したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | メール | |

[SS]壊れた大学生の追憶

599ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/17(月) 21:41:35 ID:tAlMJrj200





極道の町。

その北にある、かつてナイフが大病を患っていた頃に入院していた大病院。

その一室で。

迫力「ゲホッ、ゲホッ…」

ナイフ「だ、大丈夫ですか迫力さん!」

迫力「おう…さすがにもう長くはねえな…」

半年ほど前から迫力は入院していたが、体調が悪化したとの連絡を受け、須磨武羅組の組員たちが集まっていた。

片割れ「ケッ、須磨武羅組の大親分ともあろうモンが情けないのォ」

組員「てめえ口に気ィ付けろ…」

迫力「よせよせ…ったく…こんな時まで生意気な野郎だぜ…片割れ…組のこと、頼むぜ」

片割れ「…おう」

迫力「玄孫のこともな…」

ナイフの隣に座る、十代中盤くらいの少年を見て言う。

片割れ「あぁ?ガキどもの世話はナイフの管轄やろ」

迫力「そうだったか…まあどっちにしろ、コイツらが危険な時、ナイフじゃ何もできやしねえ」

ナイフ「ちょ、そりゃ酷いっすよ…まあ事実ですけど…」

600ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/17(月) 21:42:45 ID:tAlMJrj200

組員「大丈夫っす!若には俺らもついてます!」

傍らに立っていた他の組員が言う。

若「お前らじゃ頼りねえよ。俺も命預けるなら片割れさん以外ありえねえ」

組員「ええっ!?」

片割れ「てめえらももっと強くなるこったな。ワシも一生子守りなんざゴメンや」

組員「くっ、分かってるよ!」

若「…ジジイ、もうすぐ死ぬんだってな」

迫力「おう…ちゃんとナイフや片割れたちの言うこと聞くんだぞ」

若「チッ、俺もうそんな子供じゃねえぜ。人間にも空手じゃ負けなしだ」

迫力「人間って…あぁ、せがれの方か…アイツはファイターのくせに父親と違って全く才能ねぇからな」

ナイフ「俺よりはありますよ」

片割れ「黙っとれ」

若「とにかく、ジジイが死んだら俺はこの組を率いていくんだ。だから天国で…いや、地獄か?なんでもいい、とにかく俺を見守っとけよ。この極道の町を、過去最高に平和な町にしてやる」

迫力「ハハ…大きく出たな。こりゃ死ぬのが楽しみってもんだ…」


それから数時間後、組員たちに見守られながら、迫力は安らかに眠った。

601ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/17(月) 21:56:03 ID:tAlMJrj200





その隣の国では、軍の入隊試験が行われていた。

バロン「ムッコロズさん、どうでしたか?」

卍「まあ余裕だ。普通の人間が受ける試験内容だからな。俺たちファイターにとっては朝飯前だろう」

バロン「マ、マジですか…僕めっちゃギリギリだと思います…」

バロンムッコロスと卍黒きムッコロズの二人は、試験を終えて共に帰っている。

卍「それにしても最近、魔物が本当に多いな」

バロン「はい…魔の一族とかいうボスキャラみたいなのまで現れてるらしいですよ。怖すぎる…」

卍「怖がっている場合か?俺たちはそいつらと戦わなきゃならないんだぞ。この国は戦争とは縁がないが、どちらにせよ俺たちファイターは国際法によって戦争には出られない。魔物と戦うのが主な仕事になるかもしれない」

バロン「そ、それは分かってますけど…」

卍「ならば特訓あるのみだ。ムッコロス、ジムへ行くぞ」

バロン「は、はい…!」

602ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/17(月) 21:59:21 ID:tAlMJrj200


二人は近くにある行きつけのジムへ来た。

卍「なんだこれは…」

ドアが破壊されていた。

バロン「何かあったんでしょうか…」

卍「入るぞ」

中に入ると、客は全くいなかった。

が。

卍「ん?何だアイツは…知ってるか?」

バロン「いや、初めて見ました」

下半身「ふん!ふん!」

そこには懸命に下半身を鍛えるドンキー族がいた。

卍「ちょっと話を聞いてみるか」

バロン「えっ?ちょっとムッコロズさん!」

卍「初めまして。俺は卍黒きムッコロズだ」

下半身「なんだ貴様!この下半身虚弱体質サマに気安く話し掛けるな!」

卍「そうか、そりゃすまない。俺はここの常連だから、何か困ったことがあれば頼ってくれ。ところであのドアの件なんだが…」

下半身「知らん !邪魔だ!」

卍「そうか…」

バロンムッコロスのところへ戻る。

トレーナー「ム、ムッコロズさん…!」

ジムのトレーナーが恐る恐る話しかけてきた。

卍「ん?いたのかトレーナー。何があった?」

トレーナー「あ、あのゴリラ…さっきいきなりドアを殴り壊して入ってきたんです…!」

卍「アイツが…?」

トレーナー「はい…お金も持ってないっぽいし…でも怖くて追い出せなくて…!なんとかしてくれませんか…?」

卍「警察は呼んだのか?」

トレーナー「いえ、まだ…ムッコロズさんたちがいつも来てくれる時間が近かったし、たぶん警察もあれが相手じゃどうしようもないと思って…」

卍「そうか…確かにそれはそうだ。まあ任せておけ。よし、バロンムッコロス、行け」

バロン「ぼ、僕ですか!?」

卍「何事も経験だ。魔の一族はアレよりもっと手強いはず。度胸をつけろ」

バロン「わ、分かりました…でも危なくなったら助けてくださいよ!?」

卍「ああ」

603ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/17(月) 22:06:42 ID:tAlMJrj200

バロンムッコロスは下半身虚弱体質のほうへ近づく。

バロン「あ…あのぉー…すいません…」

下半身「なんだ貴様はぁ!鬱陶しいぞ!」

バロン「ひっ!ごめんなさい!…じゃなくて…!あ、あなた何なんですか!?ドア壊して勝手にトレーニング器具使ってるそうじゃないですか…!ダメですよ!」

下半身「俺サマに指図する気か貴様ぁ!」

バロン「ダ、ダメなものはダメなんです!」

下半身「また法律とかいう下らんルールか!?魔界にそんなもんはないんだよ!そんなもんで自分で自分を締め付けるとは、地上の人間どもは余程の変態らしいな!」

バロン「魔界!?」

卍「まさかアイツ、魔の一族か!」

下半身「ワッハッハ!今更気付いてももう遅い!潰してくれるわァ!!」


バゴォ!!


下半身「ぬっ!?」

下半身の振り下ろした巨大な拳は、ムッコロズが受け止めていた。

バロン「ムッコロズさん!」

卍「下がってろムッコロス。ちょうどいい。魔の一族とやらの力を一度見ておきたかった」

下半身「そうか!最期に見れてよかったなクソガキがっ!!」


ズダダダダダ!!!


卍「ぐっ…!!」

下半身は地面に両手を叩きつけまくり、ジム全体が大きく揺れる。

バロン「なんてパワーだっ…!このままじゃジムが潰れちゃいます!」

卍「チッ!俺のジムを壊すな!!」

バロン「ムッコロズさんのではないです!」


ドガッ!!


ムッコロズは下半身をドロップキックで蹴り飛ばした。

下半身「ぐおぉっ…!」

ドゴォン!!

下半身は壁を突き破って外に投げ出された。

バロン「ムッコロズさん、ジム壊しちゃってますけど!」

卍「しょうがないだろ!全部崩壊するよりマシだと思え!」

ムッコロズもその穴を通って外へ出る。

604ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/17(月) 22:10:03 ID:tAlMJrj200

下半身「少しはやるようだな!だがこの程度では俺サマにダメージは与えられんぞ!!」

下半身はすぐに立ち上がり、ブルブルと体を震わせて体に付いた瓦礫を落とす。

卍「ほう。耐久力は確かにあるか」

下半身「何を上から目線で分析している!人間など我ら魔の一族の力で簡単に捻り潰せるんだぞ!!」


ドガガガッ!!


卍「ぐあっ…!」

下半身は両腕を大きく振り回して突撃する。

バロン「ムッコロズさんっ!」

ガシッ!

さらに今度はムッコロズの胴を片手で掴んで持ち上げ。

下半身「ふんっ!」


ドガッ!!


地面に叩きつけた。

卍「かはっ…!!」

下半身「死ねっ!」


ブンッ!!


下半身が繰り出した大振りのビンタを、ムッコロズはギリギリで後ろに跳んでかわした。

卍「…フゥ…さすがにパワーでは勝てないか…」

バロン「だ、大丈夫ですか!?」

卍「ああ。大方強さは分かった。生身では分が悪い…全力で行く」

下半身「何?」

するとムッコロズは黒いボールを取り出し、真上に投げる。

バシュッ!

ガシャンッ!

ガコンッ!

ボールはパワードスーツへと変形。

下半身「何だ…!?」

ガチンッ!!

そしてムッコロズの体に装着された。

卍「…五分で終わらせる」

605ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/17(月) 22:14:31 ID:tAlMJrj200


およそ五分後。

卍「ふぅ…十秒オーバーか。思った以上に手強かった」

ムッコロズは下半身虚弱体質を倒し、頭部の装甲を脱ぐ。

バロン「ムッコロズさん、大丈夫ですか?」

卍「問題ない。魔の一族が全員この程度の強さなら脅威にはならないな」

下半身「…ざ…残念だったな…」

卍「!…まだ意識があったか」

下半身「俺サマなど…平均的魔の一族に過ぎん…上位クラスや幹部の連中は…こんなもんじゃないぞ…」

卍「…だろうな。お前は下半身が虚弱だった。もっと鍛えておくべきだったな…あ、それでこのジムに来てたのか」

下半身「い…今更か…」ガクッ

そして下半身虚弱体質は気を失った。

バロン「この人どうするんですか?」

卍「確か近くにファイターの収容所があったはずだ。そこに入れておけばいいだろう。しかし…」

バロン「しかし?」

卍「このレベルでもまだ雑兵に過ぎないとしたら…魔の一族が本格的に攻めて来たら、今のままでは…この国は終わりだ」

バロン「ええ!?」

卍「だからこそ…もっと強くならなければ…!」

それからムッコロズは下半身を頑丈なワイヤーで縛り、収容所へ連行した。

606ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:05:44 ID:L5MYRj.A00





王国。

ヒーロー「やれやれ、今日も平和だな…」

城下町でヒーローはいつものようにパトロールしていた。

???「やあヒーロー、おつかれさま」

店の軒下から声を掛けてきたのは、赤い服の少年。

ヒーロー「ポイゾネサスくん。キミは店の手伝いか?」

ポイゾネ「うん。まったくこんな子供に店を手伝わせるなんて、うちのお父さんは人使いが荒いよ」

ヒーロー「ハハ、でもそのうちキミが店を継ぐんだろう?これも勉強さ」

ポイゾネ「はぁ…お父さんみたいなこと言って…マジメだなぁ…」

ヒーロー「自慢じゃあないが俺にはそれくらいしか取り柄がないからな!」

ポイゾネ「なんでそんな堂々と言えるんだ…取り柄があるっていいね。僕には何もないからさ」

ヒーロー「そんなことはないだろう」

ポイゾネ「じゃあ僕の取り柄って何?」

ヒーロー「え?それは…うーん…まあポイゾネサスくんとはまだそこまで深い仲でもないからな、急に言われても思いつかない!だがそのうち見つかるはずさ!それでは俺は見回りの続きをするので失礼する!」

ヒーローは走っていった。

ポイゾネ「逃げた…」

607ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:06:06 ID:L5MYRj.A00


それからしばらくして。

川沿いの道をパトロール中。

ヒーロー「あの橋…」

通りかかった橋を見て、数年前のことを思い出す。

ヒーロー「…少女…一体今どこにいるんだ…」

その橋は、記憶を失った少女を初めて見つけた場所だった。

ヒーロー「……?」

通り過ぎようとしたその時、橋の下にいる何かに気付き、ヒーローはすぐに駆け寄った。

ヒーロー「……少女……なのか……?」

そこには金髪の少女が倒れていた。

ヒーロー「少女!!おいっ!どうした!…くっ!」

ダッ!!

意識を失っている少女をヒーローは抱え上げ、あの時と同じ病院へと運んだ。

608ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:06:29 ID:L5MYRj.A00



数時間後。

少女「ん…」

ヒーロー「少女!!」

ヒー父「お!目が覚めたか!」

病室で目覚めた少女の前には、ヒーローとその両親がいた。

少女「…だ…れ…?」

ヒーロー「……!…あの時と一緒だな…」

ヒー母「また記憶を…?」

ヒー父「だが前と違って言葉は分かるみたいだぞ」

少女「……?」

ヒー母「あ、安心して…怪しい者じゃないわ」

ヒーロー「俺はヒーロー。こっちは俺の両親だ。俺たちはキミを知っている」

少女「ヒー…ロー…」

ヒーロー「昔、キミは俺たちと共に暮らしていた。今日と同じように、あの橋の下で倒れているところを見つけてな。その時もキミは記憶を失っていたんだ。それでキミの身元が分かるまで、うちで預かることになった」

少女「……そう…」

少女は何の感情も見えない表情で呟く。

ヒーロー「…そうだよな。急にこんなことを言われても分からないよな。いいんだ。また時間をかけて思い出そう」

少女「…ええ…ありがとう…」

ヒー父「そんじゃあもう遅いから俺たちは帰るよ。今日はここでゆっくり休んでいくといい」

ヒー母「病院の人にも伝えてあるからね。後のことは明日考えましょう」

少女「分かった…」

ヒーロー「じゃあ、また明日」

少女「…また明日…」

609ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:07:32 ID:L5MYRj.A00



翌日。

ヒーロー「おはよう少女!」

ヒー母「具合はどう?」

ヒーローとその母は朝一で少女の病室を訪れた。

父は仕事だ。

少女「悪くないわ…」

ヒーロー「そうか。何か思い出せたか?」

少女「……」

少女は無言で首を横に振る。

ヒーロー「そうか…じゃあなぜあの橋の下にいたのかも分からないんだな…」

少女「……いいえ」

ヒーロー「えっ?」

少女「その記憶はある…私の一番古い記憶は…真っ暗な岩場にいた記憶…」

ヒーロー「岩場…?」

少女「そして、獣のような何かに襲われた。私は必死で逃げて…気付いたら、空間に穴が開いてた」

ヒーロー「空間に穴…俺たちの前から姿を消した時みたいな移動方法を、無意識に使ったのか…?」

少女「…多分そう。その穴の奥にはジャングルがあったわ。お腹が空いてたから、生えてたバナナを頂こうとしたら、黒いゴリラと、黄色い恐竜みたいなUMAに追い回されて…また必死に走って、ジャングルから出た」

ヒーロー「ず、随分と冒険を繰り広げてたんだな」

少女「そうね…冒険と言えば冒険なのかもしれない…それから私は近くの街を訪ねた。ボロボロな私を見て、街のおじさんが声を掛けてくれたから、事情を話した。するとまた空間に穴が開いた」

ヒーロー「また!?その流れだと、おじさんに襲われて逃げようとしたのか!?」

少女「いいえ…おじさんが開いたのよ。そのゲートは、裏の空間に繋がっていた」

ヒーロー「裏の空間?」

少女「魔法学校という場所」

ヒーロー「魔法学校!?」

ヒー母「まさか…あの子の言っていたところ…?」

少女「あの子?」

ヒー母「あ、いえ、ごめんね。話を続けて」

少女「…おじさんは魔法学校への案内人だった。この世界と裏の空間を、行ったり来たりする名人と名乗ってたわ。名人さんは私の中の魔力が異常だと感じたらしく、魔法学校に連れてきた。そこで私は自分の体質について聞かされた」

610ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:08:18 ID:L5MYRj.A00

ヒーロー「魔力暴走体質…か…」

少女「ええ…知ってるのね。そう…そして暴走を未然に防ぐため隔離施設に入れられて、厳しい監視の中で数年を過ごした」

ヒーロー「なっ…!?」

ヒー母「そう言えば、彼も言ってたわ…本来その体質を持った人は隔離されるって…」

少女「ずっと一人きりで…極限の孤独の中で、私は精神がおかしくなるのを感じてた。そんな時、魔法学校は突然滅びた」

ヒーロー「!?」

少女「つい先日のこと…私も何が起きたのか分からなかった。黒い鎧の人が現れて、魔法学校を破壊し尽くしたの。私はその人と一瞬目が合った気がしたけど…なぜか見逃してくれた。どこか、懐かしい感じがした」

ゲン「それはサムス族だったんじゃないか?」

ヒーロー「ゲンさん!」

少女が見つかったとヒーローから連絡を受けていた[世界第1位]ゲンが病室に入ってきた。

少女「サムス…族…」

ゲン「はっはっは!久しぶりだな少女!と言っても記憶がないんだったな。改めて自己紹介しよう。俺は[世界第1位]ゲン!この王国で大人気のF-ZEROという競技において史上最速と謳われる男さ!」

少女「よ、よろしく…」

ゲン「ああ、よろしくな少女!…しかし少女と呼ぶにはもう随分と大人びているな、レディ」

ヒーロー「確かに…じゃあ俺もこれからは"女"と呼ぼう」

ヒー母「女ってあなたねぇ…」

女「…大丈夫…好きに…呼んでいい…わ…」

ヒーロー「ありがとう、女…って大丈夫か?目が虚ろになっているぞ。少し休むか?」

女「……いえ……こ…これは………記憶が…戻って…いる……?」

女は頭を抱える。

ヒーロー「記憶が…!?」

611ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:09:10 ID:L5MYRj.A00

ゲン「はっはっは!なんだ、まだ試してなかったのか?少女は前にサムスのことを聞いて、記憶が戻ったんだろう」

ヒーロー「そ、そうか!なぜ気付かなかったんだ!ありがとうゲンさん!」

ゲン「気にするな。それよりどうだ。何か思い出したか?」

女「……はぁ……はぁ……」

女は顔を覆っていた手を下ろし、ゆっくりと顔を上げる。

女「ええ…思い出したわ……ヒーロー…!」

そしてヒーローの顔を見て、涙を流した。

ヒーロー「ほ…本当に…思い出したのか!?俺のことも…!」

女「ええ…久しぶりね…」

ヒーロー「しょっ……少女ォ!!」

ヒーローも感極まって泣きながら女に抱きついた。

女「…女って呼ぶんじゃなかったの?ヒーロー」

ヒーロー「すまん!でもそれどころじゃあない!こ…こんなに嬉しいことはない…!」

女「大袈裟ね…」

ゲン「はっはっは!感動の再会、だな!」

ヒー母「ええ…!ぐすっ…本当に…良かったわ…!」

ヒーローの母も滝のように涙を流す。

612ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:11:02 ID:L5MYRj.A00


それからしばらくして、感動ムードが落ち着き、また話の続きを始めた。

ヒーロー「しかしゲンさん…なぜその黒い鎧がサムスだと思ったんだ?確か本来のサムスはオレンジ色だったはず」

ゲン「俺は宇宙で活躍していたキャプテン・ファルコンの末裔だからな。宇宙の情報もキャッチするようアンテナを張り巡らせている。その中に、とある黒いサムスの情報があったのさ」

ヒーロー「情報ってどんな?」

ゲン「ソイツは暗黒のアメリーナというサムスでな…なんでも、最近この星でもよく現れている魔物とやらに味方している、悪者だそうだ」

ヒーロー「魔物の味方を…?なるほど…確かに危険な奴だな」

ゲン「だがまあソイツは宇宙中いろんなところで活動しているようだから、魔法学校なんてものを襲うとも思えないがな。ただ悪者と黒い鎧から連想して、ソイツを思い浮かべたってだけだ。はっはっは!」

女「でも、合っているわ。確かにあの時魔法学校を襲ったのは、サムスだった」

ゲン「マジか」

女「ええ。その後のことを話すわ。裏の空間に取り残された私は、行ったり来たりする名人さんに助けられて、この世界へと戻ってきた。だけど結局、記憶の無い私には行く宛もなく…名人さんは優しかったから、私を引き取ってくれるとも言ってたけど…自分の体質を考えたら、断るしかなかった。それから私は、ただ彷徨い続けた」

ヒーロー「それからこの王国まで、歩いて来たのか?意外と近かったのか?」

女「いえ…ゲートを開いたの。自分の意思で」

ヒーロー「ゲートを…?できるのか?」

女「私も暴走状態じゃなきゃ無理だと思ってたけど…開く時の感覚は体に残ってたし、名人さんが目の前で開くのも見たから、難しくはなかった。ただ暴走していない私の魔力は多くないから…使い果たして、倒れたのよ」

