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【RP】聖ルーアン大聖堂

1クロン共和国:2014/09/25(木) 21:16:00
クロンにおける聖教の拠点である。天井が高くそびえる贅沢な大聖堂であり、入った者全てに自分が取るに足らない存在であると感じさせるよう設計されている。豪奢な聖堂の建設資金は免罪符の販売利益によって賄われ、宗教改革の遠因の一つとなった。

大聖堂に隣接する霊廟地区はイルビトフと呼ばれ、大霊廟と記念碑、そして地下納骨所が存在する。霊的な防御と死後の安息のため、クロンの有力者はしばしばイルビトフに葬られる。イルビトフの墓石の彫刻は、死者の金銭的事情を実際に反映して変化する。

※RPスレッドです。キャラクターの視点から台詞や地の文で書き込んでください。
本スレッドは『常設/日常生活タイプ』になります。すなわち起承転結のある1つのシナリオではなく一時の休息に訪れる場所です。機会を逃すと途中入場できないということはありません。退場も自由です。門はいつでも開かれており、幻想種、魔族種も入場可能。魔法の行使も可能ですが、暴力の行使はできません。時間の流れは気にせずに、こちらに書き込みながら、別のスレッドで書き込んでも構いません。

2クロン共和国:2014/09/25(木) 21:16:23
【ジャスリー・クラルヴェルン 魔族種(夢魔)/青黒】

 美しく白い聖堂、高らかに鐘を鳴らす鐘楼、緑の絨毯が心地良い庭園。
 聖ルーアン大聖堂。虚飾に覆われた神無き祭殿。そんな中のサルーン。
 誰も居ないそこで、私は一人頭を垂れて祈りを捧げる。
 さきほど神無き祭殿と言った。それは嘘。私の神は私の心の中に。
 私が一体何を祈る? それは化け物になってしまわないこと。
 私は気が遠くなるほどの刻を経た古の存在。三千世界を渡るもの。世界にはびこる百八の悪夢の王。絶望を啜り、夢と幻と運命を操るもの。コンフラックスの真実をしるもの。ヒストリーの第一のしもべ。
 けれど私は、人に混じって暮らし、人を愛し愛されることを望む。
 愛、幸福、美、優しさ、楽しさ、美味しさ。それが私の望み。
 私は夢魔/Nightmareであって人間の天敵だけれど、これはほんとうなの。

「…けれど、古い知り合いと再会するのも、それはそれで楽しいことだわ」

3ヴェルレニース:2014/09/25(木) 21:16:43
【アンゼロット 魔族種(擬天使)/青】

庭園の片隅のティーテーブルの上で瀟洒なティーカップが静かに湯気を上げる。
紅茶の前に座る彼女はクロン在住だが、「権利を持つクロン市民」ではない。
この世界において、彼女が帰属するとみなされているのは今や「向こう側」になってしまったウィルバー合衆国。
…彼女にとっては向こう側にあるその大地すらそれほど遠くもなければ郷愁に満ちたものでもなく、真に遠く郷愁に満ちた場所とは彼女の故郷たる遥か昔のハラオウン朝リルバーンぐらいのものだが。

「他人の祈りを妨げるものに災いあれ。あの大聖堂はほんの少しの時間だけ貸切にしておきますよ」
擬天使の創造主アンゼロットは紅茶の香りを楽しみながら静かに呟く。
「それにしても五百年ぶりぐらいになりますか。久しいですね」

4フローラ:2014/09/25(木) 21:17:05
【フローラ/魔族種/赤黒】

 太陽の光が反射し、白く輝いて見える聖ルーアン大聖堂。
 その前には手入れされた左右対称の庭園が広がっており、中心には聖堂へと道が続いている。
 フローラとリグレットは手をつないで、談笑しながらその道を歩いてゆく。
 2人がこの聖堂に訪れようとしているのは、フローラの旧友であるジャスリーと再会するためであった。

 歩いていると、聖堂の前で紅茶を飲む一人の女性が居ることに、フローラは気づく。アンゼロットであった。
「お久しぶりね。今日はいらっしゃらないと聞いてたので驚きましたわ」

