したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

没ネタ投下スレッド

1名無しさん:2006/05/10(水) 23:42:47 ID:OKj1YCQ2
書いてたキャラを先に投下された
書いては見たが矛盾ができて自分で没にした
考えては見たが状況からその展開が不可能になってしまった

そんな行き場のなくなったエピソードを投下するスレッドです。

2名無しさん:2006/05/12(金) 19:16:26 ID:MaN7btcM
レックスを救済できないかと、呪いを受けないエイトがレックスから
皆殺しの剣を奪い取る話を考えてみたけど、装備品の効果は受けてしまうのでボツに。

3名無しさん:2006/05/12(金) 21:34:13 ID:AcuUjrOE
テリーがククールに支給された雷鳴の剣を奪おうとして、
銀髪vs銀髪の話にしようとしたが、テリーが勝ってしまいボツ

4名無しさん:2006/05/12(金) 22:01:21 ID:T55Jti/U
俺の予定ではサマンサは高飛車で高笑いがトレードマークのキャラだった。
ちなみに回想では女戦士の名前はデイジーにするつもりだった。

5名無しさん:2006/05/12(金) 23:17:28 ID:MaN7btcM
前スレのカキコであった雑談スレのちょっとお馬鹿な2主も見てみたかった。
どっちにしろ2主ってロワで光り輝いてるキャラだよな。

6名無しさん:2006/05/12(金) 23:27:29 ID:u1h/CYRc
ゴンが死んで、ローラと一緒にメガンテで爆死する話。
ゴンとローラの人気があまりにもある為ボツ。

7名無しさん:2006/05/12(金) 23:38:06 ID:Oin4GFac
アリスvsジョーカーズにククールを乱入させる構想を練ってた。
でもそしたら一匹の竜はいなくなるわ、ゼットストリームアタックもしなくなるわで
ひどい事になってたっぽい…。今はボツになってよかったと思ってる。

8名無しさん:2006/05/12(金) 23:41:47 ID:bSSa.D42
>>7
同じ事考えてた人イター!!!

サマル王女とかもククールに拾わせてみたかったな
空から降ってきたお姫様と騎士のお兄さんw

9名無しさん:2006/05/12(金) 23:47:07 ID:MaN7btcM
フォズ、クリフト、マルチェロにクックル乱入させるネタ思いついたけど
上手くまとまらずにボツ。
彼らはピサロに任せておこう…。

10名無しさん:2006/05/12(金) 23:55:51 ID:6g1TpwGs
バズズVSアリスでメガンテ発動寸前にアレンが助ける。
アレンは天然熱血漢、子孫と知らずにアリスは徐々に初恋をする、カンダタないがしろ

とか考えてた

11名無しさん:2006/05/13(土) 00:06:42 ID:f6huDDY2
 出産前のビアンカと家族愛の薄いククール又はマルチェロを会わせてみたかった。
マーダー化したレックスがなくなってしまった後、
(お腹をさすりながら)
「この子には、そんなめに会わせないわ。その為にもハーゴンを倒しましょう!」とか言わせたかった。(無茶)

12名無しさん:2006/05/13(土) 00:49:02 ID:D1T1J3vw
ぼくのかんがえたりゅか

苦難の少年時代を過ごした彼は幸せを渇望していました
なので資産目当てにフローラと結婚しましたが愛してはいませんでした
フローラを置いてビアンカと浮気する毎日
そしてある日突然王様になってしまい、富と名誉を手に入れました
こうなるとフローラは用済みです 暗殺しようとしたところ魔物に攫われてしまいました
助けるつもりはありませんでしたが跡継ぎの子供は必要です
仕方なく向かうと石にされてしまいました 
そして復活後世界を救うついでにフローラまで救ってしまったのでこのロワで人知れず抹殺しようとしていました
ビアンカとの幸せのために

ちなみにビアンカはフローラに申し訳なく思いながらリュカの愛を拒めず、
フローラはリュカとビアンカに愛蔵渦巻く複雑な感情を持っていました

そんな5の世界を考えた春

13名無しさん:2006/05/13(土) 00:51:20 ID:f6huDDY2

春ですねぇ・・・。

14名無しさん:2006/05/13(土) 00:54:01 ID:D1T1J3vw
だがフローラが地味に同系統のキャラに育ってたので結構満足

15名無しさん:2006/05/13(土) 01:09:01 ID:uC9sJZt2
今回のフローラは3rdのティファと重なる。
最近3rd読み始めたけど、愛する人のために狂ったり
顔に火傷負ったり鳥肌が立ったよ。

16名無しさん:2006/05/13(土) 04:15:47 ID:VcTQBIOA
CHやらモンスターズやら不思ダンのキャラは出せない
→DQ3の名無しキャラで代用しちゃえばいいじゃない!

…女魔法使い、さすがに子供ではいかんな…

17名無しさん:2006/05/13(土) 14:07:41 ID:KTCSUJkA
フォズとククールを会わせてみたかった
マーダーじゃない僧侶ってククールくらいしかいないし

…無理だけど

18名無しさん:2006/05/14(日) 00:19:05 ID:2GmGOLZU
もしこの先アリーナ&エイト組とクリフトが出会ったら
面白い展開になりそうな気がする。

19名無しさん:2006/05/15(月) 11:41:32 ID:D3vhtgFg
ここにあげられているネタを職人さんがインスパイヤしてくれないかと
期待している俺がいる。
ネタに困った時の参考になれば…。

20最後の六行:2006/05/19(金) 00:50:46 ID:BWv5vjh6
――汝の命尽きんとき、我発動せん――
     メ ガ ン テ

閃光が走り、草しかなかった平原が空っぽになった。
それを遠くから見ていた人が一人。

「ゴンさん……」

彼女は、ただ涙を流すしかなかった。

21名無しさん:2006/05/19(金) 07:37:27 ID:Lh6Iw0.c
そういや8主もメガンテ出来るな。

22名無しさん:2006/05/19(金) 20:24:23 ID:E7WLtZBY
クリフトがマーダーだと知り絶望するアリーナと、
アリーナに拒絶されて壊れるクリフト。

でも話から行くとまだまだ先の展開だよなぁ…。

23名無しさん:2006/05/21(日) 02:06:45 ID:/DQ6kUgE
>>22
そのアリーナを支えるエイトとクリフトの全面戦争か…

キーファあたりが巻き込まれて死にそうだな

24名無しさん:2006/05/22(月) 00:00:25 ID:D6cHAj6w
皆殺しの剣が折れた記念。
>>2を自らインスパイヤ。

レックスとエイト一騎打ち
ビアンカ「レックス!目を覚ましてーーー!!」
レックス(…お…お母さん!?)
ビアンカの声にレックスの本当の心が動く。
エイト、その隙を見てレックスの剣を弾く。皆殺しの剣地面に刺さる。
その場で気を失い倒れるレックスに駆け寄るビアンカ。神官がシャナクを唱える。
エイト、皆殺しの剣回収。
剣『私を手にせし者よ。その欲望のままに全ての命を無に帰すが良い!』
エイト「悪いけど、僕に呪いは通用しない!」
剣『な…なにぃ!?』

レックスがビアンカの膝の上で目を覚ます。
レックス「…お母さん…僕は…取り返しのつかない事を…」
ビアンカ「レックス…今は何も考えないほうが良いわ。」
エイト「呪いから解放されたばかりでまだ混乱しているんですよ。
   今はゆっくり休んでください。」
レックス「お母さん、エイトさん…皆さん、ありがとう。
    でも…僕は耐えられない」
レックス隠し持っていたアサシンダガーで自害。
「「「「レックスーーーーーーー!!」」」」

※皆殺しの剣の効果=守備力0であり、殺人衝動ではないため
  エイトが剣回収ネタは成立することが最近わかりましたw

25名無しさん:2006/05/22(月) 21:21:51 ID:vBBg53IU
雑談スレの35に触発されて、本音いきます。

サマンサはステルスさせるつもりだった。
でもステルスってのは残り人数が多い時に情報ばら撒いて混乱させるのが面白いわけで
こんだけ普通にマーダー多い&残り人数少ないんじゃ微妙だなと思って没。
ルーシアも殺す予定だった。
でもこのペースで死人出たら第一回放送までにシドー様復活しちゃうじゃんってんで没。
結局生け贄は何人必要なんじゃー

26名無しさん:2006/05/22(月) 21:42:21 ID:MwYU6JWY
「そうでなければ我らが神が敗れるはずもございますまい」
「うむ、だが今度は完全な召喚に必要な倍以上の生贄がある。
 そして残った最後の一人はさぞや神を降臨させるための良き依り代となるだろう……ククク」

第一話より引用。
1.「完全復活を目指す」なら、「半数ぐらい」の生贄の死亡
2.「不完全」でいいなら、生贄が足りなくても復活はできる。(生贄がハーゴンのみでも)
3.できる限り良い状態で復活するなら、「生き残った最後の一人」を依り代に使う

以上から、少なくとも、ゲーム終了するまでは見守る姿勢ではないかと愚考。

27名無しさん:2006/05/23(火) 00:38:22 ID:f6pgPI2o
ステルスって何ですか?

28名無しさん:2006/05/23(火) 00:49:41 ID:ovLZ6tq.
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/45.html

29名無しさん:2006/05/23(火) 01:34:14 ID:EUYlVIMc
強すぎてエイト&アリーナ&キーファ(展開によってはアレフも?)/アリス&カンダタ/アレン/の3組は分断したい〜〜〜〜。

30名無しさん:2006/05/23(火) 01:36:58 ID:EUYlVIMc
分断に使えそうなのは、ローラ、クリフト&サマンサ・・・ダメだ2組しか分断できん;;

31名無しさん:2006/05/23(火) 01:51:49 ID:a53cW/pU
ベリアルが一人も殺せなかったのはマジ想定外
ヒミコがアレフの援護してマーダー対決になったのも予想外
レックス無力化、テリー沈静化 バズズヘタレ

マーダーが多いと言われているが結構、膠着になり気味だぜ

32名無しさん:2006/05/23(火) 03:48:24 ID:Ok.3rT7c
>>31
それでもアトラスなら、アトラスならなんとかしてくれる!

一応ベリアルはトータルでは二人殺してるんだけどね。

33名無しさん:2006/05/23(火) 09:36:01 ID:rFWbPS8M
アトラス強いよなぁ。ヒミコは変身するのかな。人間の姿でサマンサは倒せないよな。

34名無しさん:2006/05/24(水) 11:43:25 ID:Am2ipLWk
ベリアル死亡は残念だったがおかげでアトラスが大化けしたから満足してる。
何より予想外だったし。
残った3人も全員負傷してるからそれほど強力なパーティーではない気が。
合流するであろうアレフルーシアも片方戦力外だし。
アトラスが突っ込んでくる伏線もあるしまだまだどうなるかは分からないと思う。
へタすりゃアトラス一人に全滅もありえるんじゃないか?
いざそうなったら面白くないがw

個人的にはレックス無力化のほうが痛いと感じた。
というかミレーユ殺害→テリーと遭遇の流れが早すぎたよ。
どちらにせよあのグループは周辺環境も含め新たな波乱を起こすのは難しいな。

35名無しさん:2006/05/24(水) 12:41:37 ID:QzUkzK.Q
いやいや、レックスの呪いは弱体化しただけで
完全に溶けたわけじゃないから、いつスイッチが入るか解らない。
レックスのステルスマーダー化のフラグになるんじゃないか?

案外、皆殺しの剣の鍔の髑髏の飾りが本体とかさ。

36名無しさん:2006/05/24(水) 14:47:49 ID:w9L9ZhNc
5って呪われてもそのまま装備外せたよな。

37名無しさん:2006/05/24(水) 16:09:37 ID:hAXo6C.o
>>36
それは5の世界の話。
アリアハンは5の世界じゃない。

38名無しさん:2006/05/24(水) 19:03:10 ID:yXBL841I
雑談スレに行けよ。
すぐ下にあるだろ。

39名無しさん:2006/05/24(水) 19:27:00 ID:O00.wGj6
ジョーカーの特徴。攻略本によると、

アトラス=呪文は使わないが、3体の内最も強烈な打撃を連続で仕掛ける。
バズズ=他2体に比べると攻撃力は劣るが、ザラキやイオナズン等呪文が強力。メガンテ有り。
ベリアル=イオナズン、炎を使い分け、2回攻撃もする。ベホマを使い、MPも高く、これといって弱点が見当たらない。3体の内最も打たれ強い。

3体共補助呪文はほぼ効かない。倒すには、残りの2人は防御、ローレシアの王子がパワー勝負を挑む。サマルもその時の攻撃力によっては参加。

40名無しさん:2006/05/25(木) 01:10:43 ID:fwK07XBw
オメガルーラで脱出って、誰も使えねぇーよ!

41名無しさん:2006/05/25(木) 10:14:49 ID:UfaWs.F.
脱出系の魔法使ったら首輪がボーン!

そういやこのロワの季節って一体何時頃なんだろう?
FFDQロワでは主催者が作ったアリアハン大陸コピーみたいな舞台だったけど
ちゃんと民家に食料とかおいてあるのかな?

中休みにベリアル討伐した後、昼飯作ってマッタリしてる三人組の話でも
書こうと思ったんだけど、やっぱり上手くまとまらない。

42名無しさん:2006/05/25(木) 22:22:29 ID:bFydr7x6
84mm無反動砲カール・グスタフってのがさっぱり分からん。
○は外してばっかだし。
対戦車砲ってどんくらい強いの?
テイルズだと対戦車榴弾砲とかいうので城一つふっ飛ばしてたけど。

43名無しさん:2006/05/25(木) 23:01:47 ID:fwK07XBw
肩に担ぐか、地面に設置して発射するバズーカ砲
装弾数1
射程距離700〜1000m
給弾が一分間に3〜5発程度
威力は、戦争ものの映画を見れば分かると思う

44名無しさん:2006/05/27(土) 11:25:55 ID:VwYK4HTw
レーべ組対アトラス、ゴン&ローラ乱入戦
複雑過ぎて失敗

ヒミコ対サマンサ
ヒミコの強さがいまいち出せず失敗

その他失敗多数
スランプに突入

45名無しさん:2006/05/27(土) 13:24:12 ID:JNF59lJw
>>44
そんなあなたにベホマズン!

46ひまつぶしに没ストーリーを投下:2006/05/27(土) 18:14:20 ID:Udn52FuI
 「べホマ」
 暖かいひかりが体を包む。
 「ほんとに容赦なくやってくれだもんだぜ。」
 自業自得か、と思わず苦笑いをする。

 搭に設置してあるドラゴン像に仲間を思い出しながら、オレは城の方角に歩き出した。
 「ヤツの権力志向から言って、搭とか城とか好きそうだからなぁ。
 辺鄙な所は絶対近寄らないだろ。」
 搭を急いで降りる時はきづかなかったが、魔物を一匹も見かけない。
「あいつも参加者だったんだな。」
 ため息を一つ吐き出す。口の中が苦い。

前方に運良く、目指す方向の階段を見つける。

「まってろよ、マルチェロ。」


冒頭ストーリーはこんな感じで、あわよくば兄弟対決にしたかったわけだが。

47名無しさん:2006/05/27(土) 19:48:44 ID:JNF59lJw
マルチェロVSククールか。
多分マルチェロは容赦しないだろうなぁw

48名無しさん:2006/05/28(日) 01:25:58 ID:GUeu6H4s
本スレのピサロロリコン疑惑に触発されて没ネタ披露

自分もピサロ・フォズ組の話書いてたんだが
何をどうやっても恋愛フラグが立っちゃって流石に犯罪だと思って没った

でもピサロ魔族だから歳取らないだろうし
十年後くらいに迎えに行けば問題nやめろ何をするくぁwせdrftgyふじこlp;@

49名無しさん:2006/05/28(日) 01:46:35 ID:AXgQ.Zz.
 逆に子供でも冷酷なピサロを考えてました。
でないと今後シリアスのシーンが辛い。

50名無しさん:2006/05/31(水) 16:09:33 ID:tPG9balU
エイト、アリーナ、キーファ組vsアトラス・没ネタ

とりあえず途中までは一緒で、途中でエイトは目覚めることも考えられた。
(キーファは放っておいても眠るほど疲労してるし、起きられない)
その場合、アリーナvsアトラスの膠着状態で目覚めて、
Aエイトに気付いたアリーナは一瞬反応が遅れてしまい、一撃を食らう。
 →エイトに後味悪すぎ。ていうか、竜王vsアレン、ククール乱入とかぶる、没
B迂闊に近付くと、アリーナを殺してしまう(それ程、隙の無い応酬だった)と気付いたエイトは、
 1.手が出せない悔しさに歯痒い思いをしながらも、必死に二人に気取られないよう近付き乱入のチャンスを伺う。
 アリーナがアトラスの一撃を食らう。アトラスが追撃に向かう。乱入するのは今しかない!!
 転がり込むようにアリーナを抱え込み、もう片方の空いた手に土を掴む。
 眼前にはアトラスが迫り、その眼に土を掴んだ拳を突っ込む!
 ぐったりとしたアリーナを腕にエイトは東へ駆け出す。
 →二人の足よりアトラスの方が脚力は上(と思。すぐに追いつかれる。
  アレフと合流する形になるが、正直アレフにこの化け物の相手はきつくないか?
  ていうか、惨劇を書くって言っちゃったし、なんらかの決着はつけたい→没
 2.この状況を覆すことの出来ない自分の力に歯痒さを覚える。何か、何かないのか!?
  しかし、精神力は限界で魔力を練り上げ呪句と成す集中力がない。
  頭は熱を持ったようにぼんやりとし、思考にもやがかかる。
  この状態の俺に出来ることはないのか!―いや、あったぞ、わずかの精神力で発動する呪文。
  しかし、その呪文はもっとも覚悟のいる呪文。精神の代わりに命そのものを消費する呪文……
  ―メガンテ!
  略。で、エイトとアトラスは相討ちに。
  つうか、そもそもアトラスは死なしたくないし、エイトも死なせたくない(特に
  アレフ様にキアリー持ちを合わせたかった。)
  弟萌え属性だしなー(途中、ベリアルと書かずに兄ちゃんと書きそうになった)。
  泣いた赤鬼であれだけ勢いのあるアトラスがあっさりやられちゃうのは流石にアレだろうと。

やっぱり武道家として通じ合い、充実して戦いを終わらせる方が二人にとっても幸せで、
後味がいいだろう。というわけで今の形に。
あと、はい、アトラス発見までに描写は省略したけど、エイトは前話からそれまでで回復呪文を使っており、MPほぼ0という設定でした(なのでメガンテが精一杯)。

51名無しさん:2006/05/31(水) 16:21:40 ID:tPG9balU
チラシの裏〜
ついでに没とは違うけど、書いてる途中、レーベで探索、休息からアトラス発見までで一旦終わりにしても区切りがいいんじゃない?と思ったり。
でも、惨劇書くって書いちゃったしなぁ…、決着つけないといけないよね、とここまでの筆の運びに。
ついでに言い訳。初め、通し番号〜/14って打ってたけど、下書きでは実は14段落に分かれてました。
しかも3以降には副題もつけてた(w。せっかくだから投下。
3決起―キーファより話を聞き思いを固める
4信じたくない事実―キーファたちは予想外の魔物の襲来を、アトラスは兄の死を信じたくなかった
5絶望―アトラスを見咎めた一行。状況は絶望的だった。
6覚悟―キーファが戦いの覚悟を決める(エイトが遅れたのは、まだ何か生き残る術は無いのかと考えていた)。
   しかし、本当の覚悟を決めていたのはアリーナだった(物言わず強引に当て身に走るのも、
   自分の申し出をあの優しいエイトが受けるはずも無いだろう、とかなんとか考えてたんだけど、
   描写上、省略された。)。
7決死―静かに戦いに赴く直前のアリーナ。死を覚悟する。
8衝突―アリーナとアトラスが出会う。
9開戦―アリーナがアトラスに飛びかかる
10肉弾戦1―鎖帷子を脱ぎ捨てたアリーナとハンマーを捨てたアトラスの戦闘。前半
11肉弾戦2―鎖帷子を脱ぎ捨てたアリーナとハンマーを捨てたアトラスの戦闘。後半
12終局―こう着状態は唐突に終わりを迎えた。
13最後の一撃―致命傷を受けたアリーナ、最後の一撃
14散華夢想―散った者を想い、アトラスは泣く。

52名無しさん:2006/05/31(水) 16:24:23 ID:tPG9balU
でした!(w だいたい9〜10をコピペしている辺りで段落の行数が30を越えていることに気付き、大慌て。
レスに間が空いてしまい、沢山の支援申し訳ありません。
胸が熱くなる思いでした。
あと、なのであの辺りは物語上の区切りとレスの区切りが一致してなかったり。強引に行を詰めたりした部分もあったし。
((……死んでいる。)の部分は上下に行間を空けて強調したかった…!)
最後の状態表記も忘れてたり、正確に内容上の区切りでレスを区切って状態表記もちゃんとさせると、
多分18レスで最長になるだろうと思ったり('A`) (うへぇ。
もう、今度からはもう少し考えて予約したいものだ、と。
ついでに。アリーナのバトルにばかりレスが行ってるけど、前半の消耗状態も見て欲しかったり。
エイト達は知らないけど、読者は後でアトラスが来ることを知ってるわけで、
こんな状態で大丈夫なの!?とハラハラさせたかった。

53名無しさん:2006/05/31(水) 17:18:54 ID:MJsKIKyU
>>50
なるほど!やっぱあの展開が一番良かったと思う!
メガンテでアトラスが去るのは早過ぎるし、エイトにもまだ死んで欲しくないし。

アレフ対アトラスは確かにキツいだろうなぁ…。でも、ロトの剣があれば大丈夫だと思う。
鋼鉄の鱗を持つ変身後の竜王に唯一ダメージを与えられる剣だから(実際他の剣では竜王に与えるダメージは1。だがリメイク版竜王は大幅に弱体化)。

54名無しさん:2006/05/31(水) 22:22:20 ID:aGOrHm86
惨劇をリクエストした者ですが、惨劇を通り越して感激になってしまいましたね。
自分はてっきりエイトが死ぬかと思っていたので驚きました。
そうか…ルーシア生還フラグまで考えていたんですね。

アリーナもアトラスも恐怖や恨みではなく、拳で戦う者としての誇りを賭けて
戦った結果です。
読み終わった後に残ったのは悲しみよりも、不思議なさわやかさでした。
感動を本当にありがとうございました。
(・∀・)>敬礼!

55名無しさん:2006/05/31(水) 22:36:59 ID:ePnYdxsw
個人的な考えだけどアレフはアトラスとタイマンしても勝てると思うよ
竜王vsアレンでアレンは力と素早さはアレフより高いけど技量で劣るって書かれてた
つまりアレフは戦士としての能力は平均的でも技量に特化したタイプと予想できる
柔よく剛を制す、みたいな感じで戦いの相性はいいと考える
アトラスの攻撃を見切って回避、急所を見抜いて一撃必殺、みたいな
魔物が群れなす竜王の城に単身突入して竜王まで辿りつくなどサバイバル能力も高いし、
ロトの剣ありとはいえ本性を現した竜王も独力で倒してるのはポイント高い

1対1ならロトたるアリス(呪文なし)よりも強いというのが自論です
ただしがらみ多いから誰かを庇って負けるだろうなーという気もしている

56名無しさん:2006/06/01(木) 10:20:57 ID:8guC6bwM
まぁ普通のアトラスには勝つと思うけど、風のアミュレットがあるし、アレフあんまいい武器持ってないからさ。
アレンは専業の戦士だから呪文は使えないがそれ以外の能力に特化してる。
アレフは1人で戦えるようにバランス型なんだろう。

アレン=打撃…90 早さ…80 守り…90 魔法…0
アレフ=打撃…80 早さ…70 守り…80 魔法…70

ちなみに
ランド=打撃…60 早さ…80 守り…60 魔法…80
マリア=打撃…30 早さ…90 守り…70 魔法…90

ランドは漫画設定で素早いキャラになってるが、元々のゲーム設定だとこんな感じになる。

57名無しさん:2006/06/01(木) 17:56:11 ID:OWm3JR9M
なんつうか、泣いた赤鬼でのアトラスの印象が鮮烈すぎた。
ドランゴが1撃目を防いで、反撃!…と思ったところで第二撃が来るんだもん。
普通に1撃目は技量でさばけても2撃目がやばすぎるんじゃない?と。
しかも、人情話まで織り交ぜて、ただ戦闘力で強いだけの化け物じゃなくて、
精神的な強さも付随してるもん。

58名無しさん:2006/06/01(木) 19:01:05 ID:xh1iKSd2
ドランゴにも隼斬りはあったんだがなぁ…。
アレフはロトの盾も必要かな。

59名無しさん:2006/06/01(木) 19:51:37 ID:/gL0z1vc
使おうとしたのが隼斬りだったら……力負けしてたかもw
相手が二回攻撃って知らなかったしね

60幕間・かくて闇は訪れる:2006/06/01(木) 20:50:29 ID:.Y6GdY6Y
 太陽の最後の一片が地に沈み、辺りを覆うは一面の闇。
時が凍りついたかのようなその静寂を引き裂き、鐘が鳴る。
 澄んだ、美しい――しかし何処か葬列のそれのような不吉さを帯びた音色。
 次いで響いたのは男の声。

「――まずは、諸君らが生きて最初の放送を聞けたことを祝福しよう。
 これより一回目の放送を行う。二度とは繰り返さない故、心して聞け」

 静かな、厳かとも言えるその口調、朗々と響く声は教会で説法を説く神父を思わせたが、
声の主が仕えるのは神は神でも破壊の神で、その声が歌い上げるは賛美歌ではなく死者の列。

「では、最初に現在までの落伍者たちの名を告げる。

 「リュカ」「アルス」「バーバラ」「マリベル」「メルビン」「アレン」「ゲマ」
 「フィオ」「死神の騎士」「ランド」「ミレーユ」「ベリアル」「ドランゴ」「アリーナ」

 以上、十四名。彼らの魂が無事神の御許へ辿り着けること、私からもお祈りしよう。
 予想以上のペースにハーゴン様もお喜びであられる。引き続き、諸君らの更なる奮闘を期待する。

 続いて、禁止エリアを読み上げる。
 これより三時間後、二十一時から【B-01】【D-01】【F-06】【C-04】の四地域、
 二十四時から【E-01】、午前三時から【A-01】、午前六時から【C-01】が禁止エリアとなる。
 行動範囲が狭まれば、自ずと探し人も見つかることであろう。
 ……無事に、かどうかは保証しかねるが、な。では諸君、良い夜を」

 くつくつと耳障りな笑い声を上げ、それきりぷつりと声は途切れた。
後に取り残されるは幾多の悲鳴と嘆きのみ。

 闇は視界だけでなく、人の心にもまた影を落とす。
そうして起こった疑心が、誤解が、新たな悲劇を織り成していく。

 そして、長い夜が始まる。


ネタが無いんだ、でも文章は書きたいんだ。気付いたらこんなもん書いてた
なんか巻き添え規制喰らったみたいで本スレ書き込めないし。予約出来ねぇorz
そのうち一部に修正入れて次の朝の放送に使いまわせたらいいな、とか思う
いろいろとごめんなさい

61ためしがき:2006/06/01(木) 21:37:50 ID:aFidIxH6
>>60
あやまらんでも、その為の没スレですし。
でも、すっきり纏まって良い感じだなぁ。文章力高っ。

62名無しさん:2006/06/01(木) 21:54:54 ID:.Y6GdY6Y
>>61
放送=FFDQ3rdの地響きの印象が強かったから
「鐘っていいなぁ」って思って気付いたらなんか書いてた。もうホントごめんなさい
お褒めの言葉有難うございます。そちらも本放送頑張って下さい。
最新版で自分の書いた一文使われててちょっぴりウレシス

63名無しさん:2006/06/01(木) 22:07:03 ID:94JchSMs
鐘の音って良いと思いますよ。世界観にもマッチしてるし。
鐘の音の美しさと、殺し合いの凄惨さや放送の悲しみが良い対比だとおもいます。

64名無しさん:2006/06/02(金) 22:41:46 ID:qZM76x3A
出演キャラが決まった時点で見てみたかったもの。
・アリス、レックス、エイトでトリプルギガデイン
・バーバラ、マリベル、ゼシカでトリプルマダンテ

前者はまだ可能性あるけど、レックス改心したら萎えるのでいいやw

65名無しさん:2006/06/02(金) 22:48:39 ID:6IhHmqe.
>>64
ピサロもマダンテ使えるのでまだダブルマダンテの可能性は残されている
ダブルでも被害凄そうだな ダブルギガデインにダブルジゴスパ

66名無しさん:2006/06/02(金) 22:52:11 ID:qZM76x3A
6主がいたらダブルギガスラッシュも可能だった?
あ、転職。

67転職の説明と書き手の眠気をどうするか:2006/06/03(土) 02:51:41 ID:4951J1M.

【D-4/北側の森/夕方(放送直前)】
【ピサロ@DQ4】
[状態]: 健康。 MP6/7程度
[装備]: E:鎖鎌 E:闇の衣 E:アサシンダガー
[道具]: エルフの飲み薬(満タン) 至急品一式
[思考]: ロザリーの仇討ち。ハーゴンの抹殺。襲撃者には、それなりの対応をする。
      北にいる強大な魔力の持ち主と接触する。

【フォズ@DQ7】
 [状態]:深い睡眠(時間経過で回復)
 [装備]:天罰の杖
 [道具]:炎の盾  アルスのトカゲ(レオン) 支給品一式
 [思考]:ゲームには乗らない、アルス達を探す

  強い魔力を持つ者を求め、北へと向かうピサロ。
 森の間から、峻厳な山々が立ちはだかるのが見える。
 (感じる魔力は北東の方角・・・東の山を越えるしかない。)
 立ち止まって、脇に抱えているものを見る。
 (探すには眠ってもらっていた方がいいが、襲撃がいつ来るとも分からん。
 巻き添え食って死なれる前に、こいつの能力の概要ぐらいは知っておくべきか?)
  立ち止まっている彼が不審なのか、襟元から、トカゲが顔を出す。
 トカゲと目が合い、睨み合う形になる。
 しばらくして、何か納得したのか襟に再び戻るトカゲ。
 (まったく、すべてが馬鹿馬鹿しいこと、この上ない。
  さて・・・。)
 少女を地面に下ろす。
 (勇者ユーリルが居れば、ザメハを使うだけで済んだのだ。)
  ふと、自分のなすべき事だけを思って、ロザリーと自分を救った勇者を思い出す。
 ピサロは頭を横に振って感傷を追い払う。
 (ダメージを与えれば起きるだろう。私が使う呪文はどれも強力すぎる。何回か殴って起こすか。)
 もう1つの方法が頭をよぎる。
 (効くかどうか分からんが、こちらにも負担が少ないからな) 
   集中する。
  銀の魔王は、いてつくはどうを放った。
   全てを無効し、力を剥ぎ取る、凍えた衝撃がフォズを襲う。

  ーーー手がフォズの頬にあたったかと思うと、体全体が温かいぬくもりを感じた。
   ああ、アルスさんが助けに来てくれたんだ・・・体温の心地よさに安堵した。
   体はまだ冷たく重かったけれど、次第に薄れて、意識がまどろみに呑みこまれる。
    もう、大丈夫ですよね?
   現れたアルスさんは不思議に困ったような顔をしていた。
    アルスさん? アルスさん!? 
   何度呼んでも、返事がない。
    アルスさんがフォズに背を向けて歩いていく。
   歩く先にはマリベルさんがアルスさんを待っていた。
    同じように困った顔をこちらに向けて。
   フォズはついていこうとするが、足が動かせない。
    ただ、去っていく二人を呆然と見送るだけ。
   
   「こちらに来い。」
  有無を言わせぬ声が聞こえた。さっきまで感じていたまどろみを剥ぎ取って。
   いやだ。ここに居たい!
   「仕方ない。」
  首筋に衝撃を受ける。
   段々とアルスとマリベルの姿が、ぼやけて・・・フォズは目覚めた。

68転職の説明と書き手の眠気をどうするか:2006/06/03(土) 02:53:13 ID:4951J1M.
おやすみなさい・・。

69投下スレ、他の書き手さん検討中なのでこっちに投下。:2006/06/03(土) 19:39:35 ID:S6ae/eOo
 ロザリー1/5 
 
  強い魔力を持つ者を求め、北へと向かうピサロ。
 森の間から、峻厳な山々が立ちはだかるのが見える。
 (感じる魔力は北東の方角・・・東の山を越えるしかない。)
 立ち止まって、脇に抱えているものを見る。
 (探すには眠ってもらっていた方がいいが、襲撃がいつ来るとも分からん。
 巻き添え食って死なれる前に、こいつの能力の概要ぐらいは知っておくべきか?)
  立ち止まっている彼が不審なのか、襟元から、トカゲが顔を出す。
 トカゲと目が合い、睨み合う形になる。
 しばらくして、何か納得したのか襟に再び戻るトカゲ。
 (まったく、すべてが馬鹿馬鹿しいこと、この上ない。
  さて・・・。)
 少女を地面に下ろす。
 (勇者ユーリルが居れば、ザメハを使うだけで済んだのだ。)
  ふと、己が愛するエルフと自分を救った勇者を思い出す。
  なすべき使命だけを考え、自分と無関係の命の復活を選んだ、少年を。
 ピサロは頭を横に振って感傷を追い払う。

 (ダメージを与えれば起きるだろう。私が使う呪文はどれも強力すぎる。何回か殴って起こすか。)
 もう1つの方法が頭をよぎる。
 (効くかどうか分からんが、こちらにも負担が少ないからな) 
   意識を集中する。
  銀の魔王は、いてつくはどうを放った。
   全てを無効し、力を剥ぎ取る、凍えた衝撃がフォズを襲う。

70投下スレ、他の書き手さん検討中なのでこっちに投下。:2006/06/03(土) 19:40:09 ID:S6ae/eOo
ロザリー2/5
  
   ―――手がフォズの頬にあたったかと思うと、体全体が温かいぬくもりを感じた。
   ああ、アルスさんが助けに来てくれたんだ・・・体温の心地よさに安堵した。
   体はまだ冷たく重かったけれど、次第に薄れて、意識がまどろみに呑みこまれる。
    もう、大丈夫ですよね?
   現れたアルスさんは不思議に困ったような顔をしていた。
    アルスさん? アルスさん!? 
   何度呼んでも、返事がない。
    アルスさんがフォズに背を向けて歩いていく。
   歩く先にはマリベルさんがアルスさんを待っていた。
    同じように困った顔をこちらに見せて。
   フォズはついていこうとするが、足が動かせない。
    ただ、去っていく二人を呆然と見送るだけ。
   
   「こちらに来い。」
  有無を言わせぬ声が聞こえた。さっきまで感じていたまどろみを剥ぎ取って。
   いやだ。アルスさん!
   私の足よ。動いて・・・! 
  懸命にもがく。
   (仕方がない。)誰かが呟いた。
    首筋に衝撃を受け、息が止まる。
   反射でうめきと共に、息を吐く。
  段々とアルスとマリベルの姿が、涙でぼやけて・・・フォズは目覚めた。

71投下スレ、他の書き手さん検討中なのでこっちに投下。:2006/06/03(土) 19:40:43 ID:S6ae/eOo
ロザリー3/5

  半ば呆然としつつも、フォズはゆっくりと上体を起こす。
  透明な雫がその頬を流れた。
  「目覚めたようだな。」
  すぐ隣で声がする。
  自分の状況を思い出し、あわてて手で目をぬぐい、警戒しながら声の方を向く。
   刹那、フォズをかつてないほどの目眩を感じた。
    
    視界一面に広がる暗闇。
   腹の底から湧き出て尽きる事のない憎悪。
   体中を駆け巡る、やむことのない無音の嵐。
  
   他人の強さ――体と魂の強さを感じる少女の力がもたらした感覚。
  フォズはダーマ神官として様々な魂を観察する。だが、彼のような魂を持っていたのは数人しか知らない。
    偽神官アルトリア。そして、ハーゴン。しかし、彼らは縛るものがあった。
  完全な自由意思を持ちながら、世界への憎悪をやめることができない存在。
  それはまるで話に聞く・・
   
   「魔王。」
   
   ピサロがピクリと片方の眉を動かす。
  慌てて口を押さえようとしたが、遅い。
 「説明せずとも、逆らえばどうなるか想像ができるようだな?」
  手を伸ばす魔王。
  (殺される!)
  フォズは思わず目を閉じる。
  (あれ・・・?)
  浮遊感と温もりが少女を包む。

72投下スレ、他の書き手さん検討中なのでこっちに投下。:2006/06/03(土) 19:41:15 ID:S6ae/eOo
ロザリー4/5
   
  抵抗する暇もなく、魔王に少女の体は抱えられていた。
   魔王は硬直している少女に命令する。
 「聞きたいことがあるが、急ぐのでな。その態勢で喋れ。」つかつかと歩き出す。
  少女は、いそぐ魔王の様子に、どこか人間臭さを感じ、今度は自らの意思で魔王の魂を直視した。
    闇の心が閉ざされそうな感覚に怯みながらも、大神官の誇りにかけて、感覚を研ぎ澄ませ耐える。
  
  魔王の、一面の暗闇の片隅に、腹の底の一部に、嵐の一陣の風に、それはあった。

       誰にでも、何にでも未来は待っている。
         
  神官とは、全てのものに正しき道を示す、みちしるべ。私は神官達の長。
    (アルスさん、ガボさん、ホイミンさん。私、頑張ります。)
  いつのまにか襟元から出てきているレオンと目が合った。
   フォズより小さき者も、応援するようにフォズの顔を舐める。
 
 「聞いているのか?」鋭い口調で魔王が訊ねる。
 「あっ、はい。聞いています。」慌てて返事をする。
  一度、深呼吸してはっきりと、魔王を直視して、こう答えてみせた。
 
 「わたしは、もう、大丈夫です。」
   
       ひとは、誰かになれる。

73指摘よろしく。:2006/06/03(土) 19:41:50 ID:S6ae/eOo
 ロザリー5/5 
 
【D-4/北側の森/夕方(放送直前)】
【ピサロ@DQ4】
[状態]: 健康。 MP6/7程度
[装備]: E:鎖鎌 E:闇の衣 E:アサシンダガー
[道具]: エルフの飲み薬(満タン) 至急品一式
[思考]: ロザリーの仇討ち。ハーゴンの抹殺。襲撃者には、それなりの対応をする。
      北にいる強大な魔力の持ち主と接触する。

【フォズ@DQ7】
 [状態]:疲労(時間経過で回復)、首に軽い痛み(ピサロが手刀した模様)
 [装備]:天罰の杖
 [道具]:炎の盾  アルスのトカゲ(レオン) 支給品一式
 [思考]:ゲームには乗らない、アルス達を探す、ピサロを導く

74名無しさん:2006/06/03(土) 20:43:43 ID:W1HRtC9U
乙。
フォズおはよう。
ホイミンさん?って誰だっけ?

75名無しさん:2006/06/03(土) 20:55:28 ID:S6ae/eOo
41話の「人は、誰かになれる」
〉癒しの魔物、異世界の地にて、人と成る。
人になった魔物のつもりだったんですが、やっぱNGワード?

76名無しさん:2006/06/03(土) 21:08:56 ID:IYKE.z22

フォズがマリベルの存在を忘れ去っているのは仕様ですか?
あとピサロの所持品の道具が急いでる

77名無しさん:2006/06/03(土) 21:15:57 ID:S6ae/eOo
あれ?・・・・シキュウヒン・・・。
お腹が苦しい自爆なのに、苦しいようw

78名無しさん:2006/06/03(土) 21:25:31 ID:W1HRtC9U
>>76
ああ、前の書き手さんのこと考えてなかったよスマソ

79名無しさん:2006/06/03(土) 22:00:07 ID:wn.0ZiKk
>>78
前の書き手さんも名前はだしてないので、どうしようかなと思ってたとこです。

80名無しさん:2006/06/03(土) 22:36:34 ID:xQbqQobo
じゃ、投下してきます。レス違いゴメンよ〜。

81名無しさん:2006/06/03(土) 22:53:44 ID:xQbqQobo
いつになったら、完璧な本文を載せることが叶うのだろう・・。

82名無しさん:2006/06/03(土) 23:06:04 ID:IYKE.z22
落ち着いて、書き込む前に一回見直すクセをつければなんとかなるよ
頑張れ。投下乙ノシ

83名無しさん:2006/06/04(日) 00:30:21 ID:PdPEh/KI
フォズでピサロを殺す夢が儚く散ったか
放送後まで弄られなければいけたんだけどな
でも戦力差的に無理ある展開になること請け合いだったし、ま、いっか…。

84名無しさん:2006/06/04(日) 00:32:25 ID:c2.SmiBg
ピサロが完全に狂えば、闇から救う為にそういう展開もありかと。
>フォズで殺す。

85名無しさん:2006/06/04(日) 00:36:02 ID:c2.SmiBg
まあ、フォズが狂ってもいいんだけど・・・仲間がいるor不意打ちで。
はっ、その為のレオンか!?(強引に)

86名無しさん:2006/06/05(月) 16:47:04 ID:WfQi6HVA
ククールがバーバラとアルスの死体見つけて
取り敢えず墓でも作ろうかと死体の首2つ持ってうろうろしてるところを
王女とハッサンに見つかって攻撃されるとかいうのも考えてましたが
ククールは生首持てないかなと思いボツ。
で、死体は見つけてない方向であのようになりましたとさ。

87その名は…:2006/06/06(火) 00:00:22 ID:l2N.JgKU
私の支給品には、これが入っていた。
装備し、使ったことのある者は一度でもこの刃に切り裂かれたことがあるだろう。
しかも、その刃は時とともに赤黒く変色する。
まるで、血錆のように…。

その名は、カ ッ タ ー ナ イ フ!!!

88名無しさん:2006/06/06(火) 00:02:08 ID:DMK6JeEo
>>87
不覚にもワロタ

89名無しさん:2006/06/06(火) 21:52:45 ID:3jf8y4Z2
アリスの動かしたかについて考えていた。

アリス&カンダタアリアハンへ向かう。
  ↓
テリーと遭遇。
  ↓
アリス、テリーを熱血説得。
  ↓
(何なんだ?この女は…)と
半ばあきれつつもテリー、アリス達と行動をする。

テリー予約入ってたのでボツ。

90クロスアウト:2006/06/07(水) 17:35:04 ID:B3RcdIo6
「あ、姐さん!どうしたんですかい?あっしの覆面なんか剥ぎ取って…。」
「……なんだか、これを被らなければいけない気がする」
「へっ!?あっ姐さん!?
「クロォスアウッゥゥゥト!!!!!!」

アリス:勇者
装備:覆面 危ない水着 マント
状態:強い高揚感 父に変わっておしよきよ!!