ヒーロー「そういうことか…」

ゲン「だがこの国に来たのはなぜだ?記憶は無かったんだろう」

女「分からない…けど多分、無意識のうちに、大好きだったこの町を選んだのかも。ここは私の大切な居場所だったから」

ヒーロー「そうか。なんにしても本当に良かった…!これからはまた俺たちと一緒に…」

ヒー母「ちょっと待って」

ヒーロー「えっ?どうしたんだ母さん」

ヒー母「ヒーローは…もっと相手のことを見てあげなくちゃダメよ」

ヒーロー「どういうことだ?」

ヒー母「だって彼女…まだ一度も笑ってないもの」

ヒーロー「!!」

女「……」

ヒー母「記憶は戻っても、魔力暴走体質はまだ残ってるんでしょう?」

女「…ええ。だから…みんなとはいられない」

ヒーロー「な…!そんな…」

613ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:15:48 ID:L5MYRj.A00

女「ヒーロー…会えて嬉しかった。ありがとう。でもこのままじゃまた暴走してしまうから…」

ヒーロー「待ってくれ!俺もあれから随分強くなったんだ!」

女「無理よ」

ヒーロー「!」

女「全部…思い出しちゃったもの。私の暴走状態がどれほど危険なのか…」

ヒー母「じゃあ…彼のことも覚えてる?あなたが私たちに会う前に知り合ったリンク族の少年…」

女「!…なぜ知っているの?」

ヒー母「何年か前、うちを訪ねてきたの。あの子は今もあなたを探してる。あなたを見つけるためだけに、魔法学校に通って、あなたを探すための魔法まで開発して、ずっと…」

女「…そうか…それで私の体質のことなんかも彼に聞いたというわけね…」

ヒー母「ええ。あなたの名前も、生まれも…全部聞いたわ」

女「…だとしたら分かるはずよ。私と一緒にいることがどれ程危険なことか」

ヒーロー「……そうだな…俺は自分のことばかり考えていた。すまない。キミは、彼のところに帰るべきだ」

女「話聞いてた?彼だろうと誰だろうと、一緒にいるつもりはない…いてはいけないのよ…私は一人でいるべき存在なの」

ヒーロー「そんな筈はない!」

女「…!」

ヒーロー「彼が魔法を学んだのは、キミが暴走した時に止めるためだ。俺は彼と直接会ったわけじゃないが、間違いなく俺なんかより遥かに強くなっているだろう。彼がキミの居場所になってくれる」

女「…そうだとしても…私がそれに耐えられない…ヒーローたちにも、彼にも、私は攻撃なんてしたくないのよ…」

ヒーロー「…そうだよな…自分が愛する人を覚えていないうちに傷つけてしまう…その恐怖は、俺には計り知れない程だろう…だがそれでも…信じてほしい。俺たちのことを。俺たちは絶対にキミを見捨てない。キミが嫌だと言ってもだ」

ヒーローは力強い目で、真っ直ぐに女を見つめる。

女「…なぜ…そこまで…」

ヒーロー「俺は…ヒーローだからだ」

女「ヒー…ロー……そんなの理由になってないわ…」

ヒーロー「キミがとても人懐っこい性格で、孤独を嫌っていると知っている。記憶を失ったキミがうちに来た時も、いつもぴたりと後ろについてきていた」

ヒー母「そうね…懐かしいわ。それに彼も話してたわよ。あなた、孤独に耐えかねてペットを飼ってたそうじゃない。それで迷子のペットを探してるうちに彼と出会ったんでしょ?」

女「……!」

ヒーロー「大丈夫だ。絶対にキミを孤独にはさせない」

ヒーローは女の手を取り、両手で強く握る。

女「……ありがとう…皆…」

女はまた大粒の涙を零した。

ヒー母「良かった。やっと素直になってくれたわね、ウフフ」

614ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:16:39 ID:L5MYRj.A00

ヒーロー「はは、カッコつけたが、キミは彼の元で暮らすのがいいだろう?実は彼にももう母さんが連絡してくれている」

女「ふぇっ…?ま、まだそれは、心の準備が…!」

ヒー母「ふふ、近いうちに迎えに来てくれるわ」

女「ええっ…?!」

ヒーロー「…そういえば、キミが隔離されていたというのは彼の魔法学校とは別なのか?」

女「え、ええ…たぶん。彼の魔法学校は故郷の町にあるはずだから…」

ゲン「しかしヒーロー、残念なんじゃないか?キミはレディをこんなにも愛しているのに、他の男に渡さなきゃならないなんて」

ゲンはヒーローに肩を組んでウザ絡みしてくる。

ヒーロー「そ、そんなことはない!女自身の気持ちが第一だろう!俺はあくまでヒーローとして、女の幸せを願うだけだ!」

ゲン「はっはっは、そうかそうか!でも愛しているのは否定しないんだな?」

ヒーロー「う、うるさい!共に過ごした家族としての愛だ!」

女「…ヒーロー…」

ヒーロー「ん?」

女「…あ……駄目……」

ヒーロー「女…?」

女「ごめんなさい…」



カッ!!!!



その瞬間とてつもない光が部屋を包んだ。

ゲン「なっ!?なんだ!?」

ヒー母「これって…あの時の…!?」

かつて少女が消えた時のことが脳裏に浮かぶ。

ヒー母「いや!ダメよ!行かないでっ!!」

何も見えない光の中で必死に女を探し出そうともがく。

だが数秒後に光が収まると、女は消えていた。

ヒー母「ヒーロー…?」

ヒーローと共に。

615ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:17:20 ID:L5MYRj.A00




ヒーローが目を開けると、そこは薄暗い空間になっていた。

ヒーロー「なんだ…ここは…」

何者かに荒らされたような、ボロボロでグチャグチャな子供部屋だった。

女「私の部屋よ。どうして来ちゃったかな…」

女は壊れた椅子に座って言う。

女が光に包まれ消えようとした時、ヒーローは咄嗟にその腕を掴んでいたのだ。

ヒーロー「…キミの作り出した空間か。こんなところでずっと、たった一人で…寂しかったろう…」

女「…こんなところまで追いかけてくるなんて…」

ヒーロー「言っただろう?もうキミを孤独にはさせないさ」

女「本当…筋金入りのヒーローね…フフ…」

ヒーロー「女…!やっと笑っ…!」


ドゴォ!!!


突然殴りかかってきた女をヒーローはギリギリでかわす。

ヒーロー「……!?」

女「あはははっ!!なんで避けるの?受け止めてよ!私の愛を!!」

ヒーロー「くっ…これが暴走か…!」

女「フフフフッ、そっか!ヒーローは見たことなかったんだっけ!私の本当の姿!!」

616ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:18:06 ID:L5MYRj.A00


バゴォ!!!


今度は蹴りを繰り出し、それもヒーローはかわした。

ヒーロー「…本当の姿、か。確かにそうだな。普段のキミも、今のキミも、どちらもキミには変わりない」

女「違うよ!これが私の本性なんだ!!」


ガッ!!!


再び振りかざされた拳を、今度は両腕でガードするが。

ヒーロー「く…!誰にでも…色々な一面はある…!その一つに過ぎないさ…だからこそ…俺はキミの全てを受け入れよう…うおっ!?」


ドガッ!!


その途轍もない威力に耐えきれず、ヒーローは壁に叩きつけられた。

ヒーロー「がはっ…!」


ヒュンッ!!


ヒーロー「!!」

さらに女は一瞬で距離を詰め追撃する。


ドゴォン!!!


ヒーローはまたもギリギリでかわした。

女「あはっ、すごいすごい!よく避けるね!」

ヒーロー(なんだ…!?あれ程の力が何度もぶつけられているのに、壁が全く傷ついていない…?)

女「あぁ、これ?この外には"何もない"からね、壊れないの」

女は壁をコンコンと叩いて言う。

ヒーロー「何もない…そうか、この壁がこの空間の端っこなんだな…!」

女「そ!つまり、逃げ場はないってことだよ!」


ブンッ!!


女の裏拳を、ヒーローはしゃがんでかわす。


ズドッ!!!


が、その腹に女の蹴りが入った。

617ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:18:57 ID:L5MYRj.A00

ヒーロー「ごはっ…」

ヒーローは吐血する。

女「わっ、痛そー。大丈夫?フフフ」

ヒーロー「ゲホッ…フッ…気にするな女…これくらい…俺は何ともないさ…」

女「!!…あはははっ!面白いね!」


バチンッ!!


ヒーロー「ぶっ!」

女は強烈なビンタを放つ。


バチン!!

バチン!!

バチン!!


さらに何度も、往復ビンタを繰り返す。

女「ほっぺた腫れてしょーくんみたいになってるよ!かわい〜!ふふっ!」

ガシッ!

ヒーローはビンタする腕を掴む。

女「!」

ヒーロー「…大丈夫だ…俺が全部…受け止めてやる」

女「ホント!?嬉しいっ!!」


ギュウッ!!


女はヒーローを抱きしめる。

ヒーロー「ぐうっ…!」


メキメキメキ…!!


女「ふふふ…好きだよ、ヒーロー」

ヒーロー「…フッ……俺もだ…!しかしこのままでは…死んでしまうぞ…離してくれないか…?」

女「ええ!?ひどい!離れたくないよ!どうしてそんなこと言うの!?」

ヒーロー「俺が死んだら…また一人になってしまう…!」

女「やだ!!逃がさないよ!!」

ヒーロー(くっ…もはや会話が通じないか…!どうする…)

618ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:19:52 ID:L5MYRj.A00


ズッ!!!


ヒーロー「……!?」

女の貫手が、ヒーローの腹に刺さった。

女「あはっ!これで逃げられないでしょ!」

ヒーロー「ゴホッ…」

先程の比ではない大量の血を吐く。

女「血…真っ赤で綺麗だなぁ〜!宝石みたいで好きなんだよね!もっと見たいなぁ〜」


ブシュッ!!


女は腹に刺さった手を勢いよく引き抜くと、傷口から血が噴き出す。

ヒーロー「ぐぅっ…!!」

女「痛い?痛くないよね?私のこと好きなんだもんね?ウフフフ…!好きだったら痛みなんて感じないよね?嬉しいよね?」

ヒーロー「……ああ…痛くなど…ないさ…!女…キミに比べればな…!…ガフッ…」

女「…?」

ヒーロー「…キミは…こんなこと…望んでいない…!ゲホッ…俺よりも…キミの心の方が…痛いってことくらい…!分かっているさ…全て…!」

女「あはははっ!何言ってるの!?」


ドガァッ!!!


女はヒーローの頭を掴み上げ、壁に叩きつける。

ヒーロー「がっ…!…何…気にするな…キミが何をしようと…俺は見捨てない…!」

壁に押し付けられたまま、ヒーローは笑みを浮かべて言う。

女「……!」

ガシッ…

ヒーローは女の腕を弱々しい力で掴む。

ヒーロー「大丈夫…俺が…キミを…助ける…!」

女「意味わかんない…何言ってるの…?…何言ってるのぉぉおおおおお!!」


ドォォッ!!!!


女が叫ぶと、女の周りからすごい衝撃波が放たれる。

ヒーロー「ぐおっ…」

その瞬間ヒーローは全身が壁に張り付けられる。


ドドドドドドドドドドドド…!!!


空間内にあったものは全て吹き飛び、空間そのものが震動する。

女「いやあああああああああああ!!」


ドドドドドドドド…


衝撃波は収まらず、壁や天井に張り付けられたものが次々と潰れていく。

619ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:20:56 ID:L5MYRj.A00

ヒーロー「く……!俺は…諦めない…!女…!キミが本当の意味で…笑顔になれる…その時まで…!!」

ダンッ!!

ヒーローはその衝撃波に逆らい、力強く一歩を踏み出す。

身体中の傷口から血が噴き出し、全身を痙攣させながら。

さらに一歩、また一歩。


ギュッ…


そしてヒーローは女を抱き締めた。

ヒーロー「俺は…!!ここにいるぞ!!」

全ての力を振り絞って叫ぶ。

女「………!」

その瞬間、暴走は止まった。

ドサドサ…

衝撃波が収まり、壁や天井に張り付けられたものが落ちる。

ヒーロー「フッ……どうだ…?少しは…信じる気になったか…?」

女「…………ええ。信じる」

女は小さな声で答え、ヒーローを抱き返した。

ヒーロー「帰ろう。キミの居場所は…こんな寂しい場所じゃない…」

女は無言で頷き。

二人は元の世界へ帰った。

620ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:21:20 ID:L5MYRj.A00



ヒーロー「母さん、ゲンさん、ただいま…」

ヒー母「ヒーロー!」

ゲン「はっはっは!ボロボロだな!レディも無事か!」

女「し…心配かけて…ごめんなさい…」

バチーン!

女「うっ…」

ヒーローの母は全力で女の頬を引っ叩いた。

ヒー母「いった!!手ぇ痛!!」

ゲン「オイオイ大丈夫か…」

ヒー母「もう二度と…勝手にいなくなったりしないで…!約束よ…!」

女「…はい…ありがとう…」

ヒーロー「フッ…母さんが暴力なんて…めずら…」

ガクッ…

ドサッ…

ヒーローは倒れた。

ヒー母「ヒーロー!」

傷口から血が溢れて、瞬く間に血溜まりができていく。

女「ヒーロー…!」

621ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:22:09 ID:L5MYRj.A00




三日後。

ヒーローは病室にいた。

そのベッドの周りには、ヒーローの両親とゲン、女が見守っている。

ヒーロー「う、うおお…!すごい!まさかあの傷がたった三日で完治するとは…!!」

全身に巻かれていた包帯を取ると、傷は完全に消え去っていた。

ヒー両親「ありがとうございます!ありがとうございます!」

ヒーローの術後の経過を見に来たドクターに、両親は何度も頭を下げる。

ヒーロー「本当にありがとうございます!」

それに続いてヒーローも立ち上がり、礼を言う。

医者「お気になさらず」

ゲン「はっはっは!さすが、噂通りの超天才ドクターだな!」

ヒー父「うむ…!世界一と言っても過言じゃないんじゃないか!?」

医者「まあそうですね」

かつてとある国で死の淵にいたコンソメ顔を、神業で治療したドクター。

その話を耳にしていたゲンは、あの時連絡先を聞いておいたのだ。

女「本当に…ありがとうございます…!」

女も深々と頭を下げる。

医者「いえ、簡単な手術でしたから。じゃあ私はこれで」

そしてドクターは病院を去っていった。

女「ヒーロー…!」

ギュゥッ…!!

女はヒーローに抱きつく。

ヒーロー「女…心配かけたな。すまない。キミはもう大丈夫か?」

女「ええ…」

ゲン「確かレディは"愛"が原因で暴走するんだったよな?だが今していないということは、克服できたんじゃないか?」

女「それはまだ分からないけど…今は魔力が落ち着いてる…と思う。ヒーローが全部受け止めてくれたから…私の魔力が空っぽになるまで」

ヒーロー「俺には、女を攻撃してでも止めるという勇気も、力も無かった。ただそれだけだ。だが結果的には、それが暴走を止めるきっかけとなったのかもしれない」

ヒー父「ヒーローの鑑じゃないか!誰も傷つけず一人の女を救ったんだ!さすが我が息子!」

ヒー母「ええ!もちろん無茶はやめてほしいけど…!よくやったわ、ヒーロー!お手柄よ!」

ゲン「はっはっは!これにはさすがのヒーローも満たされたんじゃないか?」

ヒーロー「…そんなことはない」

ゲン「何!?」

ヒーロー「今回俺はただ家族を助けただけなんだ。しかも、誰も見ていないところでな……ヒーローとは民衆を分け隔てなく救い、どんな敵にも立ち向かう!俺のヒーロー活動はこれからだ!」

ゲン「はっはっは!そうか!ヒーローらしいな!」

女「私はちゃんと見てたわよ?」

ヒーロー「……」

ヒーローは、やはり笑顔を見せない女の顔を見つめる。

女「…?」

ヒーロー「…フッ…そうだな。キミの前でだけは、真のヒーローを名乗ってもいいのかもな…」

少し寂しげな笑みを浮かべ、ヒーローは言った。

622ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:22:35 ID:L5MYRj.A00

コンコン

病室のドアがノックされる。

ヒー母「はーい、どうぞ」

看護師「失礼します」

ヒー母「あら、どうしました?」

看護師「さっき少年が、これをあなたに渡して欲しいって」

看護師は手紙を渡す。

ヒー母「少年?私に?何かしら…手紙なら家に送ってくれたらいいのに…あれ?この名前…」

それは高校生からの手紙だった。



「挨拶もせず帰っちゃってすみません。

今の俺がソイツに会っても、何も言えねえと思います。

病室の外から一目見て、笑顔じゃなくてもなんか幸せそうな顔だってのは分かった。

俺はソイツが幸せなら、それで十分です。

ソイツの居場所は俺んとこじゃなくて、あなたたちのとこだと思います。

きっとあなたたちは本物の家族だから。

俺のことはソイツには話さないでください。

きっとその方が、俺もソイツも後腐れなくこれからの人生を生きていけると思う。

自分で言うのもなんだけど、ソイツ昔は俺のことも好きだったから、メンドくせーことになるかもしれねえし…。

とにかくそういうわけで、ソイツのこと、よろしく頼みます!

俺は国に帰って、勉強して、大学でも目指します!

じゃ、さようなら!」





第三章 完

623ハイドンピー (ワッチョイ 277d-bfde):2023/07/18(火) 21:28:11 ID:L5MYRj.A00
ここまで読んでくださった方ありがとうございました!!!
第三章は高校生編でした!悲しい!
第四章は一体何編になるんだ…全く予想がつかない…!
また書き溜めたいのでしばらく更新を休みます
気長にお待ちいただければ幸いです

624ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 00:01:05 ID:EyQ0ctFM00
第一章のあらすじ>>348
第二章のあらすじ>>503

〜ここまでのあらすじ3〜

高校生(大学生)は長い旅で疲労困憊の中、親友おこめと再会し復活。
旅を続ける途中、謎の空間にてバーサーカー少年軍団と出会う。
結局その空間に少女の手がかりはなかった。
その空間は謎フォックスたちの管理する場所であったため高校生は目をつけられることになる。

動物の村では、ねこが友達の猫又と遊んでいた。
猫又の正体は"貧乏性の妖怪"であり、その呪いによってねこの友達であった赤ヨッシーの家庭は崩壊する。
ねこは残された赤ヨッシーの妹の特訓を手伝うことになった。

ナザレンコは部隊を引退して芸人に。

遠い宇宙ではアメリーナと魔物たち対エース・アルザークの戦いが繰り広げられる。
ギルティースの加勢もありアメリーナを倒したが、そこへ謎フォックスが乱入。
アルザークたちは逃げるしかなかった。

樹海の洞窟で密かに暮らしていた煙草マスターの子は、父である煙草マスターを倒すべく、スターロッドを探す旅に出た。

別世界へと飛ばされたリカエリスたちは元の世界へ帰るべく、預言の力を持つというアーナ姫の元を訪れた。
しかし城は悪党に占拠されており、悪党を倒すも、アーナは鬼神の邪念に取り憑かれていた。
てへぺろやおサルさん、アーナの兄である壊す合体の力によって、邪念はアーナの魂と合体し、事なきを得た。
その後アーナの預言により、リカエリスたちをこの世界へ飛ばしたフォックスたちはネク◯フィリア星にいると判明。

極道の町では、須磨武羅組の大親分こと迫力が老衰により逝去。
次の親分となるその玄孫の面倒を片割れが見ることになる。

ムッコロズ・ムッコロスは軍の入隊試験を受けたのち、行きつけのジムを訪れたところ、下半身虚弱体質と交戦。
ムッコロズは生身で戦い押されるも、パワードスーツを装着し倒した。

王国の城下町では、ヒーローがパトロール中、倒れている少女、もとい、女を発見。
女は魔力暴走体質によって魔法学校で数年間隔離施設に入れられていたが、その魔法学校は突然黒サムスにより破壊され、それから行く宛もなく彷徨い、この町へたどり着いたようだ。
女は再び暴走することを恐れ去ろうとするが、ヒーローはその手を離さず、女が作り出した異空間へ入り込む。
そこで女は暴走し、ヒーローはその魔力を出し切るまで全てを受け止めた。
女はようやくヒーローの元に残る決心をした。

ヒーローの母はそれを高校生にも報告し、高校生は町を訪れたが、幸せそうな女の顔を一目見て、女のことはヒーローに任せようと決心し、何も言わず去るのだった。

625ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:21:31 ID:EyQ0ctFM00

第四章




ある町の定食屋。

ナザ『バンジー無しバンジージャンプ!?何言ってんだ正気かこの番組!?アホか!そりゃ俺にしかできねえ芸じゃねえかよ!やるに決まってんだろ!』

破天荒な芸で最近人気を伸ばしてきている戦芸人ナザレンコがテレビに映る。

それをボーッと見ながら、孤独に飯を食べる青リンクがいた。

浪人生「はぁ…」

高校生は浪人生となっていた。

通信制の高校を卒業し、一応適当に大学を受けたが、学力が足りず普通に落ちた。

故郷の町へは、まだ帰っていない。

何年もかけて魔法を会得し、何年も旅を続けて、必ず連れ戻すと誓った少女が。

自分とは全く関係のないところで問題を解決し、他の男のところで幸せに暮らしていた。

女の無事を確認した時は素直に喜んだが。

少しずつ、少しずつ、イヤな気持ちが膨らんできていた。

いつの間にか、少女と出会うまでの人生よりも、連れ戻すための人生のほうが長くなっていた。

その結末があれだったのだ。

自分は何のために生きてきた?