5クロン共和国:2014/09/25(木) 21:17:29
【ジャスリー・クラルヴェルン 魔族種(夢魔)/青黒/儚き美女】

 偽りの信心。祈りを終えて。
 自分はよい子だと自分に嘘を吐いて。
 私はそれを信じて、心に平安を得る。

 ふと気が向いて、あるいは運命に導かれて、庭園を散歩しようと足を運ぶ。聖職者、老人、若者、子供たちとすれ違う。皆、私を見て微笑んでくれる。悪魔だけれど。
 ネオゴシック調の門を過ぎて、平和なオアシスに。闇の者にも眩しくない太陽。心地よい風。お昼寝日和。
 …そこで見かけた知己。偶然の再会。

「…アンゼ」

 万感の思いを込めて。

「フローラも。…その子はこの世界のリグレット?」

 懐かしい記憶が蘇る。

「久しぶり。…二人とも元気してた? 魔蟲に追いかけられたりしてない?」

 放し飼いの鳩が私の肩に止まる。手を伸ばして、手を握って開く。麦とコーンがタネも仕掛けもないところから現れて、鳩がそれをついばむ。

「私は世界大戦を起こしてしまったわ。…ええ、フリューゲルで。数多の絶望を啜って、友を破滅させて。そのあと我に返って、少しだけ後悔しているの」

6アンゼロット:2014/09/26(金) 01:00:51
【アンゼロット 魔族種(擬天使)/青】

顔を向けるとそこにいるのは旧友…というにはやや疎遠すぎるが、古い知り合いであることは間違いない。同郷、というほうが厳密かもしれない。そしてもう一人。
「お久しぶり…というにもあまりに長いですね。もう何千年かになりますか。そちらは…確か同じ星の下に…ええと、リグレット、でしたか。
 いや、私も今日は無理だと思ったんですがね。思ったより早く仕事が仕上がりましてね」
今のアンゼロットはコレージュ・ド・クロンの教授。それなりに忙しい…そう、それなりに。

そうして気配を感じて振り向く。そこにいるのは、こちらは紛れもなく旧友。
「お久しぶり…といってもあなたとは結構顔を合わせている気がしますね。
 元気ですよ。魔蟲は…テレーズとモーリスがいる世界に現れた一件がありましたけど、ここは結界が強いですから大丈夫でしょう」
そうしてすっと軽くティーポットを掲げる。
「いろいろと積もる話もあるでしょう。お茶にしましょうか。スコーンとケーキもありますし」

8フローラ:2014/09/26(金) 14:42:20
【フローラ/魔族種/赤黒】

 フローラとリグレットがアンゼロットと会釈をしていたところ、聖堂の扉の開く音が聞こえる。
 3人は聖堂の方へ目を向けると、そこには以前会った時とまったく変わらない友人ジャスリーがいた。

「本当に久しぶり。私はとても元気よ。最近はリグレットと一緒に旅をしているの」
 フローラはそう言って、ジャスリーとアンゼロットに近況を報告する。
 お互いに近況を報告しあうと、アンゼロットに紅茶を勧められて、フローラとリグレットは腰掛ける。
「そういえば、アンゼロットにお茶を淹れてもらうのは初めてね」

9クロン共和国:2014/09/26(金) 23:36:24
【ジャスリー・クラルヴェルン 魔族種(夢魔)/青黒/儚き美女】

「ええ、アンゼの淹れたお茶だもの。お相伴に預かるわ。珍しいとりあわせだし。…それにお昼ご飯まだなの。ここは来たばかりで。良いお店知ってる?」

 鳩の餌を放り投げる。リグレットに引かれた椅子に腰掛けて、淹れて貰った紅茶を一啜り。葉っぱなんて世界ごとに異なるのに、なんだかとても懐かしい味。ガトーショコラにフォークを入れながら、リルバーンの乙女たちを交互にみやる。

「元気で何よりだわ。アンゼがいるなら、私もしばらくここにいようかしら。「鍵」持ちたちの運命を眺めたり、糸を手繰ってみたりするのも楽しいかも」

 コレージュ・ド・クロンの受験勉強をするのもいいかも。難しそうだけど。びぶんせきぶんとか、さいんとかこさいんとか、皇帝やってたときは覚えていたけど、もう忘れちゃった。

