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ホテル・サイドニアのようです
1
:
名も無きAAのようです
:2011/09/12(月) 23:43:56 ID:v7OA74xM0
お邪魔しまーす
171
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:19:10 ID:1tLvvKhc0
兄者は何も語らず、何も答えない。
だからエノーラにはその真意がまるで読めない。
けれども兄者のおかげで幾分か助けられているのも事実だった。
||‘‐‘||レ「これからお仕事なんですか?」
エノーラは世間話を兄者に持ちかけた。兄者はいつものように無言だが、
しかしエノーラの足元に散らばった蒔の一本々々を拾い上げてくれた。
||‘‐‘||レ「あ、そんな……ごめんなさい」
その蒔を全てエノーラに手渡すと、兄者はやはり何も言わずに去っていった。
エノーラはその後ろ姿に小さくお辞儀をした。
ハンターなんて大嫌いだ。どこか行ってしまえと心の中でつぶやき続けている。
だが唯一、兄者にだけは好意を抱いていた。
そして感謝をする度に、ノーナンバーズの皆に申し訳なさを感じていた。
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
172
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:22:13 ID:1tLvvKhc0
――ふたたび場所と時とが変わって、ホテル・サイドニア。
(’e’)「頼むっ……今日こそァここにぃ!」
セントジョーンズは祈るような
気持ちで、ホテル・サイドニアの玄関に立った。
( ^ω^)「おはようございますお、お客様」
新人らしいドアマンに連れられ、セントジョーンズはロビーにやってきた。
いつも通りのホテル・サイドニアだ。
いつかは自分もここで長期滞在したいとは思っている。
しかし今は、レセプションにもエレベーターにも
目を向けることなく一目散にラウンジの方へ小走りで向かった。
.
173
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:26:00 ID:1tLvvKhc0
― 昼前のティー・ラウンジ。
川 ゚ -゚)
クー・スナオリャはドニアンティーを
味わいながら、ラウンジのシルヴィアン調のソファに腰を預けていた。
カップから口を離して、軽くため息をついた。
それから窓の向こうに広がる火星のだだっ広い荒野を眺め、
ぼんやりと天井の農耕画を見上げた。
川 ゚ -゚)「ふぅ……」
クーには課題がいくつも残されていた。
連載中のコラムのネタ。――また締切に追われそうだ。
忌まわしきハンターの殲滅。――そしてその手掛かりの入手について。
ホテルサイドニアの正体を暴く。――その手掛かりが意外に見つからない。
174
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:30:06 ID:1tLvvKhc0
川 ゚ -゚)「………」
そのどれもがクーの精神や神経を圧迫していた。
膨大な宿題に追われつつ音楽院の
受験勉強に取り組んだ、あの学生時代を思い出す。
……さしあたっての課題は連載のコラムだろうが、ペンを走らす気にはなれない。
ある人から受け取った、ハンターの悪行の証拠――といっても、それ単体では
充分な威力を発揮し得ない――のことで頭がいっぱいだった。
(゚、゚*トソン「あ、あのっ……ドニアンの! お代わりは、大丈夫ですかぁ?」
川 ゚ -゚)「ん。では貰おうか」
(>、<*トソン「はい! 頑張って作っちゃいます☆」
小走りで厨房へ駆けるコンシェールの背中を、
クーは目で追い続けながら「このホテルのIRをくれないかなぁ」などと考えた。
ホテル・サイドニアは非公開株式のため、まともな情報がプレスにさえ届かないのだ。
175
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:33:46 ID:1tLvvKhc0
(’e’)「あ、あの〜」
川 ゚ -゚)「……?」
すると、妙な小男がへらへら笑いながら話しかけてきた。
(’e’*)「ク、クー・スナオリャさんですよねぇ〜!?」
***** *****
セントジョーンズは心のなかで小躍りした。
ようやく探し求めた、クー・スナオリャに出会えたのだから!
川 ゚ -゚)「なにか?」
(’e’*)「あーっとですねー……」
間近で見るクー・スナオリャは格別に綺麗だった。
透き通るような白い肌に、整った鼻梁とフェイスライン。
全てを見通すかのような幻惑的な瞳、
そしてそのじっとりした目線が、自分に向けられている。
176
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:35:39 ID:1tLvvKhc0
(’e’*)「あ〜……その〜……」
(’e’*)「ぼかぁセントジョーンズって言います! よろしくっす!」
川 ゚ -゚)
(’e’*)
川 ゚ -゚)
(’e’*)
(゚ -゚ 川 プイッ「そう・・・」
(’e’;)「(無関心!? ……ていうか、あ……ああ……)」
(゚ -゚ 川
(’e’;)「(や、や、……やっちゃったぁ〜おれ!)」
.
177
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:43:14 ID:1tLvvKhc0
見つめ合うと、素直にお喋りできないもんである。
それも目当ての人物(おまけに超のつく美人)、初対面ともなれば尚更だ。
セントジョーンズにとってはテヘペロもいいとこなミスである。
しかし、これはクーにはどう映ったかというと、
(゚ -゚ 川「申し訳ないがナンパ師には興味がないので」
(’e’;)「あっあ、あ! いや!」
(’e’;)「違います! ナンパとかじゃないです!!
用があってぇ、クーさんに話しかけたんす!!」
(゚ -゚ 川「私はあなたに用がない」
(’e’;)「うわぁ〜〜!(やっちまったぁ!)」
(゚、゚#トソン「お客様、当ホテルの品位を乱すような行為は謹んでいただけないかと」
(;’e’)「あっ! ちが! 違うんすよこれはぁー、ワケがぁー」
(゚、゚#トソン「いずれにしろクー様からはお離れくださいねェお客様!」
(゚ -゚ 川「………」
(;’e’)「あの、あの、……あうあう」
178
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:47:34 ID:1tLvvKhc0
(;’e’)
「あ……あ……その……」
やってしまった。これではただのナンパに失敗した哀れな小市民だ。
おまけに怒り狂ったコンシェールからは慇懃無礼な言葉の洪水が飛び出てくる。
(^、^#トソン「反対側のピアノ側の席をご用意させていただきますねェ」
ここは一旦離れるべきか、と考えた
辺りになって、ドクオの後ろ姿が脳内に浮かび上がった。
ドクオは今……無謀な挑戦を行い、命さえ落としかねない状況だ。
もしここで自分が引き下がれば……時間のロスが生まれてしまえば……
(;’e’)
絶対に、許されない結果が待つことになる。
.
179
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:52:12 ID:1tLvvKhc0
.
('A`)『お前に任せたぞ、セントジョーンズ!』
バイクに乗る間際の、ハンター村へ単身向かう間際の、
そのドクオの言葉が頭のなかをこだました。そして、
(; >e<)「すみませんでしたクー・スナオリャさん!!!」
セントジョーンズは考えるより先に、まずその場で土下座をした。
真紅のカーペットに額を擦りつけ、がむしゃらに謝った。
.
180
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 00:56:40 ID:1tLvvKhc0
.
(; >e<)「さっきの無礼は許してくださいぃ! 僕はほんとに用があって!
