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[SS]壊れた大学生の追憶

499はいどうも名無しです (ワッチョイ 23ed-5e3d):2022/08/22(月) 21:38:22 ID:l/opKTFM00
更新お疲れ様です!!波乱の展開が続いてハラハラしながらよんでました!続きも楽しみに待ってます!!

500ハイドンピー (ワッチョイ 84d7-baea):2022/08/22(月) 22:56:57 ID:lUDSdzGA00
>>499
ありがとうございます!頑張ります!

501はいどうも名無しです (ワッチョイ e02f-d9d6):2022/08/23(火) 23:14:52 ID:6PPswkU200
お疲れ様です。
次も楽しみにしてます。

502ハイドンピー (スプー 587f-e066):2022/08/26(金) 13:57:17 ID:4wqCEPcYSd
>>501
ありがとうございます!

503ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:03:02 ID:4B4Kcy/I00
第一章のあらすじ>>348

〜ここまでのあらすじ2〜

中学生(大学生)は、途中、"熱望ブラザーズ"やムッコロズ・ムッコロスなどとすれ違いながら、旅を続けていた。
パジャマの革命家と一悶着あり、少女の情報を手に入れ、王国へ。
王国では、少女を知るヒーローの母と会い、少女を連れ戻すと約束した。

魔法学校では、中学生たちが名付けたサル"ドルボリドル"が覚醒。
魔物たちを操るドルボリドルと召喚士たちが戦う。
封印一歩手前まで追い詰めたものの、ドルボリドルは肉体を捨て、魔物と化して逃亡。

魔界では犬のような黒猫と腫れたおしりが食べ物を求めて、謎の穴に突入。
穴の奥はなぜか地上のコンゴジャングルと繋がっており、バナナをめぐってモケーレムベンベ、ティーダと戦闘。
さらにジャングルの素材を狙って現れた謎のフォックスや、魔法学校から逃げてきたドルボリドルも現れ、黒猫たちは大ピンチに。
召喚士たちがそこに駆けつけ、ドルボリドルの封印は成功した。
しかし潜んでいた謎のフォックスは記憶を消す弾を使って、その場のファイターたちから、フォックスたちに関する記憶を消去。
唯一その弾をかわした黒猫だったが、次元分離システムによって消滅した…

かに思われたが、黒猫は次に目覚めると別の世界にいた。
かつて謎のフォックスたちと戦い、同じく次元分離によって消滅したリカエリスもこの世界に来ており、ウルフ村田という女性と暮らし、元の世界に帰る方法を模索していた。
リカエリスは倒れていた黒猫を村田家へ運んでくれた。
が、黒猫はかつて<魔炎師ヤミノツルギ†の叛逆>にてリカエリスの親友であった初代"幻のギルティース"を死に追いやった張本人だった。
リカエリスは攻撃を仕掛けるも実力で上回る黒猫に上手く捌かれ、ウルフ村田に制止される。
その場では矛を収めたが、リカエリスはこの手で必ず黒猫を倒すと誓う。

その頃味方殺しは、国の暗部の依頼によってヨシオ族の里に侵入。
ヨシオ族たちと交流を深める。
そしてその目的である"里の秘密"をゲット。
その秘密とは"この世界がゲームである"という馬鹿げた話だった。

極道の街では、フルパワーという前科者が薬物を撒いて町中で大パニックを起こし、須磨武羅組や警察が対処にあたった。
薬物で肉体を強化し文字通りフルパワーとなったフルパワーだったが、片割れと人間の協力により鎮圧。
しかしフルパワーが仕込んでいた次元分離により、人間はナイフをかばって消滅させられた。
片割れはそれを受けて、ついに極道の世界に足を踏み入れる決心をする。

月日が経ち、おこめは夢であった最高のおこめ魔法をついに完成させる。

一方中学生は未だ少女の手掛かりはなく、アテのない旅をしていたところ、魔界から紅のLancelotが出現。
中学生はそれを難なく撃破。
かつて魔法学校で会った湖の精霊の関係者であることを知り、魔法学校を紹介してあげた。
直後、爆走する少年がゴミ捨て場に突っ込んだので助けてあげた。
特に前進もなく、中学生の旅は続いていく。

504ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:10:35 ID:4B4Kcy/I00
第三章



中学生は高校生となっていた。

ただ勿論、高校に通っている訳ではない。

少女を探す旅を続けながら、時々、通信制の授業を受けている。

高校生「父ちゃんと母ちゃんには感謝しねーとな…この旅でアイツを見つけた後の事も、ちゃんと考えてくれてる。俺は目の前のことしか見えねーから…」

講師『ちょっと!?ちゃんと聞いてますかっ!?』

高校生「あっ、すんません!」

それから数十分。

授業を受け終わり、宿のベッドで眠りにつこうとしたが。


ピンポーン


高校生「あれ?誰だよこんな時間に……はーい」

ガチャッ

505ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:12:10 ID:4B4Kcy/I00

おこめ「よ!」

高校生「おこめ!?お前、なんでこんなとこに…!」

おこめ「ふっふっふ、バカな奴め。ぼくはもう夢を叶えたのだよ」

高校生「何!?」

おこめ「ジャーン!みろ!これがおこめ魔法によって作り上げた、最強のおこめ、その名も"おこめ印のおこめ"だ!」

おこめは袋に詰まった米を自慢げに見せつけた。

高校生「すげえじゃん!!おめでとうおこめ!!」

おこめ「エッヘン!夢バトルはぼくの勝ちだな!」

高校生「夢バトル?ああ、どっちが先に叶えるかってヤツか。そういやそんなんあったな…」

おこめ「オイ!!!」

高校生「いや、正直俺のは夢っつーか、アレだからな…」

おこめ「アレってなんだよ!てか結局やらなきゃいけねーコトってなんだよ!」

高校生「そりゃ…まだ言えねーよ。…んで、何でこんなとこにいるんだ?」

おこめ「…ま、エーギョーってやつだ。ぼくのおこめがいくら史上最強にうまいとは言っても、知ってもらわなきゃイミないからな。各地を巡って宣伝してるのだ」

高校生「なるほど」

おこめ「そんでたまたまこの辺に来たらオマエの魔力を感じたから、勝ち誇りにきたってワケだ!なのにオマエときたら…」

高校生「それは本当スマン。悔しがるどころか勝負自体忘れててスマン」

506ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:12:40 ID:4B4Kcy/I00

おこめ「ふん!まあいいさ。とりあえず、コイツを食え!!」

それからおこめは自前の炊飯器を使って米を炊いた。

二人は米が炊き上がるのを待ちながら、小学生時代の思い出話や、その後のいろんな事を話した。

そして。

おこめ「ジャーン!!これがおこめ印のおこめだっ!食え!」

高校生「うおっ!マジで美味そう!」

おこめ「トーゼンだ!」

高校生「いただきまーす!」

もぐもぐ…

高校生「うんめ〜〜〜〜!!!」

おこめ「だろ!!」

高校生「こりゃ売れるなマジで!!」

おこめ「そうだろ!!」

そして高校生は茶碗にたっぷりと盛られた米を、オカズもなしに何度もおかわりし、完食した。

507ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:13:14 ID:4B4Kcy/I00

高校生「ごちそうさま!」

おこめ「いい食いっぷりだった!」

高校生「ハハ、ほんとすげーよお前。正直な、俺、すげー疲れてたんだ…」

おこめ「うん、カオ見りゃわかる」

高校生「どんだけ頑張っても、俺の目的には辿り着けなくてよ…もう無理なんじゃねーかって、何度も思ったよ。折れかけてた。けど、お前の米食ったら元気出たわ!」

おこめ「だろ!」

高校生「ああ、ありがとな!俺も頑張るからさ、おこめもこの米、マジでめちゃくちゃ売りまくれよな!」

おこめ「言われなくてもだ!㌦ポッターが嫉妬するくらいの大金持ちになったるぞ!」

高校生「おう!その意気だぜ!」

二人は握手を交わし、笑い合う。

おこめ「じゃあ、そろそろいく」

高校生「そうか、また会おうぜ親友!」

おこめ「うん!またな親友!」

508ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:14:07 ID:4B4Kcy/I00



翌朝。

高校生「さて!行くか!」

高校生は宿を発ち、空間探査魔法の魔法陣が刻まれたブーメランを投げながら、あてもなく進む。

高校生「あっちの方、まだ見てなかったな」

町外れの山の方へと向かっていく。

すると。

おっさん「おい、おめえさんどこ行くんだ?あの山に入ろうってんじゃねえだろうな」

すれ違ったおっさんが声を掛けてきた。

高校生「え?そうだけど…なんかまずいんですか?」

おっさん「ああ。あそこにゃあクマとかイノシシとかいろいろ出るんさ。つい先週も山に入ったヤツが襲われてな」

高校生「そうなんすね…まあ俺なら心配ないですよ、ファイターなんで!」

おっさん「ホントかあ?立派な剣は持ってるが…」

高校生「本当ですよ!ほら耳!リンク族の特徴!」

おっさん「うーむ…聞いたことはある…しかし、野生動物を舐めちゃいかんぞ」

高校生「気をつけます!ありがとうございます!」

509ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:14:50 ID:4B4Kcy/I00

高校生は山に足を踏み入れる。

高校生「野生動物ねぇ…魔物なら何度も倒したが、そういやクマとは戦ったことねえな…魔物とどっちが強いんだ?」

そんな独り言をこぼしながらブーメランを投げる。

と。

キュルキュルキュルキュル…

高校生「…え?」

ブーメランはいつもとは異なる軌道を描く。

一定の場所で何度も円を描くように回り始めたのだ。

そう、それは隠された空間に反応を示している時の動きである。

高校生「ま…まさか…!!」


ボフッ!!


ブーメランが描いた円の中で小さな爆発が起き、空間に穴が開いた。

高校生「……!!」

510ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:16:06 ID:4B4Kcy/I00

高校生は驚きやら嬉しさやら、様々な感情が混じり合い、声すら出ない。

しかし体はすぐに動いた。

その穴へと、一直線に走る。

タッ!

そして穴の中へ飛び込んだ。


???「アゥ…?」


高校生「……は……??」


そこには、ボロボロの黄色い服を着た少年がいた。

周りには木々が生い茂り、深いジャングルのような場所になっている。

???「ウァァ…」

高校生「な…なんだ…コイツら…」

少年は一人ではなかった。

数十人の少年が木々の奥から現れ、正気を失った顔で高校生を見ていた。

高校生「み…みんな同じカオしてやがる……それに、どっかで見たような…」

511ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:17:01 ID:4B4Kcy/I00

???「ガァウゥゥ!!」

高校生「うお!?」

突然、少年の一人が高校生に向かって突撃してきた。

高校生「なんだ!?」

すると他の少年たちもそれに続いて、高校生に襲いかかる。

高校生「な、何なんだよ!?コイツら一体何モンだ!?」

高校生は突撃を交わしながら、少年たちを観察する。

高校生「動きは遅い…強くはなさそうだが…」

グシャァ!

???「アウゥ…」

少年の一人が、勢い余って木にぶつかる。

高校生「おいおい大丈夫か…?って、なんかこの感じ、前にも……そうだ、あの時の…ゴミ捨て場に突っ込んだアイツ…!」

???「ウアァァァ!!」

高校生「くっ!」

少年たちは無限に突進してくる。

512ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:17:35 ID:4B4Kcy/I00

高校生「おいっ!落ち着けよお前ら!俺は敵じゃねえ!」

???「ガウゥゥゥ!!」

高校生「クソッ、埒があかねえな…!まるで"バーサーカー"だ…コイツらが何なのかもわかんねーし、なんで襲ってくんのかもわかんねー…言葉も通じないみてえだし…」

高校生は通ってきた穴に視線を向ける。

高校生「……でも、この空間にアイツがいるかもしれねー……やっと…やっと見つけた空間だ…!ここにいないとしても、何か手掛かりがあるかもしんねえ…!」

ドスッ!!

高校生は地面に棒を突き刺した。

高校生「魔力棒…召喚士先生に貰っといて良かった。コイツを刺しときゃ、ゲートを離れても魔力を辿って帰れる」

そして高校生は、ジャングルの中を進んで行った。

バーサーカー「ガウウゥゥ!」

後ろから追ってくる声が聞こえ、振り返るが。

高校生「…遅すぎて全然ついて来れてねーや。これならじっくり調べられそうだな」

513ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:18:56 ID:4B4Kcy/I00




とある星の基地にて。

ピコン…ピコン…

ポチッ

???「どうした」

年老いた緑フォックスが、大きなモニターの前の席に座り、通信を受ける。

???『こちら第三基地。モルダー細胞のミスクローン廃棄エリアに、何者かが侵入した模様』

???「何…?あの空間は完全に閉鎖してあった筈…我々以外に、閉ざされた空間を開く技術を持った者がいるとすれば…あのドンキー族か?」

???『いや、侵入者はリンク族だ。何者かは不明…どうする』

???「…監視を続け、侵入者の素性と、侵入した方法を探れ。廃棄エリアから離脱した場合、記憶を抹消して様子を見ろ。その後、万一我々について嗅ぎ回るようなら、消せ」

???『了解』

プツッ

???「…さて…それでは実験の続きだ。ゲートを開け」

???「了解。魔界ゲート起動」

カタカタカタカタ…

ポチッ

若いフォックスがコンピュータを操作し、起動スイッチを押す。


ヴィィン…!


大きな装置の中の空間に、穴が開く。

???「被験体・クリーンを送り込め」

514ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:19:41 ID:4B4Kcy/I00

すると一人のフォックスが、眠った少年を抱えて穴の中へ入った。

その少年の顔は、先ほど高校生が出会った少年たちと同じものだ。

そしてフォックスは少年だけを穴の中に置いて、戻ってきた。

???「完了。問題無し。ゲートを閉鎖する」

バシュッ…

また若フォックスがスイッチを押すと、穴は閉じた。

???「これで魔力を持ったクローンネスが誕生すれば、我らの野望に大きく近付くだろう…」

???「しかしオリジナル、魔の一族となった場合、自我が肥大化し感情が制御できなくなるというデータがある。生体チップを埋め込んでいるとはいえ、我々のコントロール可能な範囲を逸脱するかもしれない」

一人のフォックスが言う。

???「その時は処分すればいい。元々ネスのPSIという力には、電気を扱うものもある。その影響によってチップを無効化される可能性も想定済みだ」

老フォックスが答える前に、また別のフォックスが答える。

???「ああ。他のクローンネスに関しても同じことが言える。仮にチップが無効化されたとしても常に監視は付けているし、子供の姿のまま成長が止まるというあの性質上、我らの手で消す事は容易だ」

少し大人のフォックスが更に付け加えた。

???「そういうことだ。CR-220、エルバンとウォーカーに関して、何か変化はあるか?」

老フォックスが、コンピュータを操作するフォックスに問う。

???「いや、エルバンは相変わらず爆走している。ウォーカーの方は、ようやく立って歩き始めた段階だ。まだPSIにも目覚めていない」

???「そうか。引き続き監視しろ」

515ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:20:11 ID:4B4Kcy/I00

???「そう言えばオリジナル、先程、第三基地からもう一つ報告があったようだ」

???「何?何故通信で言わなかった」

???「重要事項ではないからだろう。第二基地跡地で拾った、フトゥ・ブラッド及びムメイ・ブラッドの赤子についてだ。培養液の中で成長を促し、二足歩行まで可能となったようだ」

???「…そうか。身体機能に異常は?」

???「確認されていない。自我を持ち始め、現在はCR-170が教育を施している。発見時は数グラムの胎児であった事から、㌘と呼称している」

???「分かった。しかしあれはクローンとは勝手が違う。扱いには気を付けろ。少しでも我々に敵対する兆しを見せた場合、即刻処分できるようにしておけ」

???「了解」

516ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:21:22 ID:4B4Kcy/I00




三日後。

高校生「クッソォ…やっぱこの空間はアイツとは全然関係なさそうだ…はぁぁ…」

高校生は空間の中を隅々まで見て回ったが、何の手がかりも掴めず。

がっくりと肩を落としながら、通ってきたゲートへと引き返していた。

バーサーカー「ガウゥゥゥ!」

高校生「うわ!バーサーカー!忘れてた!まだいた!」

バーサーカー「グガァァァ!」

高校生「わりーけどてめーらの相手してるヒマねーんだよ!じゃあな!」

バーサーカーの群れをかわし、走り抜ける。

そしてゲートを通り、空間の外へ出た。

バーサーカー「グォォオオ!!」

高校生「うおっ!?こっちまで来てんじゃねーよ!閉じろ!」

バツン!!