そんな疑問が頭の中でグルグルと回っていた。

そんな自分の姿で、帰る勇気がなかった。

家族も仲間も皆優しく、何も言わずにまた受け入れてくれるだろう。
誰も責めたりするはずがない。

頭では分かっているが、浪人生はただただ自信を失い放浪していた。

浪人生「どうすっかなぁ…これから…」

626ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:23:28 ID:EyQ0ctFM00





浪人生の故郷にある、魔法学校では。

㌦「西の魔法学校が壊滅…!?」

昼間「はい…連絡が取れず調べてみたら、まさかこんなことになっていたとは…」

㌦「脱走したドルボリドルを捕まえる時にお世話になったところですよね…?」

昼間「ええ」

ここからドルボリドルの潜んでいたコンゴジャングルまでは遠く、空間移動で行くには膨大な魔力が必要となる。

そこで、コンゴジャングルの近くにあった魔法学校に協力を依頼し、学校同士を繋ぐゲートを開いてもらったのだ。

一方的な移動では届かない距離も、双方からならば繋ぐことができる。

㌦「一体どうして…」

昼間「分かりませんが…黒い鎧を着た何者かが侵入し、全てを破壊していったとのことです…」

㌦「そ、そんな災害みたいなヤツがいるんですか…?!」

昼間「黒い鎧…まさか…いえ、彼女がそんなことをする筈が…」

㌦「何か心当たりがあるんですか?」

昼間「君たちが入学する少し前…魔の一族が表の町に現れたのです」

㌦「魔の一族!?」

昼間「ええ、黒い鎧のサムス族です。しかし彼女から敵意は感じなかった。魔力阻害リングを装着させ、結局何事もなく一月が過ぎ彼女は魔力を失った…筈なのですが…」

㌦「考えすぎじゃないですか?さすがに魔力もない魔の一族が、魔法学校を滅ぼすなんてできっこないですよ」

昼間「…だといいのですが…」

627ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:24:19 ID:EyQ0ctFM00




その隣町では。

味方殺しが、路地裏で何やら通話をしていた。

ミカ「手続きは終わった。来季から潜入できる」

男『そうか。くれぐれも間違えるなよ。必要なのは無関係な魔法でも魔力の扱い方でもない。封印を解く方法だけだ。必ずあの中のどこかに、それが記された魔法書が存在している』

ミカ「ハッ、オレを誰だと思ってる。そんなヘマはしない」

男『ではよろしく頼むぞ』

ミカ「ああ」

ピッ

味方殺しは通信を切る。

ミカ「学校か…殺しの英才教育しか受けてこなかったオレには縁のなかった場所だ。たまにはこんな簡単な依頼も悪くねえ。学生気分でも味わってみるか……ハッ、まあ最後には全員殺すんだがな」

プルルル…

ミカ「あ?またか…」

ピッ

ミカ「誰だ?依頼なら先約がある。今は受け付けてない」

???『あ!ミカさん、お久しぶりです!』

ミカ「……お前…エーレヒトか?」

エーレ『はい!』

ミカ「…何の用だ」

エーレ『ええ!?久しぶりなのに冷たい!』

ミカ「用を言えよ。オレは忙しいんだ」

エーレ『嘘だあ、忙しい時は電源切ってましたよね』

ミカ「チッ、お前にはお見通しか。で、結局何なんだよ」

エーレ『実はこの前、戦地ですごい人と戦っちゃって…!』

ミカ「すごい人?」

628ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:24:46 ID:EyQ0ctFM00

エーレ『一般人ですよ一般人!』

ミカ「あ?」

エーレ『剣を持った一般人に負けたんです、僕!ファイターでもないのにあんな強い人、初めて見ましたよ!』

ミカ「お前が負けた…?」

エーレ『はい、僕嬉しくって…!』

ミカ「なんでだよ…」

エーレ『だってこんなこと滅多にないじゃないですか!面白いと思いませんか!?』

ミカ「思わねえな。教えたはずだぞ。俺たちは評価が全てだ。目の前の仕事を完璧にこなしてこそ、次の仕事に繋がる。それができない奴から消えていく」

エーレ『はは、相変わらずですね。ミカさん、"神剣"って知ってますか?』

ミカ「神が宿った剣の事か?別に詳しくはないが、そういう言い伝えは色々あるだろ」

エーレ『その人になんでそんなに強いのか聞いてみたら、この神剣のお陰だ、って』

ミカ「ヘェ…まあホームランバットや伝説のスターロッドみたいな、特異な能力を宿した武器ってのは実在してるからな。そういう剣があっても不思議じゃない」

エーレ『聞いたことないです』

ミカ「ハッ、相変わらずお前は世間知らずなままか。戦いだけじゃなく、少しは勉強したらどうだ」

エーレ『僕にそんな難しい事ができると思いますか!?』

ミカ「…ま、無理だな。その剣の名前は分からないのか?有名なモンなら調べりゃすぐ出てくるだろうよ」

エーレ『名前かぁ…言ってたような…なんだったかな…』

629ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:25:53 ID:EyQ0ctFM00





数年前。

エーレヒトを傭兵に雇い、空色十字軍との戦争に勝利した某国にて。

兵長「…此度の戦いはエーレヒトのお陰で勝てたが…奴がいなければ、我々はなす術もなくやられていた」

兵「そうですね…奴ら…ファイターには太刀打ちできませんでした」

兵長「もしまた奴らのような戦時法を無視した無法の集団が攻めてきたら、この国は終わりだ…早急に戦力の補強が必要だ」

兵「しかしどうやって…我が国にはファイターが少ない…ごく少数のファイター兵も、都市部の防衛に徹しています」

兵長「ああ。民間から普通に徴兵したところで大きな戦力にもなるまい…」

兵「ではどうするのですか?」

兵長「普通に徴兵すればの話だ。そこで、徴兵には神剣を使う」

兵「神剣を!?」

兵長「神剣に選ばれし者は究極の力を授かるという。たとえその身が凡人であろうとも、な。民間人を砦の地下に集め、あの時のように神剣を引き抜かせるのだ。もし引き抜ける者がいたなら、我が軍は最強となる」

兵「な、なるほど…!ファイターではない者が神剣を扱えれば、戦時法を素通りして他国との戦争にも投入できる…!」

兵長「ああ。では早速取り掛かれ!」

兵「はっ!」


それから兵たちは町の住民たちを順に砦の地下へ呼び出し、神剣を引き抜かせた。



そして数日後。

砦の地下室に突き立てられた剣の前に、住民たちが列をなす。

住民「ふんっ…!!」

先頭の男が剣の柄を握り引き抜こうとする。

住民「…ハア……ハア……ダメだ…びくともしませんよこれ…」

兵「次!」

住民「は、はい!」

次の男が柄を握る。

住民「ふんっ……!!……ダ……ダメですね…腕力には結構自信あったんすけど…」

兵「次!」

それから住民たちは剣を握っては交代し、列は進んでいく。

630ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:26:53 ID:EyQ0ctFM00



住民「はぁ…すいません、ダメです…」

最後に並んでいた男も引き抜けず、トボトボと帰っていく。

兵「兵長、今日召集した住民は以上です」

兵長「これで町の全住民の八割が終わったのか。未だ神剣が抜ける気配は無し……やはり普通の人間では駄目なのか…?」

青年「あのー…すいません、ちょっとトイレ行ってて…」

赤い服を着た金髪の青年が、申し訳なさそうに声をかける。

兵「ん?ああ、もう一人残ってたか。よし、やってみろ」

青年「はい。まあ僕なんかが引き抜けるわけないですけどね、はは…」

青年は剣の柄を握り。


ズッ…


青年「え?」

兵「え?」

兵長「え?」

剣はあっさりと持ち上がった。

兵「へ、兵長…これは…!」

兵長「引き抜けた…!ということは…お前がこの神剣に選ばれし者だ!!」

青年「……え…ええええええ!?」

???『お前からは可能性を感じる。よろしく頼むぞ』

青年「え!?誰!?」

兵「どうした?」

青年「いや、今よろしくって…」

兵長「ん?ああ、そうだな。これからお前には我が軍で働いてもらう。よろしくな」

青年「え、はい…いや、そうじゃなくて…」

???『私の声は他人には届かぬ』

青年「!?…ま…まさか…この剣が…?」

神剣『そうだ。私が持ち主と認めた者にのみ、私の声は聞こえる』

青年「し、神剣に宿った神様みたいな…?」

神剣『まあそんなところだ』

兵長「さっきから何を一人でブツブツと…大丈夫か?」

青年「い、いえ!なんでもないです!」

631ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:28:52 ID:EyQ0ctFM00



それからおよそ一年後。

青年は軍での訓練を経て、ついに実戦に投入された。

青年「戦場…空気が重い…僕こんなところで本当に戦えるのかな…」

兵長「ふむ、この一年で分かった事がある。お前に戦いの才能はないという事だ。だが、お前には神剣がある!さあ行け!」

青年「は、はい…!…って言っても…人斬ったことなんてないし…斬ったら痛そうだし…死ぬよね、たぶん…」

神剣『それが戦いだ』

青年「分かっちゃいるけども…」

敵兵「うおおおお!」

青年「うわこっち来た!」

神剣『構えろ!』

青年「う、うん!」


ズバッ!!


敵兵「ぐはっ…」

青年「え…?」

ドサッ…

敵兵はあっけなく倒れた。

青年「か、勝った…!」

敵兵「なんだアイツは!太刀筋がまるで見えなかったぞ!?」

兵長「やはり神剣…すさまじい力だ…!木刀での訓練とはまるで動きが違う!さあ、その力で存分に暴れてくるのだ!」

青年「は、はい!行くぞ…はあああっ!!」

ズババババッ!!

青年は神剣を振り回して敵兵の中へ突っ込んでいく。

敵兵「ぐああああっ!」

敵兵「くっ…強すぎる!」

ズダダダ!!

敵兵は銃を連射するが、青年は避けながら走り抜けていく。

敵兵「は、速い!弾が当たらん!まさかファイターか!?」

青年「違うよ!」

632ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:29:28 ID:EyQ0ctFM00


ズバァッ!!


敵兵「うわああっ!!」

敵兵は全く歯が立たず、青年一人に蹂躙されていく。

青年「はは…すごい…!まるで自分じゃないみたいだ…!」

???「そこまでだ!」

青年「!!」

青年の前に、一人のサムスが立ち塞がる。

青年「ファイター…!?」

???「私の名は逆キンタマ。この国の防衛を任されし者」

青年「逆キンタマ!?」

逆キン「生まれつきキンタマが生殖器の上についていたことから名付けられた。多少の不便はあるが、金的が効きづらいというメリットもある。案外いいものだ」

青年「そ、そうなんだ…」

逆キン「お前、一般人にしてはできるようだが、英雄サムスの血を引くこの私に勝てると思うな」

青年「やっぱりファイターだったー!ど、どうしよ!勝てっこないよ!」

神剣『案ずるな。私の力を信じろ』

青年「神剣…わ…分かったよ…」

青年は神剣を構える。

逆キン「ほう、ファイターと知ってなお向かってくるか。いい度胸…いや、いいキンタマだ」

ドガッ!!

ズババッ!!

ガキンッ!!

二人の攻撃が激しくぶつかり合う。

逆キン「バカな…!コイツ…強い!」

そして徐々に逆キンタマが押され始める。

青年「いける…!」

ガキィィ!!

逆キン「ぐおっ…!」

逆キンタマの攻撃を弾き、体勢を崩して無防備になった隙に。

ズバァッ!!

逆キン「ぐあああああっ!私のキンタマがああっ!」

ドサッ…

青年は神剣で逆キンタマを斬り伏せた。

青年「や、やった…!これが…神剣の力…!!」


神剣を持った青年の伝説は、ここから始まった。

その後さらに戦場に出ては勝ちまくり、近隣諸国を次々と領地にした。

さらにその勢いを恐れた国々、利用しようとした国々とも同盟を結び、巨大な勢力へと変貌を遂げる。

小国家だったこの国は、僅か数年の間に大国と呼ばれるまでに成長した。

633ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:30:21 ID:EyQ0ctFM00



そして……数日前。

敵国に攻め入った青年と、その国に雇われたエーレヒトがぶつかる。

ガキィン!!

エーレ「わっ!ファルコンパンチが防がれた!?」

青年「ヤバいよこの人…めちゃくちゃ強いよ…!どうしよ!」

エーレ「あなたファイターじゃないですよね!?」

青年「え、は、はい」

エーレ「すごいです!!普通の人でもそこまで強くなれるものなんですね!!」

青年「いや、神剣のお陰だし…」

エーレ「神剣って!?」

青年「コレですけど…」

エーレ「そんなのあるんですか!?だから普通の人なのに強いんですか!?」

エーレヒトは目を輝かせる。

青年「ちょ、ちょっとどうしよ神剣!なんかこの人めっちゃ話しかけてくるんだけど!」

エーレ「なんか剣に話しかけてる!?こわっ!!」

青年「そっちの方が怖いよ!なんで戦争中なのにそんな楽しそうなんですか!」

ドガッ!!

エーレ「楽しいんだからしょうがないじゃないですか!」

バキッ!!

青年「くっ…イカれてる…!今までファイターとも何度も戦ったけど…一番ヤバいタイプだよこの人…!」

エーレ「そんなに強いのになんで楽しくないんですか!?」

青年「い…命の取り合いが楽しいわけあるかっ!」


ズバァッ!!


エーレ「ぐあっ!?」

634ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:31:02 ID:EyQ0ctFM00

青年「…なんだ…?今、急に剣が軽くなったような…」

神剣『よく言った』

青年「神剣?力を貸してくれたの?」

神剣『ああ。戦いとは命の奪い合い…楽しむものではない。ゆえに私という凶器を使うこと、それ自体を恐れぬ者に、私を使うことはできない。だが…お前はこの力を使うことに慣れていた』

青年「うっ…だってめちゃくちゃ強いんだもん」

神剣『そうだな。だが今、お前の本音が聞けた。戦いを恐れる心、絶対に忘れるな』

青年「うん!」

神剣『ならば…今こそ教えよう、私の名を!』

青年「えっ?名前なんてあったの?」

エーレ「さっきから、何一人でブツブツと…言ってるんですかっ!!」

エーレヒトは起き上がり、飛びかかる。

神剣『名もなき剣などありはしない。さあ、敵が来るぞ!前を見ろ!そして聞けぃ!私の名は…』


ズバァッ!!!


エーレ「がはっ…!!」

青年の一振りでエーレヒトは大きく吹っ飛ばされ、気を失った。

青年「神剣…バスタード…!!」

神剣『そうだ。名を知ることで、お前は私の力をさらに引き出す事ができる』

青年「そっか…僕たちもう結構長い間一緒に戦ってきたけど、名前すら知らなかったんだな…」

神剣『これでお前は正真正銘、真の神剣使いとなったのだ。最早お前に敵うものはこの世界に存在すまい…だからこそ、その力を振るう事を恐れる心を、絶対に忘れてはならん。分かったな』

青年「うん!じゃあ、これからもよろしくね、バスタード!」

神剣『ああ』

青年「あ、それじゃあついでに聞いときたいんだけどさ…」

神剣『何だ?』

青年「バスタードって男?女?声も中性的だし、口調も分かりづらいし…ずっと気になってたんだよねー。いや、剣に性別とかないかもしれないけど」

神剣『男だ』


それから青年はバスタード♂とともに敵兵を全滅させ、この戦争も完全勝利で終結させるのであった。

635ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:32:06 ID:EyQ0ctFM00





魔界・第一階層"喧騒"。

???「チッ…随分と腕を上げたようだな…ゲイ」

茶色いゴリラが、緑の帽子の少年の前に倒れる。

ゲイ「ありがとう、ダーク内藤。フフ…」

ゲイと呼ばれる少年はニヤリと微笑む。

???「"腐敗"の辺境に現れたテメエを拾ってきてからまだ数年だ。魔力操作すらできなかったテメエがここまで成長するとはな」

青リンクが言う。

内藤「黒光…まったく、貴様がコイツを見つけなければこの俺がさらに地位を落とすことはなかったのだ」

黒光「そりゃテメエが弱いのが悪いだろ」

内藤「何だと!?ここで貴様を潰してやってもいいんだぞ!?」

黒光「クク、やってみろやデカブツが」

???「よせ内藤。お前じゃ無理だ」

黒ドンキーが口を挟む。

内藤「アルベルト、邪魔をするな!こいつは調子に乗りすぎだ!ここらで分からせておくべきだ!」

アルベ「だからお前じゃ分からされるだけだと言ってるんだ…」

黒光「その"お前じゃ"って言い方、まるでテメエなら俺に勝てるような言い草じゃねえか?オイ」

アルベ「よせ黒光。私はそんな挑発には乗らん」

黒光「ケッ、つまんねえヤツ。まいいわ。ゲイの実力も確認したし、帰るか」

黒光は去っていく。

636ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:32:42 ID:EyQ0ctFM00

ゲイ「フフ、彼らは相変わらず喧嘩っ早いね」

アルベ「まったくだ。もうすぐ地上への大規模侵攻が始まるかもしれんと言うのに、味方同士で争ってどうする」

ゲイ「地上か…フフ、楽しみだな…」

アルベ「そうだな。数十年生きてきた私も、まだ地上に出たことはない」

ゲイ「えっ、そうなの?」

内藤「フン、詳しくは知らんが、魔族は地上では神によって消される運命にあるらしいからな」

ゲイ「そうか…それで妖魔様は戦力を集めてるのか。その神とやらでも対応が間に合わないほどの侵攻で一気に攻め落とす。妖魔様らしいね…フフ」

アルベ「ああ。どうやらその神も弱っているらしいからな。我々が日の目を浴びる日も近いだろう」

ゲイ「それじゃあ僕たちも、それまでにもっと強くならなくちゃね」

???「クク…フハハハハッ!ならば我が貴様を鍛えてやろう、綺麗なゲイ!」

ゲイ「わぁっ!」

ボォッ!!

突然炎の中から現れたのは、赤ピカチュウの魔炎師ヤミノツルギ†であった。

内藤「ヤミノツルギ…!」

アルベ「また面倒なのが来たな…」

ヤミ「面倒とはなんだっ!頼まれたんだよ」

ゲイ「頼まれたって?」

ヤミ「君たちをもっと使える兵士に育てろって、妖魔様から直々にね」

アルベ「そうか…まあボスの命令ならば仕方あるまい。確かに我々はまだ、幹部格に比べると戦力として物足りないのも事実…」

ゲイ「フフ…期待してくれてるって事だね。嬉しい限りだよ」

内藤「さすがはキング・オブ・妖魔!この俺の才能を見抜いていたとはな!」

ヤミ「いや、内藤のことは別に頼まれてないよ」

内藤「ぬゎにぃ!?」

アルベ「残念だったな内藤。大丈夫だ、お前のことは私が守ってやるからな」

アルベルトはそう言って内藤の肩を抱く。

内藤「よせ気色悪い!」

ヤミ「強くなりたいなら教育係のとこにでも行ったら?どうせヒマでしょ」

内藤「チッ…分かった。ならば貴様らを超えて帰ってくる。せいぜい足を掬われんよう気を付けろ!」

内藤は去っていった。

ゲイ「フフ…なんだかんだ言いつつ内藤は物分かりがいいね」

アルベ「不器用だがイイ男なのだ、あいつは…フッ」

ゲイ「フフフ…」

ヤミ「さ…さて……始めるぞ!」

二人のなんだか男色めいた雰囲気に寒気を感じつつ、ヤミノツルギ†は特訓を開始した。

637ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:42:31 ID:EyQ0ctFM00





とある町はずれ。

アメリ「んー…変なとこ来ちゃったな。この子たち連れて帰らなきゃいけないのに」

魔物「グォォ…」

アメリーナは数匹の魔物たちを従えて、迷子になっていた。

アメリ「はあ…お腹すいたなぁ…」

ブタのような魔物を見ながら、アメリーナは呟く。

魔物「ブヒ!?」

アメリ「いやいや、食べないって…せっかく救い出したんだから。あの魔法学校…魔物使って変な実験してるっていうからブッ壊したけど、まさかあんな強い人がいるとは…」

アメリーナは数ヶ月前に滅ぼした魔法学校のことを思い出す。

アメリ「名人とか言ってたっけ…ただの案内人かと思ってたのに…!すごい追いかけてきたから全力で逃げてたら、自分がどこにいるか分からなくなるなんて……くっそ〜!思い出したら腹立ってきた!!…あ、そう言えばあのサムス族の子、元気にしてるかな〜?」

???「見つけたぜ…暗黒のアメリーナだな…?」

アメリ「誰っ!?」

アメリーナは即座に戦闘態勢をとり、アームキャノンを構える。

その先には一人の紫フォックスがいた。

???「俺はパターソン…悪いがお前を連行するぜ」

アメリ「もう!めんどくさいなぁ!今それどころじゃないの!」

パタ「めんどくさいって…悲しみ…迷子なんだろお前…」

アメリ「なぜそれを…」

パタ「お前の船が見つかったんだよ。お前が魔物を引き連れてウロついていたという目撃情報もな…だから来たんだ」

アメリ「ホント!?どこにあった!?私の宇宙船!」

パタ「北西の国の、森ン中…っつってももうとっくに連盟の雇った業者に解体されてるぜ。見つかったのは随分前だからな」

アメリ「ええーー!?なんてことするの!?私が自分でお金貯めて、初めて買った宇宙船なんだよ!?」

パタ「知るかよ…」

アメリ「許さない!!」

パタ「俺が何したっつうんだよ…悲しみ…どわっ!?」


ドガァッ!!!


アメリーナは問答無用で飛びかかり、パターソンはそれをガードする。

パタ「くっ…強えな!」

638ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:43:28 ID:EyQ0ctFM00

アメリ「はあっ!」

ギュルルルッ!!

ガードを解いた瞬間、至近距離でスクリューアタックを放つ。

パタ「ぐあっ!」

アメリ「せいっ!」

バキッ!!

さらに空中で蹴りを繰り出し、パターソンを吹っ飛ばした。

パタ「チッ!調子に…乗んな!」

パターソンは着地するとすぐさま態勢を立て直して飛び上がり。

ドゴッ!!

頭上のアメリーナを蹴り上げる。

アメリ「ぐっ…」

パタ「このままお手玉にしてやる」

ドゴッ!!

ドゴォッ!!

さらに何度も蹴り上げる。

アメリ「くっ…!痛いっつーのっ!!」

バゴッ!!

アメリーナはアームキャノンでパターソンをはたき落とした。

パタ「ぐおっ!?」

ビュゥン…

さらにグラップリングビームでパターソンを捕らえ。

パタ「なっ…クソッ!」

アメリ「ふんっ!」

ドガッ!!!

