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涙たちの物語7 『旅の終わりは』

459とりあえず無題(3/3):2004/12/13(月) 23:11 ID:XXjk5Pjs
――穏やかな目覚めだった。天井の造りが違う。
慌てて飛び起きて、周囲を見渡した。意識を失う前とまた部屋が変わった様だった。
…それは自分の部屋だった。
体の下には、自らが愛用している布団が敷いてある。
「あ…そういえば送ってくって……」
虚ろな意識で聞いた言葉を思い出す。
そこで更に、自分の体の変化に気付いた。
先日までの溜まった、鈍重な疲れが、シルクにはまるで感じられなかった。
(あの薬の効果だろうか?)
夢だった,とさえ考えられる状況に多少困惑していると、彼の部屋の扉にノックが掛かる。
入ってきたのは、彼の母親だった。
「あら、おはよう」
まだ寝ていると思っていたのだろうか、意外そうに朝の声を掛ける。
「母さん……あのミスラさん……」
夢だったのか現実だったのか、わからないが為に、母に尋ねる。
「あぁ、あの人なら貴方を届けてすぐに帰ったわよ。
 それにしても驚いたわ、気絶していたなんて……」
現実であった。なんと素晴らしい人であろうか。
縁の無い親切に、シルクが感動していると彼の母の口から、彼が思っても居ない言葉が出た。
「大丈夫…?本当に何もされなかった……?」
「…え…?」
母が口にしたのは、明らかにミスラの行動に対する感謝の言葉では無く、懐疑の言葉であった。
「どういう事?」
「知らないの?あの人、流れ者なんですって。
 だから、ミスラ達の間でも爪弾き者らしいのよ…」
誰にも、故郷を、仲間を愛する気持ちはある。
そしてその逆に、他所者に排他的な気持ちを持つ事もある。
シルクの母は、その後者の面が強く、彼もそれは疎ましく感じていた。
そんな事はさておき、シルクは大事な事を尋ねようとする。
「母さん、名前知ってるの?」
「え?えぇ…確か……クルゥ?だったかしら……ホント、ミスラの名前は覚えにくいわ」
ブツブツと何かを言っている母親を横目に、彼は頭にその名前を刻み付ける。
(クルゥ……クルゥさん、か………)
今度会えたら、何かお礼しよう。
そう心の奥に、彼は健康的になった身体で、過酷な訓練の毎日に戻っていった――。


・・・

・・



『天昌暦881年、△月×日……快晴。
 妻に、随分と久しい昔話を促された。どうやら、以前話した事が気になっていたらしい。
 その話をする度に、私はあの大戦下の日々を思い出す。
 「クリスタル大戦」――多くの友が、仲間が、愛する人々が死んでいったあの戦争。
 多くの負の感情に苛まれ、捲し立てられ、ただ感情のままに戦った事もあった事。
 ――祖国で共に戦った、彼女の事。
 数時間にも渡った昔話を聞いた妻は、とても満足した様だった。
 話を終えた後も、私は大戦下の日々を暫く思い返していた――』

―――to be next


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