高校生が手を合わせると、ゲートは閉じた。

517ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:23:02 ID:4B4Kcy/I00

高校生「ふぅ…なんだったんだ?結局…まぁいいや…」

タッ!

高校生は突然ジャンプする。

高校生「誰だ?」

何者かの僅かな魔力を感じ取り、その攻撃をかわしたのだ。

しかしその気配はすでに消えていた。

高校生「…ちっ、逃げやがったか。さすがに魔力が小さすぎて追えねーな……ん?」

そして木に残った弾痕を見つける。

高校生「銃弾…?にしては小せーか…銃のことはよく知らんけど…弾自体はないっぽいし、光線銃的なやつか。なんで俺を狙った…?さっきの空間と関係ないわけねーよな」

少し考え込む。

高校生「…ってこんなことしてるヒマねーや。面倒ごとに巻き込まれねーうちにずらかろう…」

高校生はすぐにこの山を降りた。

518ハイドンピー (ワッチョイ 5825-2cb7):2023/06/30(金) 21:23:44 ID:4B4Kcy/I00



少し離れた上空にて。

???「何者だ…?発する魔力を三パーセント以下にまで減少させる魔力遮断具を身に付けた状態で、魔力を感知された」

ステルスアーウィンに乗った緑フォックスが、基地と通信している。

???『ありえん。そこらの虫や植物と変わらない程度の魔力だぞ…』

???『調査によれば奴は魔法学校の出だ。感知力に関しては個人差があるからな。魔力量は同じでも、人と他の生物とではその質が異なるし、個体ごとにも差がある。それを嗅ぎ分けられたのかもしれん』

???『我々はまだその域には至っていないが…奴はそれ程に優れた感知力を持っているということか』

???「そうか…半端な戦力では奴には通用しなさそうだな。次は第三基地全隊を出動させ、確実に記憶を消す必要がある」

???『ああ。しかし奴の今いる場所は人目につく。しばらく様子見だ。オリジナルに報告しておけ』

???『了解』

519はいどうも名無しです (ワッチョイ 3a82-05f3):2023/06/30(金) 21:50:01 ID:tji/2LLY00
うおおおおお続きじゃー!!!待ってたぜぇ!!

520ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:10:09 ID:McfE2eQc00





とある国の北部に位置する、小さな村。

ここには、いろんな動物たちが住んでいる。

ねこ「ふーんふーんふふっふーん♪」

一匹の黄色いねこが、鼻歌を歌いながら歩く。

ゾウ「おう!ねこ!今日も幸せそうだな!」

ねこ「はい。朝トマト食べてきたので」

ウサギ「うちの畑で採れたミニトマトあげるね」

ねこ「ありがとうございます!!」

クマ「今日はどこいくんだ?」

ねこ「トモダチんちです」

キツネ「気を付けてな!」

ねこ「はい」

このねこは、歩いているだけで何度も動物たちに声を掛けれられた。

ゾウ「ありがたや〜」

ウサギ「今日も幸福オーラ分けてもらえてよかったわ」

クマ「こないだ出てきたバケモンもアイツのおかげで消えてくれたし、この村も安泰だな」

キツネ「ああ、ねこさまさまだ。あの子は俺たち大人が全力で守ってやらねば」

521ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:12:17 ID:McfE2eQc00



数日前。

ドカァァァン!!

下半身「ワーッハッハッハ!!この村はこの下半身虚弱体質サマが頂く!!」

ワー!

キャー!

村に突然魔の一族と思しきドンキーが現れ、破壊活動を始めた。

ねこ「ん?ゴリラなんて村にいましたかね」

そこに、ねこがトマトを食べながら偶然通りかかった。

下半身「あぁ?なんだ貴様はぁ!」

ねこ「ねこです。よろしくお願いします」

下半身「ああ、よろしく。ってバカ野郎!」

ドガッ!!

ねこ「うわ危な!なにするんですか!ねこを殴るなんて動物虐待ですよ!」

下半身「知るか!魔界にゃ法律なんてないんだよ!」

ねこ「わわわわわ!」

下半身虚弱体質がブンブンと振り回す拳を、ねこは必死にかわす。

ネズミ「おい何やってんだ!早く逃げろ!」

ムササビ「あなたの足の速さなら逃げられるわ!」

ワニ「そんなヤバそうなヤツに関わっちゃダメだ!」

ねこ「は、はい…」

522ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:12:44 ID:McfE2eQc00

ベチャッ!

ねこ「ああっ!トマトが!」

ねこは攻撃を回避する時に、トマトを落としてしまった。

ビーバー「今トマトなんてどうでもいいだろ!」

下半身「ワッハッハ!!よそ見とはバカなヤツだ!!これでトドメだァ!!」

ずるんっ!!

ゴチーン!!

下半身虚弱体質は下半身が虚弱だったためか、潰れたトマトの汁で勢いよく滑って転んで、後頭部を強打した。

クマ「えっ」

下半身「くぅ…お、覚えてやがれーっ!」

そう言い残し、下半身虚弱体質は去った。

ねこ「おお、トマトが助けてくれました…さすが、トマト」

523ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:13:53 ID:McfE2eQc00



そんな出来事があって以来、ねこは幸運を呼ぶ招きねことして人気者になったのだ。

ねこ「遊びにきました、猫又くん」

猫又「オウ、待ってたゼ」

ねこが訪ねた家から出てきたのは、水色のねこだった。

猫又という名前の通り、その尻尾は二股に分かれている。

猫又「ってウワッ!なんだそのトマトの数は!」

ねこ「来る時にいろんな人から渡されました。にひひひ…」

猫又「嬉しそうな顔しやがって。偶然ゴリラ転ばせただけのクセによぉ」

ねこ「ま、これもボクの運がなせる技ですよ。一つくらいなら分けてあげてもいいですよ」

猫又「そういうことなら貰っといてやるよ」

猫又はねこの手からトマトをぶんどると、冷蔵庫の野菜室に入れた。

ねこ「それで、今日は何して遊ぶんですか?」

猫又「トランプ」

ねこ「えー、またですか?天気いいし、たまには外で遊びませんか?」

猫又「バッキャロー、外でなんか遊んだら汚れてオフロ入らなきゃいけないだろ」

ねこ「入ればいいじゃないですか」

猫又「水道代がかかるだろ。まったく、これだからシロートは」

ねこ「えー…じゃあゲームしませんか?」

猫又「バッキャロー、電気代がかかるだろ。トランプはこのカードだけでできる最高の遊びだゼ」

ねこ「はー…相変わらずですね。まあいいですけど」

524ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:14:57 ID:McfE2eQc00



そして、夕方。

ねこ「じゃあ、さようなら」

猫又「オウ、またな」

ねこが猫又の家を出る。

と。

???「え…?ねこ?」

そこに現れたのは、一人の赤ヨッシーだ。

ねこ「あ!どうも!」

ピカーン!!

すると、ねこの体が光る。

そして数秒後に光が収まると、ねこは黄色いヨッシーになった。

ねこ「ねこです!」

赤YO「久しぶりだなぁ!その姿、懐かしいなぁ」

ねこ「そっちこそ、元気でしたか?村の外に旅に出たって、妹ちゃんから聞きましたけど」

赤YO「ああ、すごい面白かったよ!ついこの前帰ってきたんだ。ねこは何してんだ?」

ねこ「トモダチと遊んでました」

赤YO「友達?そっか。ねこ…今この家から出てきたよな?」

ねこ「え?はい。そうですけど」

赤YO「…本当に友達なのか?」

ねこ「どういうことですか?」

525ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:15:32 ID:McfE2eQc00

赤YO「いや、ここの家、誰か住んでんのかと思ってさ。俺もこの道はよく通ってたけど、昔っから人の気配ないんだよな。ほらツタも生えっぱなしだし…」

その家にはツタがびっしりと巻き付いて、元の壁面がほぼ隠れてしまうほどだった。

庭も雑草が大量に生い茂り、とても人が住んでいるとは思えない外観になっている。

ねこ「あれ?さっきまでこんな感じだったっけ…よく見てなかったかも…でも、ちゃんと住んでますよ。猫又くん」

赤YO「猫又?それって妖怪の?」

ねこ「よ、妖怪?猫又って妖怪なんですか?普通にねこの一種かと思ってました」

赤YO「えぇ…なんか怪しいぞ。どうやって知り合ったんだ?」

ねこ「この前、お腹がへって倒れていたので、トマトあげました」

赤YO「だ、大丈夫かよそれ…妖怪に取り憑かれたんじゃないのか…?」

ねこ「失礼な。まったくもう、だったら会ってみたらいいですよ。ちょっと待っててください」

コンコンコン!

ねこはドアをノックする。

ねこ「ねこです!忘れ物しました!」

赤YO「………」

ねこ「………」

赤YO「…………」

ねこ「……………あれ?おかしいですね。いつもならすぐ出てくるのに」

赤YO「やっぱ妖怪じゃん!まずいって!お祓い行こう!」

ねこ「いやいや、そんなはずありません。入りますよ!」

ガラガラッ

ねこはドアを開ける。

ねこ「…え…」

その瞬間、二人の記憶は途絶えた。

526ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:16:42 ID:McfE2eQc00



ねこ「ハッ!」

ねこが目を覚ます。

ブタ「あ、起きた」

ウサギ「ねこくん大丈夫?」

ねこ「ブタさん…ウサギさん…ボクは一体何を…」

ウサギ「道の真ん中で倒れてたの。ここはタヌキさんの病院よ」

ねこ「運んでくれたんですか?ありがとうございます」

ブタ「なあに、キミには感謝しているからね」

ウサギ「あ、おうちの人にはもう連絡してあるからね。もうすぐ来るはずよ。あなたのお友達にも連絡したかったけど、誰かわからなくって…」

ねこ「おトモダチ…?」

ウサギ「うん。お友達の家に行ってたんでしょ?」

ねこ「トモダチ……うぅ、頭が…」

ウサギ「だ、大丈夫!?」

ねこ「お…思い出せない…トモダチって誰…?」

ブタ「記憶が混乱してるようだ。大丈夫。タヌキさんが検査して、どこにも別状なかったそうだからね」

ウサギ「きっとじきに思い出すわよ」

ねこ「…そうですか」

527ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:17:36 ID:McfE2eQc00

ウサギ「それにしてもよっぽど仲がいいのね。真の姿で会うなんて」

ねこ「え?うわ、本当だ!なんでこのすがたに…!やばっ!」

ピカーン!!

ねこは自分がヨッシーの姿になっていることに気付くと、すぐにねこの姿に戻った。

ブタ「ブフフ、気にするな。誰も責めやしないさ」

ねこ「でも村の掟で、不特定多数に本当のすがたを晒しちゃダメなんですよね。小さい頃に習いましたけど」

ブタ「この村はいろんな種族が集まってできた村だからね。昔はひどい差別問題があったんだ。だからこうして全員動物になることで格差をなくしてるってわけさ」

ねこ「そんな深い理由があったんですか」

ウサギ「でも掟とは言っても、今は罰則があるわけじゃないわ。昔の人の差別をなくそうという願いが受け継がれているだけ。それに、動物になれない人もいるしね」

ねこ「ああ、そういえば赤ヨッシーの一家とか…」

ブタ「そうそう。まあヨッシーも動物に見えるっちゃ見えるし、差別されてるわけでもない。やっぱり今の時代に掟なんて気にしてる人はあんまりいないと思うな」

ウサギ「あの一家、本当に仲がよくて微笑ましいのよねぇ。旅に出ちゃったお兄ちゃんとは、ねこくんもよく遊んでたわよね」

ねこ「あ…はい」

ブタ「えっ、そうなのか?あの家の兄ちゃん、つい最近帰ってきたって聞いたぞ」

ウサギ「あら?そうなの?それじゃあもしかして、遊んでた友達って彼のことじゃない?」

ねこ「…そ、そうだ…!なんで忘れてたんだ!全部思い出しました!」

ブタ「おお、やっぱりそうだったんだな」

ねこ「違います!」

ウサギ「違うの!?」

528ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:18:49 ID:McfE2eQc00

ねこ「でも帰りに会ったんです!そしてボクも彼と会う時は、いつも彼に合わせて真のすがたになってたんです!」

ウサギ「ああ、なるほど…」

ブタ「ってことは、ねこは兄ちゃんと会ってる最中に倒れちゃったのか?でもだとしたら、ねこを置いていったとは考えづらいし…」

ねこ「彼はどこにいますか!?」

ブタ「えっ、いや、分からないけど…家じゃないか?」

ねこ「ボクと一緒に倒れてたわけじゃないんですね…?だとしたらまさか、猫又くんの家に…?」

ブタ「猫又くん?」

ねこ「ボクが遊んでたのは、猫又くんだったのです」

ブタ「聞いたことある?」

ウサギ「いえ…」

ねこ「猫又くんは、妖怪だったのです!」

ウサギ「妖怪!?」

ねこ「取り憑かれてるかもしれません!」

ウサギ「あっ!ちょっと!」

ダダダダダダダ……!!

ねこはベッドから飛び起きて、猫又の家へと走り出した。

529ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:20:11 ID:McfE2eQc00



一方、赤ヨッシーは。

赤YO「ん…?どこだここ…」

目を覚ますと、古い建物の中にいた。

猫又「オウ、目が覚めたか」

赤YO「誰!?」

猫又「猫又だゼ。よろしく」

赤YO「猫又…!?キミが、ねこが言ってた友達か?確かに、尻尾が二股に分かれている…」

猫又「ヘヘヘ…待ってたのさ俺は、この時をよォ」

赤YO「待ってた…?」

猫又「お前のようなフツーのヤツが来てくれるのをだ。この村の住人はどいつもこいつも、変なパワーで守られてやがる。動物に変身する能力もソイツが関係してやがるんだろうな…メンドくせえゼまったくよォ…」

赤YO「俺は変身できない…ま、まさか…」

猫又「クククク…ようやく取り憑けるゼ…!」

猫又は大口を開け、長い舌を赤ヨッシーに向けて伸ばす。

赤YO「や、やめろっ…来るなっ!うわあああああああ!!」

530ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:21:08 ID:McfE2eQc00


ドゴォ!!


猫又「く……効いた………ゼ……」

バタッ…

猫又は赤ヨッシーの蹴りをくらい、倒れた。

赤YO「…あれ…?…よわ…」

ガラガラッ!

ねこ「ぶじですか!!?」

そこにねこが駆けつける。

赤YO「あ、うん…」

ねこ「あれ?猫又くん倒れてる…」

赤YO「えっと…襲われたから咄嗟に蹴ったら、普通に勝っちゃった…」

ねこ「な、なるほど…」

ジュワァァ…

ねこ「ウワッ!?」

猫又の体から蒸気が噴き出した。

赤YO「なんだ!?」

するとその体が変化していき、猫又は水色のヨッシーとなった。

ねこ「ヨッシー!?」

赤YO「こ、これが猫又の正体…!?」

531ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:21:52 ID:McfE2eQc00

ねこ「ボクたちと同じですね…変身する時にピカーンって光らないから、原理が違うかもしれないですけど」

赤YO「まあ妖怪だからな…化けるのもありうる話だ…しかしコイツを野放しにはしておけないな。捕まえておこう」

ねこ「妖怪なんて捕まえられるんですかね」

赤YO「フッ。ずっとねこの姿でいるもんだから、俺たちヨッシーにはこの能力があるってことを忘れちゃったのか?」

ぺろんっ

赤ヨッシーは倒れている妖怪を丸呑みにした。

すぽんっ

と次の瞬間にはタマゴを産んだ。

ねこ「おお、その手がありましたか!」

赤YO「これでヤツはタマゴに封じ込めた!でも中で暴れられたらすぐ割れてしまうから、今のうちにこのタマゴを頑丈な箱に入れよう」

ねこ「箱なんてどこにあるんですか?」

赤YO「実はこんなこともあろうかと、旅の途中で買っておいたんだ」

赤ヨッシーは木箱を取り出して、タマゴを入れた。

赤YO「よし!」

532ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:22:13 ID:McfE2eQc00

ねこ「おお…一人で全部やっちゃった…ボク駆けつける必要なかったですね」

赤YO「はは、そりゃ結果論さ。来てくれてありがとう。妖怪が思ったより弱かったから良かったけど、強かったらヤバかった」

ねこ「まあそうですね。無事で何よりです。それで、その箱はどうするんですか?」

赤YO「うーん…ここに置きっぱなしにするのも怖いし、一旦うちに持って帰るよ。そんでお祓いとかできる神社に引き渡す」

ねこ「そんなの、この村にはないですよね」

赤YO「ああ。実は旅の途中で立ち寄った神社があるんだ。そこに頼もうかと思う」

ねこ「そうですか。アテがあるなら良かったです」

赤YO「それじゃあもう暗いし、今日はお別れだ。妹も待ってるだろうしな…」

ねこ「はい、また今度。旅の話も聞きたいですし」

赤YO「そうだな。メシでも食いながらゆっくり話そう。またな」

そして二人は別れた。

533ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:23:00 ID:McfE2eQc00



赤YO「ただいま」

妹「おかえりお兄ちゃぁぁん!!」

ムギュウウウウ!!

