) 「あぁ―――聖杯戦争を開始するぞ」
聖杯戦争の火蓋は切られ、夜が更けその第一日目が始まろうとしていたその時、
札幌の街に、どこまでも響き渡るような獰猛な雄叫びが放たれていった。
聞く者を恐怖させる獣の轟きに、不穏な空気が漂い始めていく中――――
――――聖杯戦争は、開始される。
64
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/02(月) 23:22:51 ID:U5Z4bAHs0
以上で第一話 聖杯戦争を開始する 投下終了です
本人証明の為にいちおう酉をつけておきます
それではまた次回に
65
:
名も無きAAのようです
:2012/04/03(火) 00:30:21 ID:UG..4.v20
フェイトか期待
乙
66
:
名も無きAAのようです
:2012/04/03(火) 01:26:00 ID:qUJcEhE.0
乙乙 楽しみにしております
67
:
名も無きAAのようです
:2012/04/03(火) 06:32:25 ID:1hwJ3nuEO
読みがいあって、かつ面白いよ
次回が待ちどおしいけれど
これだけ量があると次は1ヶ月後位になるのかな
68
:
名も無きAAのようです
:2012/04/03(火) 17:37:41 ID:Q6SmkjUY0
そうか、ブーンのサーヴァントはアーチャーか。
チート性能だな。
69
:
名も無きAAのようです
:2012/04/03(火) 17:46:15 ID:yHPsLwB.0
銃が聖遺物だしアーチャーだろうな
70
:
名も無きAAのようです
:2012/04/04(水) 00:09:30 ID:uqjNVnBk0
>>69
スオミを使う白装束は俺の知る限りチートアーチャー。
71
:
名も無きAAのようです
:2012/04/04(水) 06:30:52 ID:ERiRsyow0
まさか白い死神か?
舞台と言い、こりゃ勝負は決まったな。
72
:
名も無きAAのようです
:2012/04/05(木) 02:11:10 ID:02aRJQTM0
http://the99mmikd.blog.fc2.com/blog-entry-34.html
まとめさせていただきました
要望等あればお願いします
73
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:15:13 ID:nqepu3F.0
内藤家の一階には魔術の研究を行う工房があり、
今、そこに一騎のサーヴァントが召喚された。
(<`十´> 「問おう、お前が私のマスターか?」
雪原に擬態する真っ白なギリースーツを装備したサーヴァントは、
死神を連想させるマスクを覆った顔をブーンへと向けて尋ねた。
(;^ω^) 「そ、そうだお……僕が君のマスターだお」
150cm代と大柄のブーンと比べると酷く小柄な体型だったが、
それでもサーヴァントの放つ威圧感に彼は気圧されてしまい、
とっさに平静を装ったものの声が上ずってしまう。
(;^ω^) 「き、君は……アーチャーで間違いないのかお?」
(<`十´> 「如何にも」
(;^ω^) 「第二次世界大戦で、沢山人を―――」
ブーンは彼の生前について全く知らなかったのだが、
母親に教えられていたためその活躍ぶりは把握していた。
しかし、ブーンは争いを好まず戦争に嫌悪もしている。
大戦で戦った英雄に対して、そんな彼は抵抗を持たずにいられない。
74
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:16:16 ID:nqepu3F.0
(<`十´> 「マスター、一つ言っておくが。
私は命じられたことを可能な限り最大限に遂行しただけだ」
それを察したのか、言葉を遮ってアーチャーは先手を打つ。
(;^ω^) 「で、でも……」
(<`十´> 「私達の生きる時代ではそれが正義だった。
銃を取らねば、何も守れなかった。それだけだ」
(;^ω^) 「……」
つい出してしまった言葉に後悔しかけるが、
それでもブーンは戦争というものを肯定することは出来なかった。
……それは、これから聖杯戦争を戦う自分への否定でもあったのかもしれない。
(<`十´> 「マスター、名前は?」
ブーンが口籠ってしまったことで生まれた沈黙を破ったのは、
アーチャーの問いであった。
75
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:17:13 ID:nqepu3F.0
( ^ω^) 「僕は、内藤ホライゾン。みんなブーンって呼ぶからブーンでいいお」
(<`十´> 「ふむ……ブーンか。お前の口振りから見るに、私の名は知っているようだな。
ならば、あえて名乗らん。顔を合わせることもそれほどないだろうしな」
(;^ω^) 「え……え!?」
アーチャーの何気ない言葉に、ブーンは驚愕した。
自分の言葉がどこまで彼を傷つけたのだろうかと心配するが、
(<`十´> 「む? 勘違いするな。お前の言葉に私は何の感慨も浮かばない。
戦略的な問題だ。お前は聖杯戦争が終わるまでここで隠れていればいい。
私が6人のマスターもサーヴァントも、全て仕留めてこよう」
(;^ω^) 「い、いや! それは!!」
(<`十´> 「マスターが死ねばサーヴァントに魔力供給がされなくなる。
お前に死なれたら、私が困るのだ。だから、外に出歩かずここで隠れていろ」
(;^ω^) 「そんな甘いはずがないお! 6人を相手に君1人で立ち向かえるわけ……」
76
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:19:45 ID:nqepu3F.0
(<`十´> 「一度に相手にするわけではない。ゲリラ戦は私の得意手だ。
もしものことがあれば私はマスターを援護するが……足手まといだ、お前は」
(;^ω^) 「……!」
正直に、包み隠しもせずにアーチャーに言われ、
ブーンは自分の足場が崩れ去ったような感覚を覚えた。
口から否定の言葉が出かけるが……、
(<`十´> 「違う、とは言わせぬぞ? どう見てもマスターの眼は戦う者の眼では無い。
胸の内に、何か決めたことはあるのだろうが……戦いへの迷いも見えるぞ?」
ブーンは父であるシャキンの真意を知り、迷いを断ち切れたつもりでいたのだが、
アーチャーの問いにブーンは自信を持てなくなってしまったのだ。
元から、それは一過性のものでしかなかったのかもしれない。
いずれ壁にぶつかれば、脆くも崩れ去るだけの貧弱な覚悟だったのかもしれない。
しかし、"根源への到達"を"人々の為"に成そうとしていたのは、間違いなく彼の意思だ。
(;^ω^) 「……」
彼の意思に違いは無かったのだが、揺らいでしまった。
揺らいでしまったブーンはアーチャーに反論出来なかった。
77
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:25:12 ID:nqepu3F.0
(<`十´> 「どこに不都合がある? お前は手を汚さずに聖杯を手に入れられる。
私はかつての大戦と同じように、可能な限り最大限に任務を遂行するだけだ」
(;^ω^) 「君一人じゃ……勝てないお」
(<`十´> 「マスターと一緒じゃ私は勝てん」
サーヴァントにも聖杯に託す願いがある。
だからこそ英霊の座より現世への召喚に応じるのだ。
叶えたい願いを、中途半端な覚悟で戦いに臨むブーンに妨げられるよりは、
己の腕を信じそれだけで聖杯戦争に挑むほうが、アーチャーにとっては堅実だった。
(<`十´> 「ではな、マスター。何かあれば令呪で呼ぶがいい」
そう言ってアーチャーは霊体化していき、姿を失っていくと、
(;^ω^) 「アーチャー!!」
文字通り、ブーンの前から消えてしまった。
令呪と魔術回路は繋がっており、まだ彼が近くにいることは理解できたが、
ブーンの呼ぶ声にアーチャーが応えることはなかった。
78
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:27:12 ID:nqepu3F.0
******
|/▼) 「問おう、汝が我を召喚せしマスターか?」
人気の無い円山の中腹で魔方陣を敷いたシィは、
儀式の際に莫大な魔力によって吹きすさんだ疾風が止んだかと思うと、
静まり返った夜闇の中心で、眩いほどの白さを放つローブを顔を覆うように纏った男に問われる。
(*;゚ー゚) (これが、サーヴァント……)
自らが行使した魔術が成功し、見事サーヴァントの召喚を成し遂げた高揚感に一瞬浸るが、
男の身から感じられる魔力の濃さに対する驚きのせいで、それは心の端へと追いやられてしまう。
(*;゚ー゚) 「えぇ、そうよ」
しかし、どれだけ高等な存在であっても所詮は使い魔である。
術者に行使される側である彼に、シィは魔術師らしく毅然とした態度で応えるが、
規格外の魔力量に尻ごみする気持ちは抑えられなかった。
|/▼) 「我は聖杯の招きに従い、"英霊の座"より現世へ"アサシン"のクラスを得て参上した」
アサシン。
気配遮断スキルを持ち、姿を見せず、気配も感じさせずにマスターを暗殺する、
名の通り暗殺者の英霊が就くクラスである。
79
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:27:58 ID:nqepu3F.0
正面切っての戦闘では、他のクラスに比べステータスで劣り不利ではあるが、
マスターが上手く暗殺者としての本領を発揮させてやれれば、充分に勝ち残っていけるクラスだ。
サーヴァントはマスターの魔力供給により現世に姿を留めることが出来、これを"現界"と言う。
マスターから魔力を与えられない限り、自力で補給することの出来ないサーヴァントは姿を保てず、
聖杯を手にすることは叶わずに消滅する羽目になる。
そこに、アサシンが付け込む隙があるのだ。
サーヴァントのステータスはいくら低くとも、人間が彼らに敵うことはない。
闇に溶け込みマスターを狙うアサシンは、聖杯戦争において魔術師の天敵と言っていいだろう。
(*゚ー゚) 「アサシン……」
しかし、セイバー、アーチャー、ランサーの"三騎士"と呼ばれるクラスには、
圧倒的にステータスで劣っていることに変わりは無い。
シィはいざ敵に襲われた際、このアサシンが撃退することは出来るのだろうかと不安を抱く。
姿を見せず暗躍すればいいのだが、何らかのアクシデントに見舞われ、
襲撃されてしまった場合はかち合いに弱いアサシンは頼りがいが無かった。
(*゚ー゚) (でも、ギコくんと合流できれば……)
しかし、アサシンほど情報収集能力に長けたサーヴァントもいないだろう。
戦闘面では役に立てないかもしれないが、ギコとさえ合流出来れば心強い戦力になるに違いない。
マスター殺しのサーヴァント、アサシンとギコのサーヴァントがいれば、
もはや敵はいないだろうとシィは考え直していき、安堵の息をひとまず吐いた。
80
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:28:57 ID:nqepu3F.0
|/▼) 「なんだ、俺じゃあ頼り無いのかいお譲さん?」
先程の硬い口調とは打ってかわり、やけに砕けた声でアサシンが尋ねる。
(*゚ー゚) 「いえ、そんなことはないわ。貴方ほど便利なサーヴァントはいないもの。
英霊の前で溜息なんて失礼だったわね、ごめんなさい」
|/▼) 「良いんだ、ステータスの低さには些か俺も不満を覚える。
生きていた頃ならばこの程度の身体能力じゃあなかったんだが……」
(*゚ー゚) 「あら、残念ね。英霊になる前のほうが強かったの、貴方達は?」
|/▼) 「あぁ、現地での知名度やマスターとの相性など、
様々な要因によって英霊は能力を限定され、サーヴァントとして召喚される。
残念でならない、貴女のような女性に俺の全てを見せてやれないとは……」
フードの端から窺える口元を緩めたアサシンはシィの前で跪くと手を取り、
その甲へと静かに口づけていった。
(*゚ー゚) 「貴方、本当にアサシンなの……?」
シィが疑問に思うのも無理はない。
アサシンという割には服装は白いローブとよく目立ち、
何より、その振る舞いが彼女の想像していたアサシンの印象とはかけ離れていた。
|/▼) 「あぁ、アサシンさ。アサシン教団の長、ハサン・サッバーハの名を受け継いだ者の一人」
81
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:30:31 ID:nqepu3F.0
(*゚ー゚) 「アサシンってもっと寡黙なイメージだったんだけど……。
まぁ、いいわ。ステータスを見る限りアサシンであることは間違いないしね」
マスターとなった者にはサーヴァントのステータスが視えるようになる。
目に映る、というよりは意識に直接情報が刻まれてくるような感覚に近い。
これは敵のサーヴァントにも同様であり、"真名"や"宝具"といった例外以外は開示される。
シィの意識に、アサシンの保有するスキルとステータスが映し出されていく。
【クラス】 |/▼)アサシン
【マスター】シィ・C・ルボンダール
【真名】ハサン・サッバーハ
【性別】男性
【身長体重】
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力B 耐久C 魔力D 敏捷A 幸運D 宝具B
【クラス別スキル】気配遮断A+
サーヴァントとしての気配を遮断する。完全に気配を絶てば発見することは不可能になる。
ただし、自ら攻撃を仕掛けると気配遮断のランクが低下する。
【保有スキル】投擲(短刀):B
短刀を弾丸として放つ能力。アサシンが保有する短剣は40余り。
風除けの加護:A
中東に伝わる台風避けの呪い。
【宝具】???
