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【RP】聖ルーアン大聖堂

23イレール・ヴュイヤール:2014/10/23(木) 23:00:06
【イレール・ヴュイヤール 人類種?/青・黒・赤/黒色の礼服】
「私はてっきり、『神様なんて非科学的なことは信じない!』とでも…」

運転席の助手が私に声をかける。

「別に信じていないわけじゃない…けど、科学的に調査しようがないのだから、科学的な問題として考えるのなら見なかったことにするしかないですし…」

もっとも、神様を「科学的な調査」という人間の尺度で測ること自体が神学者や敬虔な信徒からみれば信じられないほど不信心なのかもしれない。
しかし、一般人全体の問題として宗教の信仰心が薄れているのだから、科学者に限った問題ではない。
むしろ、彼女自身は教会の礼拝に参加する方が多い。
もっとも、“あちら”の世界は何かの記念日や教会でイベントが開催された日ぐらいではあったが、
しかし、今回は研究所の近くの田舎の小さな教会ではなく、わざわざクロン共和国における聖教の拠点である聖ルーアン大聖堂まで来たのはやはり、何か思うところがあったからであった。

…結局、あの相手は一体誰だったのだろうか。
自分を殺そうとする相手と立ち会うのは慣れない。

もっと戦場を経験することがあったら慣れるのだろうか…それはとても不幸な生活だろうが。
気が付いたときには病室のベットで横になりながら、天井のシミを数えていた。
後の調査で相手の痕跡から大凡の相手の見当はついた…がそれだけだった。
それ以上の調査は難しかったし、誰もそれ以上の情報を知ることを望まない。
そして、彼女は今までと同じように仕事に戻った。

…「そういえば、あの時にとっさに神様に命乞いをした」とふと思い出したのがきっかけだった。
半ば惰性と化した教会の礼拝からは特に何も感じることはなかったし、正直に言えば、戦闘に勝利できたのは単なる偶然に過ぎないかもしれない。
それに彼女自身の仕事を考えると、どちらかというと神様の奇跡を受けるというよりも、神様の罰を受ける可能性が高いと思っていた。
それでも、妙なところで律儀な自分もいた。
それに、実際的な利益もある。
大量の消費や雇用が生み出されるとはいえ、自分の裏庭に、しかも、世界各地から遺体を集めているという怪しげな噂が流れている研究所が建設されるのを支持する住民は少ない。
本社が中央政府にも、現地の地方政府の小役人たちにも金を握らせてはいるだろうが、田舎も…現地の住民の歓心を買うことも忘れてはならない。
クロン共和国のようなインターネットやマスメディアが発達している民主主義国家では特にそうだ。
田舎も…現地の住民から今も尊敬を集めている教会に多額の資金を寄付することもその一つで、所謂「企業の社会的貢献」という話だ。

「あれ、この辺りは駐車場はないのかな…」

隣でカーAVCを操作して、駐車場を探している助手を横目に私は自動車の外の風景を眺めていた。
カーAVCを操作しながらアクセルを踏むわけにもいかないようで、歩道を早歩きで進んでいた人間にも追い抜かされるような速さだ。

ふと、白く輝く聖ルーアン大聖堂の前に広がる庭園を眺めた。
礼拝の時間とは少しずれているからなのかもしれないが、人気はほとんどなく、庭園の片隅に三人の女性たちがティーテーブルを広げて、ティータイムと思しき時間を過ごしていた。
彼女たちは少女と呼ぶには少し年齢を過ぎているようにも見えるが、一方で淑女というには少し年齢が足りないようにも見える。
いずれにせよ、彼女たちが一体何歳かは知らないが、見た目麗しい女性たちであるには変わりはない。
だから私にとっては彼女たちのような相手は目に痛かった。

光が照らさない真っ暗闇の世界ならきっと、誰もその世界が「真っ暗闇」だとは認識できないだろう。
相手がいなければ、相対的に自分を評価できない。
容姿やお金、家柄や才能といった部分だけではない。
生まれついての性格だとか、何か人間性とでもいうべき形容しがたい部分で既にどうしようもない。
そういったことが一目で読み取れるというだけで私と彼女たちにはまるでこの星の反対側にいるような差を感じる。
そのくせ、妙なところで対抗心とでもいうか、そういった相手に近づいてみようとしては失敗して、自分の立場をすっかり思い知らされるという繰り返しばかり。
それが哀しかった、厳しかった。

もしも、私の人生が平均的にというか、ごくまともに推移していたなら、今頃は…

私は急に吐き気を催すと、それを抑えるように頭を俯けて、口を手で覆った。

「だ、大丈夫ですか?」

助手の声が私を現実へと引き戻す。

「…いや、車酔いしただけです」

24クロン共和国 ◆xdszxH5rLE:2014/10/24(金) 21:24:33
【ジャスリー・クラルヴェルン 魔族種(夢魔)/青黒/儚き美女】

 お花畑にて。
 当たり前のようにアンゼの膝枕に頭を載せて。
 遠くから響く鐘の音を聞きながら、いつものように微睡みの誘いを迎える。
 睡眠欲は人間の持つ欲望の中で、もっとも抗しがたいもの。
 人のみならずあらゆる動物が、植物が抱く根源的な欲求。
 人は百年足らずの歳月のうち、三十年を睡眠に費やすの。
 身体はその人を眠らせるために、オピオイドを分泌するの。
 人は皆その麻薬の中毒者。眠るということは幸せなこと。

「そうね…懐かしいわ」

 思いを馳せる。遠い遠い記憶。私は高貴なる魂を永遠に誘った。
 運命と言葉を操って。魔の血の呪いで縛り、騙して陥れて。
 そうして今アンゼはここに。
「私を恨んでいる?」なんてことは聞かない。
 この膝枕で一千年の安眠を贈ってくれたのがその答え。

「フローラはもう行ってしまった? あの堕天使も。そう…ふふ。アンゼ、では改めて。お久しぶり。幾星霜の時を越えても、人が幾つも世代を重ねても、国が興りそして滅んでも、箱庭が生まれそして死しても、変わらず愛してるわ」

 自然に笑みが浮かぶ。アンゼの膝枕で私は眠って、また目を覚ましたとき、私は生まれ変わる。元気で華やかな、もう一人の私に。哲学の時間はそろそろおしまい。


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