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ダンゲロス流血少女:01事前応援スレ

1流血少女GK:2015/07/25(土) 00:33:26
事前応援スレです。

2雨竜院愛雨:2015/07/25(土) 06:50:45
雨竜院愛雨(ウルメちゃん)の事前イラストです
tp://twitter.com/homarine/status/619490416614768640/

事前イラストその2。雨竜院畢さんとウルメちゃん
tp://twitter.com/homarine/status/620225621084377089/

3雨竜院愛雨:2015/07/25(土) 06:59:31
【ひめサバ! デストロイザモー! #1】

ブッシュの中に身を低くして潜む。眼鏡の上には、サバゲー用ゴーグルを装着。迷彩柄のウェアは草木に紛れて視認しにくい。手にした狙撃武傘『ぺトータルレイン』をしっかりと構え、敵軍の想定進攻ルートを睨む。瞳に涙が滲み、視界がぼやける。いけない、こんなことでは。

ああ、なんて楽しいんだろう。初めての実戦形式。こうして敵を待ち受けているだけで幸せで幸せで涙が出てしまう。いけないいけない。集中しなきゃ。8m横で潜伏中のエリカの方を見る。エリカは「がんばろうね」のハンドサイン。私も「がんばろうね」を返す。

私たち副部長チームは、攻撃力の高い副部長中心にほぼ全員が攻勢に回り一気に敵フラッグを落とす作戦だ。自軍フラッグの守りは、初心者の私と、一年の時からサバゲーを始めたエリカの二人だけ。速攻が決まれば私たち二人の出番は無いが、副部長たちの攻撃ラインをすり抜けた敵アタッカーがいれば……

視界の先。草が微かに揺れたのを、眼鏡の力で飛躍的に高まった私の視力は見逃さなかった。(敵襲……!)緊張で全身にじっとりと冷や汗が滲む。茂みや樹木を遮蔽物にしながら、軽快な足取りで近付いてくる小柄な敵……これは間違いない。進藤部長だ!

(……金星いただき!)功を焦った私はぺトータルレインのトリガーを引いた。ばしゅう! ガンランス機構が作動し、圧搾空気が傘の石突き部分に取り付けられた突剣を高速射出する。だが、サバゲー用にしつらえられたゴム製の突剣は、風圧に負けてあらぬ方向へ逸れた。……進藤部長がこっちを見た。

うわああ、ヤバイ楽しいっ! 突剣の再装填は間に合わない。私は涙目で左脇のホルスターから副武装のマカロフPMを抜いて闇雲に連射する。しかし、木の陰に隠れながら近付いてくる進藤部長には当たらない。ヤバイ楽しいっ! 進藤部長がジグザグに迫る。マカロフの連射は当たらない。

ふとエリカの方を見ると、エリカはマスケット風突撃銃を構えて進藤部長に狙いを定めていた。引き付けて撃つ。基本だ。エリカはできる子! タン! エリカの銃が小気味良い射出音を上げる。しかし、進藤部長は突然伏せて回避。そのままごろりと回転して向きを変えると、タタンと二発発射。

エリカは悔しそうに挙手し「ヒットしました」と自己申告した。すごい。やっぱり部長はとってもスゴイ! 鮮やかな進藤部長の技をしっかりと眼に焼き付けた私は、感動で涙ぐんだ。タタン!(あっ……)私の胸に、部長が撃った二発の弾が当たった。「あ……ヒットです……」私はおずおずと手を挙げた。

こうして、私たち副部長チームのフラッグは進藤部長の単機速攻によって落とされ敗北したのだった。……楽しかった!

(【ひめサバ! デストロイザモー! #1】おわり)

4雨竜院愛雨:2015/07/25(土) 07:02:20
…ごめんなさい。古い版を貼ってしまいました。
>>3 は差し替えてください。

【ひめサバ! デストロイザモー! #1】

ブッシュの中に身を低くして潜む。眼鏡の上には、サバゲー用ゴーグルを装着。迷彩柄のウェアは草木に紛れて視認しにくい。手にした狙撃武傘『ぺトータルレイン』をしっかりと構え、敵軍の想定進攻ルートを睨む。瞳に涙が滲み、視界がぼやける。いけない、こんなことでは。

ああ、なんて楽しいんだろう。初めての実戦形式。こうして敵を待ち受けているだけで幸せで幸せで涙が出てしまう。いけないいけない。集中しなきゃ。8m横で潜伏中のエリカの方を見る。エリカは「がんばろうね」のハンドサイン。私も「がんばろうね」を返す。

私たち副部長チームは、攻撃力の高い副部長中心にほぼ全員が攻勢に回り一気に敵フラッグを落とす作戦だ。自軍フラッグの守りは、初心者の私と、中学生時代からサバゲーをやっているエリカの二人だけ。速攻が決まれば私たち二人の出番は無いが、副部長たちの攻撃ラインをすり抜けた敵アタッカーがいれば……

視界の先。草が微かに揺れたのを、眼鏡の力で飛躍的に高まった私の視力は見逃さなかった。(敵襲……!)緊張で全身にじっとりと冷や汗が滲む。茂みや樹木を遮蔽物にしながら、軽快な足取りで近付いてくる小柄な敵……これは間違いない。進藤部長だ!

(……金星いただき!)功を焦った私はぺトータルレインのトリガーを引いた。ばしゅう! ガンランス機構が作動し、圧搾空気が傘の石突き部分に取り付けられた突剣を高速射出する。だが、サバゲー用にしつらえられたゴム製の突剣は、風圧に負けてあらぬ方向へ逸れた。……進藤部長がこっちを見た。

うわああ、ヤバイ楽しいっ! 突剣の再装填は間に合わない。私は涙目で左脇のホルスターから副武装のマカロフPMを抜いて闇雲に連射する。しかし、木の陰に隠れながら近付いてくる進藤部長には当たらない。ヤバイ楽しいっ! 進藤部長がジグザグに迫る。マカロフの連射は当たらない。

ふとエリカの方を見ると、エリカはマスケット風突撃銃を構えて進藤部長に狙いを定めていた。引き付けて撃つ。基本だ。エリカはできる子! タン! エリカの銃が小気味良い射出音を上げる。しかし、進藤部長は突然伏せて回避。そのままごろりと回転して向きを変えると、タタンと二発発射。

エリカは悔しそうに挙手し「ヒットしました」と自己申告した。すごい。やっぱり部長はとってもスゴイ! 鮮やかな進藤部長の技をしっかりと眼に焼き付けた私は、感動で涙ぐんだ。タタン!(あっ……)私の胸に、部長が撃った二発の弾が当たった。「あ……ヒットです……」私はおずおずと手を挙げた。

こうして、私たち副部長チームのフラッグは進藤部長の単機速攻によって落とされ敗北したのだった。……楽しかった!

(【ひめサバ! デストロイザモー! #1】おわり)

5雨竜院愛雨:2015/07/25(土) 07:03:52
【ひめサバ! デストロイザモー! #2】

全寮制魔人女子高等学校妃芽薗学園サバイバルゲーム部、通称「ひめサバ」は部員数約30名で、屋外文化系部活連合に所属している。以前はミリタリー趣味の少女たちが集まってモデルガンを愛でながら和気あいあいとお茶を飲むのが主な活動だったらしい。

“サバゲーの申し子”と呼ばれる進藤部長が入部してから、ひめサバの雰囲気は大きく変わったそうだ。今では体育会系の部活並みにトレーニングもするし、今日みたいに野外で実戦形式の紅白戦もよく開かれる。新入生である私は、基礎訓練を終えてようやく今回から紅白戦に参加できるようになった。

同級生の岡林エリカさんは以前からサバゲー経験があったので、紅白戦の参加はこれで四度目だ。「ウルメちゃん、今度はがんばろうね」陣地を入れ換えての二戦目、今度は私とエリカのツーマンセルは攻撃陣だ。「うん。がんばろう」エリカの暖かい励ましの言葉にちょっとウルっと来ながら私は答えた。

空は曇り模様。木々に覆われて昼間なのに薄暗い斜面を、音をなるべく立てぬよう慎重に進む。私が先行して斥候役。エリカは斜め後ろから身を隠しながらついてくる。私たち二人は谷回りで敵フラッグを狙うルートを担当する。左手にマカロフPM、右手に武傘『ペトータルレイン』。

そして、眼鏡によって飛躍的に高まった私の視力は捕捉した。前方で動く黒い影を。こちらの姿は見られてない。私は草陰に身を隠してエリカにハンドサイン(前方に敵発見)。エリカの応答(了解、これより挟撃)。私は右へ、エリカは左へ散開し、密やかに敵へとアプローチする。

射撃可能距離まで接近に成功。未だにこちらは発見されていない模様。私とエリカは90度角の位置で身を隠して銃を構え、息を殺して敵が姿を見せるのを待った。くううー、緊張する。まさに生きてるって感じがする! 私の目にまた涙が滲んだ時、ガサリと樹を揺らして敵が巨大な姿を現した……!

鋭い角を備えた牛の頭部。黒い剛毛に覆われた二足歩行の逞しい胴体。え、えええ? こんな人、ひめサバにいらっしゃいましたっけ?「ギャアアアーッ!? 怪物ーッ!!」エリカが叫ぶ。うん、そうだね。怪物だね。こいつは、ゴリロクス。魔界(にいがた)の生物が何故ここに!?

うわー。ゴリロクスがこんなところで見られるなんて、なんてラッキーなんだろう! 思わぬ幸運に瞳が潤む。「ンモオオオオオ!!」ゴリロクスが嘶く。「に、に、逃げるよウルメちゃん!!」エリカが震え声で叫んで走り出す。ああそうか、逃げなきゃ! 私も走り出す。

「エリカ、召喚は?」斜面を走りながらエリカに能力発動の打診。「ンモオオオオオーッ!」ゴリロクスはゆっくりとこちらに向かってくる。奴が本気で走り出したら一瞬で追い付かれる!「ダメ。アレが相手じゃ敵を増やすだけにな…きゃあっ!」エリカが木の根か何かに躓いて転んだ!

(ふーん、なるほどね)ここでエリカを庇って命を散らすのは悪くない死に方だ。絶好の“泥なんて”チャンスかもしれない。つまり、ゴリロクスが現れたのも『あいつ』の差し金ってことか。ありがたいね。(でも)ゴーグルと眼鏡を外す。武傘とマカロフを構える。(今の私の命は、そんなに安くない!)

(【ひめサバ! デストロイザモー! #2】おわり)

6雨竜院愛雨:2015/07/25(土) 07:05:26
【ひめサバ! デストロイザモー! #3】

眼鏡を外す。世界にガウシアンぼかしがかかる。私は昔の自分に戻る。敵は牛頭の巨猿ゴリロクス。怪物は倒れたエリカに、のしのしと歩み寄る。さあ楽しもう、非日常の戦いを。私は目を細める。多分とっても可愛くない表情。それでいい。大切な友達を、助けるんだ。

エイミングもそこそこに、左手に構えたマカロフ拳銃からBB弾を撃ち出す。BB弾には紫色のオーラが纏われている。私の能力だ。エアソフトガンから放たれる弾丸の飛行速度は遅い。それを能力でPKの如く誘導する。狙いはゴリロクスの牛面。弾丸を追うように駆け込む。

弾丸がゴリロクスの鼻に命中。物理ダメージは微々たるものだが……能力発動!「干物になれっ!」「ブモオオオーッ!?」鼻に生じた異変にゴリロクスが苦し気に呻く。ザアッ。ゴリロクスから奪われた水分が恵みの雨に変化し、周囲に降り注ぐ。鼻を強制乾燥されたゴリロクスはよろめき片膝をつく。

牛の鼻は、人間よりも遥かに鋭い感覚を持つ。その嗅覚はむしろ犬に近い。つまり、鼻を突然乾燥させることは、フラッシュバンの閃光を浴びせるのに等しい効果を生む。右手に武傘『ペトータルレイン』。左手にエアソフトガン『マカロフPM』。ゴリロクスに急接近。インファイト距離。

必殺……トライ・ペゾヘドロン! 武傘から刺突が来ると思う? 拳銃から能力弾が来ると思う? 私はゴリロクスの膝を踏み台にして跳んだ。「ドスコイッ!」相撲シャウトと共に、飛び膝蹴りをゴリロクスの顔面に叩き込む! 暗黒相撲技、シャイニング・ウィザード!「ブモオオオーッ!?」

ずしーん! 地響きを立てて倒れるゴリロクス! 見たか! これが傘術、サバゲー、相撲の三択攻撃『トライ・ペゾヘドロン』だ!「さあ逃げるよエリカ!」着地を決めた私は、大切な友達の手を取って助け起こす。そして、二人で暗い斜面を走り出す。「グモオオーッ!!」後ろでゴリロクスの咆哮。

走る。走る。エリカと共に走る。ミシミシ。メキメキ。背後から木々を薙ぎ倒しながら迫り来る怪物ゴリロクス。その走る早さは、およそ時速60kmだっけ? 私たちが逃げ続けられる時間はあとほんの僅かだろう。ふふふ、なんて楽しいロマンチックな逃避行!