82
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:31:17 ID:nqepu3F.0
得た情報は記憶の片隅に記録され、意識すればいつでも見ることが出来る。
シィはアサシンのステータスを見るのを止めると、次に取るべき行動を命じていく。
これが、聖杯戦争が開始して初めての二人の作戦行動となる。
(*゚ー゚) 「アサシン、早速やって貰いたいことがあるの」
|/▼) 「何なりと、マスター」
跪いたまま、アサシンは演技っぽくそう応えた。
どうやらこのサーヴァントは主従の関係の通り動いてくれるらしい。
シィはそれに安堵して、彼を真っ直ぐに見据えて告げる。
(*゚ー゚) 「この写真の男の人を捜し出して」
そう言ってアサシンに見せたのは、
『 (,,゚Д゚) 』
かつてのギコの写真だった。
まだ少し幼さの残る顔立ちではあるが、眼には厳かな光が宿っている。
(*゚ー゚) 「昔の写真だけど、顔立ちはそれほど変わっていないはずよ。
私達が勝ち残るには、彼と合流しないといけない。重要な仕事よ」
|/▼) 「……」
アサシンはその眼を見ただけで、生前の経験から、
この少年は腹に何かを抱え、自らに十字架を科して死地に赴いていく、
試練に生きる人間であることを察した。
83
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:32:01 ID:nqepu3F.0
が、特に何かを語るわけでもなく、口の端を少し緩めると、
|/▼) 「了解だ、マスター」
ただ、それだけを言葉にして跳躍の姿勢を取ったその時、
「―――――――――ッ!!」
|/▼) 「ッ!」
夜の市外の静けさを打ち破る、地の果てにまで轟くような、
凶暴すぎる獣の雄叫びが二人の身を震わせた。
(*;゚ー゚) 「な、なに!?」
|/▼) (この空気の震え方、近いな……)
聞く者の恐怖心を煽るそれにシィは狼狽し、アサシンの表情は強張っていく。
先に判断を下したのは、マスターよりも実戦経験の豊富なアサシンの方だ。
|/▼) 「マスター、仕事は取りやめだ。安全な場所まで逃げるぞ」
(*;゚ー゚) 「敵がいるの……!?」
唐突に知らしめられた敵の存在にシィはただ動揺するばかりだ。
……ここのマナの豊富さが敵の魔力を紛れこませていたの?
やっと敵を察知したシィは冷静に分析していくが、
今はそんな悠長に構えていられる場合では無い。
84
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:33:03 ID:nqepu3F.0
(*;゚ー゚) 「何なのこの魔力の量、尋常じゃない! 一体何を召喚したっていうのよ……!」
|/▼) 「相手が何だろうが関係ない。早く逃げろ。
サーヴァントが近付いてきていることだけは確実だ!」
(*;゚ー゚) 「そ、そうね! わかったわ」
シィは言葉と同時に力強く一歩踏みこんだが、アサシンはその場から動こうとはしない。
数メートル程駆けたあたりで気がつき振り返ると、
「止まるな、そのまま走り続けていけ。俺は奴を食い止める」
両刃剣を背負った純白のローブの背はそう応える。
(*;゚ー゚) 「食い止めるって、貴方のステータスで大丈夫なの!?」
何度も言うように、アサシンのステータスでは三騎士に遥かに劣る。
もし相手のサーヴァントが三騎士であれば生還は絶望的だ。
「良いから、俺を信じて背を向けろ。大丈夫だ。
撤退するアサシンを追跡できるサーヴァントなどそうはいまい」
そんな不安要素を一切感じさせぬ、絶対的な自信を持った声で背は語る。
85
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:33:56 ID:nqepu3F.0
(*;゚ー゚) 「そ、それもそうね……危なくなったらすぐに逃げるのよ! 絶対よ!!」
「分かっているさ、マスターは自分の身を心配していればよい。行け」
白衣のアサシンは落ちつき切っていた。
数多くの修羅場を超えてきた経験がそうさせるのだ。
暗殺者と言えども英霊である。状況の判断においては彼の方が一枚も二枚も上手だった。
言葉通り、自分の安全を優先することにしたシィは踵を返す。
「一つ聞き忘れていた事があったな、マスター」
(*;゚ー゚) 「何!?」
「俺は名乗った。だが、貴女の名は何と言うんだ、マスター?」
こんな時に、とシィは舌打ちをしたくなったが、
アサシンの声はどこか軽々しいものでも不快さは感じられず、
むしろ自身の緊張がほだされて表情が緩んでいった。
(*゚ー゚) 「シィよ、シィ・C・ルボンダール。それが、貴方のマスターの名前」
「シィか。では、次に会うまでに覚えておこう。行くが良い。
この場はアサシンのサーヴァント、ハサン・サッバーハが受け持った」
アサシンが言い切るよりも早く、木々の砕けていく音が鳴り響き、
「――――――――――ッ!!」
雄叫びが近づいてきた。
86
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:35:33 ID:nqepu3F.0
本能的に、恐怖が命ずるままにシィは逃げ出していき、
アサシンは背中にかけていた鞘から大振りの両刃剣を引き抜く。
構えと激突はほぼ同時であった。
|/▼) 「くっ……」
フードに隠れた表情は想定以上の一撃の重みに歪んでいく。
以#。益゚以 「――――――――ッ!!」
彼に襲いかかったのは憤怒とも狂気ともつかぬ、
人と言う枠組みから外れた形相をしたサーヴァントだった。
美しいはずの装飾を禍々しき闇色で曇らせた鎧兜を纏い
髪を血の色に染めて逆立たせたその男からは、英霊という風格が感じられない。
|/▼) 「"バーサーカー"か……面白い!」
召喚時に狂化を施し、理性が無くなる代わりにステータスを底上げされるクラス。
アサシンは一合打ち合って感じた剛力と狂気から、バーサーカーのサーヴァントであると察した。
真紅の瞳が彼を射抜き、目の前の"物体"を破壊するべく狂った英霊は剣を振りかぶる。
その一刀もかつては名剣と呼ばれた逸品であったのだろうが、
現世に狂化されて現われたことで輝きは失われ、
魔剣とでも呼ぶべき凶刃となってアサシンを襲う。
87
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:36:37 ID:nqepu3F.0
膨れ上がった筋肉を持つ巨体から繰り出す一撃は、
頭をかち割るべく真上から振られていく。
力任せの一撃だ。
単純ではあるが速度と威力には優れ、アサシンは迷わず避けた。
刹那、アサシンがいたはずの地面が爆撃でもされたかのように膨れ上がり、
石と土が重々しい音を立てて宙へと爆ぜる。
飛び上がったアサシンは木の幹へ着地するが、
|/▼) 「ちぃ……完全に避けてこれか」
屈むと同時に右肩から下腹部へかけて亀裂が走り、血が噴出した。
バーサーカーの剣圧によってカマイタチが生じ、肉を断たれたのだ。
最初に防いだ一撃も全身の骨を軋ませており、彼は確実にダメージを蓄積していた。
以#。益゚以 「――――――――ッ!!」
だが、そんなこともお構いなしにバーサーカーは次の攻撃へと移り、
振った刃を返してアサシンの足場となる木を吹き飛ばす。
人間の力では決して折れぬであろう大樹は小枝のように呆気なく圧し折れ、
夜空に投げ出されたアサシンは超人的な身のこなしで体勢を立て直すと、
別の木に飛び移って敵を見直す。
以#。益゚以 「グゥゥゥウゥゥゥゥゥ……」
呻りをあげる狂気のサーヴァント。
そして暗殺者のサーヴァントの両者は一拍の間睨み合う。
88
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:38:31 ID:nqepu3F.0
|/▼) 「動く者は全て殺す、とでも言いたげだな。意思も残ってはいまい」
以#。益゚以 「――――――――――ッ!!」
先に動き出したのはバーサーカーだ。
見失った獲物を捉えて、彼が襲いかからない理由は無い。
アサシンはその短絡な行動に苦笑するが、
ステータスの差は埋めようがなく、劣勢に立たされていた。
バーサーカーは、アサシンに止めを刺すべく咆哮をあげて突進していく。
|/▼) 「単純で狩りやすい。が、今は足を止められれば充分。
ついでだ、貴様の真名――――探らせて貰うぞ!!」
それでも、彼の余裕は崩れなかった。
真っ正面から突っ込んでくるバーサーカーへ短刀を投げかけると同時、
アサシンは跳躍して背後を取っていった。
金属のぶつかり合う閃光と、叩きつけられる暴力の爆音が夜の円山で炸裂し、
聖杯戦争の初戦を飾るアサシンとバーサーカーの戦闘は白熱していく。
89
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:39:32 ID:nqepu3F.0
******
川 -) 「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公―――」
闇の中で言葉が響く。
川 -) 「降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
暗闇に満たされた室内の中央には魔方陣が刻まれ、
黒のドレスで着飾った長髪の女性は、令呪の宿る左手を前へとかざし、
言葉―――呪文を口ずさみ続けている。
川 -) 「閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
呪文に触発されるように蟲の血で形成された魔方陣は輝きを放っていき、
部屋を赤く照らしてどこからともなく疾風が舞い込む。
その様を、ローブで身を包んだ男女が見守っていた。
ある者は興奮気味に、ある者は興味深く、ある者は願うように。
川 -) 「――――告げる」
彼らに"化物"と呼ばれる女性は体内を異物が巡っていく感覚を得る。
苦痛ではあるが、魔術を行使する上でそれは避けられないものだ。
逆に、その感覚がどれだけ魔力を練り上げられているか測る指標にもなる。
90