「フローラとリグレットは…。この聖堂に結婚式に来たのでしょう──リリス式の。私はナルヴェへの宣誓の証人になったのだもの。なれそめを考えれば察しはつくわ」

10フローラ:2014/09/28(日) 01:50:36
【フローラ/魔族種/赤黒】

「その話はよしてくださいな。あれは若気の至りなのよ」
 そう言って、ジャスリーの話を遮る。
「あの秘め事の一部始終がネットに出回って、私すっごく恥ずかしかったんだから」
 フローラは、茹でだこのようにあかくなった顔を両手で覆う。

 数十秒ぐらい顔を覆っていた。
 だが、恥ずかしさが治まってきたのか、その手を膝の上に戻す。
「それよりも、あなたたちはどうなのよ。少しは進展したの?」
 フローラは話題を変えるために、アンゼロットとジャスリーに質問を振った。

11アンゼロット:2014/09/28(日) 02:53:26
【アンゼロット 魔族種(擬天使)/青】

「ミリティーのほうが淹れるのは得意なんですけどね。それはともかく昼食に良い感じの店なら、いくつかメモがありますよ。渡しておきましょうか」
手帳の一ページを丁寧に破り、ジャスリーに渡す。手慣れた筆記体で書かれたメモには同僚や学生たちの集めた昼食向きの店の情報が並ぶ。
「コレージュ・ド・クロンに入学…なるほど、数学もいいですがむしろ論述が大変ですよ。私も大学受験者にここまで求めるかと思ったぐらいですからね」

「リリスの姫ともあろうに、何と乙女めいた純情な反応。情欲と恋愛は違う、というものですかねえ。あるいは若さなのかもしれませんけど。進展もなにも…私たちには、ねえ」
そう言ってジャスリーに顔を向けるアンゼロットの表情は、傍目には普段と変わりはないようにみえる。
アンゼロットは理解しているのだ。フローラはもちろん何か回答することを期待しているが、ジャスリーにとってはそうではない。
他人の心が読め、それゆえに人の心というものを知り尽くしているジャスリー特有の恋愛観と、それが自分に何を期待しているのか。
結局、言葉は必要ない―二人分語るべきことを、ジャスリーは一人で語ってくれるだろうから。

12クロン共和国 ◆xdszxH5rLE:2014/09/28(日) 11:41:11
【ジャスリー・クラルヴェルン 魔族種(夢魔)/青黒/儚き美女】

「有難う」

 アンゼからメモを受け取り、ざっと目を通す。パスタのお店があれば良いのだけれど、この国はちょっと食文化が違うかしら。学園生活を送ることになるならこの店達に通うことになるし、あとで回ることにしましょう。お料理、自分で作るのも良いけれど、作るとなると他の人に食べて貰いたいし。…喫茶店をやるのもいいかも。不思議ね。貴方が居る世界は何をするにもとても楽しそう。

「愛情には様々な形があるの。あらゆる障害を排除する灼熱の恋や、快楽や情欲のない混ざったどろどろの愛憎も良いけれど、私達のそれの主成分は尊敬なの。だから周りにはお友達にしか見えないかもしれないけれど、もう行き着いてしまっているの」

 慌てて話題を逸らそうとするフローラと、不思議そうにそれを見つめるリグレット。とても初々しい光景。けれどリリスの呪いはいつか愛する人を快楽の虜にして、壊してしまう。この天使も例外ではない。
 …まあ、少しくらい壊れていたほうが貴方達らしいかしら。

「私はアンゼを愛していて、アンゼは私が愛していることを知っているの。それだけあればどんなに離れていても私は幸せ。いつかこうしてまた逢えることを信じているから」

 紅茶美味しい。

13フローラ:2014/09/28(日) 18:11:51
【フローラ/魔族種/赤黒】

 特に進展は無いということを暗示するような言動とは裏腹に、ジャスリーに対して意味深長な目配せをしているアンゼロット。
 フローラは数多くの女の子と関係を持ったことがあるが、情欲に身を任せたような関係が主であったため、こういった恋愛話を聞いたりするような機会が無かった。
 それ故に、ジャスリーとアンゼロットの関係がどうなっているのか、貴重な機会に巡り会えたフローラは瞳を輝かせて続きを伺おうとする。
 ジャスリーは、愛情には様々な形があり、アンゼロットとは尊敬でそれが成り立っていると言う。
 フローラにとって、愛されていることを確認するための方法は、相手を求めて枕を交わすことしかなかった。
 それによって、彼女は愛を繋ぎ留め、愛されていると安心して眠りにつくのだ。
 だから、ジャスリーの言う恋愛観は、まさにフローラの知らない境地であった。
 それでも、ジャスリーとアンゼロットとの間には、その愛を感じさせる何かがある。
 フローラは、ジャスリーの言う愛を理解しようと、真剣に耳を傾けていた。