91名無しさん:2006/06/07(水) 19:19:13 ID:iiSAFJ4g
>>90
麦茶吹いたwwwwwwwwwwwwww

92名無しさん:2006/06/08(木) 16:13:06 ID:GBuRunjE
フォズを最終決戦に参加させて全員の勇敢さを見て「ゆうしゃの心」だとかなんとか言わせて転職
全員でウルトラミナデインとかさせて勝利させようとしたけどどこの少年漫画だと思いボツ

93名無しさん:2006/06/09(金) 22:18:27 ID:kH85et1M
クリフトは、ただひたすら駆ける。
 殺されるという恐怖から逃げ出す為に。
足を引きずりながらも、城下町の家々を抜け、門へと向かう。
 『何故。何故、致死呪文が効かない?』
混乱する頭を抱えながら、門を通リ抜ける。
 『ひとまず、逃げなければ!』
 
だが、クリフトの左足は主人の思うようには動かない。
 「ぐっ!」
痛みに耐えきれず、城外から北西へ数十歩、進んだところで、とうとう倒れこんでしまった。
 『こんな見晴らしの良いところは嫌ですが、治療に集中してから移動するしかありませんね。』
 「べホマ、ベホマ。」
少しづつだが確実に足の怪我を治していく。
 『やはり回復魔法の効きが悪い。おまけに呪文を唱える為の魔力が減ってきている。』
 だが、見晴らしの良いところで、長く休息をとる事はできない、とクリフトは思う。

 ザックから地図と方位磁石を取りだし、位置を確認する。
『東に行けば島がありますね。
わざわざ島まで行って一人でずっと過ごす人はいないでしょうし、島に飛ばされたなら泳ぐなりしてもう脱出してるでしょうし。』
殺すにも、逃げるのにも、孤立した島は不都合な場所だろう。 
『ただ、休息するのには、好都合かもしれません。』
 クリフトは東へ向かった。

94名無しさん:2006/06/09(金) 22:19:00 ID:kH85et1M
 クリフトが進み始める頃、日常的な動作が非日常的光景で行われていた。
 パンツを頭にかぶった男が、洗濯をしていた。
 隣に少女と無言で立っており、少女からやや離れたところで白馬が水を飲んでいる。
  「・・・」
  「姐さん、もう良いですか?」
 パンツ男と少女と馬が並んでいる。異様だ。
  「姐さん〜。」
 「まあ、いいでしょう。時間もあまりないですから。」
 『だったら、洗濯している場合じゃないだろうに。まあ、姐さんも年頃だからなぁ』
 パンツ男ことカンダタは、姐さんへと聖なる守りを手渡した。
 しぶしぶ、姐さんは守りを胸につけた。
 こころなしか、守りは輝いて見えた。守りを身につけたアリスもまた。
「フフフ。」少女は嬉しかった。
「でへへへへ。」パンツも嬉しかった。
バコッ 
「い、い、痛い。姐さん〜。」
頭を叩かれたらしく、手で頭を押さえている。
「その下品な笑い・・・変なこと考えたでしょう!」
「考えてませんて!!あっしは元から下品なんです!この笑い方は生まれつきで!」
姐さんが振り上げた拳を見て必至に抗弁するカンダタ。
「生まれつきなら、しかたありませんが、改善の努力はしてくださいっ。」
「はい!モチロンです!」
白馬を手綱で引きながら、賑やかに二人と一匹は歩きだした。

95名無しさん:2006/06/09(金) 22:19:33 ID:kH85et1M
 自分の進行方向に大中小の影が3つ見える。
こちらに歩いてきてるようだ。
 見晴らしの良い平原。
遠距離攻撃できる者に有利なハズ。
近づいてくるに連れ、姿がハッキリしてくる。
 少女とパンツをかぶった怪しい男、そして馬。
 狙うは二人。
クリフトは迷うことなく呪文を唱えはじめた。
いささか呪文に不安定さをぬぐいきれなかったものの、道具が頼れないなら、自分に残された攻撃はコレしかない。
男が自分に声をかけようとしたとき、呪文が完成した。
 「ザラキ」

怪しい男がよろけ、崩れそうになる。
「このぉ・・・。」
「カンダタ!」
女性は無事なようだ。
『もう一度・・・』
再び呪文を唱えはじめる。
「させねぇえぇぇぇ!」
叫びながら、男が自分に向かって突っ込んでくる。
 速い!!
 だめだ、呪文が間に合わない!!
「ぐっ!」
気負いよくタックルを食らい地面に叩きつけられる。
「ざまあみさらせぇ!」
カンダタが崩れ落ちる。

 なんとか起きあがろうと上体を起こそうとした時、
「よくも、カンダタの仇!」
少女が倒れたクリフトの腹に拳を打ちつける。
「ぐほっ、ごぼっ。」
空気が漏れるような音が口からでる。
もう、こちらに抵抗する手段はない。
このまま、殺されてしまうのだろうか?
「己の罪を悔い改めなさい!!」
 クリフトは・・・。

96名無しさん:2006/06/09(金) 22:20:08 ID:kH85et1M

「姐さん、誰かいますぜ。」
「うん?」
男が一人、こちらの方向に歩いてくる。
「声をかけて、ゲームに乗っているかどうか確かめましょう!」
「危ないヤツだったらどうします?」
「説得します。」きっぱりと言った。
「一応警戒はしておいたほうがいいと思いやす。」
 近づいていくと、服のあちこちが破れているようだ。
「戦っていたみたいですね。カンダタ下がって、私が声をかけますから。」
「ダメです。心配していただけるのは嬉しいですが、姐さんを行かせるなんざ、もっての他です。」
「うらりひょんみたいなヤツですから、大丈夫だと思いますが、ここはアッシが!」
「くれぐれも警戒はしてくださいね。」笑いながらアリスは答えた。

 カンダタが声をかけようとした瞬間。
 「ザラキ」
 一瞬、目眩がしたものの、何ともなかった。そう、自分には。
 「このぉ・・・。」
 うめきに、振り向いた先のカンダタの顔は、蒼白になっていた。
 あの呪文・・・!!
 かつて世界を旅した仲間が使っていた呪文の1つ、致死の・・・。
 「カンダタ!!」
 男が呪文を再び唱え始めた。
 「させねぇえぇぇぇ!」
 何処にそんな力があったのか。突如カンダタが走り出した。
  アリスは追いかける。
 何時の間にか、あふれていた涙で視界がぼやけながらも、カンダタの背を追う。
  カンダタは、男に全身全霊の体当たりで、ぶつかって行く。
 もう、カンダタ自身でも、これしか攻撃方法がないのが分かっているのだろう。

「ざまあみさらせぇ!」
 それは勝利の叫び。

確かにカンダタは己の望む役目を果したのだ。

 傾いていくカンダタの体。
男がそれを呆然と見上げ、慌てて起きあがろうとしたのを見た。
 アリスは知らず叫んでいた。
 「よくも、カンダタの仇!」
 拳を男の腹に打ちつける。
 
「ぐほっ、ごぼっ。」
空気が漏れるような音が男の口からでていた。

 凄惨な音にはっと我にかえる。

―――危ないヤツだったらどうします?
自分はこう答えたのだ。
―――説得します。
(カンダタ・・・。)
アリスは叫んだ。
「己の罪を悔い改めなさい!!」

男は・・・

笑った。
「はは、は、はぁ。」
いつまでも攻撃してこないアリスに、半ばヤケになり開き直ったクリフトが笑う。
痛みがあるせいか上手く声をだすことはできなかったが。
「はっはははっ。悔い 改め る?
 僕は あ いする 人の為に戦って いるんだ。悔い 改めよ う はずが ない!」
「あなたの愛した人はそんな事を望むとでも!」
「ぼ くが 望んでしてるんだ。 かのじょの気持ちは関係ない!
彼女を守る為だったら、僕はなんだってする!」

「僕は、そこに死んでいる男と同じだ!」

「なっ!!!」
かっとなったアリスは思わず手を振り上げ、クリフトの頬を殴った。
「ぐっ。」

カンダタ!!
私はどうしたら・・・。

気を失っているクリフトを見つめながら、その場にたちすくむアリスだった。

97名無しさん:2006/06/09(金) 22:25:25 ID:dACYMaS6
般若の面を装備したテリーが姉の声と
『これじゃあ…あのガキと一緒じゃないか!!』
という意思で般若の面の呪いを跳ね返す!

という話を思いついたは良いけど、例のごとく文書にならないw

98名無しさん:2006/06/09(金) 22:29:46 ID:kH85et1M
>>97 がんばれw君ならできるw

99名無しさん:2006/06/09(金) 22:31:54 ID:kH85et1M
装備してるところは描写されてないから、葛藤しながら進んでいくとか。

100名無しさん:2006/06/09(金) 22:37:02 ID:6MDO37Gs
気持ちはわからんでもないが前の話が気に入らないからその展開をすぐに潰す、とか
そういうのは自重しといてくれ
リレーとは繋げることだ

101名無しさん:2006/06/09(金) 22:41:12 ID:kH85et1M
気に入らないとかじゃなくて、

レックスが呪われてるのを見てるから、テリーが嫌悪を自分に抱くと言う描写だと思った。

・・・深読みしすぎかなぁ。

102名無しさん:2006/06/09(金) 22:42:54 ID:dACYMaS6
皆殺しのレックスVS般若のテリーの一騎打ちも面白そうだぁ…
アイデアだけはポンポン浮かぶんだけどなw

103名無しさん:2006/06/09(金) 22:44:24 ID:kH85et1M
>アイデアだけはポンポン浮かぶんだけどなw

hageしく同意。もっと文章力が欲しい〜。

104名無しさん:2006/06/09(金) 23:26:27 ID:nSje4Prg
ああ、沢山のアリスが拝めて幸せ・・・。

105名無しさん:2006/06/10(土) 19:16:32 ID:bFKdi3.E
「俺は人間を止めるぞーーー!レックスーーーーー!」
URYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

本スレには投下しにくい小ネタだったのでこっちに。

106名無しさん:2006/06/10(土) 19:56:43 ID:9haaGWgY
ちょwwwそれなんてDIOwwwwwww

107ためしがき:2006/06/10(土) 22:14:49 ID:sL8co5k.
 1回目の放送
 
  地図上に灯る無数の星。時折、星の一つが激しく明滅し、消えていく。星たちは何も知らずに瞬き続ける。
    強く、弱く、時に互いを傷付けあう星たちの世界。その世界が夕闇に包まれはじめるころ、空に鐘の音が響き渡った。
  鐘の澄んだ音が鳴り止んだ後、独特の癇に障る低い声が世界を覆う。
   「選ばれし生贄諸君、無事で何よりだ。これより、1回目の放送を行う。心して聞け。」
  まるで金属同士が擦れ合っている音を、無理やり声にしたような、耳障りな甲高い声が空に流れる。
   「 僭越ながら、私がハーゴン様の代理として放送を行う。
    ハーゴン様より格別の思し召しがあり、禁止エリアを多めに設定した。
   【B−01】【D−01】【F−06】【C−04】 以上の地域は、これより3時間後の今夜21時から禁止となり、
    また、24時から【E−01】
    朝3時から【A−01】
    朝6時から【C−01】が禁止エリアとなる。 各自、地図と照らし合わせ確認するように。
    行動範囲の狭まった分、さぞかし、素晴らしいことが起きると期待している。」
 「さて、死んだ『可哀想な』もの達の名を読み上げる。」

   「リュカ」   「アルス」   「バーバラ」   「マリベル」   「メルビン」
   「アレン」   「ゲマ」    「フィオ」    「死神の騎士」  「ランド」
   「ミレーユ」  「ベリアル」  「ゼシカ」    「ドランゴ」   「アリーナ」
   「ビアンカ」  「バズズ」               

  「以上、スタートから1回目の放送までの死亡者  名、残り  名。 」
  首輪を通して、悲鳴や感情を懸命に押し殺そうとする声が主催者に伝わっていく。
  
   「すばらしい。
    次の放送は、12時間後の朝6時に放送する。
    聞き逃しのないようにな。
    諸君らの更なる御健闘を祈っている。」

   甲高い声が流れている間、癪に障る低い音がBGMのように絶え間なく笑っていた。
   慇懃無礼な挨拶が終り、再び、鐘の澄んだ音色が響き渡る。
 
  「ハーゴン様、放送終了いたしました。」
「ご苦労。」
  「是非ともこの調子で活躍して欲しいものです。」
  「無論、そのための禁止エリアだ。
   今は良いが、人数が減れば、あやつらの事だ。結託するに決まっておる。
     結託して良からぬことを考える者には分断を。
さらなる殺害を求めるものには獲物を。
    万が一にも全ての生贄が結託したとしても、あやつらは『全員が死ぬ』事に耐えられぬわ。
   みずから殺さずとも、24時間以内に誰かが、馬鹿馬鹿しい自己犠牲とやらで死んでいく。
   果して、その自ら生み出す闇に耐えられるかな?」
    ハーゴンは哄笑した。

  背後の薄暗い邪神像の目が、一瞬、怪しく赤く光る。

  消え行く星達の、声無き声、聞き届けたるものは、魔物か人か、それとも。

【残り人数  名】

108ためしがき:2006/06/10(土) 22:18:01 ID:sL8co5k.
すれ違いすいません^^;

109名無しさん:2006/06/11(日) 00:19:47 ID:aiCHhIPg
>>90
ロトの血筋はみんなクロスアウトするのかw

アレフもアレンもランドとリアの兄妹もマリアも……
オルテガのせいで、とんでもない事になったなロトの血脈は

110名無しさん:2006/06/11(日) 14:55:16 ID:6JSI8shQ
全「クロス・アウッ!」
アリス「あらくれ・レッド!」
アレフ「あらくれ・ブルー!」
アレン「あらくれ・イエロー!」
ランド「あらくれ・グリーン!」
マリア「あらくれ・ピンク!」

全「巨大勇者・オルテガーン起動!」

?「勘違いするな、お前たちを倒すのはあくまでも俺だ」
アリス「お前は第6のあらくれ…カンダタ!」

111名無しさん:2006/06/11(日) 19:21:30 ID:RapCDJWk
そんな中ハブられる天空の勇者と近衛隊長w

112名無しさん:2006/06/11(日) 19:25:45 ID:o0cUHd7.
>>111
あやまれ!エデンの戦士にあやまれ!

113名無しさん:2006/06/11(日) 20:02:23 ID:rVo/Ahck
?「さあ、僕達も頑張りましょう!」

アルス「石版探して三千里」
レックス「親を探して三千里」
ユーリル「仇を探して三千里」
エイト「呪いの解除法を探して三千里」
?「名前を探して三千里!!!」

?「我ら五人、まとも戦隊、サンゼンリジャー!!!」

アルス・レックス・ユーリル・エイト「・・・アンタ誰?」

114名無しさん:2006/06/11(日) 20:10:10 ID:PVhwpYtM
あらくレンジャーからもリアちゃんハブられてるしw

>>113
最後のは6主か!回想されてないから名前も無い彼に合掌

115111:2006/06/11(日) 20:18:38 ID:RapCDJWk
>>112
いや、エデンの戦士達死者スレかなーと思って
あれ?なんか羊さんがたくさんがこっちに来るあwせdrftgyふじこlp;@:「

116名無しさん:2006/06/11(日) 20:19:21 ID:RapCDJWk
6主なら「妹探して三千里」の様な気がするw

117名無しさん:2006/06/11(日) 20:22:01 ID:PVhwpYtM
自分を探して三千里、でもアリだな

118日本ブレイク工業社歌にのせて:2006/06/11(日) 23:54:20 ID:RapCDJWk
>>110
クロス・アウト クロス・アウト アーレフガルドの〜
買いたい 買いたい 一役買いたい〜
世界が闇に包まれる 暗黒神官攻めて来る
世界の平和を阻む奴らっさ〜 クロスアウト! 

ロトの血族 あらくれ 王者のつるぎDA・DA・DA!
ロトの血族 あらくれ オルテガーンよ大地を揺らせ!

ゾーマ倒すぜ!シドー倒すぜ!竜王倒すぜ!
東へ西へ 走る〜 走っる〜!
ロトの血族 あ〜らくれ〜!

119名無しさん:2006/06/11(日) 23:58:41 ID:JgXbEbDE
漫画『エデンの戦士達』のキーファも、ロトの血族だった筈。

120名無しさん:2006/06/12(月) 00:03:46 ID:ryN9D636
ヒント・カムイ設定

121こっちかと思った。:2006/06/12(月) 15:52:21 ID:KuKN9QWU
>>118
CLOTH OUT CLOTH OUT
( C L O T H O U T !!!)
JUST TAKE OFF CLOTH!
熱く 熱く 熱く 戦え オルテガーン!

一つの魂結んだ 五人の勇者よ燃え尽くせ
真心彷徨う アリアハン 炎の色に染めて

謎めいた悲しみを 焼き砕けロトの印に

CLOTH OUT CLOTH OUT
( C L O T H O U T !!!)
JUST PULL ON THE MASK
瞬く光のオルテガーン

CLOTH OUT CLOTH OUT
( C L O T H O U T !!!)
JUST TAKE OFF CLOTH
熱く 熱く 熱く 戦え オルテガーン!

122適当に書いたので没にしました:2006/06/13(火) 19:43:30 ID:NWNzlN0g
タイトル:レックスの夢(仮)

暗い闇の中少年が彷徨っている。

「ここは、何処?」

―お母さん、お父さん、怖いよぉ。
ふと、遠くに人影が見えた。
嬉しくなったので駆け寄ってみる。
距離が縮まり、姿が鮮明に見えるようになってきた。
―え?ボク!?
その人影はボクと、そっくりだ。
違う点は、返り血を浴びた姿と、禍々しい剣。
「ふふ、僕の姿そんなに気になる?」
自分とそっくりの少年が、笑みを浮かべながら話しかけてきた。
その目は、狂気に染まっており、自分の全てを見透かされているようだ。

「君は誰だ!」
―邪悪な気配がする。モンスター?でも、そんな感じはしない。
「う〜ん。モンスターなんて酷いなぁ。自分のことを…」
「えっ?なんで、口に出してないのに。それに、自分って……」
目の前の少年は、怪訝な顔をしながら答えた。
「君の考えていることは分かる。それにほら、その目で見てきたことを忘れてちゃ、駄目じゃないか」
―忘れ てる?
「…………!!あ あ あああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!!!!!」

少年の目に何人もの人間の姿が浮かぶ。
血の海に沈む青年と少女。
焼け爛れた女の人。
桁外れの強さを持つ魔王。
逃げる少女と魔物。
自分に殺気を放ってくる青年。

「違う!ボクは、こんなことしていない。」
首を振りながらも必死に否定するが、否定しきれない自分がいる。
その姿を見て嬉しそうに少年が語り始める。
「うん。そうだね。殺ったのは、僕だ。
でも、君も分かっているんだろう?君は僕、僕は君だよ。
僕のしたことは、君のしたこと。つまり、君は僕と同じ殺人者だ」
「そんなそんなそんなそんな…………。
助けてよ、お父さん…」
――なんでこんなに頭が痛いの?
「次に目覚めるときは、君の方が面白いかもね〜」
少年が残酷な顔を作って微笑んでいる。

123アトラス予約入ったので没:2006/06/13(火) 20:10:58 ID:sbUzkA3U
【ジョーカーとして 戦士として1/6】

 凄惨な惨劇の舞台には似合わぬ、美しい鐘の音がアリアハン大陸に響いた。
紅の一つ目巨人アトラスはそれを聞いて目を覚ました。
偉大なる大神官ハーゴンの補佐役、悪魔神官の声が破壊神の御許へ逝った者達の名を読み上げた。
その中に彼と共に冥府の底より蘇り、この神聖な儀式を成功させんと命を受けた兄弟の名もあった。

―それも二人も―

 一人はこの村で、何とも勇ましい女格闘家に倒されたであろう、厳しくも優しかったベリアル…。
もう一人は、いつも我が侭で、怖いもの知らずでトラブルメーカーだったが、本当は誰よりも
仲間意識が強かった…素直になれない不器用なバズズ…。

124ジョーカーとして 戦士として2/6:2006/06/13(火) 20:26:24 ID:sbUzkA3U
 「ベリアル…バズズ…」
アトラスは志し半ばで散っていった友を思う。
(…ベリアル…。あの日、ロトの子孫達がロンダルキアに攻めてきた時も
 今回も、いつもアトラスを励ましてくれた…。)
冷静で、厳しくて、そして優しくて…。良いリーダーであったと彼は思う。

(バズズ…おまえはお調子者で、我が侭で…だけど、いつだって自信にあふれていた。
 最後にインカム越しに聞いた声は随分と怯えていた。相手はそんなに強い奴だったのか?
 恐ろしい奴だったのか?
  おまえ、怯えていたけど、最期の最期まで戦ったよな…?)
最後に見たバズズの姿。それは朝、勇者を名乗る小娘の襲撃を受け、怒りに燃える姿だった。
 
 『なぁ〜に。あんなガキ供、この俺の連続攻撃と大魔法にかかれば一捻りよ!』
ロンダルキアの時にはそう言って笑っていたバズズ。その直後、ベリアルに
「気を引き締めろ、油断はするな」と叱られていたが、その場を和ませようとしてくれた
不器用な優しさをアトラスは感じ取っていた。
 だからこそ、最期の姿もそうであって欲しかった。

125ジョーカーとして 戦士として3/6:2006/06/13(火) 20:36:16 ID:sbUzkA3U
 (強敵…)
 アトラスは自分の目の前に立つ女を見つめた。
彼女は、自分が倒れた時に発したであろう凄まじい衝撃にも耐え
二本の足で大地に立っていた。
迷いの無い、命の炎を宿した拳を真っ直ぐに突き出したままで…。

 ベリアルを失った悲しみと憎しみで、殆ど我を失っていた自分を「闘い」を通じて
現実へと呼び戻してくれた戦士。 
本人にその気があったとは思えない―相手が混乱していたほうが自分には有利なはずだから―。
せめて、あの闘いの中で感じた『悦び』は分かち合えただろうか…?
 傷口を押さえながら前へと進む。女の死に顔を見るために。
 口や鼻から大量の血が流れたのだろう顔を赤く汚していた。その瞳も死の色で濁り切っている。
しかし、その表情は誇らしげに微笑んでいた。
 ―そう、一人の格闘家としての誇りに―

126ジョーカーとして 戦士として4/6:2006/06/13(火) 20:46:30 ID:sbUzkA3U
 この女は死んでいる。アトラスはこの強敵―とも―の名を知らない。
あの放送で呼ばれた名の内のどれかであろう。だが、どれであるかがわからない。
その事を思うと、改めて悔しさが込み上げて来た。
「ごめんな…おれ、おまえを殺してしまった。止めをさしきれなかった…・。」
一人の戦士としての想いと、ジョーカーとしての矛盾した想いが交錯する。

 もしこの女と違う機会に会えたなら、お互いに良い好敵手となれたであろう。
もちろん、人間とモンスターという壁など越えて。

―しかし、だからこそ…―
「でも…だからこそ、おれは人間を殺さなくっちゃいけない。このゲームを成功させなくちゃいけない。
 おれ達にもう一度生命を与えてくれたハーゴン様やシドー様の為に。死んでいったベリアルと
 バズズの為に」
そして、声には出さなかったが、この大陸で命を落としていった勇ましき戦士達の為に!
「…だから、おまえの仲間も殺さなくちゃならないけど…ゆるしてくれ、なんて言わない。」

127.:2006/06/13(火) 20:52:22 ID:FdAAMsto
.

128ジョーカーとして 戦士として5/6:2006/06/13(火) 20:56:02 ID:sbUzkA3U
レーベの村に動くものはいない、生者の気配は無い。
ベリアルには此処に残り、参加者達を待ち伏せするように言われていたが
そのベリアルの惨たらしい姿、物言わぬ強敵の姿が佇むこの村に留まるのは
アトラスには辛すぎた。
 
 超万能薬で傷を癒し、決意が揺るがぬ内にアトラスは死の村レーベを後にした。
 我らが大神官ハーゴン様の長年の悲願を叶えるために。
 再び与えられた自分の命を果たすために。
 
 志し半ばで散った兄弟の
 命がけの至死等の中で悦びを分かち合えた強敵の
 数々の闘いの中で命を散らした猛者達の魂を背負い、炎の巨人は戦場へ向かう。

 この神聖なる儀式の遂行者―ジョーカー―として、そして一人の戦士として
最期の命の炎を燃やし尽くしてでも戦い抜く。
 そう、赤く燃える夕日に誓った。

129ジョーカーとして 戦士として6/6:2006/06/13(火) 20:57:34 ID:sbUzkA3U
【アトラス@DQ2】
[状態]:超万能薬で全快
[装備]:風のアミュレット
[道具]:支給品一式
[思考]:レーベを離れ南下

【エイト@DQ8主人公】
[状態]:気絶 左肩にダメージ MP回復中)
[装備]:メタルキングの槍
[道具]:支給品一式 首輪 メルビンの支給品一式(不明二つ)
[思考]:仲間(トロデ優先)を捜し、ゲームには乗らない
     危機を参加者に伝える

【キーファ@DQ7】
[状態]:気絶 HP(回復中)
[装備]:メタルキングの剣 星降る腕輪
[道具]:ランドの物を含め、不明2
[思考]:ランドの妹(リア)を守る 仲間の死を悟る

130名無しさん:2006/06/13(火) 20:57:44 ID:FdAAMsto
>>122
>>123-126
乙!!
両方、読み応えがありました〜。
レックス、放送聞けるのかなぁ・・。

アトラスは、かしこさ&格好良さがレベルアップ! ですね〜。

131名無しさん:2006/06/13(火) 21:21:40 ID:bwzqoEP2
うおう、このアトラス格好良いなあ。
つか、ちょっといじればまだまだ通せそうな感じがしないでもない。
このまま没で終わらせるには勿体無いかも…。

132ジョーカーry 作者:2006/06/13(火) 21:25:58 ID:sbUzkA3U
また殺人者の内面描写になりましたw
たぶんバトルになるとクオリティ高すぎて書けないだろうなぁ…。
バトルシーンは読むのも書くのも苦手。某バンパイアハンターなんて何が何やらw。
アトラス南下、エイト&キーファ気絶の方が、アレフと絡ませやすくなるかと踏みました。

アトラス去った後アレフ登場。
「おい!君たち、生きてるか!?もし解毒の呪文を使えたら、この娘を助けてやってくれ!」
でもルーシア逝っちまったんだよな…ルーシア!。・゚・(ノД`)・゚・。

アトラス南下させたらさせたでアレン部隊と遭遇してジョーカー2連戦でバランス悪いかなぁ…。
でもアトラスにはジョーカーとして、一人の戦死として任務をまっとうとして欲しいものです。

133名無しさん:2006/06/13(火) 21:31:06 ID:1E0JSgPM
投下乙。
確かに良作だが、難を上げるなら一つ。
アトラスが賢すぎるくらいかな〜

134名無しさん:2006/06/13(火) 21:33:00 ID:FdAAMsto
>アトラスが賢すぎるくらいかな〜

何故だか、竜王ことアレフを思い出しました。

135名無しさん:2006/06/13(火) 21:34:30 ID:sbUzkA3U
そうか、賢すぎたかw。
個人的にはアトラスはちゃんと物事考えられる良い子だと考えてたけど…
ジョーカー三兄弟の中では一番純粋で人情深いっつーか。

136名無しさん:2006/06/13(火) 21:34:50 ID:FdAAMsto
アレンでした・・。逝ってくる;;

137名無しさん:2006/06/13(火) 21:36:09 ID:sbUzkA3U
>>136
逝かないで!今逝ったらトリプルマダンテと岩石が!!

138名無しさん:2006/06/13(火) 22:20:52 ID:bwzqoEP2
>>135
うん、俺もそういうイメージ。
ちょっと言葉足らずなだけで、きっちり頭では把握できてる、みたいな。

139名無しさん:2006/06/13(火) 22:36:24 ID:CLqZGI4M
ベリアル=素直クール
バズズ=ツンデレ
アトラス=天然

ちょっと無理があるか…;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン

140名無しさん:2006/06/13(火) 22:45:18 ID:5lu3OSAg
>>139
それなんてエロゲ?

141名無しさん:2006/06/13(火) 22:48:19 ID:NWNzlN0g
>>140
ロンダルキアの恋
  〜種族を越えた愛〜

142名無しさん:2006/06/15(木) 20:18:50 ID:DpQpHliw
ぬお、ほぼ書き上げて予約は帰宅後でいいやと思ってたアレフが予約されてるw
こういうのがあるからリレーって面白いんですね。

143名無しさん:2006/06/15(木) 20:40:23 ID:ws1.UU/Q
うわぁ、そこはかとなくプレッシャーが・・・。

144名無しさん:2006/06/15(木) 20:44:26 ID:3buaa.Lk
>>142
ここに投下するんだ!

145名無しさん:2006/06/15(木) 20:45:44 ID:s7qaQPdM
>>142
IDがDQオメ。
そして惜しかった…な…だが捨てようだなんて考えるな…
『没ネタ』に『投稿』することに…wktk…する…

146名無しさん:2006/06/15(木) 20:48:35 ID:M6JoQeFk
とりあえずはアレフが本スレに投下されてから、にしたほうがいいね

147名無しさん:2006/06/15(木) 20:49:55 ID:qsp7W5aM
>>142
そうそう。俺もアトラス予約されて没ネタ投下したら
>>131みたいなお褒めの言葉をいただいて、インスパイヤ作品投下出来たんだから。

案ずるより産むが安し!

148名無しさん:2006/06/15(木) 20:53:51 ID:DpQpHliw
>>143
あー、ごめんなさい、そういうつもりはなかったです(´・ω・`)
自分も前作で予約被りで同じ目に合わせた方居るんで
まさに今こんな気分だったのかッ!みたいなのを身をもって痛感してますw
前作からのスパンも早すぎるので落ち着くにはいい機会でしたしね。

期待してるっていうと更にプレッシャーかけそうですが、頑張ってくださいね〜。

>>143-146
どうもっす。様子を見て投下検討してみます。

149名無しさん:2006/06/15(木) 21:07:20 ID:fr8KkJEs
>>148
仲間発見!

てか、最近先を越されてばっかで、何も投下してねー。
中途半端だから、没スレにも投下しずらいし……。

150名無しさん:2006/06/15(木) 21:12:06 ID:s7qaQPdM
自分は予約してから書くんだが…
みんな違うのか?

151名無しさん:2006/06/15(木) 21:29:08 ID:qsp7W5aM
>>150
思いつく→ある程度話をノートとかにまとめてみる→予約→メモ帳に書く
→投下用SSスレに投下→訂正→本スレに投下

って順です。

152名無しさん:2006/06/15(木) 21:31:55 ID:M6JoQeFk
SS一時置き場はあんまり頻繁に使う場所じゃない
自分で問題があると判断した時だけ使って欲しい

最近の投下SSは誤字とかはあっても内容は問題ないのが多いので
一時置き場を使用してる意味が薄い

153名無しさん:2006/06/15(木) 21:33:00 ID:7.rg5m6c
>>150
推敲に時間がかかるのよ。
毎日見るとそのたびに直すところが出てくる。

154名無しさん:2006/06/15(木) 21:37:39 ID:qsp7W5aM
>>152
はい。今度から気をつけます。

155名無しさん:2006/06/15(木) 22:18:24 ID:IfsqOxLI
>>150
自分は思いつく→頭の中で大筋を組み上げる→予約→書く→投下の順
書くの工程も、紙に書く(→携帯で打つ)→パソで加筆修正でやってるわ

156名無しさん:2006/06/15(木) 22:23:04 ID:DpQpHliw
>>150
自分は投下できる目処が立ったら予約して、期間は推敲に当て、満足してから投下です。
構想だけで予約して、筆が乗らなかったら気まずいですしね。
性格的に締め切りが迫るプレッシャーってのがあまり得意じゃないのもあるかも。

どうも予約のタイミングが難しいので勉強になります。

157名無しさん:2006/06/15(木) 22:31:02 ID:qsp7W5aM
自分はノートに話をまとめてる間に予約入ったら諦めます。

158名無しさん:2006/06/15(木) 22:34:49 ID:IfsqOxLI
ところでみんな、話を考える時ってどんな風に思いつく?
自分はぱっと一場面or一台詞orタイトルが浮かんで、
それを書きたいがために全力で残りを繋いでいく感じ。多分危険

159名無しさん:2006/06/15(木) 22:42:12 ID:qsp7W5aM
投下された作品を読んで、「このバトンを受け取りたい!」という
勢いで書きます。
注意する点は

・1、前の作品をじっくり読んで、矛盾の無い展開にする
・2、描き手さんたちが作り上げたキャラを壊さないようにする
・3、どう終わらせたら次の人が繋ぎやすくなるか考える
・4、自分の書きたい主張が伝わるようにする

でも勢いでガーっと書いちゃうので誤字脱字が多いんだよな…。

160名無しさん:2006/06/15(木) 22:46:17 ID:5itXGfLM
自分はキャラを考えて取り敢えず予約→書きながら考える→完成→即投下

クレーム付けられたことがなくてびっくり

161名無しさん:2006/06/16(金) 00:37:36 ID:Y2IzZuDw
私は、まず適当にネタを書いて、それをもとに肉付けしたり削ったり。
ある程度出来上がったら、矛盾がないか見直して投下。

162名無しさん:2006/06/16(金) 01:12:55 ID:xFhMV/OU
大体頭の中で思いついたら予約>書き始める>投下
いつも誤字だらけ。だから誤字の指摘がないと嬉しい。
レスつけたくないとか某所で発言されると自分の事かーとつい考えてしまう。

163名無しさん:2006/06/16(金) 01:22:01 ID:xFhMV/OU
投下手順より、アレフの没ネタが物凄くキニナル。

164名無しさん:2006/06/16(金) 01:41:07 ID:IXzrmoEY
自分はまずあらすじが出来て(前の人の話から)、
それからそれに合わせた場面や本文が断片的に思い付いて、
で、その思い付いたシーン(文章)を書きたい!と思った所で予約。

一日目でもう一回、全体の構想を見直して、
二日目で書き上げて、
三日目で見直し、て感じ。

165憎しみは連鎖する1/4:2006/06/16(金) 11:48:07 ID:wEk0UXL.
勇者は走る。
守ると決め、自らが救うと誓った少女をその腕に抱え。

勇者は走る。
共に少女を救うと誓い、勇者を逃がした少女を救うため。

勇者は走る。
その二人の少女が、どちらも既にこの世から召されたことにも気づかず。

勇者は走る。
すぐそばに、自らの愛する女性が居たことにも気づかず。

勇者は走る。
一縷の希望をただ信じて。

勇者は走る。
――響いた鐘の音が、その希望を打ち砕く。

〜〜〜〜〜

茜色に染まる空が漆黒の闇を導きはじめた頃、響き渡る美しい鐘の音。
それは走り続けるアレフの身にも確実に届いていた。

『――死亡18名、残り25名』

僅か半日という時間でこれだけの人数が呼ばれる異常事態の中、奇跡的にローラの名前が呼ばれることはなかった。
だがここに来て出会い、行動を共にした2人の少女が死んだこと。これがアレフに大きな衝撃を与えた。

166憎しみは連鎖する2/4:2006/06/16(金) 11:49:06 ID:wEk0UXL.
ゼシカ。豊満な体に大胆な格好。それに見合う大きな慈愛と正義感。共に居て、とても心地の良い女性だった。
『ルーシアさんを連れて、逃げて!このままだと、ルーシアさん、本当に死んじゃうわ!』
『私は大丈夫よ!これでも賢者の子孫なんだから!…それに…』
『…あの人を許せない…。ルーシアさん、何も悪いことなんてしてないのに…』
最期まで、勇敢な少女だった。
俺はルーシアを解毒したら、必ず戻ると誓った。
けど、心のどこかで安心していた節があった。きっと、後ろからすぐに追いかけてきてくれていると思っていた。
――彼女が後ろから追いかけてくることは、もう、ない。

ルーシア。今もなお、俺の腕の中に抱えられている少女。他人を案じる心優しき少女。
…つい先ほどまで、生きていたはずの少女。
いつから亡くなっていたのか、身に覚えはあった。――あの時のベホマだ。
(自分の知らない呪文だが、名前と受けた効果からして恐らくベホイミの上位呪文だろう)
あれば自らの運命を悟った彼女が、最後の力で俺に力を分けてくれたのではなかったか。
俺が彼女を救いたいと思ったのと同じように、彼女も俺の力になろうとしていて、そして――。
走り続けたことによる自分の熱ですっかり気づかなかったが、ルーシアの体はもう冷たくなってきていた。
そのことが何よりも、"この放送は事実だ"という現実を証明してしまっていた。

「畜生ッ!!」

俺は一体、何のために走っていた?
ルーシアを解毒するためだ。でも、そのルーシアはもう死んでしまった!
俺は一体、何に急いでいた?
解毒した後、一刻も早くゼシカの助けに戻るためだ。でも、そのゼシカはもう死んでしまった!

――俺は、誰も助けられなかった!!

レーベを眼前にして、走る足が止まった。急ぐ意味がなくなってしまったから。
ルーシアを降ろし、地に横たえた。もう、息をしていないから。
天を仰いだ。涙が零れそうだったから。
すっかり暗くなった空から見える星空が、視界いっぱいを包み込んだ。
この星たちのどこかに、ゼシカとルーシアも居るのだろうか。――零れた涙が頬を伝った。

167憎しみは連鎖する3/4:2006/06/16(金) 11:50:01 ID:wEk0UXL.
〜〜〜〜〜

アレフは考える。
ルーシアを毒に侵させたのはそもそも誰だったかを。
ゼシカを俺と離れさせたのはそもそも誰だったかを。
「フローラと、言ったか。あの女…!」
許せなかった。心優しき少女を2人も屠ったあの魔物のような女を。
放送ではその名は呼ばれなかった、今もなお飄々と生きているあの女を。
――俺がこの手で殺してやらなければならない。
これ以上の被害を食い止めるためとかそんな奇麗事ではなく、ただただ殺された仲間の復讐の為に。

発表された禁止エリアを聞く限り、ゼシカと別れたC−4からここまでは一切禁止エリアになる予定はなかった。
もしあの女もこちらを追いかけているとすれば、引き返せばきっと簡単にあの女と再会することができるだろう。
ならば、今すぐに引き返すべきか。
…いや、今は、手元の彼女の埋葬のほうを優先するべきか。
どうせなら、当初の目的であったあの村で、手厚く葬ってあげよう。
あの女を殺しに行くのは、それからでも構わないだろうから。

アレフは再びルーシアを抱えあげた後、レーベに向かい、ゆっくりと歩き出す。

(――ローラ。相手が誰であれ、人を殺しに行こうとしている俺をどうか咎めないで欲しい。
 お前を探すことを、一時的にでも中断してしまうことをどうか許して欲しい。
 そして、どうか俺が決着をつけるまで、生き延びていて欲しい。お前まで居なくなったら、俺は――)

168憎しみは連鎖する4/4:2006/06/16(金) 11:50:33 ID:wEk0UXL.
『殺されたから、殺す』
そんな憎しみの連鎖が続いたところで、喜ぶのはこの「バトル・ロワイアル」の主催者だけである。
既に半分に近い命がこの地で失われている中、アレフにだってそんなことは分かっていた。
本当はローラを探すことに専念するべきだということも分かっていた。
それでも、自分の感情を押さえつけることができなかった。
例え憎しみであったとして、自らを奮い立たせる要因がなければ、この悲しみにとても耐え切れそうになかったから。


悲しみを忘れるため、憎しみに身を任す。
きっとこの大陸のいたるところで、同じような誘惑を受けている人間が居る事だろう。
これこそが「バトル・ロワイアル」の魔力。アレフもまた――それに呑まれようとしていた。


もう物言わぬルーシアの骸から、ひとしずくの水が流れて落ちる。
それはアレフの涙が頬へと落ちていただけであったが、まるで彼女がアレフを憂い、流した涙のように見えた。


【B-3/平原/夜】

【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP4/5 背中に火傷(軽)  ルーシアの遺体を抱えている
[装備]:マジックシールド
[道具]:鋼鉄の剣 鉄の杖 消え去り草 ルーシアのザック(神秘のビキニ、祈りの指輪)
[思考]:ゼシカ、ルーシアの死亡に深い悲しみ
     レーベでルーシアを埋葬した後、フローラを探して復讐する
     復讐が終わったら、再びローラを探す

※レーベの何処で埋葬するか(エイト、キーファ及びアリーナの遺体を発見するか)は次の方にお任せしたかった。

169アレフ被ったヤシ:2006/06/16(金) 11:53:58 ID:wEk0UXL.
こんな感じでした。
やってることかわんないんですが方針が真逆だったのでさすがに修正不可っぽいですね。
「勇者の天空人」でルーシアと出会う前に「乗っちゃえよ」みたいな欲望と葛藤する描写があったので、もしかしたら、と。
弱いアレフと、強いアレフで判断が分かれたみたい。本スレのアレフはかっこよかったです。

本投下のほうもレーベには向かっているので
今後はレーベでルーシアから聞いてたアリーナの遺体を見つけるもよし
ゼシカの仲間だったエイトを見つけるもよしって感じで期待できますね。

170名無しさん:2006/06/16(金) 21:02:56 ID:EKSBkG.A
「悪夢の種子」に影響受けたネタ。
書いててレックスが可哀想になったのでボツ。

『地獄の勇者レックス』
作詞:皆殺しの剣

アリアハンに天空の勇者降り立った
どんな勇者?

ザシュッ!ドブッ!ブシャアアアアァァァアアアア!
(アルス殺害)
バリバリバリバリ!(バーバラ殺害)
ズドドドド!(VSピサロでアリアハン城最上階半壊)

ザックの中には〜 ザックの中には〜
みなごろし みなごろし
殺戮が好きな装備品が 勇者の心を食べちゃった
返り血無数 ピッピッ

殺意がゾクゾク沸いてきた こっちもゾクゾクゾ〜ク
マント羽織って マント羽織って
最も人を殺しているのは 誰だっけ〜?

レックス「止めて止めて、こんな歌楽しそうに歌わないで!
     お母さん助けてよお母さん…」

171名無しさん:2006/06/16(金) 21:36:51 ID:jdfLYHxE
スプーだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

172名無しさん:2006/06/16(金) 22:12:21 ID:xFhMV/OU
>>165>>169
乙!
このアレフもありだなぁ。
アレフの葛藤描くにはもってこいだったかな。
gj!

173名無しさん:2006/06/16(金) 22:49:32 ID:EKSBkG.A
>>165-169
遅くなりましたが投下乙です。
このアレフなら、雑談スレで話題になってた新旧主人公決戦フラグが立ったかもしれん。
でもエイトノカラダハボドボドダ!

174名無しさん:2006/06/16(金) 23:37:52 ID:wEk0UXL.
>>173
>>新旧決戦フラグ
時間合わないだろうし、そもそも自己リレーだしでやめたんですが
「アトラス(魔物)と談話するエイトを見て不審に思うアレフ」ってのを考えてました。
1の世界では完全に魔物=敵という概念だったと思うので、
その魔物と(傍目から見れば)仲良くしてる人間ってのはどう見ても怪しいし、
さらには近くでルーシアの仲間だったアリーナが死んでるし…で。

175名無しさん:2006/06/17(土) 00:01:56 ID:9TsFhwRg
ローラとドラゴンの件をアレフは耳にしているはずなので
一概に魔物=敵とは認識してるとは言えないのでは

176名無しさん:2006/06/17(土) 00:30:10 ID:VGGGYSJ2
あー、それもそうか。
まあ、没ネタの一つとして聞き流してくださいな。

177名無しさん:2006/06/18(日) 14:58:53 ID:qTMb7/3o
2回目放送『偽作』(二日目朝6時)
 夜明け告げる鐘が世界に鳴りわたる。大陸中が沈黙した。
聞き漏らさないよう、生きとし生けるもの全て、口を閉ざす。
ハーゴンの声が空に流れる。
「諸君、良い朝だ。すばらしい日の幕開けになりそう朝ではないか?」
 ハーゴンは癪に障る声で笑う。
「2回目の放送を行う。」1回目と同じの甲高い声が、淡々と告げていく。
「さっそく、今回追加される禁止エリアを、伝えよう。
朝9時から【E―6】
昼12時から【F―1】
午後15時から【F―2】  
夕方18時から【F―3】
 わざわざ、諸君らの行きそうにないところを選んでいるんだ。各自、せいぜい抜かりのないように」
「貴様らに殺された者たちの名を読み上げてやろう」
「以下名前。(略)」
 1回目同様、低く笑う声が聞こえる。
『ああ、ついでに教えておこう。これより3時間後に、激しい雨が降る。
降る時間は6時間、雨宿りする所でも探した方が良いな。
まあ、誰かと鉢合わせになるかもしれんがな。」
 甲高い声が笑う。
「では、以上だ。3回目の放送があれば良いが。・・・聞き逃しのないようにな。」
 鐘が再び鳴って、大陸が音を取り戻す。

178名無しさん:2006/06/18(日) 15:03:38 ID:qTMb7/3o
没にしたのは、幾らなんでも、はやすぎw放送後、動き始めたばかりだからなw
あとは、雨が理由。

179名無しさん:2006/06/20(火) 23:22:37 ID:slWijKCI
どうしよう…今アレフがレーベでエイト組と合流する話かんがえてるけど
自己リレーになってしまう…。

180名無しさん:2006/06/20(火) 23:53:12 ID:FFTPzES6
『今はただ、ひたすらに・・・』

日が落ちていく空の中、鐘が鳴る。
 耳障りな低い笑い声と甲高い声が言う。
「フィオ」
 聞きなれた名前が呼ばれ、森を抜け、城へと向かっている足を止める。
思わず、手で顔を覆う。
「姐さん」
「アリスさん、大丈夫ですか?」
「ヒヒ〜ン?」
頼りなげな二人と一匹を見て、少し乱暴に手で涙をぬぐう。きっと顔はぐしゃぐしゃになっていることだろう。
「大丈夫です。」
そうだ、私がしっかりしなければ。
ふりむけば、大中小の3つの心配そうな表情の男達。
しっかりしなければ。彼らを見て、よりその思いが強くなる。
死者の名前は続く。
なんて多いんだろう。
思わず、手を強く握り閉める。
「アリーナ」
女の人の名前も多い。ひどい。
先ほどの森で合流した若き僧侶の様子がおかしい。
「・・・う。」
そう呟いたきり、息を止めてしまった青白い顔。
彼は、ふらっと、よろけて、地面にひざをついた。
慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですか!?」
「おい、お前しっかりしろ!」
「う、」
「何?」
背中をなでて、落ちつかせようとする。
子供が厭々をするように、思いのほか強い力で、腕をを弾かれた。
「・・・う、うそだぁあぁぁぁぁ!!」
クリフトは両手で、強く地面を叩く。背中が震えている。
震えが伝染したのか、私の睫毛も震えだした。先ほどまで押さえていたものがあふれる。
「フィオ・・・」
『アリス。ん、いやなに、いつも元気で疲れないかね。』
『でも、泣きたいときぐらいは泣くといいんさね。そして、落ちついたら、今はゆっくりやすんで、次に備えればいいんさね・・・』
「・・・ん、わかってます。」
フィオの笑顔が浮かび続ける。
もう、止まらない。
「姐さん・・・」
もらい泣きだろうか、カンダタも目が赤くなっている。
アリスは、なぐさめるようにクリフトの背に手を乗せて、止めどなく頬をぬらす。隣ではカンダタが腕を目蓋の上に当て、静かに。
「ヒヒ〜ン・・・」
3人を見守っている馬もまた、鳴いていた。

181名無しさん:2006/06/20(火) 23:57:23 ID:FFTPzES6
>>179
次の日曜ほど待って誰も予約してなければかいていいんじゃ。
それか潔く、破棄か。

ちなみに、アレフとエイト両方ともなん?