息が切れる。足がもつれる。すぐ背後にゴリロクスの気配。振り向く。目の前にゴリロクス。思ったより近くて驚く。ゴリロクスが巨大ハンマーのような腕を振り上げ、降り下ろす。武傘『ペトータルレイン』を広げ、角度を付けて回転させながらガード。雨竜院流防御術『雨流』。

華奢な私の武傘と、華奢な私の体ではゴリロクスの打撃を止められない。武傘がへし折れる。バスン! ガンランス機構の圧搾空気シリンダーが破損して小さな爆発音。ゴリロクスの剛腕が私とエリカをまとめて殴り飛ばす。「ぐぶぁっ……」「きゃああーっ」二人は斜面を数メートル転げ落ちる。

エリカは私の下敷きになって気絶している。(どかなきゃ……)でも、私の体も動かない。辛うじて動く右腕で、私は胸ポケットから眼鏡を取り出して掛けた。暗い森の中、木々がざわざわと揺れている。世界は綺麗だ。ゴリロクスがのしのしと迫ってくる。私は見た。うふふ、楽しい!

(【ひめサバ! デストロイザモー! #3】おわり)

7雨竜院愛雨:2015/07/25(土) 07:08:05
【ひめサバ! デストロイザモー! #4】

私は笑った。妃芽薗ちかくの山の奥。私とエリカは折り重なるように倒れている。エリカは気絶。私の体も動かない。木々の隙間から微かに覗く曇り空。薄暗い灰色。風に葉がそよぐ。牛頭の魔獣ゴリロクスが、ゆっくりと坂道を歩いてくる。私は笑った。世界はこんなにも美しく、スリリングだ。

私は眼鏡に感謝する。この美しい世界を、こんなにも鮮やかに見せてくれるのだから。のしり。のしり。怪物が近付いてくる。荒い鼻息。黒い艶やかな剛毛に覆われた逞しい腕。その腕力で私たちをどうするつもり? 私は笑った。木立の向こうで、桜色に輝く蝶の翅が広げられるのが見えたから。

金満寺迦楼羅。妃芽薗サバゲー部、副部長。能力名『超多段跳弾』。背中に背負った桜色に輝く蝶の翅は、能力発動中の証。もちろん、サバゲー中の能力使用は禁止だ。つまり、金満寺副部長は私の能力によって降らせた雨の緊急コールに気付いてくれた! タタタタタタン! 無数のBB弾が跳ねる音!

金満寺副部長の能力は「跳弾の完全制御」。ゆえに、本来ならエアソフトガンでは届かない距離からも跳弾を繰り返して弾着させることができるし、狙いが外れることもない。「ブモモモモモッ!?」ゴリロクスの全身に四方八方から跳弾が命中! え? BB弾を当てて何になるのかって? まあ見てて!

ふと気づくと、ゴリロクスの前に小さな少女が立っていた。突撃銃は片に背負い、握った拳を構えている。進藤莉杏。妃芽薗サバゲー部、部長。サバゲーの申し子。能力名『ゾンビバスター』。「二人とも、怪我はない?」私たちを気遣いながら、進藤部長は拳を振り抜きゴリロクスの脇腹を打った。

巨大なゴリロクスに、小柄な進藤部長のパンチ。効果があると思う? 進藤部長は一発当てるとステップアウトして残心の構え。「グ……ガ……ギャモオオオオーッ!!」ゴリロクスが断末魔の咆哮。全身の至るところら赤い血が噴き出す! これが『ゾンビバスター』の効果!

『ゾンビ』とは、被弾したのにヒット宣言をせず、そ知らぬ顔で戦闘を続ける違反行為だ。サバゲーを愛する進藤部長はゾンビ行為を許さない。『ゾンビバスター』は対象に、それまでに受けたBB弾の分だけ実弾相当のダメージを与える。ゴリロクスの巨体は倒れ斜面を転がり落ちていった。

―□□―

怪物の出現により紅白戦は即中止。私とエリカは金満寺グループ傘下の総合病院に緊急搬送され入院措置となった。私の怪我は左腕脱臼と肋骨骨折と全身打撲。エリカは頭を酷く打ってでっかいタンコブを作った他は掠り傷程度。入院って楽しい! 珍しいものを色々見れるし、なにより本が沢山読める。

ゴリロクスの通ってきた魔界ゲートが何故開いたのかについては、区役所や魔人公安が調査中らしい。私はその理由について心当たりがあるけど……たぶん黙っておいた方が賢明だと思う。今度『あいつ』が現れたら、そんな方法では私は満足しないと厳しく言って聞かせなきゃ。

コンコン。私とエリカの病室の扉がノックされた。お迎えだ。「どうぞ」エリカが応えると「失礼します」金色の髪を二本のおさげに結った、清楚で可愛らしい女の子が入ってきた。雨竜院本家の末っ子で、私の大親友の金雨ちゃんだ。今日退院する私を迎えに来てくれたのだ。

「怪我の具合はどう?」金雨ちゃんの問いに私は、ギプスで固めた左腕をぺしぺしと叩いて「絶好調」と笑って見せた。エリカは軽い目眩が抜けないらしく、精密検査の結果が出るまでもう少し入院するそうだ。見た目は私の方が重体なのに変な感じだね。

「それじゃあエリカ、悪いけどお先に」主な荷物は金雨ちゃんが持ってくれたので、小さな手荷物と傘だけ持った私は、独り病室に残るエリカに声をかけた。「うん。ウルメちゃんも御大事にね」エリカはマスケット形アサルトライフルを掲げる。私はにっこりと笑って、狙撃武傘『ペトータルレイン』を掲げた。

高く掲げたマスケット銃と狙撃武傘をカツンとぶつけ合いながら、私とエリカは円陣チャントを小声で唱和する。「ひめサバ! デストロイゼムオール!」

【ひめサバ! デストロイザモー!】おわり

8雨竜院愛雨:2015/07/25(土) 07:26:51
●登場人物紹介

【雨竜院愛雨(うりゅういん・めう)】
妃芽薗学園高等部一年。サバゲー部・傘部・相撲部。干物シューター。流血少女MMの黒幕候補。雨竜一傘流とサバゲー殺法を組み合わせた『ガン・カサ』を使う。眼鏡が似合う陽気な子だが、本気の殺し合いでは眼鏡を外す。感動屋さんで、すぐに目がウルウルするので“ウルメちゃん”と呼ばれる。能力名『リフメア・サーキュレーション』効果:脱水&降雨

【岡林エリカ(おかばやし・―)】(初登場)
妃芽薗学園高等部一年。サバゲー部。ウルメの級友で、渾名をつけた主犯。マナブーストからビートダウンする系の森ガールで、レインジャー技能が身に付くと勘違いして入部した。能力名『いいえ今は書けないわ・・・』効果:何らかの召喚能力?

【金満寺迦楼羅(きんまんじ・かるら)】
妃芽薗学園高等部三年。サバゲー部副部長。コングロマリット金満寺グループの令嬢で、四肢を義体化している。サバゲーによってヒューマンハント衝動を発散している限りは善良な人格者である。能力名『超多段跳弾』効果:跳弾の完全操作

【進藤莉杏(しんどう・りあん)】(初登場)
妃芽薗学園高等部二年。サバゲー部長。「サバゲーの申し子」と呼ばれる天才少女で、事実上の合コンサークルであったひめサバを一年間で変貌させた。能力名『ゾンビバスター』効果:仮想被弾の実体ダメージ化

【雨竜院金雨(うりゅういん・かなめ)】
妃芽薗学園高等部一年。傘部。雨を司る一族・雨竜院家(宗家)の末子。愛雨の親友である。破天荒な兄や姉を持つ影響か、気配りのできる良識的な性格。お菓子作りが得意。「黄色いお兄さん」と呼ばれる邪悪存在の加護を受けており、その能力は一族の中でも凶悪。能力名『神の雫』効果:失禁をトリガーにして尿の雨を降らせる

【ゴリロクス】(初登場)
Gorillox. 新潟に生息する牛頭のゴリラ。

9雨竜院愛雨:2015/07/25(土) 08:16:09
こんどこそはと あなたは言った 信じてるわと わたしは言った
たぶん これが 終わりになると 予感だけがつのってた

暗い雨に 打たれながら こない あなたを待つ渚
せめて 空の太陽だけには 笑顔を見せて欲しかった

(『もしもわたしが蟹だったなら』より)


【エリカは待つ。待ち人は帰らない】


「ふう……行ったか……」私は病室のベッドにゆっくりと倒れこんだ。三日間、見事にウルメちゃんを騙し続けることに成功した。すごいぞ私。入院中にウルメちゃんに借りた本、実は読んだことがある本だったんだ。で、読んでる振りだけして、ウルメちゃんに話を合わせてたってわけ。

だって、目の前がぐらぐらして字なんか読めなかったんだもん。でも、ウルメちゃんには心配を掛けたくなかったんだ。そうしたらきっと、ウルメちゃんの大切な時間を奪っちゃうもん。目眩が酷い。吐き気がする。でも、もうウルメちゃんは退院したから、安心して部屋の流しに吐ける。

大丈夫。きっと手術は上手くいく。だから、ウルメちゃんが心配する必要は全然ないんだ。全快して、髪の毛がはえ揃ったら、また一緒にサバゲーやろうね、ウルメちゃん。

……独りぼっちになると、悲しいことばかり思い出す。私は、裏切られたことがある。君は私の元を去り、戻って来なかった。今でも、私は待っている。でも、君が戻ってくることはない。君を追いかけて『向こう』に行こうと思ったこともあるけど、怖くてできなかった。

もし手術が失敗したら……そう思うと背中の後ろから真っ黒な闇が現れて飲み込まれるような感覚に襲われる。対象の岡林エリカ1体を埋葬する。(岡林エリカは破壊され、再生できない)冷たいグレイブヤードが私を招いてる。死霧の猛禽ならざる私は、二度とそこから戻っては来れないだろう。

君のいない環境にも飽きてきたし『向こう』に行くのもいいかな? 目眩の渦に包まれた頭を、そんな考えがよぎったりもする。とんでもない! 私は、強くならなきゃいけない。強くなれば、君が戻ってきてくれるはずなんだ。だからまだ、私は諦めない。

アンタップ。勇気を奮い立てろ。アップキープ。意識をしっかり保て。そして、ドローだ。引くのは治癒の軟膏か、はたまた命の川か。私は負けない。強く在り続ける。君が帰って来てくれる、その日まで。

(【エリカは待つ。待ち人は帰らない】おわり)


●エリカちゃんのイラスト

≪魔女跡追い/Witchstalker≫を見た感想
tp://pic.twitter.com/EqxsBjjP3A

≪死霧の猛禽/Deathmist Raptor≫を見た感想
tp://pic.twitter.com/KtvgCsed2B

魔法対決! エリカvsウルメ
tp://pic.twitter.com/aiRy4QtqWX

(事前提出作品は以上です)