あなたに会いにきたんです! ドクオさんが、ドクオさんがぁ!」
床に手をつけながら、セントジョーンズは叫ぶように続けた。
周囲が、好奇の目でセントジョーンズの姿を見下ろす。
だが、セントジョーンズには、意地よりも大切な使命があったのだ。
あの小煩い暴力ブサメンからもらった、大事な使命が!
川 ゚ -゚)「ドクオ?」
(゚、゚;トソン「お、お客様? あの……」
川 ゚ -゚)「トソンさん、大丈夫ですから。……ええっと、セントジョーンズくん?
とりあえず、顔を上げてくれないかな??」
(; >e<)「話を聞いてくださるまではぁっ!」
川 ゚ -゚)「聞くよ、聞くさ勿論。……ドクオって、このホテルに泊まっている考古学者の?」
ここでクーが興味を示してくれた。
ようやくセントジョーンズは頭を上げ、
(’e’;)「そうです。そのドクオさんが今大変なことになってるんす!」
181
:
ラスト投下
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 01:04:49 ID:1tLvvKhc0
川 ゚ -゚)「大変、とは?」
(’e’;)「ドクオさんは今ッ! ハンター村に一人で向かってるんです!
サポートしないといけないんです! そのためには、
クーさんの手を借りないといけないんですよぉ!!」
川 ゚ -゚)「……はぁ」
クーから見れば雲をつかむような話であった。
なぜ考古学者が危険極まりない「ハーモニー」に突撃したのか。
そしてなぜ、私の力が必要だというのか。
しかしセントジョーンズという男の、必死な形相から嘘ではないことは伺えた。
何より、ライターとしての興味が湧いてくる内容であった。
川 ゚ -゚)「詳しく一から話を聞こう。トソンさん、ドニアンをもう一つ」
川 ゚ -゚)「……それとセントジョーンズくん。悪いが、一応身分の証明できるものは?」
(’e’;)「あ、はい! 発掘許可証が! 二種です!」
川 ゚ -゚)「なるほど。たしかにドクオ氏の助手らしいね?」
こうして、セントジョーンズは関門であるクー・スナオリャへの取り付けに成功した。
身分証明が出来たことが、なによりクーの警戒心を溶かしてくれた。
持っててよかった、第二種発掘許可証!
.
182
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/02/21(火) 01:06:35 ID:1tLvvKhc0
今日はここまでにします。
短めで申し訳ない。
今度は100レスくらいぶつけるお。
それでは、よい夜を
183
:
名も無きAAのようです
:2012/02/21(火) 18:15:50 ID:MQoWnud.0
待っとる!
184
:
名も無きAAのようです
:2012/02/21(火) 18:37:37 ID:.iEVCr0c0
乙
次回も楽しみにしてる
185
:
名も無きAAのようです
:2012/02/21(火) 22:17:35 ID:PXDJZtswO
兄者…
186
:
名も無きAAのようです
:2012/02/22(水) 07:59:44 ID:Zsr4qVwMO
兄
187
:
名も無きAAのようです
:2012/02/22(水) 13:14:01 ID:1sIXnTvk0
乙乙
セントジョーンズいいやつ
188
:
名も無きAAのようです
:2012/02/23(木) 17:44:13 ID:cIzwFm0QO
乙!
189
:
名も無きAAのようです
:2012/02/25(土) 23:13:07 ID:nPLK/Sr60
相変わらず面白い
190
:
名も無きAAのようです
:2012/02/27(月) 21:36:55 ID:PqVMXc/kO
読み応えがあって素敵
191
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/01(木) 01:30:23 ID:E9OTpzFA0
みんなありがとう。そのレスのどれもが俺のやる気の原動力になります。
で、進行状況は現在30レスくらい。かなり書けたと思う。
100レスうんぬんはまだ厳しいけどね。
ところで今考えていることについて。
SS速報板ってあるじゃん。あそこにこの現行を投下するのはどうかなって。
あそこ見てきたけど、ブーン系もなくはないんだよね。数は少ないけどさ。
だからちょっと、やってみるのもどうなのかなぁって。
願わくばシベリアのように受け入れてくれるといいんだけど。
やるだけの価値はあると思う。感触を確かめたいというか。
だから次は、もしかしたらSS速報板でやってみるかも。
その後はまだ決めかねている。vipに行くか、こっちに戻るか。続投するか。
というわけで、わざわざageて宣言します。
ぼろぼろになって帰ってきたら、慰めてやってね!
192
:
名も無きAAのようです
:2012/03/03(土) 22:19:50 ID:7W2X0TnMO
SS速報は過疎だし冷めてるけど根強い読者がつくイメージ
やるなら野次馬しにいくぞー
193
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/06(火) 01:01:58 ID:O//ZDSNY0
ありがとー
私生活が落ち着いたら移行してみます
定期的な投下が求められそう? なので
194
:
名も無きAAのようです
:2012/03/13(火) 18:55:33 ID:waZVsEx.0
投下します
195
:
名も無きAAのようです
:2012/03/13(火) 22:07:03 ID:zcRrW41c0
期待
196
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 22:25:33 ID:waZVsEx.0
投下量しょぼいけど、頑張っかんね
SS速報はルールよくわからんから明日から本気出すってことで
とりあえず今日はここに投下
197
:
リプライズ投下
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 22:54:15 ID:waZVsEx.0
なぜ考古学者が危険極まりない「ハーモニー」に突撃したのか。
そしてなぜ、私の力が必要だというのか。
しかしセントジョーンズという男の、必死な形相から嘘ではないことは伺えた。
何より、ライターとしての興味が湧いてくる内容であった。
川 ゚ -゚)「詳しく一から話を聞こう。トソンさん、ドニアンをもう一つ」
川 ゚ -゚)「……それとセントジョーンズくん。悪いが、一応身分の証明できるものは?」
(’e’;)「あ、はい! 発掘許可証が! 二種です!」
川 ゚ -゚)「なるほど。たしかにドクオ氏の助手らしいね?」
こうして、セントジョーンズは関門であるクー・スナオリャへの取り付けに成功した。
身分証明が出来たことが、なによりクーの警戒心を溶かしてくれた。
持っててよかった、第二種発掘許可証!
.
198
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 22:55:34 ID:waZVsEx.0
.
.