地面に叩きつける。

パタ「ぐあっ…!!」

パターソンが倒れたところに、アメリーナは馬乗りになって顔前に砲口を突きつける。

アメリ「はい終わりー」

639ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:44:23 ID:EyQ0ctFM00

パタ「クソッ…!」

アメリ「…んー…?なんかさ…弱くない?フォックスだよね?」

パタ「う、うっせぇよ!…悲しみ…」

アメリ「あれ?私フォックスと戦ったことあったっけ?」

パタ「知るか!……いや、ギル姐が任務でお前の拠点の星に行ったっつってたな、そういえば…」

アメリ「ギル姐?」

パタ「俺と同じ紫のジャケット着てる女フォックスだよ…」

アメリ「あー!思い出した!でもその人とは戦ってないよ?」

パタ「それは知らねえよ…」

アメリ「えーっと…たしか魔物たちがアルザークさんとカービィに襲われて…それでアルザークさんと戦って…負けて捕まって…その後そのフォックスにも会って……どうなったんだっけ?」

パタ「だから知らねえよ…人の上で考え込むなよ…悲しみ…」

アメリ「あ!そうそう!気付いたら別の星にいたんだ!」

パタ「何言ってんだお前…」

アメリ「うーん…なんだろこの違和感。なんか記憶がすっぽり抜けてるみたいな…」

パタ「……そういや、ギル姐もそうだったな…」

アメリ「どういうこと?」

パタ「あの時、背後から魔物にやられて気ィ失ったらしい…それで次目覚めた時には別の星だったんだと。仲間に助けてもらってその星に逃げたらしいが、アーウィンも食われたとかで、随分嘆いてたんだ……お前もそうなんじゃねえのか?」

アメリ「だったら私も食われてるよそん時に!完全に拘束されてたんだから!」

パタ「そ、そうか…」

アメリ「あ!そっか!襲われた拍子に拘束具も壊れたんだ!それで無意識のうちに逃げ切ったんだ!」

パタ「んなアホな…」

アメリ「さすが私!解決!」

パタ「まあお前がいいならいいけどよ…フォックスと戦ったかどうかって話はどこ行ったんだよ…」

アメリ「そうだった!忘れてた!」

パタ「すげえアホだ…俺はコレに負けたのか…悲しみ…」

アメリ「ん?なんか言った?」

パタ「いや、何も」

640ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:46:02 ID:EyQ0ctFM00

アメリ「誰がアホだっ!!」

パタ「聞こえてんじゃねえか!」


ドゴッ!!!


アメリーナはパターソンの顔面にアームキャノンを叩き込んだ。

アメリ「…あれ?」

しかし攻撃は空振り、地面に大きなヒビを入れただけだった。


???「ったく、何負けてんだパターソン」


アメリ「!!」

突如そこに現れた白フォックスが、脇に抱えたパターソンを下ろす。

パタ「すまん…助かった…」

アメリ「誰?」

天才「俺は15人目の天才!悪いがテメエの逃亡劇もここまでだぜ、暗黒のアメリーナ」


ゴッ!!


アメリ「ぎゃっ!?」

天才は一瞬で距離を詰め、飛び蹴りでアメリーナを吹っ飛ばす。

ドシャァ!!

さらにアメリーナを上から押さえつけ。

アメリ「速…!」

ガチャンッ!

両手足に拘束具をはめた。

天才「おし、一丁上がり!」

アメリ「えっ!?はっ!?う、嘘っ!動けない…っ」

パタ「…こ、こんなあっさりと…」

天才「んじゃ俺は次の任務があるから行くぞ。パターソン、コイツを収容所まで頼む」

パタ「あ、ああ…」

キィィィィン…

天才はアーウィンで飛び去っていった。

アメリ「ナ、ナニモンなのアイツ…!同じフォックスだとは思えないんだけど…!」

パタ「俺が聞きてえよ…同世代のハズなんだが、なんでこうも差が開いてんだか…悲しみ…」

641ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:46:52 ID:EyQ0ctFM00





とある星の基地。

???「暗黒のアメリーナが捕まったようだ」

コンピュータを操作する若いフォックスが報告する。

???「そうか。奴の記憶は抹消済み、我々に関する情報が漏れることはない」

老フォックスが答える。

???「ああ。奴の知る魔力の使い方も全て聞き出した。概ね既知の情報ではあったが…もはや奴に用はない。放っておけ」

また別のフォックスが言う。

???「了解」

???「魔力操作をさせるために奴に使った魔力増幅薬は勿体なかったな」

???「気にするな。今の我々には最早必要のない薬品だ」

???「オリジナル、マグヌスの監視に当たらせていたCR-315より報告。他のクローンネスと違う兆候が見られているようだ」

???「何?」

???「これまで送り込んだネスはいずれも性格に違いはあれど、人間に危害を加えるような事例はなかった。しかしマグヌスは悪意を持って人間に接する傾向にある」

???「悪意…?」

???「ああ。大きな事件こそ起こしていないが、他人を困らせる言動、イタズラや軽度の暴力を行った事例もある」

???「マグヌス…あれはたしか培養器による成長ではなく、普通の子供と同じく赤子から育て、保育園に預けて他人との関わりを重視した個体だったな」

???「ああ。保育士や同級生、果ては無関係な通行人にも危害を加えている。まだ幼く微弱なPSIしか使えないが、このまま成長させるのはまずい」

???「人間の悪意に影響を受けたのか?」

???「いや、遺伝子異常の可能性もある。廃棄したミスクローンたちのように暴力性が増しているのだろう?」

???「有り得ん。遺伝子検査は綿密に行なっている」

???「だが後天的に異常が発生した可能性もあるだろう」

???「幼少期に精神が不安定なのは一般人でも珍しい話ではあるまい。気にしすぎだ」

???「確かに…しかしネスを一般人と比較してよいものか…それに通行人にまで危害を加えるというのは行き過ぎではないか?」

基地内のフォックスたちがそれぞれの考察を口にする。

???「ふむ…取り敢えずかつて本物のネスが"英雄"と呼ばれたとされる年齢…十二歳までは様子を見ろ。余程危険な存在にならない限りはな」

???「了解」

???「重ねて報告だ。エルバンがファルコン族と接触した」

???「何者だ?」

???「今データを調べている……こいつだ。3億ドルの吐き気」

と、フォックスはモニターに赤ファルコンの画像を大きく映し出した。

???「特に変わった経歴はないようだな。幼少期から運動神経が高く、様々なスポーツで優秀な成績を収めているが…ファイターとしては別段珍しくもない。3億ドルというのはスポーツで稼いだ金額から取られた異名だな」

??? 「それがエルバンに一体何の用だ?わざわざ報告するということは、ただすれ違っただけではないんだろう」

???「ああ。しばらく行動を共にするようだ」

642ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:47:37 ID:EyQ0ctFM00





少し前、とある町。

住民「きゃあああああっ!!」

魔物「グオオオオオオッ!!」

モンゴリアンデスワームのような細長い魔物の群れが、住民たちを取り囲んでいる。


ドガガッ!!


???「大丈夫か?オエッ…」

そこに赤ファルコンが現れ、魔物たちを瞬殺した。

住民「あ、あなたは…3億ドルの吐き気さん!?」

住民「助かりました!ありがとうございます!」

吐き気「何、気にするな。うっぷ…け、怪我はないか?」

住民「はい!大丈夫です!」

住民「それより吐き気さんこそ大丈夫ですか?具合悪そうですけど…」

吐き気「問題ない…生まれつきだ」

住民「よかったらこれ飲んでください!この町で作られる漢方薬です!吐き気に効きますよ!」

吐き気「ありがとう…」

ゴク…ゴク…

吐き気は漢方薬を飲んだ。

住民「どうですか?楽になったでしょう」

吐き気「これは…すごいな。本当だ。今までの人生で一番効いたぞ」

吐き気は晴れやかな表情になった。

住民「それはよかった!」

吐き気「気に入ったぞ。この町を出てからも定期的に取り寄せさせてもらおう」

住民「ぜひぜひ!吐き気さんにならお安くさせていただきますよ!」

吐き気「ありがとう。それにしても…最近は本当に魔物が多いな。昨日訪れた町でも被害があった」

住民「この世界はどうなってしまうんでしょうか?」

吐き気「さあな…だが俺も手の届く範囲の人たちは救いたいと思っている。知ってくれているようだが、俺はもう一生暮らせるだけの金を稼いだ。それは応援してくれたみんなのお陰でもある。だから今、俺はその恩返しの旅をしているんだ」

住民「そうだったんですね!頼もしいです!」

住民「最近スポーツの試合で見かけないと思ったら、そういうことだったんですか」

643ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:48:50 ID:EyQ0ctFM00

???「おいおいおいおいおい!!にゃにもうおわっはひににゃっへんら!?まらうぉくあのほっへうぞ!!」

吐き気「!?」

そこに現れたのは、青リボンのヨシオ族だった。

住民「…なんて!?」

???「らからー!まらうぉくあのほっへうっへうっへんらよ!」

吐き気「…?」

???「オエッ…」

ビチャビチャッ!

住民「なんだ!?なんか吐いたぞ!」

住民「あれは…ミミズ…!?」

???「まだ僕が残ってるって言ってんだよ!!この口からミミズ出すくんがな!!」

吐き気「大丈夫か?この吐き気に効く漢方薬分けようか?」

出すくん「いらないよ!このミミズは僕のアイデンティティ一なんだ!ミミズ出せなくなったら終わりだ!」

吐き気「なんて悲しいアイデンティティ一なんだ」

出すくん「うるさい!!お前よくも僕の育てたミミズたちを殺してくれたな!!」

吐き気「ミミズ…さっきの魔物のことか?なるほど、あれはお前が吐き出したミミズの成長した姿というわけか」

出すくん「そうだ!!あそこまで育てるのに十年かかるんだぞ!絶対に許さない…!行け、ミミズたち!!ソイツを締め付けてやれ!!」

すると口から出てきたミミズたちがウネウネと吐き気の方へ向かっていった。

吐き気「遅い。たとえスポーツから離れても、そんな小さなミミズに捕まるほど俺は衰えてないぞ」

吐き気はミミズをかわし、そのまま口からミミズ出すくんの元へと走る。

出すくん「ふふふ、甘いな!」

ギュルン!

地面から飛び出したミミズが、吐き気の足首に絡み付いた。

吐き気「なっ!」

出すくん「プリ!!」

バチンッ!!

その隙に口からミミズ出すくんのビンタが炸裂。

吐き気「ぐはっ!」

住民「は、吐き気さんっ!」

出すくん「今だ!!ミミズたち!!」

シュルルル…!!

大量のミミズが一斉に吐き気に巻き付いていく。

644ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:50:20 ID:EyQ0ctFM00

吐き気「くっ…う、動けない…!」

出すくん「へっへっへ…たかがミミズと侮ったな!このままタコ殴りにしてやる!!」

ドガガガ…!!

吐き気「ぐおお…!」

住民「吐き気さーん!!」

吐き気(くっ…なんだこれは…!普段ならこんなもの引きちぎれる筈だが…思うように体が動かない…!いつもと勝手が違う…吐き気がなくなったからか…!?)

住民「今助けます吐き気さん!こんなミミズくらいなら俺たちでも倒せます!」

吐き気「ダ…ダメだ!来るな!」

住民「えっ!」

シュルルルッ!

住民「うわぁっ!なんだ!?」

住民たちの足元からもミミズが現れ、その足首に巻き付いた。

住民「くそっ、こんなもの…!」

出すくん「ふふふ…まらまららせるぞ!!」

ビチャビチャビチャ…!

口からミミズ出すくんはさらに口からミミズを出し、そのミミズたちは住民たちに向かっていく。

住民「うわっ!く、来るな…!」

ダダダダダ…


グシャァッ!!


出すくん「!?」

住民「えっ!?」

そこへ赤い帽子の少年が爆走して現れ、ミミズたちを踏み潰した。

エルバン「★うわ、なんか踏んだ…」

吐き気「な…なんだお前は…?」

エルバン「☆僕はエルバンだよ。君は?」

吐き気「3億ドルの吐き気…お前…強いのか?」

エルバン「★うーん、だいぶ」

吐き気「じゃあ頼む。このミミズをなんとかしてくれ」

エルバンはぐるりと見渡し、ようやく状況を把握する。

エルバン「☆うん、いいよ。PKファイヤー!」


ボォッ!!


エルバンは火球を放ち、ミミズに絡みつかれた吐き気ごと燃やした。

吐き気「熱ッ…!」

魔物「ぴゃぃぃ…」

ミミズたちは灰になって消えてゆく。

645ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:51:37 ID:EyQ0ctFM00

吐き気「くっ……ハァ…ハァ…た、助かった…!ありがとう!」

エルバン「☆どういたしまして」

出すくん「な、何なんだお前!!その見た目にさっきの技…ゲイの同族か…!?」

エルバン「★ゲイ?」

出すくん「知らないならいい!くそっ、ファイター二人相手はキツいな!!退散っ!!」

吐き気「逃がすか!」

ダッ!!

吐き気は逃げるミミズ出すくんを追う。

出すくん「オロロロロ…!こいつらの相手してろ!!」

魔物「ぴー!ぴー!」

出すくんはミミズを大量に吐き出し、吐き気たちの前にミミズの壁を作り出した。

吐き気「チッ…どけ!ファルコン・パンチ!!」

エルバン「★じゃあ僕も。はぁっ!!」


ドゴォッ!!!


魔物「ぴゃぁぁ…」

吐き気の繰り出した燃えるパンチと、エルバンの繰り出したヨーヨー攻撃により、ミミズの壁は一瞬にして消滅。

しかし、すでにミミズ出すくんの姿はなかった。

吐き気「くっ、逃がしたか…あの能力は厄介だ。仕留めておきたかったが…」

エルバン「★君強いね。今のパンチ、すごい威力だった」

吐き気「ファルコン・パンチ。俺たちファルコン族に伝わる必殺技だ。お前もファイターなんだろう?一体何族だ?」

エルバン「☆ネス族だよ」

吐き気「ネス…?聞いた事ないな」

エルバン「☆結構珍しいみたいだね。僕もまだお父さん以外のネス族に会った事ないもん。★いや、正確にはお父さんにも会った事ないんだけどね」

吐き気「複雑な事情があるのか。まあ深入りするつもりはない」

住民「お二人とも、また助けていただいてありがとうございます!」

住民たちも二人に駆け寄ってきて、何度も頭を下げた。

吐き気「気にするな。この辺りにどこか休める場所はあるか?」

住民「あ、それでしたらあちらのお店がおすすめです」

吐き気「ありがとう」

それから吐き気はエルバンを連れて店に入った。

646ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/04(木) 21:52:12 ID:EyQ0ctFM00


吐き気「エルバン、お前の力を見込んで頼みがある」

エルバン「★なに?吐き気」

エルバンは奢ってもらったジュースをチューチューとストローで吸いながら聞く。

吐き気「俺は今人助けの旅をしているんだ。悪人や、さっきのような魔物から人々を守ったりな」

エルバン「☆へえー」

吐き気「だがしばらく旅をしてみて気付いたよ。一人じゃあどうしようもないこともあるんだと。よく考えりゃ当然のことだが、俺は自分を過信していた」

エルバン「★ふーん…それで?」

吐き気「お前の力が必要だ。俺とチームを組まないか?」

エルバン「☆いいよ」

吐き気「…ず、随分あっさりだな」

エルバン「☆ふふ、実は僕も君を気に入ったんだ、吐き気。強い人は好きだ。僕の爆走について来れる人はなかなかいないからね」

吐き気「…そう言えばお前、さっきもものすごい勢いで走ってきてたな。何か用があったのか?」

エルバン「☆走るの、好きなんだ!」

エルバンは屈託のない笑顔で言った。

吐き気「フ…そうか。ならば俺の旅に付き合ってもらう代わりに、俺もお前の爆走に付き合ってやるとするか」

エルバン「☆ホント!?やったー!」

吐き気「…それと…一人の大人として、お前には少々常識も教えてやらねばなるまい」

エルバン「☆常識って?」

吐き気「まず、町中では爆走しないことだ。他人に迷惑がかかるだろう。特にお前ほどの強さの奴が一般人にぶつかっては一大事だ」

エルバン「☆ふーん」

吐き気「ちゃんと聞けよ…うっぷ…」

エルバン「★大丈夫?吐き気」

吐き気「う…吐きそうだ…」

エルバン「★トイレ行ったら?」

吐き気「いや、問題ない…やっと漢方の効力が切れてきたか…オエッ…これでいいんだ。俺は吐き気がないと本来の力を発揮できないことがさっきの戦いで分かったからな…うっぷ…」

エルバン「☆へー。吐き気は変わってるね!」

吐き気「…とりあえず、目上にはさん付けで呼ぶところから始めようか」

エルバン「★さん付け?よくわかんないけど、よろしく吐き気!」

吐き気「…」

こうして二人は共に行動することになった。

647ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/05(金) 21:19:55 ID:5cqEJ83g00





数ヶ月後。

北の町の魔法学校では。

昼間「じゃあ㌦、よろしくお願いしますね」

㌦「はい。でも本当に僕なんかが表の学校で教師なんて、大丈夫ですかね…」

昼間「試験は通ったんでしょう。何を怖がることがあるんですか」

㌦「そ、それはそうですけど…」

昼間「来季は稀に見るファイター世代で、表の先生方じゃ手に負えません」

㌦「だったら召喚士さんが行ってくださいよー」

昼間「まったく…わがままを言わないでください。私はこちらの授業で手一杯です。それとも㌦が私の仕事をしたいんですか?」

㌦ポッターは召喚士の机の上にできた書類の山を見て、召喚士の普段の仕事量を思い返す。

毎日朝から晩まで学校の仕事をしながら、自身の召喚魔法の研究も怠らず、さらに㌦ポッターや生徒たちの個人的な指導や相談も行っている。

最近は魔物の出現量が多いため、常に表の空間で異常が起きていないかのチェックも欠かせない。

㌦「…遠慮しときます」

昼間「じゃ、頑張ってください」

㌦「はい……あ、そう言えばこちらの方にも久々にファイターが入学するんでしたっけ」

昼間「ええ。ミカ君というピカチュウ族です」

㌦「ピカチュウ…だったら衝撃と仲良くなれるかもしれませんね」

昼間「どうでしょう…昔よりは遥かに大人しくなりましたが、言葉が喋れないのは変わりませんし」

㌦「喋れなくても同じピカチュウならピカチュウ語が理解できるんじゃないですか?」

昼間「そういうものですかね…」

648ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/05(金) 21:20:53 ID:5cqEJ83g00




そしてさらに月日は流れ、春。

㌦(どうして…こうなった…)

初めて担任となったクラスの教室に㌦ポッターが入ると、そこには。

???「くくく…ここをボクのアジトにする!もんくあるやつは、コイツみたいになるぞ!」

黄色い服の少年が、机を何段にも積み重ねて要塞を築き。

???「ちょ、ちょっとやめてよマグヌスくん!たすけてー!」

その要塞の中に囚われているのは㌦ポッターと同じマリオ族の少女。

???「やれやれ…まったくくだらない…マグヌスもチェントゥリオーネも、もう小学生なんですよ?教室では静かにしなさい」

???「わー、インテリくん、すごいむずかしそーな本読んでるねー!」

メガネをクイっと上げながら読書する緑ヨッシーと、バカそうな赤ヨッシー。

???「す、すごいクラスに入っちゃったね、ソーセージ…」

???「ビビったら負けだぞ、幼き弟よ。小学校は幼稚園とは違うんだ。舐められたら終わりなんだ」

自分の股間に向かって話しかける桃カービィと、返事をする股間。

一般人の生徒たちはその異様な光景に怯えながら、離れて見ていることしかできなかった。

すると。


バチーン!!


マグヌス「ぶへっ!」

背後から近付いた何者かによってマグヌスは机の上から叩き落とされた。

???「コラー!!何をやってるんですか!みんな困ってるでしょ!早く机を元の位置に戻しなさーい!!」

それは緑ピカチュウだった。

マグヌス「ボウリョクはんたい!」

???「うるさーい!」

バチーン!

さらにもう一発、ピカチュウは尻尾でビンタを繰り出した。

マグヌス「ぐはっ!」

㌦「ちょっ、ストップストップ!!」

呆気に取られていた㌦ポッターが、ようやく止めに入った。

???「あっ!もしかしてタンニンのセンセー!?」

と、のんきな赤ヨッシー。

649ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/05(金) 21:21:28 ID:5cqEJ83g00

インテリ「コテツは相変わらずバカですね…こんな若い先生がいるはずないでしょう」

㌦「いえ、先生です。皆さんのクラスを担当することになった㌦ポッターと言います。よろしくお願いします」

コテツ「ほらー!インテリくんのほうがバカー」

インテリ「なっ…!だってチェントゥリオーネとほぼ同じ見た目なのに…!」

㌦「それはチェントゥリオーネさんの成長が早すぎるだけかと…」

幼き弟「先生、優しそうな人だね」

ソーセージ「んー、頼りなさそうだけどホントに大丈夫か?」

チェン「えへっ、ねえ聞いた?わたし、成長早いって。ってことは、オトナの女性ってことだよ!」

マグヌス「おっさんだろ…」

???「口を動かす前に手を動かすっ!」

ばちーん!