10不気味なイタミ:2015/07/25(土) 15:50:06
不気味なイタミ 〜生前葬:能力紹介プロローグSS〜

臨海学校のちょうど1週間前のお昼。妃芽薗学園高等部校舎の屋上に海岸でこそふさわしい陽射し。自殺防止のフェンスとその影と、人影がふたつ。
「自殺ゥ〜ですか〜? ハッピーにいこうね人類はさあ。太陽があるから。もうすぐったって90兆年くい、あ〜〜、わからんでもないケドさあハッピーにいこうね人類ねアナタも」
 不気味な女が寝転んでる。格好は、イデアから遠ざかりすぎた喪服のみ。何かの白い粉や飛び跳ねない虫がびっしりたくさん染み着いて、生地の黒が見えるのはほんのちょっと。寝っ転がって見上げる視界には空と太陽と名前もしらぬ女の子。
「別に死にに来た訳じゃないわ別になんとなく別に勇気だそうって」
「勇気だして自殺ゥ?」
「先輩と、臨海学校で一緒に遊べないかなって別にあれで別になんかちょっとでも別に楽しいんだけどもっと別に幸せだけど」
「好き系なお姉さまラブですか? わお」
「卒業する前になんとかきっかけで別にでも好きだから」
「ふーん」不気味な喪服女は懐をまさぐりつつ暗い調子で言う。「あー、でもあんた、全部なんでもダメじゃないかなー、あー、ないかなー、悪い、悪さだよ全部」不気味な女は懐から注射器を取り出し己の胸に突き刺す。針は心臓に達している! 強く押し込む。抜き取り、間欠泉の血を妙に粘っこい唾で蓋する。気休め程度。そのわずかな間で違法的危険ドラッグが全身をトリップさせる。「つまりあれでしょヒッ分かる全部つまり勇気ないとか言って勇気だせばどうにか=告白成功イエェエじゃあはよ勇気ださんかい!行けるん、行けるんっしょ告白成功なんでわかんないかなー絶対向こうも行けるん、行けるってなんで的なライバル的な奴いる的な感じないよねってことは勇気だして告白しないのてかそれ勇気いるのゲラゲラ絶対OKだよだって私未来見える〜あ〜ハッピーが見える〜だって私ラリてるから告白しようね約束ゲンマン」
 全身を激しくゆらゆら痙攣させる不気味な女。女生徒は膝を丸めて、独り言のように言う。
「私、いま、告白しようかな。勇気だして死ぬ気の玉砕で。だれかに背中押してもらいたかった気がする」
「私が恋愛保証人なるなるあ〜恋愛してなきゃ死のうね、生きてる意味がないねってくらいラブ攻めきっかけ作りとかザコGoGoパワー」
「ありがとう、ふんぎりがついたわ」
 女生徒はくるっと振り返って扉へ。雑念がとれたのか夏の陽炎か、彼女の体から透明なものがするりと脱げ、ぽんと弾け飛んだ。
「あ〜ハッピーが見える〜」
 不気味な女は先ほどと同濃度のカクテルを、昼休み中に、計4本いれた。潔癖性の彼女は、注射器、吸い殻、吹き矢の筒を、屋上からばらまいた。
「これでキレイね」

続く

11不気味なイタミ:2015/07/25(土) 15:50:37
続き

 踏ん切りついた女生徒・ああああは、先輩を探した。教室いない。図書館いない。廊下のベンチいた。約束しているわけではないが、よく落ち合う場所だ。
「先輩!」
 女生徒・ああああは息を切らせて声をかける。この元気は、告白の勇気と不気味な女が吹き矢に塗ったドラッグからきている。
「ああああか。ちょうどよかった」
「あの、私、実は、中等部の頃から先輩が好きで、別に対した胸とかないんですけど別に私」
「そうか、それはとてもうれしい。ありがとう。私も君が好きだ。本当に最高のニュースと、最悪なニュースだ」
 最悪?告白は成功したのでは? と、ああああの顔に影が。
「実はついさっきああああが亡くなったらしい君はああああと仲がよかったろう。だってきみは……」
 先輩は手をグーパーする。
「きみはああああだね。死んだんだね。かわいそうに。私もああああが大好きだった。先輩先輩と姉のように慕ってくるけど、妹とは思えなかった。心では恋人のつもりでいたんだ。だからああああが告白してくれてうれしいし、ああああが死んでしまってとても悲しい」
「あの生きてるんですけど」
 女生徒・ああああにはすらっとした足が2本ある。しっかり地を踏んでいる。
「君は生きてるでも死んだんだ。とても悲しい」
「あの私別に生きてるんですけど。なんで死んでるんですかまさか私に死んでほしいんですか」
「不慮の事故らしい」
「私生きてるんですよ」
 女生徒・ああああは先輩を押し倒しキスをした。舌はあつく、またどこも汗ばみ湿っていた。
「私生きてるんですよ先輩私のこと好きなんですか別にでもはっきり」
「大好きだよ」
「嬉しい」

 愛情の確認と促進が終わって、インナーシャツのボタンを留めつつ、先輩は言った。
「夢みたいだ。ようやくああああと結ばれるなんて、死んだ後でなんて私はバカだ」
「まだ言ってる……」ああああが素肌で後ろから抱きつく。「死んでないですからね。別に明日も一緒ですよ」
「ああ、ずっと一緒だ……」
 翌日。先輩が死んだ。

続く

12不気味なイタミ:2015/07/25(土) 15:56:20
続き

 臨海学校の6日前の昼休み。海岸でさえ許せない地獄のような陽射し。
「全部あんたのせい?まあ私別に死ぬから殺すだけだけど」
 カッターナイフをキリリと伸ばす。寝っ転がる女は、なおも寝っ転がったしゃべる。
「私は魔人、火葬場悼美だ。能力は『生前葬』。ある誰かを死んでしまったと思いこませる、ただそれだけのちょっとした催眠能力。高二力フィールド下でも使える程度の、別に、大したことない能力だ」
「先輩が、私を死んだと思いこんだのは!」
「もちろん私のせいだ。死ぬ気で告白とかいったから、まあ、おせっかいというやつかな。死んだことにしてあげた。あー、カクテルが弱い、あー、だるい、あー」
「お前のせいで、先輩は誤解して死んじゃったんだァ!」
 ああああはカッターナイフを高く振り上げる。
「愛されてるね。でも」不気味な女・イタミは気だるげに言う。「先輩は死んだのかねえ。私の生前葬で、それ、私に思い込まされてるだけじゃないの」
 ああああの動きが止まる。屋上に、扉を開く音。先輩の登場だ。
「ああああ! 私だ! 会う人会う人みんなご愁傷様ですといってくる。最初はお前のことかと思ったが、どうやら私が死んでるらしい! 昨日死んだお前だ、答えてくれ! 私はどっちなんだ!?」
「先輩は死んだんです! だから私もすぐ追います」
「待て、お前は昨日死んだろう! 私がお前に追いついたんだ! なんだ? 死んだお前がいるのはつまり死んでないのにここは天国なのか?」
「私は死んでなんかいません! 先輩が死んだんです」
「私は死んでない」
「死んだんです!」
「じゃあ私は誰なんだ!」
「先輩です!」
「お前の大好きな私が、大好きなああああに言う! こっちに来い! 一緒に生きよう! いや生きてなくとも、一緒にいよう!」
「いくら先輩の言うことでも聞けません! 先輩が待ってるんです!」
「私はここにいるんだぞーー」
 自殺防止フェンスには、ひとつ、大きな裂け目がある。そこへ、人影がひとつ、飛び込んでいった。
「あら。あー、私、キレイ好きだからなあ」
 不気味なイタミが立ち上がり、立ちくらみ、ドラッグをのんで、歩き出す。屋上の扉には、先輩が涙を流して立っていた。
「死、ダブルでドン! てなショックだから精神2減少でわりかしパーだよね。自分も死んでるから3か。てことは今精神0じゃね先輩わお自分が死んだとき自分が生きてたら精神減んのかなやっぱ死んだってわかったらショックだよねえ」イタミは微笑む。「最愛に最愛を止められても、やっぱ追っちゃう、あ〜、同じもんが天秤にかかってんだから先輩さん関係ないっすよだって同じだし結局選んじゃったんですよねあのなんとかちゃんが、追うぞって。愛の性質ですかね。ウケる死にすぎでしょ」
 不気味なイタミが校舎を歩く。担任の先生と鉢合わせする。
「私、今日も忌引きです」
「どなたが亡くなられたんですか?」
「えーっと、イタミが」
「まったく、あなたの家には何人イタミがいるんですかね!」
 憤慨して担任は歩き出す。
(イタミにイヤミ…)
 イタミは狂って笑い駆け出した。
 校舎の裏。見上げると屋上のフェンスがある。フェンスの裂け目の真下。
「あれ、ゴミがもう一つ増えてる」
 不思議そうな顔して、イタミは二人の死体を焼却炉へと運んだ。

終わり

13仔狐クリス:2015/07/25(土) 19:55:40
・イラスト
土星
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51603619
仔狐クリス
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51603869
土星と仔狐クリス
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51603983

・SS
土星先輩と私【前編】
tp://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5593179

14一二兆:2015/07/25(土) 21:03:39
一二兆
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十七夜月美女
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着せ替えツール使ってつくったものです

15雪月通訳:2015/07/26(日) 12:09:24
可能であれば、キャラクターの個別ページに記載お願いします。
あと、雨月星座のエピソードの方も問題なければよろしくお願いします。

雪月通訳 エピソード

■■■■

 ここ私立妃芽薗学園には弁論部などが用いる修練場がある。
 土煙が立たず空調も効き涼やかで古代ローマを思わせる。白大理石で概ね作られた豪奢な建物。
 けれど大会に際しては舌の根から蒸散される言葉が枯れて、やがて血煙が絞り出される、そんな場所。

 そんな血と涙と涎が染み込んだ弁論場において、競技者が向かい合っている。静寂だ。
 本来ならかすかな音も見逃さないはずの音響を切っているのは、その片割れ、いやもしかしたら両方の持つ語学力の高さを物語っているようだった。
 先手を打ったのは、シルエットが小さい方だった。

 「ダッ(Да:「打つ」という意味のロシア語)!」
 呼吸を内に留め、一挙に吐きだす。英検をはじめとした言語伝達手段においての基本である。
 Д←このキリール文字は口を大きく開いた人を表意する通り、はじまりの一打として大きな意味を持つのだ。さて、そんな私の目の前には等身大の猫のぬいぐるみ、ふざけていると普通なら思うでしょう。

 ですが以前、お手合わせした風紀皇帝「白王みかど」様を上回る重圧を前にすれば、そのような侮りは無用を通り越して害悪であるとわかろうものです。
 はじめに言葉ありき。バベルの塔を失った人類が得た代替手段(ボディランゲージ)は魔王にも届き得ると私は信じます。舌遣いから伝播する表意は、肉の体を憑依(Possession)するものと為す。

 「……遅い、ですわ」
 tausend(タウゼント)、いいえ。当然とばかり受け流し、その勢を借りて一閃するその光撃は神経に通ずる拳。打つ(These)/打たれる(Antithese)→吹き飛ぶ(Synthese)!
 ヘーゲルの弁証法を用い、止揚(Aufheben)を挟んでの吹き飛ばし↑
 みやこ先生のドイツ語にはまこと惚れ惚れするようでした。ですが……。
 昨年まではドイツ語に中二を感じていましたが、語学者の端くれとしては過剰な思い入れは不要。
 「全然、満。足できません!」
 
 ドイツ語の流れを断ち切るファンシーな単語を織り交ぜ着地する。

 「スラヴ語派の言語はゲルマン語派の英検と組み合わせるには水と油ですわ。
 それをわかって無策で飛び込むのは日本語からやり直した方がよいのではなくて?」
 綺麗な日本語でした。Beautiful! 古典教師だからこそ出来る流麗な唇の動き。

 「私なら、出来――」
 「る、らる」
 それは教え子に助動詞の使い方を教える女教師の姿――。
 受身/可能/自発/尊敬:どれ!?
 答えは――。
 
 Answer:すべて

 うける/できる/おのずから/うやまう
 刹那の攻防をひっくり返る=私が受けで先生が攻めだ。
 「ああっ!」
 私の母国語は日本語だった。
 「母国語を知らずして国際社会は語れませんわ。社交の場において自国文化を語れない外交官は恥!」

 まどろみのけんを出すまでもなく、白王先生は古典の構えだけで戦っています。いつも通りぽんやりとした話法もそこそこに、静謐さを加えた古典文法相手には真正面から打ち込むしかない英検では届かず、ドイツ、ロシアと言った敵国語でもいなされる。
 胸ポケットに入れたベルリンの壁、そのかけらは押し倒す壁を象徴すると思っています。
 兄様がくださった欧州土産、物に縋るは惰弱であると思いつつも、どうか――!

