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涙たちの物語7 『旅の終わりは』

475名無しの話の作者:2004/12/25(土) 09:09 ID:XuyPGJik
一面の銀世界。
急斜面。
「がんばれ、もうすぐだぞ!」
「止まるな、休むな、寝たら死ぬぞ!」
「がんばれー」
腰まで雪に沈んで、それでも声を掛け合って進むパーティーがいる。
あと数百メートルで斜面が終わる。
頂の向こうに、彼らの目指す場所がある。
と、聞こえてくる、かすかな声。
何人もの若い女性の声。
楽しそうな子供の声。
「「「「「「!!」」」」」」
顔を見合わせる一同。
「がんはれー!!」
一気に元気になる。
ドザザザザザー
ものすごい勢いで雪をかき分けていく。
空気の雰囲気が変わる。
温度が変わる。
匂いが変わる。
もう少し!と思った瞬間。
頂の向こうから、ヌウッと影。
「げっ」
凍りつく六人。
「な、なぜ虎がこんな所に…」
それは、白銀の世界にあまりに不似合いな巨大な獣。
「すまんな、今日は貸し切りや」
なんだか、どこかの用心棒みたいにすごむトラ。
「ふざけるな!俺たちがここに来るまで、どれだけ苦労したと思う!」
「そうだ!」
「臆するな!たかが獣ごときに我々の崇高な意志を妨げる事は出来ない!」
「殺っちまえ」
次々に剣を抜く。
しゃーないな、とトラが一歩踏み出そうとしたとき。
「みゃ?」
とトラの背後からのぞく。
「げ」
再度凍りつく六人。
邪竜の血瞳が、パーティーを見下ろす。
「みゃう?」
焼く?ときかれて
「やったり」
あっさりうなずくトラ。
直後
グオオオオオーー
業炎がパーティーを包む。
「あちゃちゃちゃー」
「ぢゃー」
あっという間に焦げ焦げの六人。
さらに。
ゴゴゴゴ…。
炎でゆるんだ雪が滑り始める。
いわゆる、な・だ・れ。
「どわーー」
「ちくしょーー」
巻き込まれて流されてく六人。
たぶん、麓までとまらない。

目指す場所はまだ遠い。
手が冷たい。
足が冷たい。
もう身体に感覚がない。
腰まである雪は、永遠に続く壁のよう。
それでも、エル白はあきらめない。
麓で聞いたから。
トラの背に乗って山を登っていくタル獣を見たと、聞いたから。
足を踏み出す。
会って謝る。
雪に踏み出す。
タル獣に謝る。
一歩を踏み出す。
トラに謝る。
その思いで、重い一歩を踏み出す。
冷たい一歩を踏みしめる。
冷え霞む瞳で頂を見上げる。
と、変化。
はるか先、銀の斜面がぼやける。
なに?
そして、音。
違和感。
直後、エル白は白い奔流に飲まれていた。


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