間の話を書いても良いですが、只の展開話になる可能性が。

182名無しさん:2006/06/21(水) 00:01:04 ID:0yroYMl.
話を書くとすれば、
キーファが回復して、エイトとアリーナを見つけるか、
アレフがアリーナとエイトを発見するかまで。

どっちかまでのフラグが欲しい。もっとも展開話には変わりないが。

183名無しさん:2006/06/21(水) 00:14:53 ID:OwXW0Leg
>>181
エイトVSアトラス書いたからエイトが自己リレー。
っつってもエイトは殆ど気を失ってるんだけどねw
没覚悟で気楽に書いてたらやたらと長くなったしw

どっちみち、レーベ組の命運は他の職人さんに書いて欲しいしね。

184名無しさん:2006/06/21(水) 00:29:46 ID:0yroYMl.
了解〜。

185名無しさん:2006/06/21(水) 01:36:16 ID:0yroYMl.
「疾駆」

「ギギギギィ」
バーサ―カーは疾駆する。

左手には、破壊の鉄球。
懐には、ミラーシールド。
右手には、はかぶさの剣。

夜であろうが昼であろうが彼には関係ない。
真っ直ぐに獲物に向かって疾駆する。
幸運だったのか、不幸だったのか。
そこには、獲物が、たくさん。
一番近いのは、こちらに背を向けている少女。

「マリア!トロデのおっさん!逃げろ!」
 気配に気づいたのか銀髪の男が叫ぶ。
少女は逃げない。何かを守るように立ちふさがる。
「ギギギギィィ」
剣を少女に振り降ろす。
「マリア!」
悲鳴。
「ベキラマ!」
パリンと金属音が割れる音がして、少女の背後から、少年が立ちあがった。
だが、バーサーカは、痛みを感じない。
焦げる体をものともせず、少女に斬りかかる。
「きぁあぁぁ。」
はかぶさの剣は、再び少女を切り裂く。
ゆっくりと崩れ落ちる体。

「バキクロス!」
懐にあるミラーシールドが輝いて、竜巻を術者に跳ね返す。
「なっ」
そこにすかさず、鉄球を振り下ろす。
寸前で、かわされる。
「どうした、あたらないぜ。このククール様の逃げ足をなめんなよ」
だが、血まみれだ。
まぐれで避けたようだが、次は避けれまい。止めをさそうと、剣を振りかざす。
「どりゃぁあぁぁ」
大男がナイフを投げてくる。
「ぎぎぎぃいぃぃぃぃ」
脇腹に何か当たったが、そんな事は関係ない。
振り向いて、大男にむかって鉄球を振り下ろす。
その隙に、ククールが少女の元へ行って懸命に回復呪文を唱える。
「畜生、この化け物!」ハッサンが叫ぶ。

この声にこたえてか、ひときわ元気のいい声が聞こえてくる。

「アリス!参上!」
背後にトロデとカンダタ、クリフトを従えて悠然と少女が立っていた。

「はぁ、はぁ、はぁ。」
レックスは走っていた。
あの場所に居るのが怖かった。
ただ、彼らから離れる為だけに疾駆する。
恐怖にかられている彼は知らない。
レックスが走っている方角には、仮面の男も疾駆していることを。

186if 紅き戦い:2006/06/24(土) 01:00:37 ID:rxulyWFg
「もういい!下がれ!!」

キーファには、もう声は届いてはいない。
死んでもいない。気絶をしてもいない。
ただ、何かを見つめていた。
そこへ、死神の騎士の容赦のない一撃が振り下ろされる。

――肉…今度こそ、ミンチ……。

シュン――ドチャッ!!

二度の斬撃でキーファが、いやキーファだった物が胸から割れて崩れ落ち、その断面を露にした。
台地と紅い鎧が、朱く染まっていく…。

「テンメェェェッ!!よくも、キーファをっ!!!」
弾き出された様に、ランドが地面を思い切り蹴って紅い鎧に切りかかった。

死神の騎士は、嬉しかった。
自分の背中に傷をつけた人間が、向かって来る。
それが、とても嬉しい。
今度は、この槍の威力が試せるから。

――この槍…刺したらどうなるかな……喰らえ………。

槍を突き出した先に、ランドはいない。

――何処行った?……右手の剣…右手何処??
……左手何処?
…何故自分が崩れてる?
足…ない!

187if 紅き戦い:2006/06/24(土) 01:01:11 ID:rxulyWFg
紅い鎧の四肢が、無残にも地へと落ちていく。
全て、ランドが切り落としたものだ。
ランドの俊足を、死神の騎士は捉えることはできなかった。

「おせぇよ!何もかもがっ!!」
そして、もはや抵抗のできない死神の騎士へ留めの一撃。
メタルキングの剣が、死神の騎士を頭から二つに裂いた。
その時。

「………ズン」
空から何かが聞こえた。
最初は、米粒程の影だったが、どんどん広がっていく。
ハッ、として空を見上げたとき、ソレはもう逃げられない位置まで迫っていた。
「チッ!これは、イオナズン!?クソっ」
ランドを中心に光が辺りをつつみ、イオナズンは炸裂した。

この呪文を唱えたのは、ベリアル。
空から、この戦いの一部始終を見ていた。
そして、ベリアルは狙っていた。
敵に留めを刺して、気が緩む瞬間を。

「ふん。直撃か」
ベリアルは、土煙が晴れるのを待って降りてきた。
辺りを見回すと、木々は倒れ、家は半壊している。
そして、爆心地には土にまみれ焦げている鎧ともはや原型を留めていない、人の死体。
それ以外には、なにもない。

「これは、サマルトリアの王子ではないな…」
――粉々に吹き飛んだか?あまりにあっけない。……それとも、逃げたか?
かつて、自分を敗った相手にしては手ごたえがなさ過ぎる。
おそらくまだ、生きているだろう。
だが、不用意に探せば奇襲を受ける可能性がある。
歯痒かったが、探すのは諦めた。

「まぁ、いい。生きていれば、そのうち出てくるだろう。…ふん」



ここは、崩れかけたレーべの民家。
そこに、ランドはいた。
「ごふっ…ゴホッゴバッ。…くそっ!」
もう抜いたが、ランドの腹部には、木片が突き刺さっていた。
直ぐに回復呪文をかけたが、回復の効果が薄いこの世界。
傷は簡単には、塞がらずどんどん血が流れていく。

「ああ、もう助からねぇのかな……」
自分の死を悟ったとき、外に魔物の気配を感じた。
そっと、窓の方へ視線をやってみる。
そこには、かつて戦ったことがある魔物がいた。

188if 紅き戦い:2006/06/24(土) 01:01:44 ID:rxulyWFg
「ベリアル!?…あの野郎かっ!!」
ランドは、傷を押さえながら、家から飛び出した。

「ほう、そんな怪我で如何する気だ?サマルトリアの王子」
いきなり飛び出してきたランドに、少々驚きつつも挑発を混ぜながら話しかけた。

「…ゴフッ。へっ!てめェ一匹、これくらいのハンデで丁度良い」
血を吐きながらも、挑発し返すランド。
――へっ、どうせ死ぬなら、あれを食らわせてやるか。
あ〜ミスったら目も当てられねェな。
キーファ、俺もそっちに行きそうだ。

「フン。こんのか?では、こちらからいくぞっ!」
「てめェも、おせェ!」
槍を突き出して突進してくるベリアルの背後に瞬時に回り込み、羽を掴んだ。
更に、剣を肩に突き立て振り落とされないようにする。

「ぐっ!貴様、何をするつもりだ!!」
「ふっ。地獄まで案内してくれよ」
――わりィな…アレン…マリア……リア。

メ ガ ン テ



【ランド@DQ2:死亡】
【死神の騎士@DQ1:死亡】
【ベリアル@DQ2:死亡】
【キーファ@DQ7:死亡】

189名無しさん:2006/06/24(土) 01:21:18 ID:9igc8yVw
>>186
そうか、ifっていう手段のもあったのか。
読んでてキーファが生きていて良かったって思えるよ!

どっちみちランドは死ぬのかw

190名無しさん:2006/06/24(土) 02:01:28 ID:DhIuUNdU
うひゃー・・・w

191名無しさん:2006/06/24(土) 11:46:38 ID:SGE/Qxn2
面白かった!4人全滅めつめつ・・・。
壮絶だ・・・。

192名無しさん:2006/06/24(土) 22:03:11 ID:MzjHR9eI
ランドの切り札か…。本編でもやって欲しかった

193名無しさん:2006/06/26(月) 23:47:20 ID:1WCrAP0k
この地獄の様なゲームの生き残りであるレックスは
仲間たちと共に元の世界に帰った後、グランバニアに別れを告げて
今までの罪を償う為に旅に出た。
その後、かつて世界を魔王から救った天空の勇者レックスの姿を見たものは居ない…。

つい2、3日前に思いついたネタなんだけど、レックスが逝ってしまった…。

194名無しさん:2006/06/27(火) 04:45:03 ID:kvCBN5Vo
さて、念願の没投下だ。
アリアハンについては本筋では全員が絡む大爆発となったわけだけど
俺は2〜3パートに分けさせて、小規模な爆発を各所で起こそうと思ってた。

プロット1:アリスvsテリーvsヒミコ
放送でフォズの死を知り、悲しみに暮れるアリスカンダタも、
魂の抜け切ったクリフトを見ておいおいこの人大丈夫なの?と自分のことどこじゃないと焦る。
そこにテリー登場、クリフトの言ってた「青い服の男」と一致かつアリスの知る般若の面を装備していることから
「彼は呪いによって攻撃を強いられている可哀想な人だ」とクリフトをカンダタに任せ、アリスが面を壊しに突撃。
でテリーと戦いになるんだけど、その後ろからヒミコが「見つけだぞアリス」って感じで突入。
アリスていう獲物をテリーに取られたくはないので三つ巴の戦いに。
その裏でカンダタが様子を見ているクリフトも何やら様子がおかしいぞ…!っていうカオスを。

プロト2:ハッサンvsバーサーカー
バーサーカーの襲撃を察知したベッド組、海を越えてナジミの塔へ逃げることを指示するも
バーサーカーが速すぎるってことで、ハッサンがベッドから降りて俺が食いとめると決意。
回りは当然止めるけどハッサンは揺らがず、ハッサンが追い風してベッド速度上昇。
結局トロデが「えらい」とか言いつつハッサン残してベッド行く、ククールが激励にスクルト。
でハッサンとバーサーカーで一騎打ちするんだけど、あらかじめバーサーカーが腹に仕込んでおいた
ミラーシールドが防弾チョッキの役割を果たす形でハッサンの決め技を防いだのが勝因で
油断を突かれてハッサン死亡。でも最後の力でバーサーカーを気絶させ、ベッド組は守ったのでした。
(で、その後起きたバーサーカーがハッサンの持ってる魔物のエサを食うとかやりたかった)

こっちは10レスくらいで話書いてて予約解禁したら予約しようと思ってたんだけど、
力入れた戦闘描写(ていうか使われた特技)が本筋と大分被ってたのでお蔵入りにすることにします。

プロット3:ベッド組vsマルチェロ
でナジミの塔についた一同を待っていたのは、アリアハン地下から移動してたマルチェロ。
ここに兄弟対決が実現するのだー、みたいな流れにできたらいいなと思ってた。
こっちは予約されたのを見るとアリアハンのほうでまだ続きそうなので期待する。

195名無しさん:2006/06/27(火) 04:45:38 ID:kvCBN5Vo
>放送でフォズ
フォズじゃねえ、フィオだよ!

196名無しさん:2006/06/27(火) 19:59:11 ID:Zg1IBg6o
アレフ、レーベ組と合流没ネタ。無駄に長いのでうpろだにうp。
暇つぶし程度に読んでください。
ttp://kasamatusan.sakura.ne.jp/cgi-bin2/src/ichi41796.txt.html

197名無しさん:2006/06/28(水) 00:47:07 ID:9vDvO7HU
おつ!
ミーティア・・・。良い子だなぁ。

198名無しさん:2006/06/28(水) 01:17:59 ID:WwYpwYpY
おつです。
レーベ合流をエイトの視点を中心に書いた形ですね。
各自の愛する人を思い出すくだりとか、情報交換のくだりとかがとても丁寧でイイ。

てかエイトのミーティア姫との思い出なんかは今後本編にも応用できそうだなあ。

199名無しさん:2006/06/30(金) 14:44:11 ID:CYjloDm2
>>196
面白かった。やはり、キーファが目覚めてそこからアレフ合流って流れは同じになるんだな。
3人が武器を合わせて誓いを立てるのが三銃士みたいでかっこよかった。

200名無しさん:2006/06/30(金) 19:50:50 ID:MBui12lM
>>196を書いた者だけど…キーファの武器隼じゃねーよorz
メタルキングの剣だよ!
「王子の奮起、運命の悪戯」読むまで勘違いしていた(´・ω・`)

201名無しさん:2006/06/30(金) 20:05:21 ID:CYjloDm2
アレフも実は鋼鉄の剣

202名無しさん:2006/06/30(金) 20:12:47 ID:MBui12lM
>>201
そうだった。剣にしようか杖にしようか迷ったんだけどね。

203名無しさん:2006/07/01(土) 11:07:08 ID:pHo3dP46
マルチェロは獲物を求めてアリアハン城を彷徨っていた。
だが、
「いないな…」
先程までは人の気配があった。
しかし、どらやら逃げられてしまったようだ。
「くそっ」
もどかしかった。
既に半日も経っているのに誰も殺せていない自分に腹を立てていた。
「殺せないどころか…会ってすらいないな…」
そう言えば、ここ数時間、人にもモンスターにすらも会っていない。
何だか急激に寂しくなってきた。
「…(;ω;`)」
外では烏が鳴いていた。アホーアホーと鳴いていた。

放置プレイ喰らってたマルチェロ、予約入って良かったね。

204if 離れていく者:2006/07/05(水) 20:15:25 ID:U2kS/6U2
投下用SS一時置き場 672から分岐

「それはのう……」
ヒミコの視線が彼女(?)の亡骸へと向けられる。
「覆面を被り、クロスアウトと叫ぶのじゃ」
――へっ!?今、なんて……。
「不服そうじゃのぉ。ほれ、聞いたことがあるじゃろ。覆面には、不死身のパワーがあるとかのぉ。
むっ、なんじゃ、その目は!」
――本気で言ってるのかしら?

「「……………。」」
両者が沈黙し、呆れたアリスと真面目なヒミコの視線が交錯する。

「う〜む、わしの知識は間違っておらぬ筈じゃ。かつて、わらわがヒミコと名乗る前、オルテガという男を追い詰めたことがあった。」
――オルテガ!?お父さん
「しかしのぉ、その男が覆面を被りクロスアウトと叫び声を上げると状況は一変。
わらわは、ひもで雁字搦めされ、弄ばれ………。いや、なんでもない。忘れるのじゃっ!」
ヒミコが顔を赤くしている。詳しく聞きたかった。
戦いの内容よりも、何をされたか、
――それにしても、覆面の力……何故か惹かれるものがある。
お父さんと関係があるの?

ヒミコが、話を続ける。
「とにかくじゃ、どうせ死ぬのなら、覆面の力を試す価値はある筈じゃろう」
――そんな、曖昧なものを信じろというの。
でも、ヒミコはお父さんの名前を言った。嘘ではない筈……。
それに、なんなのこの感じ。覆面を被りたい?
そんな葛藤のなか何故か、頭で考えるより先に声が出ていた。
 
そ の 覆 面 は 何 処 !

いきなり大声を上げたアリスにたじろぐヒミコ。
――なんじゃ?死にかけじゃなかったのかえ?
目を丸くしているヒミコにもう一度覆面の在り処を聞くアリス。
「……それならば、わらわの懐に」と自分の亡骸を指差した。
それを確認すると、アリスはぼろぼろの体で立ち上がり、ヒミコの亡骸へ向かった。
「元気ではないか……」
その一言を呟くとヒミコの亡霊は消えた。
――成仏したのかしら……。
そんなことを気にするほど、もう体力は残っていなかったが、消えてしまう前にただお礼が言いたかった。
――カンダタを殺した憎き相手だったのに。今は憎くない。信じるというものは不思議なものね。

205if 離れていく者:2006/07/05(水) 20:17:29 ID:U2kS/6U2
そして、アリスはヒミコの亡骸の前まで来た。
ヒミコの顔、それは死にながらも、月明かりに照らされ美しい。
だが、既に腹を括っていたアリスは躊躇わなかった。
懐に手を入れ弄る。
あった。カンダタの覆面が。何故?
――ヒミコはこれが欲しくてカンダタを踏み潰したのかしら……。
何故、カンダタの覆面がヒミコの懐にあったか分からないが今はそれを被りたくて仕方がなかった。
この覆面には、そうゆう不思議な魅力を感じる。

その様子を邪悪な笑みを浮かべ見ていたヒミコ。
「それを被ったあの男は半狂乱じゃった。おぬしも、そうなるがよい。ほほほほほほ」
――それにしても、ハーゴンのやつめ。わしの魂を如何しようというのじゃ!
何処かへ引っ張られるヒミコの魂、それは破壊神の下へ。


そして、アリスは覆面に吸い込まれるように………

「クロォォォスゥアウットオォォォォっ!!!!!!」


【D-4/アリアハン北の平原/真夜中】

【アリス@DQ3女勇者】
[状態]:強い高揚感、完全回復
[装備]:カンダタの覆面
[道具]:支給品一式
[思考]:父に代わってお仕置きよ!

途中で何が書きたいか分からなくなった……。

206名無しさん:2006/07/05(水) 20:25:08 ID:hVHMAKiA
>>204-205
ちょwwwwwwwwギガワロッシュwwwwwwwwww
オルテガーン再来じゃねーかwwwwww

207名無しさん:2006/07/06(木) 10:49:29 ID:jStZYDrw
完全回復wwwwwwwwww

208愚者:2006/07/15(土) 01:46:26 ID:Zu3Hu.eA
これから、というところで、いつも邪魔がはいる。
何故上手く行かない!
 走り出す。
気づかれた以上、すみやかに迎え撃てる体勢を整えなければ。
 口の中が苦い。
このゲームが始まってから、一度も目標を達成していない。
 無意識に舌打ちをする。
馴れない武器、相手の思わぬ行動。
 苛立つ。
自分は何も誤りは起こしていないというのに!
私は何も間違ってはいない。
自らの手で生存を掴み取る。
このゲームにおいて当然の行為が、ことごとく失敗に終わっているとは!
 屈辱。
もっとも、この世で1番嫌いな奴に助けられた時ほどではないが。
『・・・死なせないさ。虫ケラみたいに嫌ってた弟に情けをかけられ あんたはみじめに生き延びるんだ。好き放題やって そのまま死のうなんて許さない。』
 今度こそは必ずこの手に、勝利を掴み取ってみせる。
武器にも馴れてきている。
先ほどの輩が追ってきていても、この状態で向こうから不意をつくことは難しいだろう。
追ってきていなければ、潜み、時間を置いて、別の目標を探せばいい。
 私が負ける要素は少ない。
愚か者に会ったら、告げてやろう。
「いつか、私を助けたこと、後悔するぞ。と言った筈だ」と。
あの男の返答は、容易に想像できる。
『何度だって止めてやる』
生きて、返答できる状態ならば、の話だが。
『・・・それでも、オレは。忘れたことは無かったよ。』 
「愚か者が」 
 短く吐き捨てた。

209愚者:2006/07/15(土) 01:55:17 ID:Zu3Hu.eA
色々と説明不足、描写不足な訳だがw

210ただ一匹の名無しだ:2006/07/21(金) 19:42:15 ID:bJiG5pKk
ククールが無事にアリスと合流できたらアリスを口説くククールと、
その言葉にうろたえつつも照れまくるアリスを書いてみたかった…。

「ゆ…勇者をたぶらかそうするなんて、100万光年早いんですからね!!」
文句を言いつつも、真っ赤な顔でククールの手を思い切り握っているアリスと
握力200kgの怪力に悶絶するククール。

211 ◆w9.p2zZjpA:2006/09/24(日) 23:19:27 ID:FZKuSIsA
サマンサの外伝書けました。話が纏まらずに一度は挫折しかけましたが
新作ラッシュ&91話『サマンサ』に作成意欲を掻き立てられました。
でも、独りよがりな脳内設定&妄想が激しいために没ネタスレに投下させていただきます。

書き手さま、読み手さま、絵師さま。全てのDQBRを愛する人へ、愛を込めて。

212光と影1/6:2006/09/24(日) 23:20:55 ID:FZKuSIsA
 魔王バラモスなる者が、魔物たちを操りこの世界を支配しようとしている。
この噂が広まったのは、私がまだ幼い頃だった。
『アリアハンの勇者』の異名を持つ戦士オルテガおじ様が、まだ赤ん坊だったアリスを残して
旅立ったのは、それから間も無くの事だった。
 オルテガおじ様達は、近所に住んでいた私を実の娘のように可愛がってくれた。
娘のアリスが生まれた時も、ルイーダさんやお城の兵士よりも、誰よりも先に会わせてくれた。
目の前で元気良く寝息を立てる小さな命に目を輝かせていた私に、おじ様とおば様は言ってくれた。
「君の妹だよ、サマンサちゃん」
「これからこの娘…アリスに色々と教えてあげてね」
その言葉が嬉しくて、幼い私はとにかく夢中で勉強をした。苦手だった文字の勉強や、魔法の練習も
どんな遊びよりも楽しくなっていった。
 オルテガおじ様の旅立ちの日、アリアハン中の人々が彼を見送った。
おじ様は寂しさに泣き出しそうな私の頭に優しく手を置いて、こう言った。
「アリスの事をよろしく頼む」、と。
私はこぼれ落ちそうな涙をこらえて、大きくうなずいた。
 それ以来、私とアリスはずっと一緒だった。
好奇心のままに、ちょこまかと走り回る小さな背中を必死で追いかけたり、
小さなひざの上に、さらに小さな体を座らせ、様々なおとぎ話や武勇伝を聞かせた。

213光と影2/6:2006/09/24(日) 23:21:44 ID:FZKuSIsA
 そんな平穏な日々の中、突然の訃報が飛び込んできた。
―勇者オルテガ、火山の火口に落ちて没する―
その日を境に、アリスは勇者への道を歩む事を運命付けられた。
幼いアリスの手を引いて城から戻ってきたおば様は、町の皆や王様に気丈に振舞っていた。
アリスは何が起こったのか分からないのか、きょとんとした表情を浮かべていた。
おじ様の死と、そんな二人の姿が幼い私の心を深く痛めさせた。
それと同時に、アリスも、おば様も、おじい様も守ってあげなくては、と思った。
でも、私はまだ子供だし、体も強いほうではない。ましてはオルテガおじ様の様な
力強い戦士になれるなど夢にも思ってはいなかった。
だからこれからも、たくさん、たくさん勉強をして、大人になったら誰にも負けないくらい
強力な魔法使いになろう。そして、アリスと一緒に旅をして、その背中を守ってあげよう。
一緒にバラモスを倒して、皆が平和に暮らせる世界にしよう。そう心に誓った。
 私がより一層、魔法や勉学に励みだした頃には、アリスもまた、小さな手にひのきの棒を握り締め
一生懸命素振りを始めていた。

214光と影3/6:2006/09/24(日) 23:22:36 ID:FZKuSIsA
 そして、アリスの16歳の誕生日。彼女が勇者として打倒バラモスの旅へと向かう日がやって来た。
魔法の修行を終えた私はルイーダの酒場で登録を済まし、一足先にアリスを待っていた。
「……サマンサ?どうして此処に!?」
酒場に入るなり私を見つけて目を丸くするアリス。彼女がこんなに驚いた表情は初めて見た。
まさにハトが豆鉄砲を喰らったような顔だった。そんなアリスに私は思わず笑ってしまった。
「何を言っているの、アリス。私はあなた先生、あなたのお姉さんですよ。
 私達はいつでも一緒。それはこれからも変わらないでしょう?」
「…サ………サマンサぁっ!」
強い意志を宿した瞳に感激の涙を浮かばせて、アリスが私に飛びついてきた。
「絶対!絶対に魔王バラモスを倒しましょう!!私とサマンサがいれば勇気100倍です!」
「ア…アリス…。く る し い〜!!」
今や、アリアハン一の熱血鉄腕少女の名の高いアリスに思い切り抱きつかれ、私は危うく窒息しそうになった。
 それからアリスは、聖職者とは思えない程金にがめつく抜け目のない僧侶フィオと
孤独を愛する一匹狼な女戦士デイジーを仲間に加え、あの長く過酷な旅路を歩み続けた。
 まるで引き絞られた矢のように、己が信じる正義への道を突き進んでいくアリス。
最初の頃は、そんな彼女の姿に不安を感じたし、実際危なっかしい事もよくあった。
私はその度にアドバイスをしていたが、死線を越えるごとにアリスは経験を重ね、確実に成長していった。
時には私よりも的確な判断力を発揮し、この一筋縄ではいかないパーティを見事に纏め上げていた。
 そして、世界に散らばる6つのオーブを集め不死鳥ラーミアを蘇らせ、魔王バラモスを討った。
大魔王を追いかけ、ギアガの大穴から闇の世界アレフガルドへ赴いた。精霊ルビスの封印を解き、大魔王ゾーマを倒し
絶望の渦巻いていた世界に光をもたらした。
 そしてラダトーム王から、真の勇者にのみ送られる『ロト』の称号を授かった。

215光と影4/6:2006/09/24(日) 23:23:23 ID:FZKuSIsA
 祝賀パーティの夜、ラダトーム城のテラスで独り夜空を見上げるアリスを見掛けた。
その表情はどこか物悲し気で、声をかけずにはいられなかった。
「―どうしたのです、アリス?あなたらしくもない」
「サマンサ…。別に何でもありませんよ。今までの冒険を思い出していたんです。…父上の事とかを、ね」
 勇者オルテガ。ずっと亡くなっているとばかり思っていたアリスの実の父親。
彼の最期の勇姿、最期の言葉を深く心に刻み込み、私達は大魔王ゾーマとの死闘に挑んだ。
ゾーマの強力な攻撃の数々、度重なるいてつく波動、その圧倒的な威圧感に何度押し潰されそうになっても
それを支えにして戦い続けた。そして、私達は勝利を収める事が出来たのだ。
「…あなたのお父上には、本当に良くしていただきましたわ」
幼い頃の思い出と共に、おじ様の最期の壮絶な戦いが頭をよぎった。
 幼い頃から父の勇姿に憧れ、その背中を、面影を必死に追い続けてきたアリス。
ようやくその父とめぐり合えたと思ったら、死に別れてしまったアリス。
上の世界にいる掛け替えの無い家族とも二度と会えなくなってしまったアリス。
いくら二つの世界を救った救世主といえども、彼女はまだ16歳の少女である。
その心境はどのようなものであったのだろうか…?
「アリス……大丈夫?」
「はい、平気です!なんてったって私は勇者オルテガの娘、そしてアレフガルドの勇者ロトですから!」
アリスは元気に笑って自慢の力こぶを見せてくれた。
「あと!…私がこれからアレフガルドの人達の為に何が出来るのか、じっくり考えていくつもりです」
そう言ってアリスは再び夜空を見上げた。その瞳はいつものように揺ぎ無い情熱に燃えていた。
「そうですか。…立派になりましたねアリス」
アリアハンの街角で、私の背中を、私がその背中を、追いかけていた小さな少女は
いつしか私が思っていた以上に大きく、大きく成長していた。
私はそれをどんな事よりも嬉しく、誇りに思っていた。
「ありがとう、サマンサ。おやすみなさい!」
嬉しそうに笑って、アリスは足早に寝室へと向かっていった。私はその後姿が見えなくなるまで見守っていた。

―そして、それが彼女を見た最後になるなど夢にも思っていなかった―

216光と影5/6:2006/09/24(日) 23:24:25 ID:FZKuSIsA
 ―アレフガルドに太陽をもたらした勇者アリス・ロトが消えた―
翌朝、その重大事件にラダトーム中が大騒ぎとなった。
アリスが消えた…。私達にさえ何も一言も告げずに、独り去っていった。…何故?
昨夜、アリスは言った。『これから自分がアレフガルドの人々の為に何が出来るかを考える』、と。
まさか…これがあなたの出した答えなの?
 昔、子供の頃アリスによく訊かれて答えに迷った質問があった。おとぎ話を読み終えた後のこんな質問。
『ねぇサマンサ。このひとたちは そのあとどうなったの?どんなふうに しあわせになって どこへいったの?』
私は頭を悩ませて、こう答えた。
『きっと、この人たちは私たちの心の中で幸せに生きているはずですよ。私のなかにも、アリスのなかにも
 元気に生き続けているはずです』
あの日のおとぎ話の勇者達のように、彼女も人々の心の中でいき続けることを選んだのだろうか?
人々の前から姿を消す事によって…。
アレフガルドの民の心の太陽が、自ら『影』になる事を望んだのだろうか?
自らの栄光ある未来を犠牲にしてまで…。
 考えても、考えてもその答えが導かれる事は無かった。

217光と影6/6:2006/09/24(日) 23:24:59 ID:FZKuSIsA
 あれから数ヶ月が経った。私とフィオ、デイジーの三人はラダトーム城に仕え、世界を導く英雄として
忙しくも平和な毎日を過ごしている。
私達はあれ以来アリスに関する情報を求め続けてきたが、彼女の足取りは一切つかめていない。
ラダトームの宮廷魔術師として充実した日々を過ごしてはいるものの、私の心の中には
ぽっかりと風穴が開いたような空しさがあった。
それを感じるたびに、改めて私の中のアリスという存在の大きさを思い知らされる。
 ポン、と肩を叩かれた。突然の事に驚き、振り向くとデイジーとフィオが経っていた。
「………サマンサ。そんな暗い顔をしていたらアリスに笑われる」
「そうさね、サマンサ。きっとあの娘なりに何か考えがあっての事さね。元気を出しなよ。
 また魔王でも現われたら、その時はきっとラーミアにでも乗って颯爽とやって来てくれるさねぇ〜」
微笑みながら二人は言ってくれた。…そうだ。寂しいのは私だけではない。今の私には今の私の使命がある。
私とフィオとデイジーの三人で、ラダトームやアレフガルドの平和を守っていくという使命が。
きっとアリスもそれを望んでくれているはずだ。
「案外〜、旅の途中でどこかのイケメンに一目惚れして追っかけに行ったのかもしれないねぇ。
 それを言うのが恥ずかしくて私達に黙っていっちゃったとか」
「……………男。カンダタじゃああるまいな」
「もう…!二人ともからかわないで下さい」
悪ノリし始めている二人の方に向き直ると、急に目の前が暗くなった。
 顔を上げると、そこはラダトーム城ではなく、薄暗い大広間だった。どうやら私の他にも多くの人間や魔族、魔物が
集められているらしく所々からざわめきが聞こえている。
「…あれぇ?此処は一体何処さね…?」
聞き慣れた独特の口調。フィオだ。いつもマイペースで飄々としている彼女も動揺を隠し切れないらしい。
「フィオ!あなた、無事なのですね?」
私はフィオの存在を確認した。
「………フィオ。サマンサ…?」
―……………あぁ。まさかその声は…?―
「……アリス!?」
 その瞬間、背筋が凍りつくほどのおぞましい魔力があたりを包み込んだ。
その魔力にその場にいた全員が一斉に正面を向く。
そこにいたのは、醜悪な魔神と思しき巨大な像の前に立つ一人の男。
頭に竜の羽根を模した飾りのついた頭巾を被り、悪魔の刺繍を入ったローブを着た男。
明らかに怪しく、邪悪な存在だった。
「ようこそ、選ばれし勇者達よ」
その声は脳髄に絡みつくような癪に障る声だった。冷酷で残忍。そして何より、何者をも締め付けるような
圧倒的な威圧感があった。
 そして、その男は続けてこう言い放った。

「これから貴様等には殺し合いをしてもらう」

…to be continued DRAGON QUEST BATTLE ROYALE

218 ◆w9.p2zZjpA:2006/09/24(日) 23:25:51 ID:FZKuSIsA
以上、投下を終わります。
サマンサ可愛いよサマンサ!!

219ただ一匹の名無しだ:2006/09/24(日) 23:39:36 ID:44.2uLdo
GJ!
サマンサいいねぇ

220ただ一匹の名無しだ:2006/09/25(月) 00:00:12 ID:7/b7TVDE
乙!
フィオ、本当にグッドなお姉さんだ。
アリスも良い仲間に恵まれてたんだなぁ。

221はじまりのその前に 1/8:2006/09/27(水) 00:12:12 ID:K0tWxc8A
「ほら、リュカも来なさいよ!なんて綺麗な月」
 バルコニーの欄干に身を預け、振り返ったビアンカがふわりと微笑う。
普段はしっかりと編みこまれた、月よりもなお輝く波打つ髪が夜風に揺れて、リュカはふと目を細めた。

 先の王妃の誘拐に伴う王の出奔。
実に二十年近い歳月を経て、花嫁を連れようやく帰ってきた正統なる王の息子は、
かつての彼の両親と同じように連れ去られた妻を追い、行方知れずとなり、更に十年。
 だが、その長きに渡る正統なる王を欠いた冬の時代も、ようやく終焉を迎えた。
 どんな手妻か竜神の加護か、十年前と変わらぬ若さを誇る正統な王と、天の娘なる麗しの王妃、
幼子なれど、天空の勇者の再来なる兄王子と、比類無き魔導師である妹王女。
魔王を討ち、魔界からの帰還を果たした四人を頂いて、グランバニアは久方ぶりの平穏に酔っていた。

 いや、何も平穏に酔っているのは国民ばかりではない。
つい先ほどまで両親の間に挟まれて話をねだっていた小さな双子は、今はすやすやと健やかな寝息をたてている。
 子供たちももう十歳。普通ならばそろそろ親離れしたがる年頃なのだろうが、長いこと親元から引き離されていた
(正確を期すならば、自分たちの方が子供たちから引き離されたとするのが正しいのだが)
子供たちは、その埋め合わせをするかのように、片時も両親の傍を離れない。
小さな王女が何やらむにゃむにゃと呟いて、愛おしさに頬が緩む。

 出来ることなら、この穏やかな日々がいつまでも続けばいい。

222はじまりのその前に 2/8:2006/09/27(水) 00:12:46 ID:K0tWxc8A
「もう、リュカってば!」
「すぐ行くよ、ビアンカ」
 物思いから覚め、苦笑する。
最愛の子供たちと同じくらい愛しい妻の機嫌を損ねるわけにもいかない。
寝台から立ち上がろうとついた手の、夜着の袖がきゅうと引かれてリュカはぱちりと瞬いた。

「レックス。まだ起きてたのかい?」
「えへへ……だって」
 もっと父さんと母さんと話したかったんだもん、とレックスは悪びれもせず笑った。
起き出して来ないところを見ると、タバサの方は本当に眠っているのだろう。
一つ溜息をついて、リュカは妻にどうしようかと視線で訊ねた。
 何処の国でも、たとえ王族であっても、子供の教育に熱心なのは妻の方だと相場が決まっている。
その例に漏れず、家庭においては第一の権力者であるところのビアンカ王妃は、美しい弧を描いた眉を寄せて――やがて小さく肩を竦めた。

「……仕方ないわね。レックスもいらっしゃい」
 女帝陛下のお許しが下り、晴れてレックスは小さく歓声をあげてリュカの腕に飛びついた。
その大分重くなった身体をぶらさげて、リュカは小さく笑う。
 普段は“お兄さん”であるレックスはタバサの手前、両親になかなかくっつけないから、レックスは時折こうして妹の寝ている隙に思う存分両親に甘える。
親としては子供が夜更かしするのを喜ぶべきではないのだろうけれど、甘えられるのは素直に嬉しい。

「その代わり、明日は寝坊しないこと。いいわね、レックス」
「ええーっ」
「返事は“はい”でしょ!」
 母親らしい小言を零す、ビアンカの声音にもまた紛れもない喜色が溢れていて、リュカはまた笑みを浮かべた。

223はじまりのその前に 3/8:2006/09/27(水) 00:13:22 ID:K0tWxc8A
 ほら、とビアンカの指す月は見事な真円を描いていて、
まるで磨き上げたコインのようにぽかりと夜空に浮き上がって見えた。

「……ちいさなメダル型チョコみたい」
 若しくは蜂蜜クッキー、とレックスがぼそりと呟く。
なるほど、黄金色のまあるい月は確かにちいさなメダルにも、たっぷり蜂蜜をかけた丸いクッキーにもよく似ている。
メダルそのものよりもそれを模したチョコレートが先に出てくる辺りは、やはり食べ盛りの子供ならではと言うべきか。

「チョコの方はすぐには用意出来ないけど、
 なら明日のおやつはサンチョにクッキーでも焼いて貰おうか?」
「リュカ!」

 またもビアンカが眦を吊り上げた。
パパスの代わりに小さなリュカの世話を一手に引き受け、また双子を幼い頃から見守り続けたこの老従僕は、
今やただの使用人の一人ではなく、家族の一人として遇されているようなところがある。
言わば、リュカの“もう一人の父”であり、双子たちの“もう一人のおじいちゃん”。
そして、世の祖父母たちの例に漏れず、孫のような存在である双子たちには滅法甘い。

 その上、家事上手のサンチョが作る菓子類はそこらの店の物よりよほど美味しく、
ついついお腹に詰め込みすぎて、晩ご飯が入らなくなることもしょっちゅうだった。
――他でもないリュカとビアンカも、幼い時分はそうして叱られたものだったが。

224はじまりのその前に 4/8:2006/09/27(水) 00:14:06 ID:K0tWxc8A
「もう、またそうやって甘やかして……」
「いいじゃないか」
 息子を抱えるのとは逆の腕で妻の肩を抱き寄せて、耳元で囁く。
「もう少しだけ、甘やかしていてあげたいんだよ」

 何も、引き裂かれていた十年近い月日の溝を埋めたいのは子供たちばかりではない。
リュカだって子供たちが可愛くて可愛くて――失われた時間の分も甘やかしてやりたくてたまらないのだ。

「……虫歯になったらあなたの責任よ?」
 唇を尖らせ、だが満更でもなく呟いて、ビアンカは素直に夫に身を預けた。
ビアンカとて、子供たちが愛しくて構ってやりたくてたまらないのは同じである。
ただ、父のそれとは違って、母の愛情はちょっとばかり過保護とも言えるほどの熱心な教育の形をもってもたらされることが多かったが。

 親子は身を寄せ合って、雲が月を覆い隠していくのを眺めていた。

225はじまりのその前に 5/8:2006/09/27(水) 00:14:36 ID:K0tWxc8A
 同時刻。
遥か海を隔てたサラボナで、一人の女が同じ月を見上げていた。

 年の頃は二十の後半。もう娘と呼べるほど若くはないが、
娘時代はルドマン氏の掌中の珠、清楚ながらも艶やかな白薔薇のようだ、と称えられた美貌は
年月を経て女らしい艶を増し、ますますそれを際立たせていた。

 長く垂らした絹糸のような髪の一筋が頬に影を落とす。
つと優美な仕草でそれを払って、女は――フローラは溜息をついた。
物憂げな美貌は甘やかに見る者の胸を締め付けるが、その吐息は苦く切ない。

「……どうして」
 こんなことになったのだろう。
誰にともなく発せられた問いに、当然答えが返ってくることはない。
もとより、彼女はその答えをもう知っていた。

 何不自由なく育った富豪の娘。
他人は彼女をそう評したし、フローラ自身それを疑ったことはなかった。
自分を愛してくれる両親。求めれば、手に入らない物など無かった――ただ一つを除いては。
そして、そのただ一つこそが、本当に欲しかったたった一つの物であり、
この満たされぬ心の原因なのではないか。
 フローラは目を閉じて、その日のことを思い浮かべた。

 涼やかな眼差しをした、優しい人。

 一目惚れだった。
 フローラ以外には決して馴れないはずのリリアンが不思議と彼には懐いて、
きっとこれは運命なのだと確信した。
その彼が自分の求婚者の列に並んでいるのを見て、フローラの胸は喜びと、彼に危険なことをさせたくないとの不安に張り裂けんばかりだった。

226はじまりのその前に 6/8:2006/09/27(水) 00:15:43 ID:K0tWxc8A
――だが、彼は彼女を選んではくれなかった。
 試練を終えてサラボナに戻って来た彼の隣に、当然のように控えていた女。
ビアンカ。彼――リュカの幼馴染だという、金髪の娘。

 組んだ手を強く握り締める。
ぷつと鈍い痛みが走って、薄い皮膚を突き破られた左手の甲に血が滲んだ。

 それでも、最初は祝福出来ると思っていた。
この熱病のような恋情も、二人を見送った後のぽかりと空いた心の虚も、
全て少女らしい初恋の思い込みの激しさ故だと、そう割り切ろうとした。
 幼い頃から一途に自分を慕うアンディの想いを受け入れたのも、
自分を愛してくれる人と共にいれば、この心の虚も埋まるだろう、いつか愛を返せるようにもなろうと、それ故だった。
 アンディは良き夫であったと思う。仕事熱心で、かといって家庭を疎かにすることもせず、
たとえお嬢様育ちのフローラが満足に家事をこなせなくとも、とやかく言うことはなかった。

 だが、それでも。フローラには彼を愛することが出来なかった。
注がれれば注がれるほど、優しさも愛もフローラを苦しめ、共に過ごす時間が長くなれば長くなるほど、違和感は誤魔化しようもなくその強さを増し、心の虚に吹き込む風は心を冷やした。

 せめて子供を授かればこの虚も少しは埋まるだろうか。
だがそんな思いを裏切るかのように、いっこうに子供を授かる気配はなかった。
――子供がいれば、きっと叶わぬ夢を見て傷付くこともなかったのに。

 かつてと変わらぬ若さのままでサラボナを訪れたリュカが、妻が行方知れずなのだと告げた時、
子供を授からなかったのは彼の後添いになるためだったのだと、フローラは本当にそう思った。だが。
 季節が一巡りして、再びサラボナを訪れたリュカの隣には幸せそうに微笑むビアンカの姿があった。
 想いはまたも裏切られた。

227はじまりのその前に 7/8:2006/09/27(水) 00:17:34 ID:K0tWxc8A
 あの日のビアンカの姿を思い浮かべる。
フローラが虚ろな心を抱えて無為に重ねた年月も感じさせぬ娘姿のままで、愛しい夫と子供たちに囲まれて。
その影で泣く女のことなと、何も知らない清い顔のまま。

――どうして、あそこにいるのが私ではいけないのだろう。
――何故、彼と結ばれるのが私ではいけなかったのだろう――?

 一度浮かび上がった疑念は、フローラの心をどす黒く染めていった。
このまま、生きていくほかないのだろうか。
ただ無意味に年齢を重ね、憎しみだけを湛えた虚ろな心を抱えたまま。

 ぞくりと背中を走る寒気に、フローラは思わず己の身体を抱きしめた。
少し夜風にあたりすぎたか、今まで気にならなかったのが不思議なほど彼女の身体は冷え切っていた。
そろそろ部屋に戻ろうと顔を上げて、ふと気付く。



 夜空に浮かぶ月は、血のように紅い。



 『紅い月は凶兆』。
幼い頃に聞かされた言い伝えが脳裏を掠め、フローラは反射的に踵を返し――だが、その衝動を意志の力で押さえつける。
逃げて、それでどうなるというのだ。
もはや何の色彩も見出せない灰色の日常に、一体何の価値がある?

