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('A`)シャーロック・ドクオのようです

153x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:45:14 ID:9zW2AHTQ0

沢山の客の目の前で、殺人を起こすとは考えにくい。
犯人はきっと、世間を騒がせる目的の愉快犯ではない。
そんな大胆な手口で殺すというのは、想像しがたい。
警戒すべきは、暗殺だ。

つまりあの席にいる以上、彼は安全なのだ。

彼に接触しようとしてくる人間。彼を連れ出そうとする人間。
そういう奴らを、あの場で見張っていなくてはならない。

154x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:46:09 ID:9zW2AHTQ0

しかし、人影が見えたという部屋にも行ってみたい。
現場はいつでも、色々なことを教えてくれる。

緊急事態だ。
しぃかワカンナイデスに、席を任せるしかない。

通信機で、あの政治家にメールを送る。

『セキヲゼッタイニウゴカナイデクダサイ。ダイリガコウタイシマス』

すぐに『リョウカイ』と、シンプルな返事が来る。

155x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:47:10 ID:9zW2AHTQ0

('A`)「ちょっとお待ちを」

(大男)「はいい!!!!!!」

STAFF ROOMを後にし、しぃのいる席に向かう。

(;'A`)「ん?」

そこにはしぃの姿が、ない。

156x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:48:05 ID:9zW2AHTQ0

 = 女泥棒 =

157x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:48:58 ID:9zW2AHTQ0

(;゚ー゚)(……雨が強くなってきた)

