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涙たちの物語7 『旅の終わりは』

466名無しの話の作者:2004/12/20(月) 03:58 ID:At773luE
「…わたしもいただいてよろしいのですか?」
「うん!」
大きくうなずくタル獣。
「みんなで食べた方がおいしいの」
「ありがとうございます」
タル獣とエル白は、ぽくぽくと歩いてる。
話しながら、歩く。
歩きながら、話す。
新しい仲間、新しい友達が出来るのは、とてもうれしい。
トラさんと、仲良くしてくれたらいいな、とタル獣は思う。
心配いらないね、とも思う。
だって、トラさんは優しいから。
エル白さんも優しいから。
優しい人同士だから、きっと仲良くなってくれる。
タル獣には、チョッピリ自信があった。
と、
「?」
気づくタル獣。
遠く、かすかに、よく知った気配。
あれ?と脇を見る。
エル白も、つられて同じ方向を見る。
遠くに影。
こちらへ近づいてくる影。
だんだんと大きく。
「あー」
声を上げる。
それは、見まちがえる事のない姿。
「トラさーん」
大きく手を振るタル獣。
迎えに来てくれたんだ、と、うれしくて
こんなトコまで来ちゃって、と、少し怒って。
「あれがね、トラさんなの!」
ぼくのトラさんなのと、笑顔でエル白を見上げる。
けど
「!」
笑みが、こわばる。
見上げた先。
エル白の表情。
見た事ある。
トラさんと出会った冒険者のほとんどが、浮かべる表情。
驚き、怯え、恐れ。

「トラさーん」
タル獣が自分を見つけた。
手を振ってる。
つい、足が速くなる。

美しい毛並みは、狩人の矢を弾き
鋭い爪は、騎士の鎧を引き裂き
巨大な牙は、戦士の剣を噛み砕く。
虎。
死の獣。
それが、いる。
近付いてくる。
逃げて、とタル獣に叫ぼうとした時
「トラさーん」
とタル獣が呼んだ。
うれしそうな、声で。
(!?)
そう、獣使いだもの。虎を連れててもあたりまえ。
瞬間に理解する。
あの虎が…トラさん…。
タル獣の、優しいトラさん…。
逃げようとした自分を落ち着かせる。
踏みとどまる。
けど。
幼い子供が犬を怖がるように。
たとえ親に「大丈夫だよ」と言われても
たとえ噛まれはしないと判っていても
本能に近いところで怖がるように。
エル白はわき上がる恐怖を押さえる事が出来ない。
怖い、怖い、怖い!
身体の奥底から聞こえる叫び。
筋肉をしならせ、ゆるやかな流れのような静かなトラの歩み。
その一歩と共に、恐怖が近付く。
見えない何かが、エル白の身体を押し包んでいく。
ノドが乾く。
膝が震える。
「だいじょうぶなの。怖くないの」
足下から、心配そうなタル獣の声が聞こえる
けど、わからない。
なにを言ってるのか、判らない。
虎が近づいてくる。
目の前に、近づいてくる。
瞳が、黄金色の瞳が、自分を見下ろす。
そして、心が、悲鳴を上げた。


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