――もう、どうなってもいい。

 魅入られたように、フローラはその白い腕を空へ伸ばした。

228はじまりのその前に 8/8:2006/09/27(水) 00:18:13 ID:K0tWxc8A
「……やだ」
 雲の晴れ間から覗く月は禍々しいまでに紅い。
怯えたように口元を押さえた妻の髪を宥めるように撫でて、リュカもまた月を見上げた。

『紅い月は凶兆』。
 たかが言い伝えだ、と笑うのは容易い。
だが、竜神や魔界の存在すら知る彼は、人智を超えた力というものが存在することを知っている。

「風邪をひかないうちに戻ろう。レックス」
「はぁい」
 素直に部屋に駆け戻っていく息子を見送り、リュカはまだ不安げに空を見上げる妻に手を差し伸べ――硬直した。
紅い月光に晒されたビアンカの身体が、まるで幼い頃見た妖精のように透けている。
そして、彼女に向けて差し出した己の腕も、また。
――また、引き裂かれてしまう。

「――リュカぁっ!」
「ビアンカ!?」
「お父さん、お母さんっ!!!」

 無我夢中で伸ばしたリュカの手がビアンカを捕らえ、抱え込むように抱き締める。
異変を感じたレックスが父の背中に飛びついて、その手が夜着の端を掴み――
その瞬間、国王夫妻と王子の姿は、まるではじめからなかった者のように掻き消えた。



 そして後にはただ一人、何も知らない王女だけが取り残される。



              ⇒to be continued  DRAGON QUEST BATTLE ROYALE

229 ◆inu/rT8YOU:2006/09/27(水) 00:22:26 ID:K0tWxc8A
投下完了。いつだかどなたかが本スレで言っていた、DQロワ外伝です。
多分に趣味に走った感がありますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

書き手様、読み手様、絵師様、ネタ師様。そして死者たちに愛をこめて。

230ただ一匹の名無しだ:2006/09/27(水) 10:04:21 ID:nJ9gsWPY
外伝第二段キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
ようやく幸せを掴んだグランバニア一族と、本当の幸せを掴めなかった令嬢か…。
読み方によっては、フローラの積年の嫉妬心がハーゴンやシドーと共鳴して
リュカたちまでもを巻き込んでバトロワの世界に送り込んだのかも知れないね。

幸せ家族の団欒を邪魔するハーゴン&シドーに怒り心頭だヒ(#^ω^)ビキビキ

231最後まで呪われているのは誰だ?:2006/10/08(日) 01:59:53 ID:fw/CsAFU
「フォルシオンを頼みます!」
へんてこな兜をいじり終ったかと思うと、トルネコは袋から幾つかの武器をとりだし、こちらに見せた。
「トロデさんも、何か使えそうな武器があれば、持ってください。」
「わしに、のぅ」
取り出された武器は3つ。破壊の鉄球、さざなみの剣、聖なるナイフ。
さて、どれを選ぶか。時間はない。
破壊の鉄球は文句為しに強いが、鉄球の重さはトロデの手に余る。
一番手軽で扱い易い、だが威力は疑問が残る、聖なるナイフ。
魔法を弾くさざなみの剣、切れ味も悪くは無い。
 迷ったが、あるひとつのことに思い至り、ひとつだけ武器を取る。
「では、これをもらおうかの」
「後をお願いします」
「わかった。ワシに後は全て任せよ」
 自信たっぷりに、ひとつ頷いて見せた。
 トルネコが頷き返す。
「行って来ます。」 
 ククールのように、お互い再び会えないかしれなかったが、笑って送り出す。

 トルネコが去った後、武器を握りしめ、袋を部屋の奥へと置き、宿屋の外へ。
まだ、夜は明けない。
白馬が落ち着くように、開いている片手でその腹をなでてやる。
外では、巻き添えを食う恐れが多すぎる。
「無理やりでも、部屋に入れてやるべきかのう・・・。」
フォルシオンの手綱を取って、宿屋の近くまで導く。
 一瞬、目に光が横切る。
とっさに手綱を放し、地面に転がって室内へと逃げる。
遠くに去っていく蹄の音が聞こえる。
扉を閉める余裕は無い。
『また、服が汚れてしまったのう。』
頭上で、何かが破裂した音。
『煙?』
あたり一面、煙が立ちこめる。
「ゴ、ゴホゴホ。」
口が苦い。
目がしみる。
『ええい、仕方がないわい。』
煙から逃げるため、危険を承知で再び野外ヘ向かう。
「これは、これは。
おひさしぶりですな。
真に残念ながら、すぐにお別れですがね」

男が自分に向かって左手の鋭い刃物を突き出した。
咄嗟に、伏せながら、持っている武器で受け、弾く。
どうやら、間合いが同じくらいの長さであるらしい。
金属同士の高い響き。

伏せた状態では次は避けれない。
死を感じた。例えようも無い恐怖が背中伝う。
一心に、右手に武器を握り締める。
この武器を持っていた男の叫びが聞こえたような気がした。
『畜生・・・・・・俺は、何も・・・・・・できないで・・・・・・畜、生・・・・・・』
まだ、まだまだ死ねぬわ。
せめて、わずかばかりとも!!

顔を俯かせ、じりじりと上体を起こしながら、男のほうへ移動する。
「おやおや、降参ですかな。しかし、残念ながら、それは聞けぬのですよ!」
再び繰り出される刃。
捨て身で、至近距離から、握り締めた武器を右手で思いっきり突き出した。

五体満足のマルチェロであったなら、簡単に避けていたであろう刃は、左足を貫通した。
負傷した左目の死角には入りこんでの一撃。
だか、こちらも肩に刺されてしまったわい。痛いじゃないか。
あまりの痛さに武器を落としてしもうたい。
「悪い子には拳骨じゃ。若干、いつもより痛いかもしれぬがな」
にやりと笑ってみせた。
「よくも!」
男は距離を取り呪文を唱え始めた。
やれやれ、短気なことだのぅ。
動きたくとも肩の傷が・・・
強力な武器を持ってこなくて正解じゃったわい。
ナイフぐらいなら、エイトよ、問題あるまい?
なにせ、ワシ自慢の近衛兵なのじゃから。
「メラゾーマ!!」
それにしても、いつになったらあやつはわしを父と呼んでくれる のか の ぅ・・ ・。

232最後まで呪われているのは誰だ?:2006/10/08(日) 02:00:39 ID:fw/CsAFU

「くっ。思ったよりも、目のハンデが大きい。迂闊に接近戦は、できんな」
なまじ有利な状態で、右目に頼ってしまったのも原因だろう。 
回復魔法で足の負傷を癒す。
切断されなかっただけ、運が良いと思うべきだろう。
 残った目で焼けた死体を見る。
「隠しておくほうが、探しに来たヤツらを分散できるか?
まあ、念の為だ」
マルチェロは、緑の物体を引きずって、近くの家に放り込んだ。

【E-4/アリアハン城下町宿屋の外/黎明】

【トルネコ@DQ4】
[状態]:健康
[装備]:無線インカム
[道具]:ホットストーン さざなみの剣 破壊の鉄球
[思考]:皆の援護に行く クリフトをもう一度説得 
     他の参加者に危機を伝える ピサロといずれ合流

【マルチェロ@DQ8】
[状態]:左目欠損(傷は治療)、左足に刺し傷跡(完治) HPほぼ全快 MP1/4
[装備]:折れた皆殺しの剣(呪い克服)
[道具]:84mm無反動砲カール・グスタフ  
    グスタフの弾(対戦車榴弾×1 発煙弾×1 照明弾×1)
    聖なるナイフ
[思考]:先ほどの戦いを観察し、有利なら殺害。殺害が無理なら、宿屋を観察できるところまで戻って待機(休憩) 
ゲームに乗る(ただし積極的に殺しに行かない)
※トロデの支給品は宿屋に置いてあります。
 フォルシオンの行き先は次の書き手さんにお任せします。 
【トロデ@DQ8 死亡】
【残り13名】

アトラス戦前にマルチェロの思考を書いてしまうと、アトラス戦を書く書き手さんに制限がかかるので、完全に没にします。
戦後に出してもたぶん、矛盾するだろうし、それにトロデの主役の話にしたかったんでマルチェロを書くと食われそうな気がw
でも一応修正したのでコソッとココに置かせて下さい・・・。

233ただ一匹の名無しだ:2006/10/18(水) 10:41:29 ID:YRf1bojc
主催SSを考えてる時に生まれた設定の残りカス。本編には全く関係ない妄想の塊。
ハーゴンとアレンたちの戦いの時、悪魔神官は全部で12人いたという設定だった。

ぼくのかんがえた12にんのあくましんかん

01:ネピリム
齢100歳を超える最初の悪魔神官。ネクサスの祖父にしてハーゴンの師。
あらゆる呪術に精通し、全ての悪魔神官の上に立つ神官長。他の神官からは老師と呼ばれる。
最後まで誇りをもってアレンたちと戦い、老獪な戦術で圧倒する。が、あと一歩の所でスタミナが尽き
敗死した。しかし時間稼ぎの役割は充分に果たし、結果アレンたちはシドーの復活を阻止できなかった。

02:ネクロス
邪神軍の総帥を任せられていた悪魔神官の筆頭格。最後まで魔物の統率・指揮に専念していた為、
アレンたちとは遭遇していない。神殿崩壊後、人知れず信徒を率いて脱出した。
元々はムーンブルクの神官で、無実の罪を着せられ追放された。そのことでムーンブルクを怨んでいる。

03:ネイル
ネクロスをライバル視する自称、悪魔神官No.1。ネクサスを暗殺したり、いろいろと暗躍。
神殿に乗り込んできたアレンと一騎討ちをする。アレンの前で今まで倒された他の悪魔神官を貶し、
自分なら10秒でアレンを殺せると豪語したが、怒りのアレンの前に一刀のもと切り捨てられる。
決闘時間はわずかに2秒。絶好調時のアレンの力の前に成すすべなく敗れ去った。
それでもなんとか生き延び、ハーゴンが死亡した後、高笑いしながらアレンたちの前に現れる。
ハーゴンの代わりに破壊神を制御しようとするが、シドーには歯牙にもかけられず惨めに食い殺された。

04:ネクサス
ネピリムのひ孫。幼い頃から邪教に染まって生きていたが、アレンたちに出会って
自分達は間違っているのではないかと迷い悩む。マリアに仄かな恋心を抱いていた。
そしてハーゴン神殿ではハーゴンを裏切り、陰でアレンたちを導くがネイルによって暗殺される。

05:ネイム
武術に長けた悪魔神官。怪力による槌矛術と魔術で一騎討ちの相手ランドを追い詰める。
しかしランドも速度剣術と魔術で対抗し、互角の攻防を繰り広げる。
死闘の中、互いの実力を認め合う両者。そしてリアの未来のためにメガンテを使うランドを見て、
彼は自らの過ちを悟った。死の極光の中、彼はランドにザオリクをかけて消滅。
ランドは一命を取り止め、駆けつけたマリアに救われることとなる。

06:ネメシス
ネクロスの補佐官。能力は低い(※)が、実務能力に優れていた為補佐となる。
理想郷の実現を夢見て、ハーゴンを敬愛している。序列は並だが実力は悪魔神官の中で最低クラス。
ネクロスに想いを寄せている。
※あくまで悪魔神官の中では低いということ。当然地獄の使い以下とは一線を画した能力を持っている。

07:ネムリア
ハーゴンの愛人。マリアとの一騎討ちでど派手な呪文合戦を繰り広げるが、
マリアの愛の深さの前に自ら敗北を認め、イオナズンを無防備に喰らい消滅した。

08:ネオス
ネイルの弟。呪いが得意でハーゴンの命によりランドを呪うが、
世界樹の葉の生命の力により呪いを返されて死亡する。

09:ネルメス
シドー復活の儀式の補佐をしていたが、復活したシドーに喰われて死亡。

10:ネイヴィ
アトラス、バズズを倒して消耗したアレンたち。それを陰から不意討とうとするが、
ベリアルに邪魔だと後ろから一突きにされ死亡する。

11:ネスカル
シドー復活の儀式の補佐をしていたが、復活したシドーに喰われて死亡。

12:ネロ
末席でありながら最強の魔力を持っている最も新しい悪魔神官。アレンたちと最初に戦った悪魔神官で、
竜王の城にて圧倒的なまでの強さで彼らを全滅させた。しかし詰めが甘く死亡確認をしないで立ち去る。
その後復活した王子たちに激怒、ロンダルキアにて再戦。Lvアップした王子たちとも互角以上に戦うが、
彼らのコンビネーションの前に紙一重の差で敗れ去る。悪魔神官の脅威をアレンたちに刻み付けた存在。

234ただ一匹の名無しだ:2006/10/18(水) 11:01:15 ID:YRf1bojc
ローレシアの牢屋の悪魔神官忘れてた( ´д`)
まあいいか。

235ただ一匹の名無しだ:2006/10/18(水) 21:26:57 ID:4kVwc2DU
ネイヴィ=何セルにペチっとやられるミスターサタンを思い出したw
もしくは弟に木っ端微塵にされる戸愚呂兄かw

236ただ一匹の名無しだ:2006/10/25(水) 00:58:16 ID:/nqUspPU
アトラス突撃する直後&ローラ組レーベ到着時に、夕食タイム&ティータイムネタを書きたかった

237ただ一匹の名無しだ:2006/10/25(水) 00:59:57 ID:/nqUspPU
直後じゃなくて直前だったorz
念のためもう一回age

238ただ一匹の名無しだ:2006/11/21(火) 22:18:46 ID:YjX55hHY
折角ネタをおもいついたのに、旬が過ぎていたので没スレに投下します

もしもDQBRがカードゲームだったら

「これでお前の参加者は全て終了、『ザラキ』の効果でお前のHPはゼロだ!
 ヒャ〜ヒャッヒャッヒャ!やった〜〜!俺の勝ちだぁ〜!!」
「何勘違いしいてるんだ?」
「ヒョッ?」
「俺のバトルフェイスは終了してないぜ!!」
「な〜に言ってるんだ?もうお前の参加者は全部攻撃は終了したじゃないかぁ〜」

「即行魔法発動 『皆殺しソウル』!」
「『皆殺しソウル』?」
「手札を全て捨て…効果発動!
 こいつは参加者以外のカードが出るまで、何枚でもカードをドローし、墓地に捨てるカード!
 そしてその数だけ、攻撃力1500以下の参加者は追加攻撃できる!」
「攻撃力1500以下……ハッ!」

【参加者カード】黄金の勇者レックス:攻撃力1500

(――あの時…!)

 黄金の勇者レックス『あははははは!!ハァッ!』ズバァ!!

「効果が発動した後は魔法カウンターは無くなる。レックスの攻撃力も300Pダウンするがな」
(遊戯の奴…そこまで考えて!)

「さぁ行くぜ!!参加者カード【緑頭巾の最強戦士】を墓地に捨て、【黄金の勇者レックス】追加攻撃!」
 黄金の勇者レックス『ハアアアァァ!』
「ぐわあああぁぁぁ!!」
「二枚目ドロ−!参加者カード!―赤毛の魔術の長―」
「あ……あぁ!!わああああぁぁーーーー!!」(HP0)
「三枚目ドロー!参加者カード―麗しき夢占い師―」
「うわああああぁぁぁーーー!!」

「ドロー!参加者カード!―南国果実頭の格闘家―」
「ぐわああぁぁぁぁーーー!」
「ドロー!参加者カード!―銀髪の竜引き換え剣―」
「ぎゃああああーーー……あぁぁ…」

「ドロー!参加者かー…」
「もう止めて!遊戯ーーー!!」
「はーなーせぇっ!!」
「とっくに羽賀のHPはゼロよ!もう勝負はついたのよ!!」
「ハァ……ハァ……」

【参加者カード】ラブリーチャーミーな勇者 アリス

239ただ一匹の名無しだ:2006/11/21(火) 22:22:34 ID:YjX55hHY
元ネタ
ttp://www.youtube.com/watch?v=ZMeGnPJnqFA

240ただ一匹の名無しだ:2006/12/11(月) 20:08:14 ID:8X0v6kJc
ずっと俺のターンwww

241第二回放送案 1/2:2006/12/14(木) 23:50:04 ID:pAXGUrQ.
 長い長い夜がようやく終わり、偽りの大地に偽りの太陽が昇る。
だが夜明けの光がもたらすのは希望などではなく、
照らし出されるのは闇に喰われた幾多の魂の抜け殻だけ。

「――これより、第二回の放送を行います」

 重苦しい鐘の音の後、響いたのは昨夜のものとは明らかに異なる艶やかな女の声。
どこか音楽的とさえ言える響きの良い声だったが、
硝子で出来た刃のようなおよそ温かみのない冷酷さを孕んでいた。

「まずはこの一日を生き延びたこと、お祝いを申し上げましょう。
 中には運良く生き延びただけの者もいるようですが、貴方がたの多くがその実力と才覚で戦い抜いたこと、疑いないでしょう。
 ハーゴン様のご期待に沿えるよう、より一層の奮闘を望みます。
 次に、この半日で閉鎖されるエリアの発表を。心して聞きなさい」

「これより3時間後、朝9時から【B-02】、正午から【C-02】、3時から【C-06】、
 そして夕刻6時から【D-05】が禁止エリアとなります。
 聞き逃した方は――己の不運を恨みなさい」

 くすくすと、嘲り混じりの笑い声が零れる。
大陸中に散らばる参加者たちが怯えと不安を押し殺して、ただ静かに次の言葉を待つのを、
焦らすように、愉しむように、たっぷりと間を置いて再度声が響く。

242第二回放送案 2/2:2006/12/14(木) 23:50:44 ID:pAXGUrQ.
「最後に、日没の放送から夜明けまでの死者の名を読み上げます。

「バーサーカー」
「ハッサン」
「テリー」
「レックス」
「カンダタ」
「ヒミコ」
「ククール」
「ゴン」
「フローラ」
「クリフト」
「リア」
「アトラス」
「サマンサ」
 ――以上、死者13名、残り12名」

 歌うように、一つ名前が読み上げられるたび、悲嘆と慟哭とが沸き起こり、
女はきゅうと唇の端を吊り上げた。

――だが、足りない。
もっと悲痛で苛烈で残酷で甘美な、狂おしいほどの絶望を。
それでこそ、彼女らの崇める神は強大な力を持って復活することが出来るのだから。

(ハーゴン様のため、シドー様のため、彼と私の未来のため。せいぜい踊り続けなさい)

「次回の放送は昨日と同じ、今から12時間後の日没に行います。
 では、皆様ご機嫌よう。――我が神の加護があらんことを」

 破壊と、死と、裏切りの加護を。
呪詛めいた祈りを最後に女の声はぷつりと途切れ、
あとには陰鬱さをいや増した鐘の音だけが取り残された。

243第二回放送案+α 1/2:2006/12/14(木) 23:51:25 ID:pAXGUrQ.
 声を伝えるための集中を解いて、女は――悪魔神官ネメシスはゆるゆると顔を上げた。
首を振るとその動きに合わせて眩いばかりのプラチナブロンドがさらりと揺れ、
そのしなやかな指が仮面に伸びて、次の瞬間、声から連想される通りの怜悧な美貌が現れる。

「上手く、いったようですね」
 元々ネメシスの魔力はその序列のほどには高くない。
その上、直前になって任された慣れぬ任務、満足に準備をすることも出来ず不安もあったが、
滞りなく勤めを終えることができ、知らず安堵の息が零れた。

 そして、儀式それ自体も何の滞りもなく順調に進んでいる。

 机の上に映し出された大陸図に目を落とす。
徐々に中央へと集まりつつある星は、今や開始時の三分の一以下までに数を減じていた。
その一つ一つを満足げに指でなぞり、不意に一つの星の上でぴたりと止まる。
それが持つ名を捉えて、ネメシスの形の良い眉が僅かに歪んだ。

 マリア。彼女の想い人を放逐した月の王家の最後の一人にして、神殺しを為したロトの末裔。

(まだ生き残っていたのですか……忌々しい小娘だこと)
 ぎりと唇を噛み締めようとして、だがと思い直す。
いずれ待つのは死なのだ。早々に退場するより、友も仲間も何もかもをも失って、絶望のうちに死んでいくことこそ、
神殺しの大罪人には相応しい末路であり、破壊神の御心にも適うというものだろう。

 もっとも、この娘の父である愚王が彼を放逐しなければ、彼と自分が出会うことはなかっただろうし、
神殺しが為されなければ、十二使徒ただ二人の生き残りとして、
これほどまでに彼と近しく付き合うこともなかったのかもしれないのだから、
その点についてはこの娘に感謝しなくてはならない。

244第二回放送案+α 2/2:2006/12/14(木) 23:52:48 ID:pAXGUrQ.
(……ネクロスの任務は、まだ終わらないのでしょうか)
 そういえば、盗聴の任に就いていた彼の部下たちの姿も見当たらない。
おそらくネクロスと共にハーゴンから下された任務に当たっているのだろう。
通常の任務を全て放棄してでも果たさねばならぬという大役に、彼が張り切る気持ちも分かるが、
交代で休憩を取っている部下たちはともかく、ほぼ丸一日働き詰めのネクロスは相当疲労が溜まっているはずだ。
会話の不穏さのせいもあったのかもしれないが、
最後に見た彼の顔色はあまり良くなかったし、あれからさらに数時間が経っている。

(ハーゴン様にお伺いをたててみましょうか)
 ネクロスの方から声が掛かるまではと思ったが、
そうして要らぬ意地を張って彼に無理を重ねさせるのは本意ではない。
 ハーゴンはまだ“扉”を開く儀式の最中だろうか。
儀式が一段落し、目通りが叶うまでにはまだ時間がかかるだろうから、
今のうちに腹を空かせているだろうネクロスの為に、何か温かいものでも作っておいた方がいいかもしれない。
 どのみち聖杯の準備も放送も終わらせてしまえば、ネメシスのやるべきことはほとんど残されていないのだし、それに――

(私たちを拒んだ世界が滅び、誕生する新たな世界のはじまりの時を、
 愛する人の隣で迎えたい、なんて)

 ハーゴンが奇跡の帰還を果たすまで、残った信者をまとめ上げ、闇の祭器を守ってきたのだ。
これくらいのささやかな我が儘は叶えられてしかるべきだろう。
 もうすぐ傍まで近付いて来た約束された幸福に酔う顔を、再び仮面で覆い隠し、
ネメシスは儀式の間へと続く長い長い回廊を、軽やかな足取りで歩いていった。



 彼女の神がもたらす闇が、哀れな生贄たちの上のみならず、
彼女自身の未来にも影を射しかけていることに、気付くことなく。

【残り12名】

245第二回放送案:2006/12/14(木) 23:57:01 ID:pAXGUrQ.
一時投下スレが使われているようですので、こちらに失礼します。
以前投下された放送案は、放送役が代わったために使えなくなりそうですので
代わりの放送案を投下しました。
+αは「主催側は書かない方がいい」との意見が多いようならこのまま没ります。

何か問題点などありましたら、皆様指摘をよろしくお願い致します。

246ただ一匹の名無しだ:2006/12/15(金) 00:19:54 ID:f9posWCk
投下乙です。ネメシスが健気で泣ける。・゚・(ノД`)・゚・。

247ただ一匹の名無しだ:2006/12/15(金) 00:20:47 ID:hRW/iZHA
乙です。
細かい部分ですが、ゴンはドラゴン表記でいったほうがいいと思います。
ローラがドラゴンの名を知らなかったので。

248第二回放送案:2006/12/15(金) 00:29:50 ID:ABadA0sY
>>247
うっかりしていました、指摘有難うございます。

言いそびれましたが、禁止エリアは以前投下された方のものをそのまま使っています。
「もっと増やせ」「変えろ」等の意見もお待ちしています。

249ただ一匹の名無しだ:2006/12/27(水) 22:17:44 ID:GPQrev3w
一通り放送前までたどり着いたので、本腰入れて打ち合わせしよう。
というわけでひとまずage。

ネメシス側の描写は現状のままで十分、ゴン→ドラゴンの修正は放送作者さんも把握済み。
となると後考えることは禁止エリアをどこにするかっていう話になるでしょうか。
といってもキャラの分布はアリアハン周辺(E−3,E−4)に密集してるので、
今からじゃあんまり禁止エリアの影響は高くないと思うんですが、考えられる選択肢は大体

1、アリアハン以外を適度に埋める(現状のまま、参加者への影響小)
2、アリアハン以外を過激に埋める(アリアハン&ナジミ以外の全エリア禁止とか)
3、むしろアリアハン周辺を埋める(E−3,E−4の禁止エリア化、参加者への影響大)

の3つくらいかと思います。
本スレで話されてる元日放送を実現させるためにも煮詰めに入ったほうがよさそうですね。
面倒ならそのままでもよさそうですが、個人的には2も十分ありかなーと思ったりも。

250ただ一匹の名無しだ:2006/12/29(金) 08:31:19 ID:Rl1O6fzA
ペースを保つなら1、一気にいくなら2かな、って気がする。
レーベが消えた今、アリアハンが最後の拠り所みたいな感じだし
(打倒主催でいくのなら)決戦に赴く場としても最適かもしれないから
アリアハンを禁止エリア化するのは、今はまだ避けた方がいいような気がするね。

対主催にせよ参加者同士にせよ、平原や森でラストバトルを繰り広げるよりは
アリアハンで、て方がそれっぽい気がするんだけど、どうかな。

251ただ一匹の名無しだ:2006/12/29(金) 23:28:36 ID:i2hHRsDo
どちらでも対応可。
あえて言えば参加者を孤立させない方が良いかなー。
ピサロ・フォズは、遠くにいきすぎて話に絡ませづらかったからねぇ・・・。

252ただ一匹の名無しだ:2007/01/03(水) 17:01:03 ID:fqebygZo
特にコレといって決め手がないなら、放送書き手さんが好きなようでいいのでは?
ただ、決めたら、本スレ投下前に一言教えてくだされ

253ただ一匹の名無しだ:2007/01/04(木) 21:28:37 ID:vX2qfxiQ
放送書き手です。
禁止エリアについてですが、私の一存で封鎖するエリアの数を増やすのはまずいと思いますので、
封鎖するエリアの数はそのままで、
>「これより3時間後、朝9時から【B-02】、正午から【C-02】、3時から【C-06】、
> そして夕刻6時から【D-05】が禁止エリアとなります。
参加者への影響の少ない【C-06】を【C-03】(レーべ側地下通路入り口)に変えることで
参加者たちのアリアハン集結を図ろうと思うのですが、いかがでしょうか?

また、放送の日時についてですが、社会人の方でも予約しやすい曜日ということで
1月6日の土曜(土曜までに話がまとまらなければ翌日の日曜)、時間は22〜23時を予定しています。

以上、二点についての皆様の意見をお待ちしています。

254ただ一匹の名無しだ:2007/01/04(木) 21:44:27 ID:RXJk1VvU
なるほど、つまりレーベ方面が完全に封鎖されるわけですね。
異存ないです。

255ただ一匹の名無しだ:2007/01/04(木) 22:59:22 ID:p3LNhG0k
3時間毎に、B-2>C-2>C-3>D-5ですね。
了解です。

256ただ一匹の名無しだ:2007/01/04(木) 23:38:10 ID:jBfAI9wc
把握しました。
レーベ、地下通路入口、祠方面への入口も封鎖ってことでほぼ
アリアハンーナジミに集わせることができそうですね。
洞窟のあるE−2も候補かもしれないと思いましたが、さすがにやりすぎかな。

257ただ一匹の名無しだ:2007/01/05(金) 00:33:48 ID:bhFTmffM
了解で。

258ただ一匹の名無しだ:2007/02/10(土) 00:27:29 ID:oVjPS1tg
.

259ただ一匹の名無しだ:2007/02/25(日) 23:56:54 ID:gCDfV4AY
日光を弾いて揺れるドレス、黄金を細糸に加工し束ねたような髪。
月光の様に優美な立ち居振舞い。
遠目でも判る、輝くその姿。
会うのはどのくらいぶりであろうか。
心中に沸き起こる、再び会えたことの歓喜。
ゆっくりと、距離が詰まる。
距離が近づくにつれ、自分らしくもなく、心が震えているのがわかる。
かの姫が己を拒絶するかも知れぬ事への怯え。
だが、歩みを止められぬ。
ローラ姫が自分に気づいたらしく、歩くのを止めて此方を見ている。
逃げ出してしまうのではないだろうか?
「竜王さん」
自分の名を呟くのが耳に届き、姫はあろうことか、早足でこちらに向かってくる。
…無用心に過ぎる。これで、良く今まで生き残って来たものだ。
思わず口の端が釣り上がる。
変わらぬ。
初めて対面した時も怯えを見せなかった。
配下に幽閉した後の様子を訊ねたところ、護衛としてつけたドラゴンに対しても怯まなかったらしい。
お互い表情が判別できるまでに近づいた。
「久しいな、ローラ姫」
「ええ、お久しぶりです」
次に何を言えばいいか迷う。
いや、一つ、言わなければいけない事があるのだが。
すぐに伝えるのは、少し、ほんの僅かばかり癪にさわる。
「よく、今まで無事だったな」
口に出るのはそんな皮肉めいた言葉。だが、ローラ姫は気にせず会話を続ける。
「ええ、ゴンさんに助けてもらって、エイトさんにも助けてもらって」
「ゴン?」
「護衛として貴方がつけてくださったドラゴンさんのことです」
「ああ、あやつか」
みれば、ローラの顔が悲しげに曇っている。
「魔物には名前で呼び合う習慣が無いからな」
ローラは左右に頭を振った。
「ゴンさんは、私を庇って亡くなってしまって。竜王さんに会いたがっていたから、せめて竜王さんに彼の事をつたえようと。」
その為だけに、逃げずに自分に会いに来てくれたのか。殺されるかも知れぬのに。
「ゴンさんは、ずっと竜王さんと合流したくて、攻撃された事にも怯むことなく勇敢に戦って」
最も惹かれて止まぬ、姫の強い意思を宿す瞳が、涙を湛えて曇っている。
「そして、ずっと私を守って、守って、私を助ける為に戦って亡くなりました」
「…そうか」
おもわず手が伸ばし、指が姫の涙を拭う。驚いたのだろう、ローラが目を大きく見開いている。
我ながら、自分らしくない。本当に、らしくない事だ。
「…ごめんなさい」
今度は此方がギョッとする番だ。まさか謝罪を受けるとは思わなかった。
「気にするな。戦って死んだのなら、あやつも本望だろう」
かつては魔王たる私が、人を慰めるような言葉をかけるようになるとはな。
ともかく、安全な場所まで連れて行かなければ。
あたりを見渡そうとした時、聴覚に触れるものがあった。
「ローラ!!!」
聞こえた方向とは逆に、姫を突き飛ばす。
『メラゾーマ!!!』

マルチェロは大通りを伺っていた。
しばらくして宿屋の方向から人影が現れた。
「あれは…」
以前見かけた人ならざる者。
カール・グスタフをとりだし、人物にレンズの標準を合わせる。
周囲を威圧する気配と近くの宿に他の参加者がいたので襲撃しなかったのだが、あの時とは違ってかなり負傷しているようだ。隙を見せれば倒す事が可能かもしれない。
町の出入り口に行くのか。
マルチェロは出入り口にレンズをそちらに向ける。
そこに居るのは光の塊。否、光を反射させる衣服を纏う女性。
「出会えば、何らかの反応があるはずだ。」
攻撃するか?
しかし、この武器の弾は後一つしかない。しかも、連続して弾を打ち出す事が出来ない。
マルチェロは、あらゆるパターンを想定し、対処法を考える。
大通りを歩く二人が出会う。どうやら戦いを始めることは無いようだ。残念だ。
幾つかの案を捨てる。
話に集中しているのか、こちらに気づいてはいない。
呪文を唱えながら、大通りへ歩いて行く。

260ただ一匹の名無しだ:2007/02/26(月) 00:45:51 ID:hDLjuQeQ
書いている途中で投下があって良かった。
この先どう書くか悩んでたし。

261ただ一匹の名無しだ:2007/02/26(月) 01:48:25 ID:4wMTPg2o
一部分

262ただ一匹の名無しだ:2007/02/26(月) 22:49:10 ID:2MPeu0vQ
実は一部分です。
投下されているアレンとmの戦いが途中で終ったので、後で使える可能性がある部分は省いてます。

263ただ一匹の名無しだ:2007/03/28(水) 12:43:14 ID:B9WprV4c
旬を逃したネタ。
レックスの日記

【18:00】定時放送の鐘の音で起床。まだ眠い。顔を洗う。剣が折れて力が出ない。
     目は覚めてるけど起きない。僕にはチャンスが無い。
【18:05】枕のかわりに膝枕で眠るフリをする。悪夢がウザイ。イヤになる。
     「かわいそうに」マリアの言葉だ。うるさいんだよ。俺は勇者じゃないただの子供なんだよ。
     「――畜生っ!」 うるせぇんだよこのモヒカンが。
【18:35】ダルいベッド異動開始。隣ではうるせぇ銀髪が口説いている殺すぞ。
【18:43】「アアアアアアア!」バーサーカーが叫んでいる。僕にどうしろっていうんだよ。
【18:50】ハッサン負傷。僕をキャッチした後トロデが振ってきたらしい。うだつの上がらない奴だ。
【19:03】今日は満月だ。気分が盛り上がらない。早くグランバニアへ帰りたい。
【19:05】バーサーカーがニヤニヤしている
【19:30】バーサーカー撃退。
【19:40】奇襲。
【19:45】みんなで戦闘。般若の面をしたテリーにみんなが凍りつく。
【20:20】シスコン男 登場。
【20:22】「あいつは姉さんを殺した……!」 相変わらず元気な奴だ。
     「ギガデイン!!」本当はどうでも良い。折れた破片早く来い。
【20:40】炎の幕に襲われる。ウザい。心が緩んで力が出ない。
【20:42】「おじさま、逃げてください!」 マリアだ。タイミングが良すぎる。どこから見ていたんだ?
【20:43】「へぇ、そうだね。そういえばお姉さんには何度も眠らされちゃったっけ……」
     さようなら、フバーハ、こんにちは漣マホカンタ。トロデがぐったりしている。
【20:45】「これで呪文は僕には効かない。さぁ、どうやって僕を無力化するつもりなのかな?」
     ただのアイテム効果だ。
    「なんだかんだと聞かれたら!」 「答えてあげるが世の情け!」
    このセリフには飽き飽きしている。
20:49】戦闘終了。「僕を、どうするの?」 格好だけ聞いてみる。
【20:53】オリジナル人格が来た。
    「ありがとうお姉さん……僕、何ができるか解らないけど、まずあの人たちに謝ります。
    そしてハーゴンと戦います。そして……そして、僕は……」
    遅すぎる。帰れ。うだつの上がらない奴だ。
【21:15】改心。道端でシスコンがボウガンの矢をセットして構えている。覆面パンツが泣きながらこっちを見ている。
     いやがらせか?殺すか?

264 ◆9Hui0gMWVQ:2007/05/06(日) 23:58:10 ID:arr99sYo
突然ですが以下は駄文です。チラシの裏です。
今回の投下のことで色々言いたいことがあるのですが、全部を本スレで書くのもあれなので
没ネタとして処理させてください。一部それに関する話もありますし。


どうもすみません。色々無茶しました。

今にして思えば、やっぱり一時投下してからの間が半日しかないってのはどうなのよ?
という気がします。
後に控えておられる方がいるからと思い、確かにそれもあるのですが
平日だと十分に時間が取れる自信がなかったので、
この休みのうちにケリをつけておきたい、と考えたのも正直なところでした。

ただ結果論ですが、あの時間に投下して、自分自身では正解だったかもと思っています。
支援を入れてくださった方はご存知の通り、途中で見事に規制を喰らいまして
皆さんの援護を受けながら、延々2時間半に及ぶ投下になってしまいました。
平日や夜にはとてもじゃないですが、やっていられなかったでしょう。

もっとも、それならもっと早くに仕上げて、一時投下を早めれば済んだ話で、
どちらにせよ私の責任です。「早いよ」と思った方、改めて陳謝いたします。ごめんなさい。


それに時間がかかった理由はもちろん、「話長すぎ」この一語につきます。
最後まで書くべきか?どこかキリのいいところでバトンを渡すべきでは?と思いました。
実際、中盤のアレフがピサロの罠にはまってマヒャドを喰らってしまった
16/43のところが切れ目かと踏んでいました。ちょうど投下数も適当なところですし。
でも、こんなややこしい所で渡されても次の人が困るだろう、とも思い
あれこれ考えた結果、思い切って突き抜けてみることにしました。

265 ◆9Hui0gMWVQ:2007/05/07(月) 00:02:00 ID:6VNlYMeo
どう決着をつけるかも悩みの種でした。
最終的には「あそこまで引き伸ばして結局誰も死なないのかよ!」と
バトルロワイアルの名にふさわしいのかどうなんだ?という展開を選びました。
実は…2ヶ月ほど前に作った最初の構想ではアレフがここで死ぬ予定だったのです。

最初の展開は採用したものと同じで、吹雪に呑まれながらもアレフは諦めず
その姿に感銘?を受けたのか、アトラスの風のアミュレットがやはり発動。
吹雪を吹き飛ばして、一気にピサロを追い詰めてゆく。
そこでピサロを仕留めるかどうかまでは考えませんでしたが、
どう転んでも戦いが終わった後、疲れきったアレフがそのまま力尽きてしまう。
ピサロ(※生き残った場合)に「勝ち逃げか!?」と言われ、
エイトからは「ローラ姫に何て言えばいいんですか!」と嘆かれる。
そんなラストが最初の構想でした。
また、ピサロを追い込んだ時に、フォズが割って入って代わりに斬られてしまうという
展開なんかもありえました。とにかく、最初は誰も死なないはずではなかったのです。

それが大きく方向転換したのは、『影は光に追いついた』でローラが死んでしまったこと。
エイトの「ローラ姫に何て言えば…」という嘆きが意味を持たなくなってしまったのです。
そして何より、◆inu/rT8YOU さんのローラ姫の死の間際の描写に私自身が感動し、
何としてもローラの意志をアレフに伝えてやりたいと考えました。
…で、ローラはロトの剣を使った。アレフは確かロトの盾を持っていたよな?
そこから繋げられないか?てなところからアミュレットよりも前に
アレが発動することになりました。我ながらものすごい超展開だったと思います、あの周辺。
でもかなり気合を入れて書けたので、あの一連の話には自分では満足しています。
ええ自己満足。

266 ◆9Hui0gMWVQ:2007/05/07(月) 00:06:24 ID:6VNlYMeo
ということでまとまりがありませんが、要約すると
「ローラが生きていればアレフが死ぬ」
「ローラが死んだのでアレフが生き残る」というのが大まかな構想のまとめでした。
自分で書いておいてなんですが…報われないな…本来は将来の夫婦なのに。

他にも文章にはしませんでしたが、色々考えました。
そのうちわけがわからなくて、こんがらがってしまうこともしょっちゅうでした。
しまいには、いっそ戦いで脆くなったナジミの塔を崩落させてみんなまとめてー!とか
4人中3人までが死んでしまい、唯一生き残ったエイトが「思い通り!」と
どこぞのよく名前の似た主人公の最終巻での勘違い顔みたいなのが頭に浮かんだ日には
ああ、これはもう駄目かもしれんね。などと思ったりしました。アホかい。

まあ、どれも免罪符にはなりませんが新参者の私なりに一生懸命やったつもりです。
勝手がわからず、昨年末から出るたび余計なことをしてきた感がありますが、
それでも支援や感想等をつけてくださったこと、感謝の念に絶えません。

そして書き手の皆さん。私にまがりなりにでもSSが書けたのは皆さんのお陰です。
これまでの台詞や場面等の記述を思い切り利用させていただきました。
明らかに自力でなく、人の褌で相撲をとっています。本当に頭が下がる思いです。

267 ◆9Hui0gMWVQ:2007/05/07(月) 00:10:06 ID:6VNlYMeo
今後、修正あるいは、という話になる可能性もまだ残っていますが、
とりあえず現段階での務めは果たしたということで…後は、あれですね。
年の初めにいらんことを言ってしまった「私は、誰も〜」の後編とやらが残っています。
今回の「愚かなる〜」が無事採用されるか否かに関わらず、没にすることは決定済。
今回の話でナジミの塔でのピサロたち絡みの話が一応決着したと見なしてよいならば、
しばらくしてちょっと落ち着いた頃に見直しして、ここに投下しようと思います。
(没なのに見直すってのも不毛な話ですが、一応人様に見てもらう以上は)

しかし、その時のことも思い出して改めて…私はなんというトラブルメーカーなのか。
ホント出るたび碌なことせんな('A`)


では駄文はここまでです。
改めて、ありがとうございました。機会とアイデアがあればまた新作に挑戦させてください。

以上、チラシの裏でした。

268ただ一匹の名無しだ:2007/05/07(月) 09:58:56 ID:21Bp1E.s
それでも◆9Hui0gMWVQ に乙といいたい
あなたには乙の輝きこそふさわしい

269Z:2007/05/11(金) 23:06:41 ID:vE4c3xR.



gj&お疲れでした。

DQBRでは矛盾が少なく、長文を書ける書き手さんと、尊敬しております。
何せ当方は、短いレスの矛盾だらけのSSを書いているもんで。
恐ろしい事に現在進行形です。
此方が迷惑かけてしまうことも在るかもしれませんが、これからも宜しくお願いします。







>4人中3人までが死んでしまい、唯一生き残ったエイトが「思い通り!」と
どこぞのよく名前の似た主人公の最終巻での勘違い顔みたいなのが頭に浮かんだ日には
ああ、これはもう駄目かもしれんね。などと思ったりしました。アホかい。

思わず茶をふきだしてしまいました。それはそれで…(マテ

270ただ一匹の名無しだ:2007/06/13(水) 02:18:36 ID:pF89cF5A
没ネタ

「私が希望になります」と高らかに宣言したアリスに、マリアがキレる。
「だったら今すぐ、リアちゃんを生き返らせてください」
「そ、それは……」
守れなかったというトラウマをえぐられて愕然とするアリスに、マリアは罵詈雑言で追い討ち。
「世界を救った勇者だが知らないけど、あなたは女の子一人守れなかった。
 あなたが弱いから、あの子は死んじゃったんですよ!
 さあ早く! 今すぐあの子を生き返らせてくださいよ!!
 私の希望になってくれるでしょう?
 どうしたんですか? できないんですか?
 そうですよね、できるわけないですよねぇ!
 あなただって私とおんなじ、ちっぽけな人間なんだから!
 ――何が勇者よ。リアちゃんじゃなくて、あんたが死ねばよかったんだ!」
「う、あ……うああああああああああああああああああん」
気絶してた自分のことを棚にあげて完全に暴走するマリアに、
アリス大ショック。サマンサ死亡のショックからも立ち直れてなかったのがガチ大泣き。

マリアはそれを息を切らしながら冷ややかな目で見つめるが、
アリスにとってあまりに理不尽な要求をしてることは自分がよ〜〜く分かっていいたので
自分の心もズタズタ。それから逃避するために、自分が正しいと思い込もうと心を閉ざしちゃう。
結果、発狂同然の精神状態になっちゃう。

ここまで考えて、今回投下した展開の方が絶対気持ちいいと思って破棄。
もう少し俺の心が病んでたら、この展開で突っ込んだかもしれません。

多分その後は、「ンまぁーい」だったはずのアンチョビサンドが
実は直前にマリアが毒薬盛ってたことが判明して、トロキーはそのまま死亡。
アリスの毒だけは態々キアリーで解除して、瀕死のところをさらに言葉責めして
(「二人とも死んじゃったよ、やっぱり誰も守れなかったね」、とか)
アリスまで発狂しちゃう、ヤンデレ鬱展開とかになってた……かも。

271ただ一匹の名無しだ:2007/06/13(水) 09:47:21 ID:AxiFiUvQ
壮絶だ…リレー企画って本当に色々なifがあるんですね。

272空気よめなさ杉な一読み手:2007/07/07(土) 18:09:09 ID:8ggEnIos
マリアのキレる描写次第だな・・・これは。
その展開も読みたかった。

dqbrの良いとこでもあるんだろうが、ドロドロ展開少ないよな。
ああ、フローラさんのドス黒さが恋しい

273 ◆9Hui0gMWVQ:2007/08/25(土) 23:46:09 ID:/32giy5Q
こっそりと没話投下します。以前話していた後編です。
随分長いこと間が空いてしまったので、
自分でもどんな状況だったか忘れてしまいそうだったのですが…

一応ここに至るまでの状況を整理しておくと
時間帯は二回目放送が終わってしばらくの朝〜午前にかけて。舞台はナジミの塔
人間たちに見切りをつけたピサロがアレフに深手を負わせて一時撤退。
フォズがその後を追っているという段階です。
また、(話に絡んではきませんが)この時点ではアリアハンの動乱が生じる前なので、
ローラやトルネコはまだ生きています。アリスたちは井戸の中です。
何だか改めて随分昔の話だな、と。

では投下始めます。

274雪解けの時1/31:2007/08/25(土) 23:48:43 ID:/32giy5Q

…『ひと』は、『誰か』に…なれる…?

