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ホテル・サイドニアのようです

1名も無きAAのようです:2011/09/12(月) 23:43:56 ID:v7OA74xM0
お邪魔しまーす

571 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 22:59:57 ID:/Wswjaq.0
.



   ――――――ッ!




(;´_ゝ`)「ぐぅぉおお!」


とっさの才覚でバックステップをしても、躱しきれるものではない。
真正面からの殺人的なエネルギーに、兄者は後方へ吹き飛ばされる。
爆発が、その周囲360度を加減なく破壊しようとする。バリケードも、
兄者も、阿部さえも。


(;´_ゝ`)「――ぐぅ!!」


石造りの壁に背中が思い切り叩きつけられる。鈍く重いその衝撃に
顔を歪める間もなく、熱波が兄者に襲いかかった。


(;´_ゝ`)


せめて頭だけは守ろうと、右手を差し出したのが駄目たった。
突き出した腕は熱にやられ、手袋の革が手の皮膚に張り付くほど
に焦がしてしまった。ようやく収まった頃には、もう右手は完全に麻痺していた。

             .

572名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:01:25 ID:.H38blUw0
おお、来てる!支援!!

573 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:03:36 ID:/Wswjaq.0

(;´_ゝ`)「………」

動かそうと試みるだけでも、激痛が右手全体を貫いた。
何もせずとも、焦げた嫌な臭いが嗅覚を刺激する。
熱湯に手を浸しているような感覚が続いた。

間違いなく右手は壊死しただろう。革手袋を剥がしたその中身は
見るに耐えないものとなっているはずだ。兄者は左手で首のスカーフを
ほどくと、それを右肘の辺りに強く縛った。


(;´_ゝ`)「くっ……」

左手を駆使して衣服の煤や汚れを払った。
風に切られた頬の血をぬぐい、それからよろよろと歩き出して
周囲の確認をする。阿部の用意していたバリケード類は、すべて
爆心地から放射線状になぎ倒されている。阿部は何処だと目を光らせると、
自分とは真反対の壁のすぐ下で、ぐったりと倒れていた。


N| " '` {" `lリ


生きているのか、死んでいるのかは定かではない。
ただし、動こうとする気配は感じられないし、何より
先刻までのドス黒い殺意というものが、雲散しきっていた。

もはや生死の確認をするまでもなく、兄者の勝利で決着がついたのだった。

574 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:05:20 ID:/Wswjaq.0
.


( ´_ゝ`)「悪いな……」

兄者は片手でカウボーイハットを直しながら、阿部の
怒りの言葉の連続を反芻した。復讐者の怒りを噛み締めて、

( ´_ゝ`)「マサキ、デルタ、そして阿部よ。
       俺はまだ、生きているんでね……」


そうして兄者は広場の方へ、ゆっくり歩き出し、


( ´_ゝ`)「面白かったよ。ここまで傷を負わされるとはな……」


( ´_ゝ`)「無傷でドクオと殺り合いたかったが、人生そうも上手くいかねえか」



一陣の風が吹く。陽がわずかに傾いて、兄者の影をながく伸ばした。
じきに、夕焼けが来るであろうという前兆が、そこにあった。


・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・

                  .

575 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:07:07 ID:/Wswjaq.0


―― ハーモニー 裏路地



(;`xωx´)「アッー!!」


シャキンが叫び声をあげると、同時に転げ回った。
手にしていた銃も放り出して物陰に必死に隠れる。

右の腿から鮮血が吹き出ていた。ジーンズごと肉を貫いた
鉛玉のその痕から、とめどなく溢れている。

激痛が走って、シャキンは動こうにも動けない状態だった。

そうしてシャキンを撃ったその張本人は、警戒を怠らないまま
シャキンの方へ忍び寄っていく。


(;` ω ´)「ひぃっひぃっひぃ……!」



ごちゃごちゃと物の積まれた狭い路地裏で、必死に逃げ道を求めた。
しかし誰も助けに来ない。あと数秒でそのハンターに追いつかれ、
とどめを刺されるかと思うと、恐怖で胸が張り裂けそうになる。

576 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:08:16 ID:/Wswjaq.0
.


(;` ω ´)


同時にシャキンの胸中には後悔の念が生まれていた。
ドクオの用意した銃火器によって、あらゆる悪党どもを
この短時間で撃ってきた。そこには恐怖さえなく、爽快感のみだった。

しかし、だがしかし今は違った。自分が馬鹿みたいに振り回し、
扱ってきた銃の危険性が、太腿の苦痛とともに身にしみてくる。

自分はなんて愚かだったのか、涙が視界をにじませる。


( `;ω;´)


こんなことになるのなら、始めから参加なんかしなければよかった。
安っぽい正義感に振り回されて、悪党どもを蹴散らすなんて馬鹿な真似をせずに。


自分はなんて愚かだったのか、そら見てみろ、既に追いつかれたようだ。

俺の脚を撃ったこの悪魔が、影からぬっと現れてにやりと笑いやがった……。

           
             .

577 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:10:43 ID:/Wswjaq.0


そのハンターは銃口を、ゆっくりとシャキンの胸元に向けた。
シャキンには全てがスローモーションに映った。

と、そのときだった。そのハンターの笑い顔に向かって、
なにかが飛んできた。その何かは棒状のものだった。綺麗な弧を
描きながら、それの先端――ブーツが、ハンターの鼻先に向かっていく。



( `;ω;´)「!?」


最初はわからなかった。しかし、そのハンターがいきなり鼻血を
出しながら後方へ吹っ飛んでいった。なんだ? 助かったのか?
シャキンがそう思う頃には、その助けてくれた棒状のものは引っ込んで、
代わりに、真新品のハンタールックに包まれた"誰か"の後ろ姿が
眼前に現れた。誰だろう。味方か? しかし問いかける暇もなく、
その誰かはハンターに向かって駆け出していった。止めの一撃とばかりに、
踵落としをハンターのみぞおちに叩き込んだ。

斜めにさした陽の光のせいで、具体的な姿はわからない。しかし、
その仮借なく打撃を加える頼もしさは、見覚えのあるものだった。
そして、その男が振り返って、









(メ'A`)「大丈夫かシャキン」

( `;ω;´)「あ、ああ……ドクっオさん……!」

ドクオに、すくわれた。

578 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:13:09 ID:/Wswjaq.0

ドクオは近寄って、倒れたシャキンの傷を見やって、

(メ'A`)「こりゃ歩けねーだろ。ちょいと待ってな」

そういって周囲の材木から、簡易な松葉杖になりうるものを探した。
ドクオのその様子を、シャキンはずっと見続けている。
汚れに汚れた今までの衣装を捨て、支援物資からカウボーイジャケットや
ジーンズを調達したらしい。頭にはウシャンでなくテンガロン・ハットを
乗っけている辺り、見た目はそこらへんのハンターと変わりなかった。

しかし、この衣装の殆どは高価な防弾仕様であり、しかも
その耐久性は兄者の着ているものと殆ど同じであった。
無論、そんなことは当人らには知るよしもないのだが、ともかく
ドクオに助けられてシャキンは起き上がった。包帯で傷口を巻いて
もらった頃には、安堵感で痛みを忘れられた。


(`;ω;´ )「ありがとうございます……!」

(メ'A`)「大人しく避難するんだな。残党ももうほとんど居ないしな。
    ……シャキン、門まで送ってやろうか?」

(`・ω・´;)「いえ、大丈夫です!」

しゃきんとした返事をすると、

(`・ω・´;)「ドクオさんには、まだやることがあるんでしょう!?」

(メ'A`)「ん、まあな……」

579 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:16:18 ID:/Wswjaq.0


ドクオは曖昧に返事をした。
これからのことを考えると、心の余裕がなくなってくる。
今、ここで、シャキンと共に逃げるという選択肢だって"残されていた"。


しかし、


(メ'A`)「俺はまだ残る。ただ、どうか俺の……」


(`・ω・´)「?」


(メ'A`)「健闘を、祈ってくれないか」


何処か弱気を見せた発言だった。


シャキンは気にする様子もなく、

(`・ω・´)「はいっ! 頑張ってください!!」

(メ'A`)「ありがとうよ。そんじゃ、お前も達者でな」


その言葉でふたりは別れることになった。……



               .

580 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:19:28 ID:/Wswjaq.0


広場へ通じる狭い道。その影にドクオは居た。
一方の壁に手を当てて、俯き加減に佇んでいる。


(メ'A`)「………」


まだ障害を完全に取り除いたわけではない。
これから先、あの男と対決をしなくてはならないだろう。
戦利品を手に入れる過程で、まず衝突は免れないであろう、あの男。

裁判館は相変わらず扉を閉ざし、交渉も望めそうにない。
出合ったハンターも殆どが三下なので、倉庫のパスワードは手に入れられなかった。


(メ'A`)「ふぅ……」


蓄積した疲労が肩や腰に伸し掛った。このハーモニーに来てから、
身体を酷使したうえにあらゆるダメージを受けてしまった。

もういい加減に休みたいと、身体が悲鳴をあげている。

581 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:21:26 ID:/Wswjaq.0
.