赤ヨッシーが帰宅するやいなや、小さな仔ヨッシーが全力で抱きついてきた。

赤YO「ぐえっ!ちょ、苦しいって!」

妹「あっ、ごめんね?だって、ちょっと買い物行くだけって言ってたのに、あんまりにも遅いから心配で…!」

赤YO「すまんすまん…いろいろあってな」

妹「ん?何その箱…」

赤YO「これはえーと、その…ヤバい箱だ。絶対に開けちゃダメ系のヤツ…」

妹「何それ…なんでそんなの買ってきたの?」

赤YO「いや別にコレ買いに行ったわけじゃないぞ!?買い物はこっち!」

赤ヨッシーは買い物袋に入ったアイスを見せた。

妹「あ!アイス!あたしの好きなやつだ!」

赤YO「うん。でもちょっと時間経ってるから溶けてるかも」

妹「冷凍庫に入れとけば固まるよ。あとで一緒に食べよ!」

赤YO「…え?なんで?」

妹「へ?」

534ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:24:04 ID:McfE2eQc00

赤YO「俺の金で買ったんだぞ。おまえにやるわけないじゃん」

妹「えぇっ!?」

赤YO「それより夜ごはん食べようぜ。腹へったー」

妹「え…あ…うん…ママー、ごはんー」

ママ「はいはい、できてますよ」

食卓にはたくさんの料理が並んでいた。

妹「わ、美味しそう!」

赤YO「ちょっと多過ぎじゃないか?もったいない…」

ママ「ふふ、あなたが帰ってきたから、ママちょっと頑張っちゃいました」

赤YO「頑張っちゃいましたじゃないよ!量が多いと洗い物も増えるんだぞ !水道代もかかるし時間もかかるし、良いことないだろ!」

ママ「えっ…ごめんなさい…」

赤YO「まったく…あ!何してるんだ!?テレビつけっぱじゃないか!見てないなら消しとけよ!もったいな!げっ、クーラーもつけてんのか!?ダメダメ!窓開けりゃ涼しいでしょ!」

ピッ!

赤ヨッシーは速攻でリモコンを取り、テレビとクーラーを消した。

ママ「……」

535ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:25:08 ID:McfE2eQc00

妹「…お、お兄ちゃん…なんか変だよ…?」

赤YO「何が?」

妹「なんでそんなイライラしてるの?あたしのお兄ちゃんはもっとカッコいいはずだよ…」

赤YO「そうか…?…まあ、そうか…悪かったよ。それじゃ早く食べよう。冷めちゃうともっともったいないしな」

妹「う、うん…」

ガチャ

パパ「ただいまー」

そこへ村の外に出張していた父が帰ってきた。

父はヨッシー族ではなく普通の人間である。

ママ「あら、おかえりなさい」

妹「パパおかえりー!」

パパ「元気してたかー?てか、あの玄関にあったデカい箱なんだよ…おっ?今日の晩メシは豪華だなぁ!」

ママ「何言ってるの。これは子供達のために作ったのよ」

パパ「えっ」

ママ「あなたお金持ってるんだから自分で買ってきたらいいじゃない」

パパ「ええっ?すごい疲れて帰ってきたんだけどなぁ…それに毎月のお小遣いじゃ晩メシ分までは足りないよ…」

ママ「稼ぎが大した事ないのが悪いんじゃない。節約しなさい」

パパ「ど、どうしたの急に…俺なんかしたかな…」

妹「ママもおかしくなっちゃった…喧嘩はやめてよぉ…」

妹は涙目で両親に訴える。

536ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:26:18 ID:McfE2eQc00

赤YO「ほっとけほっとけ。夫婦喧嘩なんてよくあることだ。相手するだけ時間の無駄だ」

妹「そ、そんな…」

赤ヨッシーは両親を無視してバクバクとご飯を食べ進める。

パパ「……おい!何を呑気に食ってんだ!?」

赤YO「は?」

パパ「稼いだのは俺だぞ!お前が旅に出る時にも金出してやっただろ!誰の金だと思ってる!?」

父は赤ヨッシーの胸ぐらを掴む。

妹「ちょっと…パパまで…!やめてよみんな…!」

赤YO「うるさい!!」

ドガッ!!

赤ヨッシーは父の手を振り払い、蹴り飛ばした。

パパ「うぐぅ…っ!」

妹「パパ!」

赤YO「いつまで父親ヅラしてるんだか…」

パパ「な、なんだと!?」

赤YO「村の外に出てみて分かったが、俺たちファイターは一人でもいくらでも稼げるんだ。そういう運命の元に生まれてきた選ばれし者なんだよ。ただの人間が逆らうな!」

妹「お、お兄ちゃん!?」

ママ「な、なんてこと言うの!それだけは言っちゃダメでしょ!」

赤YO「もういい、分かったよ。だったらこんな家出ていってやるさ!元々近いうちに外で一人暮らしするつもりだったしちょうどいい!!」

パパ「おぅ出てけ出てけ!!そんなにイヤなら勝手にしたらいいさ!養う相手が一人減ってくれりゃこっちとしても大助かりだよ!!」

妹「二人とも落ち着いてよ!」

二人「うるさいっ!!お前は関係ないだろ!!」

妹「う…うわあああん!!」

妹は泣きながら、走ってリビングを出た。

537ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:27:06 ID:McfE2eQc00


妹「ぐすん…何が起きてるの…?お兄ちゃんがあんなこと言うはずない…!パパもママも変…!何が…」

その時、妹の視界にあるものが映る。

妹「この箱…!ヤバい箱とか言ってたヤツだ…!怪しい…!怪しすぎる…!」

ガタガタ…

妹「わっ!?動いた!?」

???「ククク…いいゾ…!ようやく力が集まってきた…!今の俺ならこんな箱…」

妹「何!?こわっ!!喋った!?」

???「あん?誰か近くにいやがったのか。まあいい。この家の住人はあの変なパワーは持ってねえからな。俺の邪念で狂えっ!」

すると箱の中から青白いオーラのようなものが溢れ出し、妹の体に迫ってきた。

妹「邪念!?何!?やっぱコレが原因でみんなおかしくなっちゃったわけ!?」

???「ククク、その通り…!!お前の兄貴はこんな箱で俺を捕らえた気になっているようだが…妖怪であるこの俺には関係ないんだゼ…!!」

妹「よ、妖怪…!?」

妖怪「そうさ、俺の真の名は"貧乏性の妖怪"!!近付くもの全てを、極度の貧乏性に変える!!」

バキバキバキバキ…!

妖怪は箱を破壊し、妹の前にその姿を現した。

妹「ひっ…!」

妖怪「クク…安心しろ…お前もすぐ、家族と同じになるゼ…!!」

538ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:27:35 ID:McfE2eQc00

妹「いやあああああ!!」

ぴょんっ!

妹は恐怖のあまり跳び上がる。


ドゴンッ!!!


そしてそのままヒップドロップをかました。

妖怪「ぐあああっ!!」

妖怪は吹っ飛ばされ、壁に激突。

そしてうつ伏せに倒れ、動かなくなった。

妹「あ、あれ…?弱い……これでお兄ちゃんたちも元に戻るかな…?」

妖怪「…ざ…残念だったな…」

妹「ぎゃあっ!!まだ生きてた!!」

妖怪「…ククク…たとえ俺が死んでも、俺の邪念は残り続ける…もはや貧乏性から逃れる術はないのさ…!」

妹「はあ!?ふざけんなっ!」

ドガッ!!

這いつくばる妖怪を、妹は蹴り飛ばす。

ブワワワッ…

すると妖怪の体は霧のように消えていく。

妖怪「クク…心残りがあるとすれば、お前を貧乏性にできなかったことだな…変なパワーに守られていなくとも、俺の力が及ぶには個人差がある…肉体的、精神的強さによって、貧乏性になりづらいヤツもいる…あと少しだったんだがな…」

妹「うるさいうるさい!!そんなのどうでもいい!!どうやったらみんなを元に戻せるの!?」

妹は霧散していく妖怪を両手で振り払いながら言う。

妖怪「さあな…ククク…この世に貧乏性ある限り…貧乏性の妖怪もまた不滅……さらばだ……またいずれ、俺が生まれるその時までな…」

妹「二度と見たくないっての!!!」

そして妖怪は完全に消滅した。

妹はすぐに家族の元へ戻ったが、そこに元の暖かな家族の姿は無かった。

539ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:28:25 ID:McfE2eQc00




数日後。

イノシシ「聞いた?あのヨッシー一家の夫婦、離婚したらしいわよ」

シカ「聞いた聞いた!怖いわねぇ。あんなに仲良さそうな家族だったのに…裏じゃ冷え切ってたなんて」

ウサギ「お兄ちゃんの方も、一人で村の外に出ていったんだってね。妹ちゃんがかわいそうだわ」

イノシシ「そうそう、両親二人とも養育費がもったいないとかなんとか言って雲隠れしちゃって、今は親戚の家にいるらしいわよ」

シカ「ひどい話ねぇ…」

ねこ「…」

ねこはその井戸端会議を通りすがりに聞いてしまった。

ねこ(…もしかしてあの妖怪のせい…?ぼくが猫又くんとトモダチになったせいで…?)

ねこはショックを受け、頭を抱える。

ねこ(何が幸運の招きねこだ…最悪だ…結局人生はプラマイゼロなんだ…ちょっとうまくいったからって、舞い上がって…ばかみたいだ…)

540ハイドンピー (ワッチョイ bfb9-8962):2023/07/02(日) 23:28:51 ID:McfE2eQc00

妹「ねこ兄ちゃん」

ねこ「にゃっ!?」

赤ヨッシーの妹が、ねこの後ろに立っていた。

妹「…えっと…ひさしぶり」

ねこ「あ…はい…」

妹「あたし知ってるの…ねこ兄ちゃん、実はけっこう強いって」

ねこ「えっ?」

妹「前に、お兄ちゃんに聞いたの…ねこ兄ちゃんと一回だけケンカしたことがあるって。まったく歯が立たなかったって…」

ねこ「それは…」

妹「お願いねこ兄ちゃん……あたしを強くしてほしいの…!」

ねこ「え…」

妹「お兄ちゃんも、パパもママも…みんないなくなっちゃった……だけどあたしは諦めてないから…!またお兄ちゃんたちと一緒に暮らしたい…!だから強くなって、みんなを探す旅に出るの!」

ねこ「妹ちゃん……わ、わかりました。ちゃんと強くできるかわかりませんが…ぼくが手伝えることがあるなら、なんでもやってやりますよ!」

妹「ありがとう!ねこ兄ちゃん!」

ねこは自分が原因で赤ヨッシーたちが狂ってしまったという責任から、その頼みを受け入れたのだった。

541ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/05(水) 22:40:17 ID:yDS1EqCY00





フォックスの村。

ギル「はぁ!?芸人になる!?」

ナザ「おう!だから任務はお前らに任せる。ガキどものこと、よろしく頼んだぜギル姐!」

ギル「ちょ、ちょっと待っ…」

ドドン「ぷっ、ハハハハ!!いいんじゃないか?体張った芸じゃ右に出る奴いないだろ!」

ポルス「ハハハハ!!そうだな!いつも崖に突っ込むしな!」

ギル「あんたたちねぇ…!」

アルバロ「フン、ふざけるな。突然我々を集めて何かと思えば…自分が何を言っているか分かっておるのか?」

ナザ「当たり前だ」

アルバロ「何?」

542ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/05(水) 22:41:09 ID:yDS1EqCY00

ナザ「もう随分前から決めてたことだ。治安の悪い地区や紛争地帯に行くたびに、思ってた。笑顔を失ったガキども…娯楽なんて何も知らねえようなガキどもが、この世界にゃいっぱいいるんだ。そいつらに笑顔を届けてえんだよ、俺は」

ギル「じゃあなんで今更…」

ナザ「今のお前らになら全部任せられると思っただけだ。天才のヤツももう任務に出始めてるし、あと五年もすりゃアイツは間違いなくフォックス全員を引っ張っていく存在になる」

ギル「待ってよ、だったらその五年経つまでは…」

アルバロ「フン、良かろう」

ギル「えっ…ちょっとアルバロ何言ってるの!?」

アルバロ「ナザレンコ、貴様はこれまでよく戦った。そろそろ休んでもバチは当たらん。そうだろ?ギルティース」

ギル「……!」

ギルティースはこれまでのナザレンコの働きを思い出し。

ギル「……そうね…」

ため息を吐きながらも、頷く。

ナザ「アルバロ…!ギル姐…!サンキューな!」

アルバロ「だが勘違いするなよ。完全に除隊するわけではない。後進も確かに育ってきているとは言え、いつか貴様の力が必要になる時が来るだろう。鍛錬は怠るな」

ナザ「へっ、当然だ。ドドンの言った通り、俺にゃあ体張った芸しかできねえからな。鍛錬続けなきゃ体がもたねえよ」

こうして、のちに伝説的コメディアンとなるナザレンコは、芸能界へと足を踏み入れた。

543ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/11(火) 20:51:39 ID:DwKJmZMQ00





遠い星。

魔物「ギャオオオオオ!!」

人々「きゃあああ!!」

巨大な魔物が市街地に突如現れ、人々を襲い始めた。

ピロピロピロピロ…

シュタッ

エースパパ「エースパパ参上っ!」

ワープスターで駆け付けたのは黄色カービィだ。

エース「エースも参上っ!」

その後ろに息子のエースも乗っていた。

エースパパ「エース、緊張しているか?」

エース「ダ、ダイジョーブだよ…」

ブルブルと震えながらエースは言う。

エースパパ「フッ…初のミッションだ。怖くたって無理もないさ。でも大丈夫!厳しい修行を乗り越えてきた自分を信じるんだ!お前なら勝てる!」

エース「う、うん、パパ!」

544ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/11(火) 20:52:17 ID:DwKJmZMQ00



それから数十分の戦闘を繰り広げ、二人は魔物を倒した。

エース「はぁ…はぁ…やったねパパ…!」

エースパパ「ああ、素晴らしい動きだったぞ!さすが俺の息子!」

ガシッ!