16雪月通訳:2015/07/26(日) 12:10:39

 「ヤー(Я:「私」という意味のロシア語)!」
 決意を新たに、かつて英語と世界を二分したロシア語の基礎にして終焉を発現。
 右フックと見せかけて、左フック! ピョートル大帝はこの一撃でハンマーを振るった!
 
 迎撃態勢を取る先生、私の乏しい知識でも幾つか考えられる語幹からの変化を、先取りする。
 私――。
 「ニエット(Нет:「いいえ」という意味のロシア語)!」 
 贄と! 

 「掟破り――」
 言葉の壁を壊す掛詞(ダブルミーニング)=捨て身の一撃。
 腕を砕く一撃は、はがねのよろいを上回るまもりを持つぬいぐるみの前に止められる。
 鳥取砂漠で狩った飛び猫からべりべりっと剥ぎ取ったと言う噂とは、実際違う。
 「――ですわ」
 いいえ、止めてくれたのです。
 致死の一撃は私にとって、でした。行き場がなければ、砕くべき壁となるのは私、でした。

 ここ弁論場で、砕けた氷が遥かに舞った。
 とぽりと、ぬいぐるみは本来の水の形になって先生を濡らします。高校生の子どもがいてもおかしくない年頃にも関わらず、少々大人びた高校生と言って通じる若々しさ、です。
 「一撃のみならず、みずきちゃん特製の『みずのはごろも』まで砕くなんて――」
 やっぱり、冷凍庫に入れておいたのが悪かったのかしら?

 あくまで、のんきな先生でした。
 とにかく、これで先生が私用で持ち込んだ巨大冷蔵庫は解放されたことになります。
 風紀委員のみんなには少し感謝してもらわないと、なんてことは先生に言えるわけもないけれど。
 「白王先生、お手合わせありがとうございました(Спасибо за внимание.)」
 夏場だから、ロシア語で少しでも体を冷やしておかないと……なんて戯言は胸に秘めて。

 紹介が遅れました。
 私の名前は口舌院通訳(くぜついん・つうやく)。一応、口舌院一族に連なる者として学園の治安維持のために毎日頑張っています。
 で、こちらの綺麗で可憐でかわいい方が「白王(はくおう)みやこ」先生です。
 なんでも、かの風紀元老院の「白王みつるぎ」様の妹御と言うことで、その関係からかこの学園の風紀委員会で顧問教師を務めていらっしゃいます。
 その姪御方も同じ風紀と言う世界の中でがんばっていらっしゃるとかで、以前お手合わせした事がありましたが、結果について語ることは今はやめておきます。

■■■■

  ちょっと悔しかったのか、私費で作った暗室から「やみのころも」を引っ張り出そうとする先生、大人げないです……。あわてて急ぎの用があると言って別れて、人気のないところに移動します。
 一応、冷蔵庫については釘を刺しましたよ。白王先生、専門以外では――ですから。

 暗室も写真部、などから解放してほしいって嘆願されていますが、あの装備品は先生が借りているものとは言え、文字通り桁が違います。
 四人でパーティを組むくらいじゃないと、と思って頭の中で知り合いを動員してみました。
 うーん、「そうりょ」も「まほうつかい」も「ゆうしゃ」も――。
 
 とりあえず、こっちの用事を済ませてからにしましょうか。周りには、誰もいませんね。
 辞書をくり抜いて偽装していた黒電話を取り出して、確保していた電話線に接続します。
 盗聴防止の観点からも、こう言った枯れた技術の方がいいと、これから電話をするお兄様もおっしゃってました。
 回す/戻る/回す/戻る×12=つながります

 「Hello」
 「……? (笑)」
 「Excellent! lol」
 「(苦笑) ――?」
 「I see.」
 「(爆)」……(冷笑)  
 
 防諜の観点から会話の仔細については省かせていただきますが、これからの私は雪月として「カランドリエ」に潜入することになります。
 世界平和と、何よりお兄様のために――。

17雪月通訳:2015/07/26(日) 12:11:17
  
■■■■
  
■登場人物紹介

【口舌院通訳(くぜついん・つうやく)】(初登場) 
妃芽薗学園中等部三年。風紀委員会と『カランドリエ』に所属。壁破壊代行。兄「言語」の命に従って監視役として潜入した部においては「雪月」の姓を与えられる。兄の事を愛しているが、親愛の情の枠を出るものではない。能力名『言葉の壁より雪どけを(カーテンウォー⇒オッティェピィェリ)』効果:物理的な壁の破壊

【口舌院言語】
『暦』の副部長「卯月」として辣腕を振るい振るった男。天性の先導者。邪神復活に関わったとか、阻止したとか多くの情報が交錯しているが彼自身については良い噂ばかり伝え聞こえる。なお口舌院の姓は捨てているが便宜上この項ではそう表記する。能力名『深心活殺の聲(しんしんかっさつのこえ)』効果: 話術による潜在意識支配

【白王みやこ(はくおう-)】(初登場)
妃芽薗学園古典教師。風紀委員会顧問。ブラコン歴3×年。風紀業界の雄「白王みかど」の実の妹で兄の事を愛しており、今も貰い手がいない。本業以外では徹底した世間&常識知らずで姪っ子の恋路を本気で応援している。能力名『まどろみのけん』効果:触れた者を眠らせる。

【白王みかど】
漂泊の風紀委員。妹のみずきの想われ人。自分の秘密について全く気づいていない叔母に対して色々と複雑な思いを抱いている。その謎に満ちた半生についてはあやまださんお願いします。能力名『ひかりのよろい』効果:光の衣服化/解除

【白王みずき】
白王みかどの実の妹。みかどを想う人。ダンゲロスSS準優勝者。度々家を訪れる叔母については仲の良い女学生同士の距離感で接されており、我に返った後はドン引きしている。SS後、なにやってたかについてはあやまださんお願いします。能力名『みずのはごろも』効果:水の衣服化/解除

【白王みかど】
風紀元老院に属する男。みかど、みずき両名の父であり、みやこの兄。黒幕っぽいし、たぶん魔王っぽいと作者は勝手に思っている。その謎に満ちた人生についてはあやまださんお願いします。能力名:『やみのころも』効果:不明

■■■■

18仔狐クリス:2015/07/26(日) 15:38:00
イラスト:十星 迦南
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51618949

19流血少女GK:2015/07/26(日) 19:11:26
>>2
…4点
…4点
合計8点

>>4-7
…9点

>>8-9
…2点

>>10-12
4点

>>13
…2点
…2点
…2点
…9点
合計15点

>>14
…0.5点
…0.5点
合計1点

>>15-17
12点

>>18
2点

20のし:2015/07/26(日) 20:03:12
月雨雪
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51623351
「流」の秘術、正当後継者

21雪月通訳:2015/07/26(日) 20:24:14
>>17
【白王みかど】が二人いますが、二番目は【白王みつるぎ】で修正お願いします。

22のし:2015/07/26(日) 20:56:34
雨月星座
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51624418
カランドリエのメンバー

23胡亞聞:2015/07/26(日) 22:50:28
イラスト:胡 亞聞
tp://img.ly/CibW

24一二兆:2015/07/26(日) 23:07:13
コキンちゃん
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51627787

25一二兆:2015/07/26(日) 23:38:45
コキンUFOアタック
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51628687

26雨竜院愛雨:2015/07/27(月) 07:59:32
コキンちゃん
tp://t.co/g8BdbBGdj2

一十さん(&二十兄さんの装備を借りてきたパルプ)
tp://t.co/vOnbAMuTqJ

27大鶴ぺたん:2015/07/27(月) 22:13:37
【投稿期間に間に合わなかった大鶴ぺたんエピソード#1】

 大鶴ぺたん、高等部三年生。一応水泳部のエース候補だ。
 そんなあたしの一日は常にささやかな怒りに満ちている。
 朝、高等部の廊下を歩いていたあたしは一人の男子生徒に声をかけられる。

「あ、君。ここは高等部の教室だよ」
「あたしは高等部です。というか三年です」

 あたしは溜息をついてから男子生徒をじろりと見上げるように眺めた。
 秘められた怒りに男子生徒はたじろいだらしく慌てて姿勢を正した。

「え、先輩!?す、すみません、てっきり」
「てっきり?なんですか?」
「い、いえ!申し訳ありません!!」

 男子生徒は逃げるようにその場から去っていく。
 その様子を見てあたしは再び溜息をついた。

「……」

 自分の体をぺたぺたと触る。
 何故あたしはこんな貧相な体型なのだろう。
 牛乳は毎日飲んだ。好き嫌いもない。
 運動も毎日のようにしているし規則正しい生活をしている。
 それなのに、体は一向に育たない。
 背はもちろんの事、胸まで。
 別に、別に気にしてはいない。
 ただこのように些細とはいえ必要のないトラブルがしょっちゅう起きるのが問題なのだ。
 そう、断じて子供っぽい体型を気にしているわけでも、胸が無い事を気にしているわけでもないのだ。
 そこを誤解しないでいただきたい。

 このようなトラブルは当然部活中にもある。
 希望崎学園、プールサイド。
 あたしの近くにこれみよがしな巨乳と見るからに貧乳が近付いてきた。
 そんなに揺らして喧嘩売ってるんですか?
 いけないいけない、取り乱すところでした。

「ぺたんせんぱいー、聞いてくださいー、実はまた水着がきつくなってきちゃってー」
「……そうなんですか」
「しっ!大鶴先輩にそういうのは禁句です!」

 なんですかその気の使い方は!!別に気にしてなんていませんし!!
 別にいいですよ成長の報告くらい!!水着の新調とかもしなきゃいけないでしょう!あたしだってします!!
 ……サイズが変わった事は、それはないですけど……!

「別に、禁句とかでは、ありませんから。水着のサイズが合わないのは、大変ですね」
「ああー……ぺたんせんぱいってずっとその体型だからサイズが合わなくなるってことなくて楽そうでいいですよねー」

 ああ!!?
 舐めてんのかこの巨乳野郎が!!口のきき方には気をつけろよ!!?
 ……こほん、いけないいけない、取り乱すところでした。

「ぺたんせんぱい、元気出してください!需要ありますって!」

 こ、このクソ巨乳のクソ脳みそのクソ女がァーーー……ッ!!
 胸も頭もプリンで出来てんのかこんのアマはァ……!!
 需要とかじゃねえんだよこのッ!!ふざけやがってッ!!!

28大鶴ぺたん:2015/07/27(月) 22:14:42
【投稿期間に間に合わなかった大鶴ぺたんエピソード#2】

「……だ、大丈夫ですよ大鶴先輩、ほら、私だってそんなないですし……」
「……そうですか、そうですね」

 あたしはゆらりと立ちあがって、貧乳の方を見る。
 貧乳といっても、あたしよりは随分恵まれてるな?んん?

「乳なんて飾りですって!ね!」

 ほう?言ったな?乳なんて飾りだな?その言葉に偽りはないな?
 神に誓えるな?むしろあたしに誓えるな?ええおい、嘘ついたら針千本じゃすまねえぞ?