「とっても勉強になりました。私にはちょっと難しかったけれど」
 ジャスリーの語りを聞いて、フローラは率直な感想を口にする。
「リグレットはどう思う?今の話を聞いて」

14クロン共和国 ◆xdszxH5rLE:2014/09/29(月) 21:01:24
【リグレット・ミィル・シンドレッテ 魔族種(堕天使)/白黒赤/お嬢さん】

 リグレットは不思議な気分です。アンゼロットさまもジャスリーさまも、リグレットにとってみれば初対面なのに、二人とも昔からリグレットを知っているようなのです。
 そして繰り広げられるガールズトーク。赤面するフローラさま。免疫のなさそうなアンゼロットさま。惚気るジャスリーさまが照れ隠しに紅茶を啜るのを見て、ついクスリとしてしまいます。

「リグレットはどう思う? 今の話を聞いて」

 フローラさまに話を振られて、

「…はい。凄く素敵です。永遠の愛とはそういうものなのかもしれませんね…」

 にっこりと。……嘘です。ああ、ごめんなさいフローラさま。リグレットはどうしようもない淫乱になってしまいました。このどろどろとした黒い欲望と、快楽と恍惚を求める心がリグレットの愛なのです。寝ても覚めてもフローラさまに愛されることばかり考えて。今もいやらしい考えを必死に振り払って。支配されることが、独占されることが幸せなの。幸せなのです。

15フローラ:2014/10/01(水) 22:29:45
【フローラ/魔族種/赤黒】

 リグレットの答えに、フローラは深く頷く。
「私たちもいつかはそのようになるのかしらね」
 フローラはつぶやくと、ケーキを一口食べる。

「ところで、話は変わるけれど」
 さっきまで和やかな表情だったフローラが深刻な顔になると、小声で話を続ける。
「こちらに来てから、生活費とかどうしてる?やっぱり仕事?」

16クロン共和国 ◆xdszxH5rLE:2014/10/02(木) 01:59:07
【ジャスリー・クラルヴェルン 魔族種(夢魔)/青黒/儚き美女】

 リリスらしからぬ質問にほんのわずか、驚いた。
 リリスとは堕落と破滅の使徒。蛇の力を得た魔女であり娼婦。…つまり淫魔。嬉々として男を誘惑して貢がせて、本人も家族も破滅させて喜ぶ魔のモノたち。…夢魔もあまり言えたことではないけれど。

「意外な質問ね。貴方ならお金持ちのひとりやふたりを魅了するの、わけないと思うけれど」

 そう言ってはみたけれど。この子は普段からたくさんのしもべに囲まれていたから、そういう生活能力は意外と低いのかもしれない。
 確かに、お気に入りとの水入らずのためとはいえ、彼女が二人旅というのは珍しい。温室育ちの無垢なるリリスの姫。…興味深いかも。

「アンゼは大学からお給料貰っているのよね。…私は、そうね。ここに来たばかりだから手持ちの宝石を質に入れているけれど、長居するとしたらお金持ちや有力者の占い師とか、相談役とか、愛人とか…そういう存在になるわ。私は英雄の介添人。ヴァレフォールでもルヴァースでもフリューゲルでもそうしてきたの」

 …そういえば、この間【君主の聖衣/Garb of Lords】を拾ったのだけれど、お金になるかしら?