199
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 22:57:54 ID:waZVsEx.0
――また、ふたたび。時と場所とが戻って、昼下がりの「ハーモニー」。
(´<_` )「我々は監査に会いに行くが……」
( ´_ゝ`)
正門前に停車した白のベンツに、流石兄弟が乗り込もうとしている。
それを部下達が膝を付きながら取り囲んでいた。まさに主人と召使いの構図であった。
(´<_` )「くれぐれも面倒ごとは起こすなよ?」
その言葉に、部下たちは一斉に頭を下げながら「了解しました!」と合唱する。
200
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:01:38 ID:waZVsEx.0
( "ゞ)
流石兄弟を乗せたベンツが荒野を走り出す。
それをデルタは舐めるように眺め続けた。
ベンツが地平線の彼方に去って、ハンターが各々に姿勢を崩したり
職場に戻ろうとする喧騒の中、デルタただ一人だけは膝をついたまま、
門の向こう――見えなくなったベンツを
いつまでも求めるように、目を凝らし続けた。
( "ゞ)「………」
やがてデルタは腰を上げ、そしてずんぐりむっくり体型の一人のハンターに
目を向ける。そいつは欠伸を噛み殺しもせず、馬鹿みたいに口を開けていた。
( "ゞ)「……よし」
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
201
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:07:26 ID:waZVsEx.0
それからわずか一時間後。
ハーモニーに建てられた木造住居の二階にて、
('A`)「おい……騒ぐなよ?」
(;´$`)「う、うぐ……」
('A`)「騒ぐなと言っている。実力行使してやろうか?」
その部屋では、判事風の男がドクオに背後を取られ、コメカミに銃口を
押し当てられ、更に声が出せないように喉越しに声帯を圧迫されていた。
男――判事のスクラフィはなんとかその脅迫から逃れるために、
喉に巻き付いたドクオの左腕を剥がそうとそれを両手の爪で
引っ掻いたりたりしたが、まるで効果が現れなかった。
ばかりか、抵抗すればするほどドクオの腕の力は強くなっていく。
ドクオが撃鉄の音を鳴らすと、スクラフィはすぐさま両手を上げた。
202
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:09:59 ID:waZVsEx.0
(;´$`)「頼むっ……命だけは助けっくれ……
いうことをきく、きくから……」
('A`)「………」
しかしドクオがほんの少し腕の力をゆるめると、
('A`(;´$`)「だっ誰かァー! たす、助けっ……!」
いきなり助けを求めはじめた。
ドクオはそれ以上声が出せないよう、いままで以上に強く首を圧迫し、
そしてこめかみに当てた銃口を下にずらし、
スクラフィの右小指に向けて射撃した。
(;゚$`)「ギッ!? っ……あっ……ぁぁぁ……!」
木目の床に鮮血が滴った。スクラフィの身体は小刻みに震えたかと
思えば、硬直し、また苦痛で震え始めた。
('A`)「まだ叫びたいか? 次はどこを撃ってほしい?」
ドクオは耳元にそっと囁いた。
203
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:16:29 ID:waZVsEx.0
(;゚$`)「っ……! ……!!」
首元のドクオの腕によって、叫ぶことはおろか
まともに息をすることも出来ずにいた。恐怖と痛みが
スクラフィの心と身体を完全に支配し切った。
右小指は焼けたような痛覚に充ちた。心臓の鼓動が信じられないほど
大きくなり、その間隔にあわせて流血していっているようであった。……
ドクオは錯乱状態のスクラフィをしばらく見やると、
そっと拳銃をしまってからその小指に簡易の止血を施した。
それさえスクラフィは気づかずにいる。
ドクオはふたたび銃を握って、もう一度小声で、
('A`)「死にたくなければ言うことを聞け……俺をその倉庫へ案内しろ。
言うとおりにすれば殺しはしない……」
(;゚$`)「うぅ……うううっ!」
('A`)「流石兄弟を裏切るのが怖いか? だがなお前にはそれ以外の道はない。
俺を拒否すればお前は死ぬんだからな。今この場で」
204
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:19:37 ID:waZVsEx.0
('A`)「お前のこれから唯一の生きる道を教えてやろう。
俺をその倉庫へ案内し、俺の発掘ツール及びデータを渡す。
それだけだ。理解出来たらさっそく行動に移してもらおうか?」
(;゚$`)「………っ………!」
スクラフィはそれから、小さく頷いた。
・・・ ・・・・・
・・・ ・・・・
・・・ ・・・
・・・ ・・
夜明け前のノーナンバーズのアジトでのことだった。
ジンの焼け付くような感覚を味わっているドクオに、デルタが近づいて、
( "ゞ)「それ以上飲むな。チャンスは明日しかない」
('A`)「んあ?」
( "ゞ)「明日、お前には奇跡的なチャンスが訪れる」
205
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:22:56 ID:waZVsEx.0
(*゚∀゚)「どーしたんさデルタッ! しかめっ面しちゃってさ!」
( "ゞ)「ついでにお前も聞いておけ、明日ミッションを行う」
('A`)「「ミッション?」」(゚∀゚*)
('A`)「それは一体どんな?」
グラスの中のジンを惜しそうに見つめて、しかし興味深げにデルタに訪ねた。
( "ゞ)「いいか。俺は雑用で重要な仕事は任せられないにしろ、
一応はハンターの側に立っている。だから内情は知ることが出来る。
トップの会議の時間帯、倉庫番のシフトなどをな」
('A`)「なるほど」
( "ゞ)「明日の正午から流石兄弟はマーポールの監査と会うために
このハーモニーから離れる。その離れた間には、倉庫番の
交代の時間がやってくる。俺の知る限り、もっとも間抜けた倉庫番に変わる」
(*゚∀゚)「あー、あいつ? スクラフィ?」
( "ゞ)「そうだ」
206
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:24:43 ID:waZVsEx.0
(*゚∀゚)「知ってるかいドクオ! スクラフィの馬鹿っぷりをさwwwww
あいつったら靴磨きさせんのに水磨きとワックス塗りの区別がつかないんさ!」
('A`)「そ、そりゃ馬鹿な奴だな。……つまりデルタ、こういうことか?