車掌の男について、列車の最後尾のドアからデッキへと出た。

しばらく経って降り出した雨は、激しさを増し、大雨と呼べる勢いだ。
一応屋根はあるが、これだけの雨だ。水飛沫が飛んでくる。

しぃは手すりに肘をかけ、頬を抜けていく湿気を含んだ、
冷たい外気を感じている。

158x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:49:49 ID:9zW2AHTQ0

ピシャ。ゴロゴロゴロゴロ。

(;゚ー゚)「……きゃ!」

突然の雷鳴にギクリとする。

台風はもう上陸しかけているのだろうか。
予報よりもはるかに早い到着だ。

線路の脇に生える常緑樹の林が、強風に揺られて一斉に動いている。

159x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:50:33 ID:9zW2AHTQ0

このデッキは、本来使わないようで、相当くたびれていた。
その割にはというべきか、それ故というべきか、身を隠すには最高の場所だ。

列車の最後尾の扉のガラス窓から、死角に入ってしまえば中から姿が見えない。
今日のような日のために、ご丁寧に雨避けのビニール屋根までついている。

「いいか。また誰か出てきたら、階段から上に、だぞ」

「分かった」

「了解」

(*゚ー゚)「はい」

リーダー格の帽子の男が指示を出し、しぃも含めた残りは頷く。

160x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:51:31 ID:9zW2AHTQ0

車掌に連れていかれ、出てきたこの場所で待っていたのは、三人の男。

小旅行帰りの旅好きという風貌だった。
大きなリュックサックを背負い、ウエストポーチをつけている。
中には何が入っているのだろうか。

彼らは、状況に上手く溶け込んでいる。
こういう任務に慣れているのか、連帯感もある。

161x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:52:15 ID:9zW2AHTQ0

「で、そいつがあの泥棒か?」

「はっはっは。そうだ」

引き笑いをしながら、車掌の男が言う。耳に障る高い声だ。

「結局、帰ってきたのか」

小柄で痩せた男が、言い放つ。
人を嘲るような、嫌な目をしている。

162x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:53:14 ID:9zW2AHTQ0

(*゚ー゚)「……悪い?」

その男の目を見ていると、気分が悪くなる。
どうしようと自分の勝手ではないか、と本当なら叫んでやりたい。

「どうやって連れてきた?今日のことを伝えたのか?」

「はっはっは。偶然だよ。偶然」

再び引き笑いをした後、車掌は答える。

「あんたも器用だな」

163x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:54:08 ID:9zW2AHTQ0

(*゚ー゚)「……」

ドクオから返信が来ていた。

『イマドコニイル』

ちらりとポケットの隙間から、その文字が見えた。
ドクオと繋がりがあったことがバレたら、不審に思うだろう。
そのせいで居辛くなるのは、ごめんだ。

アタシのやるべきことは、ここにあるんだ。
そう言い聞かせる。

164x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:55:11 ID:9zW2AHTQ0

再び閃光が走る。

本来なら、空がオレンジ色に染まる時間帯なのだろうが、
今日はなんというか、薄黒い。

私を除く四人は、列車の上へと続く階段の手前で、何やら話していた。
雨音にかき消されて、断片的に言葉が飛び込んでくる程度にしか聞こえない。

ふと、組織に入った時のことを思い出す。
あれもこんな雨の日だった。

165x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:56:08 ID:9zW2AHTQ0

(*゚ー゚)「金庫のお金、頂きました♪」

確かあの日は、ビジネスホテルの一室で泊まっていた。
隣の部屋に泊まっていた資産家の金を、外出中に頂戴したのだ。

思いのほか少ない収入にがっかりしながら、ホテルのロビーを抜ける。
自動ドアをくぐれば、外は土砂降りだった。

166x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:57:05 ID:9zW2AHTQ0

爪'ー`)y-「お前がしぃだな」

右手にある喫煙所から、声がした。

声の方向を見れば、長身の男が煙草をふかしていた。

こちらを見もせずにそう言ったので、
彼の発した言葉なのか、それとも他の誰かのものなのか、戸惑った。

いや、でも彼はハッキリとあの場所から、私の名前を呼んだのだ。

167x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:58:05 ID:9zW2AHTQ0

(;゚ー゚)「……アタシを知ってる……の?」

爪'ー`)y-「世の中は、クズみたいな犯罪者で溢れている。
     醜いと思わないか?あいつらは、己の感情以外の掟を持たない。
     知恵も、自制も、想像力も欠落している」

(;゚ー゚)「……何を言っているの?」

爪'ー`)y-「その中で、お前の仕事は賞賛に値する」

168x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:58:55 ID:9zW2AHTQ0

仕事を終えた泥棒が、モタモタしているのはまずい。
こんな所で立ち止まっている時間はない。

なのに、私は立ち止まってしまう。

一体どういう経路で、私のことを知ったのだろうか?
血眼の警察ならともかく、こんな小さなホテルの入り口で、
退屈そうに煙草をふかしている男に、泥棒であることを知られるはずがない。

