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涙たちの物語7 『旅の終わりは』

464名無しの話の作者:2004/12/20(月) 03:39 ID:At773luE
「名無しの話」の24 −思い・悩み 3−

タルタルとエルヴァーンの身長差は大きい。
目線を合わせようとすると、タルタルはずっと上を見上げないといけない。
ほとんど真上を向くぐらい。
それでもタル獣は
「あのねー」
うれしそうに、話しかけてる。
エル白も、半身をかがめるようにして、聞いてる。
その手に、タル獣の荷物を抱えて。
町の門へ向かいながら、二人の足はほとんど進んでない。
タル獣の話題の中身はずっとトラの事。
こんなに大きくて、こんなに強くてと、短い両手を振り回し、小さな身体で一生懸命身振り手振りで話しする。
けど、そのなかに、トラが「虎」だという言葉はない。
説明しなきゃいけないとは、思わなかったから。
だって、タル獣にとってトラが「虎」なのはあたりまえ。

そして、また。
ほんの少しの勘違い。

トラという名のタル獣の相棒。
「ぼくのね、家族なの」
家族という言葉を、エル白は「家族のように親しい人」と受け取った。
一叩きで敵がダウンすると聞いて、思い浮かぶのは、隆々とした筋肉の塊のような腕。
一吼えで敵が動けなくなると聞いて、思い浮かぶのは、地を震わせるような蛮声。
一振りで敵が吹っ飛ぶと聞いて、思い浮かぶのは、丸太のような太い尾。
それがタルタルのはずがない。
もちろん、ミスラでもない。
そして、エル白の想像の中で出来上がったのは、屈強なガルカモンクの巨体。
でも、
(こんなにタル獣さんがうれしそうに話すんだから)
きっと優しい人に違いない。
そうエル白は思った。
いかつい表情よりも笑顔の似合う。
大きな身体いっぱいに優しさの詰まった。
そんなガルモン。
小さいタル獣と、大きいガルモン。
凸凹コンビというのが、そのまま当てはまるような二人を想像する。
「いつもはどこで狩りをしてるんですか?」
聞いてみると
「えとね……とか……とか……」
だいたいの方向を指さしながら、いくつかの地名を上げるタル獣。
「ずいぶん広いんですね」
と感心するエル白へ
「うん。トラさんにのせてもらうから早いの」
笑むタル獣。
「…肩へですか?」
エル白が思い浮かべたのは、のっしのっしと歩くガルモンクの肩に、チョコンと座ったタル獣。
「あのね、ゆっくりのときは肩で、早いときは背中なの」
トラが歩いてる時は、首に掴まって肩に乗る。
速く走る時は後ろによって背中に掴まる。
激しく動く肩では、はね飛ばされてしまうから。
「背中…」
エル白が思い浮かべたのは、地響きたててつっ走るガルモンの背中にヒッシとつかまったタル獣。
「エル白さんものる?」
見上げるタル獣の瞳は期待に満ちてる。
緑の野、青い空の下、そよ風に吹かれて、ガルモンの両肩に乗るタル獣と自分。
それは、ちょっと少女っぽい想像。
だけどなんだか、とても楽しそうで気持ちよさそう。
「…トラさんが、よろしいのでしたら」
エル白の返事に
「うん!」
タル獣はとてもうれしそうにうなずいた。


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