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涙たちの物語7 『旅の終わりは』

457とりあえず無題(1/3):2004/12/13(月) 23:07 ID:XXjk5Pjs
『天晶暦862年、○月△日……くもり。
 昨日の分と纏めて書く事にします。
 昨日の訓練量も、入った頃と比べれば数倍もの詰め込み様でした。
 野外で雷属種の詠唱練習を強制され、詠唱者が感電する事故もありました。
 こんな日々がいつまで続くのだろう……皆疲労と不安で限界が来ています。
 私もいつも通り、頭がクラクラするまで練習して、フラフラと帰っていく毎日。
 そんな日が何日か続いて倒れてしまった日でした。あの人とであった昨日は…――』


・・

・・・

彼はその日も、おぼつかない足取りで帰路についていた。
酷い疲れからか、雨が強く降りつけているのも気にも留めていない。
傍から見れば、今にも倒れてしまいそうな動きで自らの家に向かって歩きつづける。
彼の家は居住区の中でも港に近い所にある為、帰宅の距離は短い。
しかし、その帰り道さえも果てしなく、長く感じる程、彼は疲れきっていた。


――ウィンダス連邦。緑と夜空に煌く星々と月に祝福された、豊穣な大地の上に築かれた国。
神の生まれ変わりであると云われる『星の巫女』を頂点に据え、
それを賢者とも呼ばれる博士達が支え、彼等の合議を基に国を五つの院が治める。
その五つの院が一つに。『口の院』。
魔法学校で優秀な成績を収めた大半の者が編入する先であり、
格式高く、ウィンダス軍の主力を担う人材を多数輩出する機関である。
『エリートの集まり』と称して過言では無いその機関で、彼は日々、魔法術の訓練に明け暮れていた。

名をシルク-エルク。一昨年、魔法学校を次席で卒業した口の院の訓練生である。

彼は体力に自信があった。他の種族から見ればそれは微々たるものでしか無いのかも知れない。
だが、彼の種族――タルタルの中では、それは間違いなく秀でた力であった。それは、口の院の上司・先輩と言った上の者からでさえも評価される程であった。
それと期待もあってだろうか、彼は俗人から見れば過酷な程に訓練を重ねていた。
シルク自身も、その持ち前の体力があってか、辛いとは感じていなかった。

しかし、次第にそれは移り変わっていった。それは彼自身だけでなく、他の訓練生も含めて。
――――『戦争』が始まった為だ。

人類と相見えるは、『獣人』と呼ばれる者達。
そして、ウィンダス連邦と相見えるは、獣人『ヤグード』。
宗教国家を持つ彼等の統率された軍事力に、ウィンダス軍は次第に押されていっていた。

戦争は、激化する程に人材を要する。
その為、一日も早く一人前の魔導士が誕生する様にと、軍事力の一角を担う口の院も躍起になっていた。

過酷に過酷を加味した訓練は、それは凄まじいものだった。
訓練生達は確かに実力をつけていった。
しかし、一方で各々の身体は蝕まれていった。
多くの者が、病気や怪我で一時的に脱落したりする中、シルクはひたすら耐えていた。


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