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94送り妖怪戦闘部隊:2011/06/07(火) 01:29:51 ID:/AfNAO.Q
>>93
荒らぶる鋭利な風の刄。巨大な嵐風が肌を裂く。
噴き出した血が巻き込まれて、赤い風が東雲と波旬を取り囲む。
怒りと共に溜め込んだ妖力の最大出力は、上位妖怪と遜色ないものだった。
ただし、その攻撃自体に東雲の体が耐えられるかといえば話は別になる。
体を保てなくなった波旬が霧散し、抱えるものがなくなった東雲は、そのまま後ろに倒れこんだ。
右肺は既に使い物にならない。
加えて身体中の器官も、侵入した鎌鼬によって滅茶苦茶に傷つけられていた。
たった今生きているのが不思議なほどの東雲は、波旬の嘲り声に、真っ赤な唾を吐き捨てた。

「そした、ら、今度こそ、ブッ殺、してや、るよ……」

どさり、と地面に俯せに倒れこむ。
憔悴した表情で、東雲は意識を落とした。




手を取ってくれたことに安心して、四十萬陀はにへらと頬を弛ませた。
誰かの手が取れるなら、彼女はもう大丈夫。
決して、不幸じゃない。

出口に現れた鋲が導く先を見て、四十萬陀は少し躊躇うような顔をしたが、
織理陽狐の強さは知っている。
それに、今の出口町は充分信じられる存在だ。

「……うん!」

四十萬陀は頷くと、仲間を集めて出口へ駆け出しはじめた。
だが途中で思い出したように振り向くと、

「今度、袂山に遊びにおいでよ!」

そう明るい笑顔で出口町にいって、四十萬陀は再び背中を見せて駆け出した。
あの幼い頃とは違う、少しだけ大きくなった少女の姿で。


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