爪'ー`)y-「こんな所で長居したらまずいんだろう?ついて来い」

(;゚ー゚)「え……!?」

169x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 19:59:45 ID:9zW2AHTQ0

雨の中、傘も差さずに彼は進んでいく。
私の正体を知っている理由が気になって、彼の背を追った。

連れて来られたのは、近くの小学校の体育館の屋根の下。
被っていた帽子を取ると、雨粒流れるその顔は、とても綺麗だった。

女性と見間違うような、武骨さのない凛々しい顔。

爪'ー`)y-「……よく来てくれた」

170x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:00:37 ID:9zW2AHTQ0

美しいのだが、眼が奇妙に虚ろなのだ。
虚無というか、孤独というか、悲観というか。

あの眼は、向き合う私を通り越して、
この世を嘆き、見下し、侮辱していた。

そういう雰囲気を発していた。

171x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:01:31 ID:9zW2AHTQ0

(;゚ー゚)「……アナタは一体誰なの?」

爪'ー`)y-「……はははは。分からない」

石段に座って崩れ落ちながら、気怠そうに笑う。

(;゚ー゚)「……」

爪'ー`)y-「社会は俺に、名を与えなかった。
     強いて言えば、そこらを歩く野良犬のようなものだ」

(;゚ー゚)「……それで、アタシに何の用なの?」

172x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:02:14 ID:9zW2AHTQ0

彼はある提案を私にした。

なんとかという政治家がいて、彼が私の能力を買っていて、
彼のために働いてほしいということだった。
思えば、あの政治家の名前は、数あるモララーの名の一つだった。

社会的安全は、彼の力によって保障するという。
アウトローの世界を生きる日陰者には、こんなに嬉しいことはあるだろうか。

尚且つ、収入は相当な額を約束された。

173x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:03:14 ID:9zW2AHTQ0

一体その男は誰なのだ、と興味深かった。
私を女として、恋人として買うというのなら、馬鹿馬鹿しいと蹴るつもりだった。

しかし私の仕事は、ただの窃盗。
そんなものは朝飯前だ。

怖かった。
でも飛びつこう、と踏んだ。

私はある理由で、この時大金が必要だったのだ。

174x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:04:23 ID:9zW2AHTQ0

 = 平成のジェームズ・ボンド =

175x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:05:36 ID:9zW2AHTQ0

ゴロゴロゴロ。

(;><)「ひっ!」

静寂を破った雷鳴が、再び眠気に襲われていたワカンナイデスを起こす。

睡眠不足の名探偵助手を起こすとは、なんたる雷だろうか。
ドン引きだ。マジ空気嫁だ。

176x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:06:19 ID:9zW2AHTQ0

(;><)「ふぅーーー」

げっそりしている。
げっそりしている、という言葉がこれ以上当てはまる光景は思いつかないだろう。

しかし、今のでどういう訳か、眠気が吹き飛んでしまった。

(;><)「ヒマなんですぅーーー」

眠気の次には、退屈が襲ってくる。

177x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:07:16 ID:9zW2AHTQ0

退屈が好きという人種がいて、そういう人間だったら退屈は歓迎するのだろうが、
生憎ワカンナイデスは、生来退屈は苦手だ。

いや、仕事の合間に突然入ってくる休憩のときとかの退屈とかは、
ものすっごい大好きなのだが、とにかく退屈はキライなのだ。

いや、好きなのかもしれない。分からない。

とにかくワカンナイデスにとって退屈とは、十代の恋みたいなものなのだ。
好きなのか、嫌いなのか、ワカンナイデスには分かんない。

178x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:08:26 ID:9zW2AHTQ0

(;><)「あ!暇なときはメールなんです!」

その手があったのだ。
しぃちゃんにでもメールしようか、と。

さっきまで地獄の監視員に思えた通信機は、今や終生の友に見えてくる。
孤独な心を慰めてくれる、ベストフレンドに敬服する。

通信機は手を伸ばすと同時に、メールを受け取った。
送り主はドクオだ。

『チョットウシロキテクレ』

179x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:09:13 ID:9zW2AHTQ0

なんだ、しぃちゃんじゃないんです、とがっかりしながら振り返ると、
消火器の置かれた通路の横に、手招きするドクオの姿が。

退屈なワカンナイデスにとって、ドクオの呼び出しでも有難かった。
刺激を求め、トントンと廊下を歩いていく。

そして手で作った銃を構える。サングラスはばっちりだ。

ここで必殺、壁張り付きである。
ジェームズ・ボンドならターゲットに近づくとき、姿を悟られてはならない。
そんなの常識だ。

180x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:10:04 ID:9zW2AHTQ0

(><)「参上なんです!!!!!!」

ズバーンと飛び出して、ドクオに手の銃を向ける。

(;'A`)「おい」

(><)「ドクオさんノリ悪いんですぅーー」

(;'A`)「……やばいんだ。聞いてくれ」

(><)「ドクオさん、直接話さないんじゃなかったんです?」

181x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:10:52 ID:9zW2AHTQ0

('A`)「緊急事態なんだ、ワカンナイデス。頼みがある」

(;><)「うm?」

('A`)「俺と席代わってくんね?」

(><)「なんだそんなことかなんです!おkなんです!
    ドクオさんも退屈しちゃったなら、そう言えばいいのにーなんです」

182x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:11:59 ID:9zW2AHTQ0

(;'A`)「ちげえよ。あと、しぃ知ってるか?」

(;><)「そう言えば、さっきからずっと姿がないんです……」

(;'A`)「ずっとだって……?これはおかしいな……。
    あと、絶対動いちゃ駄目だ。あと前に依頼人がいるから、
    誰か彼に話しかけたりするような、怪しい奴が現れたらすぐメールしてくれ!」

(><)「一体何があったんです……!?」

('A`)「後で教える。今は時間がないんだ」

183x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:12:43 ID:9zW2AHTQ0

(;><)「……」

(;'A`)「……」

(><)「もー。勿体ぶっちゃってぇー、なんです。後でちゃんと教えろなんですぅー。
    とにかく、この平成のジェームズ・ボンドに任せておけ、なんです!!」

そう言って、無いくせに力こぶを作ってみせるワカンナイデス。

('∀`)「……ああ、済まない。じゃーな」

184x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:13:56 ID:9zW2AHTQ0

席に置いたままの荷物を、新しい席に移動しようと、ワカンナイデスは戻っていく。
窓ガラスには、バケツを反したような雨が、音を立てて激しく打ち付けている。

すると、例の憎きリア充どもが、乗組員に絡んでいるではないか。

(男)「これガチ邪魔なんですけどー」

(女)「電波最悪なえぽよー。ケータイ小説読めない。まぢムカつくぅー」

「申し訳ございません、お客様。前の人の忘れ物でしょうか……。
 今朝はこんなの無かったんですけどねえ……」

185x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:14:48 ID:9zW2AHTQ0

いやこの場合、気軽にコミュニケーションを取る、という意味で、
『絡めし(力こぶ)』とか、『バイトの先輩と鬼絡み(上矢印)』、
みたいに使うあれではなくて、本当に絡んでいる。

(;><)「まったくけしからんなんです!」

ワカンナイデスは、常識がないやつは許せない。
何故なら、ワカンナイデスは大人だからだ。

好感がもてる、常識ある、大人なワカンナイデスにとって、
列車の人にクレームつけたりするなんて、そんなのだめだ。

186x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:15:31 ID:9zW2AHTQ0

怒りに煮えくり返る、五臓六腑を労わりながらも、様子を見にいく。

黒い箱のようなものが、奴らの座席の傍に置いてあるようだった。
あれは邪魔そうだ。前の席の下に足が伸ばせないではないか。

(><)「むっはhっはhっはっはhああああああああああああ!!!!
    ザマァ見やがれなんです!!!!!!!!!!!!!!!!1
    ブゥぅぅヴわっはhhっはははははあははははっはああ1!!!!!」