その時間帯に倉庫の物を盗める可能性があると?」
( "ゞ)「ああ」
(*`・ω・´)「な〜にやってんだお前ら。俺も仲間に入れてくれよぉ〜」
べろべろに酔っ払ったシャキンがマジキチスマイルで三人に近づいてきた。
( "ゞ)「ついでだ。お前も聞いておけ。……阿部! エノーラ!」
( "ゞ)「全員の力を合わせなくちゃならないミッションだ」
207
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:31:42 ID:waZVsEx.0
倉庫は裁判館の近くに建てられている。ドクオは脅しをかけるのは
近くの宿舎の、スクラフィの着替えの最中
……デルタの手解きによって侵入した後になる。
しかし脅迫に成功しても、宿舎と倉庫との間の往来を歩く間際に
他のハンターに見つかったら全てが水の泡になってしまう。
よって、
(*>∀<)「きゃぁ〜〜〜!!! いや〜ん!!」
つーとエノーラがメインストリート側で小火騒ぎを起こし、
(普段の給仕の仕事のミスを装い、)
(`・ω・´)b「(いいですよ!)」
('A`) コクン
宿舎の対面に位置する路地裏からシャキンがタイミングを見計らいドクオに
合図を送り、それからドクオがスクラフィを連れて宿舎を後にする。……
208
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:34:19 ID:waZVsEx.0
スクラフィがそれでも路地で抵抗しようとすれば、
N| "゚'` {"゚`lリ
宿舎の影に潜んだ阿部が、搾乳の仕事を抜け出してきたその彼が、
ドクオの手助けになるように飛び出してくる算段であった。
('A`)「進め。……よし、鍵を開けろ」
(;´$`)「………!」
わずかに地面に垂れたスクラフィの血痕も、
阿部とシャキンとが後で拭いてくれることだろう。
ドクオはこの作られた真空地帯の中で、倉庫に侵入することが出来た。
('A`)「……中に入れ」
209
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:38:09 ID:waZVsEx.0
ドクオは倉庫をじりじり進みながら、ミッションの現時点での成功に
喜びを感じていた。しかし、まだまだ課題は残されている。
こんなことも考えた。ノーナンバーズのメンバーが居なかったら、
セントジョーンズの仕事が成功できなかったら。
きっと何もできないままであっただろう。
つくづく無謀な賭けをしたものだと苦笑しかけた。
だが、ハンターに発掘品を奪われて泣き寝入りなど、絶対にごめんであった。
(;´$`)「……ここに、ある」
(;´$`)「だがお前の発掘物は弟者の鍵が無ければ」
('A`)「さしあたってはこの中にある俺の発掘ツールだけでいい。
メッターはあるか? カメラは、その中のデータは?」
(;´$`)「ある……と思う」
('A`)「それでいい」
210
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:44:20 ID:waZVsEx.0
スクラフィが番号錠を拙い動作で解錠していく。
その後頭部に銃口を向け、脅しをかけ続ける。
ドクオはスクラフィが落ち着きを取り戻し、緊張までも
弛緩しているのを感じていた。
おそらく、発掘品が奪われないことに安堵したのだろう。
これ程度のミスなら、流石兄弟も許してくれると考えているに違いない。
金庫が開いた。ドクオの発掘ツールがそこに眠っていた。
スクラフィからメッターとカメラを渡される。
ドクオはさっそくその発掘カメラを確認した。カメラの中の
写真のデータは抜き取られていた。
学術的機能には気概は加えられていなかったが、
('A`)「データはないのか?」
(;´$`)「さぁ……知らないよ!」
('A`)「………」
ドクオはもう一度、発掘カメラに目を落とした。
バッテリーの残量は充分で、送信機能も問題はない。
211
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:49:23 ID:waZVsEx.0
('A`)「そうか……」
(;´$`)「や、やめてくれ! データは俺の管轄外なんだッ!
こっから先は俺も知らねえ! ほんとなんだってば!!」
('A`)
ドクオはスクラフィににじり寄った。スクラフィが小さく「ヒッ!」と
声を挙げたが、構わずに……スクラフィのホルスターから拳銃を奪って、
('A`)
そのまま倉庫から出ていった。
(;´$`)「……え?」
スクラフィは呆然としながら、その後ろ姿を眺め続けた。……
212
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/13(火) 23:56:22 ID:waZVsEx.0
"一仕事"を終えると、ドクオと阿部とシャキンはアジトへ戻った。
といってもシャキンは本来の残業に取り掛かろうとすぐに出ていったが、
N| "゚'` {"゚`lリ「うまくいったようだな」
('A`)「ああ」
('A`)「発達した文明と学問の中、古生物学者が
何を使うかに、
よっぽど頭を働かせなかったらしい」
N| "゚'` {"゚`lリ「けど、これが失敗したらどうするつもりだったんだ?」
('A`)「相当妥協したプランになってたさ。ふふ」
ドクオはカメラを弄んだ。そして、阿部の持ち込んだ本日の新聞に目を通す。
213
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:02:32 ID:x215COcw0
N| "゚'` {"゚`lリ「クーのコラムかい?」
('A`)「合図を送るようにセントジョーンズの方から伝えたんだ。
もし了承してくれたなら、コラムに特定の一文を入れてくれって」
('A`)「………」
('A`)「……あった」
N| "゚'` {"゚`lリ「動いてくれるのか?」
('∀`)「ああ! セントジョーンズの奴。成功させやがったな!」
アジトの
なかでドクオは歓喜の声を挙げた。
本日のミッションでの功労品のおかげで、あの憎き流石兄弟……
いや、ハンター組合全体に決定的なダメージを与えることが出来る。
ドクオの反撃は、これ以上ない形で成功することになった。
214
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:14:06 ID:x215COcw0
発掘用のカメラ。これの存在意義は、偽証の殲滅のために存在する。
学者それぞれに支給され、その写真データにはその学者の名前が不変に埋め込まれることになる。
更に、日付と場所を入力することで、
('A`)「バックアップとして、研究室にデータが自動送信される」
N| "゚'` {"゚`lリ「それで、ちゃんと送信は出来たかい?」
共に「ハーモニーの現状」を写真に収めた阿部が、すこし不安げに聞いてきた。
('A`)「大丈夫。元々の写真データ取られた以外は何も変わってなかった。
……俺が仲間になることを皮算用して、変にイジりたくはなかったんだろう。
それにさ、そのデータもロック掛かってるからそう簡単には見られないしな」
('A`)「しかしハンターの技術じゃ解析されるのも遠い日ではない。
早いとこ、そのデータも回収しないといけなくなっちまった……」
215
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:17:51 ID:x215COcw0
.
216
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:20:30 ID:x215COcw0
―――― 日の暮れたハーモニー。 裁判館の1F。
(´<_`# )「この無能がァッ!!」
弟者が怒号をあげた。
そして床に転がっているスクラフィを、さらに蹴り上げた。
(;´$`)
真紅のカーペットの上で、ごろんとスクラフィの身体が半回転する。
両手両足を縄で縛られているため、一切の抵抗ができない状態だった。
(´<_`# )「発掘カメラを……発掘カメラを渡しただとォ!?」
(;´$`)「す、すみませ……」
ふたたび弟者が蹴りをいれる。弟者のローファーの靴底はもう、
スクラフィの血で汚れに汚れていた。
217
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:22:33 ID:x215COcw0
( ´_ゝ`)
兄者を含め、弟者の取り巻きは
壁を背にその制裁する様子を眺めるばかりだった。
誰もカメラの性能について記憶していなかった。
兄者を除くそれぞれの判事やハンターは、自身がスクラフィの立場だったら
果たしてカメラを渡していただろうかと思案を巡らせているに違いない。
当の弟者はひたすらスクラフィに暴力を加えていた。
腹立ち紛れの所業だった。スクラフィの顔面をなんども踏みつけて、
それでもまだやり足りないとばかりに、花瓶を振り下ろしたりもした。
(´<_`# )「ふざけやがってっ……! ふざけやがって!!」
肩で息をしながら、弟者は怒りの言葉を吐き続けた。
スクラフィが完全に気絶すると、仕方ないとばかりに携帯タブレットを取り出し、
(´<_`; )「
作戦変更だ。"別ルート"を展開するしかない」
218
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:24:34 ID:x215COcw0
別ルートとは、いかにも「ドクオがどうしても誘いに応じない」
ときのためのプランであった。もし頑なにハンター側に入らないのならば、
ドクオの研究室に刺客を送り込んで、研究資料を無理やり奪還し、
その研究内容を把握した後に、ドクオを始末するという妥協案である。
ハインリッヒに語っていた案であったが、あまり使いたいものではなかった。
なぜならそれは、弟者に屈服しない者を自身の手で確立させてしまうからである。
(´<_`; )
しかし、写真を……このハーモニーの非人道的な現状を外部に
漏らされたのなら、もはやこの妥協案に頼るしかない。
既に、モテナイ大学院のそばにスタンバイしている刺客に電話口から、
(´<_`; )「おいお前ら。大至急その研究室を襲撃しろ!