ひとは、誰かになれるのか?誰でも誰かになれるのか?
彼女は答えを出すことができなかった。自分の中にその誰かが誰も、いないから。

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
世の中にある人とすみかと、またかくの如し…
人知れず見えずしかし確かに流れる時の中で、人は変わる。誰かになれるか否かに関わらず。
時に何かに出会い、時に何かと関わり、うつろう河の流れの如く人は、命は変わってゆく。
この世に生まれ落ちた魂は、世界の中で育まれ、やがて巣立つその時まで、
留まることなくそのあり様を変えてゆく。自分自身でさえ、気づかぬままに。

しかし変わると言うことは、常に代償をともなうもの。
新たな自分になるということは、過去の何かを代わりに失ったしるし。
成長したということは、かつての殻を脱ぎ捨ててきたことと同義であり、
新たな地へ赴いたということは、今までの居場所を置き去りにしてきたということでもある。
そして、新たな人に出会うということは、
その人を知らなかった頃の自分を消し去ってしまったということでもある。

新しく手に入れた何かと、等しいだけの失われたもの。
気づいた時には、あるいは気づきもしないままに、この手から零れ落ちてしまったもの。
それが、喜びに満ちたものであるならばよかった。
何の憂いもないならば、構わないはずだった。だが。
失われた重みは、悔いはいつも遅すぎる頃にやって来る。だから後悔というのである。

275雪解けの時2/31:2007/08/25(土) 23:49:45 ID:/32giy5Q

失われたもの。失ってはいけないのに、失くしてしまったもの。
それを思い知った時、人は変わる。変わらざるをえない。
もう二度とこの手に掴むことはかなわないから。
かといって、失ったものを知りもしなかった頃の、無邪気な自分にも戻れないから。

尊きものを呑み込みし奈落につながる崖の端先で、人は嘆き、しばし佇む。
そこで立ち止まってしまう者もいる。身も心も朽ち果ててしまうまで。
しかし再び歩き出す者もいる…『彼ら』もまた、そうだった。
それは悲哀のためか、怒りのためか、あるいはかすかな望みの故なのか。
生きている限り、彼らは再び走り出す。うつりゆく時の中で、うつろいやすい心と共に。
再び必要とされるであろう代償も顧みず、自らの求める何かを得たいがために。

…今、彼らを突き動かすその思いもまた、やがては消えてしまうもの。
いつまでも、同じままの自分ではいられないから。
しかしだからこそ、今だけの体、今だけの命、そして今にしかない願い。
それらを抱えて、彼らは今を確かに生きている。
深々と舞い落ちる雪のように、積もり積もらせてもいつかは解けて消えてしまうけど、
だけど、それでも彼らは、今を確かに生きている。

進む先にいずれ訪れるは一つの結末。されど、終われども止まらぬ時の流れ。
それは道の終わり、そして道の始まり。
冬来たりなば春遠からじ。過去と今を経て、繋がる未来への分岐点。
さながらそれは、一つの季節の終わり、雪解けの時―――

276雪解けの時3/31:2007/08/25(土) 23:51:21 ID:/32giy5Q


魔力の反応が近い。フォズは『あの人』がすぐ近くにいることを感じ取っていた。
ナジミの塔の上層部。柱と柱の間から、黄金色の光が差して見えた。
悪夢の幕開けからちょうど一日を経た。こんな狂った世界でも、一度沈んだ陽はまた昇るのか。

(…)
修行のために起床が早かったフォズにとって、
朝の陽の光は今まで、ある一時期を除けば毎日のように浴びていたもの。
しかし、この日のこの光景は、その瞳にかつてないほど感慨深く映った。
胸中に浮かぶ、悲壮な決意と共に。

今までピサロを追うことに必死だったフォズは、そこで唐突にあることを思い出した。
いけない、忘れ物があった。というより置いていかなければならないものがあった。
フォズは自分の胸元を掴んでひっぱり、服の中に潜んでいた者を手に取る。
アルスが生前飼っていた蜥蜴(に似た生き物)、レオンだ。

「今まで旅に付き合ってくれてありがとう。あなたがいたから、寂しくなかった」

レオンをそっと床に置くと、フォズは少しかがんで微笑みかけた。
事情も何も掴めぬまま、いきなり放り出されたこの世界。
どこへ行って、何をしたらよいのか、全くわからなかった彼女にとって
レオンは初めての心の支えだった。レオンがいたから、アルスのことを思い浮かべた。
彼を探すという目的で、へたりこんでいた足を動かす気にもなったのだ。
結局、元の主のもとへ返してあげるという、その願いがかなうことはなかったけれど…

277雪解けの時4/31:2007/08/25(土) 23:52:38 ID:/32giy5Q

「ありがとう。ずっと私に付き合ってくれて。
 でも、もういけません。ここから先はとても危険なの。
 あなたまで、こんな私のわがままに付き合わせるわけにはいきません。
 だから、もう行きなさい。どこへ行けばよいかわからないけれど、
 少なくとも、どこへ行ったってこの先より危険な場所はないだろうから…
 だから、行きなさい」

意図が伝わるはずもないが、それでも言わずにはいられなかった。
レオンはしばらく目をパチクリまばたかせながら今の主の傍を離れずにいたが、
フォズがパン、と一回手を叩くと、急に飛び出し走り去っていく。

(ごめんね、驚かせてしまって。ごめんね、こんな所に置いてきぼりにして。
 ご主人様に会わせてあげられなかった私を、どうか許してください)

幸せになってね。フォズは消え行くトカゲの後姿に
そんな当然の、しかしこんな場所ではひどく実現の難しそうな願いをこめた。

『幸せになりたい』…誰もが思うその願い。
皆がそれを知っていて、皆がその実現のために今を生きている…はずだった。
なのに何故、誰も辿りつくことができないのだろう?
そこへ行きたいと、誰もが追い求めているはずなのに。
どこかで進むべき道を誤ったのだろうか。
それとも…そもそも幸せなど願うこと自体が間違いだったのだろうか…?

278雪解けの時5/31:2007/08/25(土) 23:53:25 ID:/32giy5Q

(…いいえ、それは違います。誰にだって、幸せになる権利はあるはずです)

フォズはかぶりを振った。
それもまた綺麗事かもしれない。だけど、でなければ生きていく意味がないではないか。
ただ、見えなくなっているだけ。ただ、わからなくなっているだけ。
人の…あの人の求める幸せは、一体どこにあるのだろう?
少女はそんなことを考えた。勿論、昨日今日出会ったばかりの彼女には
正確に推し量るなどできないことだけれど。

しかし、どうなってはいけないのか、それだけはわかる…つもりだった。
その決定的な破局を回避するために、彼女は行かなければならない。
あの人をここまで追い詰めてしまった原因が、自分にあるのならば尚更。

幸せにしてあげたい、などとできもしないことを思うほど傲慢にはもうなれない。
だけど、このままでは確実に不幸になる。
あの人も、これからあの人に関わることになる多くの人々も。そして、自分自身も。
それは嫌だ。納得できない。だから、貫くしかない。泣くだけでは何もできないから…

フォズは決然とした面持ちを取り戻し、じっと前を見据える。
この階段を上った先。そこに、彼はいるはずなのだ。

279雪解けの時6/31:2007/08/25(土) 23:54:37 ID:/32giy5Q

治癒を終えた。完治とまではいかないが、腕の動きは魔王の要求に応えうるものだった。
その立ち直ったばかりの右で、男はエルフの飲み薬を手に取り、口に含む。
体の中で失われた魔力が俄かによみがえり、満ち満ちていくのを感じる。
さすがは悠久の時を生きる妖精の叡智が込められた秘薬というべきだった。

エルフの、という薬にかけられたわずかな言葉が、男の胸中に去来させるものは大きい。
それは愛惜であり、憐憫であり、あるいは憤怒でもある。
かけがえのない女性を、あの者らはこの手から奪った…ただただ、見せしめのために。
そのような所業を為した輩を見過ごすことなどできようか?否、断じて否だ。
何としてもあの者らの喉元に詰め寄り、打ち砕いてやらねばならない。
それが我が初心である。決して、見失ってはならない。

魔力と共に、精神力を回復してきたことで、ピサロは冷静な判断を取り戻そうとしていた。
同時に、蘇った力は彼に自分に近づく羊の気配を察知させた。
迷ったのではない。まっすぐこちらへ向かってくる。潜在魔力は…ほとんどない。

(…あいつか)
それが誰だがすぐに知れて、ピサロは忌々しげに舌打ちした。
賢いかと思ったこともあったが…蓋を開けてみれば、ひどく頭の悪い娘だった。
見た目は吹けば飛ぶほどか弱いのに、荒波にもまれてもいっこうに自分の考えを改めない。
頑固な奴だった。頑迷とさえ、言ってもよかった。
そして今は、あれほど脅しをかけたというのに、鴨は自らすすんで網にかかろうというのだ。

(言ったはずだ…今度私の目に映るのならば、殺すと)
ピサロは未だ姿の見えぬ方向を見据える。いっそ、丁度よいのかとも考えた。
これから彼が往くは修羅の道。全ての因縁にケリをつけるための旅。
その最初の踏み台としては、もっとも相応しいようにも思えたから。

ピサロは静かに待つ…そして、生け贄は自らの意思で『祭壇』に上がった。

280雪解けの時7/31:2007/08/25(土) 23:56:22 ID:/32giy5Q

階段を上った先でフォズは探しものを見つけた。あの人が、いた。
入り組んだ塔の中、緊張で高鳴る動悸を抑えながら、恐怖で強張る体を奮い立たせながら、
それでも少女は前を見て歩を進める。

あの時の言葉通り、『有無を言わさず』とは、彼はしなかった。
それはピサロが一時の激情から立ち直ったしるしであったかもしれなかったが、
「何故ここへ来た」
およそ楽観することなどできない凍てついた視線を、少女の瞳の中に叩き込む。
今までの彼女ならば、蛇に睨まれた蛙の如く、その場で立ちすくんでしまっただろう。
しかし今は違った。フォズは気を緩めればすぐに顔を出す怯えを振り切り、淀みなく返す。
「あなたを止めるためにです、ピサロさん」

あくまでもデスピサロとは呼ばない。予想通りだったが…つくづく意固地な小娘だった。
「ほう…私を止める?如何にしてだ。私を倒すつもりか」
「まさか。私の力であなたを倒すなど、到底不可能な話です」
「そうか…では、どうするつもりだ。この私を説き伏せようとでもいうのか?無益なことを」
「はい…それも無理だと言うことは、わかっています」
それを聞いて、ピサロが幾らか眉の角度を変えた。
どうせ説得に来たのだろう。ならばせいぜい戯言を吐かせてから仕留めてやろうか。
思い残すことのないように…そう思って、ピサロは仕掛けもせず話を聞いていたのだが、
どうも自分の予測とは違う方向へずれているようだ。

「今のあなたを言葉で止められるとは思っていません。
 それができるものなら、とうの昔に、できていたはずですから」
「なるほど…しかし、ならば何をしにここへ来た?
 力も言葉も駄目だと言うのならば、お前は何ができると思ってここへ来たのだ?」
「…わかりません」
フォズは、素直にそう言った。ピサロはさらに訝しげに眉をひそめた。

281雪解けの時8/31:2007/08/25(土) 23:57:57 ID:/32giy5Q

「わからない、だと?」
「わかりません。どうすればよいのか、私にはわからないのです。
 でも、このままではいけない、それだけは確かだと思いました」
「だから、来たのか。力もなく、策もなく、何をしたらよいのかさえもわからず、
 …ただ嫌だというだけで、来たと言うのか」
「…はい」
あっさりと認めた。ピサロは乾いた笑いを漏らす。ここまで頭が悪いとは思わなかった。
全く、こんな小娘のために、自らの身を投げ出しかけたことが甚だ愚かに思えてならない。
やはり、私は間違っていたのだ。そう決めつけることにした。

…しかしピサロは知っていた。決して理性だけが人を惹きつけるものではないということを。
かつて、自らの命の危機に瀕しながら、それでもあえて自分を害そうとする者の自由を願う。
その、一見すれば度し難いほどの愚かさ、あるいは清らかさゆえに、
彼の興味を惹いた女性がいたことを…ピサロは知っていた。だが、この時は黙殺した。

「お前は…つくづく愚かな娘だ。大人しく失せておればよいものを…!」
舌打ちしたピサロが右手をかざす。刹那、風が集まっていく。
沸き起こった空気の渦は、やがて無数の刃を持つ無色の剣を魔王の腕の中で作り上げた。
形をもたぬ変幻自在の大気の波動が、右手を振り下ろした主の命に従って空間を疾走する。

真空波だ。分散し、上下左右から迫り来るその技の本質を、フォズは看取した。
アトラスとの戦いの折にも見せた、彼女が知る限りでは、本来聖なる騎士の称号を持つ者が扱える高等技術。
それを、聖とは対極を行く魔の王者がいとも簡単に操ってみせたのだ。
迫る刃の渦を前に、少女はその手に握っていた天罰の杖を前に突き出す。
杖に込められたバギの力を使えば、相殺するとまではいかなくても、
いくらかの衝撃を軽減することができるはずだった。そう考えたから彼女は構えた…

…だが、やめた。

282雪解けの時9/31:2007/08/26(日) 00:00:27 ID:5RgYBWkA

(…!)
ピサロが眉を歪めた。真空の力を使うに見えたフォズが、何を血迷ったか急に杖を手放し、
さらにあろうことか両手を左右に大きく広げたのだ。
刃は、幼い体をあやまたず切り刻む。皮膚が裂け、鮮血がほとばしる。
全身を走る激痛に、フォズは悲鳴を上げ…かけたが、奥歯をぐっと噛み締め、
ふらつく足に力を入れて、こらえて立った。

「どういうつもりだ」
ピサロが問うた。それは、どう見ても自らをすすんで傷つける行為でしかない。
こいつの愚かしさは今更聞くまでもなかったが、それにしても。
対して、少女は体を紅に染めても、瞳の色だけはいささかも曇らせずに言い切った。
「あなたと同じです。あなたが私を助けてくださった時、その身を盾にしてくださいました。
 ならば、私もそうしなければあなたを動かすことなどできない…そう思ったまでです」
結局、これしかない。これしか、フォズには思いつかなかった。
できるかできないかではなく、やるしかなかったのだ。

しかし、それもまたピサロの癇に触れた。
「それで…?そのまま私の攻撃を受け続けて、それで私を諫めようというのか?」
「あなたがお望みなら、そうします」
「ハッ…見くびられたものだ!この私の力、お前如きに耐え切れるものだと思われたとは!」
ピサロは拳を強く握った。再度、彼の掌の中で気流が集まり膨張を開始する。
「ならば、存分に喰らうがいい…それがお前の望んだ道ならば、喜んで受け取るがいい!」

風が走る。再びの真空波の前で、フォズは同じように手を広げ、そして、同じように切り裂かれる。
(ええ…喜びますよ、喜んで受けますとも)
二度も、三度も、何度でも。その果てしなく続く連鎖の中で、不意に彼女は微笑んだ。

(あなたが、ここで私に対して怒り、私に刃を向けているうちは…)

あなたは誰も殺せない。あなたは他の誰も、踏みにじることなどできないのですから…

283雪解けの時10/31:2007/08/26(日) 00:01:32 ID:5RgYBWkA


(どういう、ことだ…?)
いくらかの時の経過の中で、さしものピサロも、ことの異常さを感じずにはいられなかった。

どれほど真空波を撃ったというのか。それでも小娘一人蹴散らすことができないでいる。
彼の強大な魔力を以ってすれば、さらに高度な呪文を撃ち込むことも可能だった。
しかし、まだ敵の多いこの状況で、むやみに消耗するわけにはいかない。
そう考えたからこそ、彼は魔力をほとんど必要としない真空波を選んだのだ。
魔力なくして使用できる分、威力は極大呪文に比べれば劣る。
だから、一発や二発程度ならば耐えられることもわかる。
しかし、幾らなんでも、目の前の現実は彼の予想を反しすぎていた。

ピサロは前を見た。そこには今もなおフォズが立っている。
全身血まみれで、既に両手を広げる力もない。どう見ても半死人以外の何者でもないのに、
それでも自分の足で立って、こちらを見つめている。瞳の色は…今もなお褪せてはいない。
彼女の意外なまでの打たれ強さを考慮に入れたとしても、
それをも越える不可解な何かが働いているように思えてならなかった。

「何故、そんな姿になってまで邪魔をする…?」
ピサロが改めて問わずにはいられなかった。
「私が死神の誘いに乗ったからといって、だから何だというのだ。
 お前は助けを求めて逃げ回れば済む話だろう。
 私がどうしようと、お前には関係のないことのはずだ。
 ましてや、そこまで傷だらけになってまで、どうにかする必要などなかったはずだ…」
「最初に、言いましたよね…?私は、あなたを止めたいのだって…」
「ここまでするほどの意味があるのか!そう聞いている!」
「はい…それだけの価値があります。だって、あなたは、私の命の恩人なのですから」
即答して、フォズが淡く微笑んだ。
その姿が誰かと重なって、ピサロの脳裏を痛々しく疼かせた。それがまた忌々しかった。

284雪解けの時11/31:2007/08/26(日) 00:03:31 ID:5RgYBWkA

「そこまで私の邪魔をしたいのか。お前は、あくまでも…」
「あくまでも?あ…」
フォズはピサロが言葉に仕切れなかった部分を洞察した。
出会ってこの方、ピサロが彼女に己の真意を語ったことはない。
脱出する方法の模索ならば幾度かした。時には声で、時には筆談で。
しかし、わかっていた。この人にとって、それは手段であり、過程にすぎないことを。

参加者全てが集められたあの始まりの場所。当然、フォズも居合わせていた。
あのおぞましい瞬間を、彼女は目の当たりにしていたし、
その結果、ピサロがどのような思いを巡らせたかも、今ならばわかる。
この人の真の目的は…おそらく…『あの主催者達に復讐すること』…

フォズは、首を振った。
「いいえ…私は、それを否定しません」
「何?」
「できようはずもありません。大切なものを奪われたあなたの怒りは、正当なものです。
 失うべからざるものを失ったことへの哀しみは、私にもわかるつもりですから」
伏しがちな瞳で語るフォズにも、ダーマを司る大神官としての苦い記憶がある。
転職の神殿の頂点に立つ長でありながら、かつて彼女は魔物に神殿の支配を許してしまった。
少女は牢獄の奥深く、長きにわたって幽閉され、
その間大勢の人々が魔物の姦計にはまり、絶望し、傷つき、そして命を落としていった。

少女は、怒らなければならなかった。彼女は、許してはならなかった。
神殿を巣食い、人々を翻弄する魔物たちを。それを防ぎ得なかった自分自身を。
命を慈しむ思いと共に、怒るべき時に怒る感情もまた、心ある者として当然のことだった。
許せないことを許せないと言って、いけない理由はない。
何もかもをただ笑って甘受するだけでは、忌むべき現状を覆す力とはなりえないのだから。
怒ること…時として、それは正しい。しかし、同時に忘れてはいけなかった。
そこにはともすれば陥りやすい悪魔の罠が仕掛けられていることを。

285雪解けの時12/31:2007/08/26(日) 00:04:29 ID:5RgYBWkA

「あなたが怒るのは当然のことです。
 しかし、だからといって憎んでは、恨んではならないのです」
「どう違うと言うのだ?小娘が小賢しいことを…」
「違います。悲しむこと、怒ることと、憎しみとは別のものです。
 憎しみに支配されてはいけません。
 愛しい人を奪った者たちへの恨みに心を委ねてはなりません。でなければ…」
そこでフォズは一瞬躊躇した。しかしすぐにその気持ちを振り切って、言い切った。

「でなければ…あなたは!あなたの大切な人を奪われただけではなく、
 誇り高きあなた自身の、その心をも奪われることになります。
 あなたの全てであり、あなたの大切な人が愛したであろう、その心を!
 それでいいのですか…?心を歪められて、それであなたは満足するのですか?
 私の言っていることは何か間違っていますか!ピサロさん!」
「!…黙れぇ!!」

ピサロが右手を高々と差し上げた。
…何も言い返すことができなかった…この、私としたことが!
だから、代わりに返礼をくれてやることにした。
彼の怒りをそのまま具現化したかのような高熱が、掌の上で充満し
やがてそれは集約され、一つの小さな光球となる。
もしその目映い光の中に美があるとするならば、それは呪われし滅びの美学に他ならない。
万物を砕く精霊の槌、イオ系最大の呪文・イオナズン。
それが、満身創痍の少女めがけて発射された。
既によける気も、その力もなかった彼女は、抗うことなく熱と爆風の荒波に呑み込まれた。

塔全体が揺れた。
構造が脆ければ一気に倒壊してしまいそうなほどの衝撃が、その時かけめぐった。

286雪解けの時13/31:2007/08/26(日) 00:05:42 ID:5RgYBWkA


「なんだっ!この衝撃は!?」

その余波は遥か下の階にいる別の人物の処にも伝わり、
不意に地震に襲われたかのようで、青年はバランスを崩して片膝をついた。
彼は先だっての放送直前にこのナジミの塔のある島に流れ着いた男。
トロデーン城近衛兵隊長エイトである。その胸には今、疑念が渦巻いている。

この戦いに参加させられた時点から既にそうだったが、この島に辿り着いてからも
彼は、自らの心を激しく揺さぶられる理由に事欠くことがなかった。
件の放送で、彼は、自分が守ろうとした姫君ローラが健在であることを確認した。
それが唯一の救いではあったが…一方で、彼はまた戦友ククールの死をも突きつけられた。
どこでどう死んだのかさえ知るすべもない。
それは、かつてレーベで救いえず、自らの不敏を忌々しく思い
今改めて放送でその死を確認させられたあのドラゴンの死とも重なって、
重苦しい衝撃を、エイトの内側に走らせたのだった。

しかも、この地でさらに追い討ちをかけるような状況を目の当たりにしたばかりである。
無為でいることに耐えられなかった彼は、何とかアリアハン方面へ向かう道はないものかと、
重くひきずる心と体に鞭打って探索を始めたところだったが、
まず彼が見つけたのは…道ではなく、死体だったのである。

その死体には、彼のよく見知ったはずの赤いマントがかけられていた。エイトは動揺した。
かの地へ旅立ったと言うククールのもの…では、これが『あいつ』なのか?と思ったが
恐る恐るマントを外してみれば、中からはククールの銀髪とはおよそかけ離れた
黒髪の青年が現れたのである。

ククールではなかった。しかしマントの存在が、この青年の死に
自分の戦友が一枚噛んでいるらしいことを、エイトは考えざるをえなかったのである。

287雪解けの時14/31:2007/08/26(日) 00:07:13 ID:5RgYBWkA

(…ククール、まさか君がこの人を殺したのか?)

不本意ながら、そんな疑惑もよぎったが、これは比較的早くに霧消した。
その理由は青年の死因である。彼は、胴を大きく切り裂かれていた。
明らかに凶器は剣。しかも一流の戦士が一流の剣を持った時にのみ許されるというべき、
見事な斬撃だったのである。

以上の状況から、犯人はククールではない。そうエイトには判断できた。
あいつも剣を扱うことはできたが、細身のレイピアやサーベルなどの扱いが本分で、
さらにはそれ以上に弓の腕を磨き上げていた。長剣を持ったことなどほとんどないはず。
このような斬撃を生み出すほどの大剣を、ククールが自在に使いこなすのは無理だ…

そこまで考えて、不意にエイトは青年の命を奪った凶器が何であるかが気になった。
彼との面識はないが、見るからに逞しく、味方にすればさぞ頼もしいだろうと思える。
そんな人の命を易々と奪った剣…そんな業物がこの世界にいくつもあるものだろうか?
エイトの推測が一つの方向に定まったのは、遺体のあった周辺を見てのことである。
幾つもの焼け焦げた跡。しかし火ではない。
膨大な熱量を帯びた何かに切り裂かれたかのようだ。おそらくは電撃、しかも高度なもの。
これらからエイトが導き出した結論は…『ギガデイン』
そして、青年に刻みこまれた鋭い刃の跡を重ね合わせて、彼の頭に浮かんだ凶器…それは、

(竜神王の剣…?)

確証はない。エイト自身がそうであるように、
ギガデインはその術者本人の能力かもしれないからだ。
しかし、畏怖するに足る恐ろしい力を持った剣が、
やはり恐ろしい力を持つ誰かの手にあることは、青年の死に様から明白であり、
まだまだこの戦いが終わりを見る時は遠いのかもしれない、と思わざるをえなかったのだ。

そんなことを考えて再び動き出した矢先に、彼は例の衝撃を受けたのだった。

288雪解けの時15/31:2007/08/26(日) 00:10:58 ID:5RgYBWkA

それは、奇妙な感覚だった。恐るべき、と言ってよいのか判断がつかないのである。
上層部で−おそらくはイオナズンによる−爆発が起こったことは間違いない。
その余波が、塔の一番下にまで伝わってきた…
本来ならばその術者の力、凄まじきものと見るところであったかもしれない。

しかし、一方で釈然としない部分がある。何故こんな下にまで影響が来るのか?と。
エイトは、自身はイオナズンの使い手ではない。しかし彼の仲間だったゼシカが
この呪文を得意としていたから、ある程度のことは知識として掴んでいる。

攻撃魔法は、レベルの高い術者が使うほどに威力は高まる。
そんなことは子どもでも知っている常識だったが、範囲は必ずしも広がるとは限らない。
魔法とは、その命名の通り、魔につながる呪法。
使い方次第で術者は世界を救う神にもなれれば、滅ぼす悪魔にもなれる。
それ故に、暴走することは許されない。
魔術を扱う者は、己の持つ力を高めることと同等、あるいはそれ以上に
自身を完璧にコントロールすることを求められる。
自らの目の届かないところまで効果をもたらしてしまうとすれば、
一見便利なようで、実際には始末に困る代物でしかない。

もし、この呪文の使い手が自分だったならば…逆に範囲を小さく絞るだろうとエイトは考える。
どのような意図があるにせよ、己の居場所をこんな遠くにまで露呈してしまうような手立てが
有効だとは考えにくい。たとえ目の前の敵を倒せたところでまた新たな敵を招いてしまうだけだ。
だから、彼は思う…この力はすごいが、『何かがおかしい』と。


いずれにせよ、上で何かが起こっているのは間違いない。
どうする、行ってみるか…?天井を見上げながらしばしの思案に頭を悩ませていた時、
「うわぁぁぁぁっ!!」
今度は下の方から誰かの叫びが聞こえてくる。エイトは苦虫を噛み潰した表情を顕にした。
荒波に揉まれた先で、どうやら僕はとんでもない場所に招かれてしまったようだ。
一体ここで何が起こっているというのだろうか?

289雪解けの時16/31:2007/08/26(日) 00:13:36 ID:5RgYBWkA

溢れてしまいそうなほどに膨れ上がった不安を抱え込んで、声の方角へ彼は駆けていく。
何を意味するか判断がつくはずもないが、少なくとも罠に類するものだとは思えなかった。
ナジミの塔の内部へ侵入したその矢先に、下りの階段があった。
声はおそらくこの先から聞こえたものに違いない。エイトは唾を飲み込んで歩を進める。
降り始めてすぐに、エイトは先ほどの声の主とおぼしき一人の戦士の姿を確認した。
左足を抑え、うずくまっている。酷い怪我だ。
この足で無理にでも進もうとした時に、先ほどの衝撃を受けて、転落してしまったのか。
近づいてエイトは気づいた。彼はその戦士を知っていた。ほんの短い間ではあったが、
今は既に崩壊してしまったレーベで、目の前にいる人物と会話もしたのだ。

「ア、アレフさん?」
「だ…誰だ?俺を呼ぶのは…」
痛みに震える体を起こし、アレフは血色の悪い顔をエイトの前に晒す。
「君は…確か…そうだ…エイト君だったか…どうしてこんな所にいるんだ…?」
それはこちらの台詞だ、とエイトは思った。
まったく、あの村での別れから数時間しか経っていないというのに、
アレフの消耗は著しく、とても再会を喜びあえるような空気ではない。
おまけに彼と同行していたはずのキーファの姿も見えない。
一体何がどうなれば、ここでこのような形で再び相見える状況となるのだろうか。

「とにかく、回復を!」
聞きたいことは山ほどにもあったが、今はそれ以前の問題だった。
全身傷だらけといって差し支えない有り様だったが、まずは一番の深手に見えた
左足の治療を優先すべきだと思い、エイトはアレフの傍で跪く。
掌にベホマの光を宿らせ、患部に当てようと差し出した時、
その視野の中にアレフの腰の鞘に納まっている剣が入った。エイトは目を見張った。

(!まさか、そんな…?)

290雪解けの時17/31:2007/08/26(日) 00:15:25 ID:5RgYBWkA

見間違えるはずもない。
アレフが所持していたその剣こそ、エイトの故郷・竜神族の里の至宝であり、
あの青年を害した可能性が高いと疑念を抱いた、竜神王の剣そのものだったのである。

「…どうしたんだ?」

エイトの奇妙な停止を、アレフは不審に思って声をかけたが、直ちには答えられない。
まさかアレフさんが?と思った。しかし、この疑惑もまたすぐに否定された。
先ほどの遺体は、既に死後硬直も全身に及び、およそ一日が経過していると予測できた。
一日前…つまり昨日の朝、この戦いが始まった直後のことである。
対して、エイトがアレフと面識を持ったのは昨日の夜、レーベでのこと。
その時の彼は、竜神王の剣を持っていなかった。だから、アレフにあの人は殺せない。
…つまり、−仮に竜神王の剣が凶器だということが事実だとすれば、だが−
あの人を殺した犯人は別にいて、その犯人が凶器を何らかの理由でアレフに渡した。
もしくは、アレフがその者から奪ったということになるのだろう。


いずれにせよ、ククール同様、アレフにもあの人は殺せない。状況がそれを証明している。
そして、さらに、その時エイトが気づいたのは―――

「似ている…」
「何?」
「似ている…アレフさんは、あの人に…似すぎている…」
「何だ?一体、何を言っているんだ?」

そこでようやく現実に立ち返る。
問われてエイトは説明した。この近くに死体があったこと。
その死体はおそらく昨日からのもので、胴を大きく切り裂かれていたということ。
そして、その顔が…今、目の前にいる彼、アレフと酷似していたことをエイトは告げたのだ。

291雪解けの時18/31:2007/08/26(日) 00:18:30 ID:5RgYBWkA

「俺に似た死体…?」
アレフは困惑した。知らない。彼に親兄弟はいない。
ローラを除けば、今は孤独の身であるはずだった。心当たりなどあるわけがない。
けれど、先祖子孫にまで枠を広げて考えた時…アレフの中に一つ閃くものがあった。
それは、かつて死ぬ前にサマンサがアレフに言ったことである。
彼の先祖であるあの勇者ロト・アリスがこの世界にいるのだと…

サマンサは話の中で『彼女』と言っていたから、勇者ロトことアリスは女性であるらしい。
かたやエイトの言う遺体は男のものだから、未だ見ぬ彼女とは一致しない。
だとすれば…その青年の正体は…?
過去の人間であるはずの勇者ロトと、自分とが同じ時代に放り込まれているように、
まさか、その死した青年は、自分にとってもしや…?アレフの鼓動が格段に速さを増した。

「一体…誰なんだ…君はその人を知っているのか…?」
「こんなふうに話しているくらいですから、どんな人物だったかまではわかりません。
 でも、名前だけならば。支給された名簿で確認しましたから」
「名前…?」
「ええ。確か…そう、こう書かれていたはずです。その人の名前は――」
その声は大きな愕然と化して、アレフの鼓膜を通じ全身を貫いた。

――ドクン
あの男の声が、俄かによみがえる…

『王ではない』
――――――ドクン

『もはや王とは名乗るまいよ。今のワシは、ただの――』

アレフの瞳の焦点が、狂った。

292雪解けの時19/31:2007/08/26(日) 00:21:01 ID:5RgYBWkA

「バ、バカ、な…!き、貴様…一体、何を…?」
「アレフさん?どうしたんですか!?」
エイトの目の前で突然、疲労や苦痛とは全く異質の変調をアレフは起こした。
瞳が揺れる。汗が噴き出す。全身が震える。自身の体が、まるで別の生き物であるかのごとくうごめく
エイトがしきりに声をかけた。しかし、その呼びかけは、アレフの耳には入らない。

「貴様…一体、何をした…何故その名を…どういう、つもりなんだ…」
竜神王の剣、あの名前、あの男。竜神王の剣、あの名前、あの男…!
それらが現れては消え、消えては再び現れる。
アレフの頭の中を目まぐるしく巡り巡らせ、かき乱す。
それらの事象を、疲労しきった心と体ではおよそ整合させることもかなわず…
彼の意識ははじけ、回廊の床にゆっくりと体を沈めてゆく。

「お前は…一体…何を…かんが、えて…」
「アレフさん?アレフさん!どうしたというんです!しっかりしてください!
 アレフさん、アレフさん、アレフさん―――――――――!」

声がだんだんと遠くなっていく…悲鳴にも近い叫びも届かず、アレフは意識を失った。
本当に、ここへ来てからというもの、エイトが思い悩む理由に事欠くことはなかった。
一体彼に何があったのか、一方、上で何が起こっているのか、全く判断がつかない。
気にかかることは山ほどにもあったが、ともかくも、
エイトとしては目の前で気絶したアレフを一人残していくわけにもいかず、
その場に留まり、しばし彼の介抱にあたることになる。
目覚めた時、アレフが何を思い、どう心に決め、どのような行動をとるのか、
全ては未だ闇の中に堕ちたままであった。


ただ一つだけ、確かなことは…
これらのことがために、彼らが、『彼ら』の元に辿りつくことは、ついになかった。

293雪解けの時20/31:2007/08/26(日) 00:23:28 ID:5RgYBWkA


―――そして、舞台は再び塔の高層部へ…

(何故だ…何故、どういうことなのだ…)
下の階層で二人の勇者を揺さぶった術者もまた、今は冷然とは程遠く、
沸き立つ疑問に答えを導き出せずにいた。イオナズンを撃った右手を突き出した姿勢のまま、
同じ言葉を幾度もピサロは頭の中で呻くように反芻する。
手応えはあった、間違いなく命中した。確信があった…なのに。

「何故、お前はまだ生きている?何故、まだ立っていられるのだ!?」
ピサロは彼の優れた視力をもってしても、未だ肉眼で確認できない相手に対して叫んだ。
舞い上がった膨大な粉塵の壁に、全てが遮断された空間。
比して相手は小柄すぎる体、既に感知できるほどの魔力もない。
塔の壁と同様、生きているどころか粉々に砕け散ったとしてもおかしくないのに。
「ピサロさん…」
それでも、やはりいた。
イオナズンの余波がおさまりつつあった爆心地で、やはり…まだ、立っていた。
フォズがまた、あの名前で呼んだ。ここまで虐げられて、ここまで痛めつけられてもなお、
彼女はピサロをデスピサロとは、ついに呼ばなかった。

「わからぬ…どうして生きていられる?不死身か何かだとでもお前は言うのか」
「まさか。それならどんなにいいかと思ったこともありましたが…ただの人間です、私は」
「ならば何故まだ立っていられる!?」
「それは…ピサロさん。それはあなたが、一番よくご存知のはずです」
「何だと…?」
ピサロは思わず目を見張った。心当たりなどなかった、はずだ、が…

「イオナズンも、真空波も、どれも十分な威力を持った技でした。
 本来ならば、いかな屈強の者をも打ち倒すほどの力があるはずでした。
 でも…わかりますよね、ピサロさん。あなたになら。
 これらの技が、術者の精神力に大きく左右されるものであるということは…」

294雪解けの時21/31:2007/08/26(日) 00:25:49 ID:5RgYBWkA

その言葉の意味が、ピサロの頭に浸透するのにはいくらかの時間を要した。
しかしそれを理解しえた時、彼の中で何かがはじけた。
まさか…?しかし、思い返せば全ての事象がそれを証明していた。

先ほどのイオナズンの時、『塔全体が揺れた』
それ自体は、ピサロの持つ魔力の恐ろしさを示すものだったが、
同時に、そこには全く逆の真実が含まれていた。別の場所で、エイトが予測したように。
すなわち、彼の呪文の威力がこれほどの範囲に広がったと言うことは、
翻せば、それだけ分散されて、中枢にかける力は薄まっていたということ。
中枢にかける力…つまりは、本来狙うべきであったこの娘に対して…?

「私が今、ここに生きて、こうして立っていられる。
 その事実こそがすなわち、あなたが殺戮者になりきれていない証拠なのです。
 でなければ…私なんかが、あなたの攻撃に対して、
 一発だって耐え切れるわけがないじゃないですか…」
少女の口調はゆっくりとしたものだったが、ピサロの世界をぐらつかせること甚だしかった。
あの時も…そうだ。そもそも最初にこの娘と対峙した時、
かつての宣告通りに問答無用で殺そうともせず、無為に時間を費やした。
思い残すことのないように、あるいはこちらの余裕を示すためと、思い込んでいた。
しかし、そんなもの元々必要なかったはずではないか?何故そんな無駄な理由をあえて作った?
本気で殺すつもりがあったのなら…真に、己がデスピサロであるのならば!

(莫迦、な…!)
ピサロは不意に震えだした自分の手を呆然と眺めていた。
ずっとこの娘に、無意識のうちに手加減をしていただと?私が?人間の小娘などに?
この期に及んでさえそんなふざけた道化に、気づかぬうちに私がなっていただと?
信じられない。認められない。認められようはずもない。
…しかし、でなければ…今相手を殺しきれていないこの事実を、彼は説明できなかった。

295雪解けの時22/31:2007/08/26(日) 00:27:19 ID:5RgYBWkA

「ねえ、ピサロさん…」
愕然とする魔王に対して、少女が変わらず静かに語りかけてくる。
「あなたは強い人です。あなたは、誰よりも恐ろしく、誰よりも誇り高い人です。
 しかし、そんなあなたは…誰よりも、危うい人です。
 きっと、あなたの大切な方は、そんなあなたの危うさを包み込むように愛し、
 そして…最期まで、あなたの行く末を案じられたことでしょう。
 確証も何もないことですが…私は、そう思います」

『ピ…サロさ…ま…来て…くださったのですね…』
ピサロは思い出す…ロザリーの臨終の言葉を。フォズは知る由もない、かつての死の場面を。
あの時、ロザリーは既に血まみれだった…今、目の前にいるこの小娘のように。
『ピ…サロさ…ま…お願いです…わたしの…最後のわがままを…聞いてください…』
なのに、彼女は…最期まで何一つ、誰に対しての恨み言も口にすることはなかった。
彼女が願い、望んでいたのは…最期の、最期まで…

『ど…どうか…野望を捨てて…わたしと…ふたりきりで…ずっと………』


「お願いです…ピサロさん。私は、あなたの目的を阻もうとは思いません。
 ですが、忘れないでください。それはとても危険な道なのです。
 一歩間違えれば、何もかもを闇に葬り去ってしまうほどの…
 だから、お願いです。どうか最後まで、あなたはどこまでもあなたでいてください。
 そう、あなたに愛された方が愛した、あなたのままで…
 ……だから…あなたが、この世界で、デスピサロとして命を奪う相手は…」
フォズがニコリと笑った。直後、視界が歪んだ。

「私が…最初で、最後です…」

296雪解けの時23/31:2007/08/26(日) 00:28:21 ID:5RgYBWkA

「……!」
来るべき時が来た。ようやく追いついた死神がフォズを捉える。
代償を受け取る時が来た。
最後の意地が、今まで気丈さを保ち続けていた足がついに限界に達したのだ。
膝から力が抜けると、もはや踏みとどまる気力もなく、少女の体が崩れてゆく。
ピサロの目の前で、ゆっくりと。

「………ぬ…な……!」

その時、ピサロは自分でも思わぬことを口走った。
一瞬、彼は己が信じられなかった。ありうるべきではなかったのだ。
その台詞は、魔王たる身が口にしてよいものではなかった。
あるとすれば、その相手は彼が自らの心の聖域に置く唯一の女性に対してだけであって、
断じて、目の前にいるような小娘にではなかった。
理性はそう言っていた。だが感情がそれを押し流した。だから、

隠すこともなく、彼は叫んだ。同じ言葉を、もう一度。

薄れゆく意識の中で、フォズは自分が呼ばれていることを知り、
ああ、これでまた、以前のようにこの人と話ができるだろうかと思いながら、
しかし、もはやそれを許そうとしない体の如何ともしがたさを感じながら、
彼女の心は、深淵の中へ堕ちていった…

297雪解けの時24/31:2007/08/26(日) 00:29:25 ID:5RgYBWkA

…チロリ、チロリ。何かが顔を刺激する。
チロリ、チロリ。くすぐったい。痛みよりも何よりも、その感覚が彼女をとらえた。
一体、何だと言うのだろうか。

うっすらと、少女が目を開けると、そこには一人の若者の姿があった。
フォズは驚いた。その人は、彼女にとって終生忘れることのできない恩人であり、
…そして、今はもう、この世にいないはずの人だった。

(アルス…さん?)

翠の頭巾をかぶり、柔和な印象を帯びたその少年はゆっくりと歩み寄り、
満身創痍で倒れ伏した少女の前で跪く。
痛かっただろう?と声をかけてくれた。そして、彼女の小さな頭を優しく撫でて、
よくがんばったねと褒めてくれた。フォズは泣きそうになった。

「アルスさん…アルスさん!」

フォズは叫んだ。正確には、叫んだ気になった。
ようやく意識がもどり、前を見れば、そこにやはりアルスの姿はなく、
(あなたは…)
一匹の蜥蜴・レオンが、心配そうに彼女の顔を覗き込んでいるだけである。

(あなたは…せっかく危なくないよう置いてきたのに、結局来てしまったの?
 まったく、あなたは本当のご主人様に似て、のんびりしているようで無鉄砲すぎます)
自分のことも棚に上げて、フォズはお説教がしたくなった。
でも、ありがとう。少女はレオンに向かってお礼の言葉をつぶやく。
きっとこの子が、今はいない主の魂を運んで、自分にいい夢を見させてくれたのだ。
…それは、おそらくただの幻影だろう。彼女の願望が生んだ錯覚にすぎなかったろう。
しかし時として、真実より尊い虚構が、価値を許されることもあるのだった。

298雪解けの時25/31:2007/08/26(日) 00:31:00 ID:5RgYBWkA

それにしても、どうして再び目覚めたのだろうか。彼女は不思議に思った。
バランスを崩して倒れたあの時、ああ、これで自分は死ぬんだと感じたのに。
それがまだ生きて、しかも意識を保っているだなんて。
ひょっとして、実はとっくに死んでいて、今は冥土へ向かう道の途中なのかと思ったが…
「大人しくしていろ」
うつ伏せになっていて見えなかった背後に、
手が置かれている感触があるのを、ようやく彼女は察知した。

頭上から光の幕が舞い降りてくる。暖かい力が、流れこんでいた。
「ピサロさん…?これは…?」
「大人しくしろと言っている」
少女の体に注がれたのは、破壊や憎悪とは対極をゆく、心地よい癒しの力…

…それは、客観的に見れば、わずかばかりの延命行為でしかなかった。
まだ彼女は生きていたとはいえ、受けた傷はもはや致命的。
本来の世界ならばともかく、十分な回復効果を得ることのできないこの場所で、
いかにベホマの力をもってしても、彼女を再び立ち直らせることなどできようはずもない。

ピサロがしていることは所詮、亀裂の入った風船を膨らませるようなもので
溜めたはずの気は、すぐに虚無へと消えていく。
これからじわじわと死んでいく、その期間を長くしてやるだけでしかなかった。
しかし、当の治療を受けている本人には、そんな冷静な分析などできなかったし、
仮にできたとしても、そんなことはどうでもよかっただろう。
あのピサロさんが、全てを滅ぼすとまで言い切った、あの人が
自分のために魔力を減らしてまで手を施してくれている…

「暖かい…気持ちいい…嬉しい、です」
夢から醒めても、結局彼女は大粒の涙を流したのだった。

299雪解けの時26/31:2007/08/26(日) 00:32:04 ID:5RgYBWkA

(あ…?)
それは、随分久しぶりに思える、懐かしい浮遊感。
フォズの治療を済ませると―無理だと悟ったとも言う―ピサロは立ち上がり、
以前のように少女を抱きかかえて立ち上がる。つられてレオンも飛び乗った。
「…どこへ、行くのですか?これから」
焦点の定まらぬおぼろげな瞳で、フォズはピサロの顔を見つめようとした。

「まだ決めてはいない…お前ならばどう考える?」
「…珍しい。というより初めてですね。あなたが私にそんな意見を求めるなんて…」
「うるさい。せっかく聞いてやっているというのに」
迂闊にも失言をしてしまったことに、直後に気づいてピサロは軽く舌打ちした。
もはや残り時間の少ない者への、せめてもの情けのつもりだったのだが、
確かに『らしくもない』ことだった。
フォズにはそう感じたし、自分自身でも同じように思っているに違いなかった。

「…わかっています。お気遣いありがとうございます…でも、私はどこでもいいです。
 だって…一番来たかったところには、もう着いてしまいましたから」
フォズは柔らかく微笑んで、その頭を魔族の男の肩に預ける。
それもまた、らしくもなかった。
いつもなら気恥ずかしくてとても言えそうにもできそうにもないことが、今は自然にできた。

(ピサロさん…本当に、あなたはどこへ行くのでしょう?これから…)
ピサロの肩にもたれかかりながら、少女は考える。
ピサロ。冷徹な魔王という一面を持つ男。それは事実だ。しかしこれが全てでもないようだ。
魔の者とて、また今を生きる一つの命。悩むこともあれば、間違えることもある。
…でも、それでいいではないか。誰だって迷う。誰だって過ちを犯すもの。
答えは初めから決まってなどいない。皆戸惑い彷徨いながら、自らの道を選び、歩んでいく。
それが、『生きる』ということであり、それ故に命には価値があり、可能性があるのだから。

300雪解けの時27/31:2007/08/26(日) 00:33:05 ID:5RgYBWkA

この人、ピサロが選ぶ可能性…
全てを滅ぼす魔王になると、彼は言った。おそらくそれは嘘ではない。
少なくともその逆、全てを滅ぼしうる力など持ちたくないとなれば、はっきりと違う。
でも、フォズには何となくわかった気がする。とても面と向かっては言えないけれど、
自分自身でも理解しているか知れないけれど、この人が真になりたいと思っているもの。
それは、おそらく…

難問だった。彼にとってみれば、魔王になるよりも難しいことかもしれない。
少なくとも、現時点では完全に不可能なことだった。
それ故に、この人はこの後どうしてゆくのだろう。何に価値を見出して進むのだろうか。
気になった。気になって気になってたまらなかった。

これからも、今しばらくは、この危うすぎる人の行く末を見守っていきたいと思うけれど、
理不尽に奪われた大切な人の代わりに、傍で支えてあげられるのならばと願うけれど、
そのどちらも…私はもう、この人と共にあることはできない…と、わかっていた。
私にはもう祈ることしかできない。だから、せめて祈りたい。いつまでもいつまでも。
そう願った時、ふと少女の頭の中であの言葉が再びよみがえる。
彼女が信じた、信じていたかった、あの言葉が。


…生きとし生けるものの生き方、ここに表されし。
無限の可能性は各々違った形で自分自身に宿る…

魔物、人、生は平等なり。命は理解を深め、人は魔物にもなり、魔物は人にもなる。
人、いつか魔物の力を手に入れる。魔物も又等しくその可能性あり。
癒しの魔物、異世界の地にて、人と成る。
世界の勇者伝説を紡ぐ吟遊詩人となりて、また人々に語り伝える、その神話。
言うべきことは一つ。 誰にでも、何にでも未来は待っている…


『…ひとは、誰かになれる…』

301雪解けの時28/31:2007/08/26(日) 00:34:33 ID:5RgYBWkA

誰にでもあるはずの可能性を示す言葉…一度は否定してしまったその想い。
私は、誰にもなれないと思った。誰かになれる価値などないと感じていた。けれど。

(…私も、誰かになれたのかもしれません)
今は、そう思えた。

彼女がなれた誰か。それは、誰かを導く志を持った神官ではなく、
誰かの野望を阻む力を宿す勇者でもなく、
あるいは誰かを愛し、愛される女性でもなかった。
彼女がなれたのは…ただ、自分が出会った人々の行く末を案じて死んでいく、
いつかはやがて忘れ去られるはずの、名もない一人の少女だった。