ワカンナイデスの馬鹿笑いで、沢山客が振り返る。
近くで寝てた老人も、腰を浮かせて飛び起きた。

187x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:16:19 ID:9zW2AHTQ0

(><)「ふっはhっはhっはっははははははあhああああああああ!!
    ぎゃはhっはっははっはははhhっはhはぎゃああああ!!!」

愉快愉快。ワカンナイデスは超愉快である。

やっぱり、神は鉄槌を下したのである。
因果応報。自業自得である。

188x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:17:45 ID:9zW2AHTQ0

乗組員は腰を下ろして、例の忘れ物をどかそうとしていた。
しかし突然、何やら顔を真っ青にして後ずさりをした。
彼の充血した二つの眼は見開かれ、唇は震えていた。

「しょ、少々お待ちください」

(女)「マヂ、意味不!!」

(男)「訳、ワカメし!!」

リア充どもは、置き去りにされる。

189x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:18:43 ID:9zW2AHTQ0

(;><)ヤレヤレ

理解不明、意味不能な言葉を連発する彼らには、
天才名探偵助手ワカンナイデスもやれやれである。

数分後、乗組員は仲間たちを連れて戻ってきた。
そして皆で、彼らの席の周りに集まってヒソヒソやっている。

(;><)「うm?」

ここで必殺、地獄耳である。
ジェームズボンドなら、ターゲットが内緒話していたら、聞き耳を立てる。
そんなの常識だ。

190x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:19:56 ID:9zW2AHTQ0

(><)「ふむふむ」

(><)「ふむふむ」

(><)「…………」

(;><)「…………ん?」

191x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:20:38 ID:9zW2AHTQ0

ワカンナイデスは、冷静になって考えた。
冷静に考えるのは、ワカンナイデスの欠落した能力の一つであったが、
いつにも増して張り切って、冷静に考えた。

張り切れば張り切るほど、冷静に考えられなくなった。
それは当然だ。ワカンナイデスはバカなのだ。

耳を疑う。

『バクダン』という単語が聞こえるのだ。それも何回も。

192x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:21:45 ID:9zW2AHTQ0

(;><)(……ということは)

あの黒い箱みたいなものは、爆弾だったのだ。
誰かがリア充どもの席に、爆弾を置いたのだ。

(;><)「………………」

恐怖で額を汗が流れると同時に、ワカンナイデスは何故かニヤニヤしてしまう。

193x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:22:46 ID:9zW2AHTQ0

色んなことが分かんないワカンナイデスでも、
リア充を爆発したい気持ちは、すんごい分かる。

でもいくらワカンナイデスでも、
人を殺してはいけないことくらい、ばっちり分かる。

(;><)「……………………」

194x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:23:27 ID:9zW2AHTQ0

つまりどういうことかというと、マジでヤバいのだ。

変態サディスト探偵に任された任務をすっぽかして、減給されるというのもヤバい。
たしかにヤバいが、爆発して、木端微塵に吹き飛んでしまうのもヤバい。

いやそっちのがヤバい。マジでヤバい。

(;><)(……ドクオさんに知らせねばあああああああ!!!!!!!!!!!)

『イマスグキテホシインデス』

『リアジュウガバクハツスルンデス』

『バクダンナンデス』

195x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/19(水) 20:24:48 ID:9zW2AHTQ0







今日はここまでです!
明日は最後まで投下します!

196名も無きAAのようです:2011/10/19(水) 23:45:29 ID:HHAzIea2O
乙!
明日楽しみにしてる

197まいど:2011/10/20(木) 14:49:42 ID:6tExziY20
エロすぎる
http://p.tl/ADqF

198名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 15:29:10 ID:UbAOyOrk0

 = 名探偵 =

199名も無きAAのようです:2011/10/20(木) 15:29:55 ID:UbAOyOrk0

「ぎゃ!!変態!!!」

(男)「しゅ、すいません!!お客様!!今のは悪気があったわけでは!!!」

「悪気以外、何があってここに入ってくるのよ!!!」

(男)「ここに侵入することに、大切な目的があったと言いますかぁ!!!」

「どうせ覗きだろ!!!全うな理由みたいに言うな!!!
 いいから、早く出てけっつーの!!!!!!!!!!」

(男)「うわあああああああああああああああ!!!!!!すいませんー!!」

200x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:30:38 ID:UbAOyOrk0

ドクオ率いる調査隊一行は、女子トイレを調べていた。

シャワールームを調べていたとき、名探偵は迷わなかった。
ドクオは誰かいるかもしれないのに、バンバン扉を開けて調べていたのだ。

大男も真似してみたくなってしまった。
ズバッと大胆にやってみたくなってしまったのだ。

大胆さは時に裏目に出ることを学んで、大男はまたひとつ大人の階段を上った。

(男)「……うぅ」

201x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:31:19 ID:UbAOyOrk0

女性が出たのを見計らって、ドクオが『清掃中』というプラカードを、ドアに下げた。
一体、どこから持ってきたのだろうか。そして、大股でずかずかと侵入していく。
手短に個室を全てあけ、三十秒もしないうちに、ドクオは戻ってくる。