「ビィーッグ……(Big)」

 あたしは右手を構え、貧乳を見据える。

「バーストォ……(Bust)」

 貧乳は慌てふためき慌てて逃げようとするがもう遅い。
 お前の言った事が真実かどうか試させてもらう。

「ボィーーーーーーンムッ!!!!(Beam)」
「ひゃあっ!!」

 次の瞬間あたしの手からビームが放たれた。
 それが貧乳に直撃する。
 するとどうだ、貧乳の乳がみるみる膨れ上がり立派な巨乳に!
 これがあたしの忌まわしき魔人能力!
 他人の乳を大きくするだけの力……Big・Bust・Beam!!

「……わあ」
「おい、喜んだなお前?今喜んだなお前!!乳なんて飾りじゃなかったのかオラーッ!!!」
「ひ、ひぃっ!!」

 あたしは元貧乳の乳の間に水鉄砲を突っ込むと思いっきり揺らしてやる。
 こういうのか!?こういうのんが望みなんだろ!?おお!?

「や、やめてくださいぃー!大鶴先輩ー!!ゆ、揺れちゃ、あ、やあ、だめ、み、水着が、ずれちゃ……ひゃああっ!」
「気にすんじゃねえよぉ、飾りなんだろぉ?ああぁん!?」

 あたしは元貧乳の顔に何度も水鉄砲をぶっかけてやる。
 何故だ。何故この能力はあたしには一切効果がないのだ。
 ふざけている!何もかもがふざけている!!
 あたしは決めた。巨乳を全て倒してやる!
 貧乳は巨乳にしてから倒してやる!!
 全てあたしの敵だ!!覚悟しろ!!はーっはっはっはっはっはっ!!



 この後暴れすぎた事に対してぺたんは非常に後悔する事になる。
 しかし彼女の怒りはまた爆発する事となるであろう。そこに巨乳がある限り……

29砂漠谷レマ:2015/07/27(月) 22:30:41
可能ならプロローグSSとして個別ページに転載お願いします。



「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
妖艶な挨拶が深夜の礼拝堂にこだまする。
教会に集う乙女たちが、今夜も娼婦のような淫靡な表情で、男たちを迎え入れる。
快感を知った心身は一糸まとわぬ生まれたままの姿。
歯は立てないように、飲み込みすぎてえづかないように、ゆっくりとくわえ込むのが口での嗜み。
もちろん、自分だけ先に達してしまうなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。

私立妃芽薗学園  聖書研究会「子羊の会」
それは少女売春組織

---

砂漠谷レマはエリートビジネスマンの父と良家の令嬢の母との間に生まれた。
母は敬虔なキリスト教徒でレマも毎週教会に通い、洗礼も受けた。
レマが小学生の頃、母は重い病気になり、その時から教会への付き添いは父の役目になった。
普段仕事で忙しく、なかなかゆっくり出来ない父と触れ合えるその貴重な時間がレマは好きだった。
父も、神父様も、知らないおじさまたちも、いつもとても優しくしてくれた。
優しく、壊れ物に触るかのように大切にレマの体を撫で、温かい愛情を注いでくれた。
その「愛の儀式」の正体をレマが知ったのは中学3年になった頃だった。

箱入りで育てられたレマは「姦淫」というのが何やら忌まわしい、汚らわしいものであると知っていても
どのような行為を指すのか具体的には知らなかった。ましてやそれが愛の儀式と結びつくなどと想像もできなかった。

――私の貞操は、物心つく頃には汚されていた。
模範的な優等生であるために、親や教師の言いつけに従い、努力し続けてきたことには何の価値もなかった。
私は貞淑なレディーになる資格など最初から持っていなかったのだから。

レマは両親と自らの人生とを呪った。
だが、だからと言ってどのような反抗をすればいいのかわからなかった。
妃芽薗学園には所謂不良と呼ばれるような生徒は居ない。

夏休みになれば寮を出て実家に帰らなければならない。
「愛の儀式」は今でも帰省の度に行われている。
その時をレマは恐れた。

レマのもとに持たさられたのは父の訃報だった。
葬儀の席で父の知人たちが次々と不審死を遂げていることを知る。
レマはすぐに彼らの共通点に気づいた。
彼らはいずれも「愛の儀式」の関係者である。

彼女はそれを「神罰」だと解釈した。
そしてそれは同時に自分一人が神に黙殺されたと彼女には思われた。

----

レマは聖書研究会を発足し、妃芽薗学園に愛の儀式をもたらした。
中高一貫の私立女子校というブランドは高く売れる。
客達は地位と権力のある者ばかり、彼らが秘密を漏らす心配はない。
妃芽薗学園は誰にも知られずに根からゆっくりと腐っていくだろう。

男たちに抱かれ、彼らの欲望を迎え入れながらもレマの心は乾いている。
「神よ、いつになったらあなたは私を罰してくれるのですか。あなたが私を無視できなくなるまで私は何度でもあなたを冒涜します。エロイ!エロイ!レマ・サバクタニ!(神よどうして私を見棄てられたのですか!)」
レマの嘆きは未だ天に届かない。

30雨竜院愛雨:2015/07/28(火) 06:28:24
たたかえ蟹ちゃんシリーズ「サイバネvsサバゲー、ローマ古代カラテvs相撲、魔法技術vs傘術」#1

ラクロスの試合終了を告げる笛が鳴る。スコアは12-3。お忍びとは言え、一国の王女がゴーリーを務めているにもかかわらず容赦なく12点を叩き込んだ妃芽薗ラクロス部には拍手を贈りたい。一年の恵比原静穂と蝦保江瑠璃奈のコンビネーションが冴えていたことも記しておこう。

「うわー、負けたーっ! 静穂も瑠璃奈も上手くなっちゃって!」真木ハルコは悔しがる。「ふふ……、ハルコはあまり上達してないね……」静穂がからかう。「まあまあ、ハルコは公務が忙しいから下手でも仕方ない仕方ない」瑠璃奈がフォローになってなるようななってないようなことを言う。「ぐぬぬ」

ハルコは歯軋りして悔しがるが、とても楽しそうだ。真木ハルコとは世を忍ぶ仮の姿。その正体は魔法王国マジカニアの第一王女パルピューラ・マジカニア・レガリス。通称、パルプである。一年間の人間界修行を終えたパルプは異世界の王国に帰ったが、多忙な公務の合間を縫って時々こうして遊びに来る。

人間界での得難い親友である静穂と瑠璃奈たちと暫し談笑した後、ハルコはグラウンドを離れて妃芽薗の森へと向かった。本日来国した目的を果たすために。手に持ったラクロス・スティックをくるりと回すと、クロスは白い光に包まれ星を象った金色のロッドに姿を変えた。

「マジカニック☆……」ハルコは金色のラクティ☆ロッドを優雅な所作で高く掲げた。「ポリモルフ」変身だ! ロッドの先から幾筋もの光が放たれ、真木ハルコの……パルプの身体を包み込む。その姿が変わってゆく……蟹めいた巨大なサイバネ☆クローの両腕を持つ異様な姿に!

「ククク……まさか奴があの世から舞い戻って来るとはなぁ……雨竜院のメガネ……フン、霧雨といいコイツといい、眼鏡が似合う奴は気に入らねえ…………ブッ殺すッ!!」ああ、これは民から愛されしマジカニア王女の知られざる姿、通称「蟹ちゃん」だ! ※通称がある時点でめっちゃ知られてる……。

そして、蟹ちゃんは標的を見つけ出した。ミリタリーウェアに、紫の晴雨兼用武傘『ペトータルレイン』。左手にはマカロフ拳銃のエアガン。くるくるの癖っ毛は長く、大きな眼鏡に大きなツリ目が可愛らしい。彼女は――ウルメは瞳を潤ませながら挨拶した。「はじめまして。お会いできて光栄です」

「ハハハ、光栄に思いながら死ね!」ジャキン! 蟹ちゃんのサイバネ☆クローが開き火遁の炎が噴出する。「まだ死にませんよー!」ウルメは武傘を開いて回転。雨竜院流『雨流』! 火遁放射の切れ目にマカロフによる銃撃。タン! 紫のオーラを纏った弾丸が飛ぶ。

タン、タン、タタタン! マカロフ拳銃のダブルアクションで紫の弾が次々に射出される。しかし「効かねェーなァーッ!」蟹ちゃんはサイバネ☆クローの堅固な装甲を盾にして銃弾を防ぎながら前進する。ウルメの能力による干物効果は金属には効かない!

(ひゃー、ヤバイ楽しいっ!)ウルメは窮地に瞳を輝かせる。(さあ近付いてこい!)マカロフを連射しながら、ウルメは蟹ちゃんを待ち受ける。蟹ちゃんは銃弾を防御しながら前進。(ハッケヨイ……)引き付けて撃つ。サバゲーの基本だ。「……ノコッタ!」ウルメのサマーソルトキック!

「サイバネvsサバゲー、ローマ古代カラテvs相撲、魔法技術vs傘術」#1 おわり

31雨竜院愛雨:2015/07/28(火) 06:29:00
「サイバネvsサバゲー、ローマ古代カラテvs相撲、魔法技術vs傘術」#2

古来より相撲にふたつの流派あり。ひとつ、己の体躯を活かし、肉の鎧を纏って圧殺する野見宿禰の宿禰相撲。ひとつ、己の技巧を磨き、巧みな体捌きで蹴殺する当麻蹴速の蹴速相撲。華奢で体格に恵まれぬウルメは、小結であった股の富士より蹴速相撲のインストラクションを受けている。

マカロフ拳銃の連射によって蟹ちゃんのサイバネ☆クロー防御を高く誘導し、近接状態から相撲奥義サマーソルトキックを叩き込む。「グワーッ!」ウルメの策は見事に当たり、顎を蹴り上げられた蟹ちゃんの脳が揺れる。蟹ちゃんダウン! 後方宙返りを決めたウルメは再び距離を取り武傘と銃を構える。

「ペッ」素早く立ち上がった蟹ちゃんが、血と折れた前歯を吐き捨てる。「チィーッ、貴様もこの技を使うとはなァ。サマーソルトは古代ローマカラテだけの技じゃないってことか」「当麻蹴速の相撲は古代ローマカラテを修めていたという一説もあります」「なるほど、ローマが訛って当麻というわけか」

「だが所詮、蹴速は野見宿禰に敗れた負け犬よ! 負けキャラの技を使う貴様に勝ち目はない! イヤーッ!」蟹ちゃんは古代ローマカラテで鍛えた三倍脚力で跳躍! 空中で前方二回転! 蟹爪めいたクローを開き上空からのサイバネ火遁放射!「イヤーッ!」ウルメは側転で回避しながら銃撃応戦!

タタン! 空中の蟹ちゃんは十分な防御体勢を取れず胸部に被弾。BB弾の実体ダメージはほとんどないが……「干物になあれっ!」ウルメの能力『リフメア』が発動。蟹ちゃんの体から水分が奪われ、逆さまの雨となって天に昇ってゆく!「ぐがァッ……息が……ッ!」

収斂進化によって人類に似た姿ではあるが、マジカニア人は甲殻類。陸上生活に順応していても蟹ちゃんが鰓呼吸なのは変わりない。ゆえに、鰓の水分が奪われることは深刻な呼吸困難を引き起こす!「アバーッ! アババーッ!」着地に失敗した蟹ちゃんは、そのまま苦し気に地面をのたうつ。

「……サーキュレイション」ザアアーッ。突然の通り雨が、妃芽薗の森に降り注ぎ木々を潤した。これが、ウルメが新たに得た能力だ。天に昇った水は再び地に降る。それが繰り返される。人は生まれ死に、天に還り、そしてまた生まれ変わる。世界の理。

蟹ちゃんは血塗れの口を大きく開き、雨水を受け止めて喉と鰓を潤す。「ぜェ、ぜェ……助かったぜ」荒い息を吹き返す。ウルメはにっこりと笑う。「うふふ。じゃあそろそろ、殺す気で行きますね」ウルメは眼鏡をスッと外した。ウルメの眼が凶悪に細まる。戦いと殺しを楽しむ者の眼だ。

ガゴン。蟹ちゃんのクローが二つに裂け、上下に開く。「ならばこっちも、これからはブッ殺すつもりで行かせてもらうぜェーッ!」嘘である。蟹ちゃんは最初から殺す気満点だし、誰一人殺す気はない。開いたクローの中から細長いスティンガーミサイルが現れる。およそ対人に用いるべき武器ではない!