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:40:36 ID:nqepu3F.0
赤々と輝く魔方陣は不可思議な力を発していき、
陣内を稲光が走っていった。
聖杯が数十年もの年月をかけて蓄積してきた大魔力が注がれ、
この世と"あの世"を隔てる壁を打ち破り、かつての功績や伝説から集めた信仰により、
人間霊から精霊の粋にまで昇華された英霊を"英霊の座"より呼びだそうとしているのだ。
川 -) 「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
聖杯の強大なサポートを得ながら化物は英霊を現界させるべく、
己の体内から練り上げた魔力を魔方陣へ与え続けていく。
色香を漂わせる口から紡がれる呪文に応え、
英霊召喚の予兆はより一層激しくなり、風は暴風へ変化し、
稲光も強烈さを増して莫大な熱を撒き散らす。
川 -) 「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者」
この場を包むのはもはや闇では無く、青と赤の閃光だ。
測り知れぬエネルギーが部屋を満たしていき、それは最高潮へと達する。
91
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:41:36 ID:nqepu3F.0
川 -) 「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。
汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者―――」
そして召喚されるサーヴァントの理性を奪うかわりにステータスを上げる、
"狂化"の一文を付け加えると、
川 -) 「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ」
川 -) 「天秤の守り手よ―――」
これまで込められ続けてきた魔力が堰を切った濁流の如く流れて行き、
その奔流がひときわ鮮烈な光を放つと人影が現われた。
あまりにも刺激の強すぎる閃光に多くの者は目を覆ったが、
川 -) 「……」
マスターである、この美しき化物だけは真っ直ぐに人影を見据えた。
以#。益゚以 「……」
光が散っていき、その姿が露わとなると、
ローブの男女は息を飲み、次いで歓喜した。
「成功だ! 流石は"吸血鬼"と言ったところか。
これで我が一族の大望をやっと果たせる」
92
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:42:33 ID:nqepu3F.0
川 -) 「……」
「すっげぇ! これがサーヴァントかよぉ!!
さっそく暴れさせようぜ! こいつならやれるよ!!」
以#。益゚以 「……」
しかし、彼らとは対照的にサーヴァントとそのマスターは、
不気味なまでに沈黙していた。
「まぁ、待たんか。まずは情報の収集じゃ。
ただ暴れさせるだけでは勝てるものも勝てん」
互いを見やる二人をよそにローブの男女は作戦を立てていくが、
「そうね、じゃあ"クー"。バー―――」
川 ∀) 「……」
"クー"という化物の笑みが全てを壊した。
「――――――――ッ!」
ローブの男の胴から上が、突如として振るわれた片刃剣に消し飛ばされたのだ。
彼らは息を飲み込み、剣の持ち主であるバーサーカーは、
闇と狂気に染まった黒刃を再び振りかざしていき、
「―――――――――」
断末魔を上げる間も無くまた一人がその餌食となった。
93
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:43:27 ID:nqepu3F.0
「どういうことだ!? 早く化物を鎮めろ!!」
生き残った二人の男女の内、まだ若い男がそう叫ぶと、
呆気にとられていた女は慌てて"化物"へと魔術を行使する。
「嘘……暴走!? 催眠が効いていないっていうの!?
そんな、意思なんて欠片くらいしか――――」
しかし、女の言葉は途中で途切れてしまう。
男が、バーサーカーに殴り飛ばされて壁に激突すると、
全身の骨を肉ごと粉砕されてしまったのだ。
息を飲み、潰れたトマトみたいになった男を看取った彼女は、
川 ∀) 「……」
振り返ると、口の端を釣り上げて禍々しい笑みを作ったクーに目を奪われた。
彼女がローブの女へと飛びかかったのだ。
押し倒され、馬乗りになったクーへ女は手をかざし、生き延びる為に魔術を行使した。
「ひぃ……っ!」
これまでにない程の集中力だった。
まるですがるかのようにクーにかかった催眠を強めるが、
常人であれば廃人になりかねない強制力もクーには何の変化ももたらさない。
94
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:44:16 ID:nqepu3F.0
川 ∀) 「シネ……シネェ!!」
無駄だというのに魔術を使い続ける女の首を、クーは両手で締めあげた。
嗚咽を漏らし、口から唾液をしたたらせて悶える女を心底面白そうに見つめるクー。
舌舐めずりをしてから、クーは女の首筋に大口を開けて食らいついた。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
肺が張り裂けんばかりの悲鳴を女が上げるが、
首に穴があいてしまった為にやがてそれはただの酸素となって漏れ出し、
息の根と共に止まっていった。
租借の度に女体が震え、淫猥な響きをもって血肉を散らしていく。
今のクーの胸にあるものは喜びだ。
空腹が満たされる食欲から与えられる幸福感を味わっていた。
人のそれと変わりない食欲を、クーは女の命を貪ることで満たす。
川 ゚∀゚) 「アッハッハッハッハッハ! マズイィ! マズイナァ!!」
骨の髄から血の一滴に至るまで貪り尽くしたクーは、
残った死体に唾を吐き捨てるとバーサーカーを一瞥した。
以#。益゚以 「……」
95
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:45:10 ID:nqepu3F.0
川 ゚ -゚) 「オマエモハラガヘッテイルダロウ、バーサーカー?」
声帯が人間の構造と違うのか、壊れているのか、
それとも精神の狂いのせいなのか、クーの声はどこか歪だ。
以#。益゚以 「……」
バーサーカーは沈黙を守っていた。
彼には狂化が施されている為、理性は残っていない。
マスター以外の存在を全て粉砕するだけの暴力の塊。
それが、今回の聖杯戦争で召喚されたバーサーカーというサーヴァントだった。
川 ゚ -゚) 「イクゾ、バーサーカー。ショクジヲシニイコウ」
以#。益゚以 「――――――――――――――ッ!!」
クーの言葉を命令と受け取ったのか、
バーサーカーは雄叫びを上げると剣を一度振るい、
天井をぶち破ってこの場を包む闇を晴らしていった。
天井に出来た穴からは夜空が覗けた。
そこから差し込む美しい月光がスポットライトのようにクーを照らしていき、
木々に覆われた景色を魅せていく。
どうやら、ここは山中に作られた地下施設のようであった。
96
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:45:58 ID:nqepu3F.0
跪いたバーサーカーはクーを肩に乗せると再び咆哮し、
外へと向かって飛び出していく。
川 ゚ -゚) 「ツギハオイシイモノヲタベヨウ。キットタノシイゾ、バーサーカー」
狂化のステータス向上の恩恵を受け、膨れ上がった筋肉に覆われた巨体を、
闇に染めたサーヴァントへとそう語りかけるクーに、
以#。益゚以 「―――――――――ッ!!」
応えるかのようにバーサーカーは獣じみた雄叫びを上げた。
そして彼は、空中から何者かを発見するともう一度叫ぶ。
|/▼)
応答ではなく、己の敵を発見した歓喜の咆哮を上げるバーサーカーは、
地に着地してクーを肩から降ろすと、その者へと向けて一目散に駆けだしていった。
川 ゚∀゚) 「ヌケガケナンテズルイゾ、バーサーカー」
その背を狂った笑みを浮かべて見送るクーは、ゆっくりと同じ方向へと歩き出す。
97
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:46:42 ID:nqepu3F.0
******
木々を震わす獰猛な叫びと連続して響き渡る破壊の音。
サーヴァントを召喚して間もなく、穏田ドクオ達は異変を感じていた。
('A`) 「こいつは……」
目,`゚Д゚目 「敵のサーヴァントに違いあるまい」
山道の外れにある広いスペース。
雪の敷き積もったその中心には土が露わとなった円形の部分があり、
そここそがドクオのサーヴァント"ランサー"が召喚された場である。
不自然に雪が融け上がって出来たクレーターに立つランサーは、
漆黒に塗られた当世具足と呼ばれる軽装の鎧を装備し、
肩には黄金で出来た数珠をぶら下げており、武者然としていた。
鹿の角を模した装飾のある兜をかぶった顔は、
敵の存在にさして脅威を感じていないのか威風堂々である。
同じくらいの目線に立つドクオを威厳に満ちた瞳で見据えたランサーは、
目,`゚Д゚目 「我が主よ、下知を。我が槍にて敵の首級を上げてみせようぞ」
そう指示を乞う。
冷静な声とは裏腹に、胸中では早速現われた敵との戦に燃えている様子だ。
98
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:49:40 ID:nqepu3F.0
('A`) 「いや、霊体化していろ。ランサー」
しかし、ドクオはそれを制する。
ランサーは少々面食らったようで抗議した。
目,`゚Д゚目 「むう、何故で御座るか? 拙者の力量を信用出来ぬとでも?」
('A`) 「違う、お前の強さは分かっている。敵の情報を探りたいだけだ。
相手がどんなサーヴァントか、どんなマスターかもわからないんだぞ?」
目,`゚Д゚目 「しかし、それは相手も同じことであろう。
兵は神速を尊ぶという。先手を制すれば優位であることに変わりない」
('A`) 「孔子か? 敵を知り、己を知れば百戦危うからずとも言うぞ。