強くもなければ立派でもない。傍から見れば、本当にちっぽけな、誰か。
それでも、フォズは嬉しかった。この不吉と不穏だけが全てを支配する世界の中で、
最期まで、誰も恨まず誰も憎まず、ただただ誰かの幸せだけを願って消えてゆける。
きっと、私は今、この上もなく、幸せなのでしょうね…
少女はかすかに微笑んだ、そして祈った。
私は死ぬ。だけど、私と共に生きてくれた人々は、僅かでも今もなおその命を繋いでいる。
それぞれの場所でそれぞれの思いを抱えて、痛んだ体と傷ついた心を抱いて…
苦しいだろう、辛いだろう。けれど、それでも前を向いてゆくのだろう、きっと。
だから、どうか。この得がたい想いをくれた人たちが、すぐにこちらへは来ないことを。
その生涯が豊かなものとなることを、心から、少女は祈った。

「私は…ピサロさん、私は…あなたを……わた、しは、あな、た、を………」

既に光が失われた両目から涙があふれ、
フォズの魂は窮まりのない闇の中に溶けていく。
大きく息を吐くと、その息吹とともに彼女の体内から生命の最期の煌きが零れ落ちた。
少女は静かに瞳を閉じて、ゆっくりとその頭を、自分を抱きかかえた男の胸の中にうずめる。

302雪解けの時29/31:2007/08/26(日) 00:35:46 ID:5RgYBWkA

私を…何だ?ピサロはかすかにしか聞こえなかった少女の呟きに耳を傾けていた。
しかし、声は二度と届かなかった。いくら時を待つことに費やしたとしても。
呼吸も鼓動も、ピサロを響かせるものは既に何もなかった。
そこにあったのは、ボロボロに朽ち果てて、
なのに何故か嬉しそうに微笑んで息絶えた、一人の少女の魂の痕跡でしかなかった。

二日目の朝。太陽の光がかすかに届く、薄暗いナジミの塔でのことであった。


「死んだのか……?」
ピサロが呟いた。反応はない。
少女の肩に乗っていたレオンがチロリと舌で今の主の頬を撫でたが、
幼い主人はもはや子蜥蜴に笑いかけてはくれなかった。
何度か同じことを繰り返した後、レオンは死者の顔を見つめて寂しげに小さく唸る…
(死んだのか?フォズ。私に殺されて、逝ったのか?お前は…)
何の誤解のしようもない。この娘は、間違いなく自分が殺したのだ。
(なのに何故、お前はそんなに安らかに眠っているのだ?
 自分を殺した者の腕に抱かれて、お前は…)
もはや答えを返しえないその小さな体を抱く腕に、自然と力がこもっていた。

愛しくなどなかった。かけがえのないものでもなかった。
だが、この胸によぎるものは何であろう…柄にもなく、後悔しているとでもいうのだろうか。
ばかげたことを、と一笑に付す気にはならなかった。
死した彼女の最後の忘れ物…この顔に残った安らかな微笑みが、
男の気持ちを和らげさせたのだろうか。かたくなな氷を、ゆっくりと溶かすように。
愛しくなどなかった。かけがえのないものでもなかった。
あるのはただ…虚しかった。

303雪解けの時30/31:2007/08/26(日) 00:37:26 ID:5RgYBWkA

『…私が…いるから……泣けない…あなたの…代わりに…私は、泣いて…います』

そんな莫迦なことを、人の悲しみを分かち合えると本気で思っていた娘はもういない。
代わりに流す者がいない涙がひとしずく、自身の頬を伝って流れて消えた。

…不甲斐ない。魔王として、あまりにも情けなさすぎる。私は生きるのだ。
自らの意志によって生き、滅びるとしても、それもまた己の意志によって。
何と言われようとも、ロザリーの命を奪ったあの輩どもを、やはり私は許さない。
野放しになどさせてはおかぬ。奴らには必ず誅罰を加えてみせる。
私は生きる。生きて、奴らの思惑をことごとく粉砕してみせるのだ。
私は、生きる…そうだ、奴等の掌で望んで踊ることなど、決してしない。

一陣の風が、男の中に降り積もっていた漆黒の雪を吹き飛ばす。
ピサロは決意を新たにした。その思い、それはすなわち、


―――今この時、ピサロの胸中で、この世界に来たときより、
    ここに至るまでずっと抱えていた、一時は完全に支配されつつあったはずの
    選択肢の一つが、完全に消えた―――


…そこに、もはやデスピサロの影はなかった。
あるのはただ、魔族の男と、命を失いし人間の少女。
喪主と死者だけの孤独な葬送行進が、静かに、しめやかに続いているだけだった…

304雪解けの時31/31:2007/08/26(日) 00:39:17 ID:5RgYBWkA
【E-3/ナジミの塔下部/朝〜午前】

【アレフ@DQ1勇者】
[状態]:HP1/4 MP1/3 背中に火傷(軽) 左足に刺傷(治療中) 疲労 全身打撲 足元がおぼつかない 気絶
[装備]:竜神王の剣 ロトの盾  はやてのリング 風のアミュレット
[道具]:鉄の杖 消え去り草 ルーシアのザック(神秘のビキニ) 奇跡の石
     神鳥の杖(煤塗れ) 鉄兜 ゴンの支給品一式 ルビスの守り アサシンダガー
[思考]:ローラ姫を探し、守る 「アレン」への疑惑

【エイト@DQ8主人公】
[状態]:HP1/3 MP1/2 左肩にダメージ 腹部と背中に打撃 火傷 疲労
[装備]:メタルキングの槍
[道具]:支給品一式 首輪 あぶないビスチェ
[思考]:仲間(トロデ・ローラ優先)を探し、守る  困惑しつつ今はアレフの介抱
     危機を参加者に伝える


【E-3/ナジミの塔上層部/朝〜午前】

【ピサロ@DQ4】
[状態]:HP5/8 MP2/3 軽度の全身打撲 中量の出血(既に止血)
[装備]:鎖鎌 闇の衣 炎の盾 無線インカム
[道具]:支給品一式(二人分) 首輪二個 
天罰の杖 アルスのトカゲ(レオン) ピサロメモ
[思考]:ロザリーの仇討ちとハーゴンの抹殺を完遂させる しかしゲームには乗らない

【フォズ@DQ7 死亡】
【残り11人】※まだ生存者が12人だった時なのでこの数です

305 ◆9Hui0gMWVQ:2007/08/26(日) 00:44:07 ID:5RgYBWkA
以上で投下終了です。どうもありがとうございました。
自分としては、この話が初めて人を死なせてしまう展開だったので
大分慎重に書いた感があります。慎重すぎて冗長になってしまった感もありますけど。
あと、「愚かなる戦士たちの輪舞」と似たような状況描写がありますが
既に文章力が枯渇しているものだと生暖かく理解していただければ幸いです。

ちょっと懺悔
アレンについて聞かされた時のアレフの反応が本編と180°違いますね。
それにしても何だかこのパート書くたびにアレフを痛めつけてる気がします。
ごめんアレフ、悪気があるわけじゃないんだ。

306ただ一匹の名無しだ:2007/08/26(日) 22:47:47 ID:Gx5rqjtI
没ネタは壮絶な展開が多いですね。全員生還させた書き手がまた違った展開を。
アレンの死体についてはもっと疑心暗鬼に繋がってもおかしくないと思いましたので共感しました。
下手したらエイトとアレフが二人そろって竜王ヌッコロスになってた可能性もあるし。

あとフォズの不死身っぷり(最終的に死んだけど)と、ピサロのツンデレっぷりに不覚にもワロタ。

307ただ一匹の名無しだ:2007/09/07(金) 21:22:17 ID:auQgXO8k
うわわわわわわわわわ
◆9Hui0gMWVQ さん、いつのまに!
すごいなぁ
私がこんな(人数)長文書いたら絶対混乱する
人物描写もいい
こんな没ss読めるなんて贅沢だなぁ

このBRのピサロは魔王から、段々と人間みたいになってくなぁ。
それもハーゴン様の予想の内なんだろうか。

308ただ一匹の名無しだ:2007/09/07(金) 21:23:52 ID:auQgXO8k
しまった。黒幕間違ったw

309ただ一匹の名無しだ:2008/02/15(金) 02:30:41 ID:ylh1lWdM
暇つぶしにもならない没ネタ投下するよー
時系列的には最新話のifって形になるのかな、一応。


〜〜〜


SHTエイト、目にも留まらぬ速さで突きの一撃をマルチェロの足元の残骸を攻撃。
残骸の爆発に乗じて、マルチェロは高く高く跳躍。
そのまま、目に見える生物全て―後方の4人も含む―に、皆殺しの波動を一閃。
その数は7。かまいたちの風の力が加わり、かなりの高速で仲間たちへと襲い掛かる。
キーファとアリスは自身への刃もひきつけつつ、後方の仲間たちのガードへ。
エイトはかすかに残る紫炎に包まれたまま、マルチェロと1対1のタイマンへ。
三局面に分かれての戦闘開始。

マリア&アレンのところへ向かったキーファは、受け流しや二刀を駆使してそれを退ける。
マリア、アレンのわだかまりが解けたらしいことを察して、そのままエイトの援護へとんぼ返り。
一方、トロデ&ファルシオンの救援に向かったアリスは、
隼の剣が柄しか残っていなかったことや、左腕の後遺症が作用して脇腹を大きく負傷してしまう。
トロデの心配を無視してファルシオンに乗せ、その場の離脱を指示。
王者のマントで傷を隠し、脂汗は気合で止めて、彼女もエイトvsマルチェロの援護へと向かう。

エイトvsマルチェロのタイマン。かつて4対1でも苦戦を強いられたマルチェロの力は大きい。
槍術だけではダメだと判断したエイトは、ゼシカ譲りの体術も戦法に組み込んでいく。
槍で薙ぎ、踏み込んで正拳。槍を置き、大防御。多彩な戦術を用いてマルチェロに肉薄する。
マルチェロはこの奇策に、若干対処が遅れる。戦況は五部に戻ったかに見えたが、
大防御の隙を縫い、防御で防げない急所――眼球を狙って剣を突き出したことで状況が一変。
「これで対等だな」
マルチェロと同じように、左目を思い切り刺し貫かれてしまう。
失明後何時間も経過し、遠近の感覚もある程度把握、さらに傷口もふさがっているマルチェロと、
失明直後で感覚が分からず、さらに傷からの激痛に精神を磨耗していくエイト。

大勢が決した――それと入れ違いに現れたのがキーファ。
エイトには後退と回復を指示し、キーファが前線へ。だが、やはりすぐに押され始めてしまう。
やや遅れて現場に到着したアリス、エイトが負傷し、キーファが押されている状況を見て即断。
「私が時間と隙を作ります。必ず作ります。――信じて待っていてください」
キーファがその場に残したザックから愛剣ロトの剣を取り出すと、即座に疾走。
エイトは自身の目を治療しながら、アリスの進路からぽたりと落ちた血液を気にしていた。

かまいたちにより弾き飛ばされ、気絶したキーファと代わり、マルチェロの相手をすることになったアリス。
愛剣の力、勇者の力、二つを駆使してたった一人でマルチェロを追い詰めていく。
隙を作らずともこのまま倒せるのではないか…そう思った矢先、脇腹の傷によってアリスの動きが鈍る。
見逃さないマルチェロ、すぐにアリスに剣を突き出し、それは的確にアリスの急所へと吸い込まれた。
「かかりましたね」
口から血を零しながら、ニヤリと笑ってアリスは呪文を紡いだ。
「――アストロン!」

皆殺しの剣を体内に残したまま、アリスは鉄火した。
剣を抜くことも、呪いで装備を外すこともできないマルチェロに、絶対的な隙が出来上がる。
一寸遅れて切り札・グランドクロスを放つ体制をとるが、もう遅い。
言葉を信じて「隙」を待ち続けていたエイトが、赤と白の涙を流してマルチェロに飛び掛り――

310ただ一匹の名無しだ:2008/02/15(金) 02:31:20 ID:ylh1lWdM
 〜〜〜


ルート1:
エイトの攻撃は、そのままマルチェロを一閃した。
しばらくして鉄化の解けたアリスは、そのまま地へと崩れ落ちる。
看取るのはエイト、キーファと、戦闘終了を見て合流したマリア&アレン。
アリスは、刺さったままの呪いの剣を抜刀することを拒む。
「どういう理由であれ、私は人を殺してしまいました。
 素直に天国へ行くことは、きっとできないでしょう。
 ならせめてこの呪いも、一緒に地獄へ連れて行きます」
最後にマリアの吹っ切れた表情を見、「もう大丈夫ですね」と微笑んだあと、アリスは事切れる。
伝説の勇者は、生誕したその町を模した地で静かに息を引き取ったのだった。

ルート2:
エイトの攻撃は、マルチェロではなく、皆殺しの剣を打ち砕いた。
呪いの剣を破砕したことで、マルチェロは糸の切れた人形のように気絶する。
エイトはマルチェロの様子に、ラプソーンの魔杖に支配された姿を重ねていた。
もし本当に、別の意思に支配されて殺人を肯定していたのなら、その元凶さえ断てば、彼は元に戻るハズ。
何よりエイトは、ククールの異母兄であり、顔見知りであるマルチェロを、もう一度信じたかったのだ。
きっとククールは、この地においても彼を救おうとしていたのだろうから。

同時に、アリスの鉄化も解ける。
「レックス君と同じように、望まぬ殺しを強要されていたのかもしれません。
 今、私の体にあるこの呪いなら、大切な親族さえ殺すように仕向けるのも容易だったでしょう」
アリスもまた、マルチェロへの救いを示して息を引き取る。
気絶したマルチェロ、目覚めた時にどう動くのだろうか――
皆殺しの剣の無いころから普通にハッサンたちとか襲ってたし、結局マーダーのままやろ?
それとも伸ばされた救いの手を受け入れ、まさかまさかの改心ルートに突入か?
――といったところで、引き。


 〜〜〜


・マルチェロマジでチート杉
・エイトさんは怪我無視し杉
・竜王マリアトロデが空気杉
・カガミのフラグぶち折り杉
などなど、どう見ても没ネタです、本当にありがとうございました。

311ただ一匹の名無しだ:2008/02/16(土) 11:50:17 ID:xohX/KKo
もうかなり昔の没ネタをマルチェロの死を契機に供養のため投下


「マリア、大丈夫か?」
「ええ……これしきのこと、へこたれてはいられませんわ」
キーファはマリアに気遣いの言葉を投げかける。
走るマリアの顔色は真っ青で冷や汗が流れ続けているのだ。
腹部の傷が完治していないのに無理な運動をしているのだから無理もない。
怪我が完治していないという点はキーファも同じだが肉体の強靭さと傷の箇所に差があった。
(どうする? マリアを休ませようかか? それとも安全な所に置いて……いや、ダメだ!)
もはやこの町に安全が保障される場所などないと言っていい。
一人になどさせてマリアが襲われでもしたら後悔どころの話ではなかった。
だが宿屋での爆音からすると戦闘が起こったことは間違いない。
あれから随分と時間もたってしまっている。急がねばならなかった。
「大丈夫です、キーファさん。自分の体のことは自分が良く知っていますわ……今は、急がないと」
マリアはニッコリとキーファに笑みを向ける。
だがキーファはその笑みに無理があることに気がついてしまっていた。
(逆に気を使わせてどうすんだよ、オレ!)
キーファは己を脳内で殴りつけると、前を向いた。
「ああ、宿はすぐそこだ。行こう!」
そして二人は路地を曲がり大通りを出たところで……同時に立ち止まった。
何故なら彼らの正面には青い僧服を半分以上紫に染めた男が同様に立ち止まっていたからだ。
「この方…「てめぇえェッ!!」
「チ、貴様ら…」
目の前の男はキーファたちを見て露骨に舌打ちをした。
キーファはその男を知っている。
忘れもしない、彼とは絶対に相容れない存在だった。
「マルチェロ! まさか宿の爆発はアンタのしわざか!!」
「マ……それではこの人がククールさんの仇!」
僧服の男、マルチェロは油断なく二人に対し半身に構えた。
「フッ だとしたらどうする?」
「テメ…「挑発です、乗らないで!」

312ただ一匹の名無しだ:2008/02/16(土) 11:50:53 ID:xohX/KKo
マリアの咄嗟の制止によって頭に血が上りかけたキーファはかろうじて落ち着きを取り戻す。
その様子をマルチェロは面白くなさそうに見ていた。
(く、マリアの方がよっぽど落ち着いてるな……オレももっとしっかりしなきゃ誰も守れやしない。
 それにしてもコイツ…)
よく見ると彼の服は以前あった時に比べ、いくつもの裂傷が増えていて、いくつか焼け焦げた箇所があった。
服が斑に紫色に染まっている部分があるがそれは出血によるものだろうと容易に推測できる。
彼は消耗している。だがそんなことよりもキーファの目を引いた部分があった。
彼の持つ剣の刀身。前回戦った時はその剣は中途で断ち折られ半分しかなかったはずだ。
だが今は三尺もあろうかという長身であり……完全に拭い切れていない真っ赤な血糊が付いていた。
「まさか……斬ったのか……宿にいた人たちを……」
「さて……」
「ふざけないで、答えなさい!」
マリアが威嚇するように手に持ついかずちの杖をマルチェロに向けて翳す。
キーファも抜剣し、構える。
両の掌に痛みが走ったが我慢できないほどではない。
これなら短時間ならば充分戦闘に耐えそうだった。
「フン」
マルチェロは小さく鼻を鳴らし何事か考えているようだ。

/

(さて、どうする?)
マルチェロは突然現れた窮地に対し冷静に対処しようとしていた。
今の自分は大きなダメージを引き摺っていてまともに戦闘が行える状態ではない。
魔力も幾分か残っているとはいえ、今後の回復を視野に入れると無駄に消費するわけにはいかなかった。
数時間前に教会の前でやりあったキーファという男は戦闘力はまぁまぁだが頭に血が上りやすい性格のため、
こちらが冷静になりさえすれば御しやすい。
だが初めて見る魔法使いとおもしき女性は中々にやっかいだ。
先ほどの挑発を見破って制止した手並みといい、戦闘における駆け引きは心得ているようだ。
加えて即席といえど剣士と魔法使いのコンビネーションを今のマルチェロが抗しきれるとは思えない。
(なんとか……せめて女の方だけでも分断することができれば勝機はあるのだが……)
考える時間は少ない。

313ただ一匹の名無しだ:2008/02/16(土) 11:51:28 ID:xohX/KKo
向こうにしてみれば面と向かって問いただすより彼を取り押さえてから尋問したほうが手っ取り早いのだ。
焦れた末に向こうの主導で戦端が開けばマルチェロの敗北の未来はほぼ確定する。
ならばどうすればいいのか。
彼は瞬時に計画を立て、実行した。
「ローラ姫、といったかなあのドレスの似合う金髪の女性は……それと……恰幅の良い旅商人風の男。
 トルネコ……だったか」
「「!」」
自分が斬った者たちの名前を名簿を見た時の記憶と照らし合わせながら口にしてみる。
軽く探りを入れたつもりだったがキーファとマリアはその名を聞いて面白いように反応した。
「その二人をどうした!?」
キーファの荒げる声を聞いてマルチェロは唇を歪める。
(なるほど、かなり縁深い者のようだな……それにむしろ女の方が動揺が深い。好都合だ……)
まさかローラがマリアの祖先などとは露にも知らないマルチェロだが冷静に状況を分析する。
マルチェロの推測どおり先の言葉で動揺が深かったのはむしろマリアの方だった。
一度会って短い話をしただけのキーファと違い、マリアはトルネコを仲間と認め合った仲なのだ。
加えてローラ姫は自分の祖。
その名がククールの仇であり、不穏の現状である相手の口から出されたのだ。
動揺しないわけがない。
マリアの顔は真っ青に染まり、手に掲げる杖が小刻みに震えた。
「斬った……が、見てもらえば解かると思うが私も手痛い反撃を受けてしまってね。
 どちらもとどめを刺すにはいたらなかった。今ならまだ生きているかも知れんな……」
嘘ではない。
ローラ姫の方は殺したと思うが、生死を確認する余裕はなかった。
それにトルネコの方も手ごたえはあったが、竜王が側にいたこともあり
治療さえ受けることができていれば生きている可能性はある。
その事がわかったのだろう、キーファとマリアは互いに視線を合わせ戸惑っているようだ。
これでどちらかが―― 叶うならマリア ――あるいは両者とも自分と戦うよりも
宿へ行くことを優先してくれれば儲けものである。
「マリア、先に宿へ向かってくれ! オレはこいつを仕留めてから行く!!」
「キーファさん!?」
期待通りの言葉に思わず笑みがこぼれそうになってしまう。
だがここは我慢しなければならない。

314ただ一匹の名無しだ:2008/02/16(土) 11:52:25 ID:xohX/KKo
相手にいらぬ警戒を与えては、思わぬ薮蛇を突付きかねないのだ。
慎重に慎重を重ね事を進めるのがマルチェロのスタンス。
皆殺しの剣から手を伝って不満の波動が流れ込んでくるが無視した。
胸の奥から沸きあがる殺戮衝動を鋼鉄の意志力で抑え込み様子をみる。
二人はこちらを警戒しながら議論を交わしている。

「待って下さい、これは私たちを分断するためのあの者の策略である可能性が……」
「だからってもし本当だったら後悔することになる!」
「ならばここは退いて二人で行きましょう!」
「駄目だ、あいつを野放しには出来ない! 早く、間に合わなくなるかも知れないんだぞ!」

強いキーファの語調にマリアは逡巡しているようだ。
そんな彼らを見ながらマルチェロはこの場での彼らの選択肢は3つあると考える。
1つ。二人でマルチェロを倒し、宿へ向かうこと。
2つ。二人でこの場を離脱し、宿へ向かうこと。
3つ。マルチェロと戦う者、宿へ向かう者と二手に別れること。
この中で彼らにとって最善であり、マルチェロが最も取って欲しくない行動は1つ目だ。
彼らは確実にマルチェロを倒すことができ、悠々と宿へ向かうことが出来る。
犠牲の少ない確実な策だ。
だがマルチェロを倒すための時間は宿で治療を待つ者がいた場合、深刻なロスとなってしまう。
もしも自分が彼らの立場だったならばそんな不確定要素を考慮に入れないため、迷うことなくこの選択をするだろう。
だが目の前のキーファという男はその不確定要素を切り捨てられない。
もしかしたら――助けられるかもしれない。
そんな思考に捕らわれて最も愚かな選択をしてしまう。
その選択とは言うまでもなく3つ目だ。
全てを救いたいなどと世迷言を言い賭けに出てしまう。
そしてこのタイプは得てして賭けに負けて全てを失う可能性を考えないからタチが悪い。
マルチェロの最も嫌いなタイプだった。
救う対象が宿にいることが確定的な情報ならば話も変わってはくるが、この場合は話が違う。
希望、希望、希望……反吐が出る。

315ただ一匹の名無しだ:2008/02/16(土) 11:53:17 ID:xohX/KKo
2つ目を提案したマリアという女は状況が良く見えている。
1つ目をキーファが受け入れないと判断し即座に妥協案を示した。
彼らにとって最善ではないが次善の策だ。
最もこの選択を取ってもらう事がマルチェロにとっては最善であるが。
だが1つ目の選択を彼らが捨てた今、どちらをとってもマルチェロに有利である。
彼らが2つ目を採り、戦闘が回避できるなら最善。
もし3つ目を採って二手に別れるとしても残るのは十中八九、キーファの方だろう。
彼の戦闘スタイルは先刻の戦いで見切っている。
キーファとの1対1ならばこの傷ついた状態であっても確実に勝利する自信がマルチェロにはあった。
宿にまだ生きている人間がいることを匂わせ、
マリアを、もしくは両方をこの場から離脱させることがマルチェロの計画。
「マリア、アリスが言っていたろう? もし勝てないようなら逃げるさ、だから……」
「本当、ですね?」
向こうも話が纏まったようだ。
結果は――マリアの敗北。
キーファの激情と時間的余裕がない状況に押し切られた妥協だ。
マルチェロは心の中で唇を斜に歪め笑った。

―― 計画通り。

咄嗟に考えたにしては面白いように上手くいった。
後は不自然にならないようにマリアを通すだけだが……そう思っているとマリアはザックから杖を取り出した。
「!」
マリアがその杖を振るうと、先端から光球が飛び出しマルチェロへと向かい来る。
だがその速度はけっして早いとは言えず、傷ついたマルチェロでも容易に回避することが出来た。
追撃を警戒してマリアたちを注視したその瞬間、マリアの姿が掻き消える。
「なんだと!?」
彼女の姿を探して周囲を見渡すと、突然背後から足音が聞こえてきた。
振り向くといつの間にかマルチェロの背後に回りこんでいたマリアが宿の方向に向かって駆け抜けていくところだった。
(瞬間移動!? まさか!)
マリアが使ったのは飛びつきの杖。だがマルチェロはそんなアイテムの存在など知らない。
未知の力を目の前にして意識がキーファから僅かに逸れた。

316ただ一匹の名無しだ:2008/02/16(土) 11:56:40 ID:xohX/KKo
風を裂く音が耳に触れ、マルチェロは咄嗟に地面に倒れこんだ。
一瞬前までマルチェロの心臓があった場所を銀の刃が通過する。
「不意打ちとは卑劣!」
「おまえが言うかよ!!」
マルチェロはそのまま地面を転がり、追撃の刺突を回避。
遠心力を利用してそのまま転がりおきる。



↑書きあがったのはここまで。↓からはその後の流れ。


結局キーファがアリスの言葉を引き合いに出し、マリアは消極的納得。
マリアは宿に向かい、キーファとマルチェロの一対一となる。
体力回復し、星降る腕輪をつけたキーファと満身創痍のマルチェロ。
マルチェロは終始押され気味だったが、キーファが必殺の一撃を繰り出した瞬間
狙い済ましたカウンターで逆転。
「君はすでにわたしの敵ではない」
倒れたキーファを横目に背を向ける。

宿に向かったマリアは血の臭気を嗅ぎ取り、警戒しながら宿を調べる。
二階にてベッドに安置されたローラとトルネコの遺体を発見し呆然となる。
傷はどちらも太刀傷。そこに竜王が現れた。
どこでなにをしていたと激昂しながら問うマリアに人間の礼として花を採りに行っていたという。
見ればアレンも慢心相違だった。
何故ふたりを守れなかったと激怒するマリアに沈黙するアレン。
マリアは毒瓶を床に投げ、自害しろと迫る。
ハーゴンが用意した薬、きっと竜種の王たるアレンにも効果はあると。
アレンは静かに毒瓶を拾い上げ、握りつぶした。
まだ死ぬわけにはいかない。
これだけの過失をしてまだ生にしがみつくのかとマリアは激昂し、杖でアレンを打ちつける。
何回も何回も打ち付け、その間アレンは全くの無抵抗。
何故抵抗しないという問いにも答えない。
アレンを殴り続けるマリアだが次第に力が弱まり、ついに殴るのを止め嗚咽する。
アレンが悪くないことは解かっていた。だが理解することを理性が拒否した。
憎悪の対象を求めていた。
アレンは謝罪し、すまぬ、それでも殺されるわけにはいかないと語る。
アレンはアレンの出来なかったことをやらねばならない。
もっとも真アレンなら救えたであろう者たちを救えない愚者だが、それでも諦めるわけにはいかない。
この名を名のった以上はアレンを辱めることはできない。
トルネコの言葉を、ククールの言葉を、アリスの言葉を、リアの言葉を思い出すマリア。
「これからおこることは幻です。終わったあと全て忘れるように…」
そしてアレンに背を向けさせるとそのローブに縋り付いて大声を上げて泣きはじめた。
マリアはようやく竜王を認め、和解。
大泣きするマリアにアレンは困った顔でじっとしているしかなかった。


というお話だったとさ。
キーファがいいとこなしだけど、まだ生きていて次につなげる予定ですた。

317ただ一匹の名無しだ:2008/02/16(土) 11:58:25 ID:xohX/KKo
あ、「太陽は輝き、命は沈む」の次くらいに入る感じで。

318sage:2008/04/29(火) 02:14:15 ID:IDHHPhw2
2編ともマルチェロ大活躍。
きっと良い供養?になったことでしょう。故人達のご冥福を祈ります。
>ylh1lWdMさん
バトルが沢山あるのは嬉しい。
この構想実現したら、どのくらいの分量にナッテタンデショウカ。
・・・恐ろしい。
>マルチェロマジでチート杉
>エイトさんは怪我無視し杉
>竜王マリアトロデが空気杉
行間の文章次第ですね。
説明的にならないよう文で補えばなんとかいけるかなーうむむ。
>カガミのフラグぶち折り杉
は、普通に無視すれば誰かが拾ってくれそうだ。

是非とも結末はルート2で!!!

>xohX/KKoさん
マルチェロが理性が強すぎて、怖さ 。
マルチェロの理性が強いままでいくならキーファが生きているのは難しいような。

後半の竜王とマリアがぁあぁぁぁ。マリアと竜王の場面のGJです!構想聞いただけで泣ける・・・。
この部分の文章を読んで見たかったな。


おふたりとも凄い。
短編書きとしては、ただただ敬意を払うばかりです。

319sage:2008/04/29(火) 02:14:47 ID:IDHHPhw2
.

320痛恨の一撃:2008/04/29(火) 02:15:34 ID:IDHHPhw2
押し間違えました・・・。

321 ◆I/xY3somzM:2011/10/29(土) 15:32:45 ID:???

血肉が舞う。
骨片が散る。
翼は捩じ切れ、飛膜が焼け落ちる。
破壊神の腕は足場から外れ、だらりと力無く垂れ下がった。


「はぁっ、はぁっ……!!」

泥混じりの汗がやけに粘っこく感じられた。
顎を伝って落ちるそれと共に、全身にずしりと伸し掛る疲労もついでに落ちないものか。
疲弊しきったアレフはそんな馬鹿げた希望を願っていた。

「……ふ……っ」

大きく息を一つ、口元の血を拭い去る。
そんな傷すら軽く見えるほど、皆等しく血を流し汗と泥に塗れ傷ついていた。
目の前の邪神を彼らは、渾身の力を以て打ち破ったのだ。
無傷で切り抜けられるわけもなく、この負傷は当然と言えた。
声を上げるひとかけらの英気すら、彼らには残されていない。

「くっ……ゴホッ!ゴホッ!」

せっかく拭った口元がまた赤く染まってしまった。
これでは歓喜の雄叫びすら上げられないではないか。

「また……か!」

違う。
真実は、もっと絶望に傾いている。

「奴は……」

戦闘はまだ、終わってなどいなかった。

破砕音と共に、動かぬ腕が跳ね上がる。
千切れかけた下顎が、血反吐と共に動き出す。
呼吸をするかように、自然な振る舞いで神は─

322 ◆I/xY3somzM:2011/10/29(土) 15:33:21 ID:???
*  *  *




時は遡る、大凡四半刻。
だが、彼らには、それが一日にも、一週間にも、一劫にすら感じられた。
そんな永遠のような戦いを続ける彼らを突き動かすもの。
意地。
義憤。
あるいは憎悪。
だが、それでもまだ足りないと言うのだろうか。
『神』に抗うその為には。



いまや身につけるのは簡素な旅装と伝説の剣盾のみ。
勇者アレフは吹き飛ばされた先に浮かぶ巨大な天井の破片を蹴り、とんぼをきって着地した。

「ぐっ……!!」

苦虫を千匹は噛み潰したかのように表情を歪め、アレフは歯を食いしばった。

先程炸裂したピサロ、マリア両名による最大級の重爆であるイオナズン。
魔法のエキスパートとも言える二人が力を一つにしただけのことはあり、破壊力は凄まじかった。
空間を捏ねたかのように歪ませ、世界の残骸を尽く揺るがす。
巻き込まれた破壊神の右半身が消失したことにまるで疑問は無い。
疑問に思えるとすればそれは一つ。

「うぁあ、っ!?」

その失われたはずの右腕で殴られそうなことだろうか。
轟音を上げ、破壊神の豪拳が迫る。
頭を持って行かれ、自分が夕食のトマトの残り滓のような姿になる、そんならしくない幻影まで目の前に浮かんだ。
代わりに鉄兜が紙屑のようにクシャクシャにされただけで、事なきを得る。
そして引換えに、奴の右手首に先祖から受け継いだ名剣をすれ違い様に振り切った。
豹より疾く傍を通り過ぎる腕。
その鱗の継ぎ目が見えたわけではない、だががむしゃらに繰り出した剣は正確に外皮を貫き、肉を断つ。
勇者の資質か、神の悪戯か。
破壊神の右腕を一本、まるで魚の身を下ろすかのように美しく断ち割った。
所謂『会心の一撃』と評されるものだろう。
〆に盛り上がった肩の筋肉ごと、上半分の腕がスパリと斬り落とされる。
完膚なきまでの一閃、その感想やいかに。

「くそったれ……!!」

答えは、そんな汚い悪態だった。
思わずそれが口を衝いて出る程の現実を、目の前に突きつけられからだ。
千切れ落ちて半分になったはずの、そう決して握れはしないはずの右手。
それを意に介すこともなく、もう一本の右手が振りかぶられる。
こちらを砕く気満々のその手が炎に包まれる。
魔に満ちたそれは、赤々と燃えていた。
そしてその下、炎に照らされるように何がしかが蠢く。
それは、破壊神の肩からぶらさがるもう一本の右腕。
今は確かに、骨と肉の集合体に過ぎないかもしれない。
だが、それは屍に群がる蛆のようにざわざわと蠢き、変形を繰り返し。

「……そりゃ……」

復元した。
そして、蘇ったばかりにもかかわらず、一対の右拳が今まさに固く握られ。

「反則だろ……ッ!!」

振るわれようとしていたのだ。
邪神の怒りが、そこに乗せられているのだろう。
雷よりも鋭く疾く、獄炎を撒き散らしながら迫る豪拳。
かわしきれない。
そう判断して構えたロトの盾が、轟音を上げて軋んだ。

323 ◆I/xY3somzM:2011/10/29(土) 15:34:52 ID:???
炎に包まれたそれは、幾つかの岩壁を貫きながらやがて足場の一つに着弾する。
隕石ではなく、それは勇者だった。
壁に叩きつけられた彼を、エイトは破壊神の向こうに見た。
あのまま意識を失えば、異空間に転がり出されかねない。

「アレフさんっ!!」

声が届いたかは定かでない。
だが彼が強靭な精神力で立て直し、そうして足場にしっかりと立ち上がるのを見て安堵する。

「……っ」

辺りを見回して破壊神を見下すことのできる、ゆらめく高所の足場に目をつける。
今しかない。
注意がそれている隙をつきエイトは、ひた走る。
そして足場を伝って破壊神を見下ろす位置まで駆け上がり、そのまま歩みを止めずに虚空へと跳んだ。

「つぁあーーーーっ!!」

さながら飛竜が滑空するかのように勢いにまかせ、急降下する。
構えた槍の穂先は下へ。
森羅万象全てを貫く白銀の流れ星となり、エイトは破壊神に襲いかかった。
全体重を乗せた槍は筋肉を裂き、血管を突き破る。
そしてその奥、骨の継ぎ目を正確に狙い突き当たった。
突き通された槍が破壊神の左肩の関節を一つ、そして二つとぶち抜き突破する。
やがて大人が通り抜けることができるくらいの傷を肩口に穿ちながら、エイトは地上へと降り立った。
低い唸りと共に、破壊神の左腕が二本とも下がる。
腕の自重に耐え切れなかったのだろうか、筋繊維がびちびちと音を立てて裂けていく。
砕けた骨を傷口から覗かせながら腕はやがて切断され、落ちたそれは背後で足場を揺るがした。

「……はぁぁ……ッ」

大きく一つ呼吸を行い、攻撃が成功したことを安堵する。
だが彼が立つのは破壊神の間合いの内側。
せいぜい、呼吸ひとつが静止限界だ。
一刻も早く攻撃範囲からの離脱を試みなければ。
かけ出しながらエイトは駆け出す。
そして振り向いた目の前には。

「!?」

落ちたはずの左腕は未だ繋がっていた。
だが違う。
『落ちたはずの左腕』はそのまま正しく落ちたまま。
だが破壊神の左腕はそこにあり、掌をこちらに向けている。
エイトが視界の隅で巨大な肉塊となった左腕二本がグズグズと爛れるように消えていくのを確認した。
その直後だった。
細かな紫電が破壊神の掌で炸裂し、彼に殺到したのは。

「う、あぐぁあぁぁっ!!」

魔法から自身を守る力の込められた盾を咄嗟に翳すが、さしたる意味も得られない。
極雷召喚、ジゴスパークの渦中に抵抗むなしく包まれる。
過ぎたる魔に灼かれた盾を取り落とし、エイトはそこに崩折れた。
周囲を金属が焼けるような鼻を突く臭いが包みこむ。
最後まで握られていた槍が、力なく転がった。
やがて用の済んだ地獄の雷を、『生えたばかりの』巨大な二本の手が握り潰す。
破壊神の両の翼が妖しく羽撃き、破壊神の双眸が紅く輝いた。



「いけません!」
「エイトさんがっ……!」

天を飛翔する、純白の天馬。
その背には二人の少女、マリアとフォズが眼下の恐怖を見下ろしていた。
立ち向かった彼らの力を疑う者などここには居ない。
だが、破壊神はそんな二人を一蹴した。
右と左の、両の手のみで。
底知れない神の力を感じ、彼女らはあらためて戦慄する。

「フォズさん、あなたはこのままアレフさんの回復に向かってください」
「!何を?」

324 ◆I/xY3somzM:2011/10/29(土) 15:35:39 ID:???
マリアが破壊神にほど近い足場に目を落としながら荷物を探る。
あちらこちらに散った戦火が、空気を熱し風無き世界に風を生んでいた。
ファルシオンの翼を、彼女らの法衣を、熱い上昇気流が煽る。
その風を孕み、マリアが取り出した蒼き布が大きく膨らんだ。
秘宝、風のマント。
風の精霊の力を秘め、一度纏えば主を大地の戒めより解放すると言われる逸品である。
ムーンブルクの地に伝わる伝説の魔具を、まさか破壊神との戦いで使うことになろうとは。
一度目の冒険では思いもしなかっただろうことだった。

「エイトさんは私に任せてください。気をつけて!」
「ま、マリアさんっ!」

マント一つをその身に纏ってファルシオンから下馬したマリア。
彼女の姿を驚いて目で追ったフォズは、彼女が鳥と化したのを目にした。
無論、マリアは変身魔法モシャスを使ったわけでも、神鳥の魂をその身に宿したわけでもない。
蒼き外套はこの世界に残された幾何かの風の力を支えに、マリアへ翼を授けたのだ。
破壊神のすぐ側を不釣合な程優雅に滑空し、ふわりとまるで重力を感じさせぬままエイトの眼前に舞い降りる。
それはまるで、女神の降臨のようだった、とエイトが平常であったならば表現しただろう。
この戦場に似つかわしくない、気品を持った戦姫であった。

「う、ぁ……」

意識はある。
火傷も、咄嗟の防御の為か重度のものではないようだ。
だが、盾を構えたであろう左腕はひどく電熱により焼け爛れている。
すぐさま回復呪文ベホマをかけ、一刻も早くここを離れなければならない。
ここは破壊神の膝元だ、一つの油断が自分を肉塊へと変えかねない。
詠唱を急ぐマリアの足元の影が、突如巨影に塗りつぶされた。

「!!」

破壊神の顎が砲門のように開かれ、こちらに向けられていた。
但し放たれるのは砲弾などでは無い。
一度吸えば体の自由を奪われる、猛毒の瘴気である。
エイトは小柄ではあってもマリアに背負える体格では無い。
身動きがとれない今、打撃、ないしは呪文よりも長らく大気に残留する猛毒、太炎などのほうが彼らには恐ろしかった。
濃密な毒が、破壊神の邪悪な表情を覆い隠す。
その向こうで笑っているような幻が見え、マリアは嫌悪の表情を浮かべた。

(エイトさんはまだ動かせない!!)

回復を中断し、バギの詠唱を始める。
聖風を発生させて瘴気をかき乱し、毒気を振り払うことに希望を見出す。
彼女ができる手立ては今、それしか無かった。

「バギッ!!」

マリアが杖を構えて呪文を完成させた。
巻き起こる小さな嵐が破壊神の瘴気と交わる。
が、足りない。
滝のように止め処なく湧き出る瘴気が、風を物ともせず空間を埋めつくしていく。
マリアが風を起こし続けても、これではいずれこの場が覆われてしまう。
こうなれば、猛毒を吸い込む覚悟でエイトの回復に臨むしか無いか、と続けていた詠唱を止めかけた。
そのとき、風がマリアの外套を巻き上げた。
違う、自分の手元からでは無い。
一体誰が─

「マリアさーん!」
「エイト、マリア!そこを離れてくれーっ!」

風の出所は天馬に跨る二人からだった。
翠の守りが、天罰を下す杖が。
聖なる風を後押ししたのだ。

「……!ベホマ!!」

感謝を述べたいが、今は立ち止まっていられない。
幾度もの癒しを受けたエイトが、ようやく眼を開く。
無意識だろうか、手探りで槍を探している様子を見るに、どうやら戦意は潰えていない。
左手の傷は深いものの、概ねの傷をなんとか塞ぎきる。

「立てますか、エイトさんっ……!」
「す、みませ……ぐッ」

引きつった笑みを見せるエイトはどうにか立ち上がった。
早く破壊神の攻撃範囲から離れなければ。
槍を抱えたエイトを、マリアは支えて走り出した。

(破壊神の攻撃が来る……!!)

二人の背中を確認した破壊神の掌が、ぼぅ、と妖しい光に包まれる。
それは空間を、魔力を、全てを喰らい破壊する神の力そのもの。
破壊神は四つの掌全てに、それを顕在させたのだ。
ギラリと狙う眼光が、その後の惨劇を伺わせる。
食らえば間違い無く消失させられる技だろう。
四つの手のうち一つが、大きく振りかぶられる。
再び破壊の宴を巻き起こす、かと思われた。

「ライデイィーーーーーンッ!」

蒼き電光が一つ、破壊の邪気を打ち砕く。
虚を突かれたのだろうか、破壊神の動きが一瞬硬直した。
続けざまに、残りの掌の光球が次々と打ち抜かれる。

「まだ、終わりじゃありませんよ……!!」

325 ◆I/xY3somzM:2011/10/29(土) 15:36:49 ID:???
呪文の主、勇者アリスが掌越しに不敵に笑んだ。
連なって放たれた稲妻がやがて破壊神の頭上に収束していく。
電撃呪文の完全なるコントロール、それが複数のライデインを合体させることに成功した。
ギガデイン並に膨れ上がったそれはまるで、雷神の鉄槌そのもの。
そしてそのまま間髪入れず、槌は振り下ろされた。
まるで巨大な雷の牢獄、その全身を包み込む。
直撃を受けた破壊神の仰け反ったその身が、引き攣るように震えていた。

「……覚悟ッ!!」

アリスの勇壮なる突撃は終わらない。
放たれた雷の後を追うように、自ずから剣を構えて破壊神の眼前まで跳躍したのだ。
振り下ろされたメタルキングの剣が縦一文字の閃光となり、蒼雷諸共破壊神の肉体に亀裂を入れる。

「とぁーーーッ!!」

長い長い斬撃が、地面への到達と共に終りを告げる。
否、まだ彼女の攻撃は終了していない。
着地と共に、剣を横に目一杯振り切る。
十文字を描く勇者の剣閃は、巨躯を拘束する雷の魔力の流れを乱した。
やがてその一撃を破壊神をも苦しませる荒れ狂う爆雷へと変え、炸裂させる。
離れた足場まで吹き飛ばされる姿を一瞥し、剣を天に構えた姿勢で眼光鋭くこう告げた。

「名付けて……『デイン・ブレイク』ッ!」

意図せずして完成した勇者の必殺技。
父から受け継いだ念願が今ここに完成した余韻に、アリスは僅かに酔い痴れる。
天から見守る父に叫びたい。
今の私、勇者としてまた一歩前進しました、と。

「……それは言わなければならんのか?」

一部始終を目撃していたアレンは責めるでも呆れるでもなく、ただ疑問を口にした。
例えば何らかの協力を必要とする技ならば名をつける意味はある。
だが今行われたのは完全なる個人技。
本人の意思でのみ行われる技に、何故アリスは命名をしたのだろう。

「もちろん、その方が勇者らしいですから」
「……」
死闘の最中であっても、満面の笑顔を絶やさぬスタンス。
それを彼女は崩さない。
アレンは頭を掻きながら、己のが宿敵の先祖だけはあるな、と独りごちた。


*  *  *







「くらえ……!」

アレンが破壊の鉄球を装備する。
竜の膂力を持って、さながら砲弾と見紛うように投擲した。
唸りを伴い、破壊の名を宿す鉄球が同じ名の邪神を強かに打ち据える。
教会の鐘なんかとは比べ物にならないほどの鈍重な音が大気を引っ叩いた。

「ちいっ」

だが宙を舞う身体を地に叩き落とすにはまだ足りない。
まるでメタルスライムを攻撃したときのような弾かれる感触がアレンに伝わった。
対して邪神は、鱗を、骨を砕いたその攻撃に動じた様子もない。
自分の腹に減り込む鉄球を押さえ込み、アレンと力比べでもする気だろうか。

「そうはさせませんよ!!」

走る、走る。
極太の鎖の上を、曲芸師も腰を抜かす速さでひた走る。
勇者アリスは勇敢にも破壊の鉄球の鎖を渡り、破壊神に辿り着くまでの橋としたのだ。

「はぁーーっ!」

腰だめに構えられたアリスの剣が、巨大な胸板を断ち割るべく横に振り抜かれた。
研ぎ澄まされた刃の閃きは、鋭さをより一層増す。
だが。

(!?堅いっ!)