「サイバネvsサバゲー、ローマ古代カラテvs相撲、魔法技術vs傘術」#2 おわり

32雨竜院愛雨:2015/07/28(火) 06:29:22
「サイバネvsサバゲー、ローマ古代カラテvs相撲、魔法技術vs傘術」#3

眼鏡を外したウルメは武傘を天地逆に構え、凶悪な目付きで蟹ちゃんを睨みながら邪神の名を呼んだ。「■■■れ、■■■■■■■■■■」それが、彼女の持つ武傘の真名であった。本来持ち手である場所のカバーが外れ、仕込まれていた死神めいた鎌状の刃が現れる。首刈りパラソル。モード『メア』。

「ククク……面白い武器じゃねェか」スティンガーミサイル発射準備の整ったクローを構えて蟹ちゃんは笑った。「だが、てめェはもう終わりだ。良いことを教えてやろう。このミサイルは赤外線マーカーで自動追尾する。てめェはもう逃げられないんだぜ?」「へえ。良いことを教えてくれてありがとう」

ばしゅう! クローから炎が噴き出し、スティンガーミサイルが射出される!「死ねェーッ!」一直線にウルメ目掛けて飛ぶミサイル。ウルメは、マカロフ拳銃を自分自身に向けた。タタタン! 干物ショットによるセルフファイア! ウルメの体から奪われた水分が、逆さまの雨となって天に昇る!

「ぐうっ……」全身から水分を失った苦痛にウルメが呻く。「馬鹿め! とち狂ったか!」蟹ちゃんが嘲る。ウルメに迫るスティンガーミサイル。「ぐ……イヤーッ!」死力を振り絞りウルメは側転!「愚かな! 赤外線マァーカァーッ!」ウルメの体温を追跡してミサイルが軌道を……

軌道を変えない! スティンガーミサイルは直進し、ウルメの横をすり抜けて後方で大爆発!「な、何だとーッ!? 何故誘導が効かない!?」ザアアーッ! 天に昇った水分が再び癒しの雨となって降り注ぎ、ウルメは失った体力を取り戻す。ウルメは蟹ちゃんへ急速接近! 近接格闘距離!

ウルメは『リフメア』による脱水の副次効果による体温低下を利用して赤外線マーカーを回避したのだ。「トライ・ペゾヘドロン!」右手に首刈りパラソル。左手にマカロフ拳銃。脚にみなぎる相撲の力。傘術・サバゲー・相撲の三択攻撃!「ぬうゥーッ!」蟹ちゃんは防御姿勢。読み切れるのか!?

ウルメの身体が一瞬沈む。それを蟹ちゃんは見逃さなかった。「ドスコイッ!」相撲シャウトと共に蟹ちゃんの顎を狙った蹴りが放たれる。「今だ! イヤーッ!」蟹ちゃんは上体を後方に大きく仰け反らせた。これは……! 古代ローマカラテが生んだ偉大なる回避ムーブメント、ブリッジだ!!

ウルメの蹴りは目標を見失って空を切る。ウルメの身体が宙高く跳躍する。「ハッハハーッ! それじゃあ着地の隙に超必を決めさせてもらうぜェーッ!」蟹ちゃんのクローが赤いサイバネ光を放つ!「ウルトラ☆スーパー☆……」ナムサン! ゲージ3本使用の超ハサミ☆コウゲキだ! ウルメ危うし!

だが、ウルメの態勢は崩れていなかった。空中で後方に一回転したウルメは首刈りパラソルを構え空対地攻撃の予備動作。「(サマソはフェイントだっただと!?)ビッグ☆マキシム☆グレート☆……」隙を作ったのは蟹ちゃんの方だった! 超必殺技シーケンスが間に合わない!「ウリューイン……」

「(あわわわわ……)ストロング☆ハサミ☆……」「ファストラッシュ!!」蟹ちゃんの上空から首刈りパラソルの連続斬撃が雨のように降り注ぐ! 雨竜院流の連続突き『篠突く雨』の、首刈りアレンジだ!「グギャアアアアーッ!!」断末魔の声を上げる蟹ちゃんを、白い光が包み込んだ……。

連続攻撃により、致死ダメージの4倍のダメージを受けてオーバーキルされた蟹ちゃんは血塗れで倒れた。だが、まだ息はある。それは、蟹ちゃんに掛けられた不死の魔法技術『ホーリーライト☆フォース』の加護によるものだ。蟹ちゃんは決して死なず、誰も殺さない。ウルメは眼鏡を掛けた。

ウルメは勝利と殺人の手応えによる歓びを圧し殺し、瞳を潤ませながら頭を下げた。「お手合わせ、ありがとうございました。……その……大丈夫ですか?」タン、タン。マカロフ拳銃で2発、セルフファイアする。ウルメから失われた水分が、癒しの雨となって蟹ちゃんに降り注ぐ。

暖かい白い光が蟹ちゃんを包み、変身が解除されてパルプの姿に戻った。「痛たたた……容赦ない攻撃だったなぁ……」「ごめんなさい。加減が良くわからなくて」「いえ、構いませんよ。その感覚を掴むための模擬戦ですから」体力を僅かばかり回復したパルプは笑顔を見せた。

「ホリラン、頑張ってくださいね」「はい!」パルプの言葉に、ウルメは力強くうなづいた。そしてウルメは寮にパルプを招き、彼女なりに丁重にもてなした。それは、一国の王女を迎えるのには、あまりにもささやかで庶民的な会食だったが、パルプは大いに満足したようだった。

「サイバネvsサバゲー、ローマ古代カラテvs相撲、魔法技術vs傘術」おわり

33雨竜院愛雨:2015/07/28(火) 20:35:17
タイガーヴィーナスの中の人を描きました
tp://t.co/8P66jpyKR4

34流血少女GK:2015/07/28(火) 23:31:41
>>20
2点

>>22
2点

>>23
4点

>>24
1点

>>25
1点

>>26
2点
4点
合計6点

>>27-28
5点

>>29
6点

>>30-32
8点

>>33
4点

35大鶴ぺたん:2015/07/29(水) 09:42:19
>>27
希望崎学園ではなく妃芽薗学園でした

36大鶴ぺたん:2015/07/29(水) 10:11:23
>>27
何度もすみません、男子生徒も女子生徒に修正をお願いします

37仔狐クリス:2015/07/29(水) 16:26:57
【仔狐クリスと鮫氷しゃち】

鬼の少女と虎の仮面の少女。
彼女らと出会った時、唐突に戦闘衝動に襲われた。
それは抗うことのできない程の凄まじい衝動で、「戦いたい」という思いが脳を支配し全身を突き抜けた。
何故そんな衝動が芽生えたのかは分からない。
分かることがあるとすれば、私は戦闘衝動の赴くままに彼女達と戦ったという事実だけだ。

私が戦った二人の少女達も、何らかの理由があって私に戦いを挑んでいるようだった。
戦闘中に分かったことは、彼女たちも私と“同等”の存在だということだ。
それすなわち、戦闘スタイルや身体能力は違えど、高い成長性を秘めた魔人であるということだ。
そしてもう一つ感じたことは、実戦経験など無いに等しい私だったが、思いの外渡り合えるということだ。

事実、私は鬼の少女と虎の仮面の少女に勝利した。

一人目は相手が隙の大きい攻撃を繰り出したところに私の大技である「エナジーフィスト」を当てて倒した。
二人目は他の“同等”の存在と戦ってかなり消耗していたようで、苦も無く二撃目で打ち破った。

そして私は、三人目の人影を見つける。
二戦終わって休息の間の無い状態だったが、まだまだ体力は有り余っている。
だから――

「――このまま三人目も倒せる、なんて思ってないでしょうね?」

私の思いを見透かすような言葉を口にして、その絶望は舞い降りた。
その矮躯から発せられる圧倒的な存在感に気力を削がれた。
そして迫る四連撃。
一撃だけ回避することには成功したが、反撃するだけの気力はなかった。
続く四連撃で、私は完全にノックダウンした。

戦って、身に染みて理解した圧倒的な戦力差。
あれは違う。
あれは何か“私達”とは違う“別”の存在だ。

意識が薄れていく中で、悔しさを噛みしめる。
凄い存在になるためには、もっと強くならなくてはいけない。
今負けた相手にも勝てるようになりたい。

――勝機はきっとあるはず。
何故ならアレは私達と違って、既に完成されている。
私はまだ成長性がある。いずれ成長すれば彼女を倒せるだけの強さを手に入れられるはず――

一縷の希望の光を見出して、私は意識を失った。

【END】

38衣紗早包:2015/07/29(水) 17:09:44
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51670311
雨竜院雨

39流血少女サブGK:2015/07/29(水) 20:48:40
千本桜 明菜 のエピソードをwikiに更新しました。

40胡亞聞:2015/07/29(水) 22:44:02
口舌院五六八さん です!

tp://img.ly/Cj2N

41雨竜院愛雨:2015/07/29(水) 23:04:04
【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】

無限の闇を湛え、怖いぐらいに深い藍色をした水平線の上に、無数の星が瞬く。夜空の空気は澄み渡り、都会では見えないような暗い星まで明瞭に見える。だが、星々の配置は我々が見慣れた空とは趣を異にしている。星座の所々が欠けているのだ。だが、その話は今の彼女には関係ないので割愛しよう。

(気持ちのいい風……)夜の砂浜に独り佇む少女は、冷たい夜の海風が乱した前髪をかき上げ、整えた。その髪は夜の闇の中にあってなお、星の光を映して桜色の光を放っているようだった。その名も一十(にのまえ・くろす)。一族中の魔人率が99%を超える戦闘破壊家族、一家(にのまえけ)の一員。

妃芽薗学園高等部三年に在籍する十は、海の幸が贅沢に使われた夕食を食べた後、宿泊先の『メロウズホテル』を抜け出して浜辺にやって来た。十は、ことさらに孤独を好むような人物ではない。だが、彼女のことを慕ってやって来る友人たち(友人たちです!)を遠ざけて考え事をしたい時もある。

十は、何故だか同性に好かれやすい。その理由は百合粒子の存在を仮定すれば説明できることだが、今の人類の科学力は百合粒子の確実な観測に成功してはいない。しかし、十は百合ではない。百合ではないのだ。大事なことなので何度も言うが、百合ではないのである。

まあ、十が百合かどうかについても今日の話にとってはあまり本質的でないのでこれぐらいにして、彼女の今の悩みは先日受け取った手紙のことである。差出人不明の手紙。すわ恋文か。残念、そうではなかった。手紙の内容は、不可解で不吉なものだった。それはまるで……

過去の(普通の意味で過去と言っていいものか疑問だが、ともかく過去の)辛い出来事を思い起こしそうになった十だが、夜の砂浜を踏み締めながら近付いてくる足音を耳にして思索を中断した。(あの子は確か……)大きな眼鏡。普段はくるくると跳ねている髪の毛は、風呂上がりのため幾分か大人しい。

「こんばんは、生徒会の一十さん。番長グループの矢達メアです」今は雨竜院愛雨(うりゅういん・めう)と名乗ることの多いウルメだが、今宵は敢えて昔使っていた名前を名乗った。「生徒会って、私はそんなに生徒会に関わっているわけじゃ……」十は、そう言いかけたところで気付いた。

「メアさん、もしかしてあなたも『あの』ハルマゲドンを知ってるの?」「やっぱり!」ウルメは瞳をキラキラと輝かせた。「十さんも『転校生』なんですね!」そう。彼女達は魔人を超えた魔人でありまさに魔人そのものの『転校生』なのである。わかりやすく言えばエクス魔人だ(それは違う)。