(メ'A`)「(まだ……ぶっ倒れるわけにいかねえ!)」

ポケットからエナジードリンクを飲んで、身体に喝を入れる。
ケミカルの味が喉から食道を刺激した。疲労が感じなくなるといっても、
しょせんはごまかしに過ぎない。最後は根性の戦いになるであろう。


ドクオは深呼吸を何度かし、壁から手を離した。
息を整えてきってから、ドクオはおもむろに広場に足を踏み入れた。



(メ'A`)「………」

耳の横で風がひゅうと鳴いた。乾いた地面に、ダミエルの
吊るされた一本杉。あれほど決まっていた西部劇調の建物も、
廃墟のように一部が崩れ落ちたり、焼けていたりする。

孤独な空間だった。ドクオはゆっくりと、足を慣らすように歩いた。


(メ'A`)「(ん?)」

すると、反対の方向で人の気配を感じた。
それも複数の男の声、苛立ってはいるが、敵意の感じない声色だった。

ドクオはゆっくりと近づいていった。

三人の男が、広場の隅で何者かをリンチをしていた。その被害者の
姿かたちは見て取れなかったが、その三人が原住民であることは
衣服で察せられた。



(メ'A`)「(ハンターへの怒りをぶつけてるってわけか……)」

            .

582 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:22:58 ID:/Wswjaq.0


わからぬ行動でもないが、それにしてもリンチはやり過ぎだろうと感じた。
その"ハンター"は何の抵抗もせず、ときおり痙攣めいた動きをするだけだ。

(メ'A`)

ドクオはさらに近づいて、「止めて早く避難しろ」と言おうとした。


(メ'A`)「!?」

しかし出掛かった言葉を飲み込んだ。近づいて、よく判った。
三人の原住民が発する罵り言葉に、「裏切り者」という言葉が
頻発するのも判った。その者がゾンビのような動きをしているのも判った。


(;'A`)「お、おい……」


ドクオに気がつくことなく蹴りを加え続ける原住民たち。
相変わらず何の抵抗もしないそのハンター。



(#'A`)「……おいてめぇらッ!! やめろ!!」


いきなりの恫喝に、その三人組は動きを止めて振り返った。

                     .

583 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:24:47 ID:/Wswjaq.0


そのどれもがドクオの顔を見るなり、きょとんとした表情になった。
やはり原住民に違いなく、虐げられていた側の人間だったのだろうが、

(#'A`)「とっとと避難でもしやがれ! そいつを解放しろ!!」

「けどねえ旦那! この男は俺らを裏切ってハンターになった……」


ああ、そうか。それで妙な恨みを買われていたってわけか、しかし、


(#'A`)「関係ねえよ……デルタに危害加えるんじゃねえ!」





( ";;;゙) ガッタ......



男たちがわずかに離れ、痙攣しているデルタの姿が映った。
数々の怪我や身体にこびりついた血のりで見えづらいが、
紛れもなく、直前までドクオをサポートし続けていた男、デルタだった。

                   .

584 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:29:18 ID:/Wswjaq.0

「あのなあ!」

一番気性の争うな男が、ドクオに近づいて、

「あんたにゃ感謝してるけどよ! お前しょせんッ他所者だろォッ!?
 こっちにはこっちの事情があんだよ! 絞める奴は絞めねえと……」


(#'A`)「黙れってんだ……!」




デルタは、全てを失ったような虚ろな表情をしていた。
どうみても致命的な出血の痕、人間とは思えない痙攣。
彼もまた、ハインリッヒと同じくキャリアに冒されたのだった。
追跡者として彷徨っていたところを、二重スパイの事情を知らぬ
人間らに取り押さえられ、殴る蹴る、罵倒の暴行を加えられていたのである。

今度はドクオが詰め寄って、


(#'A`)「俺はヒーローでもなきゃ、救世主でもないんでな……ッ!
    罪なきてめぇらブン殴ることにゃ抵抗ねえんだぞ!!」


                        .

585 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:31:17 ID:/Wswjaq.0

凄みをきかせた言葉に気圧されたらしい。

三人の原住民は驚いた顔になると、しぶしぶ引き下がった。

舌打ちをしながら、一番近い小道に入り、避難経路に向かっていく。



(メ'A`)






それからドクオは、起き上がろうとするデルタを見つめた。


( ";;;゙) ガク....ガクッ


骨格のみを頼りにした起き上がり方は、やはりキャリアのそれだった。

濁った血を滴らせ、ゆっくり、ゆっくりとドクオの方へ近づいていく。


( ";;;゙) ズ....ズズ.....


(メ'A`)「……デルタ」

                 .

586 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:34:02 ID:/Wswjaq.0

この男さえも、この村を愛していただけの、
この男さえも俺は手に掛けなくてはならないのか。

(メ'A`)

ドクオは葛藤した。

デルタはぎこちなく動いてくる。人口ウイルスによって、
機械的に腐肉を動かされていく。

……くるのか、デルタ。来るのかい、
ドクオは内心で問いかけ続ける。



――だが、ドクオの予想を裏切った。


(メ'A`)「!?」


デルタの歩行は、ドクオを追い掛けるそれではなかった。
わずかにドクオの方から逸れると、そのまま身体を引きずっていく。

通常、キャリアは対象者を設定する。
この状況において弟者が設定した対象は、ドクオに違いなかった。


( ";;;゙) ズ....ズズ.....


(メ'A`)「お前……」

にも関わらず、デルタはドクオに危害を加えようとしなかった。

                 .

587 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:36:37 ID:/Wswjaq.0

やがてデルタは歩みをやめた。そこはドクオから少し離れた先の
ちいさな看板だった。「ハーモニーへ ようこそ」と書かれた看板、
そこのすぐ傍にデルタは居た。そうして、まるで力尽きたかのように
看板にもたれ掛かった。身体を小刻みに揺らしている。表情は分からない。


(( ";;;゙)) ... ....


(メ'A`)「………」




おかしい、これはキャリアではないのか?
ドクオの頭に疑問が過ぎった。
キャリアは対象者を、対象物をずっと追い続け……



(メ'A`)「……そうか、そういうこと」


( ";;;゙) ウ...ウ...ウ....



(メ'A`)「そうだよな、お前が、追い求めてたものは……それだもんな」


                   .

588 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:39:37 ID:/Wswjaq.0


ドクオはデルタを見つめ続ける。もたれ掛かりながらも、デルタは
その小さな町看板を抱きしめようとしていた。強ばった動作で、
痙攣をしながら、血飛沫をあげながら抱きしめている。全身全霊で、
愛を表現している。その様子を、ドクオは見つめ続けていた。


( ";;;゙).... .....


(メ'A`)


(メ'A`)「もう少しだ……もう少しなんだよ、デルタ。
    あとちょっとで、このハーモニーにも笑顔が戻ってくる」


( ";;;゙).... .....



(メ'A`)「だから、安心して、」



(メ A )「……ねむって、くれねぇか?」


              .

589 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:41:34 ID:/Wswjaq.0
.


(メ'A`)「安心して、天国から見てくれねぇか」


(メ'A`)「なあ……デルタ……」





(( ";;;゙))



( ";;;゙)「……ッぁ、ッぁ、……ぁあ……!」


言葉にならない言葉を発しながら、デルタはひたすらハーモニーの
町看板を抱擁し続ける。しかし、やがて、そのうち、デルタの顔が
安らんだかと思うと、彼は動かなくなった。次第に痙攣も間隔が大きくなり、



デルタの人生は、いま全く幕をおろしきった。


                      .

590 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:45:28 ID:/Wswjaq.0

(メ'A`)


すさんだ風がどっと吹き降りて、地面の細かな砂を大量に舞い上げた。
砂埃が辺りに立ち込めた。ドクオとデルタの間にも例外はなく、
視界が蜃気楼めいて、デルタの亡骸を揺らした。



(メ'A`)「必ず……だ。約束するよ、デルタ」


天を見上げてドクオは呟いた。空は既に橙いろに移り変わって、
細切れの白い雲が申し訳程度に浮いているばかりだった。


(メ'A`)


今までの喧騒とはうってかわって、ハーモニーは静かになっていった。
崩れた西部調の建物が夕焼けに晒され、廃墟めいた空気を出している。
ドクオはしかし、それでも立ち止まっていた。まるで何かを待つように。





―――― そして、そのときだった。
     砂を踏む、何者かの足音がした。

591名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:45:35 ID:YtZtmOs60
泣けるな、チクショウ

592 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:49:55 ID:/Wswjaq.0
.


              ――― ざりっ……


(メ'A`)「!?」

ドクオは咄嗟に振り返った。大通りの方からそれは聞こえた。
眩しい陽光と埃のせいでよく見えないが、確かに人影が、そこにあった。

          ――― ざっ……ざっ……

その者は小さく笑い声を立てながら、ゆっくりと近づいてくる。

       ――― ざっ……ざっ……

(メ'A`)「………!」

その笑い声は、始めて聞くものだった。けれども、
不思議と慣れ親しんだ声のようにも思われた。

   ――― ざっ……ざっ……

ドクオは握りこぶしを作った。ついに、来たようだ。
これまでドクオは、様々な策によって障害を乗り越えてきた。

ハーモニーに無数にあった障害。そしてこの目の前の男は、いままで

取り除けなかった障害であり、かつ最大の驚異と考えていたものだった。


――― ざっ……

                         .