17アンゼロット ◆L10IhvyJ9E:2014/10/02(木) 20:18:42
【アンゼロット 魔族種(擬天使)/青】
アンゼロットは自身がそうであることを棚に上げて、魔族というものなら所帯じみた話には無縁、そう考えていた。
世界を越えて渡り歩いて、「生活」もなにもないだろう、と。
が、翻って考えれば、自分自身も何もしていないわけではない。
「そうですね、今の私個人の生活費は教授としての給金ということになりますね。でも、基本は投資。ああ、投機はしませんよ。百年単位の長いスパンで、です。もちろんうまくいかないこともありますが、成功すれば貴金属に換えて持ち出し、ですね。長居する気がない世界では持ち出しを使う一方のこともありますが」
そこまで言って紅茶を一口。紅茶関連もよく投資する産業の一つだ。何より紅茶産業が発展すれば自分の手元に良質な紅茶を届かせやすくなる。
「最近はテレーズはじめみんなそこそこの仕事についてくれますから、ずっと楽になりました。情報がつかみやすいですからね。…ともかく、私は魅了の魔法は得意ではないので、こういうこすっからい方法を使うことになるわけです」

18フローラ:2014/10/06(月) 16:22:18
【フローラ/魔族種/赤黒】

「実は、そういうの、したことがないのよ」
 フローラはそう明かす。
 彼女が愛人になったことがあると、ジャスリーが思っていたように、大抵のリリスは、自身の生活やお洒落のために、愛人を作るなどしていた。
 だが、フローラは帝室の出自だったこともあって、帝室財産の運用で得た莫大な利潤によって、生計を立てることが可能であった。また、後に都市フィオーレを建設、運営し、その経済基盤をさらに盤石なものにさせていた。
 それ故に、はるか昔に祖国で、当時の内閣書記官長の野心を焚き付け、彼を通して即位のために軍事クーデターを煽動させたことはあれども、お金のために男に媚びを売るようなことをする必要すらなかった。

 ジャスリーとアンゼロットの収入源を聞いたフローラは、どうやって収入を得ようか考えを巡らせる。
 フローラは、こちら側へ来る際に持ちだした1本の金塊を現金化し、約400トロイオンス分の現金を持っていたが、それだけの現金では、分散投資をするには不十分に思われた。
 手っ取り早く収入を得ようとするならば、お金持ちの愛人になるしか無さそうであった。
「みんな、色々しているのね。オートクチュールのドレスを何着か新調したかったのだけど、節約でもしようかしら」

19アンゼロット ◆L10IhvyJ9E:2014/10/07(火) 10:29:05
【アンゼロット 魔族種(擬天使)/青/どこか達観した所のある若い才媛】

なるほど。なぜリグレットに対してここまで乙女のようなのかといえば…こういうことなのであろう。
自分がいうのも何だが、結局のところ彼女は箱入り娘なのだ。どうやらそれはリリスになっても変わっていないらしい。
それはともかく、テレーズとモーリスによれば、ルヴァースのクロンでは国家元首の位をレンデフローレというリリスの姫が精励に務めていたと聞く。ならば、

「…ショービジネス、芸能、芸術。そういうほうに進んでみたらどうでしょうかね。そういう方面で活動するリリスもいると聞きますし、高価な服もそうなれば必要経費ということになるでしょうし。もっとも、成功するまでには時間がかかるでしょうけれども」

アンゼロットにとってそれらは夢魔の仕事の印象が強いが、リリスであっても、愛人としてではなく職業人として生活の糧を得るという道は悪くない選択肢であろう。
…むしろ、この純情ぶりからすれば愛人になるよりそのほうがいくらか容易いように思われる。

「この国は豊かな国で、この町は芸術の都として名高い。才能があればパトロンはいくらでも現れるでしょう。もっとも、自分の芸才を過大評価して無謀にも芸術芸能の分野に走り、転落していった学生もいましたけど、リリスの姫にそんな心配はいらないでしょうから」

20クロン共和国 ◆xdszxH5rLE:2014/10/09(木) 19:51:12
【ジャスリー・クラルヴェルン 魔族種(夢魔)/青黒/儚き美女】

「…ふふ。まあそうね。リリスにも褒められるところはあるでしょう。この国には花妖のファッションブランドもあるようだし、貴方もまた美の女神/Museとして振る舞うのもいいかもしれないわ」