二人は熱く抱き合う。

アメリ「あーん!間に合わなかった!」

エースパパ「!!」

アメリーナがそこに駆け付けた。

エース「誰?」

エースパパ「君は確かアルザークと共にいた…」

アメリ「暗黒のアメリーナだよ!そういうあなたは誰だっけ?」

エースパパ「ここにいるエースのパパだ」

アメリ「わかんない」

エースパパ「数年前にほんの少し話しただけだからな。覚えてなくて当然だ。それで、何をしてるんだ?アメリーナ」

545ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/11(火) 20:54:04 ID:DwKJmZMQ00

アメリ「魔物が出てきたの感じたから、助けに来たの!」

エース「同業者ってこと?」

エースパパ「いや…たぶん彼女はそういうのじゃない」

アメリ「そ!私が助けに来たのはこの星の人たちじゃなくて、魔物のほうだよ」

エース「魔物を!?敵なの!?」

エースパパ「やはりか…」

アメリ「んー、でも今日は戦う必要ないかな…間に合わなかった私が悪いし。ホントはブッ飛ばしてやりたいんだけどねー」

エース「こわっ!?」

エースパパ「魔物を助けると言うが、一体どうやって?あんな巨大なもの捕まえるのは不可能だし、魔界へ帰すにしても、君は魔力を失っていてゲートを開けないんだろう?アルザークから聞いている」

アメリ「そこなんだよね。ちっちゃい子ならなんとか運べるんだけど、おっきい子はホント大変。どうするのがいいと思う?」

エースパパ「さあな。しかしその口振りだと小型の魔物は捕まえているようだな。その魔物たちはどうしているんだ?」

アメリ「聞いちゃう?フフッ、誰もいない星に連れて行くの!いい感じの星見つけてさ!」

エースパパ「なるほど…それはどこだ?」

アメリ「いやいや言うわけないでしょ!」

エースパパ「…いや…自分の同胞を傷付けられて、怒る君の気持ちも分かるよ」

アメリ「はぁ?」

エースパパ「俺もずっと考えていた。かつて君と会ったあの日から、ずっとな。殺さずに済む方法があるなら、それに越したことはない」

546ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/11(火) 20:55:15 ID:DwKJmZMQ00

アメリ「…えっと…それってつまり、協力してくれるってこと?」

エースパパ「ああ。もちろんその星が本当に安全かどうか確かめてからだがな。もしその星から魔物たちが飛びたち、宇宙に解き放たれるようなことがあったら大変だろう」

アメリ「それは大丈夫だと思うよ。飛べる魔物はあんまりいないし、もし星を出たとしても宇宙空間じゃさすがに生きてけないよ」

エースパパ「そう言われても現地を見ないことにはな…それにどうせ協力するなら場所は知っておかなきゃならない」

アメリ「…私だって二つ返事で信用するほどバカじゃないよ」

エースパパ「だろうな。そこで俺の息子を君に差し出したい」

エース「え?」

アメリ「どういうこと?」

エースパパ「この世で一番大切な、俺の宝物だ。その命を君の手に預ける。万が一、俺が君を裏切るようなことをしたならば、煮るなり焼くなり好きにしていい」

エース「えぇ!?」

アメリ「なんでそこまで…」

エースパパ「絶対に裏切らないという自信があるからだ。エースも安心しろ。俺が一度でもウソをついたことがあったか?」

エース「た、たぶんない…」

アメリ「んー…やっぱダメ!ついさっき魔物をその手で殺した人のことなんて信用できない!」

エースパパ「そうか…残念だ」

アメリ「魔物を倒すのやめてくれたら信用してあげるよ。魔物と戦うことになっても、私が駆けつけるまで抑えてくれれば、私が魔物の星に連れていく」

エースパパ「言っただろ。その星の安全性が確認できなければ、君の行為を認めることはできない。今のままでは君はただの、ミッションを阻害する敵でしかないんだ」

アメリ「…はぁ、しょうがないねー…あなたを生かしておいても魔物たちが殺されるばかり…だったら、やっぱりここで再起不能にしとこ!」

エースパパ「!!」

547ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/11(火) 20:56:25 ID:DwKJmZMQ00


ドガァッ!!!!


二人の攻撃がぶつかり合う。

エースパパ「まったく…急に仕掛けてくるな、気分屋め…!」

エース「パパ!」

エースパパ「エースは下がっていろ!お前はまだこの戦いにはついてこれない!」

アメリ「フフ、私に勝てるつもり?別に二人がかりでもいいよ?」


ガガガガガッ!!!


アメリーナは次々と攻撃を仕掛け、エースパパはギリギリでそれを凌ぐ。

エースパパ「ナメるなよっ!俺はこれでも数十年、宇宙の平和を守るため戦ってきたんだっ!」

アメリ「宇宙の平和?"人間"の平和の間違いでしょ?魔族や宇宙生物は平気で殺すんだもん。他の命を軽く見ているあなたが、よくそんなこと言えるねっ」

パシュッ!

アメリーナは一瞬の隙を突いてグラップリングビームを出し、エースパパを捕縛。

エースパパ「くっ!?」

アメリ「えいっ!!」


ドゴッ!!


そしてそのまま地面に叩きつけた。

エースパパ「ぐぁっ…!」

エース「パパ!!」

アメリ「よーしもう一発っ!みんなが受けた痛みはこんなもんじゃないんだからねっ!」

ドガッ!!ドゴッ!!バゴッ!!

アメリーナはさらに何度も叩きつける。

エースパパ「くっ…強い…!ならば!」

548ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/11(火) 20:57:27 ID:DwKJmZMQ00

ゴッ!!

エースパパは石に変身した。

アメリ「んっ!?重っ!」

アメリーナは思わずビームを解く。

ぼふっ!

エースパパはすぐに元の姿に戻ると。

エースパパ「やあっ!!」


バキッ!!


アメリーナを蹴り飛ばす。

アメリ「く…やるな〜!そういやカービィはそういう変なワザ使えるんだったね…!魔界にいた頃は下目使いによくやられたよ…もう!ヤなこと思い出させないでよっ!」

エースパパ「知らんがな!」

アメリ「でもいいもーん!下目使いみたいな化け物、こっちにはいないもん!」


ズドドドド!!!


アメリーナは再び攻めに転じ、エースパパを追い込む。

エースパパ「ぐぅっ…」

そしてうずくまったところへ。

549ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/11(火) 20:59:10 ID:DwKJmZMQ00


アメリーナ「これで終わりっ!!」


ドウッ!!!!


最大チャージショットを放った。

エースパパ「ぐぁぁぁっ!!」

エース「パパーーっ!!」

エースパパは吹っ飛ばされ、さながらピンボールのように建物にぶつかりまくって、倒れた。

アメリ「それだけボロボロならもう戦えないでしょ。んじゃっ!」

アメリーナは嬉しそうに手を振り、去っていく。

エース「ま、待て!僕が相手だっ!」

アメリ「やだよめんどくさい!死んではないと思うから早くパパを助けてあげたら?」

アメリーナは自分の宇宙船に乗り、宇宙へと飛び立った。

エース「パパ…!そんな…パパが負けるなんて…!」

550ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/11(火) 21:00:18 ID:DwKJmZMQ00



数時間後。

エースパパ「う…」

エース「パパ!」

エースパパ「…そうか…俺は彼女に負けたのか…すまんエース、心配かけたな…」

エース「お医者さんが言うには、全身ボロボロで戦闘なんてもってのほかで、しばらく絶対安静だって…」

エースパパ「そうだろうな…体が動かん。エース…今こそ…ワープスターをお前に託す」

エース「えっ!?」

エースパパ「今のお前になら、俺の後を任せられる。この宇宙を頼んだぞ…」

エース「ま、待ってよ!まだ心の準備が…」

エースパパ「フッ、甘えるなエース。パパのような戦士になりたいと昔から言ってたじゃないか」

エース「……分かった…!僕が宇宙の平和を守る…!」

エースは父に心配をかけまいと、震える声で言う。

エースパパ「フッ…よく言った。俺の端末を調べろ。知り合いの連絡先もたくさん入っているから、遠慮せず頼るといい」

エース「分かったよパパ…あとは僕に任せて、安心して眠ってて」

エースパパ「ああ…頼もしいな、息子よ…」

エースパパは安心した顔で眠りについた。

エース「…行こう…」

エースはすでに父の端末の中に入っていたとある情報を見つけ、動いていた。

551ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-67e4):2023/07/11(火) 21:01:58 ID:DwKJmZMQ00


病院を出ると。

キィィィィン…

ゴゴゴゴゴ…

ガシン…

そこへスターシップが着陸した。

㍍「貴方がエースさんですわね。お父上の面影がありますわ」

エース「アルザークさんですか?」

㍍「ええ。貴方のお父上の容体は?」

エース「…」

エースは無言で首を横に振る。

㍍「そうですか。アメリーナがそこまでやるとは…」

エース「パパがあの人と戦った時に、発信機をつけてたみたいです。これが位置情報です」

エースは端末の画面をアルザークに見せる。

㍍「さすが、抜け目ないですわね」

エース「これからは僕がパパの代わりになります…!だからどうか力を貸してください!」

㍍「勿論。その為に来たのですから」

エース「ありがとうございます…!」

552ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:17:17 ID:9sxXl.c.00




数週間後。

アメリ「はい、ここが君たちの新しいおうちだよー!」

ガコン!

アメリーナは宇宙船の中から檻を下ろし、その中に捕らえていた魔物たちを解き放った。

アメリ「フフフッ、みんなはしゃいじゃって。やっぱり自由っていいよね!私もこの世界に来てホントよかったー!」

魔物「グギャォォォ!!」

アメリ「さてとっ、次はどの星に行こうかなー」

アメリーナは宇宙のガイドブックを眺める。

アメリ「あ、そうだ!久しぶりにあの星に戻ってみるのもいいかも!あのヒゲオヤジもさすがにもう私のことなんて眼中にないだろうし…地上に来てすぐ宇宙に出たから、あの星は全然見て回れなかったもんなー」

ぱたん

アメリーナはガイドブックを閉じると、操縦席に乗り込む。

アメリ「それじゃ早速しゅっぱーつ!!」

ゴゴゴゴゴ…

ビューーーン!!

アメリーナの宇宙船は宇宙の彼方へと飛んでいった。

553ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:18:07 ID:9sxXl.c.00



そして数時間後。

魔物「グォォォォ!!」

魔物たちが上空を見上げて吠え始める。

ピロピロピロピロ… シュタッ

そこに、ワープスターに乗ったエースが現れたのだ。

エース「ここか…確かに魔物がたくさんいるな…」

ゴゴゴゴ… ガシィン…

続いてスターシップが着陸。

㍍「なるほど…連盟からの報告にあった魔物もいますわ。ここ数ヶ月の間、出現した魔物が行方を眩ませていたのは、やはり貴女の仕業でしたのね、アメリーナ」

魔物「グオオ…!」

あっという間に二人は魔物の群れに囲まれた。

エース「…本当にやるんですか?」

㍍「ええ。この数の魔物を放置はできませんわ」

エース「留守を狙って攻撃なんて、なんか卑怯な気もするけど…」

㍍「平和の為ですわ」


ドドドドドドドドドド…!!


アルザークは、アームキャノンで次々と魔物を焼き払っていく。

魔物「ギャァァァ!!」

エース「はあっ!」

バキッ!!ドガッ!!

エースも負けじと魔物を粉砕していく。

554ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:18:51 ID:9sxXl.c.00



さらに数十分後。

いよいよ魔物の数は残り十体を切った。

エース「はぁ…はぁ…よし、あと少しだ…!」

㍍「ええ。見える範囲には、ですがね。ここを片付けたら、すぐに星を周回して生き残りを探しますわよ」

エース「は、はーい…」

すると。


魔物「グオオオオオオオオ!!」


エース「な、何!?」

突如、残った魔物たちが一斉に雄叫びを上げた。

そして一箇所に集まり始める。

㍍「これは…一体…!」


グチュッ…

ベキョッ…


魔物たちは密集し、互いを押し潰す。

そして飛び散った緑色の血液が、魔物たちを包んでいく。

555ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:19:31 ID:9sxXl.c.00

エース「なんなの!?同族が討伐されて変になっちゃったの!?」

㍍「…いや…これは…!エネルギー反応があの一点に集まって…どんどん膨れ上がっていますわ…!何かが起ころうとしています…その前に…消し飛ばしますわっ!!」


ドウッ!!!!


アルザークはその中心に向かって、チャージショットを放った。

が、そのエネルギーは血溜まりの中に吸い込まれていく。

エース「吸収した!?」

㍍「く…今の状態では攻撃を受け付けないようですわね…エースさん、一旦離れますわよ」

エース「は、はい!」

二人はその血溜まりから距離を取り、様子を伺う。

するとその血液が固まり。

エース「タ…タマゴ…?」

その姿は大きなタマゴのように変化した。

そして。


ピキッ!

バキキッ!


㍍「何かが生まれる…!?」

556ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:20:12 ID:9sxXl.c.00


バゴォォン!!


タマゴが内側から勢いよく破壊され。


怪物「ギャオオオオオオオッ!!!!」


十数メートルはあろうかという巨大な怪物が、産声を上げた。

エース「うぐううっ…!」

㍍「く…!なんという音圧…!」

二人は咄嗟に耳を塞ぐ。

怪物「ギャオオオオオ!!」


ブワッ!!!!


怪物は八本の長い腕を振り回す。

エース「うわぁっ!」

エースはその風圧により吹っ飛ばされる。

㍍「エースさん!」


ビュワッ!


アルザークはグラップリングビームを出し、エースを引き戻した。

エース「あ、ありがとうございます。でもあんなのどうすれば…」

㍍「大丈夫ですわ。確かに見た目やパワーだけを見れば恐ろしいですが…あの程度の数の魔物が融合したところで、わたくしたち二人を超えるほどの強さになったとは思えませんもの。お父上によく言われていたのでしょう?自分の力を信じるのですわ」

エース「は、はい!」

557ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:20:47 ID:9sxXl.c.00

怪物「ギャオオオ!!」


ドガガガガガガッ!!!


怪物は腕を次々と振り下ろし、二人を潰しにかかる。

二人はそれを素早くかわし、懐に潜り込み。


ギュルルルルルルッ!


アルザークはスクリューアタックによって怪物にダメージを貯める。

エース「とおっ!!」


ドガッ!!


エースは右脚を蹴り飛ばし。

怪物「ギャオォォッ!」

ドシャァァン!!

怪物はバランスを崩して倒れた。

㍍「今ですわ!」

エース「はい!」


ドガガガガッ!!


その隙に二人は一気に技を叩き込む。

558ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:21:32 ID:9sxXl.c.00

アメリ「こらーーっ!!」

エース「!!」

そこへアメリーナの乗る宇宙船が猛スピードで戻ってきた。

㍍「アメリーナ…!勘付かれましたか…」

アメリーナは宇宙船の上に立ち、アームキャノンを構える。


ドウッ!!!


上空から放たれたチャージショットを二人はかわす。

エース「暗黒のアメリーナ…!パパの仇っ!」

アメリ「殺してないわー!!」

アメリーナは宇宙船から飛び降り、その勢いのままエースに向かって蹴りを繰り出す。


ドガァッ!!!


エースも応戦し、両者の蹴りがぶつかり合う。

ズザザザザ…

エースは一方的に弾き飛ばされる。

エース「ぐぅっ…!強い…!」

アメリ「ってあれ!?よく見たらアルザークさんじゃん!ひさしぶりっ!元気してたー!?」

㍍「ええ。お久しぶりですわ、アメリーナ」

アメリ「そっかぁ…あの時言った通りになっちゃったんだね。覚悟はしてたけどさ」

㍍「そうですわね。次会う時は敵同士…わたくしはずっと…この日を、楽しみにしていましたわ」

アルザークはニヤリと笑った。

頭部装甲で表情は隠れているものの、アメリーナもその声の高揚を感じ取り。

アメリ「ははっ!いいね!そう来なくっちゃ!!」

559ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:22:36 ID:9sxXl.c.00


ダンッ!!


二人は同時に飛びかかり。


ドガンッ!!!!


アームキャノンによる打撃がぶつかり合った。

ドギャギャギャギャギャ!!!

二人は途轍もない攻防を繰り広げる。

エース「す…すごい…とてもこの戦いには入れない…」

怪物「ギャオオオオオッ!!」

エース「うわっ!コイツもいたんだった!」


ブォンッ!!!!


怪物は立ち上がり、エースたちを尻尾で薙ぎ払う。

三人はジャンプでかわす。

エース「あ、危なかった…!」

㍍「もう一発来ますわ!」


ブォンッ!!

ブォンッ!!


怪物は何度も尻尾を振り回す。

アメリ「あははっ!なんかこれっ!縄跳びみたいでおもしろっ!」

㍍「しかしこれでは戦えませんわよ?」

アメリ「はっ!しまった!どうする!?」

㍍「こうしましょうか」

アメリ「!!」


ブンッッ!!


アルザークはアメリーナをグラップリングビームで捕らえ、後ろに投げ飛ばした。

560ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:23:30 ID:9sxXl.c.00

㍍「エースさん、そちらの魔物は任せますわ」

エース「ええっ!?これ僕一人でやるの!?」

㍍「貴方のお父上なら文句は言いませんわよ」

エース「…!わ、わかりましたよっ!人使い荒いな…」

㍍「フフ…大丈夫、幸運の女神はきっと貴方に微笑みますわ」

アルザークはそう言うと、投げ飛ばしたアメリーナを追いかけていった。

エース「女神って…まったく…どうしろって言うんだ…」

怪物「ギャオオオオオオオッ!!!!」

エース「うるさいってば!耳がキンキンしてつらい!」


ドガァッ!!