('A`)「ここはもういいです」

(男)「え、もうですか!?」

('A`)「はい。次は電力室を見せてもらえますか?」

(男)「はい!」

202x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:32:01 ID:UbAOyOrk0

ドクオの胸は高揚していた。

刑事の時には様々な犯罪者を相手に、自らの頭を駆使し戦っていた。

当時はどちらかといえば、上の奴らに自分の腕を認めさせてやる、
というつもりで事件を解決していた。

(男)「ボイラー室も見てもらえたら嬉しいですー(汗)」

('A`)「あとです。前方から順に見ていきますから。
   前から順々に、隈なく車両を調べていけば、犯人は追いつめられます」

(男)「なるほどー!」

203x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:32:44 ID:UbAOyOrk0

しかし今は、あの頃と少しばかり動機が違った。

ノスタルジーだ。

あの頃の、情熱に身を任せて一点突破していく感覚。
表現しようのない懐かしさが、五感へと滲み出てくるのだ。

かつての自分は、こういう充実感や、心地よい疲労感を、
感謝もせず毎日のように享受していたのだ、と懐かしむ。

(;'∀`)(いや、こういうのは時々くらいが丁度良いのか……)

204x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:33:28 ID:UbAOyOrk0

段差を越えた先に、電力室のドアが立っている。

('A`)「鍵は?」

(男)「これです!!」

('A`)「借ります」

205x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:34:13 ID:UbAOyOrk0

刑事の仕事の多くは、追想である。
『現在』という事後の世界を起点として、推測し、過去へと遡っていく。
残された手掛かりという、緋色の糸を綱に、時間の河を逆行していくのだ。

でも今は違う。

リアルタイムで、事件に寄り添っている。

躍るべき舞台は、現在。
切り開くは、未来なのだ。

とにかくあの頃も、今も変わらない気持ちは一つ。

『絶対に捕まえてやる』

206x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:34:56 ID:UbAOyOrk0

後ろで乗務員たちが話している。

「……この人が名探偵か」

「確かに、そんな空気があるな」

「でもなんか、やたら暗そうな顔してるぞ」

「集中してるんじゃないのか。とにかくついてこう」

207x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:35:39 ID:UbAOyOrk0

ドクオは開かれた重いドアから、埃臭い電力室へと入ろうとする。
丁度そのタイミングで、固体通信機がメールの受信を告げた。

('A`)「……ん?」

「うわぁ!止まった!」

「ひでぇ!いきなりだ!」

突飛なドクオの行動に、乗組員は漫才じみたリアクションを取る。
ドクオも、全く聞いてない。ひどい状況だ。

208x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:36:33 ID:UbAOyOrk0

『スグニキテホシインデス』

(;'A`)(……何が起きた?)

『リアジュウガバクハツスルンデス』

『バクダンナンデス』

波が押し寄せるように、新たな二件のメールが受信された。

『バクハツ』『バクダン』という言葉が、脳内に木霊する。

同時に流れ込んだのは、線路を走る寝台列車が、
どこかのお偉い誰かさんの陰謀によって、跡形もなく爆破される。
何番煎じか問いたくなるような、ハリウッド映画のイメージだ。

209x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:37:15 ID:UbAOyOrk0

(;'A`)「戻りましょう」

(男)「……へ?」

名探偵は焦りの空気を纏わせて、来た道を早足で引き返す。

後ろの乗務員が持つトランシーバーから、汚い音が聞こえた。
『緊急事態。緊急事態。全員すぐに、第一車両に集合せよ』

その音を背中で受けて、ドクオは足を更に速める。

(;'A`)「どうした、ワカンナイデス」

(;><)「ドクオさん!!これは、マジでヤバいんです……!!」

210x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:38:00 ID:UbAOyOrk0

第一車両へと到着すれば、探偵助手が青ざめている。
そして乗務員たちが、集まって輪を作っている。

超能力者ではなくても、彼らの顔から、ただごとでないことなど汲み取れる。
ドクオは乗組員たちの間をかき分け、人だかりの中心部へ向かう。

右脳にこべりついた、『バクダン』の四文字が再び浮かぶ。

ドクオは信じ難いというより、信じたくなかった。
現場で最も倦厭する、感情が頭を支配していたのだ。
客観性や整合性こそが自分の領域ではないか、と強く噛み締める。

211x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:38:44 ID:UbAOyOrk0

「ちょっと、お客さん!」

「あ……」

「あの人は、例の探偵だぞ!」

何が起きているのか、と何人かの客が心配そうに見ている。

乗組員が客席で集まったら、不安に思われるじゃないか。
パニックこそ、緊急事態において最も避けるべき事態だというのに。

212x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:39:27 ID:UbAOyOrk0

('A`)「……」

座席の下に黒い箱。慎重に触る。
上部がスライドして開く。

配線が絡まっていた。
はんだは、数箇所下手なものがある。
素人があとから付け足したのだろうか。

デジタル画面に、数字が列を成して並んでいる。

時限爆弾だ。

213x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:40:12 ID:UbAOyOrk0

(;'A`)「……」

『00:01:20:45』

赤い光を放つ数字が、音も立てずに動いている。
もう『45』は、『37』になってしまっている。

なんとも間抜けだ。
爆弾丸出しじゃないか。

214x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:40:56 ID:UbAOyOrk0

紙がある。

『取り外すと爆発します』

下手な字だ。
馬鹿にしているのか、と聞きたくなる。

(;'A`)(……)