 ああ、でもアンゼ。学生や若者が自分の才能を過大評価するのは仕方がないし、自然なこと。望ましいことだわ。彼らは野心に突き動かされて、人生という一寸先も見えない闇の谷底に、何の保証もないままダイブするの。夢魔の好きなタイプね。
 才能の有無と、周囲の評価と、社会的な成功はまた別のことなの。何度も挫折し、何度も破産し、何度も絶望する男を見守るのが私は好きよ。彼がそれでも這い上がって、栄光を掴むのなら夢魔はそれを祝福するわ。

「…ん。日差しも良いし、スコーンも食べて眠くなってきちゃった。少しお昼寝するわ」

21フローラ:2014/10/09(木) 23:36:38
【フローラ/魔族種/赤黒】

 アンゼロットとジャスリーの提案は、フローラにとって予想外のものであった。
「私がファッションデザイナーに?そうは言っても針なんて触ったことも無いのよ」
 フローラはそう言いつつも、自分の作り上げたドレスをリグレットに着てもらえたらと想像する。
 リグレットに私のドレスを着てもらいたい。
 その想いに突き動かされ、フローラは新たな道への転進を決意する。

「今日はとても楽しかった。また、どこかで会いましょう」
 ジャスリーはお昼寝すると言うので、フローラは別れの挨拶を告げると、リグレットとともに退席する。
 フローラは帰りに裁縫道具と本を買っていこうと考えていた。

22アンゼロット ◆L10IhvyJ9E:2014/10/10(金) 00:36:52
【アンゼロット 魔族種(擬天使)/青/どこか達観した所のある若い才媛】
「ええ。またいずれどこかで」
フローラに別れの挨拶を返す。世界を旅する悪魔同士、また会う機会はいくらでもある。
尤も、彼女はしばらくリグレットと一緒にこの世界に留まるであろうから、意外とすぐにその機会が来るかもしれないけれど。

麗らかな太陽がゆったりと庭園を照らす、穏やかな春の昼下がり。
午睡に微睡むのにこれほど適した時間はない。
「横になるなら、膝を貸しましょうか。その前に」
アンゼロットは机を一撫で。古式ゆかしい魔法が発動し、机の上の茶器やお菓子はしまわれる。
そうして色とりどりの花の絨毯に座り、両手で膝を軽く叩いて彼女を誘う。
「あなたにこうするのも久しぶりですね。私が悪魔化した後のことを思い出します」

23イレール・ヴュイヤール:2014/10/23(木) 23:00:06
【イレール・ヴュイヤール 人類種?/青・黒・赤/黒色の礼服】
「私はてっきり、『神様なんて非科学的なことは信じない!』とでも…」

運転席の助手が私に声をかける。

「別に信じていないわけじゃない…けど、科学的に調査しようがないのだから、科学的な問題として考えるのなら見なかったことにするしかないですし…」

もっとも、神様を「科学的な調査」という人間の尺度で測ること自体が神学者や敬虔な信徒からみれば信じられないほど不信心なのかもしれない。
しかし、一般人全体の問題として宗教の信仰心が薄れているのだから、科学者に限った問題ではない。
むしろ、彼女自身は教会の礼拝に参加する方が多い。
もっとも、“あちら”の世界は何かの記念日や教会でイベントが開催された日ぐらいではあったが、
しかし、今回は研究所の近くの田舎の小さな教会ではなく、わざわざクロン共和国における聖教の拠点である聖ルーアン大聖堂まで来たのはやはり、何か思うところがあったからであった。

…結局、あの相手は一体誰だったのだろうか。
自分を殺そうとする相手と立ち会うのは慣れない。

もっと戦場を経験することがあったら慣れるのだろうか…それはとても不幸な生活だろうが。
気が付いたときには病室のベットで横になりながら、天井のシミを数えていた。
後の調査で相手の痕跡から大凡の相手の見当はついた…がそれだけだった。
それ以上の調査は難しかったし、誰もそれ以上の情報を知ることを望まない。
そして、彼女は今までと同じように仕事に戻った。