怪物の振り下ろす腕をなんとかかわし、エースはその腕に乗る。

タタタタタタタ…

そしてその腕を駆け上った。

エース「えいっ!!」


ズバッ!!


そして巨大なカッターを出し、顔面を斬りつけた。

怪物「グギャァァァァ!!」

エース「どわっ!」

ガシッ!

怪物は肩に乗ったエースを掴み。


グシャッ!!!


そのまま地面に叩きつけ、押し潰した。

561ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:24:17 ID:9sxXl.c.00


ドドドドドドドドドド!!!!


さらに八本の腕で何度も追撃する。

怪物「グオオオオオオオオ!!」

完全に手応えがなくなると怪物は攻撃をやめ、勝利の雄叫びを上げる。

エース「…あ、危なかったー…マジで死ぬかと思った」

怪物「グァ!?」

エースは押しつぶされる直前にストーン化し、なんとか耐えていた。

エース「ふぅ……耐えたはいいけど…僕のファイナルカッターもそんなに効いてなさそうだ…どうしよ…」


チュドドドドドドドド!!


怪物「グギャアアアア!!」

突如、上空から大量の光線弾が怪物に降り注いだ。

エース「な、何!?」

そこには一機のアーウィンが飛んでいた。

ギル「待たせたわね!」

エース「誰!?」

ギル「幻のギルティースMk Ⅱよ!アルザークさんに呼ばれて応援に来たわ!」

エース「あ、ありがとうございます!幻のギルティース…なんか聞いたことある…!」

ギル「たぶんそのギルティースはうちの姉さんのことね。私の名前はまだそんなに知られてないと思うから」

怪物「グオオオオオオオオ!!」

ギル「あら、まだ元気ね…それじゃ私は上空から攻めるわ!エースくんはそいつの足元を狙って!」

エース「はい!」

562ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:32:02 ID:9sxXl.c.00



一方、アルザークとアメリーナは。


ドォン!!

ドガガガ!!

ズドォ!!


激しい戦いを繰り広げていた。

㍍「ふぅ…やりますわね」

アメリ「へへ、アルザークさんこそ!」

㍍「貴女がもしまだ魔力を持っていたらと思うと恐ろしいですわ」

アメリ「それはどうかなー?魔力を使えば確かにパワーは上がるけど、それだけだよ。魔力操作が上手いヤミノツルギなんかは戦いの最中にも魔力で小細工したりしてたけどね。私、こっちに来てからめちゃくちゃ強くなったんだよ。アルザークさんの戦い方を真似したりしてね」

㍍「あら、それは一人の戦士として嬉しいですわね」

二人は技を打ち合いながら対話する。

アメリ「でも、だからこそ悲しいよ。尊敬してるアルザークさんがこんなことするなんてね」

㍍「貴女がいない隙に魔物を討伐したことですか?確かに、少々卑怯なやり方であるのは否めませんが、確実にミッションをこなすには仕方のないことですわ。貴女に邪魔されながらでは難しいでしょうから」

アメリ「そもそも魔物を討伐したことに怒ってんの!!」

㍍「当然でしょう。人を襲う魔物など、生かしておくのは危険ですわ」

アメリ「見ればわかるでしょ!?この星には魔物しかいないよ!」

㍍「魔物がこの星を出る可能性もありますわ」

アメリ「ないよ!前にカービィの人にも言ったけど、飛べる魔物はいないし、宇宙空間じゃ生きられない!」

㍍「進化する可能性は?先ほどの魔物のように、融合して姿を変えるものもいますし、宇宙空間に適応する種が現れてもおかしくはありません。可能性が少しでもあるならば、殲滅すべきなのですわ」

アメリ「そんなの人のエゴだよ!人を襲う動物がいたら、その種を全部狩り尽くすの?人を殺す人がいたら、人を滅ぼすの!?そうじゃないでしょ!?この星にいる子たちは、現状何もしてないのに…!」

㍍「誰よりも自由を求める貴女が、エゴを否定するのですね。まあ…それはその通りですわよ。エゴです。それが何か?」

アメリ「はあ!?」

563ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:33:21 ID:9sxXl.c.00

㍍「ただ一つ、魔物を殲滅する理由を述べるとするなら…この宇宙に存在しない、外来種だと言うことですわ。放置すれば生態系にどんな影響をもたらすか分からない」

アメリ「そんなの私だって一緒だよ!」

㍍「そうですわよ。本来なら貴女が魔界から来たことを打ち明けてくれたあの日に、わたくしは貴女を殺すべきでしたわ」

アメリ「!」

㍍「ですが同じサムス族であり、旅を共にした貴女には、わたくしも少なからず情が移っていましたから…そんなことはできなかった。しかし今、こうして貴女はわたくしの前に立ちはだかっている」

アメリ「…はは…そっか。そうだよね。アルザークさんはそういう人だった。まいいや!ごちゃごちゃ言い合ってもしょうがない!」

㍍「その通り。勝った方が自由を手にする。単純な話ですわ」


ドォォォッ!!!!


二人のチャージショットがぶつかり、打ち消し合う。

アメリ「シンプルイズ…ベストー!!」

アメリーナは掛け声とともに攻撃を仕掛ける。


ギュルルルルッ!!


アルザークはそこにスクリューアタックを合わせて弾き返す。

アメリ「うぐっ」

さらにアメリーナの落下点に潜り込むと。


ボボボボボッ!!!


アームキャノンを上に掲げ、炎の弾を連射。

アメリ「ぐああっ!!」

アメリーナはそれによって再び宙を舞う。

564ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:34:10 ID:9sxXl.c.00

タンッ!

アルザークは跳び上がり。


バゴッ!!!


ソバットを放つ。

アメリ「かはっ!」


ドカァァン!!


アメリーナは吹っ飛ばされ、岩に激突した。

ガチャッ…

うつ伏せで倒れ込んだアメリーナの後頭部に、アルザークはアームキャノンの砲口を突きつける。

㍍「チェックメイトですわ」

アメリ「…はぁ…私の負けかぁ…やっぱ強いなぁ……いいよ。アルザークさんに殺されるなら本望」

㍍「……わたくしに…貴女を殺すことなど、できませんわ」

アメリ「え?」

ガチャンッ

アルザークはアメリーナの後ろ手に手錠を掛けた。

㍍「貴女にとっては死よりもきつい拷問かもしれませんが…敗者に選択権はありませんので」

アメリ「あ…あはは、捕まるんだ私…まあそうだよね…」

㍍「貴女がわたくしの元を離れなければ…こんなことをしなくて済んだのに…なぜわたくしの言うことを聞いてくれないんですの…?」

アメリ「……言うまでもないでしょ?」

㍍「……そうですわね…」

アルザークはアメリーナのパワードスーツを脱がすと、さらに全身に拘束具をつけて身動きを取れなくした。

そしてアメリーナを担ぎ上げ、エースたちの元へと戻った。

565ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:36:01 ID:9sxXl.c.00



エース「はぁ…はぁ…やったー!」

ギル「上手く連携できたわね!ナイスよエースくん!」

エース「ありがとうございます!」

エースたちは怪物を仕留めていた。

㍍「ギルティースMk Ⅱさん、来ていましたのね」

そこにアルザークが到着。

ギル「㍍アルザークさん!初めまして!」

二人は握手を交わす。

㍍「初対面なのに、なんだか懐かしいですわ。駆け出しの頃、貴女のお姉様とは共に何度もミッションをこなしました」

ギル「私も姉さんから話はお聞きしてます。姉さん以上の凄腕だと…当時は信じられませんでしたが…今あなたを前にしてみると、納得できますね。フフ…」

㍍「お姉様のことは残念でしたわね…」

ギル「ええ。でも姉さんが自分の正義を貫いた結果ですから」

エース「あの、もしかして僕のパパのことも知ってますか?」

ギル「ええ勿論。確か、スペードさんだったかしら?姉さんに並ぶ優秀な戦士だったと聞いたわ」

エース「そうですか!でへへ…」

ギル「あなたもなかなか強かったわよ。経験を積めば、きっとお父さんのような戦士になれるわ」

エース「へへ、ありがとうございます!」

ギル「…それで、さっきからアルザークさんが抱えてるのは…」

アメリ「暗黒のアメリーナでーす。この星に魔物を集めた犯人でーす」

いじけた態度でアメリーナが言う。

㍍「…そういうことですわ」

566ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:36:41 ID:9sxXl.c.00

ギル「どこかの収容所に連れて行くんですか?」

㍍「ええ。処分は上に任せ…!」

ドサッ…

ギルティースとエースは突然倒れた。

㍍「…お久しぶりですわね…ロハス」

その後ろには、緑フォックスがブラスターを構えて立っていた。

???「㍍アルザーク…排除する」


ズドォッ!!


㍍「ぐっ…!」

フォックスは一瞬で距離を詰めて蹴りを放ち、アルザークはガードする。

㍍「速い…!」


バゴッッ!!


次の瞬間、フォックスの蹴りがアルザークの腹部の装甲を粉砕した。

㍍「がはっ…!?」

アルザークは膝をつく。


ダンッ!!


さらなる追撃の蹴りを、ギリギリで後ろに跳んで回避する。

㍍(重い…!なんというパワー…!それにこのエネルギー反応は…かつて戦ったクローンたちとはまるで別物ですわ…!)

???「もはや㍍アルザークでは力不足だ。一対一でも相手にならん」

㍍「それはどうでしょうね…パワーとスピードだけで倒せるのなら、わたくしはこの宇宙でここまで生き延びてはいませんわ」

???「お前に言ったのではない」

㍍「…どなたかと通信を?」

???「答える義務はない」

567ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:38:47 ID:9sxXl.c.00


ブンッ!!


フォックスの蹴りを、アルザークはかわす。


チュンッ!チュンッ!


さらにブラスターによる射撃をジャンプでかわし、フォックスの頭上へ。


ガンッ!!


アームキャノンによる打撃を放つも、蹴りによって相殺された。

㍍「くっ…」

???「無駄だ。その程度の動きは全て読めている」

㍍(しかし…見たところ通信機器を使っている様子はない…まさか、昔アメリーナの言っていた"念話"を…?超小型の通信機器の可能性もありますが……もし念話だとしたら、魔力をも身につけているということ……有り得ない話ではありませんわ…)


ビュゥン


アルザークはグラップリングビームを伸ばす。

フォックスは当然のようにそれをかわす。

アメリ「ぎゃっ!?」

???「!」

グラップリングビームはフォックスの後ろに転がっていたアメリーナを捕らえた。


ドガッ!!


そのままアルザークはアメリーナをフォックスにぶつける。

アメリ「痛っ!!ちょっとアルザークさん私の扱い雑すぎない!?」

フォックスはほとんど動じずアメリーナを叩き落とすが、その一瞬の隙をアルザークは見逃さない。


ボボボボッ!!


ジャンプで距離を詰め、アームキャノンから放った火球でフォックスを焼く。


ギュルルルルッ!!


さらにスクリューアタックで追撃。


ドガッ!!!


そしてアームキャノンでその辺の大岩を破壊し。


ドガガガガッ!!


その破片をフォックスに向かって弾き飛ばした。

568ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:40:13 ID:9sxXl.c.00

???「チッ…」

フォックスは岩に埋もれる。

㍍(わたくし一人では勝てない…ここは撤退するしかありませんわね)

アルザークは倒れているエースたちを担ぎ上げると、スターシップへと走る。

㍍「くっ…アメリーナまで回収する余裕はありませんわね…!」


ゴバァッ!!


岩はあっさりと弾き飛ばされ、フォックスが起き上がる。

???「相変わらず小賢しいな。その機転は賞賛に値する…だが、無意味だ」

㍍「なっ…!」

スターシップの前に着くと、そこには数人のフォックスが立っていた。

???「逃げ場はない」

㍍「くっ…ここまで…ですか…」

エース「…ん…」

アルザークに担がれていたエースが、揺れによって目を覚ます。

㍍「エースさん!ワープを!」

エース「!!わ…ワープスターーッ!!」

???「!!」

ピロピロピロピロ…!

エースの叫びに反応し、ワープスターが高速で飛んでくる。

エース「掴まって!」

㍍「はい!」

タッ!

そしてエースはワープスターに飛び乗った。

569ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:41:13 ID:9sxXl.c.00

???「逃がすな!」

エース「ワープスター!どこか違う星へ!」


ピロピロピロピロ…!



パッ!



エースたちの乗ったワープスターは消えた。

???「チッ…ワープか…」

???「カービィのワープスターだな。一つしか現存していない筈のものだ。奴が正統後継者ということか」

???「まあいい。我々の今の戦闘能力を測ることはできた。並のファイターに遅れをとることはない。そちらはどうだ?」

フォックスたちはスターシップに視線を向ける。

???「…ここには無いようだ」

スターシップの中を調べていたフォックスが首を振る。

???「㍍アルザーク…抜け目のない奴だ」

アメリ「ふふっ、あんたら、ロハスだっけ?まだアルザークさんの追っかけやってたんだ?」

拘束されたままのアメリーナが言った。

???「暗黒のアメリーナか。数年前にアルザークと別れ、宇宙中で魔物を助けて回っている狂人…」

アメリ「誰が狂人だバカ!」

???「雑魚に興味はない。消して行くか」

カチャッ…

フォックスはブラスターをアメリーナの額に突き付ける。

アメリ「ちょっとタンマ!私、魔の一族なんだけど!」

???「…それが何だ?」

アメリ「助けてくれたら、魔力の面白い使い方、教えてあげてもいいよ」

???「……」

570ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:42:02 ID:9sxXl.c.00




ピロピロピロピロ…

ピコンッ!

エースたちの乗ったワープスターは遠い星に墜落し、粉々になって消えた。

ズシャァァァァ…!