先手を制しても、仕留め切れなきゃ意味がねぇ」
目,`゚Д゚目 「ほう、現世にも孔子を知る者がいるのか。貴殿は軍師で御座るか?」
('∀`) 「フフ……まぁ、そんなとこかな? 」
目;`゚Д゚目 「なんと! いやこれは失礼致した!」
('A`) 「いや、いい。今回は情報収集に専念だ。
可能であるならば敵の排除を行う」
99
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:52:31 ID:nqepu3F.0
目,`゚Д゚目 「承知! では霊体化し偵察へ……」
('A`) 「行かなくて良い。偵察ならこいつらでやる」
親指を背後へ向けてドクオが言うと、ランサーはそちらへ振り返る。
視線を向けた先には、
('、`*川
_
( ゚∀゚)
(゚、゚トソン
( ^Д^)
( ´∀`)
( ><)
_、_
( ,_ノ` )
7人の仲間―――PMCインビジブルワンの傭兵達が武装しており、
あらゆる場所で一定の偽装効果を持つ、デシタルカモフラージュを施した迷彩服を着こんでいた。
手にはそれぞれ短機関銃や対物狙撃銃が構えられ、戦闘の準備は万端である。
100
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:53:48 ID:nqepu3F.0
目,`゚Д゚目 「これが貴殿の臣下で御座るか?」
('A`) 「まぁ、そんなとこか……」
('、`*川 「違うでしょ、ボス。私達は同志でしょうが」
( ´∀`) 「いや、ドクオの会社の社員である手前、
そう言っても変わりないんじゃないかモナ?」
_
( ゚∀゚) 「ボスがトノサマ? チョンマゲ似合わねーんじゃね?」
(゚ー゚トソン 「ぷっ、言えてますね、それ」
_、_
( ,_ノ` ) 「お前ら、軽口叩くな。ボス、今使い魔に敵を追跡させている。
アンタがサーヴァントと話している間に放っておいた。映像を見てくれ」
渋澤が談笑し始めた彼らを制すと、ドクオに小型のノートパソコンを渡した。
画面には使い魔に取りつけたCCDカメラから送られる映像が流れていて、
複数のブラウザが立ち上がっていることから、駆り出された使い魔が一匹だけではないことがわかる。
('A`) 「おっ、気が効くな。仕事が早い」
('、`*川 「こっちでの潜伏生活が始まってから、非常時に備えてすぐ偵察出来るように、
色んなところに仕掛けておいたのよーボスー」
('A`) 「お前達にも魔術を教えておいて良かったな、助かる」
言いながらも画面に目を走らせたドクオは、白いローブのサーヴァントと、
黒く禍々しい鎧を着こんだサーヴァントとの戦闘を眺めていく。
場所は、恐らくはこちらとは反対側の森の中だ。
101
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:54:30 ID:nqepu3F.0
('A`) (粉塵で見えんが……黒いのは恐らくバーサーカー。
さっきの叫びもこいつのものだろう……が、こいつはなんだ?)
彼が疑問に思ったのは白いサーヴァントだった。
純白のローブで身を覆い、フードに隠れて顔は見えず、
軽装な防具を装備して両刃の大剣を構えてはいるがセイバーには思えない。
ならば、俊敏な身のこなしや短剣を投擲して戦う姿からアーチャーの可能性もあるが、
宝具を使用せずに戦闘しているライダーかもしれない。
いずれにせよ、既に召喚されているランサーとバーサーカー以外のクラスには間違いないが、
どのクラスであるか断じるには情報が少なすぎた。
電子機器越しにはサーヴァントのステータスが見られないことが悔やまれる。
('A`) (……今はこいつらよりも)
ドクオは別の窓へ目を移していく。
サーヴァント達の戦闘よりも重要な映像を見つけたのだ。
【 (*;゚ー゚) 】
白いダウンジャケットを着た薄ピンクのニット帽の女性だ。
帽子からはみ出した栗色の髪や雪のような肌から白人であることは明白である。
そして、右の手に宿る令呪を目敏く見逃さなかった。
102
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:55:37 ID:nqepu3F.0
('A`) 「こいつがマスターだな」
その言葉にインビジブルワンの傭兵達は目をギラつかせると、
己の標的を見定めて"部隊長"であるドクオに指示を乞う。
_、_
( ,_ノ` ) 「ボス、指示を」
('A`) 「恐らくはこいつが白いやつのマスターだ。
バーサーカーに襲われ逃走中、ってとこだろうな。
バーサーカーのマスターが見えないのが気にかかるが、マスターには違いない」
('A`) 「このマスターの位置と動きから察するに、
西から下山してそのまま10丁目方面に逃げ込むつもりだな。
俺とジョルジュが追跡する。お前達は――――――――」
ドクオは情報をまとめ、仲間達へと指示を下していった。
目,`゚Д゚目 「どれ、我が主の手並みを拝見させて頂くかのう……」
103
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:56:26 ID:nqepu3F.0
******
(*;゚ー゚) 「はぁ……はぁ……っ」
シィは走っていた。
アサシンにその場を任せて逃走し、既に10分ほどが経過している。
その間一切速度を落とさずに全力で走り続けることで、
剣を交える金属音は途絶えたが、未だに木々を破壊する爆音は耳に届く。
(*;゚ー゚) (アサシンは大丈夫なのかしら)
森を抜け、市街に面した場所に到達したシィは、
ようやくサーヴァントの身を案じる余裕が生まれた。
背後を振りかえり山を見渡すと、土煙が立っているのが目立ち、
それは一般人には微かな変化にしか思われないだろうが、
彼女にはそこでサーヴァント同士の剣劇が繰り広げられていることが分かる。
(*;゚ー゚) 「アサシン、早く戻ってきて」
アサシンは充分に時間稼ぎの役割を果たした。
後は撤退し、シィの元に戻るのみだ。
サーヴァントを召喚した以上戦いの権利を放棄しない限り、
シィは狙われ続けることになる。
バーサーカーから逃げおおせたと言ってもアサシンが彼女の傍にいない以上、
残る5人のマスターに狙われた場合成す術も無く殺されてしまうだろう。
そんな状況で夜の街を歩くのは、シィには危険極まりない行為であった。
104
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:57:24 ID:nqepu3F.0
(*;゚ー゚) (とりあえず、どこかに隠れていなきゃ)
そう思ったシィは止めていた足を動かし、ひとまずどこかに隠れることにした。
魔術を使っているところを一般人に見られるのは、魔術師にとって禁忌である。
もっとも"証拠"さえ残さなければ問題はないのだが、人混みとあってはそうもいかない。
だからシィは、深夜でも人の多い場所を探して歩き続けた。
ビルの林立する10丁目通りを歩き続け、アスファルトに積もった雪に足跡を刻むシィ。
彼女は交差点に迫るとまだ灯りのつく場所を見つけた。
ほとんどの店はシャッターを降ろしていたが、
まだコンビニや一部のファーストフード店は開いている。
(*゚ー゚) 「そういえば!」
シィはここまでやって来る時、左側に曲がった先に、
コンビニがあったことを思い出すとスピードを上げた。
口からは荒い息が漏れ、心臓はもはや限界を迎え早鐘を打っていたが、
生き残る為に全力で走り続けた。
コンビニへ逃れようとする彼女はもはや縋りつく思いだ。
(*;゚ー゚) (人前じゃ、他のマスターも下手なことはしないでしょう)
交差点に差し掛かり、シィが後少しだと思った途端、胸の内に安堵が生まれた。
自分はサーヴァント同士の戦いに、生き残ったのだ。
これでかつての恋人と、ギコと合流できれば、聖杯を手にするのも夢ではない。
105
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 13:58:18 ID:nqepu3F.0
(*゚ー゚) 「大丈夫、私はまだ戦える……これからも」
確かな自信を手にしたシィは笑みを作り出そうとすると、
(*゚ー゚) 「え……?」
音が響いた。
生々しい音だ。
衝撃が左肘から右半身へ響いていくと、次に強烈な熱量を左腕に感じる。
(*゚ー゚) 「なに……?」
走ることで生まれた熱ではない。
熱源へ目を配らせるが、彼女は事実を否定したくなった。
(*;゚ー゚) 「なん……なのよ……これ?」
灼熱を感じる左肘から先が地面に転げ落ちていたのだ。
血液がだくだくと流れ出る真っ赤なそこからは白い骨が飛び出していて、
それを目にしたシィは反射的に絶叫を上げそうになるが、
('A`) 「……」
濃緑色のモッズパーカーを羽織ったドクオに顔面を殴りつけられ、
口まで出かかっていた声は掻き消されてしまった。
自分の腕から噴出した血によって出来た水溜りに倒れ、
シィの白いダウンは赤黒く汚れていく。
血に塗れた彼女の傍らには、吹き飛ばされた己の腕がぽつりと並んでいる。
106
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 14:04:03 ID:nqepu3F.0
(*;´ー゚ナ) 「な……に……?」
('A`) 『狙撃は成功だ。これより移植を行う。周囲の警戒を怠るな』
シィは未だに事態が飲み込めていない様子だ。
だが、インカムを装着したドクオは彼女と打って変わり、
冷静に状況を仲間へ報告し、進めていく。
_
( ゚∀゚) 「ボス、本当にそんなこと出来るのか?」
反対側、交差点から回り込んできたジョルジュがドクオに尋ね、
その間にも彼は雪の上に転がった令呪の宿るシィの左手を掴むと、
('A`) 「出来るさ、霊媒治療術は心得ている」
(*;´ー゚ナ) 「うっ……!」
身動きを取れぬよう彼女の身体を蹴りあげ、
踏みつけながらも魔術を練り上げて呪文を唱え出す。
シィはその様をただ眺めていることしか出来なかった。
ドクオの魔術によって、奪われてしまった自分の左手に宿る令呪が輝きだし、
_