593ラスト投下 ◆tOPTGOuTpU:2012/11/04(日) 23:55:30 ID:/Wswjaq.0
.




( ´_ゝ`)「………」


(メ'A`)「………」




夕焼けの荒野、廃墟の建物。ドクオと対峙する、最強のガンマン。

兄者は既に手負いの身だったが、背筋をまっすぐに伸ばし、

ドクオを睨みつけている。ふたりの男は、しばらく相対していたが、




( ´_ゝ`)「フッフッフ……」


( ´_ゝ`)「―― サシを挑むぞ…… 考 古 学 者 ァ ! ! 」



(メ'A`)「………ッ!」



そうして、斜陽のハーモニーで、最後の決闘が始まろうとした。……


                  .

594名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:58:45 ID:/Wswjaq.0
今日はここまで、次回はいつかの週末に。

>>584
気性の争うな男→気性の荒そうな男。 ミスです。

595名も無きAAのようです:2012/11/05(月) 00:04:47 ID:76Yhj9.E0
支援しようとしたら終わってた
しびれる…!!乙です!!

596名も無きAAのようです:2012/11/05(月) 02:36:42 ID:AVDPl4V60
濃密すぎて言葉にならないぜ
乙!

597名も無きAAのようです:2012/11/05(月) 10:01:05 ID:lRCtW6w.O


598名も無きAAのようです:2012/11/05(月) 19:36:32 ID:JCywC5Rw0
乙!
デルタ・・・

599名も無きAAのようです:2012/11/05(月) 22:58:03 ID:OEvOrsQ.O
弟者ノリノリ!おつです。

600名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 06:21:03 ID:nE5C.Jbc0
思いの向こう側の作者さんが兄者の絵を描いてくださいました。
むちゃくちゃ嬉しいです。ほんとうにありがとうございます!

http://vippic.mine.nu/up/img/vp96921.jpg

601名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 17:45:36 ID:wH8RLcAwO
かっけー!!!

602名も無きAAのようです:2012/12/12(水) 20:16:24 ID:lSSy0RH20
本当にかっこいい兄者だな

603 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 20:29:18 ID:KYRNhUOs0
旅行でしばらく取れないので、書き溜め分だけ投下します

604 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 20:33:18 ID:KYRNhUOs0

.







―― 自分の人生はどうしようもない糞なことなんて、ガキの頃から知っていた。


―― だからこそ、弟者の示したこの悪の道……覚悟と命だけの世界が、


―― とても、とても眩しくて……この世界で輝こうと誓った。






.        .

605 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 20:37:00 ID:KYRNhUOs0
.


タンブルウィードの転がる、日暮れかけた世界だった。
静まり返った風景だが、対峙しているふたりの男の内側はそうでもない。
ひとつのきっかけに流血を促す、一触即発の気配を滲ませていた。


( ´_ゝ`)「お前には命を賭けてもらうぜ……」


(メ'A`)「………」


互いに互いを凝視していた。怪我の具合からして既に満身創痍
に見受けられる兄者は、その割に余裕の笑みを浮かべてドクオを睨んでいる。

そうして、ドクオは兄者の様子を確認しながら、


(メ'A`)「ならひとつ、約束してもらおうか……」


( ´_ゝ`)「ん?」



(メ'A`)「その決闘で俺がお前を打ち負かしたら……そのときは……」






(メ'A`)「この村の抱えてるマーパーツ、ぜんぶ俺が戴くぞ!」


兄者は薄く笑って、


( ´_ゝ`)「いいだろう、幾らでもくれてやるさ……」


                .

606 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 20:43:37 ID:KYRNhUOs0
.

(メ'A`)「………」


その言葉で、心が逆立つのを感じた。
これは最大のピンチであるとともに、最大のチャンスでもあった。

兄者の変貌はドクオにとって、状況が好転したともいえる。
口ぶりからして、兄者は嘘をついているとも思えない。
ほんとうに兄者を打ち負かすことが”出来れば”、今までの苦労が報われる。
想像できないほどの幸せが、目の前にちらちら光っている。



しかし、それから、兄者は今までの人形めいた風貌
からは想像もつかないような、凄みのある顔になって、


( ´_ゝ`)「もし、貴様が…… 勝 て た ら な ァ ッ !!!」


(メ'A`)「ッ!」


その一言が、戦闘の合図となった。

                .

607名も無きAAのようです:2012/12/14(金) 20:52:08 ID:VfqNRqAE0
きてたー!支援支援!

608 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 20:52:19 ID:KYRNhUOs0

途端に兄者から発された、
迸る情熱がドクオにその「始まり」を告げる。



(メ'A`)「ッ!」

先に動いたのはドクオだった。
反射神経が、すばやくドクオの筋肉を動かす。

そうして移動した先は――相対する兄者とは真横の方向。
ある建物のスイングドアに目掛けて全力で走り出した。

( ´_ゝ`)「フン」

その動きを見透かしたかのように、兄者も行動しはじめる。
いつの間にか握った拳銃で、移動するドクオのボディに照準を合せ、


一発を、

(メ゚A`)「―― うっぐ!」

    撃ち込んだ。


放たれた弾丸は、走り抜けるドクオを待ち構えていたようだった。
ドクオの胸元に銀の弾が衝突した。
防弾シャツ越しに感じる苦痛、肋骨が悲鳴を上げ、呻きが漏れそうになった。

609 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:00:03 ID:KYRNhUOs0

(メ;'A`)「……ッ!」

被弾の衝撃で身体が痺れる。足が縺れそうになった。

( ´_ゝ`)「どうした! 逃げるつもりかッ!?」

兄者は続けて、撃鉄をなんどもおろしていく。
続けて更に二発が撃たれた。直線上のドクオを射抜こうとする。
一つは脇腹に、もう一つは鳩尾を鋭く殴った。立て続けの苦痛に
ドクオは倒れかけた。が、それでも体勢を立て直して走り続ける。

(メ;'A`)「(ってえ! 機動性重視の防弾シャツじゃ、こんなもんか!)」

スイングドアに向けて足をがむしゃらに動かし続ける。そうして
防弾性について素早く考えた。この程度の防弾力なら二度続けて
同じ箇所を撃たれた場合、即座に手酷い傷を負うことになるのは違いなかった。

このシャツは、あくまで突然の狙撃による致命傷を防ぐためのものであって、
けっして戦場に単騎突撃するためのものではなかった。
なにより、いま対峙している男は、火星どころか人類史で見ても
最強レベルに位置するであろう凄腕のガンマンなのだから。
少しでも立ち止まれば、連続狙撃によって鉛玉が身体にきりきりと入り込むであろう。



(メ;'A`)「(――早く! 早く! 早く!)」


脚をとにかく働かせる。砂ばかりの地面で滑りそうになっても、
ひたすら建物を目指し続けた。走り出してからまだ5秒も経過していない。
だというのに、すでに此方には一撃死のリスクが待ち構えていた。

               .

610 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:07:46 ID:KYRNhUOs0

( ´_ゝ`)「ふん」

脱兎のごとく駆け出すドクオだったが、兄者は集中して狙おうとしなかった。
最初の三発で打ち止めにしてしまった。瞳だけはギラついて、ドクオの
進行先と身体状況を測っている。逃げ出したドクオに、いささか興ざめして
しまったのかも知れない。この状況で狙い続けるのは、決闘ではなくただの狩りになってしまう。

ドクオがスイングドアにタックルをし、強引に中に滑り込んでいった。

その入り込んだ場所はバーであった。始めて顔を合わせたあのバー。
ぼんやりとそう考えると、ドクオの姿はすでに見えなくなった。
ギイギイとスイングドアが唸って、忙しなく振り子のように動いている。


( ´_ゝ`)


兄者はそれから、ようやく歩きだした。目指す先は無論、そのバーである。
中の様子を、気配を感じ取ろうとする。あのドクオが無計画に逃げるわけはない。
必ずなんらかの反撃を仕掛けてくるに違いない。果たしてそれはどのようなものか。

( ´_ゝ`)「……殺気はあるみたいだな」

バーから立ち込める雰囲気、それは追い込まれた弱者の放つそれではなかった。
必ずや反撃をしてやるという意思が、ありありと感じ取れた。
奴はなにかを企んでいる。歩きながら、兄者はほくそ笑んだ。


――そうだ、そうこなくっちゃァな。それでこそ殺りがいがあるってもんだ。
  互いに,魂を削り合おうじゃないか。命の輝きを感じようじゃねえか!


                   .