(;><)「ドクオさん!!」

215x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:42:24 ID:UbAOyOrk0

電流の供給が止まると、点火されるタイプだ。

特殊なバッテリーの型。同じものを探して交換できない。
寧ろ、最初から想定されていないのだ。

だとしたら配線をどうにかして、解除できないものだろう。

電波の受信機のようなものがある。
外部からの信号によって操作するのだ。

216x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:43:07 ID:UbAOyOrk0

今にもオーバーヒートしようとしている脳を、限界まで動かそうとする。

どうすればいい。
どうすれば、爆発を止められる。

「……ど、どうでしょう!?」

集まっていた乗組員の一人が、必死の形相で駆け込んでくる。

('A`)「……列車を今すぐ止められますか!?」

217x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:43:51 ID:UbAOyOrk0

「……ですが」

('A`)「……止めてください」

「……どうにか、爆発を止めることはできないのですか!?」

('A`)「一度作動したら、弄っても解除できないタイプです。
   爆発を早めることはできても、遅くすることはできない」

「……そんな」

(;'A`)「……いいから早く運転手に!」

ドクオは、思わず声を張り上げてしまう。

218x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:44:33 ID:UbAOyOrk0

「はいっ!!!!!!」

(;><)「……ドクオさん!」

(;'A`)「……」

219x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:45:15 ID:UbAOyOrk0

列車を止めるしかないのだ。
爆発は恐らく、逃れられない。

だが列車を止めて避難できれば、生き残ることはできる。
苦し紛れだが、判断の揺らぎで手遅れになってはならない。

それ以外に道はないのだ。

220x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:45:57 ID:UbAOyOrk0

持っていた通信機に、メールが来ていることが分かる。

『レッシャヲトメタラバクハスル』

(;'A`)「……」

なんてことだ。
今のを聞いてんのか。

(;'∀`)「……ははは」

笑えてくる。

221x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:47:28 ID:UbAOyOrk0

 = 女泥棒 =

222x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:48:10 ID:UbAOyOrk0

(*゚ー゚)「きゃ」

しぃの後ろ髪が、突風に巻き上げられる。
直そうとそれを掴むと、水滴が手首を伝うのが分かった。

辺りはもう、暗闇に包まれている。
列車の後部に取り付けられた強いライトが、
降りしきる雨を照らして、光の筋を生み出している。

「風が強いな」

車掌の男が言う。
その声さえも、即座に風が包み込み、流れてゆく。

223x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:48:50 ID:UbAOyOrk0

(*゚ー゚)「そうだね……」

「もうすぐだぞ。計画は把握してるんだろうな」

小型テレビの画面を覗き込みながら、リーダー格の男が言った。

(*゚ー゚)「当たり前だよ。でも爆弾が誰かに気付かれるっていうのは、
    想定してなかったの?あんな場所に配置して」

「あの席の周りは、もともと空席のはずだったんだ。
 誰かが今朝になって、飛び入りで乗ってきたに違いない。
 まぁ表面をカモフラージュしてあるから、バレる可能性は低い」

224x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:49:31 ID:UbAOyOrk0

(*゚ー゚)「……」

もし飛び入りで乗った列車で、偶然爆弾を見つけてしまい、
テロリストの計画を狂わせたというならば、どんな映画の主人公だろうか。

顔が見てみたい。

「仮にバレたとしても、あの爆弾は取り外すことが出来ないんだ」

225x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:50:16 ID:UbAOyOrk0

男の説明によると、爆弾の爆発条件は三つ。

一定時間が経過すること。
配線を切ってしまうこと。
大きな何かの衝撃を与えること。

電流が配線を伝って流れている間は、火薬が点火されない。
逆に言えば、電気を常に供給させていなくては爆発するのだ。

一定時間の後に、電池が切れてしまったり、
電流が流れる配線を切ってしまったり、
大きな衝撃で、電池が外れたりすると、爆発する。

226x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:51:00 ID:UbAOyOrk0

(;゚ー゚)「はぁ?じゃあ、誰かの蹴った衝撃で爆発したらどうしてくれるの!?」

「爆発物対応の乗務員が、そんなことも分からないとは思えない。
 構造を見れば簡単に分かるさ。それに、あれは蹴ったくらいで爆発しないさ。
 落としたり、無理やり接着をはがそうとすれば、爆発するけどな」