マグヌス「ぶひゃ!」

㌦「こ、こらこら、暴力はダメです!すみませんが皆さん、机を元に戻すのを手伝ってください。みんなでやればすぐに終わりますから」

「「え〜」」

???「口答えしない!先生の言うことを聞きなさーい!!」

「「はーい」」

ピカチュウの一声で、生徒たちは渋々㌦ポッターの指示通りに机を元の場所へ移動させる。

㌦「助かりましたよ、暴力くん。皆さんに信頼されてるんですね」

暴力「えへへ、幼稚園でもガキ大将だったので!悪いことしてる人を暴力で黙らせてるうちに、みなさんから恐れられる存在になりました」

㌦「ええ!?いや、暴力はやめましょう…」

暴力「でも僕のうちではそう教わりました!暴力こそ正義だと!」

暴力ピカチュウは眩しい笑顔でそう言った。

㌦(こ、これは早急に面談をしなくちゃ……でも見た感じ、恐れられてるというよりはみんな本当に彼を信頼してるみたいだ。たぶん彼がマグヌスくんへの抑止力になってるんだな)

暴力「?どうかしましたか?先生」

㌦「暴力くん、このクラスの学級委員長になりませんか?」

暴力「えっ?」

㌦「みんなに信頼されてる君なら、僕も安心して任せられる。どうかな?もちろん強要はしないよ」

暴力「喜んで!僕もそのつもりでした!うちのお父さんは病院の院長なんです。だから僕も常にトップに立って、みんなを引っ張っていく存在になりたいんです!」

㌦「ありがとうございます!でも、暴力はダメですからね」

こうして暴力委員長が爆誕した。

650ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/05(金) 21:22:38 ID:5cqEJ83g00





あれから一年。

浪人生は特に目的もなく適当に再び受けた大学に合格し、晴れて大学生となっていた。

その大学内で、女学生たちがウワサをしていた。

女学生「知ってる?すっごいイケメンの新入生」

女学生「知ってる知ってる!たしかリンク族だっけ?」

女学生「ファイターとか言われてる種族らしいけど、見た目ほぼ人間だし、全然アリだよね!」

女学生「頭も性格もめちゃくちゃ良いらしいよ」

女学生「運動神経も神だしマジ神すぎよねー」

女学生「何それ、完璧超人じゃん」

女学生「あっ、ウワサをすれば…」


ゴチンッ!

女教師「いたっ!」

よそ見をして歩いていた女教師が柱にぶつかり、尻餅をついた。

???「大丈夫ですか?」

落とした書類を素早く拾い上げるとともに、手を差し伸べたのは、一人の白リンク。

女教師「ご、ごめんなさい、つい見惚れ…あ、いや、ありがとう、純白くん…♡」

女教師は赤面しながらその手を取った。

純白「ふふ、気を付けてくださいね」

女教師「はい…♡」

女学生「キャーッ!何あのイケメン!」

それを見ていた女学生たちも騒ぎ出す。

そしてそれを見ていた不良たちは。

不良「チッ…気に食わねえなあの一年」

不良「ブッ潰そうぜ」

不良「ファイターだかなんだか知らねえが、あんなヒョロいの囲んでボコせば終わりだろ」

不良「クク…やっちまおう」

不良は集団で純白の方へ近づいていく。

不良「おいテメエ!」

純白「ん?僕?何ですか?」

不良「随分チヤホヤされてるみてえじゃねえか。目障りなんだよなァ」

純白「えぇ…?知らないですよそんなの僕に言われても…」

不良「まあまあ、ちょっとこっち来いや」

と、不良の二人がニヤニヤと笑いながら純白に肩を組み、人目のつかない方へ連れていこうとする。

純白「えっ、このタトゥーイカしてますね」

その腕に彫られたタトゥーを見て純白が言う。

不良「あ?」

純白「あ、先輩のそのピアス!あの有名ブランドのヤツですよね!僕も好きなんですよ!」

不良「お、おう…?」

純白「そちらの先輩の抱えてるヌイグルミのアニメ面白いですよね!」

不良「え…あ、ああ」

651ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/05(金) 21:23:03 ID:5cqEJ83g00


それから数分後、純白はいとも容易く不良たちと打ち解けた。

不良「ぎゃははは!意外と面白えヤツじゃねえか!」

不良「今度飲み行こうぜ!」

純白「是非!あ、でもまだ未成年なので、あんまり大きい声で言わないでくださいよ、ふふ」

不良「おう、悪い悪い!んじゃまたな!」

不良たちは去っていった。

男学生「お、おい純白、大丈夫なのか?あんなヤツらとつるんで…」

離れて見ていた純白の同級生たちが寄ってくる。

純白「はは、大丈夫ですよ。ガラは悪いけどそんなに悪い人たちじゃないと思います」

男学生「そ、そうかぁ?思いっきりケンカ売られてたように見えたけど…」

純白「まあまあ、話してみなきゃどんな人かなんて分からないもんですよ。それより、次どこでしたっけ」

男学生「えーっと、第八教室だな…ってオイ、どこ行くんだ純白!」

純白「いや、あの人って…」

ベンチに大学生が寝転がっていた。

男学生「ん?ああ、よく知らねえけどずっとあそこいるよなアイツ。講義も出てないっぽいし」

純白「そうなんですか?」

男学生「うん、俺も話したことはないんだけどさ。そういやアイツもお前と同じリンク族か」

純白「ええ、だからなんか気になって…」

男学生「まあお前が話したいなら好きにすりゃいいけど…とりあえず今はもう行こうぜ。講義おくれるし」

純白「おっと、もうこんな時間でしたか」

純白たちは教室へ向かった。

652ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/05(金) 21:24:09 ID:5cqEJ83g00



大学生「はぁ…なんだ俺は…何がしたいんだ…?」


大学生は仰向けになり、空を見上げて雲を眺める。

その目の下には濃いクマができていた。

大学生「…………………」

大学生「…ダメだ…何も考えらんねーや…帰ろ…」

大学生は講義にも出ず、そのまま帰路に着いた。


その途中。

不良「あぁ!?やんのかテメエら!」

敵不良「オレらにケンカ売るたあ、死にてえらしいな」

不良グループ同士が道の真ん中で争っていた。

その片方は先ほど純白に絡んでいた連中である。

大学生「ちょっと通りまーす…」

大学生はその後ろを通り過ぎる。

敵不良「オラァ!」

ドガッ!

不良「ぐえっ!」

殴られた不良が飛んでくる。

大学生「うわっ…」

べしっ!

大学生は咄嗟にその不良を払い除けた。

不良「あぁ!?なんだテメエ!」

大学生「は…?」

不良「邪魔だっつってんだよ!」

不良が殴りかかってきた。

ドゴッ!!

大学生「…すまん」

不良「ヤ、ヤス!大丈夫か!…き、気絶してやがる…」

不良「テメエよくもッ!!」

バキッ!!

またも殴りかかってきた不良を返り討ちにする。

不良「ぐはっ…」

大学生「やめろ…今は…」

不良「マイク…!オイ嘘だろ…!なっ…何なんだテメエはっ!」

敵不良「ぎゃははは!通りすがりにやられてやんの!ザコどもが!」

敵グループの不良たちはそれを見て笑う。

不良「んだとテメエら!!チッ、関係ねえやつは引っ込んでろよ…」

そう言って不良たちは大学生から敵グループへと向き直し、喧嘩を再開した。

大学生「何なんだよ…」

大学生が通過しようとすると。

敵不良「おっ、良いモン持ってんじゃねえの!借りるぜ!」

今度は敵グループの一人が、大学生の背につけたブーメランを掴んだ。

653ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/05(金) 21:25:07 ID:5cqEJ83g00

大学生「汚ねえ手で触んじゃねーよ!!」

ドゴッ!!!

大学生はその不良を殴り、道沿いの塀に叩きつけた。

敵不良「ケンジー!!」

敵不良「オイオイオイ!調子乗ってんじゃねえぞコラ!!」

大学生「あぁ!?ざけんな!さっきから何なんだよ!喧嘩なら邪魔にならねートコでやれよ!これは学校のみんながくれた大事なブーメ…ラ……ン……」

と、そこで大学生は止まった。

敵不良「…あ?どうしたテメエ急に黙りやがって!」

大学生(……大事な…?コレが…?)

大学生は空間探査魔法の魔法陣が刻まれたブーメランを、じっと見つめる。

大学生(…コレも…アイツを見つけるために作ったんだよな…)

空間魔法研究に明け暮れた日々。

そしてブーメランを毎日毎日、何年も投げ続けてきた長い旅路の思い出が、脳内を駆け巡る。

大学生(…結局…何の意味もなかったのか…?全部……俺は…間に合わなかった…)

敵不良「オイ!!なんとか言えやァ!!」

不良が飛びかかる。

ギャリンッ!

大学生はクローショットで他の不良を捕らえ、盾にした。

バキッ!

敵不良「ぐえっ!」

不良はパンチの勢いを止められず、仲間を思いっきりブン殴った。

敵不良「うおっ!すまねえ!大丈夫か!?」

敵不良「あ、ああ…てんめえ…舐めやがって…!」

大学生「…もう…いいだろ…」

顔を伏せたまま呟く。

敵不良「いいわけあるか!!死ねや!!」

ドガッ!!

不良は蹴り上げられて宙を舞い。

ドシャッ…

落下。

敵不良「がはっ……」

大学生「…はは…てめーらじゃ俺には勝てねーって」

大学生は泣きそうな顔で笑いながら、不良たちを見る。

敵不良「ク…クソッ…何なんだよコイツはァ!」

不良「いい加減鬱陶しいな!こっちは真面目に戦ってんだよ!水差しやがってよ!」

どちらのグループの不良も大学生の存在が鼻につき、矛先が全て大学生へと向く。

大学生「………」

不良「決着は後回しだ!先にコイツをブッ飛ばすぞ!!」

大学生「…………まあ…たまには…こうやって遊ぶのも面白えかもな」

不良「!?」

大学生「…ケケッ…」

大学生は涙を零しながら、不気味な笑みを浮かべる。

大学生の頭の中で何かが弾けた。

654ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/05(金) 21:26:14 ID:5cqEJ83g00


数分後。

不良たちはグループ関係なく、全員が大学生の足元に転がっていた。

大学生「…え?」

大学生は正気を取り戻し、周りを見る。

不良たちはかろうじて息はあるものの、無惨に血まみれになっていた。

大学生「俺が…やったのか…?」

???「そうだよ。よくもやってくれたな」

大学生「え…」

そこに、一人の緑ルイージが現れた。

不良「うぅ…リ…リーダー…」

???「おう、無理して喋るなよ」

大学生「お前は…」

???「地上最強のチェマ。コイツらの兄貴分だ。仇とらせてもらうぜ」

それはかつて片割れに負け、さらに鍛え続け強くなったチェマだった。

今ではその強さに惹かれた不良たちをまとめ上げる存在となっている。

大学生「か、仇って…俺はコイツらの喧嘩に巻き込まれただけだぞ!」

チェマ「問答無用!!」


ガキィン!!


チェマはいきなりパンチを繰り出し、大学生は剣で弾いた。

大学生「話を聞けよ!正当防衛だ!」

チェマ「テメエファイターだろ」

大学生「はあ!?それがなんだよ!」

チェマ「そりゃあ一般人なんか相手にもならねえだろうな。確かにケンカに巻き込んじまったのはすまなかった。俺から謝る。…だが…テメエにゃ無傷でこの場を離れることだってできただろ…!それをテメエは…!!」

大学生「!!」


ドガッ!!


チェマのドロップキックで大学生は大きく吹っ飛ばされる。

655ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/05(金) 21:26:52 ID:5cqEJ83g00

チェマ「ここまでする意味があるか!?剣まで使ってよ!!」

倒れた大学生に向かって叫ぶ。

チェマが指差した先に倒れている不良の体には、大きな切り傷があった。

大学生「な…!あれも…俺が……?」

大学生は自分の背の剣に目をやる。

チェマ「この町じゃケンカに刃物は持ち出さねえって暗黙のルールがある…あれをできるのはテメエだけだ、クソ野郎が!!」


ドガガガガッ!!!


チェマは体を大きく広げて回転し、連打を放つ。

大学生「ぐあっ…!」

チェマ「オラァ!!」


ドギュオオオッ!!!


大学生「かはっ…」

チェマの燃えるアッパーが決まり、数十メートル上空まで大学生は飛ばされた。

ヒューー…

ドサッ…

大学生「ぐ…!」

チェマ「まだだ。これぐらいで許すと思うなよ」

コキコキと指を鳴らしながら、チェマは倒れた大学生に近付く。

警察「オイ!何してるんだお前たち!」

チェマ「……チッ」


こうして大学生は逮捕された。

656はいどうも名無しです (ワッチョイ 4757-a260):2024/01/05(金) 22:05:56 ID:A4ALUwHw00
悲しいな

657ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/06(土) 19:13:03 ID:t36Wc5eg00




男「ここから出してやるよ」

後日面会に現れたとある男がそう言った。

大学生「…誰だよ」

男「お前があの不良どもと戦ってんのを見たぜ。随分強えじゃねえか。チェマの野郎にも引けをとらねえだろう」

大学生「…」

男「まあそう警戒するな。俺はこういうもんだ」

男は名刺を見せる。

そこには格闘ジムのスカウトと書かれていた。

大学生「スカウト…」

男「お前の力は格闘技でこそ使うべきだ。ファイターの参加できる特別階級になっちまうから、相手もかなり手強いが、それでもお前ならかなり上まで行けるハズだ」

大学生「…興味ねーよ」

男「ウチに来るって契約してくれるんなら、最強の弁護士を用意してすぐにでもここから出してやれるぜ?」

大学生「…別にいいよ…俺はもう…疲れたんだ…」

男「逃げんなよ!お前はすごい男なんだぞ!頼むから俺を信じてくれ!才能がもったいねえ!」

大学生「なんでそこまで……そんなに強え奴が欲しいなら、それこそあのチェマとかいうルイージをスカウトすりゃいいだろ…」

男「アイツのやってるのは格闘技じゃねえ、ケンカだ!町中のジムからスカウトされまくってるようだが全部断ってるみてえだしな。アイツは格闘技という枠に収まらない、"地上最強"を目指してるんだとか」

大学生「…そうかよ…」

男「それに比べてお前は体格、パワー、スピード、そして戦闘の基礎、技術!ただのケンカとは違う、バランスよく高い能力を持ってる!ウチに来りゃ最高の選手にしてみせるぜ!どうだ!?」

大学生「だから興味ねーって…つうか、あの時そこまで見せた覚えもねえんだが…」

男「フッ、スカウトの目を舐めるなよ。色んな修羅場を乗り越えてきたことくらい、一目で分かるぜ」

大学生「………はあ…分かったよ…」

男「おお!?」

大学生「別に他にやりてーことがあるわけでもねえ…やりゃあいいんだろ」

男「本当かっ!!ありがとう!!よし!すぐに弁護士を手配するぜ!」

失意のドン底にいた大学生には、自分を求めてくれるその男の言葉があっさり刺さったのだった。

658ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/06(土) 19:13:29 ID:t36Wc5eg00



その後。

男「ただいま戻りました」

巨大な存在の前に、男は跪いて報告する。

???「おう。首尾はどうだ」

男「あっさり乗ってきましたよ」

???「やっぱりな。アイツはかなりの戦力になる」

男「でも、アンタがいりゃああんな病んだガキに頼らずとも、今の弱体化した須磨武羅組ぐらい潰せるんじゃないですか?」

???「てめえら一般人にゃ分からねえだろうが…ファイターの中にも格ってモンがある。人間や迫力が死んだとは言え、まだ須磨武羅組にゃあかつて俺を倒したA級がいる。俺は所詮"B級の漢"だ」

そう、そこにいたのはかつて須磨武羅組との抗争に敗れ、捕まった筈の茶ドンキー。

ヤクザB改め、B級の漢。

B級「あのガキが出てきたらクスリ漬けにして従わせろ」

男「しかし…あんな強えヤツが簡単に従いますかね?」

B級「フン…崖っ縁でフラついてるガキを闇に引き摺り込むことほど簡単なモンはねえよ」

659ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/06(土) 19:14:08 ID:t36Wc5eg00




数週間後、大学生は無罪となり、晴れて拘置所を出た。

そして男に連れてこられたのは。

大学生「…は?ここがジム…?」

男「おう、事務所だ。なんつってな」

大学生「テメー…騙しやがったのか!?」

B級「まあ落ち着け」

ガシッ

B級が現れ、大学生の肩を掴む。

大学生「なんだテメーは…」

B級「俺はこの"B組"を取り仕切ってる者だ。まあ、B級とでも呼べ。俺たちはてめえの強さに惚れたんだ」

大学生「チッ…ヤクザだろテメーら。ヤクザに手ぇ貸すほど堕ちてねーよ…!」

B級「手ぇ貸せなんて言ってねえさ。てめえ…心に深いキズ負ってんな」

大学生「あ?」

B級「分かるよ。俺も昔、最悪の大敗を喫してよ、しばらくろくにメシも食えなかったもんだ」

大学生「一緒にすんじゃねーよ…」

B級「ファイターの痛みを分かってやれるのは、ファイターだけだ。ファイターは強え。だからこそ周りも本人も勘違いしがちなんだ」

大学生「勘違いだと…?」

B級「俺たちの体がいくら頑丈でも…心は普通の人間と何ら変わらねえってことさ。強がる必要はねえよ」

大学生「…」

B級「キツけりゃ逃げていいんだよ。逃げ道なんてたくさんある。だが、塞ぎ込んでると、その道すらも見えなくなっちまう。だからよ…俺がその逃げ道を照らしてやる」

大学生「…ヤクザに…何ができるってんだよ…」

B級「この世界にいるからこそ、できることもあんのさ」

するとB級は大学生の肩を抱き、周りに見えないように小箱を渡した。

大学生「…何だよこれ」

中には薬のようなものが入っていた。

B級「飲んでみろ。辛いことなんかすぐに忘れられる」

大学生「………」

660ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/06(土) 19:16:18 ID:t36Wc5eg00




その夜。

大学生(クソ……何やってんだ俺…こんなもん受け取って…絶対やべークスリだろ…)

大学生は一人ベンチに座り、B級から受け取った薬を眺め、葛藤していた。


『キツけりゃ逃げていいんだよ』


優しい声色で放たれたB級の言葉が頭の中に反響する。

大学生はブンブンと頭を振り、それを必死に掻き消す。

大学生(…バカか俺は…アイツらヤクザだぞ…?俺を騙して…いいように利用されるに決まってる…)

661ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/06(土) 19:16:51 ID:t36Wc5eg00




数日後、B組事務所。

ピンポーン

ガチャ…

B級「よう。渡したもん、気に入ってもらえたみてぇだな」

大学生「…全部なくなっちまった……また…くれよ…」

大学生は朦朧とした表情で小さく言う。

やってはいけないことをしている自覚はあるのか、周りの目を気にしながら、フラフラと大学生はB級の元へ歩み寄る。

B級「フッ、勿論だ。そろそろ来る頃だと思って用意しといたぜ。オイ、持ってこい!」

すると事務所の中からヤクザの仲間が、クスリを持ってくる。

B級「同じファイターのよしみだ。今回までタダでプレゼントしてやる」

大学生「ああ…ありがとう…」

B級「欲しくなったらまた来い。ただし少し働いてもらうことになるがな。金を払えるならすぐに渡すこともできるが、見たところそんな大金も持ってねえだろ」

大学生「な…何をすればいい…?」

B級「何、てめぇにとっちゃそう難しい仕事じゃねえ。こういう仕事やってると、面倒な敵も群がってきやがるのよ。それを"掃除"してもらうだけさ」

大学生「掃除…?」

B級「おう。簡単だろ?」

大学生「………ああ……このクソみたいな気分が楽になるんなら俺は……」


大学生「何だってやってやる……ケケッ…」



こうして大学生は壊れ、バッドエンドを迎えた。

662ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/08(月) 20:24:31 ID:RcGE18ko00







ここはとある島国。

この国では野球がとても人気である。

そしてこの国の野球では、"バットはどんな物でもよい"という特別ルールがある。

より激しく豪快な野球を求める民衆に応え続けた結果、いつしかこうなった。


カキィィィン!!!!


実況「打ったああああ!!ホームラァァァン!!」

ゆえに、当たりさえすれば必ずホームランになるアイテム"ホームランバット"が高値で取引され、あらゆるチームで使われている。

この球界にもはやヒットは存在せず、全てがホームランなのだ。

が。

実況「さあここで四番、松井の登場です!」

打席に立ったのは、桃カービィ。

その手に持つのはホームランバットではなく…先端に星のついた杖だった。

松井「さて、飛ばすか」

実況「"不思議な星のバット"を携えホームラン予告っ!突如球界に現れたピンクボール、松井☆福耳☆秀喜!今宵も我々に流星のごときホームランを見せてくれるのかっ!」


カキィィィィィン!!!!