(;゚∀゚) 「……つッ!」
痛みと共にジョルジュの右手へと移植されていった。
今や、シィに宿っていた令呪は彼の手の甲で赤々と輝いている。
107
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 14:05:53 ID:nqepu3F.0
(*;´ー゚ナ) 「あっ……あぁ……」
言い知れぬ喪失感にシィは苛まれた。
サーヴァントも、聖杯も、ギコの力になるという想いも、
全て姑息な手で奪い取られてしまったのだ。
('A`) 「ジョルジュ、命じろ。令呪を使って、あの白いサーヴァントに」
_
(;゚∀゚) 「……どうすればいいんだ?」
('A`) 「簡単だ。『マスターの変更を認め、前マスターを殺害せよ』と、
令呪を意識して念じればいい。急げ、マスターの危機をサーヴァントは察知してくるぞ」
_
(;゚∀゚) 「あいよ……」
言われた通り、ジョルジュは令呪の宿る手を抑えつけ、集中していく。
ドクオはシィの動きとサーヴァントの襲来に備え、警戒しながら彼を一瞥する。
_
(;-∀-) 「令呪を以って命ずる……マスターの変更を認め、前マスターを殺害しろ……」
ジョルジュの言葉と共に令呪は一際大きな光を放ち、一画が失われた。
そして、残り二画となった令呪の前に――――
|/▼) 「……」
稲妻が生じたかと思ったその瞬間、サーヴァントが現われた。
108
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 14:06:49 ID:nqepu3F.0
('A`) 「ふん、アサシンだったか……」
マスターだけが持つサーヴァントのステータスを見る眼で、
疑問だった彼のクラスをドクオは確認した。
しかし、興味の無いような声で呼ばれたアサシンのサーヴァントは、
|/▼) 「……」
(*;´ー゚ナ) 「ひっ……あ、アサシン……嘘よね?」
淡々とシィの元へ近づいていき、ドクオは離れていく。
フードに隠れた顔を拝んだ彼は笑みを浮かべ、
アサシンは感情を窺わせぬ冷たい眼でシィを見た。
|/▼) 「……すまん、シィ」
(*´ー;ナ) 「いや……いやよ!」
横たわった彼女は涙を流し、必死に訴えかけた。
それでも、アサシンは令呪で命じられた通りに行動するしかなく、
その場で跪くとシィの首を掴んだ。
(*´ー;ナ) 「―――――」
何が起きたのか、掴まれた首には短刀の刃が突き立っており、
それはアサシンの右手の籠手から伸びていた。
引き離された白刃は血に塗れ――――
109
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 14:07:42 ID:nqepu3F.0
(* ーナ)
シィの命はその短刀によって奪われてしまった。
アサシンは首から離した手でシィの開きっぱなしの瞼を閉じてやり、
|/▼) 「眠れ、安らかに……」
亡骸へそう言葉をかけた。
その言葉は万人に等しく訪れる、死出の旅立ちが安らかであることを祈るものだ。
生前にアサシンが多くの暗殺対象へ向けて放った言葉でもある。
('A`) 「よくやったジョルジュ、アサシン。作戦は終了だ」
ドクオは仲間達へそう呼び掛けると、二人は速やかにその場を離れていく。
その迅速さは彼らが戦闘のプロフェッショナルであることの証明に他ならない。
死体や現場の後片付けは、聖堂協会と魔術協会の仕事だ。
死体一つ片付けることくらい、彼らにとっては造作もない。
ドクオがどのような汚いやり口でマスターを殺害しても、
聖杯戦争で生じた戦闘の後始末をするのは両教会の仕事であり、彼は利用しているのだ。
_
( ゚∀゚) 「了解」
|/▼) 「……」
新たなマスターにジョルジュを迎えたアサシンは何も語らず、
実体を失って霊体へと変化していった。
110
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/14(土) 14:09:06 ID:nqepu3F.0
第二話 問おう、お前が私のマスターか? 投下終了
次回は未定です
まとめありがとうございます
111
:
名も無きAAのようです
:2012/04/14(土) 14:19:54 ID:rp64bvng0
ドクオエグいことするな
112
:
名も無きAAのようです
:2012/04/14(土) 15:34:17 ID:vz1eRMck0
えっげつねぇ…
乙面白いよー
113
:
名も無きAAのようです
:2012/04/14(土) 15:58:44 ID:KCxdRVpc0
乙。しぃ……
114
:
名も無きAAのようです
:2012/04/14(土) 21:58:20 ID:J66INDbo0
遅れたが乙
115
:
名も無きAAのようです
:2012/04/15(日) 01:07:25 ID:rLZpVoYQO
乙。しかし「兵は神速を尊ぶ」や「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」は孫子の兵法だ。
116
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/15(日) 13:30:51 ID:mWGjqv/A0
>>115
すまん、誤解してた……
まとめさん、まとめた際に
>>98
のセリフを修正して頂けると嬉しいです
>目,`゚Д゚目 「ほう、現世にも孔子を知る者がいるのか。貴殿は軍師で御座るか?」
×
目,`゚Д゚目 「ほう、現世にも孫子を知る者がいるのか。貴殿は軍師で御座るか?」
○
何か指摘や質問があればレスお願いします
117
:
名も無きAAのようです
:2012/04/15(日) 19:56:38 ID:Ke/Jo88Q0
>>116
修正しました
118
:
名も無きAAのようです
:2012/04/15(日) 21:56:38 ID:qH2PoAXU0
面白い
119
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/04/15(日) 22:43:47 ID:mWGjqv/A0
>>117
ありがとうございます
指摘し忘れた部分まで、助かりました
120
:
名も無きAAのようです
:2012/04/26(木) 07:02:10 ID:yQOLQPO60
キリツグなみの外道…だが、そこがおもしろい乙
121
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:20:44 ID:Xm/VcOpw0
深夜を迎え、空が白み始めてきたその頃、山を降りる女性がいた。
黒のドレスを身に纏い、夜そのものと同化したような彼女は木々を抜け、
コンクリートに囲われた10丁目通りを進む。
川 ゚ -゚)
その姿は幽鬼さながら、生気といった物が感じられなかったが、
女性の相貌は花も恥じらうほどの美しさといった様で、
裸足でアスファルトの上を歩く彼女は見る者があれば魅了したことであろう。
人外の美貌を持つ"吸血鬼"、クーは交差点まで歩き続けると目的の物を見つけた。
(* ー )
川 ゚∀゚)
道端に打ち捨てられたシィの亡骸を見つけると、
クーは口を大いにに歪め、人ならざる笑みを浮かべる。
妖しくも邪気を発露させる笑顔で、一言。
川 ゚∀゚) 「イタダキマス」
そう発するが早いか、遺体に跨ると首へかぶりついた。
真っ赤な口から覗かせる白い八重歯は獰猛な肉食獣を思わせ、
体温を失った柔肌を食い破り、肉の味を堪能しながら租借する。
122
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:21:34 ID:Xm/VcOpw0
川 ゚〜゚)
ぐっちゃぐっちゃ。
野性味の溢れる音を響かせて、喉を鳴らせるなりもう一口。
1分と経たずにシィの顔は"顔"を失っていき、
目玉まで食らわれて白骨をクーへ晒した。
川 ゚〜゚)
目玉を口の中で弾けさせ、濃厚な鉄の味と弾力を楽しんだ彼女は、
シィの頭蓋を路面に叩きつけてかち割っていき、
そこから露わとなった紫色の血管が張り巡らされ、皺の刻まれた黄土色の脳を拝む。
租借していた物を飲み下すと、ぶよぶよとしたそれを手にとって、
脳幹を引きちぎって口の前へと持っていった。
川 ゚ -゚)
丸っこいそれは弱々しく脈を未だに打っており、
鼻を突くような異臭を放つ。
鼻腔を満たすのは吐き気を催すような濃密な血の臭いだ。
123
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:22:34 ID:Xm/VcOpw0
しかしクーにとっては肉汁ほとばしるステーキのジューシーな香りと同意である。
川 ゚∀゚)
芳しい匂いを嗅いだ顔からは笑みがこぼれ、
血液と肉片を散らせて彼女は脳を貪っていった。
川 ゚ー゚)ー3 「ゲフゥ……」
満腹となったのか、彼女の血に塗れ赤黒くなった顔からは幸福さが読み取れた。
まるで、腹をすかした子供がご馳走を平らげたかのよう。
いや、人間にとってはおぞましい光景にしかすぎないのだろうが、
彼女にとってはシィの遺体は紛れもないご馳走に違いなかった。
川 ゚ー゚) 「マジュツシダッタノカ。ドウリデウマカッタワケダ。
マリョクガメグッテイクノヲカンジル」
魔術師を食らう事でクーの身体に魔術刻印と回路が取りこまれ、
それがそのまま彼女の力となっていったのだ。
魔術刻印は魔術師の家に生まれ、家督を継いだ者へと代々譲渡されていき、
先祖の作り出した魔術回路や魔術を引き継いでいく。
そして受け継いだ者は己の研究の成果をまたそれに刻み、次の代へと託していくのだ。
次代を繋いでいくにつれ魔術刻印は強化され、より強力な物となって魔術師の家系を支えていく。
長い歴史を持つ家系ほど優秀な魔術師を生み出すことが出来るということで、
その事実は歴史の浅い家系を持つ魔術師達が軽視される実体を作り出していた。
124
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:23:28 ID:Xm/VcOpw0
しかし、そんなことはクーにとっては関係なく、