乗っていた三人は投げ出される。

エース「いててて…無事ですか?」

㍍「ええ…助かりましたわ。ありがとうございます」

エース「それにしてもさっきの状況って…」

㍍「…目撃してしまった以上、隠しても仕方がありませんわね…あれは、わたくしを追っているクローンフォックスたちですわ」

エース「クローン…!?なんでそんなのがアルザークさんを…」

㍍「わたくしが彼らの正体を知っていることと…このキューブを持っていることが原因でしょう」

アルザークはパワードスーツの中から、小さな白い箱を取り出す。

エース「それは?」

㍍「彼らと初めて遭遇した時、彼らの乗っていた車から見つけた物ですわ。何かの記録媒体のようです。数年に渡って解析しているのですが…未だプロテクトに阻まれて、中を見ることはできていません」

エース「専門の人に依頼したりしないんですか?」

㍍「できるはずありませんわ。彼らに狙われてしまう」

エース「あ、そっか…」

571ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:42:30 ID:9sxXl.c.00

㍍「裏を返せば、それ程にこのキューブが大事だということですわ。彼らはとてつもなく危険な研究を行っています。恐らくはその研究を、さらに大きく進めてしまうようなデータが眠っている…絶対にこれを渡すわけにはいきませんわ」

エース「そんなに危険なら、壊しちゃうのは?」

㍍「勿論それも考えましたが…解析することで彼らの情報や目的がわかるかもしれません」

エース「なるほど…っていうかこれもしかして僕も狙われるのでは?」

㍍「そうですわね。キューブを持っているわたくし程ではないにしても、彼らのターゲットの一人として認識される可能性は高いでしょう」

エース「う…ちょっと怖いけど、僕にはワープスターがついてるから大丈夫です!なんとかします!」

㍍「くれぐれも戦おうなどとは考えないことですわ。彼らはすでにこの世の生物のレベルを超えています。絶対に勝ち目はありません」

エース「わ、分かりました……っていうかギルティースさん、まだ寝てる…」

㍍「ふふ、さすがフォックス族、図太いですわ。ギルティースMk Ⅱさんは彼らの顔を見ていませんから、今話したことは黙っておきましょう。強力な魔物に不意を突かれたということにしておけばいいですわ」

エース「分かりました。その設定でいきましょう」

572ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/12(水) 21:43:04 ID:9sxXl.c.00


それから二人はギルティースを起こし、嘘の事情を説明した。

ギル「えぇ!?じゃ、じゃあ私のアーウィンもあの星に置いてきちゃったんですか!?」

㍍「そうですわ。さすがに回収する余裕はありませんでしたので」

ギル「そっかぁ…また今度とりにいかなくちゃ…」

㍍「しばらくはあの星には近づかない方がいいですわね。あの魔物は強すぎましたわ」

エース「そ、そうですね!今行ってもゼッタイゼーッタイ返り討ちにあってしまうと思います!それにもしかしたらアーウィンも食べられちゃってるかもしれません!」

㍍(嘘が下手ですわ…)

ギル「うぅー…悲しみ…」

㍍(素直ですわ…)

その後ギルティースはアルバロに迎えに来てもらい、母星へと帰った。

573ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/13(木) 19:58:27 ID:XXSsPR7600





とある樹海の洞窟。

女リンク「たくさん食べなさい。食べて力を付けるのよ」

子「はい、母さん!」

ここではリンクの親子が食事をしていた。

かつてリカエリスがクローンフォックスたちの基地から逃がした、女リンクとその子供だ。

女リンク「お前には才能がある」

子「はい、勿論です。僕は母さんの…リンク族の血を引いてますから」

採ってきた木の実やキノコ、狩りで仕留めたケモノ肉などを貪りながら、二人は話し始める。

女リンク「リンク族だけではないわ」

子「え?」

女「近頃の鍛錬で、お前はいよいよ私を超えるほどにまで成長した。もう話してもいい頃でしょう」

子「話すって、何をですか?」

女リンク「お前の父親についてよ」

574ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/13(木) 19:59:18 ID:XXSsPR7600

子「父さん…!?父さんがいたんですか!?」

女リンク「いや…父と呼べるほどの存在ではないかもしれない。私もその男には会ったことがない。しかしお前がその血を引いているのは確かよ」

子「何者なんですか…?」

女リンク「煙草マスター…かつてこの星で起きた戦争で、何千人もの兵士を虐殺した、最強の戦士の一人」

子「た、煙草マスター…?煙草を使って戦うんですか?」

女リンク「いや、武器にしていたわけではないわ。とにかく煙草が好きで、戦場でも常に吸っていた。その煙草から撒き散らす副流煙によって、敵味方問わず大量の兵士の肺を破壊するという大事件を起こした程よ。その事件は現在では"受動喫煙事変"と呼ばれている」

子「でも、母さんはそんな人とどうやって知り…ってあれ?でも会ったことがないって言いましたよね?」

女リンク「煙草マスターは封印されているからな」

子「封印…!?」

女リンク「お前が生まれる前、私は悪の科学者に捕まっていた。その科学者は、封印されていた煙草マスターの細胞を盗み出した。そして研究の末、そのDNAを宿した子種を作り出したのよ。その子種は私の体に植え付けられ……お前が生まれた」

子「そんなことが…!じゃ、じゃあ…僕らがこうして身を隠して生きてきたのは…」

女リンク「そう。奴らに見つからないようにするためよ」

子「…!」

女リンク「だがこの生活ももう終わり」

子「え?」

女リンク「言ったでしょう。もうお前は私を超えていると。その歳でここまで開花するとは思わなかったが…もはや、私がお前に教えられることはない。今のお前なら、たとえ奴らに見つかり襲われるようなことがあっても、乗り越えられるはずよ」

子「じゃあ森の外へ出られるんですか?でも一体どこへ?」

女リンク「まずは街へ出て常識を身につけなさい。外の話は今までも知識として教えてきたが、実際に体験しなくては分からないこともあるでしょう。金ならあるわ」

女リンクはお金の入った袋を取り出し、子リンクに渡した。

子「え?えっと…母さんは行かないんですか…?」

女リンク「私は奴らに顔が割れているから、すぐに見つかってしまうわ。お前一人なら、一見ただの子供リンクよ」

子「でも僕一人じゃ…」

女リンク「大丈夫。お前なら一人でも生きていける。自分の力を信じるのよ」

子「…わかりました」

575ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/13(木) 19:59:49 ID:XXSsPR7600

女リンク「それとお前には、外に出てやらなければならないことが二つある」

子「何ですか…?」

女リンク「一つは、スターロッドを手に入れること」

子「スターロッド…?」

女リンク「数千年前の英雄・カービィが使っていたという伝説の武器よ」

子「伝説の武器…?しかし母さん、僕にはこの剣があります。母さんから継いだ大事な剣が…」

女リンク「勿論その使い慣れた武器を手放す必要はないわ。しかしリンクと煙草マスター、二つの力を使いこなすには、剣とスターロッドという二種類の武器を使いこなせなくてはならない」

子「二刀流ということですか?」

女リンク「ああ。そのために二本の剣を持たせた鍛錬もさせてきたはずよ」

子「はい。あれはこのための鍛錬だったんですね…」

女リンク「スターロッドには対魔の力もあるという。必ずお前にとって大きな戦力となるわ」

子「分かりました…スターロッドというのは、どこにあるんですか?」

女リンク「それは私にも分からない…が、噂によると、この星のどこかに存在している。最後に確認されたのが、数百年前にこの星で起きた戦争の時。戦場の中で失われて以来、一度も見つかっていない」

子「そ、そんなの無茶ですよ…!」

女リンク「無茶でもやるしかないわ。お前がやるべきことを、やり遂げるためには」

子「やるべきこと…二つ目のことですか…?」

女リンク「そう。お前がやらなくてはならない二つ目のこと…それは、煙草マスターを倒すこと」

子「父さんを…倒す…!?でも、封印されてるって…」

女リンク「ああ。例の科学者によると、かつての大戦が行われた東の国のどこかの祠に封印されている。だがその封印が張られたのも遥か昔の話…今では劣化し、あと数年のうちに目覚めるらしい」

子「なっ…」

女リンク「煙草マスターが暴れ出せば、きっと世界中で大混乱が起こるわ。それを止められるのは、その血を引き、力を受け継いだお前だけ」

子「…!僕にしかできないこと…なんですね…!」

女リンク「ああ。だからスターロッドを手に入れ、煙草マスターの封印された祠を見つけ出すのよ。来るべき戦いに備えてな」

子「…分かりました……僕が、父さんを倒します…!」

こうして、煙草マスターの子は旅に出ることになった。

576ハイドンピー (ワッチョイ 277d-072e):2023/07/13(木) 20:00:17 ID:XXSsPR7600



翌朝。

女リンク「準備はできたか?」

子「はい!母さん、今までありがとうございました!」

女リンク「……ああ…愛しているわ、息子よ…」

ギュッ…

女リンクは子リンクを強く抱きしめる。

子「か、母さん…?」

その体は震えていた。

最強のリンクを育て上げることに執着し、厳しく接してきた女リンクだったが。

自分の元を離れようとする今になって、母性とも呼ぶべき感情が込み上げてきたのだ。

女リンク「今まで…すまなかった…私は…お前を…」

子「謝らないでください母さん。分かってます。全てを終わらせて、必ず帰ってきます」

女リンク「…ああ」

そして子リンクは旅立った。

女リンクはその背中を見送り。

女リンク「…さて…そこに隠れているのは分かっているわ」

???「フン…」

岩陰から現れたのは、例の緑フォックスだった。

女リンク「あの子には指一本触れさせない」

女リンクは古びた剣を構え、フォックスに斬りかかる。

ドシャッ…

フォックスはそれを瞬殺した。

???「無駄なことを…初めからあれに手を出す気はない。煙草マスターのDNAを持った擬似クローン…問題なく成長しているようだな。我々の施設で教育とトレーニングを行っていればもっと早く成長できたことは否めないが……能力の継承まで進めば、実験は成功だ」

577ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:45:50 ID:08FQC6aY00





とある城。

その廊下で、ファイターたちが戦っていた。

村田「ふぅ…結構強かったわね。ニートの割には」

怠惰すぎた罰「…チッ……運動不足が…祟った…か…」

緑の道着を身に纏った格闘家が、ウルフ村田に敗北し仰向けに倒れる。

村田「リカエリス、加勢する?」

リカエ「いえ、こちらも終わったところです」

邪念侍「く…拙者が…敗れるとはな……不覚でござる…」

巨大な剣を持った黒服の剣士が、リカエリスの前に這いつくばる。

村田「黒猫は…そっちも大丈夫みたいね」

黒猫「にゃはは!オイラが虫にゃんかに負けるわけにゃいだろ!」

悪イナゴ「チクショー…」

黒猫にボコボコにされた子供姿のリンクが、城の外へ投げ捨てられる。

村田「よし、悪党は三人だったはずだから、あとはお姫様を救出して終わりね」

リカエ「はい」

三人の悪党が見張っていた奥の部屋へ、リカエリスたちは足を踏み入れる。

578ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:46:43 ID:08FQC6aY00

アーナ「きゃああああっ!!」

村田「アーナ姫!」

そこにはピンクの服を着た金髪の女性が鎖に繋がれて、邪悪なオーラに飲み込まれようとしていた。

黒猫「にゃんだぁ!?」

リカエ「この邪悪なオーラ…奴らにもあったが…一体何なのだ…?!」

先ほど倒した三人も、同様のオーラを纏っていたのだ。

アーナ「た…たす…けて…!意識が…もう……」

村田「すぐに!」

三人は駆け寄り、鎖を破壊しようとする。

しかし。


ドガッ!!


三人の前に何かが現れ、弾き飛ばした。

村田「くっ!?誰!?」

鬼神「ククク…私は鬼神だ!!」

そこに立っていたのは、緑の服を着たシーズー犬だった。

リカエ「何者だ…!獣人のようだが、フォックスともウルフとも違う…?」

村田「確か、しずえ族という種族ね…アナタの目的は何!?」

鬼神「貴様たちに教えてやる必要はない!何故ならここで消すからだ!!」

ブンッ!

黒猫「うわっ!?」

黒猫は鬼神の放った釣り竿に捕まり、引き寄せられた。

リカエ「とうっ!」

リカエリスは黒猫の影に隠れて距離を詰め、蹴りを放つ。

鬼神「馬鹿め!」


ドガッ!!


黒猫「ぐはっ!?」

鬼神は引き寄せた黒猫を盾にし、リカエリスの蹴りをかわした。

リカエ「チッ!邪魔だ黒猫!」

黒猫「はあ!?」

村田「喧嘩してる場合じゃないでしょ!」

579ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:47:48 ID:08FQC6aY00


ズバァ!!


村田は一瞬で鬼神に近づき、鋭いツメで切り裂く。

鬼神「…少しはできるようだな。ククク…だが神の力の前には無力!」

鬼神は手にグローブをはめ、村田に殴りかかった。

リカエ「はぁっ !」


ドゴッ!!


鬼神「ぐっ…」

今度こそリカエリスの蹴りがヒットした。

黒猫「せい!!」


バキッ!!


さらに黒猫のオーバーヘッドが炸裂。

鬼神「チィッ…!鬱陶しい!三対一とは卑怯な…!」

村田「神の前では無力、じゃなかったのかしら?」

鬼神「黙れ!操った三人も役に立たんし!面倒だ!ここは一旦退散する!」

パリィン!!

鬼神は窓を割って城の外に出た。

リカエ「なっ!待て!」

リカエリスが追い、窓の外を見ると、鬼神は風船によって空を飛んで逃げていた。

リカエ「…落ちろ」

チュンッ!

リカエリスはブラスターを放つ。

パンッ!

鬼神「何!?」

その弾は風船を見事に撃ち抜き、鬼神は落ちていった。

580ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:49:20 ID:08FQC6aY00

村田「アーナ姫!ご無事ですか!?」

村田はすぐにアーナの元へ駆け寄る。

リカエ「意識を失っているようですね。しかしオーラは消えた…もう大丈夫でしょう」

村田「ええ。鬼神とかいうヤツ、さっきの三人も操ってたらしいし、アーナ姫も操ろうとしてたのね、きっと」

二人はアーナを繋いでいた鎖を解き、ベッドに寝かせた。

リカエ「ん?黒猫は…?」

村田「さっきアナタが撃ち落とした鬼神のとこに走って行ったわよ。まあアレで死んだとは思えないしね」

リカエ「我々も向かいましょう。黒猫一人では危険だ」

村田「そう?」

リカエ「恐らくあの単純バカは、洗脳などされたらすぐに堕ちてしまうでしょう」

村田「…それもそうね。行きましょう」

二人は黒猫を追い、城の外へ出る。

そして案の定というべきか。

リカエ「!!」

黒猫「ニャーオ…」

黒猫は邪悪なオーラを身に纏い、二人の前に立ち塞がった。

鬼神「ククク…バカなヤツめ!鬼神たる私の前に、ノコノコと一人で現れるとはな!」

村田「あちゃー…遅かった」

リカエ「まったく…どこまでも迷惑な奴だ」


???「そこまでだ、鬼神」


全員「!!!」

鬼神「この声は…!!」

???「我は名もなきただの神…」

二足歩行の青い体のケモノが、雲を裂き、空から降りてきた。

村田「まさか…だれ神様!?」

リカエ「知っているんですか?村田さん」

村田「だれ神様は、人々の窮地に現れて、救ってくださるのよ…でも絶対に名を名乗らず、人々はだれ神様と呼んでいるの」

鬼神「クソッ…!貴様はいつも私の邪魔をする…!」

だれ神「汝の行動は目に余る。同じ神として、我が動くのは道理である。裁きを受けるがよい」


パァァァン!!


だれ神が手をかざすと、すさまじい光がその場を包み込んだ。

581ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:50:33 ID:08FQC6aY00

リカエ「何だ…!?」

鬼神「ぐああああああっ!!」

黒猫「ほにゃああああっ!?」

鬼神は苦しみ、やがて倒れた。

同時に黒猫のオーラも浄化され、消え去った。

そして光が消えると、だれ神もいなくなっていた。

リカエ「す、すごい力だ…何が起きたのかは分からんが…全てを浄化したのか…さすが神…」

村田「黒猫、大丈夫?」

黒猫「うん…なんかすごくいい気分だぞ!」

鬼神「…あれ…?ここは…一体…」

リカエ「なっ!今のを受けてまだ意識が…!?」

村田「いや…様子が変よ」

鬼神「え?え?なんですか…?どうなってるんですかこれ…」

鬼神は普通の女の子のようになっていた。

???「ボクが説明しましょう…」

リカエ「!?」

いつの間にか黒い学生服を着たメガネの少年が後ろに立っていた。

長谷川「ボクは神々が作りし長谷川。つまり、神々によって作り出された……長谷川です」

村田「つまりどういうことよ…」

長谷川「今だれ神様により浄化されたのは、鬼神の魂なのです。かつて鬼神は神々の世界を追放され、人の体を乗っ取ることで生きながらえてきました。次の器として選ばれたのがあのアーナ姫です」

リカエ「操ろうとしていたのではなく、乗っ取ろうとしていたというのか…」

長谷川「そういうことです。つまり今そこにいるのは、かつて鬼神に乗っ取られた、ただのしずえ族の少女です」

村田「そうなのね。大丈夫?立てる?」

元鬼神「あ…はい…」

村田が手を貸し、鬼神、もとい元鬼神を立ち上がらせる。

村田「アナタ名前は?」

元鬼神「わ…わかりません…何も思い出せないんです…」

村田「そっか。それじゃ身元が分かるまで、ウチ来る?」

元鬼神「へ?」

村田「居候のいる生活も慣れちゃったし、もう二人も三人も変わんないわよ。アナタたちも、構わないでしょ?」

リカエ「勿論」

黒猫「おー!人多い方が楽しいよにゃー!」

村田「…だそうだけど、どう?アナタさえよければ」

元鬼神「あ…ありがとうございます…!じゃあお言葉に甘えさせてください…」

村田「うふふ、よろしくね」

黒猫「よろしくにゃ!」

582ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:51:52 ID:08FQC6aY00

リカエ「では、そろそろアーナ姫に話を聞きに行きましょう」

村田「ああ、そうだったわね。元々そのために来たんだった」

元鬼神「どういうことですか…?」

リカエ「私と黒猫は別の世界から来たのだ。ロハスというフォックス族たちと共にな。奴らはどこかに身を潜めている。元の世界に帰るためには、奴らの居場所を突き止めなくてはならない」