611 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:12:54 ID:KYRNhUOs0

しかし、そんな思いとは裏腹に、唐突な痛苦が兄者の背中に走った。

血だらけの背に、いくつかの鉛玉が容赦なく衝突したのだった。

何者かに狙撃されたらしい。たちまち兄者はふらついた。


(;´_ゝ`)「っ……!」

振り向くことなく、兄者は反撃の銃弾を放った。しかしその
鉛弾は狙撃手を殺すことはなかった。すぐに物陰に隠れたらしく、
その銃弾が木の壁に突き刺さる虚しい音だけが響いた。

(;´_ゝ`)「くそ……!」

残党が未だに残っているらしい。それも二階のテラスから
標的を見つけては撃つ、兄者とは違ったタイプのガンスタイルだった。

そもそも兄者は弟者の絶対的な下僕という認識が、それぞれの
ハンターの常識に刻まれていた。となれば、火事場泥棒紛いをしている
連中にとって、兄者は邪魔な存在であり、排除する対象になっているのだ。

兄者は体勢を立て直しつつ、ドクオの居る酒場へ向かった。

吐き捨てるように、


(;´_ゝ`)「ちっ……色気もねえ弾を喰らっちまった」

(;´_ゝ`)「これもまた、人生って奴かい……」


雑魚に構う暇などない。
兄者は足取りも確かに、すすんでいった。
始めて互いに顔を合わせた、あの酒場「バイフック」へ。


                    .

612 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:18:05 ID:KYRNhUOs0

・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・


―― 裁判館 2F


(´<_` ;)


弟者は立ち止まっていた。外套を羽織り、必要な書類や生きるために
必要な高価な物資の類をアタッシュ・ケースに詰め、逃げ立つ準備を
しきったというのに、弟者はこの部屋から出られないままだった。



その理由というのは、

(´<_` ;)「……さっさと、帰ってこい……!」


絶対的な下僕、兄者が未だ帰還していない。それひとつだった。


弟者は逃走について、色々考えていたのだが、これから先の
人生において、間違いなく兄者の存在は必要不可欠になるであろう。

逃亡者として生きる上で、裏切る心配もなく、圧倒的な戦闘力を
持つ兄者の存在は、あまりにも大きいものだった。


              .

613 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:22:00 ID:KYRNhUOs0

自分一人で、なにが出来るというのだ。焦りを隠せぬ脚に、
弟者は心のなかでなんども叱咤した。権力を失った自分には、
他者をコントロールして成り上がる術など使えようもなかった。
もとより、ハンター組合に追いかけられる身では、どうすることさえできない。

兄者が必要だった。
これから先、生きる上では、必ず。


(´<_` ;)


弟者は今の無力さを自嘲していた。愚かな人間だと馬鹿にしつつ他者を
操って、こうして成り上がっていたというのに、いざ地盤が崩れたら
どうだろう。俺も何も変わらないじゃないか。
他人が居なければ、無力な人間なんだ、おれは。



(´<_` ;)「くそったれ……!」


弟者は扉を睨みつける。見慣れた扉はしかし、修羅の道へ誘う
死神に成り下がった。恐怖と利が、ハーモニーから逃げることを許さない。
まるで、鎖か何かで縛られている感覚であった。


兄者という存在に、弟者は鎖で縛り付けられた気分だった。

614 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:25:59 ID:KYRNhUOs0
.


(´<_` ;)「こんなところで、俺は終われないんだ……ッ!」



(´<_` ;)「なんでもいいっ……ハーモニーなぞどうでもいい!
       兄者ッ! 早く帰ってきてくれ……お前が居なきゃ……!」



先刻の己の判断ミスを呪いながら、扉を睨みつけながら、
恐怖から目を逸らすように、弟者は力強く心境を吐露した。


それから窓の方へ向かい、防弾ガラスの冷たさを掌で
感じながら、荒涼とした広場を見下ろした。笑えるほどに夢の跡。


                 ,

615 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:28:37 ID:KYRNhUOs0


(´<_` )「………?」


ふと気になった、とある建物を注視する。


見知ったその酒場、「バイフック」のスイングドアを
押そうとしている、見知った後ろ姿のその男。シャツがずたずたに
裂けてい、さらに溢れ出た血がべっとりと汚れを覆っている。
だが、紛れもなく、それは実の兄の背であった。


( ´_ゝ`)



(´<_` ;)「兄者ッ!!」


声は無論届かない。だが、弟者の視線は兄者に釘付けだった。

だが、次の瞬間、


(´<_` ;)「!?」


強烈な閃光が、バイフックの扉から物凄い勢いで放たれた。
そして兄者がその光、火炎、エネルギーに巻き込まれ、
後ろへ吹き飛ばされる。爆発だ。弟者はそれを手榴弾と直感した。

何者かと戦闘をしている。そして、
この戦いが終わらぬ限り、兄者は帰ってこない。


(´<_` ;)「……兄者……」

             .

616 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:35:15 ID:KYRNhUOs0

―― バイフック。入口手前。


(;´_ゝ`)「――ぬぅうううッ!!」


スイングドアを吹き飛ばすほどの爆炎が、兄者に襲いかかってきた。
またも手榴弾だった。咄嗟の才覚で受身を取り、更に脚が地に着いた
と同時に、無理やり方向転換をする。ドア前で放たれた爆発ゆえ、その
扉の延長線を避けさえすれば、最悪の事態は免れられる。

ふたたび味わった凶悪な熱風だったが、回避は以前のものよりは容易だった。
ダメージは受けているものの、いまだ兄者の戦意を削ぐに至っていない。

(;´_ゝ`)「くっ……!」

よろりと立ち上がって、バイフックの焦げ付いた店先を睨みながら、

(;´_ゝ`)「どれだけ手榴弾に愛されてんだか……」

息を整えつつ、器用に片手で銃をリロードした。


同時に脳内では、情報の整理をする。阿部に二回使われ、そして
たった今受けたこの手榴弾は全て同型のものだった。抗争に
明け暮れた兄者にとっては珍しい「サターン」と呼ばれるタイプだ。

617 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:40:50 ID:KYRNhUOs0

「サターン」が既存の手榴弾と決定的な違いは、爆発の形状が
一番大きい。サターンの爆発は、さながら土星のリングのように
炎の円盤が一気に広がっていく。そのエネルギーは地面を抉ることはないし、
天井を焼き尽くすこともない。高低差さえ見極めれば、
使用者はほんの至近距離でも巻き込まれずに済む。

また、通常のタイプに比べると殺傷力は低い。
主に牽制に使われるもので、大量死を望まないドクオの考えに
よって発注されたのだ。しかし、これによって、


( ´_ゝ`)「(貴様の位置、ある程度検討がついたぜドクオ……!)」


兄者は再び、バイフックの店先に立った。
それから躊躇なくその店内に入っていく。
硝煙は薄くなっているため、視界に不自由はない。


酒場「バイフック」は、不気味なほど薄暗かった。
今、兄者の立っているその位置が大体の爆心地であるらしい。
周囲の丸机は奥の方へ飛ばされ、あちこちに横たわっている。
そしてそのどれもが、死角を作っている。

奥にはカウンターバー、ガラスに守られた酒棚。
といっても酒棚は荒れに荒らされ、高価なボトルは盗まれているし、
空き瓶はそこらじゅうに散らばっている。

そしてバーの途切れたさきに、

( ´_ゝ`)「(………)」

二階へと続く、木造の階段があった。

618 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:43:59 ID:KYRNhUOs0

兄者は確かな足取りで階段へ向かっていった。自身の存在を
示すかのような歩き方だった。一歩々々、床を踏むたびに
ミシミシと木材の軋む音が鳴った。


( ´_ゝ`)


熱意が、静まりきったバイフックの店内に溢れているのを感じる。
阿部のドス黒い殺意とはまた違った、計算され尽くしたような
冷静さが顕著だった。しかしそれは、青い炎のように、静かながらも
確かな「殺意」が根底で息づいている。

( ´_ゝ`)「(……この緊張感、久しぶりだな。シアトル以来だ)」


未だ眼前に、ドクオは現れていない。
階段までもう少しのところだった。
歩くたび、ドクオを打ち抜きたくて左腕がウズウズと興奮した。
指がクモの手足のようにせわしなく蠢いた。

緊張感と高揚感が脳一杯に広がっていった。

619 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:45:19 ID:KYRNhUOs0


張り詰めた店内を、兄者は鷹揚に歩き続ける。
身体の隅々にまで行き渡る闘志と共に歩き続ける。


( ´_ゝ`)


もうすこしで階段、という辺りまでやって来た。
空気に混じった殺気が一段と濃くなっている。
背中の流血のためか、ときおり貧血めいて力が抜けていきそうに
なるが、その波さえ去ればまた闘志が身体の隅々に行き渡っていく。




( ´_ゝ`)


一歩、右脚を前に出して、それから、
身体の重心を前方に移す、そのときであった。



――兄者の左腕が素早く動いた。
ホルスターから黒光りする銃が抜き取られ、もう構えられた。

                   .

620 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:46:32 ID:KYRNhUOs0
.