多少の殺傷ならある程度揉み消してやる!
――今からだ!! たった今からやれ!」
219
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:26:18 ID:x215COcw0
だが、刺客のリーダーからの返答は「無理です」という一言だった。
(´<_`# )「無理だと? ふざけるな!! 緊急事態なんだ!
皆殺ししても許す! 奨励もくれてやる!
サーバーを壊すだけだ!! さっさとやれッ!!」
激昂する弟者の耳に届いてきたのは、俄に信じられない情報であった。
(´<_`; )「…………なんだと?」
(´<_`; )「そんな……そんなことが?」
―― ―――
―― ――――
―― ―――――
('A`)「セントジョーンズを通じて、所長に言っておいた。
研究センターの警備レベルをホワイトハウス並にしてくれとな。
220
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:28:04 ID:x215COcw0
('A`)「警備アンドロイド、警備員を可能な限り導入してくれ、と。
俺が……ハンター村に居る間、そうしてくれと頼んだんだ」
('A`)「そしてセントジョーンズが先回りをして、そのデータを
別の機関へ転送するように仕向ける。……ハンターの手の及ばない場所にだ」
('A`)「クー・スナオリャが、そのデータを基に
……記事を書き、そして……」
というのが、夜中にドクオが説明した計画の流れだった。
懸念材料は山ほどにあった。まずその前に殺されること。
カメラが壊されること。そして、セントジョーンズが失敗すること。
あまりにも不確定要素が多すぎて、いくつもの妥協案を練ってきたが……
('A`)「だが、うまくいった」
スクラフィの背広の裏に取り付けた盗聴器を聞きながら、ドクオはにんまりした。
221
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:31:18 ID:x215COcw0
('A`)「無理に奪還しようとしても無駄だ。別の場所にデータは転送されてるから。
そもそも、研究センターに乗り込めば即逮捕させてやるぜ?」
ドクオは阿部と顔を見合わせた。そして、乾杯をする。
―― ―――
―― ――――
―― ―――――
(´<_`; )「………ッ!」
刺客に「見つからないうちに逃げろ」と指示を出してから、
弟者は冷や汗を流して、計画の破綻する音を脳で感じていた。
(´<_` )「馬鹿な……」
次々と、こちら側の隙を突くような行動をしてくる。
弟者としては、信じられない思いで一杯だった。
222
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:33:42 ID:x215COcw0
(´<_` )「どうして……こちらの隙をこうも……」
あの学者ぶぜいめが。弟者は唇を噛んだ。
そして「ハーモニーの写真データ」も、こうなっては
予め別の場所に転送されている可能性が高い。
こちらの打つ手を確実に潰すために。
―― ―――
―― ――――
―― ―――――
N| "゚'` {"゚`lリ「だが、写真はともかく大学院襲撃はどうして読めたんだい?」
阿部はウイスキーに舌鼓をうつドクオに、そんな疑問を投げかけた。
('A`)「ハンター側が優秀な古生物学者たる俺を勧誘することは分かっていた。
だが、俺は死んでも誘いに乗らないだろう? だから奴らは
仕方なく妥協として、俺の研究データを根こそぎ奪う……
俺が、絶対に勧誘されないと知ったあとでな」
223
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:35:50 ID:x215COcw0
('A`)「はじめにバイフックで弟者がまんまと誘いの言葉を
かけてきたとき、しめたと思ったもんだぜ。あの時点では
俺が仲間になると本気で考えていたみたいだからな。
つまり待ち構えたくせに油断しているとすぐに判った。
あいにく俺はハンターごときに手を貸すつもりはねぇ。
それを奴らが知る頃にはもう、研究センターは強固に守られているって算段だ」
('A`)「たとえ俺を殺したところで、俺の長年の研究データが
全て奪われることはない……。そういう意味じゃ、入村する前で
俺の勝ちは決まっていたもんだ。奴らに渡さずに済むんだからな」
N| "゚'` {"゚`lリ「お前はほんと、いい男だぜ。間違いなくな」
それからアジトにやってきた残りのメンバー、
シャキン、エノーラ、つーがやってきた。ドクオはガッツポーズをしてみせた。
だがドクオは笑顔を振りまきながら、一つの懸念を感じていた。
224
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:38:32 ID:x215COcw0
―― ―――
―― ――――
―― ―――――
(´<_` )「………」
弟者は兄者のガンベルトからコルト銃を抜き取ると、それで
スクラフィの頭蓋を吹き飛ばした。断末魔など耳に入らない。
そうして反動の残滓を感じながら、返り血を浴びながら、
弟者は考えをめぐらし続ける。
( ´_ゝ`)
(´<_` )「これは……俺のミスなのか?」
研究センターの襲撃失敗はともかく、
発掘カメラの件について、弟者は疑問を感じていた。
なぜ自分はあの発掘カメラという危険な道具を杜撰に管理していたのか。
答えは単純で、ドクオにそれの奪還は不可能と踏んでいたから。
225
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:41:09 ID:x215COcw0
(´<_` )「いかに知識豊富な学者といえども……こちらの、
我々の管理体制やシフトを知れるはずがないだろう」
倉庫番のなかで最も「愚かな奴」がドクオの私物を守り、
そして俺が村を離れているタイミング……この隙を、
ハーモニーにきて三日目のドクオが知る手立てはない。自力では。
それにあの学者は無謀に見えて、ある程度の勝算は得ようとするタイプだ。
無鉄砲にスクラフィのバカを脅したら、それがたまたま最高のタイミングだった、
そんな奇跡に縋っていたわけではないだろう。
(´<_` )「俺らのなかに内通者がいるな……」
弟者は小声で結論を導いた。
それも、信念もへったくれもない……原住民の人間が疑わしい。
具体的にいえば、"デルタ"など。弟者はあたりをつけた。
しかし、写真を撮られた今、疑わしき者を洗い尽くすには時間が足りなさすぎる。
226
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:44:18 ID:x215COcw0
(´<_` )「………」
ドクオに交渉するという案がふいに浮かんだ。
奪ったモノをドクオに返す代わりに、口止めをするという……。
(´<_` )「ふざけるな……!」
弟者は自身でそれを否定した。そうして、裁判館のロビーを
血走った目で見回した。たちまち敬礼をするハンター達。
そうだ、こちらには手足などいくらでもある。
そして、「ハインリッヒ」が。
(´<_` )「おいお前ら、"キャリア"の準備は出来たか?」
手下に尋ねると、そいつは「勿論です」と最良の返答をした。
(´<_` )「よし」
227
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:48:25 ID:x215COcw0
(´<_` )「妥協などするものか……! あの学者ごときに!