シィの家、ルボンダールの魔術刻印を体内に取り込んだことで、
パワーアップ出来たという結果だけが重要だった。
川 ゚ -゚) 「ムシドモ、ザンパンハキサマラニクレテヤル」
魔術師の肉は美味い。
そう学んだ彼女は食い散らかした遺体の残りを体内に巣くう、
"魂蟲"という魔術によって生み出された虫達に食わせてやる。
蛆が湧くように遺体へ群がる魂蟲達を傍目にし、
川 ゚∀゚) 「サテ、イッスイシタラマジュツシドモヲクイニイコウカ」
朝陽の昇り始めてきた空に舌打ちをするとクーは笑みを浮かべた。
美味い食事を人間と同じく吸血鬼も好む。
骨まで虫に食らわせ、地面に零れた血の一滴まで吸い尽くさせた彼女は、
太陽の届かぬどこか暗い所へと消えていく。
シィの敗退とアサシンのマスター交代。
そして、クーの食事によって聖杯戦争の第一夜は明けていった。
125
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:24:27 ID:Xm/VcOpw0
******
カーテンから微かに漏れ出る朝陽がブーンの目を刺激する。
( ´ω`) 「……」
眩しさに瞼を抑えながら、彼は気だるい身体をベッドから起こした。
4畳ほどの空間にはベッドや机、テレビなどが置かれており、
本棚の空いたスペースには少林寺拳法の大会で取ったトロフィーや、
家族や友人達との思い出の写真が飾られている。
昨夜アーチャーを召喚したものの、戦力外通告を彼に突きつけられ、
家を飛び出されてしまった後、ブーンは自室に籠りきっていたのだ。
数々の自問自答を繰り返し、苦悶している内に彼はこうして朝を迎えてしまった。
( ´ω`) 「僕に……マスターになる資格はなかったのかお?」
ブーンは自らのサーヴァントにかけた言葉の一言一句を思い返しては、後悔して過ごした。
サーヴァントは使い魔と言えども元を辿れば英霊であり人間だ。
アーチャーという人間が生きた時代への理解が、彼には足りなかったのだ。
英雄と呼ばれた者であれば己の戦いを誇りに思っていてもおかしくは無い。
だが、アーチャーと対面した時にブーンは肌で"何か"を感じ取ったのだ。
この英霊ならば己を理解してくれるのかもしれないという、錯覚に陥るような"何か"を。
だが、それに甘えたブーンの直情的な言葉が引き金になったのは確かなことであった。
126
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:25:25 ID:Xm/VcOpw0
( ´ω`) 「学校……行くかお」
苦悩していても時間は過ぎていく。
ブーンは習慣に従い、制服に袖を通していくと身だしなみを整え、
教科書など必要な物をメッセンジャーバッグにしまっていくと一階へ降りる。
J( 'ー`)し 「おはよう、ブーン」
( ´ω`) 「おはようだお、かーちゃん……」
リビングには彼の母がいた。
いつものように朝食を並べたテーブルに向かって座る彼女の表情は穏やかで、
息子を見る瞳は一見しただけで彼の異変に気付いたのか、
J( 'ー`)し 「サーヴァントの召喚、上手くいったのかい?」
( ´ω`) 「召喚は出来たお……でも……」
J( 'ー`)し 「でも?」
( ´ω`) 「……」
「学校で何かあったのか?」とでも言うような口振りで尋ねる。
そんな母にブーンは昨夜の失態を語ることは躊躇われた。
父を失って以来、自分に夫の望みを託し、
期待して見守ってきてくれたはずの母に申し訳が立たないのだ。
ブーンの胸を薄暗いものが覆っていき、己へ更なる嫌悪が募っていく。
127
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:26:09 ID:Xm/VcOpw0
J( 'ー`)し 「ブーン、アンタはね、とーちゃんとかーちゃんの自慢の息子だ。
私はねぇ、アンタを信じてるよ。命がある限り何度だってやり直しは効くよ」
( ´ω`) 「かーちゃん……」
J( 'ー`)し 「だけどね、アンタがそんな顔をしてる内はやり直しなんて出来るわけがない。
シャンとしなシャンと! 背筋曲がってるよ!? 猫背は折角の男前を代無しにしちまう」
( ´ω`) 「……ごめんお」
J( 'ー`)し 「だから背筋ピンとして、ごはん食べて気分でも変えなさい。
さっ、冷めないうちに食べましょう」
( ´ω`) 「わかったお……いただきます」
叱咤されたものの、ブーンの顔にさした影が消え去ることは無い。
しかし、言われたままに彼は箸をとり、ほかほかと湯気を立てる白米を口へ運ぶ。
重い気持ちのまま租借していくと口の中にほのかな甘みが広まっていった。
( ´ω`) 「……」
無言のまま食事を進めていくが、食卓に並べられた味噌汁の香りや、
鮮やかな鮭の紅色が彼の五感を刺激していき、
それらの旨みは疲弊していた心に微かな喜びを味わわせる。
128
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:26:53 ID:Xm/VcOpw0
( ^ω^) 「……」
いつも通りの母の味だ。
何の変哲もないただの朝食の風景。
だが、掛け替えの無い物である。
ブーンは穏やかなこの空気に癒され、料理に食欲を掻きたてられた。
人間とは単純なもので、食事によって与えられる幸福感で嫌なことを一時忘れられるのだ。
立ち直った、とまでは言えない物の、彼は普段通りの表情を作れるようにはなった。
J( 'ー`)し 「ブーン、美味しかったかい?」
母は、人間と言う物を良く知っていた。
何より、自分と夫の息子の持つ強さをよく理解していた。
彼女は絶望に打ちひしがれた時の夫のことを思い返しながら、ブーンへ尋ねる。
( ^ω^) 「うん、美味しかったお。ご馳走さま」
朝食を平らげたブーンは微笑みを返し、立ち上がると、
( ^ω^) 「それじゃあ、学校へ行ってくるお」
J( 'ー`)し 「そうかい、まだ寒いから暖かい格好していくんだよ」
わかったお、と短く答えたブーンは自室へ上がり、
青と白のスタジアムジャンパーを羽織り、
茶色のメッセンジャーバッグをかけて戻ってくると、玄関へ進んでいく。
129
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:27:41 ID:Xm/VcOpw0
( ^ω^) 「いってきます」
J( 'ー`)し 「いってらっしゃい」
背筋を真っ直ぐと伸ばして外へ出ていくブーンを、母は見送った。
聖杯戦争の行われる土地で、平素通りこうして日常は繰り広げられていく。
だが、ブーンの脳裏にはやはりアーチャーのことが引っかかっていた。
( ^ω^) (学校に向かったは良いもの、途中で他のマスターに襲われたら……)
背筋に冷たいものを覚えるが、アーチャーの言葉が蘇る。
(<`十´> 『ではな、マスター。何かあれば令呪で呼ぶがいい』
手袋を脱ぎ、令呪を隠す包帯を見やる。
たしかに令呪をいつでもアーチャーをこの場にすぐさま呼びだす事が出来るが、
そんなことの為に貴重な三回限りの令呪を使用していいものなのか……。
溜息を吐かざるを得なかった。
三回とは言えども、サーヴァントへの命令権を失えば制御することは出来なくなってしまう。
同時にマスターとしての資格を失うことになるからだ。
実質、二回限りの絶対命令権。これをただ呼ぶ為に使うなど、愚の骨頂と言っても良いだろう。
130
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:30:07 ID:Xm/VcOpw0
( ^ω^) (まぁ、仕方ないおね)
そう断じることが出来るようになるほど、今のブーンは前向きな姿勢を取り戻せた。
「我に従え」などという、漠然とした命令では令呪の効力を最大限に発揮するには至らないのだ。
「次の攻撃を全力で放て」というような単純明快な命令であって、初めて令呪は十全に機能する。
( ^ω^) (でも、いざとなったら背に腹はかえられないお。
それにアーチャーを呼んだら、説得のチャンスだお。
気持ちを切り替えないと……)
胸の内に決意を固めると、ブーンは北24条通りにある
東区役所方面と栄町駅方面に分かれる交差点に友人の姿を見かけた。
( ^ω^) 「おはようだお、ショボン!」
駆け寄って声を掛けるとショボンは振り返り、
(´^ω^`) 「昨夜はお楽しみのようでしたね」
にやけた憎たらしい面を見せてきた。
昨夜、という単語にブーンは動揺するが、
魔術師でも魔術使いでもないショボンが聖杯戦争を知る筈がない。
(;^ω^) 「な、なんのことだお……?
(´^ω^`) 「付き合った翌日にセックスするのは当たり前じゃないですか〜。
最近の若者の性は乱れてますからね〜。で、どやったんや? どやったん?
あのツンデレ娘は夜はどんなデレを見せてくれたんや?」
131
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:30:50 ID:Xm/VcOpw0
(;^ω^) 「し、知らんお。昨日のことかお?」
昨日、ツンに呼びだされたことをショボンは誤解していた。
しかし、昨日と言ってしまったはいいものの、
どう誤魔かせばいいのかブーンは困ってしまう。
(´^ω^`) 「おう? おうおう、そうかそうか。
"付き合ってるのは二人だけの内緒ね!"
パターンですか。それじゃあ話せないのも納得ですな」
(;^ω^) 「誤解だお! ちゃんと話せばわかってくれるお。
だから、ちょっと黙って話を聞いてくれお!!」
三(´つω;`) 「裏切ったな! 僕の気持ちを裏切ったな!!」
嘘泣きを交えて学校へ走り去るショボン。
立ちつくすブーンを見た登校途中の生徒は口々に、
「ホモ?」「カップルだったの?」「キモッ」「ホモォ……」など、
更なる誤解を招きかねない言葉を連ねていった。
(;^ω^) 「まっ、待つおショボン! 勘違いさせるようなことすんなお!!」
見事にショボンの策にかかったブーンは、慌てて後を追った。
短距離走では校内一の記録を保持する彼は、あだ名の起源となる、
⊂二二二(;^ω^)二⊃ BoooooooN!!