…「そういえば、あの時にとっさに神様に命乞いをした」とふと思い出したのがきっかけだった。
半ば惰性と化した教会の礼拝からは特に何も感じることはなかったし、正直に言えば、戦闘に勝利できたのは単なる偶然に過ぎないかもしれない。
それに彼女自身の仕事を考えると、どちらかというと神様の奇跡を受けるというよりも、神様の罰を受ける可能性が高いと思っていた。
それでも、妙なところで律儀な自分もいた。
それに、実際的な利益もある。
大量の消費や雇用が生み出されるとはいえ、自分の裏庭に、しかも、世界各地から遺体を集めているという怪しげな噂が流れている研究所が建設されるのを支持する住民は少ない。
本社が中央政府にも、現地の地方政府の小役人たちにも金を握らせてはいるだろうが、田舎も…現地の住民の歓心を買うことも忘れてはならない。
クロン共和国のようなインターネットやマスメディアが発達している民主主義国家では特にそうだ。
田舎も…現地の住民から今も尊敬を集めている教会に多額の資金を寄付することもその一つで、所謂「企業の社会的貢献」という話だ。

「あれ、この辺りは駐車場はないのかな…」

隣でカーAVCを操作して、駐車場を探している助手を横目に私は自動車の外の風景を眺めていた。
カーAVCを操作しながらアクセルを踏むわけにもいかないようで、歩道を早歩きで進んでいた人間にも追い抜かされるような速さだ。

ふと、白く輝く聖ルーアン大聖堂の前に広がる庭園を眺めた。
礼拝の時間とは少しずれているからなのかもしれないが、人気はほとんどなく、庭園の片隅に三人の女性たちがティーテーブルを広げて、ティータイムと思しき時間を過ごしていた。
彼女たちは少女と呼ぶには少し年齢を過ぎているようにも見えるが、一方で淑女というには少し年齢が足りないようにも見える。
いずれにせよ、彼女たちが一体何歳かは知らないが、見た目麗しい女性たちであるには変わりはない。
だから私にとっては彼女たちのような相手は目に痛かった。

光が照らさない真っ暗闇の世界ならきっと、誰もその世界が「真っ暗闇」だとは認識できないだろう。
相手がいなければ、相対的に自分を評価できない。
容姿やお金、家柄や才能といった部分だけではない。
生まれついての性格だとか、何か人間性とでもいうべき形容しがたい部分で既にどうしようもない。
そういったことが一目で読み取れるというだけで私と彼女たちにはまるでこの星の反対側にいるような差を感じる。
そのくせ、妙なところで対抗心とでもいうか、そういった相手に近づいてみようとしては失敗して、自分の立場をすっかり思い知らされるという繰り返しばかり。
それが哀しかった、厳しかった。

もしも、私の人生が平均的にというか、ごくまともに推移していたなら、今頃は…

私は急に吐き気を催すと、それを抑えるように頭を俯けて、口を手で覆った。

「だ、大丈夫ですか?」

助手の声が私を現実へと引き戻す。

「…いや、車酔いしただけです」

24クロン共和国 ◆xdszxH5rLE:2014/10/24(金) 21:24:33
【ジャスリー・クラルヴェルン 魔族種(夢魔)/青黒/儚き美女】

 お花畑にて。
 当たり前のようにアンゼの膝枕に頭を載せて。
 遠くから響く鐘の音を聞きながら、いつものように微睡みの誘いを迎える。
 睡眠欲は人間の持つ欲望の中で、もっとも抗しがたいもの。
 人のみならずあらゆる動物が、植物が抱く根源的な欲求。
 人は百年足らずの歳月のうち、三十年を睡眠に費やすの。
 身体はその人を眠らせるために、オピオイドを分泌するの。
 人は皆その麻薬の中毒者。眠るということは幸せなこと。

「そうね…懐かしいわ」

 思いを馳せる。遠い遠い記憶。私は高貴なる魂を永遠に誘った。
 運命と言葉を操って。魔の血の呪いで縛り、騙して陥れて。
 そうして今アンゼはここに。
「私を恨んでいる?」なんてことは聞かない。
 この膝枕で一千年の安眠を贈ってくれたのがその答え。

「フローラはもう行ってしまった? あの堕天使も。そう…ふふ。アンゼ、では改めて。お久しぶり。幾星霜の時を越えても、人が幾つも世代を重ねても、国が興りそして滅んでも、箱庭が生まれそして死しても、変わらず愛してるわ」

 自然に笑みが浮かぶ。アンゼの膝枕で私は眠って、また目を覚ましたとき、私は生まれ変わる。元気で華やかな、もう一人の私に。哲学の時間はそろそろおしまい。


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