( ´_ゝ`)「ッ―――!」



(メ'A`)「―――ッ!」


二人は互いに互いを視認した。構えられた二つの銃でさえ、
持ち主と同じように対峙してい、そうして、ほとんど同じタイミングで

トリガーを引いた。痺れるような
振動が、銃身から腕、身体全体に伝わっていく。


発射した弾丸ふたつは、極めて短い時間にすれ違ったかと思うと、
まっすぐ標的に向かっていった。ドクオの弾丸は兄者にめり込んだ。
兄者の弾丸はドクオにめり込んだ。


(;'A`)「ぐッ!」

(;´_ゝ`)「……ッ!」



威力こそ同じだが、手負いの兄者の方がダメージが大きかった。

621 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:51:41 ID:KYRNhUOs0

両者ともに弾丸を胸元に食らい、怯んだが、
さきに行動できたのはドクオの方であった。

(メ'A`)「!」

身軽に体勢を立て直すと、グリップを握ったままで
兄者の傍へ駆け出していく。立ち上がったものの、
未だ反撃の様子を見せない兄者のもとへ。


(;´_ゝ`)

兄者の思考が、末端の神経一本々々が、不動の筋肉に
反して暴走したように騒いでいる。向かってくるドクオを視認する、
鉛玉を撃ち込むプランが、刹那のタイミングで浮かんでは修正されていく、
というのに、身体が言うことをきかない、多量の流血に加えて、
複数回も攻撃を受けた経緯が、この瞬間に現れてきたらしい。


(;´_ゝ`)「(くっ……! 動けッ…休むな、俺の身体――!)」


ドクオを睨みつけながら、命令をしているが、思う通りに動けない。
敵はいつの間にか銃をホルスターに仕舞い、隠し持っていたらしき
キッチンナイフを右手に構えている。その刃は銀いろに加えて
ぬらぬらと不気味な光沢を放っている。もう、時間がない、


(;´_ゝ゚)「(――ぬゥウ!!)」



左手に全神経を集中させた、グリップの硬さを再確認する、

と、同時に撃鉄をすばやくおろして、トリガーに掛かった指を動かす。

622 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:54:01 ID:KYRNhUOs0
.

銃声が一回だけ、また響いた。



  (;;'A`)「――ううッ!」


鉛玉がドクオを確かに抉った。たちまちドクオの表情が
苦悶に歪んで、脚の動きも僅かながら緩んだ。兄者が狙った
ドクオの部位は、ナイフを握る右手、それも力の集中する
手首であった。が、

(;´_ゝ`)「………ッ!?」

ドクオの右手には未だナイフがあった。その理由は、ドクオの
体勢を見れば明白であった。ドクオはとっさの才覚で兄者が
発砲する、それもナイフを吹き飛ばす魂胆を見抜き、ばかりか
左腕でナイフごと右手を庇ったのだった。故に、狙撃された
部位は右手首ではなく、左手の甲。撃たれた衝撃で、刃先に
触れてしまいそうだったが、それもなんとか持ちこたえた、



今となっては、もう、刃の射程距離にまで到達したのだった。


(メ'A`)「(今だッ!)」


クラウチングスタートめいて体勢を前かがみにすると、ドクオは
ナイフのグリップを一層ちからづよく握り締めた。ステンレス製の
刃がきらりと光る。しかし、兄者にしてみれば、先刻の攻防で
重要性、危険性を察知したドクオのそのキッチンナイフを放って
おけるわけもなかった。といっても、左手に鞭打って再び
狙撃するには時間がなさ過ぎた。攻撃の姿勢をしたドクオは一歩踏み込んで、
いままさにナイフをまっすぐ兄者向けて突き出したのだから。

(;´_ゝ`)「ッ!」

              

.

623 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:56:09 ID:KYRNhUOs0


兄者のとった行動は、刃が来る間際に横へ崩折れるというものだった。
身体がぐらりと傾いで、視界が90°変わっていく。

ひゅん、と風を切る音が兄者のすぐ傍で聞こえた。それは
無論のこと、空振りに終わったドクオの渾身の攻撃だった。

ドクオは、追撃するには時間を要した。全体重を込めた
突きの一撃、しかしその空振りによって、体勢が崩れてしまった。
それは倒れ込んだ兄者も同様だったが、すんでのところで回避したアドバンテージ、
若干の時間差優位に立っていた。倒れた衝撃を活かして身体を
一回転し、膝立ちをする。視界に映るのは、身体のバランスを
失った、無防備なドクオの横姿だった。


( ´_ゝ`)「(……今だ)」
(メ'A`)「!?」

反撃のチャンスはこの瞬間だと悟った。――いつものように、
素早く冷静に銃を構えると、ドクオの無防備な脇腹を撃った。


乾いた銃声が、二発、ふたたび響いた。
それに呼応してドクオの短い叫び声が、店内に響いた。……


 
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・

624 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 21:58:24 ID:KYRNhUOs0


―― ハーモニー 大通り


(;`・ω・´)「………!?」


入り組んだ裏道を抜け、大通りを出てすこし歩いた先のことだった。
異様な光景――木箱やダンボールが滅茶苦茶に乱雑している――が
まず目に飛び込んできて、それから、見知った二人の顔を視認した。


(;`・ω・´)「阿部さん! エノーラ!」


いかにもそれはノーナンバーズの二人だった。生死不明で
ぐったりした状態の阿部を、エノーラが必死に呼びかけている
その光景に、シャキンはいち早く駆けつける。傍のヘルメットを
蹴り飛ばす勢いで、動かない阿部に抱きついて、

(;`・ω・´)「あ、阿部さんッ!!!!!!!!!」

返事はなかった。シャキンは唾を撒き散らしながら、

(;`・ω・´)「エノーラ!! どういうことだよ!?」

||‘‐‘;||レ「わからないよッ! 私が来たときには、もう……!」


シャキンは再び、阿部の容態を確認した。頑丈なはずの防護シャツ
を重ね着しているが、そのどれもが焦げて黒ずんでいる。更に
注意して見てみると、いたるところに銃痕と滲んだ血があった。
額が切れてい、流血した痕が残っている。脈は確認できるため、
死んでいはいないだろうが、重体には違いなかった。

625ラスト投下 ◆tOPTGOuTpU:2012/12/14(金) 22:00:33 ID:KYRNhUOs0


(;`・ω・´)「これはひどい」

||‘‐‘;||レ「動かした方がいいのかな……ここにいたら危ないし」

(;`・ω・´)「……や、首が骨折してたら危ない……。ぼくが
        ……ここは……」

言葉はしかし、そこで途切れた。

砂を踏む、何者かの足音を聞いたからであった。



||‘‐‘;||レ「ひっ……」

エノーラが小さく怯えた。ゆっくりとシャキンは振り返る。
そこには、残党らしきハンターが一人、下卑た笑いを浮かべて立っていた。

||‘‐‘;||レ「……なにか、用ですか」

あまりに無意味な問いかけだった。当たり前のように
その襲来者は返答をせず、変わらず目の前の獲物を眺めている。

(;`・ω・´)「っ………」


いままでの経験上から断言できた。
このハンターの要求、望みなど聞かなくてもわかる。


「金を寄越せ」「そして死ね」だ。



                     .

626名も無きAAのようです:2012/12/14(金) 22:02:26 ID:KYRNhUOs0
今日はここまで。眠さが限界ですので。よい夜を。

627名も無きAAのようです:2012/12/14(金) 22:04:05 ID:k8K5I4t.0
おつー
ハラハラするぜ、また次を楽しみにしてる

628名も無きAAのようです:2012/12/14(金) 22:14:50 ID:sNISGESg0
おつ

629名も無きAAのようです:2012/12/15(土) 00:22:16 ID:xh61z38Y0
乙!しびれるぜ

630名も無きAAのようです:2012/12/15(土) 19:52:40 ID:gkOzk75s0


631名も無きAAのようです:2012/12/15(土) 22:40:32 ID:S0gEu/gs0
おつ

632名も無きAAのようです:2012/12/31(月) 09:41:01 ID:Vu796Qi6O
脇役ハンターが輝いてるな

633リプライズ投下 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:18:27 ID:j2823KTo0


―― ハーモニー 大通り


(;`・ω・´)「………!?」


入り組んだ裏道を抜け、大通りを出てすこし歩いた先のことだった。
異様な光景――木箱やダンボールが滅茶苦茶に乱雑している――が
まず目に飛び込んできて、それから、見知った二人の顔を視認した。


(;`・ω・´)「阿部さん! エノーラ!」


いかにもそれはノーナンバーズの二人だった。生死不明で
ぐったりした状態の阿部を、エノーラが必死に呼びかけている
その光景に、シャキンはいち早く駆けつける。傍のヘルメットを
蹴り飛ばす勢いで、動かない阿部に抱きついて、

(;`・ω・´)「あ、阿部さんッ!!!!!!!!!」

返事はなかった。シャキンは唾を撒き散らしながら、

(;`・ω・´)「エノーラ!! どういうことだよ!?」

||‘‐‘;||レ「わからないよッ! 私が来たときには、もう……!」


シャキンは再び、阿部の容態を確認した。頑丈なはずの防護シャツ
を重ね着しているが、そのどれもが焦げて黒ずんでいる。更に
注意して見てみると、いたるところに銃痕と滲んだ血があった。
額が切れてい、流血した痕が残っている。脈は確認できるため、
死んでいはいないだろうが、重体には違いなかった。

634リプライズ投下 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:20:19 ID:j2823KTo0


(;`・ω・´)「これはひどい」

||‘‐‘;||レ「動かした方がいいのかな……ここにいたら危ないし」

(;`・ω・´)「……や、首が骨折してたら危ない……。ぼくが
        ……ここは……」

言葉はしかし、そこで途切れた。

砂を踏む、何者かの足音を聞いたからであった。

||‘‐‘;||レ「ひっ……」

エノーラが小さく怯えた。ゆっくりとシャキンは振り返る。
そこには、残党らしきハンターが一人、下卑た笑いを浮かべて立っていた。

||‘‐‘;||レ「……なにか、用ですか」

あまりに無意味な問いかけだった。当たり前のように
その襲来者は返答をせず、変わらず目の前の獲物を眺めている。

(;`・ω・´)「っ………」



このハンターの要求、望みなど聞かなくてもわかる。


「金を寄越せ」「そして死ね」だ。



                     .