村田「アーナ姫には預言の能力が備わっているって聞いたから、もしかしたら何か分かるんじゃないかと思ってね。それでこの国を訪ねて来てみれば、悪党たちに城を占拠されてて…ほんともう驚いたわよ」

黒猫「ま、オイラたちにかかれば楽勝だったけどにゃ〜」

元鬼神「な、なるほど…」

リカエ「…む?さっきの長谷川という男がいないぞ…」

村田「あらほんと。まあ神様の使いみたいな人だったし、消えもするわよ。それよりさっさと行きましょ」

リカエ「…はい」

それから四人は、再びアーナの部屋へ。



アーナ「はっ…わたくしは、一体何を…」

村田「アーナ姫、目を覚ましたんですね。具合はどうですか?」

アーナ「特に…問題はありません。あなた方は、先ほどわたくしを助けに来てくださった…」

村田「アタシはウルフ村田です。こっちはリカエリスと、黒猫。そして…」

アーナ「ひっ…!」

アーナは元鬼神の顔を見て青ざめる。

村田「安心してください。彼女は鬼神に体を乗っ取られていただけです。もう鬼神の魂は祓われました」

アーナ「そ、そうなんですか…?」

元鬼神「は、はい…!わたしはただのしずえです…!」

アーナ「…そう…みたいね…」

ぱたっ

アーナはまた倒れた。

リカエ「アーナ姫!」

村田「さすがに疲れてるんじゃないかしら。しばらくそっとしておきましょ。ここはアタシが見ておくから、アナタたちは外に捕まえてる三人の通報をお願い。操られてたとはいえ、アイツら元々悪者だから」

リカエ「了解」

そしてリカエリスたちの通報により、怠惰すぎた罰、邪念侍、悪イナゴの三人は連行された。

結局この日アーナは目を覚まさず、ウルフ村田を護衛につけ、リカエリスたちは街の宿に泊まった。

583ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:53:23 ID:08FQC6aY00



翌日、再びアーナの元へ。

リカエ「村田さん、アーナ姫の容体は?」

村田「まだ目を覚まさないわ。さすがに遅すぎる。何か後遺症があるのかもしれない」

リカエ「後遺症?」

村田「考えてたの。鬼神自体は祓われたけど、アーナ姫の体を乗っ取ろうとしていた時に、包み込んでいたオーラ…もしあの時すでに鬼神の魂の一部が入っていたとしたら…」

リカエ「…確かに、だれ神が放った浄化の光は、この部屋で寝ていたアーナ姫には届いていなかったかもしれません…まだアーナ姫の中に鬼神の魂が残っている可能性はありますね」

元鬼神「な、なんかごめんなさい…」

村田「アナタが気にすることじゃないわ。それより、この仮説が正しいとしたら、アーナ姫を浄化する方法を探さなきゃ」

黒猫「ふぁ〜あ…よくわかんにゃいにゃ。オイラ寝てていいか?」

村田「それじゃあ黒猫はしずえさんと一緒にここで見張っててくれる?もしかしたら目覚めるかもしれないし。アタシとリカエリスは浄化について少し調べてみるわ」

黒猫「はいはい…」

元鬼神「分かりました…!」

そしてリカエリスたちは城の外に出る。

リカエ「浄化…お祓いというのであればやはり寺や教会でしょうか…この世界にありますか?」

村田「ええ。お祓いのできるところを調べてみるわ」

そう言うと村田は携帯端末を使って調べた。

村田「この街の南にあるみたいね。行ってみましょう」

584ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:54:24 ID:08FQC6aY00



そして二人はとある寺に来た。

しかし。

村田「えぇ…」

リカエ「これは…」

ゴォォォォ…

盛大に燃えていた。

ピーポーピーポー…

サイレンが忙しなく鳴り響く。

寺の周囲では消防車が消火活動を行い、野次馬も集まっている。

???「いやー…やっちゃったわ…」

ピンクの服に緑の髪を持った、女神のように美しい女性が、無の表情で寺を見つめていた。

リカエ「この寺の方ですか?」

???「あ、うん」

村田「この火事は一体…」

???「えっ、聞いちゃう?それはねー、まあ、なんというか…タバコ的な?アレを、まあね、寺の中で吸ってた人がいてね、うん。そしたら火がちゃんと消えてなかった的なやつでね?木造だからね、うん」

リカエ「火の不始末ですか…」

村田「それはご愁傷様です。ひどい人もいるものですね」

???「うっ…うーん、まあそれが、私なんだけど」

村田「何やってるんですかアナタは…」

???「てへぺろ⭐︎」

村田「てへぺろってる場合か」

リカエ「…さすがに今はお祓いを頼める状況ではありませんね。村田さん、他を当たりましょう」

村田「そうね…」

???「お祓い?それならお安い御用だよ!」

村田「えっ?でも…」

???「大丈夫だよ!火事はもうどうしようもないし!ここにいても私にできることは何もないし!」

リカエ「どこが大丈夫なんですか…」

???「ふっふん!私は念仏てへぺろ!生まれながらに神に愛された、天才僧侶だよ!」

585ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:54:59 ID:08FQC6aY00

村田「ア…アナタが…?」

念仏「何そのめちゃくちゃ疑った目は!」

村田「いやそりゃそうでしょ…」

念仏「そりゃそうか。てへぺろ⭐︎」

リカエ「……しかし、事実ならばすぐにお願いしたい。アーナ姫が危険なのだ」

念仏「え!?お姫様が!?」

村田「かくかくしかじか…というわけなの」

念仏「なるほど…そんなことが起きてたんだ…!すぐ行こう!お姫様心配!テレポート!」

念仏てへぺろは消えた。

村田「すごい…判断が早い…」

リカエ「テレポートとは…彼女もファイターなのでしょうか。ともかく、我々も戻りましょう」

村田「ええ」

586ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:56:31 ID:08FQC6aY00



リカエリスたちは城へ戻ってきた。

元鬼神「えっ?誰も来てないですけど…」

村田「嘘っ、なんで?」

リカエ「テレポートなど使えるなら、我々より先に来ていると思ったのだが…」

すると。

シュタッ…

部屋の中に念仏てへぺろが出現した。

念仏「ごめん!間違えて別の城にテレポートしちゃった!てへぺろ⭐︎」

村田「…アナタやっぱりものすごいアホ?」

念仏「失礼な!天然なだけ!」

リカエ「一緒なのでは…」

村田「とにかく、アーナ姫を見てみてくれる?」

念仏「あ、はい。わっ!やば!とんでもない邪念が取り憑いてるよ!さっき言ってた鬼神の仕業だねこれは!」

村田「そんな一目で分かるほどなの?」

念仏「んー、それはどうかな。さすがに鬼神っていうかぁ、うまいこと隠れようとしてるからね。並の僧侶なら見逃しちゃうかもしれないなー。でもほら、私ってすごい天才だから!私の種族はパルテナ族って言って、先祖のパルテナ様はなんと女神様なのだ!」

リカエ「神の子孫…この世界ではそんなこともあるのか」

村田「なんとかなりそう?」

念仏「任せてよっ!神の子孫である私を信じて!」

てへぺろはてへぺろしながら親指を立てる。

てへぺろ本人を除くその場の全員が不安しかない中、てへぺろはお祓いの念仏を唱え始めた。

587ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:57:32 ID:08FQC6aY00



それから数時間が過ぎ。

念仏「ふぅっ…終わった!」

リカエ「おお!」

村田「これで鬼神は完全に祓われたのね!やるじゃない!」

念仏「あ、いや、そのー、そうじゃなくてね…失敗しちゃった!てへぺろ⭐︎」

村田「はぁ!?」

念仏「いや、だって、邪念が強すぎて、お姫様の魂とがっちり結合しちゃってるんだよ!これもうどうしようもないやつだよ!」

村田「終わったってそういう意味!?」

リカエ「なんとかならないのか?」

念仏「無理無理カタツムリだね。念仏ごときじゃびくともしないよこれ」

村田「ごときとか言うな」

リカエ「しかし、どうしますか?放っておくわけにもいきませんし…」

村田「他にお祓いできる人がいないか探すしかないわね」

念仏「無理だってばー。私の念仏で祓えないやつが他の人に祓えるわけないよ」

村田「うーん…」

ばんっ!!

???「無事か!アーナ!」

白い布で顔を隠した、紫の忍者のような男が、扉を勢いよく開けて入ってきた。

リカエ「誰だ!?」

リカエリスは咄嗟にその男の前に立ち塞がった。

黒猫「にゃんだオマエ!」

寝ていた黒猫も起きて、戦闘態勢をとる。

???「貴様らこそ誰だ!俺は壊す合体!アーナの友人だ!」

リカエ「友人だと?」

合体「守衛から連絡があったぞ!悪党にアーナが捕まったと!貴様らがその悪党か!?」

村田「いや、悪党たちは昨日アタシたちが鎮圧しましたけど…」

合体「なんだと!?それはありがとう!」

元鬼神「素直…」

黒猫「にゃんだ…敵じゃにゃいのか…つまんねー…」

黒猫はまた寝た。

588ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:58:19 ID:08FQC6aY00

リカエ「しかし、かくかくしかじかで、困っているのだ」

合体「なっ…そ、それじゃあアーナはもう目覚めないと言うのか!?」

念仏「んー、たぶんね。目覚めるとしたら、鬼神に乗っ取られた時かも」

合体「何!?」

村田「乗っ取られるってどういうこと?鬼神の本体は消えたはず…」

念仏「いや、ほとんどないと思うよ?ないとは思うけど…鬼神の魂がお姫様の魂を吸収して、復活するみたいな展開あるあるじゃん?もし目覚めるパターンがあるとしたらそれかなって思っただけ」

村田「…要するに目覚めないってことね…」

合体「くっ…なぜアーナがこんな目に…!!神よ!なぜアーナを助けないのだ!」

念仏「神様がそう簡単に下界に降りてくるわけないでしょ!女神の子孫であるこの私ですら会ったことないのに!ケチ!村田さんたちずるい!」

リカエ(…そういう心持ちだから現れないのでは…)

村田「でも、確かに不思議ね。だれ神様はとても慈悲深い神様として有名だし、アーナ姫の中にいる鬼神の魂に気付かなかったとも思えない。どうしてあの時、一緒に祓ってくれなかったのかしら」

念仏「そりゃ神様だって万能じゃないよ。なんでもできるならこの世界はもっと平和なはずじゃん?」

リカエ「下界にいられる時間が限られているとか…?神のルールのようなもので」

元鬼神「…もしかしたら、あえて残したのかも…」

村田「あえて?」

元鬼神「あっ、いや、ただのわたしの考えですけど…神様って、人々に試練を与えるっていうじゃないですか。だから、これもそうなのかなって…」

合体「試練だと!?ふざけやがって!アーナの命がかかっているんだ!」

元鬼神「ご、ごめんなさい…!」

リカエ「しかし、こんな言葉がある。神は乗り越えられない試練は与えない」

村田「フフ、そうね。さ、無いものねだりしてる場合じゃないわ。他に方法がないか探しましょう!」

合体「チッ…貴様らはアーナと赤の他人だからって気楽なもんだな!!だが助けてくれたことには感謝してるし、解決に向けて前を向く姿勢はいい!怒鳴って悪かった!」

村田「すごい急カーブみたいな話し方するわねアナタ…」

リカエ「まあ名前からして急カーブしていますし…」

589ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 17:59:28 ID:08FQC6aY00




それから数日。

いろいろな場所でお祓いを頼んだが、そのほとんどは「念仏てへぺろでも祓えないなら、ウチでは無理だ」と断られた。

ごく僅かに依頼を受けてくれた者たちも、やはり祓うことはできなかった。

村田「アナタ…ホントにすごい僧侶だったのね…」

念仏「疑ってたの!?」

村田「いや、信じてたわよ?三割くらいは」

念仏「七割疑ってたの!?過半数!!」

リカエ「しかし困りましたね。ここまでアテが外れるとは…」

元鬼神「アーナさま、点滴で命は助かっていますけど…このまま一生寝たきりなんて、かわいそうです…」

黒猫「そうか?オイラは寝てるの幸せだけどにゃー」

村田「そういうこっちゃないでしょ…ごはんも食べられないのよ?」

黒猫「にゃにっ!?それはイヤだにゃ!早く助けてやろう!」

村田「うん、だからその方法を探してるわけで」

合体「貴様らッ!!」

村田「わぁっ!?何よいきなり」

合体「貴様らなぜ…なぜここまでしてくれるんだ!?元の世界に帰る手掛かりを探すだけなら、アーナでなくとも預言者や探偵はいるはずだ!」

村田「何言ってるの。困ってる人放っておけるわけないじゃない」

元鬼神「ですよね…!」

リカエ「フォックスの名の下に、私は正義を貫くだけだ」

黒猫「オイラは難しいことはわかんにゃいけど、みんなといっしょにいるのは楽しいぞ!ごはんくれるしにゃ!」

合体「き、貴様らっ…!なんていい奴らなんだ!!」

念仏「わ、私ももちろんそんな感じだよ!?決して寺に帰って叱られるのがイヤだからとかじゃないよ!?」

村田「そんなんだから疑われるのよアナタ…」

590ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 18:00:00 ID:08FQC6aY00

元鬼神「そう言えば、皆さんが外に出てる時に、てへぺろさんのお寺の方から連絡がありました。てへぺろのことをよろしくお願いします、って」

念仏「え?えーっとつまり…クビってコト!?」

リカエ「…まあ不思議ではない」

村田「そうね。故意じゃないとはいえ火災を起こした挙句、数日間サボってるんだもんね…」

念仏「そ、そんなぁ〜!」

元鬼神「いえ、違います」

念仏「ちがうんかい!」

元鬼神「てへぺろさん素行は悪いけど、その才能はお寺の皆さんも尊敬してるみたいですよ。迷惑をかけるかもしれませんが、しばらくよろしくお願いしますって言ってました」

村田「あら、さすがお坊さんねぇ。慈悲深い。これは謝りに帰らなくちゃね」

念仏「良かった〜!ビビって損したよまったくもう!そりゃこの天才を手放すわけないよね!」

リカエ「お前という奴は…」

念仏「てへぺろ⭐︎」

村田「ダメだこりゃ」

黒猫「でも天才なら鬼神祓えるんじゃにゃいのか?むにゃむにゃ…」

村田「だからそれができないから困ってるのよ…いいからアナタは寝てなさい」

黒猫「ん、そうか。おやすみ…」

念仏「…」

てへぺろは黒猫の顔を見て、急に何か考え込む。

村田「…?どうしたの?」

念仏「あっ、思い出した!!」

村田「何を?」

念仏「すごい人!いたんだよ!昔うちの寺にいたけど、いなくなっちゃった人!」

リカエ「すごい人…?」

念仏「お祓いって結局外から働きかけることしかできないでしょ?でもその人は精神を他の人の中に送り込むことで、内側からその魂を浄化するすごい技を持ってたんだ!」

合体「何だと!?そいつはどこにいるんだ!?」

念仏「いや、それは知らないけど」

リカエ「寺の人間なら知っているかもしれんな。行くぞ」

念仏「えっ!?行くの!?ちょっと待って、まだ心の準備が…!」

村田「さっきのてへぺろ精神はどうしたのよ。もうこの際開き直りでもなんでもいいからとにかく来なさい」

念仏「やだー!!」

リカエリスと村田は暴れるてへぺろの両脇を抱えて引きずっていった。

591ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 18:01:15 ID:08FQC6aY00



そして数十分後。

坊さん「…なるほど。確かに彼ならば可能性はあるかもしれません」

リカエ「本当ですか!その方は今どこに?」

坊さん「やるべきことがあると言ってこの寺を去り、別の星へ行きました。もう五年近く前のことです。それ以来連絡は取れていません」

村田「別の星って…じゃあその人は宇宙で活動してるの?」

坊さん「はい。なぜなら彼はファ…」

???「そう、俺は宇宙を股にかける、キャプテン・ファルコンの末裔だからさ!」

全員「!?」

そこに現れたのは、ファルコン族だった。

坊さん「お、おサルさん!」

おサル「久しぶりだな!」

村田「おサルさん…?人間じゃない、どう見ても…」

おサル「フッ、俺はガキの頃ケンカばかりしてた不良だったんだが、サルのようなアクロバティックな戦法から、"サル"と呼ばれていてな。他人の精神に共鳴し入り込む能力…通称"シンパシー"と合わせて、今じゃ"シンパシーおサルさん"と呼ばれてる」