確実に、確実に手駒にしてやる!」
弟者は忍び笑いをする。
そうとも。カメラを振りかざしたところで、殺人現場までは撮ってはいまい。
ハーモニーの全てが崩壊する決定的瞬間はまだ、得てはいないだろう。
こちらにはハンター組合と、マーポールのバックがあるのだ。
(´<_` )「俺に反撃など、無意味だと身体に教えこませてやる……!」
・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・
・・ ・・・・・・
228
:
ラスト投下
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:50:18 ID:x215COcw0
・・ ・・・・・・
・・ ・・・・・・・
・・ ・・・・・・・・
『兄者よ、火星進出をすることにしたぞ』
『そうか』
『我々流石ファミリーの力を持って、新たな地を支配してやろう!』
『そうだな……』
『浮かない顔だな兄者?』
『そんなことはないさ。期待している』
『……これは、俺達にとって最良の選択なんだ。分かってくれよ』
『ああ、分かっているとも』
『お前を、信じ続けているからな』
229
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/03/14(水) 00:51:19 ID:x215COcw0
投下おわりんぐ
よい夜を
230
:
名も無きAAのようです
:2012/03/14(水) 01:07:20 ID:AY5IT0FE0
乙
いい夢見ろよ
231
:
名も無きAAのようです
:2012/03/14(水) 11:50:16 ID:TLX64P0UO
おつおつ!
大分ハーモニー編終盤にきたな。
232
:
名も無きAAのようです
:2012/03/14(水) 21:45:56 ID:NjfveyGYO
乙乙
233
:
名も無きAAのようです
:2012/03/15(木) 10:58:00 ID:IthaAWiQO
乙
全面戦争だの
234
:
名も無きAAのようです
:2012/03/15(木) 12:14:22 ID:gDwJADPQO
乙!
235
:
名も無きAAのようです
:2012/03/15(木) 19:45:51 ID:IO1P84B.O
乙!ドクオさんかっけぇ
236
:
名も無きAAのようです
:2012/05/16(水) 11:36:44 ID:p.mDnUssO
あ
237
:
名も無きAAのようです
:2012/05/25(金) 10:48:37 ID:xZnkkpqIO
くそーくそー
投下さえくれば人生が充実するのにー
くそーくそー
238
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/05/30(水) 21:48:41 ID:ouYSl9i.0
さいきん無駄に忙しくって書けなかったぜぃ
6/3は俺の作者記念日だからそれまでには投下したいなぁ、出来るかなぁって考えています
239
:
名も無きAAのようです
:2012/05/31(木) 12:11:43 ID:DVjW92BI0
うっひょょょょ!!、
240
:
名も無きAAのようです
:2012/05/31(木) 17:04:10 ID:LVTMt4WMO
jmwtjgpjmtgpmaaaaa
241
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/06/02(土) 22:12:42 ID:RLVYFWI60
ぐっ・・・待ってくれた人達・・・すまねえっ・・・!
明日だとどうしてもレス数が白けるほどに少なくなってしまう・・・
一週間後に投下します、記念日だからと、、、いや、記念日だからこそ、
数レス程度の投下は許されないっ・・・!
あと一週間っ・・・申し訳ないっ・・・!
242
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/06/02(土) 22:13:55 ID:RLVYFWI60
ageちまつた、
一週間後までになんとか30レス以上は拵えるっ・・・!
243
:
名も無きAAのようです
:2012/06/02(土) 22:20:25 ID:30xY0s/.0
がんばれ 待っている・・・!
244
:
名も無きAAのようです
:2012/06/02(土) 23:46:24 ID:CWWqyWP2O
期待しまくってやんよ
245
:
名も無きAAのようです
:2012/06/21(木) 08:04:40 ID:UcLF5ALkO
ざわ・・・
246
:
名も無きAAのようです
:2012/06/24(日) 00:25:15 ID:QstiEkWg0
パソコンをまcに換えたんだが全然仕様がわからんのです・・・
247
:
名も無きAAのようです
:2012/08/07(火) 09:46:23 ID:rNBh9ZVwO
おおい
248
:
名も無きAAのようです
:2012/08/28(火) 12:09:53 ID:RlErClzAO
おーい
249
:
名も無きAAのようです
:2012/09/07(金) 02:58:36 ID:O4QE5unU0
正直遅れに遅れスマンカッタ
言い訳は投下後にしよう。
250
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 13:53:16 ID:qtzFmzVM0
新聞の深き谷にも光射すそれぞれの朝ホテルサイドニア
太陽の位置が少し遠ければ陽光もまた他人の優しさ
しみじみと酔えば恋しきわが故郷汚れ染めたるカード眺めつ
まとめさん
ttp://nanabatu.web.fc2.com/boon/hotel_sidenia.html
久々の投下なんで、ストーリー忘れてる人いるかな? 実は俺もそうなんだ。
251
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 13:54:14 ID:qtzFmzVM0
・・ ・・・・・・
・・ ・・・・・・・
・・ ・・・・・・・・
『兄者よ、火星進出をすることにしたぞ』
『そうか』
『我々流石ファミリーの力を持って、新たな地を支配してやろう!』
『そうだな……』
『浮かない顔だな兄者?』
『そんなことはないさ。期待している』
『……これは、俺達にとって最良の選択なんだ。分かってくれよ』
『ああ、分かっているとも』
『お前を、信じ続けているからな』
252
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:02:27 ID:qtzFmzVM0
図書館によって真実を得た。
勤労によって反抗心を得た。
あとはただ、人生設計をするだけだ。
253
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:07:20 ID:qtzFmzVM0
.
―― サンフラワ内 「ホテル・フーリッシュ」
( ゚∀゚)『おう楽にしとけよお前ら』
( ´_ゝ`)『は、はぁ……』
(´<_` )『ありがとうございます』
( ゚∀゚)『ええっと、アレン・ニコラスにオリバー・トーマスの
ジャーブロ兄弟……流石ファミリーの創始者か。
噂はこの火星にも行き届いてるぜ?
とんだ凄腕らしいじゃアねーか』
(´<_` )『お褒めの言葉ありがとうございます。ナガオカさん』
( ゚∀゚)『ジョルジュさんでいいよ。……ほら楽にしろったらァ〜』
( ´_ゝ`)『あ、はい……』
254
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:11:18 ID:qtzFmzVM0
.
( ゚∀゚)『シアトルねェー……』
ホテル・フーリッシュの南米風の一室で、三人の男が酒を交わしていた。
ジョルジュの背後の大窓にはもう闇しか映っていない。
暖色調のランプだけが部屋を照らしている。
今回が初顔合せであり、ジョルジュは頻りにファイルに
目をやりながら流石兄弟の顔を確認している。
その度に兄者は、居心地の悪さを感じてしょうがなかった。
逆らえない者に評価の目を向けられるのは性分ではない。
そもそもが、目上の人間自体に慣れていない。
反対に弟者はこういった場には慣れているようで、ジョルジュの
グラスが空になる度に、甲斐甲斐しくお酌をしていた。
( ゚∀゚)『兄貴の方が27で……弟は25か、俺と同い年だぜオリバー』
(´<_` )『それは光栄ですね。兄者がなんとも羨ましい』
( ;´_ゝ`)『………』
255
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:13:31 ID:qtzFmzVM0
.
