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107窮奇:2011/06/14(火) 21:49:24 ID:???
>>106

「・・・ただの、化け狐だって?」

 いや、今更驚くまい。
 そもそも強大な神性である夜行神や、そのなかで108年間過ごした波旬を従えた自分なのだ。
 強さや凄さではなく、この想いゆえに織理陽狐を一番気にかけていたのだ。
 ただその想いに勝ちたいが為に、わざわざ天逆毎ではなく窮奇で戦ったのだ。

 重ねられた手から伝わる温もり、金色の焔は反転されても揺るぎはしなかった。

「・・・参ったよ、こんなの」

 この悪意、いままで一度たりだって、勝った事も負けた事も無かったのに。
 どんなことに成ろうと、なにをされようと、どう思われようと。
 一度たりともまともに相手になったことなどないのに。

 窮奇の手は織理陽狐とキャンドルから離れ、ぺたりと尻餅をつく。
 キャンドルは、織理陽狐から滑り落ち、カランと音を立てて床に転がった。

「負けを認めるしかないじゃないか」

 逆心が、悪意が、存在を否定する術が。
 跳ね除けるでなく、叩き潰すでなく、効かないのでもなく・・・受け入れられてしまったのだから。

「願いか・・・。そうだね、とりあえず」

 ニタッと、悪意の入りきらない気の抜けた笑顔を浮かべた。
 すこし躊躇ったようにしたが、遠慮なく手を伸ばす。

「手、貸してくれるかな? 力が入らなくて立てないや」

 ささやかだが、ひねくれていたが。
 窮奇は初めて幸せのために手を伸ばした。


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