(*゚ー゚)「……なるほどね。爆弾はこっちで解除できるんでしょ?」

「お前が知る必要あんのかよ。さっきから聞いてりゃ、途中参加のくせに偉そうにするなよ」

痩せた小柄の男が、しぃに噛み付く。

227x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:51:52 ID:UbAOyOrk0

(*゚ー゚)「アナタたちが大丈夫か、心配してるんだけど。
    計画は絶対失敗できないんだよ」

カッと頭に血が上った彼は、しぃに身を乗り出すが、
『よせ』というように、リーダー格が手で制止する。

何が面白いのか、車掌の男が高らかな笑いを上げる。

「途中のシベリア駅まで、あと20分ほどだ。俺たちはそこで降りる」

228x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:52:32 ID:UbAOyOrk0

(*゚ー゚)「予約番号から、誰が消えたのかわかるんじゃないの?」

「今頃、駅が管理する予約のデータは改ざんされている。俺たちの番号は消えている。
 気づくものがいたとしても、もう少し立てば、皆爆弾で吹き飛んで、闇の中だ」

なるほど利口な男だ、としぃは思う。

一大任務の遂行を任されているだけあって、頭が良い。
先を見据え、そのための手段を的確に揃えている。
きっと、駅にも仲間を忍ばせているのだろう。

229x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:53:15 ID:UbAOyOrk0

この急行寝台列車は、途中にあるシベリア駅で一度だけ停車する。
私たちは、そこで降りることになっている。

その後、目的地であるラウンジ市へ着く前に、爆弾の時限が来て爆発するという計画だ。

「にしても、この台風で遅延しなくて、本当に良かったな」

雲に覆われた闇夜を見上げながら、車掌が呟く。

「確かにな。だとしても支障は生まれない」

230x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:53:57 ID:UbAOyOrk0

『ドコニイル。モドッテコイ』というメッセージが、先ほど通信機に受信された。

今頃、彼らも心配しているのだろう。
爆弾魔たちと共にいることに勘付いて、疑心暗鬼だろうか。

お気の毒に。
だけどアタシは戻れない。

(*゚ー゚)「……」

231x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:54:41 ID:UbAOyOrk0

「それにしても、あんたのつけてくれたカメラが役に立ってるよ」

風で帽子を飛ばされないよう押さえながら、リーダー格が車掌にそう言った。

「はっはっは。なんてこたぁねぇよ」

車掌は、唾を飛ばしながら笑い、荒々しい口調で答える。

232x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:55:25 ID:UbAOyOrk0

リーダー格が先ほどからずっと目をやっている、小型テレビ。
あれは車内に設置したカメラの映像を映しているのだ。

乗組員が近づいてきたりすれば、すぐさま列車の屋根の上へと逃げられるし、
どの部屋で、誰が何をしているか確認できる。
つまりこちらは、車内でスムーズに行動するための術を持っているのだ。

『おい、マズイぞ』

突然、床に置きっ放しの無線機から、錆びたような音声が入る。

233x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:56:21 ID:UbAOyOrk0

三人組の一人、小太りの男の声だ。
彼は先ほど、車内の様子を伺いに扉の中に入っていった。

「どうした」

リーダー格は、ぶっきらぼうに無線へ返答する。

『爆弾のことがバレてる』

234x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:57:01 ID:UbAOyOrk0

「え!?」

「本当か!?」

(;゚ー゚)「あらら。やっちゃったね」

四人は皆、一斉に声を上げた。

ここで始めて、計画が予定から反れてしまうこととなった。
しぃが参加するという、突然の事態を除けばだが。

235x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:57:43 ID:UbAOyOrk0

『シャーロック・ドクオという男が乗っているらしい!
 あの有名な探偵だ!今、そいつが爆弾をいじってるようだ!』

「あの探偵か!?」

「列車を止めて避難させられたら、計画が全て崩れてしまうぞ!」

小柄と車掌が、声を合わせて慌てていたが、
リーダー格だけ、しぃの顔を訝しげに見つめた。

236x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:58:27 ID:UbAOyOrk0

「『女泥棒は組織をやめて、シャーロック・ドクオの事務所で働いている』」

(;゚ー゚)「……」

「……そう聞いた。お前はあの男のサイドなのか?
 どうしてここに、あの名探偵が乗り合わせているんだ。
 お前は今日のことを知っていて、連れてきたのか?」

(;゚ー゚)「違う!アタシは確かに、彼のところで働いてた!
    でもアナタたちを裏切ってるわけじゃない!
    そもそもアタシは、今日の計画のことなんて知らなかったんだよ!」

