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93波旬ver(幼少七生)/出口町 入江:2011/06/07(火) 01:03:11 ID:???
>>92

(取った!!)

 振りぬいた瞬間、確信した勝利。
 しかし・・・

「!?」

 とっさに掴まれた腕。
 しかし貪欲で探りを入れても、それは拒絶するわけでも見破られたわけでもない!
 現に貫いた腕は、現在進行で犬御の身体を引き裂いている!

 むしろ逆、相手は完全に騙されていた。
 騙されていたからこそ、“ただ抱き寄せられた”のだ!!

「こ・・・このッ! これだから男ってヤツは・・・ッ!」

 必死で離れようとするが、今回は相手や自分を引き裂くだけの腕力は持ち合わせてはいなかった!
 そしてこの後は必ず来る! あの時と同じ決死の攻撃が!!
 わかってはいたものの、回避することは敵わない・・・。
 今回は写し取った相手が弱すぎたのだ。

「ギャアアアアアアアアアアア!!!」

 溜め込まれていた、本能の一撃とも言うべき風の攻撃が。
 犬御もろとも波旬の身体を引き裂いていく。

「う・・・うぐっ! チクショウ!!」

 欲しい物はなんでもすぐに手に入る魔王だからこそ、
 その欲すべき、想うべき相手に対する心を、決意を最後まで理解できなかった。
 なんでも手に入ったからこそ、2度もこの想いを軽んじ、敗北したのだ。

「チクショウガァァアアアアアアアアアア!!」

 夜行との戦いで消費しきった身体がとうとう存在を保てずに霧散する。
 その呪詛のような言葉を吐き捨てて。

― 覚えてろよ・・・ 私に手に入らないものなんて無いんだ、できないことなんて無いんだ! ―

 最後まで、ただ相手を嘲る闇そのものが散っていく。

― お前等と違って生き返ることも簡単なんだよ! 30年・・・いや10年だ!!
  10年あれば私は自分の命だって、もう1つ手に入れることができるんだ、ザマァ見ろ!!! ―

 波旬は、貪欲の魔王は・・・今この場より、消失した。




「・・・仲間、友達」

 紫濁ではない、黒く澄んだ瞳が。
 ただ差し出された手と笑みを交互に見据え、迷っていた。

「みんなも・・・?」

 後の者達を見渡すが、やはり躊躇いがちに俯く。
 包まれようとした自分の手を、脅えるように引っ込めようとするが。
 それよりも早く、七生の手の温もりが出口町に伝わった。

「・・・うん!」

 戸惑いながら、脅えながら。
 それでもただ頷いた。

 紫狂の裏切りになるかもしれないけど、まぁ大丈夫だろう。
 なにより窮奇自身が言ってたのだ、「四十萬陀ちゃんは大親友」だと。
 『幸せ』と『不幸せ』どっちも大事で、どっちもかけがえの無い自分自身には違いないのだから。

 石英の小さな鋲が出口に現れ、廊下の道の一本を沿わせていく。

「ねぇ・・・行って、あの標の導く方に。
 あなた達の邪魔はもうできないけど、足止めもしなくちゃいけないから」

 その二つの果ての答えがこれである。

「大丈夫、あの狐さんなら。一人でも大丈夫。だからアナタは行って」

 ニッコリと微笑んだ、要は窮奇の元に誰も生かせなければ『良い』のだ。
 あの人なら最高の足止めになるだろう。

「因縁なんかより、倒すべき夜行なんかより。もっと大切なモノがあるはずだから」


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