635 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:22:19 ID:j2823KTo0
.


(;` ω ´)「………」


心の中で、シャキンはなんどもなんども毒づいた。
恩人の阿部が瀕死の状態で、友人の女性は怯えている。
この状況、覆しようのない絶体絶命。自分は何をすべきなのか。

戦闘の二文字が頭に過ぎっただけで、ふくらはぎの傷が
またも痛んで、心が竦んだ。しかしどうやって切り抜ければ、
自分がしないといけないのに、助けなくちゃいけない人が、いるのに。


(;` ω ´)「……なんで……」

ふと、目を地面に落とすと、その合間に武器を発見した。
それは紛れもない、兄者がエノーラに託したリボルバーだった。
エノーラの腰で頼りなく揺れるホルスターのなかで、ぎらりと黒光りした。


(;` ω ´)「............」



―― なんだよ、なんでなんだよ。絶対に来て欲しくない
   タイミングでお前は来ちまうんだ。このときだけは、
   阿部さんを安全な場所に移す、この時間だけは、邪魔されたくないのに。


                .

636 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:27:16 ID:j2823KTo0


(;` ω ´)「――ふざ、けんなよ……」


シャキンはやおら立ち上がった。素早くエノーラの持つ
拳銃を抜き取ると、険しい表情に変化したそのハンターに向かって、


実弾を放った。それも、顧みない乱射をしながら、



( `;ω;´)「ふざけんなよッ! こっちは必死なんだよッ!!
         阿部さんを助けなくちゃいけない!
         ハーモニーを取り返さなくちゃいけない!!!」


その射撃に対応して撃ち返してくるハンター。
鉛玉がお互いの身体をえぐっていく。


||‘‐‘;||レ「シャキン!」

( `;ω;´)「必死なんだよッ!! 生きるのにも、
         助けるにも必死で頑張ってるんだッ!!
         それを、お前らがッ……へらへら笑って
         いろいろ奪ってくお前らがっ……!!!

         ふざけるなよ!! ふざけるなァアアッ!!!!!」



青年の慟哭は、相対したその男が絶命するまで続いた。
そしてそれでもなお、彼は涙をながし続けたのだった。……


・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・


                    .

637 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:30:53 ID:j2823KTo0
.

―― バイフック 戦場と化した酒場


火薬と血との臭いが、狭くも広くもない木造りの酒場を満たしている。
二人の男が相対し、相手の死角に隠れようとする靴の擦れる音、
それと荒い吐息が、狭くも広くもないバイフックで絶え間なく響いた。


( ´_ゝ`)
(メ'A`)


先程と違うのは、銃を多用しなくなったことであった。
この袋小路のようなバイフックでは、リロードの時間さえ惜しく、
時間がたつにつれて銃弾の重要性が増していった。

(;'A`)
( ´_ゝ`)

更に言えば、体力が残っていたドクオがダメージを負ったことにより、
動きの速さが互いに等しくなってしまったのである。

ドクオは兄者の姿を視認すると、素早く横倒れの丸テーブルの裏に身を隠す。
兄者はゆっくりと近づいて、そのドクオの隠れた壁を凝視する。


(;'A`)「(この状況はまずいぜ……)」

           .

638 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:34:02 ID:j2823KTo0

兄者の立てる足音に耳をそばたてながら、

(;'A`)「(
俺が兄者に優っていた唯一の、決定的なアドバンテージ……
     体力が削られていく、この状況は非常に不味い……。

     兄者自身も確実に体力を消耗しているが、人間の体力は
     ある程度下回ると反応速度やらが著しく下がる……。そこに、
     同じ土俵に引き込まれたら、俺に勝ち目はないッ!!)」

息を整えようとするも、鼓動は早まるばかりだった。

(;'A`)「(時間を与えれば、兄者の体力もちょっぴりだが回復しちまう。
     現に兄者はさっきより機敏になりつつある。……くそ、あの一撃を
     ミスったのはキツすぎる。あそこからズルズルとこんな展開にさせられちまった)」

ドクオは汗塗れの掌を、壁にしている丸テーブルの支柱で拭いた。



(;'A`)「(だが、こっちにもまだナイフは残っている。……それに、
     今ならまだ! 兄者のスピードを上回っているッ!!)」

( ´_ゝ`)


                 .

639 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:37:25 ID:j2823KTo0
.

( ´_ゝ`)「(流れはこっちに傾いている……)」

兄者は驚くほど落ち着いていた。流血も
止まり、傷跡から響く痛苦もゆるやかに収まってきている。

ドクオの隠れた丸テーブルを見やった。影から、ドクオの焦りが
吹き出ているのを感じる。だらしなく倒れたテーブルは、
ほんのすこしの衝撃でころころと独楽のように動きそうだった。

( ´_ゝ`)「ふっ」

ならば、その壁を撃ってやればいい。貫通はしないだろうが、
銃撃の弾みでテーブルの影からドクオの身体は剥き出すであろう。

ついでにリロードをしてから、兄者は実行するつもりだった。
しかし、弾を詰めようとしたその瞬間だった――


( ´_ゝ`)「ッ!?」


状況が変わった。そのテーブルの影から、たちまち殺気が漏れ始めた。
隙をついてやろうと油断した瞬間に、ドクオが反撃の意思を見せた。


――丸テーブルが浮上し始めた。ドクオが死角を維持しつつ、
いかにもそれを持ち上げたのだった。壁から盾に変わった瞬間だった。

640 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:44:08 ID:j2823KTo0


(#'A`)「(……ぅらぁあああ!!!)」


ドクオはテーブルの支柱を両手に持ちながら、兄者の
いる方向に向かって突撃をした。兄者がリロードをしだした
その間隙を突いた。装填状態から撃つことはできない――


(;´_ゝ`)「ちぃっ!」

兄者は反撃しようにも、両手が塞がっている。蹴りは
隙が大きいうえにその場凌ぎにしかならない。避けるしかない、
しかし、駆け出そうとしたその一刻に、


(;´_ゝ`)「ぐぉ!!」


物凄い勢いで丸テーブルの平面が、兄者の前身と衝突をした。
そのまま兄者の身体は壁に叩きつけられ、更にその状態で、
テーブルがふたたび圧迫を加えていった。

(#'A`)「おらあ!!」
(;´_ゝ`)「っ!!!」

激突のせいで、兄者の手元から銃弾がこぼれ落ちた。

                .

641 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:47:51 ID:j2823KTo0

ぎり、ぎり、と音がする。

(;´_ゝ`)「っ………!」
(#'A`)「ッ………!!」

ドクオは圧迫の力を緩めず、体重を乗せてますます強めていく。
兄者は状態が状態だけに身動きも取れず、体力をじりじり奪われていく。
これでは落とした弾を拾うことも出来ない。それどころか、
圧迫されたせいで、塞がりかけた背中の傷が再び痛みはじめた。


ぎり、ぎり、ぎり、ぎり、、、


(;´_ゝ`)
(#'A`)

充分な力を加えてから、唐突にドクオはテーブルを引っ込めた。
兄者が、ほんのわずかに解放される。たまらずふらつく兄者だったが、

(;´_ゝ`)!

驚異は再びやってきた。ドクオは、今度はテーブルをさながら
野球のバットのように振り回してきたのだった。丸テーブルの側面が、
兄者に向かって、物凄いスピードで向かっていった。そして、



(; _ゝ )「――!!」

鈍い音がした。そのまま、兄者と激突し、兄者はもろに衝撃を受けた。
受身も取れないまま、兄者は倒れて床を転がった。
しかし拳銃だけはしっかりと握り締め、庇うように両手で守っていた。
 
                 .