実況「ホームラァァァン!!やはりすごいこの男っ!!ホームランバット無しでホームランを量産するぅぅ!!」

663ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/08(月) 20:25:07 ID:RcGE18ko00



試合後。

実況「ではヒーローインタビューに参りましょう。今日のヒーローはもちろんこの男、松井☆福耳☆秀喜選手です!おめでとうございます!」

松井「どうもありがとうございます」

実況「松井選手といえばその不思議なバットですが、やはりあれだけ飛ばせるのは、そのバットにすごい秘密が?」

松井「いえ、これはこの間お祖父ちゃんちの蔵を掃除してる時に出てきたものです。なんなのか僕もよく分かっていません」

実況「ええ!?ということは随分古いものですよね?何かすごいお宝なんじゃないですか?」

松井「どうでしょうね。素振りしてみたら妙にしっくり来たので、試合で使ってみようと。そしたらすごい当たるようになりました」

実況「やはりすごいものなんですね!ホームランバット以上に飛ばしていますし!」

松井「いや、あれは普通に僕がすごいだけです」

実況「なるほど!ありがとうございました!」

664ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/08(月) 20:25:41 ID:RcGE18ko00



松井「ふぅ…今日もいいホームランが打てた」

松井が帰っていると。

子「ちょっといいですか?」

少年が立ち塞がった。

父である煙草マスターを討つべく旅に出た、リンクの子だ。

松井「ん?どうしたんだい?もしかして僕のファンかな?」

子「スターロッド…間違いない…」

松井「…!?これを狙ってるのか…!?ヒーローインタビューでも言ったがこれはそんなすごいものじゃあないぞ!ホームランバットのほうが飛ぶぞ!」

子「それを僕にください」

松井「いや、だからこれを使っても僕のようには…」

子「野球には興味ありません」

松井「ええ!?」

子「それはスターロッドという武器です。古い蔵の中に眠っていたのなら、もしかしたらあなたの遠い先祖が使っていたのかもしれません。元々カービィが使っていたものらしいですから」

松井「…たしかに昔、先祖の記憶で星の杖を持って戦ってるのを見たことはある…なんか似てるなぁとは思ってたけど、これ本物だったのか…」

子「気付いてなかったんですか!?」

松井「だって僕は野球一筋だし…先祖と違って戦ったことなんてないんだ」

子「そうですか…ではとりあえずそのスターロッドをください」

松井「とりあえずってなんだ!ダメだよ!これは僕の商売道具なんだから!」

子「この世の平和のために必要なんです。かくかくしかじかで…僕が戦わなきゃダメなんです。用事が終わったらお返ししますから」

松井「いやぁ…そんなこと言われても困るよ…」

子「…あなたのことは調べてきましたよ。本当に野球が好きなんですよね」

松井「ああ…だったら分かるだろう?僕にとってこれがいかに大事か…」

子「ええ、全ての原点とも言える野球道具を大切にし、有名選手になった今でもグラブ磨きを欠かさない。そんなあなたにとってバットを他人に渡すなど言語道断でしょう」

松井「分かってるじゃないか」

子「ですが本当にそれでいいんですか?」

松井「え…?な、何が言いたいんだ…」

子「だってそれ、バットですらないですよ」

松井「!!!!」

子「野球に興味ない僕が言うことじゃないかもしれませんけど、この国の野球は変だ。バットはどんなものを使ってもいいなんて…それでも、ホームランバットはまだ一応バットの形を成している。しかしあなたのそれは違う」

松井「い、いいだろう別に!ルール違反をしてるわけじゃない!」

子「自分の胸に手を当てて聞いてみてください。あなたが子供の頃夢見ていた野球選手は、そんな姿をしていたんですか?スターロッドは持ってもホームランバットを持たなかったのは、今の球界に不満があって、一石を投じたかったんじゃないんですか?」

松井「くっ……!!」

子「本当に野球と真摯に向き合うのなら…最高のプレイヤーを目指すのなら…!なんの変哲もないただのバットで戦うべきだとは思いませんか!?」

松井「……!!」

子「野球を心から愛するあなたなら、きっと僕なんかに言われなくたって、もう分かっているハズです」

松井「…………くっ…………!」

子「自分の心に正直になってください松井選手。そしてこの国に、本当の野球を取り戻してください」

松井「……本当の野球…か……フッ…ハハハハハ……!そうだな……負けたよ…完敗だ。持っていきなさい!」

松井はスターロッドを差し出した。

子「本当ですか!」

松井「ああ…だがこれを託すからには、必ず世界を救ってきてくれ…そして野球の未来を守ってくれ!」

子「はい!ありがとうございます。あなたも頑張ってください」

松井「ああ。君のおかげで目が覚めた。また一から鍛え直すよ」

こうして煙草マスターの子は、スターロッドを手に入れた。

665ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/08(月) 20:26:55 ID:RcGE18ko00





ヨシオ族の里。

その中央広場では。

鳴りやま「よっしゃー!鍛えた俺の技を喰らえ殺意っ!」


ドガガガ…バゴォン!!


鳴りやまぬヨシオが吹っ飛ばされ、倒れた。

殺意「弱い。次」

奇跡「ありゃりゃ☆鳴りやまぬクン随分鍛えてたのに、全く差が縮まってないや♪」

勇気「それどころかむしろ差が開いてない?どこまで強くなるつもりなんだ殺意くんは…」

鳴りやまぬ以外にも多くのヨシオ族たちが殺意に挑み、ボコボコにされてそこらじゅうに転がっている。

殺意はヨシオ族を鍛えるため、こうして数週間に一度、みんなを集めて特訓の場を設けているのだ。

殺意「そう言えば勇気…お前んとこの子供、随分強いらしいな」

殺意は勇気のヨシオを睨んだ。

勇気「えっ!?勇者のこと!?」

殺意「それ以外誰がいるんだ。ソイツを連れてこい」

勇気「待て待て、勇者はたしかに天才だけどまだ子供だよ。殺意が戦って楽しめるようなレベルじゃないさ」

殺意「僕が勇者の歳の頃にはもうお前より強かっただろ」

勇気「いや、確かに勇者ももしかしたら僕より強いかもしれないけど…殺意くんだってその頃より遥かに強くなってるでしょ?」

奇跡「ん?勇者クンだ♪戦いたいのかな?」

勇気「えっ!?」

勇気の息子、勇者ヨシオがすぐ後ろに来ていた。

勇者「お父さん…僕、もう子供じゃないよ!戦わせて!」

勇気「ほ、本気か!?」

勇者「はい!」

殺意「いい度胸だ。来い」

勇者「よろしくお願いします!」

666ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/08(月) 20:27:43 ID:RcGE18ko00

広場の真ん中で勇者は殺意と対峙する。

モブオ「最近飛ぶ鳥を落とす勢いで強くなってる勇者が殺意と戦うらしいぞ!」
モブオ「まじすか!こりゃ見るっきゃない!」
モブオ「頑張れ勇者!殺意をぶっ飛ばせ!」

モブヨシオたちが続々と集まってくる。

勇気「勇者…立派になって…」

奇跡「きゃはっ☆ホント、名前の通り勇者だねぇ♪」

殺意「安心しろ、ガキ相手に本気は出さない」

勇者「えいっ!」

ブンッ!

勇者は青いリボンから取り出した爆弾を放り投げた。

ペシッ!

殺意はそれを軽く払いのける。

ドドンッ!!

地面に当たり爆弾が弾ける。

殺意「!」

その瞬間に勇者は距離を詰めていた。


バチンッ!!


両者のビンタがぶつかり合った。

勇者(重っ…)

ドシャァッ!!

威力は遥かに殺意の方が高く、勇者が一方的に吹っ飛ばされる。

勇者「ぐ…」

殺意「立て。これくらいで終わらないだろ?」

勇者「も…勿論です…!」


ドドドォン!!!


勇者は爆弾を周囲に投げ、撹乱する。

殺意「チッ…そこか」

タンッ!

爆煙の中に見えた影に向かって殺意が飛びかかる。

ぼすっ!

そのまま空中で蹴りを繰り出すが。

鳴りやま「ごふっ!?」

殺意「は?」

それを食らったのは鳴りやまぬだった。

奇跡「鳴りやまぬクン!?何してんの!?」

勇者は倒れていた鳴りやまぬを陽動として放り投げていたのだ。

バゴッ!!

その間に殺意の背後へ忍び寄り、蹴りを繰り出す。

667ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/08(月) 20:28:43 ID:RcGE18ko00

殺意「甘い」

勇者「くっ…」

しかし殺意はその蹴りを容易くガードしていた。

殺意「多少頭は使えるらしいが、一つ覚えとけ。そういうのは自分よりバカな相手にしか通じない」

勇者「…」

ひゅぅぅぅぅ…


ドドンッ!!


殺意「!!」

上空から降ってきた爆弾が、殺意のすぐ後ろで爆発した。

勇者「く…はずした…!」

殺意(コイツ…蹴りを止められることも読んで、あらかじめ爆弾を上に投げてたのか…?)

ガシッ!

勇者「ぐっ…」


ドゴッ!!


勇者「うあっ!」

殺意は勇者を掴み、地面に叩きつける。

タンッ

さらに跳ね返った勇者を追って殺意も飛び上がり。


バゴッ!!


下から薙ぎ払い、上空へ弾き飛ばす。

勇者「ぐはっ…!」

さらに殺意もプカプカと浮かび上がり。


バチンッ!!


ビンタをかます。

勇者「ぶっ…」

バチンッ!!

バチンッ!!

勇者が落ちてくるのに合わせて、さらなる追撃の連続ビンタ。

奇跡「ひえ〜、容赦ないねェ♪さすが殺意クン☆」

勇気「ストップ!ストップだ殺意くん!」

殺意「は?」

668ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/08(月) 20:29:11 ID:RcGE18ko00


ドドンッ!!


殺意の気が一瞬逸れた瞬間、勇者が落とした爆弾が殺意に命中した。

殺意「けほっ…」

勇者「あ…当たった…」

殺意「……ふざけるなァ!!」


ドゴォッ!!


勇者「ぎゃっ!」

勇者が落ちてきたところに、殺意の頭突きが炸裂。

勇者は遥か上空へと舞い上がった。

殺意「プリプリ…」

そして機嫌を損ねた殺意は去っていった。

ひゅぅぅぅぅ…

ポフッ…

上空から落ちてきた勇者はそのまま倒れ込んだ。

勇気「だ、大丈夫か勇者っ!!」

勇気たちが駆け寄る。

勇気「ひどい怪我だ…担架を頼む!すぐに病院へ!」

669ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/08(月) 20:29:53 ID:RcGE18ko00



勇者は病院へ運ばれ、処置を受けた。

勇者「…お父さん…?」

勇気「勇者!目を覚ましたか!良かった!」

勇者「…えっと……そっか……僕…負けたんですね…殺意さんに…」

勇気「ナイスファイトだったよ、勇者!爆弾の使い方もお父さんより全然上手かったし!」

鳴りやま「俺に何か言うことがあるよな、勇者」

勇者「すみませんでした。代わりになるものがなくて…」

勇者は頭を下げる。

奇跡「でも殺意クンがここまでするなんてねぇ…」

鳴りやま「ああ…アイツいつも俺らをボコボコにするけど、大怪我にはならないようになんだかんだ加減してくれるからな。結構焦ってたんじゃないか?まあ俺はそん時意識なかったから状況ぜんぜんわかんねえけどなっ!がははは!聞いた話じゃあ殺意に一発入れたんだろ?」

勇者「それは止めに入ったお父さんに殺意さんが気を取られただけで…僕もあんなつもりでは…」

勇気「ああ…殺意にも勇者にも申し訳ない…」

鳴りやま「だとしてもすげえよ!そもそもその歳で殺意に挑む勇気がもうすげえ!」

奇跡「普通に鳴りやまぬクンより善戦してたしねぇ♪」

鳴りやま「何ぃ!?そりゃ聞き捨てならねえぞ!勇者!怪我治ったら今度は俺と組み手しやがれっ!」

勇者「はは…良いですよ…」

鳴りやま「オイオイなんだよ元気ねえなあ!ってそりゃそうか、怪我人だったわ!」

勇者「……」

しかし勇者は怪我以上に、落ち込んでいた。

670ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/08(月) 20:30:28 ID:RcGE18ko00

勇気「殺意くんに負けたことを気にしてるのか?大丈夫さ。殺意くんには里の誰も勝ててないんだし、歳も上なんだから。気に病むことじゃないよ」

勇者「でも……歳の差以上に、力の差を感じたんです。そりゃ鍛錬も経験も殺意さんの方がたくさんしてきてるから、勝てないのは分かってた…だけど…この先僕が殺意さんと同じ量、いやそれ以上に鍛錬を積んだとしても、追いつけるイメージが湧かない…それくらいの圧倒的な、根本的な力の差…」

鳴りやま「ああ、超分かるぜ!俺も死ぬほど特訓してるけど、差は開く一方だしな!ちくしょうムカつくぜ…もはや突然変異とか言われてるレベルだぞ!同期の俺ですらアイツが本当に同じ種族か怪しいしな!」

奇跡「だねぇ♪殺意クンはちょっとおかしいっていうか…」

勇者「…お父さん」

勇気「ん?なんだ?」

勇者「僕、里の外に出たい」

勇気「え!?どうした突然!」

勇者「旅に出て、いろんな人やものを見てみたい…この里で鍛えてるだけじゃ、永遠に殺意さんに近付けない…そんな気がするんだ」

勇気「外は危険なんだぞ!?」

勇者「分かってます。だけど、行かせてください」

鳴りやま「ハハハッ、良いじゃねえか!可愛い子には旅をさせろって言うだろ!?勇者くらい強けりゃきっと里の外に出てもやっていけるだろうしな!」

奇跡「きゃはっ☆奇跡ちゃんも勇者クン応援するよぉ♪里の外の話、また聞きたいなぁ♪」

勇気「……そうだな。分かった。ただ僕の一存じゃ決められないから、里長に相談しておくよ」

勇者「…!ありがとうお父さん!」

鳴りやま「小さな里から一人で冒険に出るなんて、本当の勇者みたいだな!"勇者ヨシオの冒険"てやつだ!ハハハハ!」

勇者「はは、からかわないでくださいよ」

鳴りやま「しかしそうなると俺との組み手も帰ってからだなー!俺もめちゃくちゃ鍛えとくから、お前も頑張れよ!」

勇者「はい!」


それから二週間後、勇者は里を出発し。

数ヶ月をかけて、いくつかの国を巡る。

そして最後に訪れた国の、とある村で。

勇者ヨシオは本当の〈冒険〉をすることになる。

671ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:46:24 ID:2JIdRYuY00





かつて、㍍アルザークが初めてクローンフォックスたちと交戦した星。

そのエネルギープラント内に、またもクローンフォックスたちが暗躍していた。

???「ふむ…龍脈のエネルギーを喰らった個体はやはりほとんどが即死。生き延びても身体的変異は見られない」

???「だがこの個体は、身体的変異が起きている。あの時と同じように」

そこには、巨大な獣のような宇宙生物が拘束されていた。

それはかつてエネルギープラントを襲ったものと同じ種の生物だ。

???「データを見る限り他の個体と身体的に大きな差異は見られなかったが、一つだけ突出している数値がある。魔力量だ」

???「ごく稀に生まれる魔力の高い個体だけは龍脈エネルギーに耐えることができ、さらに魔力と龍脈エネルギーが融合する事で身体に変異が起こる。現段階ではこの程度の仮説が限界か」

???「では予定通り、CR-344、CR-345を使い実験しよう。平均的魔力である344に対し、345は遺伝子操作を行い魔力を増幅させている」

???「仮説が正しければ、345にはこの個体と同じ異変が見られるかもしれない。この生物にのみ見られる現象という可能性もあるが、試す価値はある」

???「では実験を開始する。CR-344、CR-345、龍脈に右腕を同時に十秒間挿入しろ」

???「「了解」」

上官のようなフォックスの合図で、二人の若いフォックスが龍脈に腕を突っ込む。

???「「ぐあああああ…っ」」

そして十秒後に腕を引き抜く。

片方のフォックスの腕はそのエネルギーによって焼けただれ、ほとんど骨と化していた。

しかしもう片方のフォックスは、無傷だった。

???「CR-345、腕の具合はどうだ」

???「筋肉が変化しているのを感じる…」


ドゴォン!!!


その右腕で、隣の右腕を失ったフォックスを殴り、数十メートル先まで吹っ飛ばした。

???「…魔力を使わずにこのパワーだ。魔力をこめればさらに数倍の威力になるだろう」

???「まだ確実ではないが、仮説はどうやら正しいようだな」

???「あの時解析した変異生物のデータが㍍アルザークに奪われていなければ、ここまで時間を取られることもなかったのだがな…だがまあ、こちらもようやく緻密な魔力操作が可能になった段階。丁度いいタイミングでこのデータが得られた」

???「こうなれば奴の持つキューブも最早必要ないが…㍍アルザークが邪魔な存在である事に変わりはない。場所を特定し次第、小隊を送り込む」

宇宙生物「グオオオオ!!」

???「…時間だ。処分しろ」

???「待て。我々にはオリジナルに任されたもう一つの任務がある。この被験体は奴らを誘き出す餌として使える」

???「分かった。ではCR-338から346は第五基地へ帰還し、結果をオリジナルへ報告する。CR-345の変異した右腕の解析も始めておく」

???「了解」

672ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:48:04 ID:2JIdRYuY00





数日後、フォックスの村では。

カタカタカタカタ…

基地の待機室で、ドドンが何やらパソコンを操作している。

ポルス「ドドン、何してるんだ?」

ドドン「へへ、俺も爆弾職人として自分でも満足いく爆弾を作れるようになってきて、評判聞いた買い手も何人かついたからなドン。本格的に通販サイト作ったんだドン」

ポルス「おー、すごいなドン!」

ドドン「もちろん販売許可は貰ってるドン。これでもっと爆発のよさを広めることができるドン!」

ポルス「あれ、でもじゃあ、まさかドドンもフォックスとしての活動やめちゃうの?」

ドドン「まさか!そりゃ爆弾作りも大切だけど、それはただの手段だからなドン!俺が好きなのは爆弾より爆発そのものだドン。そしてそれが一番近くで感じられるのは、戦場だからなドン!」

ポルス「はは、そっか。さすがドドン、ブレないなドン!」

アルバロ「まったく…副業も程々にしておけよ。それで任務に支障をきたすようなら、貴様がどう考えていようが、アーウィンを下りてもらうぞ」

腕を組み偉そうに座るアルバロが睨みを効かせる。

ドドン「うひゃー、こえードン。アホのくせに」

ポルス「アホバロ」

アルバロ「何か言ったか!?」

ドドポル「なんにも〜」

アルバロ「言っとくがポルス、貴様もだぞ!最近休みにコソコソ出かけて、モノマネ芸人として活動してるらしいな!ナザレンコの真似のつもりか知らんが、任務に集中できんのなら出ていってもらうからな!」

ポルス「愚か者めがっ!我の芸は模倣だが、生き方まで他人を模倣したつもりはないわ!キッカケは確かにナザレンコだし、尊敬している…しかし芸人を目指すのは、まごうことなき我の意思だ!というか休みに我が何をしようと貴様には関係なかろう!」

アルバロ「わ、我の真似をしながら言うでない!」

ドドン「ふふふ、どうだドン。上から目線の喋り方ムカつくだろドン?これがお前ドン」

ポルス「フン、分かったら態度を改めることだな!ワーッハッハッハ!!」

アルバロ「う、うるさいわーっ!!」

673ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:48:21 ID:2JIdRYuY00

ウィーン…

ギル「おふざけはその辺にして。任務よ」

真面目な顔でギルティースが入ってくる。

ドドンたちもすぐに切り替え、真面目な顔で話を聞く。

ギル「南西の星に大型の宇宙生物が現れたわ。他の星からすでに何人か討伐隊や賞金稼ぎが行ったようだけど、全員撃墜されちゃったみたい」

アルバロ「ほう、強そうだな」

ギル「今近くで動けるのは私たちしかいないから、私、アルバロ、ドドンで行くわ。ポルスは待機して」

ポルス「え〜」

ドドン「ま、なんかお土産買ってきてやるドン。ご当地爆弾とか」

ポルス「そんなのあるのかドン?」

ドドン「さあ」

ギル「大型生物の討伐ならドドンの爆弾はかなり役に立つからね。ただしエネルギープラントの近くで暴れてるらしいから、絶対壊さないように注意すること」

ドドン「任せろドン」

アルバロ「ところでさっきから、その"ドン"というのは何なのだ、ドドン」

ドドン「ドドンのドンだドン。いわゆる語尾による鼓舞だドン」

アルバロ「…ギルティース、此奴は何を言っているのだ?」

ギル「さあ…?好きな言葉を語尾につけると気持ちが昂るってことかしら?」

ドドン「そんなとこだドン」

ポルス「お前らもやってみるといいドン」

アルバロ「フン、遠慮しておこう。さあ、無駄話はやめてさっさと準備を始めろ。最速で任務へ向かうぞ」

ドドン「無駄話って、お前が聞いたんじゃないかドン」

ポルス「やっぱアホバロだなドン」

アルバロ「ウザい…!ポルスのせいで二倍ウザい…!」

ギル「いいから行くわよアホバロ」

アルバロ「ギルティースまで!?」


それからギルティースたち三人はアーウィンで任務の星へ。

674ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:49:29 ID:2JIdRYuY00




ドドドドドドド!!!

宇宙生物「グオオオオオオオ!!」

三機のアーウィンが一斉に宇宙生物を撃つが、ほとんどダメージは入っていない。

アルバロ「思った以上に強いな!特にあの振り回す尻尾のパワーが尋常ではない!」

ギル「く…風圧で機体が揺れるわね…!ドドン、私とアルバロで急所が無防備になるように誘導するから、ボムよろしく!」

ドドン「了解ドン!」

アルバロとギルティースは宇宙生物の周囲を旋回し、注意を引く。

宇宙生物「ギャァァァース!!」


ドゴォォン!!

ズガァァァン!!


アルバロ「チッ、暴れ過ぎだ貴様ッ!」


ドドドドド!!


アルバロは宇宙生物の眼球を撃ち抜いた。

宇宙生物「グオオオオッ!」

ドドン「今ドン!!」

ドドンが爆弾のマークが描かれたボタンを押すとアーウィンの下部が開き、砲台が現れる。

ドドン「射出!!」

さらにボタンを押すと、砲台からボム兵が撃ち出され。


ドドォォォン!!!!


宇宙生物の首元にボム兵が命中し、大爆発が起きた。

ドシィィン…!

