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隔離部屋〜眠れぬ夜の姉ちゃんの為に〜

490<7>:2003/12/11(木) 21:11
「あー、面白かった!」

映画館の暗がりから、早い午後の明るい陽が差す大通りに抜け出すなり、
ひなたはうーんと伸びをして、快活な声を上げた。

初めてのデートで見る映画に、何をセレクトするべきか……
悶々と考えあぐねていたカズナリは、ほっと胸を撫で下ろした。
もっとも、結局自分では決めかねて、ひなたの希望に合わせたにすぎないのだが、
思いっきり笑えるコメディーを選んだのは正解だった。

「ねえ、これからどこ行く?」
ひなたが、カズナリを振り返る。

「え、ああ、どうしよっか」
「二宮くん、おなか減ってない?あたし、ぺこぺこなんだけど」
「そう、じゃ、なんか食い行こうか」
「どこ行きたい?」
「ん、どこでもいい」
「そう?じゃぁねえ……」
ひなたは道端に立ち止まって考え込み、カズナリはその横顔を見ている。

と、急にカズナリのショルダーバッグが、小刻みに揺れはじめた。
「……!」
カズナリはいきなり挙動不審の人になり、ひなたに背を向けてバッグを覗く。

「ダメでしょ、カズくーん……」
薄く開いたバッグの口から、リスが口を尖らせて囁いた。
「うるせえな、何がダメなんだよ」
「初デートでお食事は、最重要事項だろ!いい店事前にチェックしとかなくて、どうすんだよっ」
「だって、そんなの俺知らないし……」
「最初のデートでちゃんとリード出来なきゃ、使えねえ男で終わっちゃうんだぞ」
「んなこと言ったって……」
「この先300m!ちょっとカジュアルなイタリアン!!」
「はぁ?なんでお前がそんなこと知ってんだよっ!」
「タウン情報誌!つーか、そんぐらい自分で考えとけよっ!!」

「どうしたの?」
ぎくっとして振り返るカズナリに、ひなたが微笑む。
リスは慌てて、もぐら叩きのもぐらよろしく、バッグの中に引っ込んだ。

「いや、別に。あのさ、この先にイ、イタリァ」
「ラーメン!ラーメン食べたい!!」
カズナリの言葉を遮り、ひなたは高らかに宣言した。
カズナリは虚を突かれ、「あ、はぁ」と間抜けな相槌を打つ。
「今思い出したの。この通りのひとつ向こうに、新しくラーメン村が出来たの。
とんこつラーメンが美味しくて、行列出来てるって。食べてみたーい」
「あ、いいよ。そこ行こう」
「やったぁ!行列店のラーメンだぁ」

ひなたは、カズナリの腕を取ると、柔らかな陽の差す通りを、うきうきした足取りで歩き出した。
カズナリは、主導権こそ握れないものの、ひなたと肩を並べて歩けるので、満更でもない気分だ。
「はぁぁ……」
バッグの中から、微かに漏れたため息を、だからカズナリは無視することにした。


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