237x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:59:10 ID:UbAOyOrk0

「あのゲーム機のようなものは、連絡手段なのか?」

しぃは、しまった、と頭の中で呟いた。

この男は気づいていたのだ。
ここまで敏感だとは、思わなかった。

(;゚ー゚)「……」

「貸せ」

(;゚ー゚)「……別に見ても何も困らないけど?」

238x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 15:59:54 ID:UbAOyOrk0

近くにいた車掌が、リーダーの指示と同時に、しぃに手を差し伸べる。
仕方なく、彼に個体通信機を預ける。

車掌に渡された通信機を、リーダー格は舐めるように観察しだす。

「『ドコニイル。モドッテコイ』だと。お前はどっちの味方なんだ?」

(;゚ー゚)「アタシは組織の人間だよ」

「止めたら爆発する、と送った。これでターゲットを逃がすことはない」

239x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:00:37 ID:UbAOyOrk0

身の潔白の証明になりそうなものを探す。
しかし、しぃの頭の中では、彼のとった判断への批判が渦を巻いていた。

止めたら爆発する、などと言ってどうするのだ。
私たちが乗っている以上、列車は爆発できないのだ。

何処かで降りなくてはならない。

240x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:01:22 ID:UbAOyOrk0

「リーダー!」

小柄な男は、リーダー格に不安そうな顔を向けた。

大先輩がドクオ君に、あんな目を向けていたことがあった。

彼らは、共に長く仕事をしているのかもしれない。
あの小柄な男も、リーダーの判断力を信頼しているかもしれない。

だというのにそのリーダー格は、ひたすら握った腕時計を見ている。

今更、時刻を把握しても、何も変わらないじゃないか。
来るときは、来るんだ。

241x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:02:06 ID:UbAOyOrk0

(;゚ー゚)「……」

嵐の中、列車は断崖のすぐ側を走っている。

心なしか、数分前よりも加速している気がする。
レールの枕木を見送る速度が、少しばかり上がったように思えるのだ。

(;゚ー゚)「……あっ!」

車体が揺れる。

242x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:02:46 ID:UbAOyOrk0

前言撤回すべきかもしれない。
少しばかりか、確実に加速している。

これは、どう考えてもおかしい。
手すりに捕まっているのがやっとだ。

何処まで加速するんだ。
もう200km/hぐらいはあるだろうか。

こんな場所から、飛び降りられるはずがない。

243x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:03:28 ID:UbAOyOrk0

再びの無線の音で、しぃはリーダー格を見る。

『リーダー!』

「どうした!?」

『シベリア駅を通過するらしい!』

「……だろうな」

244x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:04:31 ID:UbAOyOrk0

『今やもう、列車の指揮を全てあの男がとっているらしい!
 あいつは列車を加速するよう言ったみたいだ』

「そりゃあもう、揺れで分かるぜ」

車掌の男が、おどけながら無線の声に反応した。
そんなことを言っている状況ではない。

リーダー格が、小型テレビの画面の中に誰かを見つけたのか、

「すぐに戻ってこい!奴ら隣まで来てるぞ!」

と、声を張り上げる。

245x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:05:16 ID:UbAOyOrk0

『了解』

無線が切れてから間髪入れず、車体がまた大きく揺れる。

(;゚ー゚)「……ああ、また加速してる!」

246x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:06:05 ID:UbAOyOrk0

通過。

つまり、完全に降りるタイミングを奪われたのだ。

待っているのは爆弾。
この四人が仕掛けた爆弾との心中。

『人のために穴を掘るものは、自らがその穴に落ちる』どころか、
顔も名前も知らないような人々を丸々巻き添えにして、ぞろぞろと落ちていくのだ。

247x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:06:49 ID:UbAOyOrk0

「どうする!?リーダー」

小柄な男が、声を裏返しながら叫ぶ。

「こいつぁ、なんてことだ。おい」

車掌も、嘆かわしげに声を張り上げる。

リーダー格の男が、目を閉じて懸命に考えている。
こんな状況でも、冷静であろうとする彼に、しぃは賞賛すら送りたくなる。

248x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:07:35 ID:UbAOyOrk0

突然、ドアが開く。
小太りの男が戻ってくる。

「飛び降りるか?」

「こんな速度で飛び降りたら、ぐちゃぐちゃになるぞ!」

「くそっ!これもあの探偵の指示か!?」

249x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:08:19 ID:UbAOyOrk0

「俺は死にたくないよ、リーダー!」

「解除しよう!それしかない」

小太りと小柄の男が、キャッチボールの成立しない会話を続ける。
リーダー格は、まだ時刻を確認しながら、ひたすら考えている。

(;゚ー゚)「……どうするの!?」

250x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:09:01 ID:UbAOyOrk0

沈黙が流れる。

静寂は、風と雷鳴と雨音に支配されているのだが、
それでも、緊張した空気がしぃ達の流れていた。

そしてついに、リーダーがその空気を破る。

251x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:10:05 ID:UbAOyOrk0

「爆破しよう。予定通り」

(;゚ー゚)「……え!?」

「どうして!?」

「でも、それじゃ俺たちが!?」

リーダー格の顔は、少々やつれていた。
数時間前にあったような、自信が感じられない。

252x ◆3C8zs.ICS6:2011/10/20(木) 16:11:16 ID:UbAOyOrk0

「……分かるだろう。お前たちだって」

「……え?」

「……?」

「……ピナー氏は寛大だ。窮地にいた俺たちを救ってくれた。
 人柄だって、才能だって、何を取っても素晴らしい」

しぃは、モララーのことではないかと思う。
自分が組織に招かれたときの名前と違うが。


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