首は完全に破壊され、頭部が落ちる。

体も力を失い、仰向けに倒れた。

アルバロ「…目標完全に沈黙。任務完了だ!」

ドドン「よっしゃー!」

ギル「ふぅ…結構大変だったわね。二人で来てたら危なかったかも。それにしても、まーた威力上がってるわね、ボム兵…」

ドドン「日々の研究の成果だドン!」

アルバロ「それはいいが…威力を上げすぎて市街地にまで被害が出ないように気を付けろよ」

ドドン「うーん、考えておくドン」

アルバロ「考えるな!!」

ドドン「ははは、冗談ドン」

ギル「それじゃ任務も終わった事だし帰りましょうか」

ドドン「えー、せっかく来たんだしちょっとこの星の町に寄って行かないかドン?調べたところ爆薬売ってるとこもあるみたいなんだドン。ポルスに土産の約束もしてるしなドン」

ギル「…んー…まあそうね。ちょっとならいいわよ。私はスイーツ店でも探そうかしら」

アルバロ「フン、観光に来た訳ではないのだぞ。手短に済ませろ。我はここでアーウィンの整備でもして待つ」

そしてドドンとギルティースはアーウィンを停めると、町へと繰り出した。

675ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:51:24 ID:2JIdRYuY00

アルバロ「まったく…公私混同は控えてほしいものだ。最年長のギルティースまでスイーツなどにうつつを抜かして……まあ、彼奴はナザレンコが引退してからフォックスを先導すべく頑張っておったからな…たまの休息を許してやるのも我の務めか!ワーッハッハッハ!」

女性「そこのフォックスさん」

アルバロ「む…?我か?」

振り返ると、ガラクタを売っている小さな露店から、女性店員が顔を覗かせていた。

女性「はい。私、宇宙整備士なんですよ。それ、アーウィンですよね!」

アルバロ「ああ」

女性「ちょっと見せてください!本物のアーウィン見たの初めてで…!」

女性は目を輝かせる。

アルバロ「見るのは構わんが、勝手にイジるなよ。アーウィンはとても高度な機械だ」

女性「分かってますって!フォックスオタなんで!」

アルバロ「オ、オタ…!?」

女性「おおっ!ここはこんな風になってるんですね!お、これが反重力装置ですか!わっ、コックピットの中もかっこいいっ!ここのボタンは、レーザー砲の操作をするんですね!」

アルバロ「ちょ、オイ!勝手に乗るなよ!?」

女性「はっ!すみませんつい興奮しちゃって…!」

アルバロ「まったく…」

女性「ところでお願いがあるんですけど、ロボットに興味ありませんか?」

アルバロ「ロボット?」

女性「はい!私が独自に開発している戦闘ロボットがありまして、そのモデルとしてフォックス族の姿や動きを取り入れてるんです!」

アルバロ「ほう?ただのロボットに我々の動きなど再現できんと思うが…」

女性「勿論完璧とはいきませんが、フォックス族の任務中の映像なんかを宇宙中探してかき集めて、それを学習させたAIでロボットを動かしてます。見てみませんか?」

アルバロ「なるほどな。フン、まあ奴らが戻ってくるまでここでじっとしているのも退屈だ。一目見るだけなら構わんぞ」

女性「良かった!では呼びますね」

アルバロ「呼ぶ…?」

女性「ええ、自立式ロボットですから呼べばあっちから来てくれますよ」

アルバロ「ほう、面白いな」

女性が手元のリモコンを操作し、しばらくすると。

ガシン…ガシン…ガシン…

露店の裏から、白フォックスが歩いてきた。

女性「これが私の開発したAI戦闘ロボット…その名も"機動戦士"です!」

アルバロ「おおっ!?一瞬本物のフォックスかと思ったぞ!」

機動「俺は機動戦士!お前は誰だ?」

アルバロ「おお、喋るのか!我はアルバロだ!」

機動「アルバロ、よろしくな!」

女性「フォックスに関する記録を調べて、その口調もできる限り再現してるんです」

アルバロ「いいではないか!しかし肝心なのは動きだ。どんな事ができる?」

女性「はい!機動戦士、ファイアフォックスを見せてください」

676ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:54:20 ID:2JIdRYuY00

機動「いいぞ。…ファイヤーッ!!」


ボォッ!!


機動戦士は宙に向かって見事なファイアフォックスを放った。

アルバロ「おおっ!完璧ではないか!」

シュタッ!

機動「へっ!これくらい朝飯前さ」

華麗に着地した機動戦士は、腕を組んでドヤ顔を披露する。

女性「どれだけ映像を確認しても、どういう仕組みで燃えてるのか分からなかったので、取り敢えず頭部と脚部に火炎放射器と推進装置を仕込んで…」

アルバロ「ああ、アレは気合いだ」

女性「気合い!?」

アルバロ「我々フォックスにしかできぬ芸当だからな。解析できずとも無理はなかろう。それで、他には何ができるのだ?」

女性「フフ、すっかり夢中ですね。作り手として嬉しい限りです。それではお次は…」

それから機動戦士はフォックス族の様々な技を再現してみせた。

アルバロ「すごいぞ!威力やスピードは本物には及ばんが、見た目はまごう事なきフォックスだ!」

女性「そうでしょう!しかも実はさらに秘密があって…なんと戦闘機の操縦もできるんです!」

アルバロ「何!?ロボットが操縦を!?」

女性「機動戦士、見せてくれる?」

機動「お安い御用だ」

機動戦士は露店の裏に停めてあった小型戦闘機に乗り込み、しばらくすると。


キィィィィン…


戦闘機は飛び上がった。

アルバロ「おお!?」

女性「機械が機械を操作なんてちょっと変かもしれませんが…AIに記憶させれば、アーウィンだって乗りこなせます!」

アルバロ「ほう!凄いではないか!」

女性「ありがとうございます!」

アルバロ「ワハハハハ!こちらこそいいものを見せてもらった!礼を言うぞ!」

女性「いえいえそんな!本物のフォックス族の方に見てもらえて、こちらの方が感謝ですよ」

アルバロ「ならばこれからも研究に励むのだ!貴様の造るロボットはいずれは我らと共に宇宙を守る役目を担う存在になるであろう!ワーッハッハッハ!」

女性「そう言ってもらえると頑張り甲斐があります!…では、研究に関して最後に一つだけお願いがあります」

アルバロ「む?何だ?」

677ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:55:31 ID:2JIdRYuY00

そこに戦闘機が着陸し、機動戦士が降りてくる。

女性「この機動戦士を買い取ってもらえませんか?」

アルバロ「何…?」

女性「リアルな話、研究するにも莫大なお金が掛かるんですよ…本業はしがない整備士ですから、大した稼ぎもなく…この露店もそのためにやってるんですけど、全然儲からないし…正直ちょっと困ってるんです」

アルバロ「成程…しかし此奴はこれからの研究にも必要なのではないか?」

女性「いえ、本物のフォックスに近付けるためにさらに出力を上げるとなると、一から作り直さなくちゃダメだから、これ以上手は加えられません。それにこの機動戦士には見たものを記憶するメモリーがあるので、皆さんの動きや戦闘データを近くで見せてあげてほしいんです」

機動「メモリーはここだ。お前たちの動きを見れば俺のAIも更新できるし、今後の研究にも役立つ」

機動戦士が腕のところについたボタンを自分で押すと、頭部から筒状のメモリーがニョキッと出てきた。

アルバロ「そうか、これも研究の一環という訳だな」

女性「まあつまりそういうことになります」

アルバロ「フン、そういうことならお安い御用だ!実は我らも人手不足で困っておるのでな。少しでも戦力になるなら金を出す価値はある。Win-Winというやつだ」

女性「本当ですか!?ありがとうございます!」

アルバロ「いくらだ?」

女性「こちらになります」

女性は端末に金額を提示した。

アルバロ「たっっっ…!…い、いや、こんな高性能なロボットならそれくらいするのは当然…か…」

女性「これでも相当まけてます。正直かなり安いと思いますけど…」

アルバロ「う…うむ……ま、まあよい!!男に二言は無いわっ!!持っていけ!!」

アルバロは財布から札束を取り出した。

女性「毎度ありっ!」

女性は満面の笑みでそれを受け取った。

アルバロ「メンテナンスはどうすればいいのだ?この星へ来ればいいのか?」

女性「私、宇宙整備士なのでいろんな星を渡り歩いてるんですよねぇ。こちらに連絡くだされば私から出向きますよ」

女性は連絡先を渡す。

女性「とはいえ機構は意外とシンプルなので、別に私じゃなくても、ある程度宇宙で活動できるレベルのメカニックなら整備はできると思います」

アルバロ「成程、了解した」

女性「それとこちらが操作するリモコンです。電源のオンオフはこれでできます」

ポチッ

とボタンを押すと、機動戦士の目から光が消え、動かなくなった。

女性「離れた場所から呼び出したい時はこのボタンです。状況にもよりますが大体半径十キロ以内であれば届くハズです」

アルバロ「分かった」

女性「それでは、私は次の星へ行かなくちゃいけないので、これで!」

女性は露店を片付け、リュックにしまう。

アルバロ「そうか、研究頑張るのだぞ!」

女性「はい!あなたもお達者で!」

女性は小走りで去っていった。

678ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:56:27 ID:2JIdRYuY00


ちょうどそこへ。

ギル「おまたせアルバロ!…って何これ!?フォックス…のロボット!?」

アルバロ「買ったのだ」

ギル「はあ!?」

アルバロ「フッ、まあ見ていろギルティース。貴様も気に入る筈だ」

ポチッ

リモコンのボタンを押すと、機動戦士が起動する。

機動「俺は機動戦士だ。お前は?」

ギル「喋った!わ、私はギルティースよ。よろしくね」

機動「ギルティースか。よろしくな」

ギル「はえ〜、よくできてるわねえ」

そこへ。

ドドン「おーっす待たせたドン!ってなんだそりゃ!?フォックスのロボットかドン!?」

アルバロ「買ったのだ」

ドドン「買った!?」

ギル「コイツはドドン、爆弾魔よ」

機動「ドドン、よろしくな」

ドドン「おおっ、よくできてるなドン!メチャクチャ高かったんじゃないかドン?」

アルバロ「ま、まあな…」

ギル「でもこんなの買ってどうすんのよ」

アルバロ「性能は本物に劣るが、ちゃんと正常に動作したのは確認しておる。アーウィンも操縦できるそうだ。人手不足の我らにとっては、模造品でもいないよりはマシかと思ってな」

ギル「え…?まさか…」

アルバロ「今後は此奴も任務に同行する」

ギル「ええ!?大丈夫なの?それ…」

アルバロ「問題ない!機動戦士、もう一度ファイアフォックスを見せてみろ!」

機動「オーケー。ファイヤーッ!!」

ボォッ!!

機動戦士は空へ向かってファイアフォックスを繰り出す。

ドドン「おおっ!」

ギル「…んーまあ確かに見た感じは完璧だけど…」

アルバロ「そうだろう!」

機動「ウォォ!」

グシャ!!

アルバロ「グシャ…?」

見ると機動戦士は着地に失敗してバラバラになっていた。

アルバロ「は…はあああああ!?」

アルバロは目をまん丸にして、アゴが外れるくらい口を開けて驚く。

679ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/11(木) 20:56:50 ID:2JIdRYuY00

ギル「あらら…壊れちゃったわね…」

ドドン「ドンマイドン」

アルバロ「そ…そんな…」

アルバロは膝をつく。

ドドン「あっはっはっは!これじゃあ機動戦士じゃなくて、起動戦死だなドン!」

アルバロ「笑い事じゃないわあああ!!」

機動「グギギギ…キ…起動戦死…名称ををを…上書きした…ぞ…」

地面に転がった頭部が喋る。

アルバロ「上書きせんでいいわっ!」

同時に、ジャケットの胸部分についた小さな画面に表示されていた"機動戦士"の文字が消えていき、"起動戦死"と入力される。

ギル「なんか可哀想よこの名前。あ、そうだ!星なんか付けてみたら?可愛いわよ」

アルバロ「何を言っておるのだ貴様までっ!」

ドドン「おもろいなドン!なんかこういうマークも付けてみろドン」

ドドンは地面に指で"ψ"を描く。

起動「…リョ…了…解……"ψ起動戦死☆彡"で上書きした…」

アルバロ「だからせんでいいわっ!!」

ギル「てか真面目な話、詐欺なんじゃないの?」

アルバロ「くっ…!だ…だが確かにこの目で見たぞ…!此奴は本当にフォックスの技を扱えるのだ!それだけは事実!恐らくAIの学習が甘く着地が疎かだったのだ…!」

ドドン「あ、騙された自分を肯定してるドン。詐欺被害者によく見られる傾向ドン」

ギル「どっちにしろこんな脆いんじゃ戦場には連れていけなくない?」

アルバロ「う、うるさあああい!!そ、そうだ!連絡先を貰っておったのだ!問いただしてやるわ!」

ピッ…

『こちらの番号は現在使われておりません』

アルバロ「ふ、ふざけるなあああっ!!」

680ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:19:40 ID:6VYKp6oY00





さらに月日は流れ。

大学では。

生徒「オイオイ…アイツまたいるよ…」

生徒「怖いよな正直…」

生徒「ウワサだと八浪してたらしい…しかも現在五留してるとか…」

生徒「そこまでオッサンには見えなくない?」

生徒「やっぱ何回も警察に捕まってるって噂もマジなのかな…?」

ベンチに寝転がっている大学生を見て、生徒たちは噂していた。

純白「退学になってないなら違うんじゃないですか?」

生徒「じゅ、純白くん…!そりゃそうか、ハハハ…」

生徒「でもよー、部の先輩に実際に見たってやつがいるんだよ、アイツがクスリやって捕まってるの」

生徒「マジかよ。なかなか抜け出せないって言うしな…それなら何回も捕まってるってのも嘘じゃないかも…」

純白「噂に惑わされすぎですよ…ちょっと話してみます」

生徒「えっ!?純白くん危ないよ!やめた方が…」

純白「大丈夫です。僕、強いので」

にこやかに言い、大学生の元へ歩を進める。

純白「あの、すみません。隣いいですか?」

大学生「あァ…?何だてめーは…」

純白「ハハ、そこ座りたいので、ちょっと脚を畳んでくれるとうれし…」

大学生「死にてえのかァ!?」

純白(あ、ダメだこれ。話通じないやつだ。目がイっちゃってる)

大学生「オイ!なんか文句あんのか!?八浪して五留してなんか悪いか!?目上を敬えよ真っ白野郎が!!」

681ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:21:33 ID:6VYKp6oY00


ガキィン!!!


大学生は躊躇なく剣を振り下ろした。

純白「あっぶないなぁ…!僕じゃなきゃ死んでるとこですよ」

純白はそれを容易く剣で受け止めていた。

大学生「はっ…!?」

純白「?」

大学生「ぼっ……僕…また……何を…っ!」

大学生は急に剣を引き、頭を抱えてうずくまった。

純白「だ、大丈夫ですか!?」

大学生「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…!」

大学生は泣きながら何度も謝る。

純白(…これが本性…?何か精神を病んでるのか…?まさか本当にクスリを…?)

純白「前に君を見かけた時は、そこまで凶悪には見えなかった。一体何があったんですか?聞かせてください。人に話せば楽になる事だってありますよ」

純白は大学生の肩に手を置き、優しい口調で言う。

大学生「僕……僕は…僕は…!…誰だっけ…」

純白「え?」

大学生「僕って……なんでこんなとこいるんだろう…」

その顔はどこか小さな子供のようだった。

純白(現実逃避…か…?)

大学生「君は誰…?」

大学生は不思議そうに純白の顔を見る。

純白「…ぼ、僕は純白です」

大学生「純白…君もリンク族?家族以外のリンク族、初めて見たよ!」

今度は急に明るい表情になった。

純白「…僕もだよ。君は今、何歳?」

純白は子供と接するように優しく問い掛ける。

大学生「え?えっと…六歳…?だっけ…」

純白(やっぱり幼児退行してる…!?)

682ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:23:11 ID:6VYKp6oY00

大学生「いや…ちげーわ…俺は…十五…いやいやいや…二十…?」

純白(精神が不安定すぎる…一体何があったらこんなことに…)

大学生「ハァ……もういいや…なんでも…クソッ…!クソッ!クソッ!!」

純白「!?」

大学生「酒を…よこせ!!クスリ…!クソがッ!!」

ドガァッ!!

大学生は両腕を振り下ろし、地面を叩き割った。

純白「な、何やって…」

教師「大丈夫か!?」

そこへ教師が駆けつけた。

純白「先生!あぶな…」

大学生「あふぁ…?」

純白「…え?」

四つん這いの状態になった大学生の肩に教師が触れた途端、大学生は突然意識を失った。

教師「おい!しっかりしろ!…気絶したのか…?しょうがない、医務室へ連れて行く…」

純白「だ、大丈夫なんですか…!?」

教師「分からんから連れて行くしかないだろう…こいつは俺に任せて、お前たちはしっかり勉強しなさい」

教師はにかっと笑い、大学生をおぶって運んでいった。

純白「……」

生徒「じゅ、純白くん!大丈夫!?なんか斬りかかられてたように見えたけど!」

怯えて見ていた生徒たちが駆け寄ってくる。

純白「…大丈夫ですよ。言ったでしょう?僕、強いので!」

生徒「それならいいけど…」

生徒「もうあんなのに関わるのやめとけよ!」

純白「…そう…ですね…」

683ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:24:20 ID:6VYKp6oY00



教師「…ったく、Bさんはなんでこんなヤツ飼ってんだか…」

一目のつかないところで、教師は大学生を下ろした。

大学生は眠ったままだ。

プルルル…

教師「はい、もしもし」

B級『俺だ』

教師「Bさん…!」

B級『どうだ?あのガキの調子は』

教師「さ、最悪ですよ!さっき生徒もいる中でいきなり発作起こしやがって!危うく全部バレちまうとこでしたよ!」

B級『フン、まあそうなったらなったで別にいいさ。困るのはそっちだ。生徒の三割がクスリやってるなんて知れたら大学の評判は地に落ちるだろうなァ?』

教師「か、勘弁してくださいよぉ〜」

B級『クク…てめぇらの命運はウチが握ってること忘れんじゃあねえぞ』

教師「わ、分かってますよ…!でも、なんで大学通わせるんですか…?こんなヤベェヤツ、普通に退学して事務所で飼った方がそちらとしても動きやすいんじゃ…」

B級『学生っつう身分は色々都合のいいとこもあんのさ。裁判じゃ有利になるしな』

教師「そういうもんですか…」

B級『つってもソイツはヤンチャすぎて流石にそろそろ庇いきれなくなってきちまったが…最後は絞れるだけ絞って捨てりゃあいいだけだ』

教師「……」

B級『後で事務所に来いと伝えろ。用件はそれだけだ』

ブツッ

教師「はあ…ちくしょう…」

大学生「…あ……お前…?」

教師「!…目ぇ覚めたか」

大学生「ク……クスリ……!」

教師「チッ、そう焦るなって!さっきお前に飲ませた分でなくなっちまったよ」

先ほど肩に触れた時、教師は生徒たちに見えないようにクスリを飲ませていたのだ。

大学生を落ち着かせるための措置だったが、強烈な快楽作用と不安定な精神状態が合わさり気絶に至った。

教師「Bさんが後で事務所に来いとさ。クスリならそこで貰えんだろ、たぶん」

大学生「ハァ…ハァ…クソッ…!」

大学生はすぐにB組の事務所へと向かった。

684ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:25:21 ID:6VYKp6oY00



B級「よう…随分荒れてるじゃねえか」

大学生「いいから早く…っ…クスリくれよ…!」

B級「タダでとはいかねえな。コイツを潰せ」

B級は写真を見せた。

そこには緑帽子のピカチュウが写っている。

B級「コイツは片割れ。須磨武羅組の実質的なボスだ。俺でも敵わねえこの町で一番厄介な奴だが…てめぇなら勝てねえ相手じゃねえ筈だ」

大学生「…かた…われ……」

B級「今は須磨武羅組の事務所にいることは調べがついている。突っ込んで叩っ斬れ。クク…最高級の鉄砲玉だ。奴らもさぞ気に入るだろうぜ」

大学生「片割れ……潰さなきゃ……」

大学生はフラフラと事務所の外へ出た。

純白「何してるんですか?こんなところで」

そこには純白が立っていた。

大学生「あ…?誰だよテメーは…」

純白「純白だよ。忘れたの?」

大学生「……知らねーな…どけ…早く行かねーと…!」

純白「行かせませんよ!どこに行くのか知りませんけど、どうせヤクザに利用されてるんでしょ!」

大学生「っせぇな!!黙ってどけよ!!邪魔なんだよ!!」

ガチャ…

B級「あ…?なんだ、騒がしいと思って来てみりゃあ、コイツのオトモダチか?」

B級が事務所から出てきた。

純白「あなたが彼をこんなふうにしたんですか?」

純白は睨みつける。

B級「フン、コイツが勝手にハマっただけだ。ここはてめぇのような良い子ちゃんの来るとこじゃあねえぞ。痛い思いしないうちに帰った方が身のためだぜ」

すると、事務所からゾロゾロと武装した組員たちが現れた。

純白「…本気で言ってますか?」

ジャキンッ…

純白は剣を抜き、構える。

685ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:26:33 ID:6VYKp6oY00

B級「…………冗談だ。てめぇら退がれ」

組員「えっ?なんでッスか親分!こんなガキやっちまいましょうよ!」

B級「やめとけ。勝てねえよ」

その剣を構えた立ち姿に、B級は脅威を感じていた。

大学生「どけっつってんだろうがァ!!」

純白「!!」


ガキィン!!!


大学生はB級のことなど気に留めず純白に斬りかかった。


ガガガガガッ!!