またも手に届く、鉛より重たく鈍い感覚。
攻撃を重ねても、先程までのようなダメージが通らない。
これは、先程までの闇の衣での防御とはまた違っていた。

「……これは!」

アリスはこれを知っている。
魔王討伐の旅路で幾度も経験し、この恩恵を自ら味わったことすらあった。

326 ◆I/xY3somzM:2011/10/29(土) 15:38:00 ID:???

「防護強化呪文スクルト!これは、魔力の障壁が武器を押し戻しています!!」
「!彼奴め、呪文までもッ!!」

肉体に殺意の指針が残ったように、きっと破壊神には大神官ハーゴンの力が、知恵が残留しているのだ。
嘗てマリアが対峙した破壊神には無い脅威があるとしたら、そこだ。
過度な回復を行い隙を晒すこともなく、自己の強化に時間を注ぐことも適所で行うだろう。
力の使い方を誤りはしない。

「死して尚牙を向けるか、ハーゴンよ……!」

そう、これは彼の殺意。
もはや自らの仇であるマリアだけに留まらず、生きとし生ける全てへ向けられたぞっとするような感情。
嫌悪も顕なアレンが竜神王の剣へと装備を持ち替え、雷撃による攻撃へと転じる。
しかしそこに、新たな声による高らかな詠唱が響いた。

「鉄が錆びるように……崩れ落ちよ、ルカナン!!」

駆けつけたマリアが、スクルトと鏡合わせである守備減退の呪文を放つ。
破壊神の肉体を護る光が失われ、外皮がバリバリと音を立てて変質していくのが目に見えて解った。
アレフの剣が、エイトの槍が。
恐怖を削るように、削ぐように、斬り開いていく。

「ハーゴン……あなたの牙など届きはしないわ」

マリアが努めて冷静に、言い放つ。
彼女はまた少し、敗けることはできないと思いを強めた。
憎き仇の力により強まった破壊神に、敗北すること。
それはもはや、ハーゴンの執念が成す力に屈することに等しいのだから。



*  *  *


五人が繰り出す怒涛の攻撃と激しくぶつかり合い、邪神の身体は徐々に負傷していく。
先程までと同じく、肉体が脈動を始め、悍ましき再生が行われる。
少なくとも今までと同じ繰り返しが誰にも予想できた。
だが、破壊神の悲鳴がここで漸く響く。

「喰らえ……ッ!」

ピサロが、人間で言えば盆の窪の辺りであろうか。
プラチナソードを、装飾が光る柄すら減り込まんばかりに突き込んだ。
巨体を鎖鎌で絡めとり、片腕という不自由な身で懸命にしがみつきここまで這い上がったのだ。
二対の腕が、後頭部のピサロに伸びる。
その身を躍りだし、迷うこと無く彼は高空から飛び降りた。

「ここだァーーーーーッ!」
「!!」

ピサロの、張り裂けんばかりの叫びを合図とし、一同は駈け出した。
アレフとフォズにより伝えられた、最終作戦。
勿論練習などできはしない、一度限りの本番だ。
しかしそれはまるで奇跡のように、彼らの意思は一つに収束していた。

327 ◆I/xY3somzM:2011/10/29(土) 15:38:40 ID:???


*  *  *



(あの肉体、常に再生状態にあるわけでは無い。大きな損壊を認識したその瞬間から、急速に再生が開始されるようだ)
(だったらどうすればいい?ヤツを一撃で消し去らなきゃならないじゃあないか!)

邪神の行う肉体の再誕は、回復呪文、所謂ベホマを超越する能力があった。
人間や魔物肉体を癒すには充分であろう完全回復呪文。
彼らが仮にそれで邪神の肉体を癒すとすれば、何人もの術者が命を賭けて快復に力を尽くさなければならないだろう。
神という巨大な存在を押し込めるための肉体もまた、人間の肉体をあらゆる点で超越しているのだ。
超越─そう。

(落ち着け。……邪神に"意思"が芽生え"策"を身につけた。
 故に、『微細な負傷は無視』され『動作に不都合になった時点』から合理的な考えに基づき、超速再生は準備されるのだ)

超越した肉体に宿るのは、神と並べれば矮小な"人"の知恵。
そこに生まれる、歪で、ちぐはぐな、肉体と思念のズレによる僅かなひずみ。

(そこを突く)



*  *  *

「!」
「今かっ……!!」

(限界まで、邪神の動きを阻害する程の負傷を与えるな……奴の肉体に『亀裂を与える』ようにやれ)

エイトとアリスが、破壊神の背に周り込みながら呪文を紡ぎ出す。
アレンもまた剣を取り、二人の後に続いた。

(そしてその亀裂を大規模呪文か何かの一撃で『繋げろ』。勇者、適役は解るはずだ)

マリアもまたひた走り、詠唱を始める。
すべてを砕く、破壊の鉄槌を打ち下ろすべく。
アレフはまるで姫を守る勇者のように、マリアの前を往く。

『……光の、裁きを!』

先んじて飛び出した、エイトとアリスの詠唱が最も早く完成した。
だが、先ほどのピサロの策がある以上、破壊神の行動は負傷による制限をされていない。
つまりそれは反撃を受けるリスクを背負うということ。
呪文をその手にしたまま、無防備な彼らを守らなければ作戦の成功はありえない。

「真空……波ッ!!!」

防風が幾千の礫のように、破壊神の外皮を叩いた。
未だ落ちゆくピサロの放った足止めだ。
風の大群に翻弄されるように、破壊神は体勢を大きく崩す。

「ぐわッ!?」
そのとき、予想外の声に全員の眼が見開かれた。
空を掻いたと思われた破壊神の手に、アレンの身体が拘束されたのだ。
この状態で手を捻れば、誇り高き竜王の身体もあっというまにぺしゃんこにされかねない。
そして、この作戦の一端を担う彼が囚われた─それは無論、危機である。

328 ◆I/xY3somzM:2011/10/29(土) 15:39:56 ID:???

「く、竜王ッ!」
「アレン……!」

アレフ、マリアが接近を試みる。
予定とは違うが、この鉄槌は竜王を拘束する手に放たれるよう狙いを変えた。
作戦の鍵の一本。
宝剣による雷を彼は所持しているのだから。
宿敵の名を呼ぶ勇者に、孤竜が返した答え、それは。

「うおッ!?」

アレフの胸に何がしかが投擲された。
それは殺意も敵意もない、託されたのは─

『行ケ、勇者!!』

竜王アレンの荷物全て、そして口から覗くのは竜の宝剣。
頭の自信はそうないアレフにも、察することはできる。
両者の意思は、まるで運命だったかのようにピタリと繋がった。
振り返る王女は、二人の全てを察し、大きく頷く。
その顔が愛しき姫を思わせ、覚悟を確固たるものへと変える。
剣を引き抜き、足元に荷物を投げ出し、勇者は今一度、姫の元から遠ざかる。
そこに別れは生まれないと、信じて駆けた。

『……ヌゥゥゥゥウッ!』

宿敵の行動を認めた竜王の身体がみるみる肥大化し、邪神の腕を食い破る。
今一度魔を束ねる王としての姿に立ち代わり、彼は大きく吼えた。
そして目配せをする。
恋しき姫が、彼の自由を確かめ、そして。
それを合図に破壊の槌が打ち込まれた。

「イオナズンーーーーーっ!!」



*  *  *


黒煙が肉体から立ち上る。
炭化した四肢が、ボロボロと朽ちて落ちていく。
王女マリアの最強の呪文が炸裂し、破壊神の肉体を一気に崩壊へと導いたのだ。
用を成さなくなった翼の残骸が動きを止め、ゆらりと破壊神の身体が傾く。
もがれた手足をばたつかせることも、今となってはできはしない。
見上げねばならなかった邪神の姿が、下へと立ち消えるように落下を始めた。
風を切り落ちてゆく肉体は、幾つもの足場を瓦礫へと変えていく。
そうして何度目かの衝突で、ようやく崩れぬ足場と出会えたようだ。
伸ばす手足も半ば無い今、尾のみを伸ばした黒焦げの破壊神は、うつ伏せの形をとるように寝そべった。
それは皆にとっての遙か眼下、しかし放置しておけば傷ついた邪神は幻のようにいなくなる。
このままでいれば、満身創痍を健在な姿へと着飾り、再び邪悪な姿を現してしまう。
そう、このままでいれば。


「正義のッ!!」
「……勇気の」
「覇者の─」

勇者はそれを許すだろうか。
巨大な邪悪をあと一押し、ほんの一握りの力さえ届けば、滅することができる。
それが、遙か彼方であろうと。
先の見えぬ暗闇の奥であろうと。
諦めない。
手が届かないくらいが、何だ。

勇者の意思は、魂は。
世界を、次元をも超えて届くと……誰もが信じている。

『雷ッ!!!』

白雷が、蒼雷が、そして遅れて黄金の雷が。
勇者の手から思いを連れて、宙へと向けて放たれる。
ギガデインの輝きが、今一度収束したのだ。
刹那の攻防故、未だ自由落下の真っ最中のピサロは、昼のような輝きを見せる魔法を見て思わず口を開く。
奇妙な偶然の末に出来上がった最強の雷─その、真の姿を目の当たりにした過去があるのは、今この場で彼だけだった。

「ミナデイン……!!」

爆雷は凝縮し、太陽のような球体となる。
そしてはるか真下の邪神を消し去る槍と化し─落ちた。





このあと何人か死ぬところでした。
よかったですリレーしてもらえて。

329 ◆BP.r.jLCXc:2012/01/02(月) 12:19:09 ID:???




それは、決戦のさなか
ある一つの、さまようたましいの思念

破壊神と7人の戦士たちが対峙し
幼き大神官が杖を掲げ、やみのころもを暴き
散っていった数多くの魂に導きを示した、その時に。


光りへ還ることも、抗い闇に堕ちることもなかった一つの魂があった。


絶望に果て握りつぶされた命が
ああ、確かに他の人間たちと同じだけのこの命が、
もはや鼓動を打つことはない筈のこの命が、揺り動かされるような気がした。


――そうか
――私の願いは
――果たされようとしているのか


戦士たちはその魂を知らない
唯一過去に関わりのあった王女も、その魂には気付かない


――欠片たちは集い、鍵は揃えられた


魂は確信した
かつて崇めた破壊の神が、今ここで潰えること
勝利は彼らの手の中にあることを


――さいごの鍵を手に入れた勇者に――開けぬ扉はないのだから――


なにかが魂を満たしていく。
微笑に似たわずかな気配を残して、魂は消え去った。







***
構想だけあったのを手早く文章化
オリキャラだけど好きだったぜアピール。自己満です

いやしかし改めて完結おめでとうございます!
◆I/xY3somzMさん本当にお疲れ様でした!

330ただ一匹の名無しだ:2012/04/13(金) 00:56:16 ID:???0
フフフ…まさかのエイト1話退場で
どうにかしてミーティア姫と合流したエイト、彼女を守るために獅子奮迅の戦いぶりを見せるが
目の前でミーティアが死亡してしまい静かに狂うステルスマーダー化という展開が没になりますた!

参加者の把握と現状をチェックしながら構想練ってた結果がギロチンだよ!!/(^o^)\

331ただ一匹の名無しだ:2012/04/13(金) 16:30:13 ID:???0
リアにGPS[おうじょのあい」を渡して、東に移動させようとしていたら進行方向にジャミラスがきたー
もだもだ回避策を練っていたら期限切れ+予約が入ったので新作に期待しつつ、話のネタだけここに埋葬します。

332ただ一匹の名無しだ:2012/08/12(日) 00:43:37 ID:???0
全話感想なるものに挑んでいたのですが
書き切る目処が立たなくなったので、とりあえず登場話までの感想を投下しときます
少しでも支援になれば嬉しいです


「破壊の宴」
実は本編投下が始まってから初めて見たんだけど、1stとはまた切り口が違って面白かったなぁ

「somebody to love」
第一話から壮絶すぎてびっくりしたwwフローラは前回とは違いひたむきにリュカラブだけど、不幸ぶりは相変わらずかも。ローラ姫の出てきかたが素敵

「話を聞かない男、地図の読めない女」
ぶれないテリーが新鮮。対象的なコンビの良さが、タイトルにも現れてる気がする

「人が好いのも困りものです」
ドルちゃんは杖ないとただの人だから、現時点ではどちらにも取れそう。そして始まるともえなげ伝説

「守護神」
デボラは強くて賢くていい姉だったんだろうな。ゴーレムがなんかカワユス。全部引きちぎるバラモスがすごい。

「牢獄の番人」
ギュネイ将軍vs勇者ロトとかかっこよすぎる。それをさくっと終わらせるキラマの怖さがもう

「scissors and foolish」
行動方針『たたかう』はまさに破壊神を破壊した男って感じ。影の騎士はどことなく愛嬌があるなぁ

「逆転遊戯」
使命に忠実な対主催ハーゴンとかかっこよすぎる。それを適度に茶化しつつ引っ張るソフィアとはいいコンビ。

「her style」
リッカは自分にしかできないことがあるって、ちゃんとわかってる女の子ですよね

「空を想う」
守るべき勇者とは別の勇者に出会うシンシアのお話、クロスオーバーのロマンが…。そういや彼女にはピサロって完全に敵だよなー

「Eternal promise」
DQ2にこんな解釈があったなんて目から鱗。OPに出てきたちょっとひねくれた感じのカインがこうなるとは

「希望を胸に、すべてを終わらせる時」
タイトルと一行目で盛大に吹いた。ホンダラのキャラが美味しすぎる。温泉最高

「あなたしか見えない」
チャモロの死をがっつり悼む仲間がいてよかった。じいちゃんかっけーと思ってたらまさかの危険人物でびっくり

「幸せは歩いてこないなら」
余談だけど、エイトが見ちゃったかもしれないバーバラのアレは白がいいよと言う意見

「少女A」
既に出てるもょもとカインがあれならあきなもまたねじくれてるわけで。マーニャの衝撃が伝わってくる

333ただ一匹の名無しだ:2012/08/12(日) 00:45:27 ID:???0
登場話感想2/3

「それを捨てるなんてとんでもない」
嫁落ちしたにも関わらずひたむきなビアンカが可愛い。このアレフにギルダーを思ったのは自分だけじゃないはず

「傭兵求む」
あんなにかっこよかった曾孫がまさかのギャグ担当に。ふしタンはいい支給品だったと思う

「I'll be back」
最強レベルの戦闘狂が鉢合わせ。カーラは女賢者にあるまじき凶悪さ。キーファは不運としか言いようがない

「彼女の胸は最強である」
いろんな意味で安定のゼシカだった。そして今回の竜ちゃんはやたら可愛い

「女主人と勘違い?」
親父の設定がいいなあ。違う世界のルイーダとのコンビも記憶喪失であればこそ生きる。今回壮年(?)キャラが少ないので期待

「最強の矛 最強の盾」
ツメ装備アリーナにメタ盾持ちのパラディン9主とか最強ww単純明快で好きなコンビ。頭の悪さはともかく

「美しい花が一つ」
まさかのミレーユマーダー。ククールとは共に見せしめで仲間を失ってたんだな。このピエールは出会いによってはかなり活躍した気がする

「義侠」
正義に燃えるヤンガス。兄貴に深い信頼を置いていたことが伺える。描写からしてきっと人情MAX?

「えっちなのはいけないと思います」
1stの某お色気回を彷彿するタイトル。ミネアがしっかりエロ装備担当でごちそうさまです

「Ma Cherie, Mon Ami」
ピサロのキャラは女子供がいるほど揺れ動く気がして面白い。ミーティアがローラとはまた違った押しの良さがあっていいな

「よく似た他人を追え!」
アルスサンディコンビはバランスいいなぁ。そしてグラコスとジャミラスのコンビが楽しいww短い中に四魔王の個性が見事に描かれている

「夢で逢えたら」
ロト戦闘狂パーティが見事に確定。師匠も強かったが彼女はその上をいっていた。夢を見ているという設定がこの先どう生きるか楽しみ

「鳥か? 飛行機か? いや――――」
カインは出逢いに恵まれている。アイラは今のところ唯一の銃持ちなんだな。DQ1のドラゴンは毎回色んなキャラになってて楽しい

「「Win⇔Win」?」
リアが進化し始めた…。計算高いジャミラスがリアを連れて行くというのが面白い組み合わせになったと思う

「Shot Gun Touch」
こっちもリンリンの怖さがヒートアップしていくなあ。テリーマリベルは戦闘時のコンビネーションも良いよね

334ただ一匹の名無しだ:2012/08/12(日) 00:47:35 ID:???0
登場話感想3/3

「王女と魔王と天使さま」
好きだった登場話。ムドーに愛嬌を感じる日が来るなんて。エルギオスががっつり対主催なのも嬉しい

「彼らの手札の使い方」
おっちゃん△。8組はキャラが安定してていいなぁ。ピサロは扱いが難しそうなキャラだが、信頼を勝ち取るヤンガスとミーティアがすごい

「王子達の落日」
ロッシュがひたすらかっこいい。『ラブアンドピース』なんて、このロワでは特に輝くなぁ。にしてもドラゴン極めたミレーユが怖い…



見落としあったらすみません
こうして見返してみて、やっぱり2ndは全体的に、
異色な設定と取り合わせが面白いんだなと思ったりしました
これからもがんばってください

335 ◆t1zr8vDCP6:2012/10/11(木) 20:44:26 ID:???0
放送が来たので没話投下するよー
現在絶好調のホンダラさん登場話だよー

336無題 ◆t1zr8vDCP6:2012/10/11(木) 20:45:51 ID:???0

ホンダラは混乱していた。

一体何なんだ! 意味が分からない!
いきなり見知らぬ土地に投げ出されて、武器を持って殺し合えだって?
冗談じゃない! なんで、おれなんだ!?

わけのわからない広間にいた者の中には、屈強そうな戦士達がごろごろいた。
戦いや争いに好んで関わりたがる連中。いわゆる荒くれ者って奴らだ。
おれはそんなんじゃない!
大体、武器を振るうだとか、そんなのは野蛮な連中のすることだし、第一、おれは平和主義者なんだ。
ただ毎日を穏やかに過ごし、楽をして生きる。それがおれのポリシーってやつなわけで。
なのに……。

チクショウ、どうしたらいいんだ!

地図を見ればこの場所は孤島らしい。逃げる場所は無い。
誰かに会えば殺される。そして死んじまう。あの荒くれ者どもに。嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ!
ならばどうすりゃいい? ずっとどこかで身を潜めて誰にも見つからないようにするのか?
でも、首輪。そうだ。
この物騒な爆弾がそれを許してくれない。禁止エリアとやらにいれば爆発する!
そしたら死んじまう――嫌だ! おれはもっと生きたい!!

冷や汗が額からにじみ顎へと滴り落ちる。ガクガクと体が震える。
今にも背後から暗殺者が飛びかかってくるんじゃないか?
野蛮な刀だの斧だのを振りかぶって、ザクザクと斬りつけて、おれを血まみれにするんじゃないか?
真っ赤な自分の体を想像し、ホンダラは蒼くなった。――嫌だ嫌だ嫌だ!!

「後ろ――は嫌だ。敵に背を見せるなんて。したら、殺されるんだ――!」

先ほどから何度も飲みこんでいる生唾を、もう一度飲みこんだ。
ここから少し行けば岩山があるらしい。方角をしっかり確認して、コソコソと走り出す。
岩山を背にしていれば少なくとも後ろから襲われることはなくなる。とりあえず、そこまで行こう。
ホンダラはとにかくこの不安な思考から逃げ出したかった。

「この辺りは暗いな……木が多くて……その方が見つからずにすむのか……」

なんとか道なりに進んでいくと、暗がりに岩肌が見えた。
もう少し奥まで行った方が隠れるスペースも広いのだろうが、無事目標にたどり着けた安堵感がホンダラの足を止めてしまった。
だいぶ嫌な汗をかいた。とにかく、一息つきたかった。

「少しだけ……少しだけ休もう。それからどうするか――」

考えないと。

337無題 ◆t1zr8vDCP6:2012/10/11(木) 20:46:13 ID:???0

ホンダラはしかしどうにも心細かった。辿り着いた岩肌を背に、ぜえぜえと自分のつく息の音だけがしている。

一人は、怖い。
あの広場にはアルスやマリベルもいた。彼らがよく引き連れていた小僧や女の姿もあった気がする。
あいつらは一体どうするんだろう。殺し合う、のか? なかよく冒険だなんだとはしゃいでいたオトモダチ同士だったのに?

――手を、組む?

そうか。そういう手段もある、のか? 誰も一対一で戦わなきゃならないという決まりはない。
凶悪な殺人鬼があらわれたら協力してやっつけるなんてことがあるのかもしれない。
その後どうなるかなんてことはともかくとして、ひとまず誰かと助け合うことができるのなら、それはかなりの安心材料になる。
けれど、あいつらは? もしあいつらに会えたとして、快くおれを受け入れてくれる、なんて、期待して、いいのだろうか?

そう、ホンダラは確かに平和主義者(※ただし自分だけがそうであればいいという注釈付きの)だったけれども、
自分がエスタード島随一の鼻つまみ者だと思われていることも正しく理解していた。

――ダメ、だ。あいつらはきっと仲間にしてくれない。

あいつらは魔物と戦ったりだなんだとえらく物騒なことをしていたらしい。
だからこんな異様な事態にもうまく立ち回ってみせるのかもしれない。
けどそんな奴らからしたら、自分などただの足手まといだ。命を賭けて守ってくれるわけがない。
誰だって死にたくないんだ!
それに、あいつらがおれを見る呆れた視線だって、覚えている。
そんなものはいつか見返してやるんだとせせら笑っていたけれど、それはまあ、ともかく。

なら、どうする?
やるしか、ないのか? 自分から、殺され、る、前に――?

ガタガタと震える手でまだ確かめていなかった「ふくろ」の中のアイテムを探ろうとした時、
「――うわああああ?!?!?!」
岩だと思っていた背後の『それ』が動きだした!



【E-4/岩山のそば/朝】

 【ホンダラ@DQ7】
 [状態]:情緒不安定
 [装備]:なし
 [道具]:不明(支給品一式)
 [思考]:どうしていいかわからない

 【ゴーレム@DQ1】
 [状態]:正常
 [装備]:不明
 [道具]:不明
 [思考]:不明

339ただ一匹の名無しだ:2012/11/13(火) 23:01:13 ID:???0
てす

340 光の中に消え去った : 光の中に消え去った 
 光の中に消え去った 

341 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:26:43 ID:???0

御中|∀・)<ダレモイナイ ガイデン トウカ スルナラ イマノウチ

342 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:27:34 ID:???0
**********

昔、まだ人々が『勇者』という存在に夢と希望を抱いていた頃の時代。

 勇者の血を引く三人の王族が、彼の地に伝説を刻まんと過酷な旅を続けていた。
 その物語は偉大なる祖先たちと並び、永劫語り継がれるであろう物語。
 しかし、吟遊詩人たちがどれだけ美しい詩と音色で飾ろうとも
 真実というものは何時だって冷淡で残酷なのである。

 今宵語りまするは、三人の勇者たちの物語。
 勇者ロトに連なる、この地にはびこる闇を振り払った3つ目の物語。

 一人は、勇者ロトの生まれ変わりと讃えられた膂力の王子。
 一人は、その力を仲間を民を家族を護る為に尽くした優しき王子。
 一人は、全ての魔術を英知に刻みし美しき亡国の姫。
 その三人の邂逅の物語。

 そんな極まり文句から、この叙事詩は語られる。

343 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:28:22 ID:???0
 **********

 ざぶざぶざぶ

 僕らは今、毒の沼地の真っ只中にいる。
 土と水と動物や魔物の腐肉が混ざった汚泥が体中にねっとりと絡みつき自由を奪う。
 吐瀉物と排泄物と腐った卵を絶妙な対比でブレンドしたような香りで意識を失いそうになる。
 一歩一歩進むごとに、確実に命が削り取られていくのが、嫌というほど実感できる。
 通りすがりの旅人が、男二人で毒の沼に胸までどっぷり浸かっている光景なんか目撃したら
 自殺志願者か何かだと勘違いするのだろうけど、別に今ここで死にたいわけじゃない。決して。
 ここには、すべての真実を映し出すといわれている神器『ラーの鏡』が眠っている…はずなんだ。
 
 大神官ハーゴン率いる邪教団に滅ぼされた王国ムーンブルク。僕やもょもとの国とは姉妹国でもある。
 思えばムーンブルク滅亡の知らせこそが、僕と もょもと を打倒ハーゴンの旅へと向かわせた発端だったけ。
 廃墟と化した王城へ立ち寄った際、王女『あきな』は存命しており
 ハーゴンの呪いで犬の姿に変えられてしまっているとう情報を入手した。
 さらに探索を進めていると、生き残りの兵士がいて、彼からラーの鏡の在り処の情報を聞き出し今に至る。
 泥の沼地に手を突っ込んで泥を掻き出しドブさらい。時にゴーグルをつけて潜ってみたり
 よく死なないなと我ながら思う。人間って案外頑丈にできているもんなんだなぁ。
 
 ムーンブルクの王女 あきな は100年に一度の魔術の天才と噂されている。
 歩くより先に杖を持ち、言葉を覚えるよりも早く真空呪文を唱えたとかバカみたいに誇張された話まである程だ。
 もょもとは魔法が使えない。僕も一応呪文は使えるけど回復か補助ばかりだ。
 今のところは順調に進んでいるけど、いずれ僕の呪文も、もょもとの剣も通用しない魔物に遭遇する可能性もある。
 そんな時に彼女の呪文は大きな戦力になる、仲間にして損は無い。そう考えたんだ。

 そういえば最後に彼女の姿を見たのは何時だったっけ?
 彼女が15歳になる誕生記念だったかに、サマルトリアとローレシアに肖像画が送られて来た事があったっけ。
 輝くような金髪と楽しげにクルクルと渦巻く髪の毛がリアに似ていて、やっぱり同じ血が流れているんだと思った。
 リアも将来あんな感じの美人になるのかと思うと、自然と口元が緩んだっけ。
 (その数日後に肖像画が忽然と消えてしまったんだけど、多分リアが勘違いしてヤキモチを焼いたんだと思う)
 うん、アレは絵だ。生身の彼女ではないけど、彼女と会う時の手がかりになるだろう。
 幼い頃に一度、三国の親睦を深める為のお披露目会があった気がするけど、正直、よく覚えてない。
 国家交流とか、そういう事情を察するには幼すぎる年齢だったからだろうし、興味も無かったのかもしれない。 
 ただ、その日を境に、父上の僕に対する態度が一変したのだけは覚えている。
 今思えば、両国の王の『うちの子自慢』が聞くに堪えなかったのだろうね。

 「あったぞ」
 過去の回想に耽っていたら、もょもと の声が聞こえた。相変わらず1ミリも感情が籠っていない淡々とした声だ。
 その両手には毒々しい紫色の泥に塗れた丸くて大きな塊…もといラーの鏡が握られていた。
 ―少しずつ泥が滴り、わずかに見える装飾と刻まれた魔術文字というのは情報と一致する形状だし
  何より泥まみれの僕が僕を見つめていた。鏡の向こうの僕は、僕を見て悲しそうに嗤っているような気がした―

344 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:30:08 ID:???0
 **********
 
 あの日以来、すべてを失ってしまった。
 敬愛していた父も、善良だった民達も、大好きだったマリーゴールドの庭園も何もかも。

 ムーンブルクは平和だった。穏やかな気候に恵まれ飢えることも無く、友好的な国家関係で争い事も無かった。
 父は温厚で誠実な人物だった。
 頻繁に領土視察を行っては、作物はどう育つのか、物流の仕組みはどうであるか、根にあるものの大切さを説き
 必要以上の税は取らず、慎ましやかなで、故に民からの信頼も厚かった。
 民たちも私を愛してくれたし、私も民とムーンブルクという国を愛していたし、永劫の平和を疑わなかった。 

 それを、あの男が、ハーゴンが彼が率いる魔物たちが、すべてを壊してしまった。
 血と炎と黒煙で赤黒く穢される白亜の城、魔物に引き裂かれる近衛兵達、食い散らかされた民の手足や内臓
 鳴り止まない轟音と悲鳴と断末魔、そして私をかばって生きながらにして焼き焦がされる父王。
 この世のものとは思えない生き地獄を目の当たりにした私は、父の名を叫び…そのまま気を失ってしまった。
 あぁ、私も魔物たちに嬲り殺されてしまうのだ。遠ざかる意識の中でそう思った。

 しかし、私の生き地獄はまだまだ続いた。

 次に目を覚ました瞬間、やけに空が高く感じたのを覚えている。
 目を傷めたのだろうか?色がぼやけて…いくつかの色が欠けて見える。
 焼け焦げた建物と死体の匂いで鼻がねじ曲がりそうだった…。
 立ち上がろうと両足に力を入れるが上手く力が入らず、ガクリと崩れ落ちてしまう。
 腰が抜けてしまっているのだろう、まるで立ち始めの赤ん坊のようだ、と我ながら呆れてしまった。
 床に付きっぱなしの手に力を入れる。腰から足があがらず、またも床に突っ伏してしまう。
 …おかしい。明らかに変だ。立ち上がりたくても立てない。体調がおかしいとかではなく
 体の構造がおかしい…?どういうこと?
 いう事を聞かない体を引き摺るようにして、用水路へと近づく。そして自分の姿を映してみる。

 私の姿は人間ではなかった。一匹の犬だった。 

 何日も野を駆け、森を彷徨い歩いた。
 慣れない犬の視野、解らない色。異様に発達した耳が、鼻が、掴み取る、獣達の荒い息が、死臭が
 見知った土地を『異界』へと変貌させる。人間であった頃の感覚が失われていくのが解る。
 それでも私の足を歩ませたもの。それは大神官ハーゴンへの憎悪では無かった。
 『生きたい』『こんなところで死にたくない』
 自分のすぐ後ろまで迫る『死』への恐怖に支配されていた。
  
 辿り着いたムーンペタにも『希望』など無かった。
 野外とは違い、雨風を防げるという優位点はあった。しかし、そこも野外とは違う『地獄』に過ぎなかった。
 心優しい子供から施しを受けることもあったが、所詮はすぐに飽きられ、そっぽを向かれた。
 飢えを凌ぐ為に雨水を啜り残飯を漁る事に抵抗が無くなるのに三日も経たなかった
 動物嫌いな人から理不尽な暴力を受けたこともある。雪のような白い毛並みは赤い花が咲いた。
 野良犬に襲われたこともある。暴力的な意味でも…貞操的な意味でも。  
 この時、初めて大神官ハーゴンと邪教団を憎いと思った。いっそのこと殺してくれた方が楽だった。
 それ以上に、我が身可愛さのあまり、父の事も国の事も民の事も忘れていた自分を恥じた。憎んだ。
 明日への夢も希望も無く、死ぬことも出来ずに過ごす日々が淡々と続いた。ただ ただ 淡々と。

345 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:30:26 ID:???0










 ゆめをみた。ひさしぶりの ゆめだった。

 ちいさいころ まだ おかあさまが いきていらっしゃったころの ゆめだ。

おとうさま と おかあさま は ほかの おくに の おうさま と たのしそうに おはなし していた。

 わたしは とおえん の おうじさま ふたり と あそんでいた。とっても たのしかった。
 










なつかしい においが する

346 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:32:39 ID:???0
 **********

 あきな は 泣いていた。

 ムーンペタの街に訪れたときから、おれたちに懐いていた犬にラーの鏡を使ってみたら、あきな だった。
 おれには解らなかったけど、カインがそうだと言ったので、そうなんだろう。
 最初は しばらく ぽかんとしていた。そして、思い切り、大声をあげて泣きじゃくった。
 泣きながら、「ありがとう」といって頭を下げていた。何度も、何度も「ありがとう」といっていた。泣きながら。
 
 小さいころ、乳母とさんぽをした。
 ちがう方向へ行きたかったので手を引いたら、そのまま引きずってしまった。体中すりむきながら乳母は泣いた。
       ・・
 勉強の時間にのびをした。後ろにいた先生の鼻にこぶしが当たって、先生の鼻がひん曲がった。
 鼻のよこから折れた骨が見えて血がでていた。鼻を押さえながらわぁわぁと泣いた。

 父上から言われて剣を教わった。指南役の兵士と手合わせをした。
 言われた通りにやっただけだが、兵士はうずくまって、うめき声をあげながら泣いていた。

 ムーンブルクから死にかけの兵士がやってきた。ムーンブルクは魔物に攻め込まれて滅びたらしい。
 それを告げると兵士は死んでしまった。女官たちはすすり泣いていた。

 大神官ハーゴンが魔物を集めて世界をめちゃくちゃにしようとしているらしい。
 ローレシアの国民たちは、みんな不安げにしていた。

 ひとは、痛いときに、苦しいときに、不安なときに、悲しいときに泣くんだな、と思った。

 あきな は どうして泣いているんだ?
 おれは「ありがとう」とは、だれかに感謝するときにつかえ、と教わった。
 あきな は 痛いのか?苦しいのか?不安なのか?悲しいのか?

 ムーンペタで宿をとった。
 夕飯を食べて、風呂に入って、部屋で一息ついた。あきな も おちついたようだった。
 だから、きいてみた。

347 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:33:40 ID:???0

 「あきな は どうしてあの時泣いたんだ?」
 「え?」

 カインが「君は何をいっているんだ?」と言って来たけどきにしない。

 「元に戻った時に怪我でもしたのか?どこか痛かったのか?苦しかったか?
 不安なことでもあるのか?悲しかったのか?」
 「…女の子にデリカシーの無い事を聞くんじゃないよ、もょもと」

 カインが眉を眉間によせている。なにか変なことを聞いただろうか?

 「…全部よ」
 「え?」
 「痛かったから泣いたの。苦しかったから泣いたの。不安だったから泣いたの。悲しかったから泣いたの。」

 そうなのか。全部なのか、辛かったんだな、あきな。
 あきな は もう一度、泣いていた

 「そうか。辛かったのか」
 「えぇ、辛かった。とっても辛かったわ…。でもね…それ以上に、嬉しかったの。
 優しかったお父様も、国のみんなも、何もかも失ってしまったのだもの。私だけ生き延びてしまったのだもの。
 犬にされてしまったのだもの。犬になっても…それでも人間の部分は残っていたのだもの!!

 狼や野犬に食べられてしまいそうになったこともあったし狩人の仕掛けた罠で足を怪我した事もあった!!
 残飯を漁ったり泥水を啜ったりもしたわ!!
 そんな風に過ごしているうちに、心まで犬になりかけていたのかもしれない。
 私、自分が誰であるかすら忘れかけていた。いっそのこと全部忘れてしまえば楽だった…。
 …楽だったのに、ひとつだけ忘れられない事があったの」

 もう十数年前になる三国の親睦会。おれたちが初めて出会った日だそうだ。
 あきな は 同い年のお友達が出来てうれしかったと語っていた。
 おれは剣の相手がいなくて退屈だったのを覚えているけどな。
 カインは、そんなこともあったね、と懐かしそうにうなづいていた。二人ともよく覚えているな。

348 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:34:22 ID:???0

 「自分が誰であったか、殆ど忘れかけていた頃に、その時の夢をよく見たの。
  そして、懐かしい匂いがしたから駆け寄ってみたら…貴方たちを見つけたの。
  二人とも、大きくなっていたけど、あの頃の面影が残っていたから、すぐに判ったわ。

  最初はね、気が付いて欲しくて、必死になって追いかけて、擦り寄ったりしたの。
  何度も挑戦する内に、『私は犬だもの、気が付いてくれるはず無いな』って、途中で諦めてしまったの。
  貴方たちがハーゴン討伐の旅をしていることは噂で聞いていた。
  こんな姿の私は何の力にもなれないし、みんなの仇討ちなんて絶対無理に決まってるって。
  それでも、貴方たちの傍にいると、自分が自分であった記憶と意識を鮮明に保つことが出来たから
  貴方たちは、いつかまた旅に出てしまうだろうけど、その間だけでも傍に居させて欲しかったの…」

 あきな は あきらめていたのか。

 「元の姿に戻れるなんて…貴方たちに気づいてもらえるなんて思ってもいなかったから
  今まで、痛かった分だけ、苦しかった分だけ、不安だった分だけ、悲しかった分だけ、辛かった分だけ
  …いいえ、それを全部足しても全部足りないくらい…『嬉しかった』から…」

 今まで下を向いていた あきな が 顔をあげた。
 あの時のように泣いていた。あの時とは違い笑っていた。とてもとても幸せそうだった。

 「本当に…本当に、ありがとう…もょもと!カイン!」


 「だから、何で あきな は 泣いてるんだ?」
 「『嬉しいとき』にも涙は流れるものなの」

 あきな は おれに、嬉しくても人は泣くのだと教えてくれた。
 あきな が おれに、ありがとうを教えてくれた。

349 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:34:54 ID:???0
 **********

 「なぁ、カイン」
 「なんだい?もょもと」
 「人は、うれしい時にも泣くんだな」
 「そうだね」
 「カインは泣いたことあるか?うれしい時に」
 「………まぁね、リアに手作りの誕生日プレゼント貰った時とか」
 「そうなのか」
 「そんなもんだよ」
 「いいな」
 「ん?」
 「おれは無い、そういうの」
 「………ふーん」
 「カイン」
 「ん?」
 「もし、ハーゴンをたおしたら…ローレシアのみんな、泣くか?」
 「…そりゃ世界を破壊しようとしてる危ないカルト連中だもの
  ローレシアどころか世界中の人が感激して泣くんじゃないかな」
 「そうか」
 「そうだよ」

350 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:35:41 ID:???0
 **********

 (…そりゃ、ローレシアの皆は泣くだろうさね。
  厄介者が更に厄介になって帰ってきた、って…)

 もょもと が寝付いたのを確認して、カインは唇だけ動かした。声は出なかった。
 隣国ローレシアの王子の噂はカインの耳にも嫌になるほど入ってきた。
 一般的には勇者ロトの生まれ変わりと謳われる程の名将だと。
 『恐ろしい膂力を持った破壊の申し子』という噂は父や特権階級の者から聞いた。
 いや、否が応でも聞かざるを得なかった。

 「ローレシアの王子の件は鋼鉄の巨人をも粉砕するらしい」
 「ムーンブルクの王女の英知は勇者ロトと旅をした賢者に勝ると言われている」

 「それなのにお前は何だ?」「全く、ウチの王子ときたら」「なさけない」
 「叩いても伸びないし、磨いても光らない」「何のための英才教育?」
 「剣も魔法も二人に劣る」「何をしても中途半端だ」「ロトの血の持ち腐れだ」

 聞こえるはずのない、父の、国民の罵声と嘲笑がカインの頭の中に鳴り響く。

 「あぁ!まったく、もぅ!!」

 それを揉み消すかのように、頭を滅茶苦茶に掻き毟る。
 サマルトリアから出れば、違う世界が開けるかもしれない。最初はそう期待していた。
 いつの日か城を抜け出し、妹のリアと新天地を探して、二人きりで穏やかに暮らしたい。
 幼いころから抱いていた二人のささやかな夢がかなうかもしれない、と。

351 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:36:24 ID:???0
 でも、所詮、夢は夢で。現実は何処までいっても現実で。
 もょもと と 二人で様々な土地を巡り、様々な村へ赴き、人々と出会った。

 しかし、どこまで行っても勇者の血は勇者の血で。

 人々は邪教団に怯えるあまりに、ロトの伝説にあやかろうと無責任な加護を求めてくる。

 自分と妹の安息の地は未だに見つかっていない。

 仮に、自分たちの名が知られていない場所があったとしても
 大神官ハーゴンを討ち取った後はどうなるだろうか?そうもいかないだろう。

 自分たちはリアルタイムで世界の歴史に名を刻んでしまう。

 遠い山奥で世を捨てて暮らす聖なる仙人レベルの世捨て人でもない限りは

 「おぉ ゆうしゃ さま」と勝手に拝んでくるに違いない。

 (その前に、倒せるかどうか、だけどね)

 ベッドに横たわる美しい亡国の王女を見つめる。

 (あきな も 悲劇のヒロインの自分に酔っちゃって…)

 あの時、彼女は『貴方たちに気づいてもらえるなんて思ってもいなかった』と言った。
 『貴方たちの事をずっと信じて待っていた』とは言わなかった。

 (つまり、ハナっから信用されて無かったってことですか)

 過度な期待はしていない。自分にも他人にも。
 戦力的にも、この糞みたいなくだらない旅がスムーズに進んで
 少しでも早く妹が待つ場所へ帰りたいだけだ。

 祖国に帰りたい、なんて口が裂けても言えるものか。
 ただ、自分と妹の居場所が、世界中にあそこしかないだけだ。
 例えどんなに罵声を浴びせられようと、蔑みの目で見られようと、あそこしか…。

 「…ふぁぁ。もう寝なきゃ不味いな。明日も早いんだし…」

 サマルトリアの王子カインは乱暴に毛布を被り、必死に羊の数を数えた。

352 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:37:11 ID:???0
 **********








  繰り返そう。

 【真実】というものは何時、如何なる時代であれ、如何なる世界においても

  最も冷淡で最も残酷な存在なのである、と。



                                  〜了〜

353 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:40:34 ID:???0

後書き

DQロワ2ndの、もょもとの最期とカインの成長にみwなwぎwっwてwきwてwきwたwwwwww
勢いで思いつくままに書いた。文法とか滅茶苦茶なうえ、視点が変わりまくりんぐで
読み難さがマッハだと思う。

だが私はオンドゥルルラギッタンディスカァー(0w0;)悪いのは全部ディケイドです

354 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 22:57:21 ID:???0
さっそくですが、>>342訂正お願いします(てへぺろ

**********

 遥か遠い昔、まだ人々が『勇者』という存在に夢と希望を抱いていた頃の時代。

 勇者の血を引く三人の王族が、彼の地に伝説を刻まんと過酷な旅を続けていた。
 その物語は偉大なる祖先たちと並び、永劫語り継がれるであろう物語。
 しかし、吟遊詩人たちがどれだけ美しい詩と音色で飾ろうとも
 真実というものは何時だって冷淡で残酷なのである。

 今宵語りまするは、三人の勇者たちの物語。
 勇者ロトに連なる、この地にはびこる闇を振り払った3つ目の物語。

 一人は、勇者ロトの生まれ変わりと讃えられた膂力の王子。
 一人は、その力を仲間を民を家族を護る為に尽くした優しき王子。
 一人は、全ての魔術を英知に刻みし美しき亡国の姫。
 その三人の邂逅の物語。

 そんな極まり文句から、この叙事詩は語られる。

355 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/18(月) 23:02:14 ID:???0
あ、
極まり文句→×、決まり文句

356ただ一匹の名無しだ:2013/03/18(月) 23:13:48 ID:???0
うおおおおおおおおお
なんて熱い外伝なんだ、投下乙です!!
「なんとなくこんなことがあったんだろうな」と想像していた部分を
ばっちり形にしてくれてうれしい
「ありがとう」のエピソードもいいなあ

357 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/19(火) 00:25:39 ID:???0
どんどん誤字を発見して恥ずかしさのあまり首ドブシャしたい。
機会があれば訂正版うpするかもしれません。

あと、書いていてカイン覚醒の真の理由がわかりました。
カイン、あなたロッシュと 道 化 装 い 策 士 キ ャ ラ が被ってるのよ…

358ただ一匹の名無しだ:2013/03/19(火) 22:46:35 ID:???0
投下乙です! 素晴らしい外伝だ!
もょもとは地の文までもょもとらしくて…w
気になるのはあきなの肖像画…どうなっちゃったんだろうw

359 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/19(火) 22:54:47 ID:???0
>>358

たぶん バラバラ に くだけちって いるんじゃないかな?