『転校生』と言ってもその実態は様々である。多くの場合、通常の魔人よりも遥かに強大な力を持っているが、そうでない場合もある。一十と雨竜院愛雨は、今の能力ならば普通の魔人と大差なく、むしろやや弱い方かもしれない。だが、彼女達は紛れもなく『転校生』なのである。

彼女たちは、久我原史香がリブートをかける前、『一周目』の記憶を持っている。その意味では正しく異世界からの『転校生』である。「敵陣営だったから全然お話できませんでしたが、私、十さんのことを素敵だなって思ってたんですよ」百合粒子に当てられたのか、ウルメは頬を染めながらそう言った。

「貴女は、あの頃と比べるとずいぶん変わったように見えます」十は、ウルメのことをそう評した。『一周目』の矢達メアは、厭世的でいつも暗い表情をしていた。「今の方が、ずっと素敵」十は華やかに笑った。「えへへ、ありがとうございます」ウルメは嬉しくて、瞳を潤ませた。波の音が静かに響く。

【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】#1 おわり

42雨竜院愛雨:2015/07/29(水) 23:04:23
【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】#2

暗く静かな夜の砂浜に、穏やかな波が寄せては返し、返しては寄せる。膝を崩して座っている十の隣に、ウルメも並んで腰をおろした。近い。距離がやたらと近い。十は軽く危機感を覚えた。「私、向こうでは死んじゃったんですよ。知ってますよね」「ええ」「世界が、こんなに綺麗なことも知らずに、ね」

ウルメは水平線と、煌めく星を見て瞳に涙を滲ませた。十も、星を見た。今夜の星空はひときわ綺麗だ。十は、星座の中の欠けた星に、『あの』ハルマゲドンに散った妃芽薗の愛すべき仲間たちのことを想った。十の心に隙ができたのを、ウルメは見逃さなかった。

ウルメは素早く十に組み付いて唇を奪う。そしてそのまま砂の上に押し倒す。十の唇に伝わる柔らかな感触。眼鏡の奥のウルメの瞳は閉じられ、真意は掴めない。十の視線の先には満天の星空。ウルメの口付けは、不馴れで拙いものだった。(ちょ……積極的すぎ!)十の反撃が始まる!

相手は手練れではない。コンマ5秒でウルメの技量を測りきった十は、余裕を持ってウルメの唇を楽しんだ。「ん……」次第にウルメの吐息に甘い響きが混じりだす。ウルメが眼を細く開くと、満天の星空。十と目が合ってしまい慌てて眼を閉じる。いつの間にか体勢が入れ替わっている!

「ん……、う……」最早、ウルメは十の為すがままだった。十の唇が動く度、ウルメの躯がびくりと固くなる。それが女性同士のものであるならば……十は宇宙一キスが巧い! 念のため。一十は百合ではないので宜しくお願いします。十はウルメの控え目な胸に手を伸ばした。お願いしますよ!

(どういうつもりか知らないけど……貴女の心、見せてもらうよ!)ウルメの胸に当てられた十の手が、何かを掴んだ。百合粒子が収束して実体化してゆく。伝説のアーサー王がそうしたように、十はウルメの胸からひと振りの剣を引き抜いた。その剣は真っ直ぐで瑞々しく、どこか危うさを秘めていた。

十は輝く剣を手にして身を起こした。「なるほど……私に特別な想いがあるってわけじゃなくて好奇心なんですね」ウルメは超絶のキスから解放され、肩で息をしながら答えた。「へへ……宇宙一スゴいって聞いたから試してみたくて……」ウルメは、武傘を支えにして立ち上がった。「では、戦いましょう」


「メアさん……? 私たちに戦う理由なんて……」「あります」ウルメは懐から封筒を取り出した。「『転校生』の十さんの所にも、同じものが届いているはずです」それは、ホリランへの招待状。なさけむようのシングル・エリミネーション。ウルメは既に戦う覚悟を決めてここに来ている。

「正気なの? この招待状からは『あの』ハルマゲドンと同じ臭いがする! 貴女、自分がどんな目に遭ったのか忘れたの?」「覚えてる」ウルメの瞳が紫色に燃えた。「今度は、死なない。覚えてる。戦いを拒み、脱出を目指した“探索組”が、どんな最期を迎えたのかも。きっと今回も、逃げ場はない」

「だったら……」ウルメは瞳を輝かせて笑った。「楽しまなくちゃね! さあ楽しもう、『ペトータルレイン』!」ウルメが武傘の名を呼ぶと、傘先端の石突き部カバーが外れて鋭利な突剣が姿を現した。「やるしか……ないの……?」十はウルメから引き抜いた輝く心剣を構えた。

【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】#2 おわり

43雨竜院愛雨:2015/07/29(水) 23:04:35
【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】#3

暗い夜の浜辺で、ウルメと十の戦闘が始まった。月はなく、星が二人を静かに見守っている。ウルメの武器は、武傘『ペトータルレイン』と、エアガン『マカロフPM』。マカロフの銃口からは、仄かに紫の光。ウルメの能力による、ネガ雨乞いエナジーの光だ。十の武器は、ウルメから取り出した輝く心剣。

両手に武器を持ち自然体で構えるウルメだが、その構えはやや覚束ない。先程のキスがまだ足に来ているのだ。「メアさん、やめませんか?」十は最後通告。「デストロイゼムオール!」ウルメは笑顔と共に、“よろしくお願いします”という意味の英語で応えた。

最早戦いは避けられない。それならば、ウルメの脚が回復する前に速攻で決める。十は砂を蹴って一気に距離を詰めた。心剣士の剣気によって周囲の百合粒子が結晶化し、百合の花弁の如くに宙を舞い踊る。光の剣の軌跡が縦横に二度、ウルメを刻んだ。必殺の百合十字剣『リーリエ・クロイツ』!

ミリタリー調迷彩柄のウルメの服が十文字に切り裂かれ、鮮血が滲む。手痛い損傷だ。だが、ウルメは笑った。戦いが楽しいから。「ぐっ……」十は苦しげな声を出してよろめいた。脇腹から砂の上に血がぼたぼたと落ちる。ウルメの武傘もまた、十を捉えていたのだ。

必殺『トライ・ペゾヘドロン』。傘術、サバゲー殺法、相撲の多彩な技から適切なものを選択することであらゆる状況に対応できるのがウルメの強みだ。『リーリエ・クロイツ』に対して完璧なタイミングで放った武傘の突きにより、十の傷は深い。だが、なぜウルメは初見の技に対応できたのだろう。

十の修めたドイツ流剣術は、失われた武術だ。だが、その技法の一部は伝承され……とある組織の暗殺術にも受け継がれていた。ウルメは、ドイツ流剣術と同様の歩法を身に付けた元暗殺者と何度も手合わせをしたことがあった。元暗殺者の名はクラウディア・ニーゼルレーゲン……あるいは、雨竜院霧雨。

互いに傷を負った両者が振り向く。傷の深さからか、十の動きが一瞬遅れた。ウルメは一瞬で間合いを詰める。密着距離。ウルメと十の顔が近い。右手には武傘。左手には拳銃。再び『トライ・ペゾヘドロン』。武傘で突くわけでもなく。拳銃を撃つわけでもなく。ウルメは両腕で、十を抱き締めた。

気中の百合濃度が高まり、飽和した百合粒子が結晶化して白い花弁となって二人の周囲を舞う。ウルメは十を強く抱き締め……そのまま押し倒した。暗黒相撲奥義『寄り倒し』だ! そして、仰向けに倒された十の豊かな胸の上に、ウルメは素早く馬乗りになった。十の額に、マカロフ拳銃を突きつける。

「フリーズ。干物にされたくなければ、降参してください」銃を額に当てながら、ウルメは宣言する。「うん。まいった」十は素直に投降した。かくして、『転校生』同士による戦いの宴『ホリラン』の緒戦はウルメの勝利で終わった。

雨竜院愛雨の身は、明日には灰になる定めかもしれない。一十の躯は、明日には塵と散るかもしれない。呪われしハルマゲドンの開戦が迫っている。だが今は。だからこそ。精一杯、この戦いを楽しもう。ウルメはそう考えている。互いの健闘を称え、二人はもう一度、軽い口付けを交わした。

【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】おわり

44仔狐クリス:2015/07/29(水) 23:33:59
はい、こんばんは! 1stキャラは土星! PL転校生は仔狐クリス! 中の人は冥王星です!よろしくお願いします!
ツイッターで呟いた好きなキャラクターの感想のまとめです。
ツイッターをやってない人にも感想が届いて欲しいと思ったので、ここにも投稿しておきます。

【流血少女MMキャラ感想】
tp://togetter.com/li/854076

45陸道舞靡:2015/07/29(水) 23:54:29
ダンゲロス流血少女MM 陸道舞靡汎用出会いSSテンプレート「代わり映えのしない日々の変わった出会い〜(任意のキャラクター名)編〜」

★このテンプレートの使い方:
このテンプレートは()でくくられた部分を()内の指定にしたがって自分のキャラクターにあうように文章を変更することで、そのキャラクターと陸道舞靡との出会いSSを作成することが出来ます。
これは普段SSを書かない人でも簡単にSSを書けるよう配慮して作成されたものです。みなさんどしどし作ってみましょう。
GKに怒られてもこのテンプレートの作成者は一切責任を負わないものとします。

★本文
 面接会場にきゅっきゅ、と金属をこする音が響くのを聞きながら、陸道舞靡はため息をついた。
 今日の面接対象者は全部で30人以上、先ほどで20人目だったか。
 陸道の腕につけられた超巨大プレス機を掃除する下級面接官を横目で見ながら、彼女は先ほど面接した受験生を思い出そうとした。
 代わり映えのしないアピールポイント、特徴のない経歴、ちょっと圧迫したらすぐに潰れてしまった。
 もう顔も思い出せない。記憶のそこからひねり出そうにも、出てくるのはため息だけだ。
 これがまだ10人以上も続くと思うと気が重いが、仕事故に投げ出すこともできない。

「陸道さん、プレス機のメンテ、終わりました」
「ああ、ご苦労。あと、次の人の履歴書も出しておいてね」
「はい」

 下級面接官が取り出した履歴書を、陸道は一瞥もせず机に放置する。どうせ対して期待も出来ない、目を通すだけ無駄というものだ。
 
「それでは、次の方どうぞ」

 可能な限りおざなりになる気持ちを隠し、次の面接対象者を呼ぶ。
 コンコンコン、とドアがノックされ、失礼します、と面接対象者が入ってきました。

「(あなたのキャラクターの学年とクラス)、(あなたのキャラクターの部活・もしくは委員会)所属、(あなたのキャラクターの氏名)です。よろしくお願いします」

 瞬間、部屋の空気が塗り替わった。
 これまでの受験者とは違う(あなたのキャラクターを讃える精一杯の文章)で(あなたのキャラクターを讃える精一杯の文章)な雰囲気に、陸道は思わず息を呑んだ。
 口の端に笑みが溢れる。この女の力を試したい。圧迫したい。それを押し返すところが見たい。
 
「それでは、面接を開始させていただきます」

 超巨大プレス機の蒸気シリンダーに煙を吐き出させながら、陸道と(貴女のキャラクターの名前)の圧迫面接が始まった。

――――

 ふぅ、と呼気が口から漏れだす。シリンダーの蒸気よりも熱量がこもっているように感じるのも、無理は無いだろう。

「予想外だったな。まさかあんな奴が(FS1以上ある場合:私の圧迫面接をやり過ごすとは FS0、防御+体力10以上:圧迫されても普通に耐えるとは FS0、防御+体力9以下:圧迫されて死ぬとは)」