キィン!!

ドガガガッ!!


組員「嘘だろ…!あのガキとまともにやりあってやがる!」

B級「アイツも恐らくA級…下手すりゃあそれ以上の逸材だ。チッ…勿体ねえ限りだぜ。あの目…ありゃあ真っ直ぐすぎてこっちの世界にゃあ絶対堕ちてこねえタイプの人間だ」

純白「落ち着いてください!ヤクザの言うことなんて聞いたって何も良いことありませんよ!」

大学生「はぁ!?知るかよ!!だったらテメーがくれんのかよクスリをよぉ!!俺を助けてくれんのかよ!?」

純白「そのつもりだよ!!」

大学生「意味…わかんねェーんだよォォ!!」

ダンッ!!

大学生は強く踏み込み、回転斬りを放つ。

純白「遅い!」


ガンッ!!


大学生「…っ」

純白はそれをかわして背後に周り、大学生の後頭部を剣の柄で殴った。

ドサッ…

気絶し倒れる大学生を、純白は体で支える。

そして再びB級の方を睨み。

純白「もう二度と…この人に関わらないでください」

B級「……チッ…てめぇ…何故そんな奴にそこまでする…?ソイツの事は監視させてたが、特に親しい奴はいねえ筈だ」

純白「ええ…友人というわけでもありませんし、なんなら喋ったのも今日が初めてですよ」

B級「あぁ…?」

純白「…なんででしょうね。同じリンクだからでしょうか。放っておけなかった。ただそれだけです」

純白はそう言い残し、大学生を担いで去っていった。

686ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:40:09 ID:6VYKp6oY00




大学生「え…?」

純白「目が覚めましたか」

目を覚ますと、小さな部屋にいた。

大学生「誰だよテメーは…!」

大学生はすぐに背負った剣に手を伸ばそうとするが、そこに剣はない。

純白「そう何度も斬りかかられちゃたまらないからね…寝てる間にこっちで預からせてもらったよ」

大学生「アァ!?なんだテメーは!何が預かっただよ勝手に剣盗みやがって何様だァ!?ドロボー野郎が!!」

純白「純白ですよ。良い加減名前覚えてほしいですね…」

大学生「返せやッ!!」

純白「無茶しないでください。今の君じゃ僕には勝てませんよ」

丸腰で飛びかかる大学生を純白はひらりとかわし、背後に回って関節を固めた。

大学生「いだだだだだ!!アァー骨折れた!!慰謝料よこせ五千万!!」

純白「いや折れてないから」

大学生「早く…早くアレをブッ殺して…!クスリ…!」

大学生は無理やり暴れて抜け出そうとする。

純白「ぐ…暴れないでください!本当に折れますよ!?」

大学生「だったら離せやァ!!」

純白「くっ…クスリなんて使わせません!…お酒とかタバコもダメです!君が今何歳だか分かりませんけど…少なくとも君がそういうのに手を出して、良いことがあるとは思えない!」

大学生「なんなんだよテメーは!!いきなり保護者ヅラしやがって!!」

687ハイドンピー (ワッチョイ 5dfe-51b2):2024/01/12(金) 20:40:46 ID:6VYKp6oY00

純白「それですよ、保護者!」

大学生「あぁぁぁ!?」

純白「何があったか知らないけど、君は時々子供みたいになる!だから僕が保護者になる!僕が君を守る!守りたいんだ!」

大学生「はぁ!?キッショ!!」

純白「自分と同じ顔の人間が、傷つくのも、傷つけるのも、見たくないんですよ!」

大学生「知るかァ!!勝手に見てんじゃねーよ真っ白野郎!!」

純白「同じ大学に通う同じリンク族なんだ!嫌でも視界に入っちゃうでしょ!僕はそれを見て見ぬふりなんてできないんだよ!」

大学生「余計なお世話だっつってんだよ!!」


ボフン!!


純白「うわっ!」

大学生は爆弾を落として爆発させた。

威力はほどほどだったがその拍子に純白は手を離してしまう。

大学生「バァーカ!!誰がドロボーに保護されるっつーんだよ!!同じ顔の他人見る暇あったら鏡見て自分の言動見つめ直しとけハゲ!!」

純白「誰がハゲだっ!」

大学生はその隙に剣を取り返し。

パリーン!!

そのまま窓をブチ破り、部屋を飛び出して逃げていった。

純白「ぼ、僕の部屋が…」

純白の部屋はぐちゃぐちゃになっていた。

純白「…ふ……ふふふ…!いいでしょう…だったら僕も全力で君を止めるよ…!!この僕から逃げ切れると思うなよ…!!」

ダンッ!!

純白も大学生を追って窓から飛び出した。


それから、純白は大学生に付き纏い、壊れた大学生のストッパーとして助けていくこととなる。

バッドエンドで閉じた幕は、こうして再び上がるのだ。

688ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:36:49 ID:p.3o6J2U00





隣国では。

レイア「うおおおおっ!!」


ドゴォ!!


魔物「プギイイイイ!」

レイア「なんだよこの数は!すげえなオイ!」

リア「いよいよ本格的に攻めてきやがったようだな。やれやれ、面倒事は御免だぜ俺は…」

レイア「ははっ、だが修行にゃちょうどいいじゃねえか!」

出すくん「修行?悠長だね…この地上はもうすぐ地獄と化すっていうのにさ!」

レイア「誰だっ!?」

出すくん「僕は口からミミズ出すくん。お前たちを滅ぼすため送り込まれた魔の一族さ!オロロロロロロ…」

ビチャビチャビチャ!

ミミズ出すくんはミミズの魔物を大量に吐き出す。

レイア「うおっ!気持ち悪りい野郎だな!」

出すくん「気持ち悪いだと!?ミミズかわいいだろ!許さん!いけっ、ミミズたち!」

ミミズたちは一斉に二人に襲いかかった。

リア「合わせろや、レイア!」

レイア「おう!」


ドガガガガガガッ!!

グシャッ!!

ブチブチブチ…!!


魔物「ぴぎぃぃぃ!」

二人は息の合ったコンビネーションで次々とミミズの魔物を潰していく。

出すくん「ぼ、僕のミミズたちが…!!くっ!なんて酷いヤツらだ!」

リア「攻めてきたヤツが何言ってやがる…」

出すくん「うるさいうるさい!!いけっミミズー!!」

ビチャビチャ!ビチャビチャ!

ミミズ出すくんはさらにミミズを吐き出す。

リア「チッ、キリがねえな。先にアイツを倒すぞ」

レイア「分かった!んじゃ俺が行くから雑魚は任せるぞリア・リエ!」

リア「はあ?なんで俺がコッチなんだよ。まあいいけど…しくじんなよ」

レイア「バーカ俺を誰だと思ってんだ!おっしゃ行くぞ!!」

ダッ!!

レイアはミミズ出すくんの方へと一直線に走り出す。

689ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:37:23 ID:p.3o6J2U00

出すくん「こっち来んな!オロロロロ…」

レイア「どけぇ!!」


ボゥッ!!


ファイヤーボールでミミズを焼き払い、出すくんの眼前へと跳ぶ。

レイア「オラァ!!」


ドガッ!!


レイアのドロップキックが出すくんの顔面にめり込む。

出すくん「ぐあっ!」

レイア「まだまだぁ!!」


ギャルルルル!!


レイアは空中で回転し、ドリルのように踏み潰す。

出すくん「あだだだだ…!」

レイア「うおおおっ!!」


ズドドドドド!!


さらに回転は勢いを増し、両手足を使ってトルネードのごとく連続攻撃を食らわせた。

出すくん「があぁぁっ!!」

ドシャァ!

レイア「っしゃあ!どうだ!」

出すくん「つ…強い…!クソッ、退散だ!」

レイア「あっ!?待てコラ!」

出すくん「誰が待つか!オロロロロ!」

ビチャビチャッ!

出すくんはまたミミズを吐き、肉壁を作り出した。

レイア「どけっ!!」


ドゴォッ!!


ウネウネウネウネ…


レイアが殴ると、ミミズたちはその腕に絡みついた。

レイア「くっそ!キモいな!」

その隙に出すくんはゲートを開く。

出すくん「フン、まあいいさ…目的は果たしたからね…」

リア「目的…?」

レイア「テメェ、待ちやがれ!クソッ!覚えとけ!俺は灼熱のレイア!親玉に伝えろ!今度来やがったらこの俺がまとめて相手してやる!!」

出すくん「バーカ、お前らなんか幹部たちに比べりゃカスだ。僕みたいな下っ端一人追い返したくらいで調子に乗るな。ははははは!」

そしてミミズ出すくんがゲートをくぐり終えると、ゲートは閉じていった。

レイア「ちくしょう、逃げられたか…」

リア「ったく…しくじんなって言ったよな?」

ミミズの魔物を掃除し終えたリア・リエが、不機嫌そうにレイアを睨む。

レイア「おう、すまん!」

リア「…まあいい。アイツの口振りじゃ、まだまだとんでもねえのがいそうだな。もっと鍛えるぞ、レイア」

レイア「おう!」


それから魔族たちによるこの国への侵略はさらに勢いを増していき。

この二人もまた、巨大な戦いへと巻き込まれていくことになる。

690ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:38:08 ID:p.3o6J2U00





魔界では。

出すくん「お前助け出すのにミミズめっちゃやられたんだから、ちゃんと働いてよ」

下半身「ああ。悪かったな」

ミミズ出すくんは、かつてムッコロズに負け収容所に捕まっていた下半身虚弱体質と話していた。

ミミズでレイアたちの気を引いている間に、ゲートによって魔界へと連れ戻したのだ。

と、そこへ。

ぽふっ

下半身「!?」

突然頭上に何かがのしかかり、下半身虚弱体質はバランスを崩す。

???「やあ。調子どう?」

それは赤カービィだった。

いかに虚弱と言えど軽いカービィに乗られた程度でドンキー族がバランスを崩すはずはないが、カービィがその肩に担いだ巨大なハンマーの重量がそうさせた。

下半身「し、下目使い様…」

出すくん「とりあえず下半身虚弱体質は連れ戻しました」

二人は膝をついて報告する。

下目使いは虚弱の頭上からぴょんと飛び降り、二人の顔を見下ろす。

下目「おっけー。戦力は一人でも多いに越した事はないからね。虚弱はもっと鍛えなよ。下半身とか」

下半身「返す言葉もありません…」

出すくん「ただ地上でちょっと面倒なヤツに出くわしまして…」

下目「は?」

出すくん「灼熱のレイアとかいうヤツなんですけど…もちろん幹部クラスには遠く及びませんが…雑兵の魔物たちでは歯が立たないレベルのヤツが、地上にも意外といるみたいです」

下半身「レイアとかいうのとは違いますが、私も地上のファイターと戦い敗れました…甘く見すぎると予想外の反撃を食らう可能性があります」

691ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:38:33 ID:p.3o6J2U00

下目「ふぅん…灼熱のレイアね。まあ一応妖魔様には伝えとくよ。でもお前たちがもっと強ければそんな報告する前に潰せたはずだろ」

下目使いはギロリと高圧的な目で二人を見下ろす。

出すくん「は、はい…精進します…」

下半身「申し訳ありません…」

デスエン「ハハハハ、まあそういじめてやるなよ。地上じゃあそういうのはパワハラというらしいぞ」

そこにΦデスエンペラーが歩いてきた。

下目「デスエン。お前には関係ないだろ」

デスエン「なんだよつれないな。もうすぐ地上に出るんだろ?だったらもう少し地上のことも知っておくべきじゃないのか?」

下目「知る必要ないでしょ。どうせ僕たちが全部踏み潰すんだ。それに本当の目的は地上じゃなくてその上…天界の神とやらを見下すことだ」

デスエン「フッ、痛い目を見ても知らんぞ?」

下目「勝手に言ってろ」

デスエン「まあいい。俺もちょっと準備があるんでな」

デスエンは去っていく。

下目「何?まーた何か企んでんの?」

デスエン「企みというほどのモンじゃあない。だが、上手くいけば面白い事になるかもしれんぞ。"お前の企み"のようにな」

下目「…何の話だよ」

デスエン「フ、俺に隠しても無駄だ。だが口を出すつもりもないさ。精々頑張れ」

下目「チッ…」

出すくん(下目使いの企み…?何の話してるんだコイツら)

692ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:39:07 ID:p.3o6J2U00





王国の城下町では。

???「初めまして!僕はÅライムライトÅと申します!」

ヒーロー「お、おう…?見ない顔だな?」

ヒーローの前に現れたのは黄色い服の少年だ。

ライム「はい。先日引っ越してきました。あなたが噂のヒーローさんですね?この町を守ってるとか…」

ヒーロー「ああ。守るも何も、この国は平和すぎてパトロールくらいしかする事がないんだがな」

ライム「良いことじゃないですか。うちの家族も、世界一平和な国だって聞いてこの国に来たんですよ」

ヒーロー「そうだったのか。フッ、それは光栄なことだ。もし何かが起きてもこのヒーローがご両親共々絶対に守り抜くから、安心して過ごしてくれ」

ライム「ふふ、心強いですね。まあうちお父さんはいないんですけどね…」

ヒーロー「…そ、そうか…」

ライム「あっ!誤解しないでくださいね!死んだとか、離婚したとかじゃないんです。海外でのお仕事が忙しくて、ずっと会えないんですよ」

ヒーロー「なるほど。寂しくはないか?」

ライム「いつも電話してるので平気です!会いたくないと言えば、嘘になっちゃいますけどね」

ヒーロー「そうか…そうだよな。もしよかったらこの国の名物を紹介するよ。F-ZEROというレース競技だ。あれを見ればきっと興奮で寂しさなんて忘れてしまうぞ」

ライム「F-ZERO…聞いたことあります!今度行ってみますね。ヒーローさん、ありがとうございます!」

693ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:39:32 ID:p.3o6J2U00





極道の町の町はずれの、とある一軒家。

???「うおおー!!やっぱヒーローかっこいい!!」

テレビのヒーロー番組を観ながらはしゃぐのは、青い服の少年。

母親「こらアマゾン、こんな朝っぱらから大声出さないの。近所迷惑になるでしょ。ヒーローなら他人に迷惑かけちゃダメ」

アマゾン「はっ!そうか…確かに…気をつける」

番組が終わると、アマゾンは机に自由帳を広げた。

アマゾン「ぼくがヒーローになったら…」

自由帳に大きく稚拙な妄想を描いていく。

アマゾン「このへんに星をつけて…ポーズは、こうだ!へんしーん!グレイトォー…アーマーゾン!!」

イスの上に立ってポーズを取る。

母親「だからうるさいってば」

アマゾン「あ、ごめんなさーい」

母親「それと…パパに電話しなくていいの?テレビ見終わったらするって言ってたよね?」

アマゾン「あ!わすれてた!」

アマゾンはタンスの上に設置された黒電話の元へと走った。

694ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:40:19 ID:p.3o6J2U00






数ヶ月後。

とある村。


ドドドドドドドドドド…!!!!


卍「なんだ…?この音…」

バロン「すごい地響きですね…地震…?揺れはそんな強くないですけど…」

卍「いや…何かイヤな予感がする。出るぞ!」

ジムでトレーニングしていた二人は、すぐに着替えて外へ出る。

住民「うわああああっ!!」

卍「!!」

バロン「こ、これは…!」

魔物「グオオオオオッ!!」

そこには大量の魔物が出現していた。

卍「なんという数の魔物…!!バロンムッコロス、パワードスーツを着ろ!」

バロン「は、はい!」


ドガガガガガッ!!!


二人は、というかほぼムッコロズが、次々に魔物を倒していく。



そして数十分後。

卍「はぁ…はぁ…くそっ…犠牲者が出てしまったか…」

魔物は全て倒したが、何人かの住民が血を流して倒れていた。

バロン「あ…あの数じゃ仕方ありませんよ…」

卍「俺たちだけでは限界がある…もっと戦える者を増やさなくては」

バロン「増やすって…どうやって…」

卍「住民を俺たちで鍛えるんだ。自分の身を自分で守れるように。ファイターじゃなくとも、武装して戦い方さえ覚えれば、雑兵程度ならなんとかなるはずだ」

バロン「なるほど…でもそもそも体を鍛えてない人を今からトレーニングするには時間が…」

卍「ああ、分かってる…侵略はもう始まっている。ある程度屈強な肉体を持っている者を集めるんだ。時間がない。すぐに始めるぞ。俺は軍に連絡するから、お前は周辺の町や村に連絡してくれ」

バロン「了解です!」

695ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:41:03 ID:p.3o6J2U00





動物たちの村では。

魔物「ギャオオオ!!」

ドゴゴォ!!

ゾウ「うわああ!!」

サイ「ぎゃああああ!!」

ここでも大量の魔物が暴れていた。

住民たちが次々と犠牲になり、建物は破壊されていく。

ねこ「やめろー!!」


ドガッ!!


魔物「グギャア!」

ねこ「はぁ…はぁ…くそ…急にこんな魔物が出てくるなんて…!これじゃとても守りきれません…!」

ねこは戦い続けてボロボロになっていた。

テングザル「ねこ、ここは俺たちに任せろ!」

ウォンバット「その体じゃこれ以上は無理だよ!逃げて!」

ねこ「そんな!ファイターのボクが逃げるわけにはいきません!」

テングザル「フッ、実は俺たちだってファイターなんだぜ!」

ねこ「えっ!?」

ピカーーン!!

テングザルとウォンバットの二匹の体が光る。

次の瞬間、二人はマリオとルイージになった。

テングザル「これが俺たちの真の姿だ」

ねこ「な、なんと!」

ウォンバット「行って、ねこ!さっきテレビ見てたら速報が入って、魔物はこの村だけじゃなくこの国の各地で暴れてるらしいんだ!」

テングザル「魔物はどんどん勢いを増してる…被害は世界中に広がっていくハズだ…!こんなところでお前を失うわけにはいかねえ!幸運を呼ぶお前が行って、世界を救うんだ!」

ねこ「で、でも…!」

テングザル「今のお前じゃ足手纏いだって言ってるんだよ!」

ねこ「…!わ…わかりました……!みなさん、どうかご無事で!」

ねこはヨロヨロと歩き、村を離れていく。

魔物「ギャオオオ!!」

そこへ数匹の魔物が走ってきた。

ねこ「うわっ!…………あれ?」

魔物はねこを素通りした。

ねこ「き、きづかれなかった…?運よすぎか」

その後も何度も魔物と遭遇するも、運良く気付かれず、やがてねこは村から完全に脱出した。

ねこ「はぁ…はぁ…なんとかして、魔物を追い払わなきゃ…でもボクひとりじゃとてもムリだ…いっしょに戦ってくれるつよいヒトをさがさなきゃ…!お兄さんをさがして旅に出た妹ちゃんは無事だろうか…」


それから程なくして、ねこは近隣の村に到着する。

そして国の状況を把握するためニュースを見て、故郷の村が完全に滅ぼされたことを知る。

696ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:42:23 ID:p.3o6J2U00





魔界。

地上を蹂躙していく魔物たちの映像が、空中に大きく映し出されている。

その前には大量の魔族が隊列を組み集まっていた。

???「…これが地上だ。貧弱な人間共など、我等の敵ではない…!時は来た!征くぞ!我らの世界を取り戻すのだ!!」

先頭に立つ巨大な青ドンキーが声を上げる。

魔族「ウオオオオオオオオ!!!!」

魔族たちもドンキーに続いて雄叫びを上げた。

???「フンッ!!」

ドンキーが両腕を大きく広げると、その隊列の横に大量のゲートが開いた。

下目「進め!魔族の力を知らしめるんだ!」

ヤミ「フハハハハッ!!地上の虫どもを蹂躙せよ!!」

ドンキーのすぐ後ろに控えた下目使いとヤミノツルギ†が号令を出し、一斉に魔族たちはゲートをくぐっていく。

下目「我々も行きましょう、妖魔様」

ボォッ…!!

ヤミノツルギはファイアフラワーから放つ炎を操り、大きな輪を作った。

そしてその火の輪はゲートとなって地上の景色を映し出す。

魔物「ギャオオオオオ!!」


ドドドドドドド…!!


そのゲートから、ゴブリンのような魔物たちが先陣を切って地上へ出る。

そして下目使いとヤミノツルギがゲートの左右に跪き。

ヤミ「さあ、お通りください、妖魔様」

ドンキーはゆっくりと歩を進める。

ザッ…

ザッ…

ザッ…

そしてゲートを越えた先には。

697ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:43:22 ID:p.3o6J2U00

???「…これが地上か…いつ以来だ、この景色は…」

魔物によって破壊されていく村。

逃げ惑う村人たち。

村人「きゃああああ!!」


ドォォン…!!

ズズゥゥン…!!


村人「う、うわああっ!!」

そして逃げた先に、そのドンキーとかち合ってしまった不運な村人は、足を竦ませ尻餅をつく。

村人「ヒィッ…!なんだあのゴリラは…!!」

ドンキーはギロリと見下ろし、言う。


???「我はキング・オブ・妖魔…!いずれ世界を我が手中に収める者なり…!」





第四章 完

698ハイドンピー (ワッチョイ a57f-f411):2024/01/14(日) 19:53:32 ID:p.3o6J2U00
ここまで読んでいただきありがとうございます!
というわけで第四章は浪人生編?でした!
こうしてハイドンピー第一作目の〈勇者ヨシオの冒険〉に繋がっていきます
例によって書き溜めのためしばらく休みますが、クライマックスとなるであろう第五章を気長に待っていただけると幸いです
待ってる間に、四〜五章を繋ぐ勇者ヨシオの冒険や他作品もいかがでしょうか(宣伝)
感想等頂けると喜びます!


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板