リカエ「ファルコン族は動物の名前でなければならんルールでもあるのか…」

おサル「ちなみにこの寺に身を置いたのも更生のためだ。そして能力も修業の中で身につけた」

坊さん「一体今まで何をされてたんですか?」

おサル「ある星でずっと除霊をしていたのさ。失敗してしまったがな」

坊さん「おサルさんが失敗…!?いったいどんな霊だったんですか!?」

おサル「とてつもない邪念を持っていてな。そいつは伝染するんだ。取り憑かれた者は全員"死体を愛する呪い"にかかってしまい、そこらじゅうで殺し合いが始まった。さすがの俺も除霊が間に合わず、星から逃げ帰るしかなかった」

坊さん「ではその星は…」

おサル「ああ…今じゃ完全にあの邪念が支配し、"ネク◯フィリア星"と化しているだろう…」

村田「ごめんちょっといいかしら?」

おサル「ん?ああ、お前たち、アーナ姫を助けたいとか言ってたな」

村田「聞いてたのね。そう、アナタに力を貸して欲しいの」

おサル「いいが、俺の除霊は高くつくぞ?」

村田「アタシはそんなお金持ってないけど…まあアーナ姫はお姫様だし、ポンと出せるんじゃないかしら」

おサル「フッ、そりゃ確かに。ならば霊を祓った後で、しっかり頂戴するとしよう」

村田「受けてくれるのね!ありがとう!」

おサル「…時に、あの天才小娘はどうした?」

村田「てへぺろのこと?」

坊さん「今は反省のため滝に打たれてます」

おサル「フッ、また何かやらかしたのか?変わってないな、あいつも」

坊さん「タバコの不始末で火災を起こしました」

おサル「いや変わったな!さすがに行きすぎだろ!」

坊さん「幸い怪我人もなく寺もほとんど無事ではありますが…」

おサル「着いた時から若干焦げ臭いとは思っていたが、そういうことだったとは…」

リカエ「とりあえず彼奴は寺の皆さんに任せて、我々はアーナ姫のところへ戻りましょう」

村田「ええ」

592ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 18:02:12 ID:08FQC6aY00



それからリカエリスたちはおサルさんを引き連れ、再びアーナの部屋へ。

おサル「アーナ姫…本当にすごい邪念を感じるな。あのてへぺろが祓えなかったというのも頷ける」

村田「いけそう?」

おサル「さて、どうかな。外側から見るのは苦手でな。姫様には申し訳ないが、精神の中に入らせてもらう」

するとおサルさんは座禅を組み、手を合わせて念じる。


しばらくして。

おサル「はっ…!」

おサルさんは滝のような汗をかいて、目を開けた。

リカエ「やったのか!?」

おサル「いや…ダメだ。結びつきが強すぎる。このまま俺のパワーで攻撃すれば、恐らくアーナ姫の魂ごと壊してしまう…」

リカエ「なっ…」

合体「ふざけるな!貴様が頼みの綱だったんだぞ!」

おサル「…お前…アーナ姫の血縁か?」

合体「あ?!そうだが!?」

元鬼神「えっ?友人だって言ってましたけど…」

合体「はっ!しまった!!」

村田「何か事情がありそうね」

合体「チッ…そうだよ!!俺はアーナの双子の兄だ!!俺たちの一族は代々姫となり女王となる運命なのだ!だから男として生まれた俺の存在は隠蔽された!!それが何だ!俺には何もできないっ!!アーナを救う力のない俺には、貴様たち霊能者に縋るしかないんだ!!無力な自分への苛立ちをぶつけてしまった!すまない!!」

おサル「…いや…いけるかもしれんぞ」

合体「何!?」

村田「どういうこと?」

おサル「俺のシンパシー能力は基本的に自分しか入れないが、対象の血縁者ならば、共に入ることが可能なんだ」

合体「なるほど!だがそれでは何の解決にもならないんじゃないか!?俺なんかが入ったところで…」

おサル「いや、だからこそだ。俺のパワーでは強すぎて魂ごと破壊してしまうが…お前のパワーならば、上手く鬼神のみを攻撃できる!」

合体「そうか…!!俺にもできることがあったか!よし!早速やろう!」

おサル「ああ!」

おサルさんは壊す合体の手を握り、再び座禅を組む。

593ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 18:03:06 ID:08FQC6aY00



合体「…はっ…!こ、ここがアーナの中か…!?」

二人は真っ白な空間にポツンと現れた。

おサル「そうだ。そしてあそこに光っているのが、アーナ姫の魂だ」

合体「!!」

二人の少し先に、光の玉が浮いていた。

だがその魂の光はとても弱く、周りには黒い影がうごめいている。

おサル「あの影がアーナ姫に取り憑いた鬼神の魂…あれを消し去ることで除霊は完了する」

合体「消し去ると言っても、どうやって攻撃するんだ?あれはどう見てもただの影だ…普通の攻撃は通用しない」

おサル「フッ、そのための俺だろう」

おサルさんはその影に向かって右手をかざし、左手は祈りのポーズを取った。

そして念仏を唱え始める。


ズズズズズ……!


すると影は実体化し、アーナの魂に絡みつく手のような形になった。

合体「これを攻撃すればいいんだな!?よし、任せろ!アーナ、今助けてやるからな!!」

シャッシャッシャッ…

合体は腕を細かく振りながら、その指先に針を取り出していく。

合体「とうっ!」


ズダダダダダッ!!


掛け声と共にその針を撃ち出す。

影「ギャァァァァァ!!」

おサル「いいぞ!その調子だ!」

合体「はっ!」


ドガガガッ!!

ズダッ!!


さらに手技足技を連続で繰り出し、影にダメージを与えていく。

合体「トドメだ!!アーナの苦しみを、次は貴様が受ける番だっ!!」

おサル「はっ…!いかん!待て!」

おサルさんは何かに気付いて制止するも、忍者のごとき合体のスピードは止まらず。


ドゴォッ!!!


合体は壊した。

その蹴りの一撃は、影を貫通し、アーナの魂をも砕いたのだ。

594ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 18:03:53 ID:08FQC6aY00



アーナの外では。

元鬼神「えっ?」

村田「どうしたの?」

元鬼神「う、嘘……アーナさんの脈拍が…止まった…!息もしてません…!」

リカエ「何だと!?」

村田「ま、まさか失敗したの!?」

元鬼神「そ…そんな…」



合体「……!!お…俺は一体何を…!!」

おサル「…邪念に当てられたんだ…あれ程強い邪念に何度も触れ続ければ、精神にも影響を及ぼすことがある。すまなかった…!俺の考えが甘かった…!」

おサルさんは深く頭を下げる。

合体「…俺が…アーナを……こ、殺したのか……?」

粉々に散ったアーナの魂を、合体は呆然と見つめる。

おサル「くっ……なんてこった…本当に俺という男は…!こんなミスをするなんて!…魂が壊れたら俺たちも…ここから出ることもできん…!」

合体「ダメだ…!認めんぞ!!死ぬなアーナっ!!」

合体はその魂の欠片たちをかき集める。

おサル「無理だ…壊れた魂は、そんなことで戻りはしない…」

合体「勝手に決めるな!!俺は諦めん!!」

ズアッ!!

合体が叫ぶと、同時にその体から風が吹き出した。

おサル「ぐっ…!なっ…何だ…?この…エネルギーは…!?」

合体「俺は……"壊す合体"だァーーー!!」


ギュオオオオオッ!!!!


合体の両手が輝き、魂が一箇所に集まっていく。

パァァァッ!!

そして、アーナの魂は元の球体となり、眩い輝きを取り戻した。

おサル「馬鹿な…!魂が復活した…!」

合体「アーナ…!やった…のか…俺は…」

ガクッ…

おサル「おっと」

おサルさんは倒れかけた合体を咄嗟に支える。

おサル「とりあえず出るか」

おサルさんが手を合わせ、目を瞑り念じると、アーナの精神世界から消えた。

595ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 18:05:17 ID:08FQC6aY00



元鬼神「えっ?ア、アーナさんの脈が回復しました!」

村田「ホント!?良かった!」

合体「はっ!?」

現実世界の合体とおサルさんが目を開ける。

村田「あ、戻ってきた」

リカエ「アーナ姫の中で一体何が起きていたんだ?」

合体「それは…自分でもよく分からないんだ…」

おサル「驚いたぞ、本当に壊れた魂を合体させるとはな…!アーナ姫は特殊な能力の持ち主…その双子の兄であるお前にも、元々才能が眠っていたんだろう」

合体「俺の…能力…?」

おサル「壊す合体…その名の通り、壊したものを合体させる能力といったところか。言霊というのを知ってるか?言葉が持つ霊力のことだ。念仏もその一つ。その言霊の中でも、最も強い力を持つのが"名前"だと言われている。お前が自分の名前を叫ぶと同時に、アーナ姫の魂を合体させたいと強く願ったことで、言霊が呼応して、能力が覚醒したんだ」

村田「なになに、どういうことなの?ちゃんと説明しなさいよ、アーナ姫さっき脈止まってたんだから!」

おサル「ああ、すまん。実はかくかくしかじかで…」

合体「そんなことよりアーナは無事なのか!?」

と、その時。

アーナ「……うぅん……」

アーナが目を開けた。

合体「アーナ!!」

アーナ「が…合体…?それに…みなさん…?わたくしは何を…」

合体「もう大丈夫だ!全部終わったんだ!何も心配いらない!」

ギュウッ!

合体はアーナを抱き締める。

アーナ「えぇ?もう…何が何だか…」

おサル「アーナ姫にも説明しておこう。かくかくしかじかで…」

念仏「やっほー!どう!?上手いことお祓いできた!?」

そこに念仏てへぺろが入ってきた。

村田「ちょっとてへぺろ!ノックくらいしなさい!一応ここお姫様の部屋なのよ?」

リカエ「というか滝行はどうした?」

念仏「逃げてきちゃった。てへぺろ⭐︎」

村田「アナタねぇ…」

念仏「…え?何これ!?」

てへぺろはアーナを見て驚く。

村田「そうよ、除霊は成功したわ。おサルさんと壊す合体の力で…」

念仏「離れてっ!!」


バキッ!!


合体「ぐはっ!?」

てへぺろは突然杖を使って合体を弾き飛ばした。

596ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 18:06:00 ID:08FQC6aY00

村田「ちょ!何してんのアナタ!」

アーナ「が、合体!大丈夫ですか!?」

合体「あ、ああ…」

念仏「あれ?普通だ…」

おサル「何か感じたのか?」

念仏「お姫様の中にまだ鬼神の気配があるような気がして…うーん…?いや…違う?お姫様自体が…?」

おサル「鬼神の魂は確かに破壊されたはず…いや、まさか…」

合体「あ…あの時アーナの魂と共に壊した鬼神の魂が…混ざってしまったのか!?」

アーナ「え?…え?」

念仏「どういうこと?」

おサル「かくかくしかじかで…」

念仏「…なるほど…確かにそんな感じだ。取り憑いてるって言うより、アーナ姫自体から邪念が出てるみたい」

合体「は、祓えないのか!?」

念仏「まー無理だね。魂が完全に合体してるから」

合体「そんな…!!」

アーナ「まあまあ…わたくしは何も感じませんよ。特に体に違和感もありませんし」

おサル「だろうな。邪念はもはやアーナ姫の一部だ。アーナ姫が自らの意思で邪念を使おうとしない限り、奥底から出てくることはないだろう」

村田「良かったじゃない。アーナ姫はそんなことしないでしょ?」

アーナ「もちろんです。合体、助けてくれてありがとうございます」

アーナは合体の頭を優しく撫でる。

合体「アーナァァ…うぉぉ…き、貴様ら、あでぃがどう!!」

合体は安心し、号泣し始めた。

アーナ「皆さんも、本当にありがとうございました」

アーナは深々と頭を下げる。

おサル「気にするな。まあ除霊代は頂くがな」

アーナ「あ、はい。いくらでしょう?すぐにご用意します」

おサル「今回の場合だと…これくらいだな」

おサルさんは携帯端末の画面に金額を提示した。

アーナ「えっ?これだけでいいのですか?」

おサル「フッ、俺一人では成し得なかったからな。気が引けるというなら、そこで泣いてる兄貴に礼をしてやってくれ」

アーナ「…はい。ありがとうございます」

念仏「それって私ももらえるのかな?」

アーナ「あ、勿論…」

おサル「いや、結構だ。コイツにはお代はいらないと寺の者から言われてる」

念仏「えぇっ!?しょんなぁ〜!」

村田「アタシたちからもちょっといいですか?アーナ姫」

アーナ「はい、何でしょう?」

リカエ「あなたの力をお借りしたいのです」

アーナ「わたくしの力…預言のことですか?」

リカエ「はい。私と黒猫は別の世界から迷い込んだ存在。元の世界に帰るために、探して欲しい者がいるのです」

アーナ「…分かりました。すぐに準備しますね」

村田「あら話が早い」

アーナ「皆さんは命の恩人ですから。わたくしにできることならなんでもさせてください」

黒猫「じゃあごはんくれ!」

リカエ「何一つ協力しとらん奴がなぜ真っ先に…」

アーナ「ふふ、ぜひ。皆さんも食べていってください。大変だったのでしょう?」

合体「お前もだアーナ。ずっと寝たきりだったんだ。こいつらへのお礼なんかより、まずお前が元気になることだけ考えろ」

村田「フフ、そうね。アタシたちったら気が利かなくてごめんなさい」

アーナ「それでは食事にしましょう」

それから使用人たちが現れてリカエリスたちを広間へ案内した。

597ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 18:06:55 ID:08FQC6aY00



食事の後。

アーナ「皆さん、満足していただけましたか?」

黒猫「うん!めちゃくちゃ美味かったぞ!」

村田「さすがに王族に仕えるシェフが作っただけあるわね。こんなに美味しいもの食べたの初めて」

元鬼神「ごちそうさまでした…!」

アーナ「それではここで暫しお待ちください」

アーナは席を立ち、広間を出た。

黒猫「ん?まだにゃんかあるのか?」

念仏「デザートかな?」

合体「少しは遠慮しろ貴様ら!」

しばらくして。

アーナ「お待たせしました」

アーナは美しいドレスを身に纏って戻ってきた。

元鬼神「わ…キレイ…」

おサル「その衣装はもしかして…」

アーナ「はい。預言を行うための礼装です。リカエリスさん、こちらへ」

リカエ「はい」

リカエリスはアーナの前に立つ。

村田「預言の儀式が始まるのね」

アーナ「目を瞑って…あなたの探している人の顔を思い浮かべてください」

リカエリスは黙ってそれに従う。

アーナはリカエリスの目の前に手をかざし、自身も目を閉じる。

598ハイドンピー (ワッチョイ 92bf-288e):2023/07/16(日) 18:07:24 ID:08FQC6aY00


しばらくして。

アーナ「ひっ…!!」

小さく悲鳴を漏らした。

合体「どうしたアーナ!」

アーナ「だ、大丈夫です…!少し驚いただけ…」

リカエ「何が見えたのですか?」

アーナ「凄惨な光景です…これは…戦争…?激しい血飛沫と…地面には大量の遺体が横たわっています…」

おサル「どこかの紛争地帯に潜んでるってことか」

アーナ「…しかし…それにしては…正気ではないと言いますか…」

村田「戦いなんてそういうものですよお姫様」

アーナ「いえ、そうではなく…!この戦いからは、理由が見えないのです…国や組織ではない、個人単位の殺し合い…?敵も味方もなく、最後の一人になるまで…」

おサル「…もしかしてそれは別の星じゃないか?」

アーナ「…はい…場所は……東の空に見える星…!」

ガクッ…

合体「アーナ!」

膝から崩れ落ちたアーナを、合体が咄嗟に支える。

アーナ「大丈夫…少し疲れただけです」

リカエ「アーナ姫、ありがとうございます。ゆっくり休んでください」

アーナ「ええ…」

合体がアーナを部屋へ運んだ。

おサル「…やはりか」

村田「どういうこと?知ってるの?」

おサル「寺で話しただろう。俺が宇宙で何をしていたか」

リカエ「まさか…!」

おサル「ああ。アーナ姫は見たのは恐らく……"ネク◯フィリア星"だ」


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