( ゚∀゚)『それじゃさっそく本題に入るか』
弟者のついだ赤ワインにオレンジジュースを乱暴に注ぎながら、
ジョルジュはへらへらと話をし始めた。
( ゚∀゚)『俺ら"ハンター"もまあ大体はおんなじ。マフィアみたいなもんよ。
違うのがシノギにもう一種類増えたってだけかな』
( ゚∀゚)『同じなのはヤク・オンナ・バクチの三種の神器な。
ここらはお前らも手馴れたもんなんだろう?』
(´<_` )『そうですね。我々は特にヤクに重点を置いてきましたが』
( ゚∀゚)『扱ってたのは?』
(´<_` )『ベロセットにシンセメスク、それにドレンクロムも少々』
( ゚∀゚)『ん。うちも似たようなもんだ。仕入れは?』
(´<_` )『マクダウェルからです』
256
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:15:51 ID:qtzFmzVM0
( ゚∀゚)『いいねいいね。頼りになる。うちはヤクはまだ素人裸足でな』
( ゚∀゚)『そんで新たなシノギってのが"発掘"だ。コレがデカい』
(´<_` )『いわゆる、"マーパーツ"ですか』
( ゚∀゚)『そう。俺はな、大学で学んだからちぃっとばかし
知識があんのよ。発掘のノウハウやらなんやらをな。
だから非学術系のグループの中じゃァかなりやれてる方でな』
( ゚∀゚)『たとえばオンナはうちの系列のBランだとワンプ12k。
そんで俺ら本部に入ってくるのは6kなんだが、これを
フル稼働させても週100万が限界なんだよな』
( ゚∀゚)『対して発掘は利サヤがデカすぎる。一回の投資に10万かけて
その百敗が返ってくることもザラだ。エビだとなぁ、
プアでも600万はするし、プリスティンともなりゃァこのビル買えるぜ』
( ´_ゝ`)『すごい……いや、それは本当に凄いですね』
( ゚∀゚)『だろう? うちは現状エビに資金源を頼ってるもんでな。
ただし圧力も相当なもんでな、今はマーポール[火星警察]へのバラ蒔きと
他のサポートに四苦八苦ってもんだ』
257
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:17:15 ID:qtzFmzVM0
(´<_` )『一発がデカくとも持続力がないですからね』
( ゚∀゚)『そうそう。オンナはもうやめようかなってくらいだよ。
タイから来たパッタヤー組が質からノウハウまで一級すぎるし
せっかく上質な女取り込んでも、それがそのまま利に直結するわけじゃねえ』
(´<_` )『なるほど……』
( ゚∀゚)『そう。商いに力を入れすぎて俺らハンター組合は
抗争への一手が足りないって現状さ、いずれ不足するに違いねえ。
お前らには研修みてーのが終わり次第……ぶっ殺しチームに回ってもらう。
戦争が終結する頃には、お前らの玉座もきちんと用意してやるさ』
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
・・ ・・・・・
258
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:19:32 ID:qtzFmzVM0
.
(´<_` )『ジョルジュってのも、大したことのない奴だな』
帰りの車内、助手席に座る弟者が出し抜けにそんなことを言った。
運転中の兄者はその言葉の真意が掴めずに、「はぁ」なんてつぶやく。
(´<_` )『商いのことなんざ、言われるまでもねえことだよ。
結局は抗争についてのこの紙束で済んだのに、
ぐだぐだぐだぐだ組合のことばかり……。
紙四五枚で済むことだろうに』
(´<_` )『まぁ、マーパーツの相場については参考になったかな。
又聞きより第一人者からのがよっぽど情報が強い。
……とはいえ、それ以外はなんの参考にもなりゃしねえ』
( ´_ゝ`)『ジョルジュさんはもう俺らの上司なんだぜ?』
(´<_` )『なんだよ兄者。兄者こそ日和ってんじゃないのか。
俺らに上司? そんなものは仮初だよ、ジョルジュなんて
しょせん、担いであげてる神輿に過ぎんだろう』
259
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:26:28 ID:qtzFmzVM0
( ´_ゝ`)『……そうだった、すまんな』
(´<_` )『俺は忘れてないから。兄者に言われたことを』
シアトルのアジトで口論になったあの夜を、弟者は思い返しながら、
(´<_` )『食い散らかそうぜ。この火星を』
( ´_ゝ`)『そうだな』
歯切れ悪く光るフォボスに照らされながら、セダンが荒野を
駆け抜けていく。路肩の向こうに広がる火星の赤土は
地球人には見慣れないものである。
不安がないとは言い切れない。
けれども、ふたりには野心があった。宇宙の闇に似た性質の、
何もかもを取り込んでやろうという狂気めいた野心が。
260
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:32:09 ID:qtzFmzVM0
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
―― 火星の新アジト(小さなプレハブ)
川*` ゥ´)『あ! 二人ともおかえりなさいッピャ!』
( ´_ゝ`)『おうおう、アレン様のお帰りだ貴様ら』
(´<_` )『お前達、今日はもう休んでおけ。明日は早い』
セダンをプレハブ脇に駐車して玄関を開けた兄弟は、
それぞれ違ったテンションと思惑とで、ロビーに屯した構成員達を気遣った。
弟者の言葉を受けた各々は「了解です!」と敬礼しながらぞろぞろと
寝室小屋へ向かっていく。その出ていく間際に頭を下げるのも忘れない。
そう、明日は早い。ジョルジュには、今日と明日だけで
サイドニアの地理と状況とを把握して即戦力になれと命令されたのである。
もちろん観光などではない。悪事のために下調べに過ぎなかった。
261
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:35:20 ID:qtzFmzVM0
さて、ジョルジュの命令通り、流石ファミリーはその翌日から
火星の情報収集に徹することになった。やはりそれは弟者の指示により、
大きく分けて二つのチームに分けられた上で徹底したものになった。
兄者は戦闘構成員と共にドヤ街や渓谷を歩き回り、弟者率いる本部
にそれの映像や音声、その地域の人口や状況をまめに送信する。
二日目三日目までは楽しい作業だったが、やがて緊張と重責とに
苛まされるようになっていった。地球と大きく違うところは、
なまじ開拓地であるためにあらゆるアウトローがバイタリティや
野心に溢れ、繁華街を歩くだけで流石ファミリーのような新参者は
目をつけられ、情報収集のしづらい面であろう。
小競り合いになりかけ、頭に血の昇った鉄砲玉連中を
宥めつつ影に隠れようなど、兄者にとっては苦痛で
しかなかったが、暴走などもとより許されていないのだ。
ハンター組合の古参に頼み込み、そして頭を下げることになった。
まるでそこらへんの企業人と同じじゃないかと
兄者は空笑いし、シーンやヒールにも賛同された。
.