"ブーンフォーム"と呼ばれる姿勢を取って、校内最速を誇る全力疾走を道行く人々へ見せつけた。
ショボンに追いつくのに5秒も掛からず、
132
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:31:57 ID:Xm/VcOpw0
───────── ― - --
─── /⌒ヽ, ─────────
 ̄ ̄ / ,ヘ ヽ/⌒ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ , ” ' ‐ ,
 ̄ ̄ i .i \ (#^ω^)ヽ, ___,, __ _ ,, - _―" ’. ' ・, ’・ , /∧_∧
── ヽ勿 ヽ,__ j i~"" _ ― _: i ∴”_ ∵, ))
______ ヽ,, / / __,,, -- "" ─ "ー ・, ; ; - 、・ r=-,/⌒ ~ヽ~,
─────── ヽノ ノ,イ ─── ― - i y ノ' ノi j |
─────── / /,. ヽ, ── i,,___ノ //
______ 丿 ノ ヽ,__,ノ ___ _ _ _ ,' ゝi
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─────── ヽ, \
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──── // | | 巛 r、 r、 i (~_ノ
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~ ~ | | O O (~ ソ
===┘ ~ ̄
133
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:33:54 ID:Xm/VcOpw0
背を捉えるなり速度重視の飛び蹴りを横っ面に炸裂させた。
綺麗な弧を描いて宙を舞ったショボンは、柔道を幼い頃から学んでいる経験から、
これまた綺麗な受け身をとり、
(メ;)´^ω^`)v 「許してだっちゃダーリン☆」
足跡をつけた頬をブーンへ向けて笑みとピースを送る。
(;^ω^) 「呆れて物も言えないお……」
その後、紆余曲折あって校門の前で登校途中の生徒を待ち構え、
選手宣誓のごとく彼らは「僕達はホモじゃありません」宣言をするのだが、
ξ゚⊿゚)ξ 「あぁ、そう」
ツンの残冬にも負けぬ凍てつく視線と言葉を浴びせられると、
元通りのテンションになってとぼとぼと教室へ向かい、
何事も無かったかのようにホームルームを待った。
( ´ー`)「はーい、日直ー」
間延びした声でクラス全員に、教室に入ってきた担任のシラネーヨは言う。
日直が起立と礼と言い放つとクラスメイト達は従った。
規律のとれた、模範的な高校生と言えよう。
134
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:36:07 ID:Xm/VcOpw0
( ´ー`)「おはようだーよ」
ほぼ自動化されたように黒い出席簿を開いて点呼をとると、
ホームルームを始めていくがなんら変わり栄えもするものはない。
しかし、
( ´ー`)「昨日の夜、寝ようと思ったらクマかなんかの鳴き声が聞こえたんだけど、
お前達にも聞こえたか? 大きかったんだけど、ニュースにもなってないし……」
ξ゚⊿゚)ξ 「……ッ」
シラネーヨの何気ない、もしかしたら寝ぼけて聞こえただけかもしれない、
そんな話にツンは引っかかるものがあった。
シラネーヨの自宅は聖杯の設置された札幌神宮の近くにあり、
その一帯となる円山はマナが一際豊富なので、サーヴァントの召喚にはもってこいの場所だ。
聖杯は魔方陣と器によって、大聖杯と小聖杯によって分かれる。
大聖杯となる魔方陣は札幌神宮の地下に敷かれており、
今は亡き父、モララーの推測では円山のマナがそこに流れ込んでいるのだという。
聖杯の異常か、召喚されたサーヴァントによる物か。
ツンには、シラネーヨの口振りからして後者であると判断した。
で、あるのならば、クマの鳴き声といった情報から、
恐らくは、理性を失ったバーサーカーが獣じみた叫びを上げたのだろうと答えを導き出す。
135
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:37:38 ID:Xm/VcOpw0
ξ゚⊿゚)ξ (たぶん、円山のほうにバーサーカーとそのマスターがいるのね。
所構わず叫び出すバーサーカーなんて、一体どれほどの狂化スキルなのかしら)
更に推測していき、ちらっとブーンのほうを見て溜息をついた。
( -ω-) Zzz
ξ∩⊿-)ξー3 (バカ……)
彼は既に眠っていたのだ。
他のマスターがいるにも関わらずのこのこと学校に現われ、こうして無防備を晒す。
自分はなめられているのだろうか、とツンは憤りそうにもなったが、
呆れてそんな気にもなれなかった。
一晩中葛藤し、眠れなかったブーンは睡魔に勝てなかっただけなのだが、
それを抜き差ししても彼には緊張感が足りなかった。
136
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:38:27 ID:Xm/VcOpw0
ツンはそんな背景は知る由もなかったのだが、
ξ゚⊿゚)ξ (私が手段を選ばないような輩だったらどうするってーのよ。
アンタ今頃、私の魔術かサーヴァントにミンチにされてるのよ?)
ξ゚ー゚)ξ (全く、抜けてんだから……)
幼馴染の情ゆえか、彼に敵愾心を抱くことはなく、
それどころか自分自身のささくれ立った気持ちが癒されているのを、
心のどこかでは感じていた。
だが―――――
ξ゚⊿゚)ξ (聖杯を取るというのなら、話は別よ)
冷たい仮面で優しさの暖かみを覆い隠し、ツンは決意を固めていた。
137
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:39:49 ID:Xm/VcOpw0
*******
('A`) 「状況を確認する」
円山のマンションの一室。
リビングに置かれたテーブルへ向かい、
ドクオ達インビジブルワンはソファに座っていた。
('A`) 「聖杯戦争の概要について、まずはおさらいしていこう」
('A`) 「聖杯戦争とはあらゆる願いを叶える聖杯という魔術礼装を奪い合う戦いだ。
聖杯は地脈から魔力を溜めこみ、7人の魔術師に令呪を与え、サーヴァントを各々に与える。
サーヴァントのクラスは7つだけだ。それぞれ――――」
<人リ゚‐゚リ セイバー
('A`) 「このクラスは剣を武器にするサーヴァントが該当し、
ステータスが最も優れ、これまでの聖杯戦争を全て終盤まで戦い抜いた実績から、
最優のサーヴァントと呼ばれている」
(<`十´> アーチャー
('A`) 「アーチャーは弓。遠距離武器を使用するサーヴァントがこれに該当する。
弓、と言いきってもいいのだが、英霊によっては大量に所持する宝具を投げつけるような奴もいる。
気をつけておけ。このクラスは単独行動スキルを持ち、魔力供給を行わずとも数日は現界していられるぞ」
138
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:41:13 ID:Xm/VcOpw0
目,`゚Д゚目 ランサー
('A`) 「ランサー」
目,`゚Д゚目 「応!」
('A`) 「……は、見ての通りだ。ジョルジュ、わかるか?」
_
( ゚∀゚) 「あぁ、ステータスが見えるぜ。変な感覚だ」
【ランサー】 目,`゚Д゚目
【マスター】穏田ドクオ
【真名】???
【性別】男性
【属性】中立・善
【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷A++ 魔力D 幸運D 宝具A++
【クラス別スキル】耐魔力A
Aランク以下の魔術をキャンセル。
【保有スキル】 直感B
戦闘の"流れ"を読むことの出来る能力。
敵の攻撃をある程度予測することも出来る。
騎乗D
騎乗の才能。馬であるならば人並み以上に乗りこなすことが出来る。
知識を与えられれば現代の乗り物を扱う事も可能。
【宝具】 ???