642 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:51:25 ID:j2823KTo0


(メ'A`)「―――」

丸テーブルを放り投げ、ドクオは駆けた。駆けた先は
無論のこと兄者の元だった。ドクオの手元には再び、
怪しく光るキッチンナイフが握られていた。

そしてその刃先は、兄者の太腿に突き立てられようとした。
防弾加工されたジーンズに守られた太腿、それでも
戦闘で破れた箇所を狙って、鋭い刃が突っ込んでいく。


そして、

(;´_ゝ`)「っぐ!」

熱を帯びた激痛が、兄者の左太腿に走った。筋肉をずたずたに
引き裂いて、血管を貫いていくドクオのナイフ。


(;´_ゝ`)「くぅ……!」

だが、勢いをつけてナイフを突き付けたために、ドクオの
モーションはわずかに止まった。兄者はほんの少し体勢を変えると、
銃口をドクオに向けた。

(メ'A`)「!」

そして発射する。ドクオの胸元に鉛玉が乱暴にぶつかった。

643 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:53:41 ID:j2823KTo0

(;'A`)「ァアッ!」

衝撃で後ろへ倒れそうになった。肋骨にヒビのはいる感覚。
予想していなかった反撃故に、受けたダメージも大きかった。

しかし、すんでのところで体勢を立て直した。
それから素早く兄者を見やった。
兄者は起き上がろうとしている。が、


(;'A`)「………(これでいい)」


ドクオは後ろ足でスイングドアまで移動していった。
そうして、バイフックから立ち去ったのであった。


・・ ・・
・・ ・・・


                .

644 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 18:58:56 ID:j2823KTo0


(;´_ゝ`)「……はぁ……はぁ……」

兄者の身体に異変が起きたのは、それから間もなくのことであった。
応急処置で左太腿を止血してから直ぐのことだった。

立ち上がることが困難になった。たとえそれに成功しても、
歩こうと足を踏み出せば、また転びそうになるのだ。

身体が妙に火照った。動悸が更に激しくなった。
頭痛が起きてきた。倦怠感と、気持ち悪さが身体を襲った。

(;´_ゝ`)「これは……アル、、、コールか……!」

床に転がったそのキッチンナイフから、血の臭いに混じって
きついアルコール臭がプンと漂った。蒸発しきっていない、その純粋な臭い。

(;´_ゝ`)「……ド、クオ、め……」

ドクオのナイフには、度数のきついスピリタスが塗られていた。
蒸発すれば、隙をついてふたたび垂らし、何度も何度も機会を伺った。
直接アルコールを注入してやるために、

一突きで兄者の身体を戦闘不能にするために。


             .

645 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:03:30 ID:j2823KTo0

(;´_ゝ`)「うう……!」

よろけながらも、しかし兄者はドクオの後を追おうとした。
スイングドアに手をかけ、ふらふらのまま外に出た。

夕焼けに染まった廃墟のハーモニーが目に飛び込んできた。
ハットを被っていても分かる、強烈なその日光。

一歩進むだけでも苦痛だった。アルコールによる身体の不調が、
傷つけられた筋肉が、傷跡に響く痛みが、襲いかかってくる。
太腿につけられた深い傷は、兄者の歩行をさらに困難にさせた。

しかし、体力もとっくに限界を超えていた。ほんの
一秒でも休んでしまえば、兄者の身体は倒れ、そのまま動けなくなる。
絶対的な予感が兄者にはあり、またそれだけは避けようとしていた。

痛みの中、進んでいくしかなかった。
死が、着実と兄者に忍び寄っていく。


(#´_ゝ`)「(上等じゃねえかァっ……!
       流れ星は、燃え尽きるまで進み続けるッ……)」



                 .

646 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:08:07 ID:j2823KTo0

真っ赤に染まったハーモニーでは、夕焼けが多くの影を伸ばしている。
ただでさえ朦朧としてきた兄者にとって、ドクオを捜すなど
無謀きわまりないものだった。


(;´_ゝ`)「……どこ、だ……ドクオ……どこに、いやがる……」


広場の中央で、ふらつきながらも兄者は動いていた。

ドクオを捜すために。人生に花添えるために、

ドクオとの死闘を望んでいた。



(;´_ゝ`)「で、出て……こいッ……」


(; _ゝ )「………俺と……戦えェ……!」



砂を擦る兄者の足からは、血が垂れていく。しかしその血がすぐに
見えなくなってしまうほど、太陽は真っ赤に広場を照らしている。……


                     
              .

647 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:11:50 ID:j2823KTo0

(メ'A`)「(……兄者が、来ている)」

建物の影に隠れながら、ドクオは広場で呻く兄者を観察していた。
やはり逆光のせいでよく見えないが、動きからして、
満身創痍なのは確かだった。今にも膝から崩れそうな様子だった。

(メ'A`)「(……堅実に行かせてもらうぜ、俺はよ)」

銃を構えながら、ドクオは息を潜めた。
兄者の声は届かない。射程距離に入ったら、攻撃を開始する――



(メ'A`)「!?」



――つもりだった。


しかし、いきなり予想外の展開が起こった。……



                 死角からの、狙撃。

                   .

648 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:14:23 ID:j2823KTo0


―― 裁判館 2F


(´<_` )「お、おい……!」


(´<_`;)「兄者ッ!!」

窓の外に広がる光景。紅く染まった大地に立ち尽くしていた
兄者が、突然、背後から何者かに狙撃されたらしく、ばたりと倒れた。

死角からの狙撃。弟者は冷や汗を垂らして驚いた。

ガラスに顔をつけながら、弟者は兄者の様子を伺った。
しかし兄者はひくひくと痙攣したまま、立ち上がろうとしない。


(´<_`;)「く……!」

兄者から目線を外し、狙撃犯を探す。すると、近くの建物の
バルコニーに居るのを容易に発見した。犯人は見知った部下の
一人だったが、彼はヘッドショットを食らったようで、既に事切れていた。


信じられないことだが、兄者は倒れる間際に反撃を完了していたらしい。
そんな実の兄を、弟者は再び注視しはじめた。


                     .

649 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:18:33 ID:j2823KTo0
.

(´<_`;)「………」


兄者は、必死に立ち上がろうとしている。
両手で砂を掴みながら、起きようとしている。
しかし、足に力が入らないようで、なかなか上手くいかないようだ。

遠くから観察しても、兄者が死に直面しているのは容易に察せられた。
弟者は、胸のうちでこみ上げてくる不思議な感情に動揺しつつも、
兄者が起き上がるのを必死に見守っていた。

(´<_`;)「……死ぬというのか、、、兄者よ……」

そう呟くと、たちまち脳裏に今までの思い出が蘇ってきた。


物心つかないうちから、生きるために互いを支え合っていた少年時代。
パイク・プレース・マーケットで、隠れながら共に食料を求め合ったときを。
マフィアの下っ端をしながら、経済状況を支えてくれた兄者。
大学に進学できないと涙を流したら、「俺がなんとかする」と言ってくれた兄者。
そうして必死にアルバイトをした兄者。それでも、入学費には届かず、
申し訳なさそうに項垂れてた兄者。悪の道に入ることに賛同してくれた兄者。
死に怯えることなく、最強の切り込み隊長として活躍した兄者。
そうして、人形のように振る舞いつつも、俺の手として護衛として徹した、おれの、あに。


(´<_` )「………」


             .

650 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:20:40 ID:j2823KTo0
.




(´<_` )「くそ……!」


今すぐにでも駆け寄りたいが、それが出来ない自分が惨めだった。
この部屋から出ようとするだけで、恐怖で胸がいっぱいになる。
築き上げてきた権力の崩壊を、認めてしまうことになってしまう。


帰ってこい、兄者。


(´<_`;)「死なないでくれ………!」



                        
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
             .

651 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:25:27 ID:j2823KTo0
.

(  _ゝ )



(メ'A`)「………」

ドクオもこの状況を、ただ見守ることしか出来なかった。
頭の中では、これが最高の攻撃の機会ということは理解できている。
しかしそれを、ドクオの矜持が否定をした。この機に乗じて
追撃することは、プライドが許さない。かといって、
救出も理の外にありすぎて、結局ドクオはアクションを起こせないでいた。


(メ'A`)「(倒れる間際にヘッドショットを成功させるなんて、あの男、
     まじで常識外に生きてやがる……。奴に銃がある以上、
     真正面から行くことも出来ねえが、どうするべきか)」


そのまま、何分か過ぎ去った。兄者は起き上がろう
としては失敗を繰り返し、戦闘態勢を取れないままであった。
目を背けたくなるほどの、哀れな様子で這っている。

(メ'A`)「(……これで、終わりなのか……?)」


客観的に
見ても、兄者の容態は戦闘不能扱いされるものであった。
多量の出血、疲労、無数の深い傷、身体を混乱させるアルコール。

だが――


                .

652 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:27:17 ID:j2823KTo0
.


(; _ゝ )「くぅ……!」


広場の中央で、俯せに倒れている。
起きようと砂を掴んでも、筋肉が言うことをきかない。
すぐに力が抜けてしまい、また地面に衝突をする。

身体が、地面にへばりついているかのようだった。
血と砂に塗れた兄者の吐息には、時折、咳が混じった。


(; _ゝ )「………!」


―― ここで、死ぬっていうのか……?
   あんな安っぽい弾を食らっただけで、
    俺の命はここで尽きちまうってのか……?


(; _ゝ )「(命なんざ、惜しく ね ェ ……!)」


(; _ゝ )「(問題は、死に様って奴だ……!)」


               .