262
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:40:18 ID:qtzFmzVM0
路地裏でバケツに座りながら、兄者は
よく部下に向かってこんなふうな問いをした。
( ´_ゝ`)『お前、母親は生きてるか?』
『一応は……』と曖昧に答える部下
を見上げながら、兄者はどこか寂しい調子で、
( ´_ゝ`)『お前がヤァ公になっちまって、悲しんでるかい?』
すると部下は空笑いをしながら、『あの婆売女は俺の名前も
忘れてるでしょうよ。俺がどうなろうと、誰も心配しやしないでしょうね』
( ´_ゝ`)『ははは、ギャングになろうって奴は大体そんな境遇だな』
( ´_ゝ`)『俺の両親はそっこーくたばってな。地域も地域だし貧乏だし
俺は食ってくためにヤクの運びをやらざるを得なかったわけだ。
一番割を食ったのは勉強の出来た弟者でさ。奨学金も
出ないからアイツは大学に行こうにも行けなかったんだ』
263
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:46:32 ID:qtzFmzVM0
( ´_ゝ`)『社会のゴミ溜めに生み捨てられたような兄弟でさ、
その社会に怒りの一撃を加えてやりたかったんだ。
弟者がそれを口にしてくれたのさ。……俺はな、
アンダードッグらしく野垂死ぬまで足掻きたかっただけだ。
だが……なのに、今の俺って、俺達は何なんだろうな』
( ´_ゝ`)『いや……分かってるさ。これも壮大な弟者の計画の
一つで、必要なものなんだ。だがなぁ、辛いよなぁ……』
兄者はオフィスワーカーの営業めく自身に嫌気がさしていた。
偵察のためにニューシベリアのような極寒の地で身体も休めぬ
まま働かされ、その情報を日報としてまとめあげる。そんな日々。
耐え抜いたのは、弟者の「いつか食い散らかす」
という言葉を信じ続けてきたからでもあった。
まもなくして弟者は別の仕事……幽霊会社を立ち上げ、
それを後ろ盾にドラッグの売り捌きを円滑させる、
本部直々の重要な仕事を任されるようになった。
264
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:48:56 ID:qtzFmzVM0
それのサポートとして学のある者が選ばれ、
無い者は今の偵察作業の続行を命じられた。
兄者やシーンのような体力のある連中ならまだしも、ヒールなどは
学が無いというだけでこの過酷な作業を継続する羽目になった。
そのためか日に日に痩せていき、炎天下では直ぐにダウンするような有様だったが、
弟者側はこっちだって大変なんだと一蹴し、休暇を認めなかった。
川;` ゥ´)『ア、アレン……ごめんっぴゃ』
不衛生な肥溜めの傍の壁にもたれ掛かりながら、ヒールはしきりに謝った。
( ´_ゝ`)『今日はもう安め。宿を取ってやるから』
川;` ゥ´)『だめっぴゃ……そんなことしたら偵察の意味が……』
( ´_ゝ`)『………』
( ´_ゝ`)『そうだな……』
.
265
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:50:51 ID:qtzFmzVM0
兄者はヒールが倒れて以来、たびたび弟者に直談判を
試みたが、返事は常にNOだった。まだサイドニアの全体の
半分にも満たない程度しか独自の地図を完成させていない。
そんな状況で人員を減らすなど、彼の選択肢にはないのであろう、
(´<_` )『兄者は理解してないようだな、今の俺達の
立場って奴を。傘下に入ったばかりの組の立場をよ』
( ´_ゝ`)『………』
立場ってなんだよ、そんなものを鼻で笑って殴りかかるのが
俺達だったんじゃないかと、兄者は言いたくなったがぐっとこらえて、
(´<_` )『最近ジョルジュから認められたらしくてな。
ホテル・サイドニアでの会合に出席を許されたんだ。
この時期に手を抜くなんてどだい有り得ねえよ』
266
:
名も無きAAのようです
:2012/09/10(月) 14:53:25 ID:xB7fM5rUO
見間違いかと思った
嬉しいぜ
267
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 14:55:35 ID:qtzFmzVM0
兄者はかぶりを振ると、もういいとばかりに無言で部屋を出ていった。
乱暴な扉の立てる音の後の静寂。弟者はぽつりと、
(´<_` )『なんだアイツ……これだから、喧嘩馬鹿は』
翌日に判明したのは、ヒールはただの疲労ではなく、この頃
火星に蔓延する新型のインフルエンザにかかっていたということだった。
通常の住民なら予め、それも地球に居たころから予防接種を受けている
くらいに対策のたやすい種類だったが、ヒールのような貧民街出の
人間にとって、この病気はあまりにも危険なものであった。
細々した暇が出来るたび、兄者は病床に伏しているヒールの傍に座った。
ヒールはすっかり弱りきって、医療技術の届ききっていない火星の
僻地では回復も見込みもなく、何かを話すことさえ困難な状態になっていた。
そしてある日、そう、あの日。その朝に兄者はやって来た。
( ´_ゝ`)『なあヒール、ほんのすこしでいい。耳を傾けてくれ』
268
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 15:01:02 ID:qtzFmzVM0
( ´_ゝ`)『お前が居たときから因縁付けられてたアーガス組、
あれな。俺、殴り込みにいってやろうかと思ってるんだよ』
川 ` ゥ´)『………』
( ´_ゝ`)『連中よぉ、ヤクを売り捌いてるんだがそれはいいんだ……
売る相手を間違えてなけりゃな。知ってるか? 奴らさ、
極貧民やガキだけに売るんだぜ? 最近のサブプライム保証なんて
よくわかんねーもんを啜るためによ』
兄者の口調はだんだん激しくなっていく。しかしそれは、どこか嬉しげでもあり、
( ´_ゝ`)『ヒール! 俺は今まで道を見失っていたようだ。
忘れていたよ、俺は何かに縛られるために生まれたんじゃない。
その縛っている見えないお化けを殺すのが目標だったんだ』
( ´_ゝ`)『俺はそれで死ねるなら本望だし、俺達仲間もそう言っている。
ヒール、俺がまだ心を死なせてないってとこを見せてやる』
川 ` ゥ´)『………』
( ´_ゝ`)『ン?……ああ、弟者のことか。……そうだな、怒られるだろうさ。
どこぞのファミリーとおっぱじめるなんて、今のあいつには
有り得ないことだろうさ。……ん、でもまぁ、あいつも俺と同じだ。
いつか俺のこのスピリットを理解してくれる』
兄者は布団の隙間からヒールの手を握って、
( ´_ゝ`)『俺たちの炎は消えてないんだ。シアトルでも出来たことさ、余裕だよ』
269
:
名も無きAAのようです
:2012/09/10(月) 15:12:09 ID:ihpFnqOw0
兄者……
270
:
◆tOPTGOuTpU
:2012/09/10(月) 15:12:40 ID:qtzFmzVM0
・・ ・・
・・ ・・・
・・ ・・・・
(´<_` )『――どういうことだ? 偵察チームが出ない?』
『はい、メールも送ったんですが開封さえされてないようで……』
(´<_` )『仕方ない。兄者に掛けるとしよう。兄者なら出るだろう』
デスクの並んだ事務所の一角、まさに流石ファミリーのデスクチームの
活動拠点では、その日、偵察チームと連絡が取れないことで話し合っていた。
弟者が兄者に電話を掛ける際、背広の一人が、
『繋がらないようでしたら偵察チーム抜きで出席するのは?』
(´<_` )『それは仁義に反するってもんだ。初顔合せで
弱みなんか晒してたまるかよ』
ところが何度も電話をしても、兄者は一向に取ろうとしなかった。
(´<_` )『………』
ここで弟者は、ようやく事の重大性に気づき始めた。
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