139
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:42:23 ID:Xm/VcOpw0
_
( ゚∀゚) 「敏捷に一際優れ、高い白兵戦能力を持つ槍使いってのが、このクラスの特徴か?」
('A`) 「その通りだ。全クラス中ランサーは最高の敏捷を持つ」
目,`゚Д゚目 「恐らくは、拙者の逸話によるものでござろう。
拙者は身のこなしで事なきを得てきたからのう。それ故の当世具足で御座る」
('A`) 「なるほどな、重装備では取り回しづらく、逆に負傷してしまうわけか」
目,`゚Д゚目 「然り!」
('A`) 「このランサーのように、敏捷が特に高い者でなければこのクラスには該当しない。
少々、ステータスが高すぎる気もするが……」
目,`゚Д゚目 「主の補正と日の本における拙者の知名度の恩恵であろう。
本来ならば、A++のような評価を受けることは無いで御座る」
('A`) 「俺もそれほど落ちぶれてはいないということか……。
次のクラスについて説明しよう」
140
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:44:31 ID:Xm/VcOpw0
(???)ライダー
('A`) 「このクラスは敏捷くらいしか目を見張る物はないものの、、
固有スキルに騎乗A+以上を持ち、強力な宝具を数多く所有する。
何らかの乗り物に乗って戦闘するのが特徴だな。耐魔力スキルも持っているぞ」
(???)キャスター
('A`) 「キャスターは魔術に特化したクラスで、魔術A以上がキャスターの条件だ。
しかし、魔術に攻撃を頼り切るキャスターは耐魔力を持つサーヴァントには滅法弱く、最弱と呼ばれる。
一見脅威には思えんが、道具作成と陣地作成のスキルを活かして戦術を組んでくることだろう」
('A`) 「相手は常に自分に有利な状況に持ちこんで戦闘をしかけてくるはずだ。
結界を用い籠城する戦術も非常に有効で、手ごわい相手に違いない。攻城戦も想定しておけ」
|/▼) アサシン
('A`) 「アサシンのサーヴァントはステータスは貧弱もいいところだ。
白兵戦においては勝ち目は無いと言っていい」
|/▼) 「随分な言われようだな」
('A`) 「だが、事実だ。お前もわかっているはずだが?」
|/▼) 「あぁ、マスターが変わりステータスが降下してしまったのでな」
141
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:45:29 ID:Xm/VcOpw0
【クラス】|/▼)
【マスター】長岡ジョルジュ
【真名】ハサン・サッバーハ
【性別】男性
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力C 耐久C 魔力E 敏捷B 幸運E 宝具B
【クラス別スキル】気配遮断A+
サーヴァントとしての気配を遮断する。完全に気配を絶てば発見することは不可能になる。
ただし、自ら攻撃を仕掛けると気配遮断のランクが低下する。
【保有スキル】投擲(短刀):B
短刀を弾丸として放つ能力。アサシンが保有する短剣は40余り。
風除けの加護:A
中東に伝わる台風避けの呪い。
142
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:46:32 ID:Xm/VcOpw0
('A`) 「確かに、低下しているが、お前には虎の子の気配遮断スキルがあるだろ。
マスターを暗殺出来ればサーヴァントもいずれ消える、まだ活躍してもらうぞ」
|/▼) 「まずは、お前を殺してみせようか?」
アサシンは冗談めかした口調で言ったのだが、
( ^Д^) ( ><)
_、_
( ,_ノ` ) 「……!」(゚、゚トソン
('、`*川 ( ^Д^)
言葉を聞いた途端、皆が一斉に懐に忍ばせていたハンドガンに手を伸ばし、
魔術を使える者は詠唱の準備を、ジョルジュは令呪を使用する構えをとった。
|/▼) 「冗談だ、貴重な令呪、無駄にはするなよマスター。
不本意な契約だが、聖杯を取れるのならば構いはしない。
俺を存分に使うが良いマスター、ドクオ」
('A`) 「そうさせて貰おう。ジョルジュ、よろしく頼むぞ」
_
(;゚∀゚) 「任せとけよ。お前とは長い、魔術も他の奴より使えるつもりだ」
さて、と仕切り直し、ドクオは最後のクラスについて解説していく。
143
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:47:32 ID:Xm/VcOpw0
以#。益゚以 バーサーカー
('A`) 「次はバーサーカーだ。こいつには制約が無い。
どんな英霊でも狂化を許諾すればバーサーカーになれる。
呪文に一節加えるだけでクラスを指定することも可能だ」
('A`) 「狂化は理性を失う代わりにステータスを強化することが出来る。
ただし、一部の宝具が使えなくなったり、理性を失って戦闘の技術に支障をきたす、
消費魔力量が膨大になるなど、デメリットも多く抱えている」
('A`) 「宝具と真名さえ割れれば、このクラスは大して恐ろしくもないんだが……。
アサシン、お前は実際に交戦したんだよな?」
|/▼) 「いかにも。だが、真名は判明せず、宝具を使う事も無かった。
常時開放型なのか、使えなくなってるのかもわからん」
('A`) 「そうか……マスターは見かけたか?」
|/▼) 「いや、残念ながら。マスターらしき人物は現われなかった」
('A`) 「もう一度、探る必要があるな……」
|/▼) 「分からないことばかりだが、奴は強い。
これだけはたしかだ。狂化などされなくても、
奴は充分に聖杯を狙える器であったのだろう」
('A`) 「強力な英霊を更に強化したか。
魔力消費が莫大な物になるはずなんだが……。
マスターは一体どんな化物なのやら」
144
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:48:55 ID:Xm/VcOpw0
(-A-) 「もう一度整理しよう。サーヴァントのクラスは7つ。
セイバー、ランサー、アーチャー、アサシン、キャスター、バーサーカー、ライダーだ」
('A`) 「サーヴァントは聖杯より魔力を得て現世に現われる。これが現界だ。
現界したサーヴァントは実体と霊体を使い分ける事が出来る。
実体化と霊体化だ。霊体は目視は不可能で、普段はこの形態をとることになるな」
('A`) 「実体化したサーヴァントには魔力の核となる器官があり、そこを潰せば魔力を保てなくなり死ぬ。
人間と同じく、心臓や脳を潰してやればいい……が、神秘を伴った武器でなければ、
奴らにダメージを与えることは出来ない。魔術による攻撃ならば通用するが……」
(-A-) 「耐魔力スキルがあるサーヴァントには通用しないと思ったほうがいい。
スキルのランクにもよるがな。正直、俺の魔術ではサーヴァントには敵わないだろう。
だが、前にも言ったようにマスターの魔力供給が無ければサーヴァントは姿を保てない」
('A`) 「よって、俺達はマスターさえ倒せばいい。マスターを失ったはぐれたサーヴァントは、
サーヴァントを失ったマスターと再契約するケースもある。その場合は少々厄介だ。
だからアサシン、ランサー。討ち漏らしはなしにしてくれよ」
目,`゚Д゚目 「御意」
|/▼) 「了解だ」
(-A-) 「さて、次は具体的な話しに移っていこう」
('A`) 「聖杯は召喚した英霊の魂を取りこみ、万能の願望機となる。
つまり他の6騎を倒す必要があるのだが、5騎のみを倒しその力を分ける事も出来る。
どの程度の願いを叶える事が出来るのかはわからんがな」
145
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:50:09 ID:Xm/VcOpw0
('A`) 「ランサーとアサシンを擁する俺達は、他のサーヴァント達を倒し聖杯を狙う。
血の気の余った奴や情報を欲した奴らが、今日から動き出すことだろう。
基本的に戦闘行為や魔術の行使を一般人に見られてはならない」
('A`) 「発見された場合は目撃者を即時に抹殺し口封じするのがルールだ。
だから真夜中に行動を開始するのがセオリーだ。
俺達がどのマスターがどのクラスを従えているか知るチャンスでもある」
('A`) 「昨夜の帰還後、使い魔を放ってもバーサーカーはもう見えなくなっていた。
しかし、奴とそのマスターが円山にまだ残っているのは確実のはずだ。
……トソン、内藤と津出の情報を教えてくれ」
(゚、゚トソン 「了解です」
トソンはテーブルの端に置いていた地図を取り出し、
拡大図を広げていくと赤枠で囲んだ場所を指で示していく。
慎み深い紅色の唇を動かした彼女は、
(゚、゚トソン 「札幌の東区に区分され、北24条方面にある……この敷地の広い家が津出の所在地です。
内藤の家はここから2丁離れて、西の方にある一軒家です。
両者とも東区役所方面のVIP高に通い、幼い頃から面識がある模様」
(゚、゚トソン 「なお、昨日。内藤はどうやら聖杯戦争に迷いを持っているような会話を津出としていました。
それを津出はなじっており、決別したかのように思われます」
('A`) 「盗聴器でも仕掛けたのか?」
146
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:51:49 ID:Xm/VcOpw0
(゚、゚トソン 「いえ、この子がやってくれたのですよ」
∧ ∧
(=^o^=) にゃあ〜
トソンが呼んだのか、窓際に立っていた猫が駆け寄ってきて、
そっと灰色の毛で覆われた身体を両手で抱いたその姿は、
ペットを抱く可憐な少女のように見えた。
('A`) 「使い魔か。お前は、この中で一番使い魔の扱いに長けていたよな」
(^ー^トソン 「ふふ、ありがとうございます」
にっこりとほほ笑むその姿は少女っぽさに拍車を掛ける。
その様に、彼女の恋人であるジョルジュは見惚れていた。
('、`*川 「アンタより先にこっちに着いてから、ちゃんと仕事してたのよ?
でも、内藤と津出の情報はあっさり掴めたものの、他のマスターについてはまだなの。
ごめんなさい。どうやら、外部の連中が今回は多いみたいね」
('、`*川 「……一応、魔術的な仕掛けが施していそうな所は見かけたんだけども」
('A`) 「どこだ?」
ペニサスは拡大図の別のページを開き、印を付けた場所を指差す。
('、`*川 「伏古の7条にある、公園のお隣のこのお屋敷。
結界が張られてる感じはするんだけど、
偽装されてるからか詳しいことわからないのよ」
147
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:52:46 ID:Xm/VcOpw0
('、`*川 「危険だと判断して、それ以上の調査は打ち切ったわ」
('A`) 「ただの進入を阻む魔術結界ではなく、トラップの類か。
それだけ分析出来れば十分だ、賢明な判断だった」
('A`) 「後は、俺が直接調べに行こう。帰還次第、作戦を改めて立案する」
目,`゚Д゚目 「応! では拙者が供を」
('A`) 「いや、ランサーはここに残ってこいつらを守ってくれ」
目;`゚Д゚目 「主っ! 何故で御座るか!? それでは主の身が危険に晒されよう」
('A`) 「俺は問題ない。俺の魔術は隠密行動に特化している。
サーヴァントに通常兵器は通用しない、いくら武装していても敵に襲われればこいつらでも一溜まりもないんだ。
だからランサー、こいつらを守ってくれ。サーヴァントに対抗できるのはサーヴァントだけだ」
目;`゚Д゚目 「しかし……」
目,`-Д-目 「否、主の命に従おう」
('A`) 「悪いな、ランサー。槍を振るう機会は今夜にでもやってくるはずだ。
それまで我慢してくれ。じゃあ――――」
('A`) 「最後に確認しておきたいんだが、監督役はどうなっている?」
( ´∀`) 「それは僕から」
148
:
◆IUSLNL8fGY
:2012/05/05(土) 16:53:57 ID:Xm/VcOpw0
( ´∀`) 「今回の聖杯戦争の監督役は、杉浦ロマネスク。
杉浦はここのロマネ札幌教会の神父モナ。
10年前に父親が死去して引き継いで以来、一人で切り盛りしてるモナ」
( ´∀`) 「それで聖杯戦争が札幌で行われるにあたって、聖堂協会に所属している彼は、
能力を買われてる事もあって今回の監督役に任命された」
('A`) 「あぁ、よく知ってる。神父の動向は?」
( ´∀`) 「聖杯戦争が始まる前となんら変わりないモナ。
内藤が昨日、教会に訪れていた。教会内にしかけた盗聴器から会話を聞いた限り、
どうやら参戦するのを渋っていたらしい。それよりも耳寄りな情報があるモナ」
('A`) 「なんだ?」
( ´∀`) 「ドクオが入手した情報通り、刃児耶ギコが参戦していたことが判明したモナ。
奴は神父と会話した後、消えたモナ。追跡は不可能だった。
それよりも会話の中でギコは自分のサーヴァントが"セイバー"であることを明かしたモナ」
('∀`) 「そうか……来たか、"便利屋"」
モナーの報せを聞いたドクオの頬は自然と綻び、声からは薄っすらと喜びが感じられる。
部下達は敵の名を聞き微笑むボスに、言い知れぬ恐怖を覚えた。
('A`) 「それは良いことを聞いた。セイバーのマスターがもう判明するなんて。
運の良いことにこちらにはアサシンが居る。暗殺の脅威はもう無い。
じゃあ、更なる情報を集めに伏古にある屋敷へ行ってくる」
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