653 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:30:34 ID:j2823KTo0

―― 自分の人生はどうしようもない糞なことなんて、ガキの頃から知っていた。

―― 明日も無けりゃ夢もねえ、希望なんてとうの昔に捨てちまった。

―― だからこそ、弟者の示したこの悪の道……覚悟と命だけの世界が、

―― 命を、魂を納得出来るほどに、散らしてくれる暴力の世界が、

―― とても、とても眩しくて……この世界で輝こうと誓った。


(; _ゝ )「(明日なんかいらねえッ……未来がどうなろうと知らん!
        今、この一瞬だけだ……俺が望むのはこの一瞬だけ。
        負け犬が唯一輝ける、流星のように燃え尽きる、

        決闘が!! ドクオとの決着が!! 俺の望みッ!!!)」


再び、手に力を込めて、立ち上がろうとする。

               .

654 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:35:14 ID:j2823KTo0
.

ありったけの力を込め、足に力を込め、身体を震わせ、



―― そうだ、俺は、俺は俺の魂を、

(; _ゝ )「――全うさせるためにぃいいッ!!!!」

(メ'A`)「!?」



兄者は立ち上がった。
そうして、慟哭のように、



(#´_ゝ`)「出てこいドクオォオオオオッ!!!」


喉が避けるほどに絶叫する。決闘だ、それだけが望み。
そのためなら銃など要らぬと、それを投げ捨てて、


(#´_ゝ`)「つまらねえじゃねえかよぉおおッッ!!!!」




                   .

655 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:40:39 ID:j2823KTo0
.


(メ'A`)「………!」


物陰から、叫んでいる兄者を眺めていた。
兄者は銃を捨ててまで、ドクオとの決着を望んでいる。


(メ'A`)「(正気じゃあないぜ、この男……! そこまでして、
     戦いを望むっていうのか!?)」


ドクオの
足が一歩、前へ出る。


(;'A`)「(俺は戦闘狂でも何でもねえ、単なる学者だぜ!
     夢のためなら命を賭けても、決闘のためには死ねねえ!
     戦いに対する誇りなんざ、お前と違ってこれっぽっちも――!)」



そして、もう一歩、


               .

656 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:45:46 ID:j2823KTo0
.




( ´_ゝ`)「………」


( ´_ゝ`)「ククク……」



(;'A`)「………!」


ドクオは更に二三歩動いて、兄者の眼前に、完全に姿を現した。



(メ'A`)「(だが、だが、この男は"納得ずく"で倒すしかねぇ……!)」


( ´_ゝ`)

(メ'A`)「(この俺がだ!!)」




           .

657 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:48:13 ID:j2823KTo0

血と泥に塗れた兄者は、ほのかに笑顔を見せながら、


( ´_ゝ`)「おいでなすったかい」


(メ'A`)「……パスワードのためさ。わざわざ出てきてやったぜ。

    理屈もいらねえ、理論も知らん。ただ、心の底から、

    信念って奴で、お前を倒してやるよ……アレン・ジャーブロ!!」

ドクオも、ホルスターごと銃を投げ捨て、ゆっくり兄者に近づいた。


( ´_ゝ`)「………!」


( ´_ゝ`)「なら、決着のときだな……!」


                 .

658 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:49:58 ID:j2823KTo0

・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・


(´<_` )「兄者……」



血と泥に塗れながらも、兄者は絶叫をしながら立ち上がった。
そうしてやって来たドクオ。一騎打ちは目前だった。


どうしてそこまで戦えるんだ。
そんな言葉は無粋もいいところなのだろう。


保身も未来も捨てた兄者の心意気は、情熱は、
もう弟者には眩しいものだった。懐かしささえ感じさせる、そんな。



               .

659 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:53:09 ID:j2823KTo0
.


(´<_` )「………」

(´<_`;)「は、ははは……」




兄者を見続ける。

おれは決着がつくまで、ずっと見ることになるだろう。

兄の勇姿を、最後の晴れ舞台を。




(´<_` )


(´<_` )「流石だな、兄者……」



・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・
               .

660 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/20(日) 19:54:35 ID:j2823KTo0
.









―― ハーモニー 中央広場








                          .

661名も無きAAのようです:2013/01/20(日) 20:00:56 ID:76bVaZkk0
乙!明日も投下とは!嬉しいでござんす!

662名も無きAAのようです:2013/01/21(月) 00:08:58 ID:Eyy.D00g0
乙!熱いぜ!
兄者流石すぎる……!!

663名も無きAAのようです:2013/01/21(月) 09:56:43 ID:N8QZpaZ20
おつ
なんかウルッときちゃったよ

664名も無きAAのようです:2013/01/21(月) 16:35:20 ID:NUezLvvQ0
兄者マジで男前だわ…どうなるか楽しみ
乙乙!

665名も無きAAのようです:2013/01/21(月) 22:01:20 ID:Eyy.D00g0
ついに決着か……!?

666リプライズ投下 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/22(火) 15:42:06 ID:s37uEuCU0
.









. ―― ハーモニー 中央広場








                          .

667 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/22(火) 15:44:02 ID:s37uEuCU0
.



その空間にて。ひと呼吸おいてから、


( ´_ゝ`)

(メ'A`)「――忠告だけしよう。これ以上、無理したら間違いなく死ぬぜ?」

ドクオは、諭すような口調で兄者に向かって、

( ´_ゝ`)「………」

(メ'A`)「多量の出血、極度の疲労、どうして今立ってんのか不思議なほどだ。
    ……それを"覚悟"というなら、俺はもう何も言わん。だが……」



血染めの兄者は、しかし愉快そうに、


( ´_ゝ`)「"明日どうなろうと、どうでもいい"……さ」

(メ'A`)「………?」

夕焼けのハーモニーで、二人の男が対峙している。


( ´_ゝ`)「俺にとっちゃあ、未来なんてとうに捨てたゴミに過ぎん。
       今この一瞬だけを、死ぬ気で生き抜く。死に様が、そのまま生き様さ。
       ……あるいは、俺はシアトル時代の過去の亡霊なんだろう」

668 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/22(火) 15:48:01 ID:s37uEuCU0
.



ドクオを見据えつつも、どこか遠くを眺める表情になって、

( ´_ゝ`)「あのときの情熱が忘れらんねえだけかも知れねぇ。
       が、どっちにしろ、俺に明日なんざいらねえんだ」

(メ'A`)




兄者は、「お前もそうだろう」と呟いてから、息を整え、


( ´_ゝ`)「考古学なんて過去に生きてェやがる……そうさ、
       過去に生きた者同士、明日を捨てた決闘を……
       しようじゃ…… ね え か ァ ッ ! ! ! 」

(メ'A`)「!」


一瞬の躊躇いの後、ドクオが駆けだし、一気に距離を詰めた。


                    .

669 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/22(火) 15:50:57 ID:s37uEuCU0

(メ'A`)

勢いをつけて、肉弾戦の射程に入ると、すぐさま
右拳を腰のあたりまで引いて、打撃の準備に入った。
いまだ兄者は動かない。間近で見るに、満身創痍だった。

( ´_ゝ`)

いける。ドクオはこの上ないタイミングで、まず
足払いを放った。ドクオの靴が、兄者の脛を横殴り、
態勢を崩させる算段だった、しかし、

( ´_ゝ`)
(メ'A`) !?

兄者は微動だにしなかった。意外な結果にドクオは
ほんの僅か――ほんの一瞬だけ、自身の勢いを殺してしまった。
それでもテンポの乱れた右拳を突こうとするそのとき、

(;'A`)「――ぐッ!?」

ドクオの首筋に鋭く、重い衝撃が走った。意識していない
左側を襲撃されたらしい。それも、左首筋から神経の集中する裏側に
かけて、猛烈な痛み、それに付随して圧迫感が追従してきた。

(;´_ゝ`)

兄者の反撃は単純で、右手でチョップを繰り出しただけであった。
しかし負傷しているその右手での一撃は、ドクオの予想していない
ものであった。兄者にも同様に、凄まじい痛覚が、電流のようにながれた。

670 ◆tOPTGOuTpU:2013/01/22(火) 15:52:43 ID:s37uEuCU0

(;'A`)

ドクオの右ストレートは、兄者の腹を撫でることさえできず、
虚空を揺蕩って仕舞いになった。加えて身体全体も、チョップの
衝撃そのままに、右側へ倒れ込もうとしていた。しかし、

兄者の左脚――ナイフの刺し傷の生々しいその脚――が、
受身の取れないドクオの身体に、膝蹴りを食らわせようと準備している。
そうして、

(;´_ゝ`)「ぉらああ!!」
(;゚A゚)「!!」

傷に無遠慮なまま、最大限の力を持って、ドクオの身体を蹴りつけた。
ドクオはされるがままに、後方へ飛ばされる。ただちに兄者の左太腿に、
引き裂かれるような痛覚が再来する。流石に追撃は不可能だった。

ドクオは砂地を転がり、脚に踏ん張りをつけて体勢を戻した。
チョップの影響か、脳震盪のような感覚があった。
だが目の前の戦闘に意識しなければならない。


(メ'A`)「くっ……」


すり足をし、少しずつ兄者と距離を取った。
兄者は身体を大きく揺らしながら、こちらへ寄ろうとしている。


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