 違和感を覚えて腕に手を向ける。万全のメンテナンスをされていた超巨大プレス機がガクガクと震えていた。

「恐怖……いや、期待か。まさか私があんな(以下からランダムor任意選択。1.飢えた 2.追い詰められた 3.希望を湛えた 4.恐れを知らない 5.粘ついた 6.キラキラした)(以下からランダムor任意選択 1.戦士 2.勇者 3.乙女 4.狼 5.イグアナ 6.モケーレ・ムベンベ)のような(瞳があるキャラクターの場合:瞳をした 瞳がないキャラクターの場合:(瞳以外のそのキャラクターに存在する適当な部位)をした)奴にな……!」

 手元の履歴書に目を落とし、合格の判をプレスする。
 一次面接はこれで突破だ。あいつが最終的に採用されるか、それとも不採用か。それは陸道の知るところではない。だが…… 

「ふふ……どうやらこれから、面白くなりそうだ」

 抑えきれない熱い蒸気が、再び、口とシリンダーから漏れだした。



46陸道舞靡:2015/07/29(水) 23:55:45
>>45
一部抜けがあったので修正

ダンゲロス流血少女MM 陸道舞靡汎用出会いSSテンプレート「代わり映えのしない日々の変わった出会い〜(任意のキャラクター名)編〜」

★このテンプレートの使い方:
このテンプレートは()でくくられた部分を()内の指定にしたがって自分のキャラクターにあうように文章を変更することで、そのキャラクターと陸道舞靡との出会いSSを作成することが出来ます。
これは普段SSを書かない人でも簡単にSSを書けるよう配慮して作成されたものです。みなさんどしどし作ってみましょう。
GKに怒られてもこのテンプレートの作成者は一切責任を負わないものとします。

★本文
 面接会場にきゅっきゅ、と金属をこする音が響くのを聞きながら、陸道舞靡はため息をついた。
 今日の面接対象者は全部で30人以上、先ほどで20人目だったか。
 陸道の腕につけられた超巨大プレス機を掃除する下級面接官を横目で見ながら、彼女は先ほど面接した受験生を思い出そうとした。
 代わり映えのしないアピールポイント、特徴のない経歴、ちょっと圧迫したらすぐに潰れてしまった。
 もう顔も思い出せない。記憶のそこからひねり出そうにも、出てくるのはため息だけだ。
 これがまだ10人以上も続くと思うと気が重いが、仕事故に投げ出すこともできない。

「陸道さん、プレス機のメンテ、終わりました」
「ああ、ご苦労。あと、次の人の履歴書も出しておいてね」
「はい」

 下級面接官が取り出した履歴書を、陸道は一瞥もせず机に放置する。どうせ対して期待も出来ない、目を通すだけ無駄というものだ。
 
「それでは、次の方どうぞ」

 可能な限りおざなりになる気持ちを隠し、次の面接対象者を呼ぶ。
 コンコンコン、とドアがノックされ、失礼します、と面接対象者が入ってきました。

「(あなたのキャラクターの学年とクラス)、(あなたのキャラクターの部活・もしくは委員会)所属、(あなたのキャラクターの氏名)です。よろしくお願いします」

 瞬間、部屋の空気が塗り替わった。
 これまでの受験者とは違う(あなたのキャラクターを讃える精一杯の文章)で(あなたのキャラクターを讃える精一杯の文章)な雰囲気に、陸道は思わず息を呑んだ。
 口の端に笑みが溢れる。この女の力を試したい。圧迫したい。それを押し返すところが見たい。
 
「それでは、面接を開始させていただきます」

 超巨大プレス機の蒸気シリンダーに煙を吐き出させながら、陸道と(貴女のキャラクターの名前)の圧迫面接が始まった。

――――

 ふぅ、と呼気が口から漏れだす。シリンダーの蒸気よりも熱量がこもっているように感じるのも、無理は無いだろう。

「予想外だったな。まさかあんな奴が(FS1以上ある場合:私の圧迫面接をやり過ごすとは FS0、防御+体力10以上:圧迫されても普通に耐えるとは FS0、防御+体力9以下:圧迫されて死ぬとは)。
多少口調におかしな部分があったような気もするが、まあ、それは面接なんだからそうもなるだろう」

 違和感を覚えて腕に手を向ける。万全のメンテナンスをされていた超巨大プレス機がガクガクと震えていた。

「恐怖……いや、期待か。まさか私があんな(以下からランダムor任意選択。1.飢えた 2.追い詰められた 3.希望を湛えた 4.恐れを知らない 5.粘ついた 6.キラキラした)(以下からランダムor任意選択 1.戦士 2.勇者 3.乙女 4.狼 5.イグアナ 6.モケーレ・ムベンベ)のような(瞳があるキャラクターの場合:瞳をした 瞳がないキャラクターの場合:(瞳以外のそのキャラクターに存在する適当な部位)をした)奴にな……!」

 手元の履歴書に目を落とし、合格の判をプレスする。
 一次面接はこれで突破だ。あいつが最終的に採用されるか、それとも不採用か。それは陸道の知るところではない。だが…… 

「ふふ……どうやらこれから、面白くなりそうだ」

 抑えきれない熱い蒸気が、再び、口とシリンダーから漏れだした。



47陸道舞靡:2015/07/29(水) 23:55:56
>>45
一部抜けがあったので修正

ダンゲロス流血少女MM 陸道舞靡汎用出会いSSテンプレート「代わり映えのしない日々の変わった出会い〜(任意のキャラクター名)編〜」

★このテンプレートの使い方:
このテンプレートは()でくくられた部分を()内の指定にしたがって自分のキャラクターにあうように文章を変更することで、そのキャラクターと陸道舞靡との出会いSSを作成することが出来ます。
これは普段SSを書かない人でも簡単にSSを書けるよう配慮して作成されたものです。みなさんどしどし作ってみましょう。
GKに怒られてもこのテンプレートの作成者は一切責任を負わないものとします。

★本文
 面接会場にきゅっきゅ、と金属をこする音が響くのを聞きながら、陸道舞靡はため息をついた。
 今日の面接対象者は全部で30人以上、先ほどで20人目だったか。
 陸道の腕につけられた超巨大プレス機を掃除する下級面接官を横目で見ながら、彼女は先ほど面接した受験生を思い出そうとした。
 代わり映えのしないアピールポイント、特徴のない経歴、ちょっと圧迫したらすぐに潰れてしまった。
 もう顔も思い出せない。記憶のそこからひねり出そうにも、出てくるのはため息だけだ。
 これがまだ10人以上も続くと思うと気が重いが、仕事故に投げ出すこともできない。

「陸道さん、プレス機のメンテ、終わりました」
「ああ、ご苦労。あと、次の人の履歴書も出しておいてね」
「はい」

 下級面接官が取り出した履歴書を、陸道は一瞥もせず机に放置する。どうせ対して期待も出来ない、目を通すだけ無駄というものだ。
 
「それでは、次の方どうぞ」

 可能な限りおざなりになる気持ちを隠し、次の面接対象者を呼ぶ。
 コンコンコン、とドアがノックされ、失礼します、と面接対象者が入ってきました。

「(あなたのキャラクターの学年とクラス)、(あなたのキャラクターの部活・もしくは委員会)所属、(あなたのキャラクターの氏名)です。よろしくお願いします」

 瞬間、部屋の空気が塗り替わった。
 これまでの受験者とは違う(あなたのキャラクターを讃える精一杯の文章)で(あなたのキャラクターを讃える精一杯の文章)な雰囲気に、陸道は思わず息を呑んだ。
 口の端に笑みが溢れる。この女の力を試したい。圧迫したい。それを押し返すところが見たい。
 
「それでは、面接を開始させていただきます」

 超巨大プレス機の蒸気シリンダーに煙を吐き出させながら、陸道と(貴女のキャラクターの名前)の圧迫面接が始まった。

――――

 ふぅ、と呼気が口から漏れだす。シリンダーの蒸気よりも熱量がこもっているように感じるのも、無理は無いだろう。

「予想外だったな。まさかあんな奴が(FS1以上ある場合:私の圧迫面接をやり過ごすとは FS0、防御+体力10以上:圧迫されても普通に耐えるとは FS0、防御+体力9以下:圧迫されて死ぬとは)。
多少口調におかしな部分があったような気もするが、まあ、それは面接なんだからそうもなるだろう」

 違和感を覚えて腕に手を向ける。万全のメンテナンスをされていた超巨大プレス機がガクガクと震えていた。

「恐怖……いや、期待か。まさか私があんな(以下からランダムor任意選択。1.飢えた 2.追い詰められた 3.希望を湛えた 4.恐れを知らない 5.粘ついた 6.キラキラした)(以下からランダムor任意選択 1.戦士 2.勇者 3.乙女 4.狼 5.イグアナ 6.モケーレ・ムベンベ)のような(瞳があるキャラクターの場合:瞳をした 瞳がないキャラクターの場合:(瞳以外のそのキャラクターに存在する適当な部位)をした)奴にな……!」

 手元の履歴書に目を落とし、合格の判をプレスする。
 一次面接はこれで突破だ。あいつが最終的に採用されるか、それとも不採用か。それは陸道の知るところではない。だが…… 

「ふふ……どうやらこれから、面白くなりそうだ」

 抑えきれない熱い蒸気が、再び、口とシリンダーから漏れだした。



48仔狐クリス:2015/07/30(木) 00:10:22
>>47のテンプレートをお借りしました! 一部不都合が合ったためテンプレートも多少変えさせてもらいました。

ダンゲロス流血少女MM 陸道舞靡汎用出会いSSテンプレート「代わり映えのしない日々の変わった出会い〜土星編〜」

 面接会場にきゅっきゅ、と金属をこする音が響くのを聞きながら、陸道舞靡はため息をついた。
 今日の面接対象者は全部で30人以上、先ほどで5人目だったか。
 陸道の腕につけられた超巨大プレス機を掃除する下級面接官を横目で見ながら、彼女は先ほど面接した受験生を思い出そうとした。
 代わり映えのしないアピールポイント、特徴のない経歴、ちょっと圧迫したらすぐに潰れてしまった。
 もう顔も思い出せない。記憶のそこからひねり出そうにも、出てくるのはため息だけだ。
 これがまだ10人以上も続くと思うと気が重いが、仕事故に投げ出すこともできない。

「陸道さん、プレス機のメンテ、終わりました」
「ああ、ご苦労。あと、次の人の履歴書も出しておいてね」
「はい」

 下級面接官が取り出した履歴書を、陸道は一瞥もせず机に放置する。どうせ対して期待も出来ない、目を通すだけ無駄というものだ。
 
「それでは、次の方どうぞ」

 可能な限りおざなりになる気持ちを隠し、次の面接対象者を呼ぶ。
 コンコンコン、とドアがノックされ、失礼します、と面接対象者が入ってきました。

「高等部3年 3-A、中等・高等交流部所属、土星です。よろしくお願いします」

 瞬間、部屋の空気が塗り替わった。
 これまでの準惑星とは違う溢れ出る天体パワーと防御力も逸脱するほどめっちゃ高そうな雰囲気に、陸道は思わず息を呑んだ。
 口の端に笑みが溢れる。この女の力を試したい。圧迫したい。それを押し返すところが見たい。
 
「それでは、面接を開始させていただきます」

 超巨大プレス機の蒸気シリンダーに煙を吐き出させながら、陸道と土星の圧迫面接が始まった。

――――

 ふぅ、と呼気が口から漏れだす。シリンダーの蒸気よりも熱量がこもっているように感じるのも、無理は無いだろう。

「予想外だったな。まさかあんな奴が私の圧迫面接をやり過ごすとは。
多少口調におかしな部分があったような気もするが、まあ、それは面接なんだからそうもなるだろう」

 違和感を覚えて腕に手を向ける。万全のメンテナンスをされていた超巨大プレス機がガクガクと震えていた。

「恐怖……いや、期待か。まさか私がキラキラした乙女のような瞳をした奴にな……!」

 手元の履歴書に目を落とし、合格の判をプレスする。
 一次面接はこれで突破だ。あいつが最終的に採用されるか、それとも不採用か。それは陸道の知るところではない。だが…… 

「ふふ……どうやらこれから、面白くなりそうだ」

 抑えきれない熱い蒸気が、再び、口とシリンダーから漏れだした。




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