360 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/20(水) 10:22:05 ID:???0

ウォンチュウ|∀・)<ダレモイナイ 加筆訂正クワエタ カ>>342-352 トウカ スルナラ イマノウチ

361真実〜冷淡で残酷なるもの〜:2013/03/20(水) 10:25:07 ID:???0
 **********

 遥か遠い昔、まだ人々が『勇者』という存在に夢と希望を抱いていた時代。

 勇者の血を引く三人の王族が、彼の地に伝説を刻まんと過酷な旅を続けていた。
 その物語は偉大なる祖先たちと並び、永劫語り継がれるであろう物語。
 しかし、吟遊詩人たちがどれだけ美しい詩と音色で飾ろうとも
 真実というものは何時だって冷淡で残酷なのである。

 今宵語りまするは、三人の勇者たちの物語。
 勇者ロトに連なる、この地にはびこる闇を振り払った3つ目の物語。

 一人は、勇者ロトの生まれ変わりと讃えられた膂力の王子。
 一人は、その力を仲間を民を家族を護る為に尽くした優しき王子。
 一人は、全ての魔術を英知に刻みし美しき亡国の姫。
 その三人の邂逅の物語。

362真実〜冷淡で残酷なるもの〜:2013/03/20(水) 10:26:04 ID:???0
 **********

 ざぶざぶざぶ

 僕らは今、毒の沼地の真っ只中にいる。

 土と水と動物や魔物の腐肉が混ざった汚泥が体中にねっとりと絡みつき自由を奪う。
 吐瀉物と排泄物と腐った卵を絶妙な対比でブレンドしたような香りで意識を失いそうになる。
 一歩一歩進むごとに、確実に命が削り取られていくのが、嫌というほど実感できる。

 通りすがりの旅人が、男二人で毒の沼に胸までどっぷり浸かっている光景なんか目撃したら
 自殺志願者か何かだと勘違いするのだろうけど、別に今ここで死にたいわけじゃない。決して。
 ここには、すべての真実を映し出すといわれている神器『ラーの鏡』が眠っている…はずなんだ。
 
 大神官ハーゴン率いる邪教団に滅ぼされた王国ムーンブルク。僕やもょもとの国とは姉妹国でもある。
 思えばムーンブルク滅亡の知らせこそが、僕と もょもと を打倒ハーゴンの旅へと向かわせた発端だったけ。

 廃墟と化した王城へ立ち寄った際、王女『あきな』は存命しており
 ハーゴンの呪いで犬の姿に変えられてしまっているとう情報を入手した。
 さらに探索を進めていると、生き残りの兵士がいて、彼からラーの鏡の在り処の情報を聞き出し今に至る。
 泥の沼地に手を突っ込んで泥を掻き出しドブさらい。時にゴーグルをつけて潜ってみたり
 よく死なないなと我ながら思う。人間って案外頑丈にできているもんなんだなぁ。
 
 ムーンブルクの王女 あきな は100年に一度の魔術の天才と噂されている。
 歩くより先に杖を持ち、言葉を覚えるよりも早く真空呪文を唱えたとかバカみたいに誇張された話まである程だ。
 もょもとは魔法が使えない。僕も一応呪文は使えるけど回復か補助ばかりだ。
 今のところは順調に進んでいるけど、いずれ僕の呪文も、もょもとの剣も通用しない魔物に遭遇する可能性もある。
 そんな時に彼女の呪文は大きな戦力になる、仲間にして損は無い。そう考えたんだ。

 そういえば最後に彼女の姿を見たのは何時だったっけ?
 彼女が15歳になる誕生記念だったかに、サマルトリアとローレシアに肖像画が送られて来た事があったっけ。
 輝くような金髪と楽しげにクルクルと渦巻く髪の毛がリアに似ていて、やっぱり同じ血が流れているんだと思った。
 リアも将来あんな感じの美人になるのかと思うと、自然と口元が緩んだっけ。
 (その数日後に肖像画が忽然と消えてしまったんだけど、多分リアが勘違いしてヤキモチを焼いたんだと思う)

 うん、アレは絵だ。生身の彼女ではないけど、彼女と会う時の手がかりになるだろう。
 幼い頃に一度、三国の親睦を深める為のお披露目会があった気がするけど、正直、よく覚えてない。
 国家交流とか、そういう事情を察するには幼すぎる年齢だったからだろうし、興味も無かったのかもしれない。 
 ただ、その日を境に、父上の僕に対する態度が一変したのだけは覚えている。
 今思えば、両国の王の『うちの子自慢』が聞くに堪えなかったのだろうね。

 「あったぞ」

 過去の回想に耽っていたら、もょもと の声が聞こえた。相変わらず1ミリも感情が籠っていない淡々とした声だ。
 その両手には毒々しい紫色の泥に塗れた丸くて大きな塊…もといラーの鏡が握られていた。

 ―少しずつ泥が滴り、わずかに見える装飾と刻まれた魔術文字というのは情報と一致する形状だし
  何より泥まみれの僕が僕を見つめていた。鏡の向こうの僕は、僕を見て悲しそうに嗤っているような気がした―

363ただ一匹の名無しだ:2013/03/20(水) 10:26:52 ID:???0
 **********
 
 あの日以来、すべてを失ってしまった。
 敬愛していた父も、善良だった民達も、大好きだったマリーゴールドの庭園も何もかも。

 ムーンブルクは平和だった。穏やかな気候に恵まれ飢えることも無く、友好的な国家関係で争い事も無かった。
 父は温厚で誠実な人物だった。
 頻繁に領土視察を行っては、作物はどう育つのか、物流の仕組みはどうであるか、根にあるものの大切さを説き
 必要以上の税は取らず、慎ましやかなで、故に民からの信頼も厚かった。
 民たちも私を愛してくれたし、私も民とムーンブルクという国を愛していたし、永劫の平和を疑わなかった。 

 それを、あの男が、ハーゴンが彼が率いる魔物たちが、すべてを壊してしまった。
 血と炎と黒煙で赤黒く穢される白亜の城、魔物に引き裂かれる近衛兵達、食い散らかされた民の手足や内臓
 鳴り止まない轟音と悲鳴と断末魔、そして私をかばって生きながらにして焼き焦がされる父王。
 この世のものとは思えない生き地獄を目の当たりにした私は、父の名を叫び…そのまま気を失ってしまった。
 あぁ、私も魔物たちに嬲り殺されてしまうのだ。遠ざかる意識の中でそう思った。

 しかし、私の生き地獄はまだまだ続いた。

 次に目を覚ました瞬間、やけに空が高く感じたのを覚えている。
 目を傷めたのだろうか?色がぼやけて…いくつかの色が欠けて見える。
 焼け焦げた建物と死体の匂いで鼻がねじ曲がりそうだった…。

 立ち上がろうと両足に力を入れるが上手く力が入らず、ガクリと崩れ落ちてしまう。
 腰が抜けてしまっているのだろう、まるで立ち始めの赤ん坊のようだ、と我ながら呆れてしまった。
 床に付きっぱなしの手に力を入れる。腰から足があがらず、またも床に突っ伏してしまう。
 …おかしい。明らかに変だ。立ち上がりたくても立てない。体調がおかしいとかではなく
 体の構造がおかしい…?どういうこと?
 いう事を聞かない体を引き摺るようにして、用水路へと近づく。そして自分の姿を映してみる。

 私の姿は人間ではなかった。一匹の犬だった。 

 何日も野を駆け、森を彷徨い歩いた。
 慣れない犬の視野、解らない色。異様に発達した耳が、鼻が、掴み取る、獣達の荒い息が、死臭が
 見知った土地を『異界』へと変貌させる。人間であった頃の感覚が失われていくのが解る。
 それでも私の足を歩ませたもの。それは大神官ハーゴンへの憎悪では無かった。
 『生きたい』『こんなところで死にたくない』
 自分のすぐ後ろまで迫る『死』への恐怖に支配されていた。
  
 辿り着いたムーンペタにも『希望』など無かった。
 野外とは違い、雨風を防げるという優位点はあった。しかし、そこも野外とは違う『地獄』に過ぎなかった。
 心優しい子供から施しを受けることもあったが、所詮はすぐに飽きられ、そっぽを向かれた。
 飢えを凌ぐ為に雨水を啜り残飯を漁る事に抵抗が無くなるのに三日も経たなかった
 動物嫌いな人から理不尽な暴力を受けたこともある。雪のような白い毛並みは赤い花が咲いた。
 野良犬に襲われたこともある。暴力的な意味でも…貞操的な意味でも。  

 この時、初めて大神官ハーゴンと邪教団を憎いと思った。いっそのこと殺してくれた方が楽だった。
 それ以上に、我が身可愛さのあまり、父の事も国の事も民の事も忘れていた自分を恥じた。憎んだ。
 明日への夢も希望も無く、死ぬことも出来ずに過ごす日々が淡々と続いた。ただ ただ 淡々と。

364真実〜冷淡で残酷なるもの〜:2013/03/20(水) 10:27:26 ID:???0










 ゆめをみた。ひさしぶりの ゆめだった。

 ちいさいころ まだ おかあさまが いきていらっしゃったころの ゆめだ。

 おとうさま と おかあさま は ほかの おくに の おうさま と たのしそうに おはなし していた。

 わたしは とおえん の おうじさま ふたり と あそんでいた。とっても たのしかった。
 










 なつかしい においが する

365真実〜冷淡で残酷なるもの〜:2013/03/20(水) 10:28:25 ID:???0
 **********

 あきな は 泣いていた。

 ムーンペタの街に訪れたときから、おれたちに懐いていた犬にラーの鏡を使ってみたら、あきな だった。
 おれには解らなかったけど、カインがそうだと言ったので、そうなんだろう。
 最初は しばらく ぽかんとしていた。そして、思い切り、大声をあげて泣きじゃくった。
 泣きながら、「ありがとう」といって頭を下げていた。何度も、何度も「ありがとう」といっていた。泣きながら。
 
 小さいころ、乳母とさんぽをした。
 ちがう方向へ行きたかったので手を引いたら、そのまま引きずってしまった。体中すりむきながら乳母は泣いた。
       
 勉強の時間に伸びをした。後ろにいた先生の鼻にこぶしが当たって、先生の鼻がひん曲がった。
 鼻のよこから折れた骨が見えて血がでていた。鼻を押さえながらわぁわぁと泣いた。

 父上から言われて剣を教わった。指南役の兵士と手合わせをした。
 言われた通りにやっただけだが、兵士はうずくまって、うめき声をあげながら泣いていた。

 ムーンブルクから死にかけの兵士がやってきた。ムーンブルクは魔物に攻め込まれて滅びたらしい。
 それを告げると兵士は死んでしまった。女官たちはすすり泣いていた。

 大神官ハーゴンが魔物を集めて世界をめちゃくちゃにしようとしているらしい。
 ローレシアの国民たちは、みんな不安げにしていた。

 ひとは、痛いときに、苦しいときに、不安なときに、悲しいときに泣くんだな、と思った。

 あきな は どうして泣いているんだ?
 おれは「ありがとう」とは、だれかに感謝するときにつかえ、と教わった。
 あきな は 痛いのか?苦しいのか?不安なのか?悲しいのか?

 ムーンペタで宿をとった。
 夕飯を食べて、風呂に入って、部屋で一息ついた。あきな も おちついたようだった。
 だから、きいてみた。

366真実〜冷淡で残酷なるもの〜:2013/03/20(水) 10:32:31 ID:???0

 「あきな は どうしてあの時泣いたんだ?」
 「え?」

 カインが「君は何をいっているんだ?」と言ってきたけどきにしない。

 「元に戻った時に怪我でもしたのか?どこか痛かったのか?苦しかったか?
 不安なことでもあるのか?悲しかったのか?」
 「…女の子にデリカシーの無い事を聞くんじゃないよ、もょもと」

 カインが眉を眉間によせている。なにか変なことを聞いただろうか?

 「…全部よ」
 「え?」
 「痛かったから泣いたの。苦しかったから泣いたの。不安だったから泣いたの。悲しかったから泣いたの。」

 そうなのか。全部なのか、辛かったんだな、あきな。
 あきな は もう一度、泣いていた

 「そうか。辛かったのか」
 「えぇ、辛かった。とっても辛かったわ…。でもね…それ以上に、嬉しかったの。
 優しかったお父様も、国のみんなも、何もかも失ってしまったのだもの。私だけ生き延びてしまったのだもの。
 犬にされてしまったのだもの。犬になっても…それでも人間の部分は残っていたのだもの!!

 狼や野犬に食べられてしまいそうになったこともあったし狩人の仕掛けた罠で足を怪我した事もあった!!
 残飯を漁ったり泥水を啜ったりもしたわ!!
 そんな風に過ごしているうちに、心まで犬になりかけていたのかもしれない。
 私、自分が誰であるかすら忘れかけていた。いっそのこと全部忘れてしまえば楽だった…。
 …楽だったのに、ひとつだけ忘れられない事があったの」

 もう十数年前になる三国の親睦会。おれたちが初めて出会った日だそうだ。
 あきな は 同い年のお友達が出来てうれしかったと語っていた。
 おれは剣の相手がいなくて退屈だったのを覚えているけどな。
 カインは、そんなこともあったね、と懐かしそうにうなづいていた。二人ともよく覚えているな。

367ただ一匹の名無しだ:2013/03/20(水) 10:33:48 ID:???0

 「自分が誰であったか、殆ど忘れかけていた頃に、その時の夢をよく見たの。
  そして、懐かしい匂いがしたから駆け寄ってみたら…貴方たちを見つけたの。
  二人とも、大きくなっていたけど、あの頃の面影が残っていたから、すぐに判ったわ。

  最初はね、気が付いて欲しくて、必死になって追いかけて、擦り寄ったりしたの。
  何度も挑戦する内に、『私は犬だもの、気が付いてくれるはず無いな』って、途中で諦めてしまったの。
  貴方たちがハーゴン討伐の旅をしていることは噂で聞いていた。

  こんな姿の私は何の力にもなれないし、みんなの仇討ちなんて絶対無理に決まってるって。
  それでも、貴方たちの傍にいると、自分が自分であった記憶と意識を鮮明に保つことが出来たから
  貴方たちは、いつかまた旅に出てしまうだろうけど、その間だけでも傍に居させて欲しかったの…」

 そうなのか。あきな は あきらめていたのか。

 「元の姿に戻れるなんて…貴方たちに気づいてもらえるなんて思ってもいなかったから
  今まで、痛かった分だけ、苦しかった分だけ、不安だった分だけ、悲しかった分だけ、辛かった分だけ
  …いいえ、それを全部足しても全部足りないくらい…『嬉しかった』から…」

 今まで下を向いていた あきな が 顔をあげた。
 あの時のように泣いていた。あの時とは違い笑っていた。とてもとても幸せそうだった。

 「本当に…本当に、ありがとう…もょもと!カイン!」


 「だから、何で あきな は 泣いてるんだ?」
 「『嬉しいとき』にも涙は流れるものなの」

 あきな は おれに、嬉しくても人は泣くのだ、と教えてくれた。

368真実〜冷淡で残酷なるもの〜:2013/03/20(水) 10:34:28 ID:???0
 **********

 「なぁ、カイン」
 「なんだい?もょもと」
 「人は、うれしい時にも泣くんだな」
 「そうだね」
 「カインは泣いたことあるか?うれしい時に」
 「………まぁね、リアに手作りの誕生日プレゼント貰った時とか」
 「そうなのか」
 「そんなもんだよ」
 「いいな」
 「ん?」
 「おれは無い、そういうの」
 「………ふーん」
 「カイン」
 「ん?」
 「もし、ハーゴンをたおしたら…ローレシアのみんな、泣くか?」
 「…そりゃ世界を破壊しようとしてる危ないカルト連中だもの
  ローレシアどころか世界中の人が感激して泣くんじゃないかな」
 「そうか」
 「そうだよ」

369真実〜冷淡で残酷なるもの〜:2013/03/20(水) 10:35:07 ID:???0
 **********

 (…そりゃ、ローレシアの皆は泣くだろうさね。
  厄介者が更に厄介になって帰ってきた、って…)

 もょもと が寝付いたのを確認して、カインは唇だけ動かした。声は出なかった。
 隣国ローレシアの王子の噂はカインの耳にも嫌になるほど入ってきた。
 一般的には勇者ロトの生まれ変わりと謳われる程の名将だと。
 『恐ろしい膂力を持った破壊の申し子』という噂は父や特権階級の者から聞いた。
 いや、否が応でも聞かざるを得なかった。

 「ローレシアの王子の剣は鋼鉄の巨人をも粉砕するらしい」
 「ムーンブルクの王女の英知は勇者ロトと旅をした賢者に勝ると言われている」

 「それなのにお前は何だ?」「全く、ウチの王子ときたら」「情けない」
 「叩いても伸びないし、磨いても光らない」「何のための英才教育?」
 「剣も魔法も二人に劣る」「何をしても中途半端だ」「ロトの血の持ち腐れだ」

 聞こえるはずのない、父の、国民の罵声と嘲笑がカインの頭の中に鳴り響く。

 「あぁ!まったく、もぅ!!」

 それを揉み消すかのように、頭を滅茶苦茶に掻き毟る。
 サマルトリアから出れば、違う世界が開けるかもしれない。最初はそう期待していた。
 いつの日か城を抜け出し、妹のリアと新天地を探して、二人きりで穏やかに暮らしたい。
 幼いころから抱いていた二人のささやかな夢がかなうかもしれない、と。

370ただ一匹の名無しだ:2013/03/20(水) 10:37:21 ID:???0
  
 でも、所詮、夢は夢で。現実は何処までいっても現実で。

 もょもと と 二人で様々な土地を巡り、様々な村へ赴き、人々と出会った。

 しかし、どこまで行っても勇者の血は勇者の血で。

 人々は邪教団に怯えるあまりに、ロトの伝説にあやかろうと無責任な加護を求めてくる。
 自分と妹の安息の地は未だに見つかっていない。

 仮に、自分たちの名が知られていない場所があったとしても
 大神官ハーゴンを討ち取った後はどうなるだろうか?そうもいかないだろう。

 自分たちはリアルタイムで世界の歴史に名を刻んでしまう。
 世界がひっくり返るくらい、壮大なエンターテイメントになるだろう。
 遠い山奥で世を捨てて暮らす聖なる仙人レベルの世捨て人でもない限りは
 「おぉ ゆうしゃ さま」と勝手に拝んでくるに違いない。

371真実〜冷淡で残酷なるもの〜:2013/03/20(水) 10:38:57 ID:???0

 自分たちの前に未来は無い。
 未来自体はある。
 しかしその先には夢も希望も無い。

 …いや、あきな には ムーンブルク復興という使命がある。
 彼女を呪いから解放した瞬間のムーンペタの住人の喜びようから
 ムーンブルク前王は噂に違わぬ名君だったに違いない。
 これ程までに民の信頼を得ているのだ、復興の可能性は無くはないであろう。
 ただし、それは果てしなく長い茨の道であるのは確実だ。

 もょもとだって、この遥かなる旅路において経験を積み
 他人の心を理解できるようになれば、文武に優れた良き国王となる可能性も
 極めて稀ではあるが存在すると思う。

 そう、彼らは天に才能を与えられた人間なのだからから。

 これから世界を救おうとする輩が
 自分たちの身に降りかかった不幸のひとつやふたつ
 欠落した感情のひとつやふたつ

 『か弱き民衆』により科せられる手枷足枷の三つや四つや五つや六つや七つや八つや九つや…………

 それしきの事、道端の小石を蹴飛ばすくらい容易に越えられなくては、お笑い種ではなかろうか。

 所詮は『凡才』の自分とは違う。同じロトの血脈のはずなのに
 その差は紙一重どころか天と地ほども遠い。

372ただ一匹の名無しだ:2013/03/20(水) 10:40:23 ID:???0
 人生五十年、とは誰が言ったか。
 『人生』という名の泥沼を数十年先延ばしにする為に
 どうして自分は切り裂かれ、叩きつけられ、噛みつかれ、燃やされたりしながら
 戦い続けなければならないのだろう?
 精霊のルビスによる蘇生の奇跡を受けてまで、果たすべき大義なのだろうか?

 (その前に、倒せるかどうか、だけどね)

 ベッドに横たわる美しい亡国の王女を見つめる。

 (あきな も 悲劇のヒロインの自分に酔っちゃって…)

 あの時、彼女は『貴方たちに気づいてもらえるなんて思ってもいなかった』と言った。
 『貴方たちの事をずっと信じて待っていた』とは言わなかった。

 (つまり、ハナっから信用されて無かったってことですか)

 過度な期待はしていない。自分にも他人にも。
 戦力的にも、この糞みたいなくだらない旅がスムーズに進んで
 少しでも早く妹が待つ場所へ帰りたいだけだ。

 祖国に帰りたい、なんて口が裂けても言えるものか。
 ただ、自分と妹の居場所が、世界中にあそこしかないだけだ。
 例えどんなに罵声を浴びせられようと、蔑みの目で見られようと、あそこしか…。

 「…ふぁぁ。もう寝なきゃ不味いな。明日も早いんだし…」

 サマルトリアの王子カインは乱暴に毛布を被り、必死に羊の数を数えた。

373真実〜冷淡で残酷なるもの〜:2013/03/20(水) 10:41:04 ID:???0
 **********








  繰り返そう。

 【真実】というものは何時、如何なる時代であれ、如何なる世界においても

  最も冷淡で最も残酷な存在なのである、と。



                                           〜了〜

374 ◆w9.p2zZjpA:2013/03/20(水) 10:43:11 ID:???0
まとめ読み用安価
>>361-373

375ただ一匹の名無しだ:2013/04/01(月) 22:58:20 ID:???0



「諸君等には今から――――」
絶望の始まりが、告げられる。
長い長い、血にまみれた数日間が始まるのだ。



力一杯に、地面を転がる。
殴られた頬を押さえつつ、ゆっくりと起きあがる。
「ずっと、決めてたからな」
現れた人間を、彼はよく知っている。
いや、知らないはずがない。
だって、彼は彼にとって。
「会ったら、殴るって」
唯一無二の、親友なのだから。

握り拳を作り、ゆっくりと駆けだしていく。



「レックス……様?」
飛び散る血、崩れ落ちていく人間の体。
人が物に変わっていく光景を、ただ見つめ続けることしかできない。
信じられるだろうか? 無垢で純真な彼が。
あんなにも狂った笑顔と共に、人を殺しているなんて。
「ああ……ピエール?」
屍の山の中心から、なんとも気だるそうに少年は言う。
「ごめんね、僕は悪党だから」
間もなくして、飛び交うのは刃。



目の前には無数の"死"を司る機械兵。
「悪ぃけど、ここは譲れねえよ」
「お言葉ですが、私もここを退くつもりはございません」
きっと誰でも絶望するだろう。
「そうか」
「ええ」
でも、彼らは絶望しない。
「じゃあ」
「二人で突破する、でしょう?」
共に剣を構え、絶望の軍勢へと立ち向かう。
「さすが、俺」
「いえいえ、私」
互いの背に、眠り続ける姫が居る限り。

彼らは、負けない。

376ただ一匹の名無しだ:2013/04/01(月) 22:58:46 ID:???0



ゆっくりと、槍を構える。
呼吸を一つ、深く。
まっすぐに見据える先は、ただ一点。
「ククク……悲しいなぁ」
道化師は、笑う。
「仲間が死に、あまつさえ手に掛け、私に殺されてしまうのだから」
一人の娘の死体を見せつけるように、バンダナの青年へと突きつけていく。
下品な笑いと共に、あざ笑うように。
勝ち誇りながら、魔力を解きはなっていく。

だが、魔は彼を包まない。
突き出された槍が、大きな"空"を作り。
同時に、道化師へと突き刺さっていたから。
「――――――――」
槍を、力一杯回す。
声は、届かない。



「姉さんのために」
弟は狂信者のように。
「テリーのために」
姉も狂信者のように。
狂う、狂う、踊り狂う。
美しきダンスを、人間の血で彩りながら。
「……あれが、私たち」
「認めたく無いけど、な」
そのダンスを眺める、もう一人の姉弟。
鏡写しのように写る自分たちの姿を、まるで同じ顔の他人のように。
「でもさ、姉さん」
眺めている方の弟が呟く。
その手には、彼が追い求めていた剣。
「俺たちは、俺たちだろ」
そのつぶやきに、姉は笑う。
その手には、弟が追い求めていた剣。

二人は、二人へと駆けだしていく。

自分を、否定しに。



煙草の煙が揺れながら、ムカつくぐらいのオレンジ色の空に溶けていく。
深呼吸とともに、何度も何度も白の呪文が空へと溶ける。
「悪いけど、さ」
真顔のまま、僧侶は倒れ伏す武闘家へ告げる。
「あんたの病気は、いくら金を積まれても治せないね」
わかっている、これは人間の手でどうこうできる類の病気ではない。
「はっ、病気の一つも治せずに天才僧侶だなんて、笑ってしまいますわ」
「違いないねぇ」
倒れ伏す武闘家の皮肉たっぷりの言葉に、思わず頬を綻ばせてしまう。
「でも、さ」
笑った表情のまま、僧侶は煙草をくわえ、武闘家の隣へ座り込む。
「人間が何でも治せたら、神様なんて必要ないさね」

377ただ一匹の名無しだ:2013/04/01(月) 22:59:02 ID:???0



「トルネコ、エルフの飲み薬……いや、魔法の聖水は」
「もう一滴もありません」
「やくそうの一枚くらいあっだろ」
「それが品切れでしてねえ」
「かーっ、背水の陣ってことか」
「そうなりますなぁ」

「……だがしっかぁ〜〜〜〜し!!」
「私たちに敗北の未来は無いっ!!」
「この給仕探偵ジェイドと!!」
「武装商人トルネコが組めば!!」
「サイコピサロだろうがなんだろうが!!」
「負ける気がしませんっ!!」
「ったりめぇよな!!」
「敗北はない、聞こえのいい言葉ですなァ!!」
「ほんじゃま、ぶっちぎるっ、ぜぇぇぇぇっっ!!」
「ひょーっほほほぉーっ!! タマんないですなァ!!」

間もなくして、飛び交う銃弾と全てを斬り裂く斬撃。



暗い、暗い、暗い空間の中。
誰もいない、声もしない、気配すらしない。
本当に一人なのだと分かりきった空間で。
彼女は、おびえている。
「ねぇ、どうして?」
彼女の気配がする。
それは彼女であって彼女でない。
「ねぇ、どうして?」
彼女の声がする。
それは彼女であって彼女でない。
「ねぇ、どうして?」
彼女の――――いや。
自分の、姿が、見える。
それは、彼女で、あって、彼女で、ない。
「どうして、どうして、どうして」
すっと細長い手が伸びる。
その手は血にまみれていて。
「お前は幸せそうなんだァァァァッッ!!!」
白と黒のハイライトを強烈に残しながら。
全てを憎む"自分の顔"が、自分を見つめている。

息が、できない。
くびに、ちからが、かけられていく。
だれ、か、たす、け、て。

ごとり。

378ただ一匹の名無しだ:2013/04/01(月) 22:59:14 ID:???0





――――誰かを愛した人達の物語と。





「人間が……………………」





――――終わりから終わりへ向かう人たちの物語が。





「……………………憎い」





――――交錯する、どこか。





【Dragon Quest Battle Royal Ⅰ+Ⅱ Not rise curtain....】

379 ◆CruTUZYrlM:2013/04/01(月) 23:00:23 ID:.6.10AAo0
エイプリルフールということで、本家ドラクエも1+2してるしDQBRも……
そんな嘘ネタでしたとさ。

380ただ一匹の名無しだ:2013/04/01(月) 23:07:39 ID:???0
うわああああい投下乙です!
1stと2ndの見事なコラボレーション、思わず見とれてしまいました
こうして見ると凄くかけ離れていると思っていたキャラが実はとてもよく似ている事もあって…

381ただ一匹の名無しだ:2013/04/01(月) 23:36:36 ID:???O
すげえ……!感動した!
GJ!!

382ただ一匹の名無しだ:2013/04/02(火) 00:56:42 ID:???0
トルネコwww

383ただ一匹の名無しだ:2013/04/02(火) 11:20:52 ID:???0
外伝二本目キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
か…金をとらないフィオ姐さん…だと!?

384ただ一匹の名無しだ:2013/04/02(火) 11:24:22 ID:???0
そうか、フローラおぜうさまの時は治療できそうな怪我だったら治療費要求したのか

385 ◆w9.p2zZjpA:2013/04/02(火) 23:36:41 ID:???0
外伝で1stと2ndのクロスがおkならば

386小さな『物』の『語』り:2013/04/02(火) 23:38:10 ID:???0

 **********

 とある物語をお話しいたしましょう。
 いえいえ。英雄たる人物の物語ではなく『物』について『語り』ましょう。
 偶には、こんなお話があってもよろしいではありませんか?

387小さな『物』の『語』り:2013/04/02(火) 23:39:15 ID:???0
 **********

 私たちは人を殺す為に生まれました。

 私のとある兄は水に溶けあい、塔の中の少女たちを死の連鎖へといざないました。
 私のとある弟は刃を伝い、強靭な英雄の体を蝕んだといいます。

 最初に私を手に取ったのは、不安げな表情の赤毛の少女でした。
 殺し合いなど出来るはずが無い、と途方に暮れておりました。
 程なくして響き渡る金属音とともに焦げ臭い匂いがしました。

 次に私を手に取ったのは金髪の少年でした。
 彼は私を使う必要がありませんでした。彼の手にはそれは見事な業物の剣が握られていましたから。
 ひとり、またひとりと出会う人々を血の海へと沈めていきました。
 おそらく、私と最初にであった赤毛の少女も彼の剣を伝う一滴になってしまったのでしょう。
    
 数刻が過ぎ、また周囲が騒がしくなりました。
 とさり、と私を入れていた袋ごとどこかに落ちる感覚がありました。そしてまた、浮遊感。

 次に私の手を取ったのは菫色の髪の毛をした少女。彼女の瞳は悲しみと絶望で濁りきっておりました。
 こういう人間が私を手に取る時、向けられるのは自分自身と相場が決まっております。
 これが私の使命なのか、と小瓶の蓋を解放されるのを待っておりましたが、それは訪れませんでした。
 いつの間にかやってきた黒髪の勇ましい少女に止められ、私も彼女も生き永らえました。

388ただ一匹の名無しだ:2013/04/02(火) 23:40:20 ID:???0

 太陽が昇り、沈み 、また昇る。
 これだけ短い間に、これ程の旅路を経験した兄弟はかつていたでしょうか?

 私はとある竜の体内を蝕んでおりました。彼は無力な自分を裁くために私を呷りました。
 そして最期の力でその身を竜と化し、己の仇を討たんと、私に蝕まれながら、その牙で炎で挑んでおりました。
 ついに精魂尽き果てようとした瞬間、私だけが消えていく…浄化されていく感覚を覚えました。
 誰かが解毒の呪文を唱えたのでしょう。…あぁ、目の前にあの少女がいます。
 この竜と同じように自ら私を飲み干して死のうとした、あの菫色の髪の少女が泣いていました。

 「……本当に……ごめんなさい……」
 「…詫び、るな……ワシ…は…」

 私たちは人を殺す為に生まれました。
 私のとある兄は水に溶けあい、塔の中の少女たちを死の連鎖へといざないました。
 私のとある弟は刃を伝い、強靭な英雄の体を蝕んだといいます。

 嗚呼、しかし私たちの兄弟の中で、このような光景を見た物はいるのでしょうか?
 人間と竜が心を通わせ合うという奇跡の瞬間に

 こんな光景も…悪くない 

 使命も果たせないうえに、そう思えてしまうのは一族失格なのでしょうか?

389小さな『物』の『語』り:2013/04/02(火) 23:41:35 ID:???0

















 **********
 最後に私の『弟』の武勇伝をほんの少しだけ語りましょう。
 少しだけで申し訳ないのですが、少しだけ。
 私の弟は、一族としての使命を立派に果たしました。兄弟として本当に誇らしい事であります。
 …弟自身が、誰一人殺すことが出来なかった不甲斐ない私をどう思うかは別として。

390小さな『物』の『語』り:2013/04/02(火) 23:43:18 ID:???0

 弟は小さな妖精から、お人好しの少年の手に渡り、とある少女によって強奪されました。
 少女は『虚無』でした。誰もが羨む武芸の才を持ちながら虚空であり
 それゆえに、一途に思い続けた人に追いつけず、追いつけず、それでも走り続けるしか無かったのです。
 少女は全てを憎悪しておりました。

 「オルテガ……」

 自分を、幼馴染を、『勇者』という『救世主』という過酷な運命に追いやった『すべて』を憎悪しておりました。

 「オルテガ……」

 そして少女は出会いました。自分と幼馴染を巻き込んだ根源に。

 「オルテガァァァアアア!!」

 少女は己の拳を根源に叩き込み続けました。本当ならば、彼女は彼女の拳でそれを打ち砕きたかったのでし

391390訂正:2013/04/02(火) 23:45:15 ID:???0
 弟は小さな妖精から、お人好しの少年の手に渡り、とある少女によって強奪されました。
 少女は『虚無』でした。誰もが羨む武芸の才を持ちながら虚空であり
 それゆえに、一途に思い続けた人に追いつけず、追いつけず、それでも走り続けるしか無かったのです。
 少女は全てを憎悪しておりました。

 「オルテガ……」

 自分を、幼馴染を、『勇者』という『救世主』という過酷な運命に追いやった『すべて』を憎悪しておりました。

 「オルテガ……」

 そして少女は出会いました。自分と幼馴染を巻き込んだ根源に。

 「オルテガァァァアアア!!」

 少女は己の拳を根源に叩き込み続けました。
 本当ならば、彼女は彼女の拳でそれを打ち砕きたかったのでしょう。

392ただ一匹の名無しだ:2013/04/02(火) 23:45:57 ID:???0

 「私は、あの子の未来のために――」
 「未来? 貴方が奪ったのよ」  

 しかし、彼女は弟を手に取りました。

 「苦しい?」

 弟の、我々の一族の性質をよく知った上で。

 「アレルはその何倍も苦しかったのよ」

 半月型の槍とともに

 「ずっと、ずっとずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと苦しかったのよ」

 まずは槍で男の屈強な体を貫いてから

 「苦しみなさい、苦しんで苦しんで苦しみぬいて苦しみなさい」

 そして、弟をゆっくりとその刃に伝わらせながら

 「そして――――」

 弟は傷口を通して、英雄と謳われた男の血に混ざりあいながら

 「――――死になさい」

 じっくりと、ゆっくりと、その体を蝕んでいったそうです。
 少女の憎悪という名の毒を伴いながら
 その魂すら苦痛と絶望に染め上げながら。


                                                  〜了〜

 **********

393 ◆w9.p2zZjpA:2013/04/02(火) 23:50:34 ID:???0
まとめ読み用
>>386‐389 >>391-392

いりす症候群やってる途中で神動画か来た勢いで書いた。今は反省しているorz
一級チャモリストのリンリンかわいいよリンリン

394 ◆w9.p2zZjpA:2013/04/02(火) 23:52:13 ID:???0
まとめ読み安価ミスッたがな(´・ω・`)
>>386-389 >>391-392

395ただ一匹の名無しだ:2013/04/02(火) 23:52:37 ID:???0
おおおおおお!!
外伝だー!
「物」視点から見てみるとまた違った発見がある。
一個の毒を中心に色々な出来事があって…
とにかく、投下乙でした!!

398 ◆2zEnKfaCDc:2019/03/27(水) 00:31:18 ID:M3Ig3E1I0
サイレント執筆していた話のキャラが先に投下されたのですが、削除するのも勿体ないのでここに投下します。
投下作品や投下主氏への批判などの他意はありませんのでご理解いただければ。

399 ◆2zEnKfaCDc:2019/03/27(水) 00:32:20 ID:M3Ig3E1I0
(よくも……レックを……!)

(愚かな……やはり人間などとは相容れられぬ運命なのか……?)

勘違いで始まったキーファと竜王の戦い。
双方に双方の戦う理由がある。ただそれが微妙に噛み合わないだけなのだ。
レックが気絶しているこの時、客観性を保っているのはミーティアのみであった。

もしかしたらキーファの戦いの動機は勘違いなのかもしれない。
竜王が根本的な悪でないことを知っているミーティアとしては戦いを止めたいとは思う。

だけど、それには力が足りない。ミーティアが二人の戦いに割り込もうものならミーティアの儚い命など即座に塵と消えかねない。


(私にも……何か出来ることは……)

その時、第3回放送が始まりを告げる。
それでも放送の声では焦燥と怒りに駆られた戦いは止まらない。しかしその内容は、この戦いに明らかに影響を及ぼすものであった。

400 ◆2zEnKfaCDc:2019/03/27(水) 00:32:45 ID:M3Ig3E1I0



(ゼシカさん……モリーさん……ヤンガスさんまで……。)

呼ばれた仲間の人数が最も多かったのはミーティアだった。
最も大きな危惧であったエイトの名前こそ呼ばれなかったものの、それ以外の仲間の名前は全員呼ばれてしまったのだ。

(戦わ…なくちゃ……)

こうして様々なものを失った今、どうしても感じずにはいられない。
自分はエイトに頼りすぎていたのではないか。
待っていればあの人は迎えに来てくれる。あの結婚式の日もそう思ってただ待ち続けるだけだった。

だが、待っているだけでは解決しないこともあると分かった。
実力者たちがこぞって殺し合いに反逆していても、まだこの世界は闇に包まれたままである。
途中で別れることとなったポーラも、恐らくはこの世界の闇に呑み込まれてしまっている。
現実を見つめなくては何も変えられないのだ。

受け入れろ――竜王の言っていた言葉の意味がようやく分かった気がした。

401 ◆2zEnKfaCDc:2019/03/27(水) 00:33:46 ID:M3Ig3E1I0
(フォズさん……死んじまったのか……。あんな幼い子まで容赦なく……。やっぱり誰かの命を平気で奪うような奴は許せねえ……!)

キーファもまた、この世界で知り合った者の死を知らしめられた。ほとんど話をすることもなかったが、あの少女の死は不思議と心に刺さった。
別の出会い方をしていれば仲間として同じ道を歩めていたかもしれない――なんとなくそう感じていた。

フォズがどうして死んだのかは定かではないが、人が死んでいる以上どこかに「悪」は存在しているはずだ。
そして、それを止めるのは曲がりなりにも力を持っている自分のような者でなくてはならない。
キーファにとってこの放送は目の前の敵を倒す決意を更に固める結果となった。

402Carry out your prides ◆2zEnKfaCDc:2019/03/27(水) 00:35:02 ID:M3Ig3E1I0
しかし、竜王にとってはそうではなかった。

(ワシはずっと信じておった。悪という共通の敵が居るからこそ、人は結束出来るのだと。たった1人の人間でさえ世界を変えることが出来る、ならば結束した人間であればどんな絶望も打ち破ることが出来ると……。なのに……だというのに……)

「何故、貴様が死ぬのだ……!アレフ………!」

人間は脆弱で欲深い生物だから、勇者が脅威となろうとも世界の半分という餌を撒けば簡単に手懐けられると思い込んでいた竜王は、純粋に人々を守るために戦うアレフに敗れた。
竜王の世界はアレフに変えられたのだ。

(貴様は人々の希望ではなかったのか…?)

キーファの剣を魔力の波で押し返す。それでもキーファは攻撃の手を緩めず、再び向かってくる。

(このような力の矛先を間違えた人間たちを導くのが貴様のような者ではなかったのか…?)

惜しくもアレフは竜王の期待通りの行動を取っていなかったのだが、幸いにも竜王はそれを知らないままでいられた。

403Carry out your prides ◆2zEnKfaCDc:2019/03/27(水) 00:36:18 ID:M3Ig3E1I0
竜王が今見ている人間の姿は、ただ真っ直ぐ自分だけを見据えているキーファのみ。

揺らがない怒り、それが人間さえも強くすると竜王は知っている。
その力の矛先が自分という悪に向いているのは良い。

だが、自らの正義と力の矛先が食い違った力は脆い。
世界の半分なんかをチラつかせ、自らの欲望に傾いた力などいくらでも叩き伏せることが出来る。

勇者アレフはそうではなかったから、竜王は敗北した。
欲望に染まらずに正義を貫き、悪を打ち倒すだけの力も持っている。そんな人間がこの世界には必要なのだ。


「以上、14名だ。」

「えっ……?」

放送の終わりの声と同時にキーファの動きもピタリと止まる。

放送でレックの名前は呼ばれなかった。
竜王がレックを殺したのだと思い込んでいたが、それが勘違いだと分かったのだ。

そう、矛先を間違えた心は脆い。それが露呈した瞬間、簡単に崩れ去る。

(俺の…………勘違いだったのか?)

404Carry out your prides ◆2zEnKfaCDc:2019/03/27(水) 00:36:54 ID:M3Ig3E1I0
刹那、真っ直ぐに竜王を見据えていたはずの瞳は宙を泳いだ。
その隙を見逃す竜王ではない。

「今さら気付いたか、阿呆が。」

「ぐあっ!」

片手を掲げ、キーファの身体に魔力を流し込む。

「じゃがもう遅い。貴様はワシの誇りに噛み付いたのだ。」

「ちく……しょう……。」

魔力の波に阻まれキーファは動けない。
竜王の前で迷いを見せた旅人は皆、同じ運命を辿った。闇の世界に送られ、虚無の中に 消えていった。

ただし、その旅人たちの元には「仲間」というものがいなかったという。

「――させません」

これは本来は起こりえなかった「もしも」の話。
竜王に屈した心の前に、迷いを振り払った者がさらに立ち塞がったとしたら。

「この戦いを、止めに来ました」

「ミーティア姫……またワシの前に立ち塞がるか……。覚悟は出来ておるのじゃろうな?」

問うまでもなく、ミーティアの瞳には覚悟が宿っているのが見て取れた。
それでも対話から入りたいと思うのは、レックの影響なのだろうか。
人間というものを一度は認めかけた、その名残がまだ残っているというのか。

(ふっ……くだらぬ……)

405Carry out your prides ◆2zEnKfaCDc:2019/03/27(水) 00:37:29 ID:M3Ig3E1I0
自らの迷いに対し、竜王は自嘲気味に笑い飛ばした。
目の前にいるのは、自らの誇りを損なわせんとする者。

「力も無く立ち向かうのは蛮勇ではない!無謀と言うのだ!貴様はそれを、まだ分かっておらぬのか?」

言葉と共にベギラマを連射する。殺すほどの威力ではなくとも、1人の小娘の心を挫くには充分な威力。
しかしミーティアとて、何の策も無しに飛び込んできたわけではない。

ミーティアが袋から取り出した支給品、それはひとつの盾。
それ自体が呪文を軽減する力を秘めており、ベギラマの威力を最小限に抑えてくれる。

さらに、右手に装備した祝福の杖を自らに使用し、失った体力を少しずつ回復することで竜王の小手先の攻撃を防ぎ切った。

「私は知っています。人も竜も、隣に並び立てる存在だと」

ミーティアの覚悟、それは竜王を説得すること。
それが出来るのは戦いの実力があるキーファではない。

「貴方が自らの悪に従ってキーファさんを殺してしまったなら……
キーファさんが貴方という竜を悪として殺してしまったなら……」

ミーティアがミーティアである誇り、それは竜の血を引く彼を信じること。
だから、人と竜が同じ道を歩むことが出来ないなんて言わせない。
人と竜とが交われない存在だと認めてしまえば、それは―――


「―――それは私の誇りに背きます」

406Carry out your prides ◆2zEnKfaCDc:2019/03/27(水) 00:38:01 ID:M3Ig3E1I0
「くっ……くくくっ………」

防がれた。
殺すまでではなくとも、動けなくなる程度の傷を負ってもらうつもりで撃った呪文を放ってもなお、ミーティア姫は自分に立ち塞がる。
それは竜王にとっては、面白くないことではなかった。


(アレフが死のうとも……この姫ならばあるいは………!)

レックだけではなく、ミーティアの中にも皆の力の使い方を先導していけるリーダーとなれる人間の在り方を、竜王はミーティアの中に見た気がした。

(姫よ、それで良いのじゃ……貴様の誇りを貫いてみせろ!)

再び呪文を放つ。
ミーティアは盾で防ぎ、杖で回復する。
ここまでは同じ。だが、竜王には人よりも強い肉体がある。

「ぐっ………!」

ミーティアの背後に回り込み、蹴りを入れる。
反応など出来るはずもなく、華奢な身体が高原を転げ回る。

痛みを堪えて立ち上がるも、再び唱えられた竜王の呪文が肌を焼く。

「きゃああああ!!」
「姫さん!」

回復に制限のかけられているこの世界の下では、杖の回復力もなかなか働かない。
身体の痛みは次々と悲鳴を上げ、逃げるという選択肢は常に頭の中を支配する。
だけど、ここで挫けるわけにはいかない。誇りを曲げるわけにはいかない。

支給品袋の中にあった1冊の書物を握り込む。
それはミーティアに支給品として配られていた、まほうつかいの書。
敵の攻撃能力を打ち消す"月のはどう"ならば、殺すことなく無力化出来る。あとは発動する隙をいかに作るか。

「竜王さん、あなたを止めます」

「良かろう!貴様の誇りの全てを以てかかってこい!!」

囚われの姫が魔王に立ち向かう。それはただの無謀なのかもしれない。
それでも、ここで逃げては二度と自分を誇れない。
竜の血を引く彼の隣に並び立つために、あなたを悪と認めない。

それが、私の誇りです。

407Carry out your prides ◆2zEnKfaCDc:2019/03/27(水) 00:40:10 ID:M3Ig3E1I0
【D-7/荒野/2日目 深夜】

【レック@DQ6】
[状態]:HP1/15 気絶 MP1/7
[装備]:なし 
[道具]:支給品一式、大魔神の斧@DQJ 蒼炎のツメ@DQ10モリーの支給品1~3個 確認済み支給品1~2個
[思考]:竜王と協力する。アベルを追う、ターニアを探す。

※体力を使い果たした上での気絶状態です。手当などがない場合は、一定時間後に衰弱死します。

【竜王@DQ1】
[状態]:HP1/12 竜化した場合、背中に傷 片手片翼損失 苛立ち
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 不明支給品0〜1個
[思考]:レックと共に協力し、アベルを倒す。周りの人間は邪魔するなら殺す。 
[備考]:自分の誇りを貫くか、他の人間の協力も借りるか悩んでいます。

【キーファ@DQ7】
[状態]:HP1/7 一時的な行動不能
[装備]:はやぶさの剣・改@DQ8
[道具]:支給品一式、月影のハープ@DQ8、支給品1〜2個、ユーリルの不明支給品0~1個
[思考]:竜王を倒す。古代船を見つける。 

【ミーティア@DQ8】
[状態]:HP 1/2 全身に傷 火傷
[装備]:祝福の杖@DQ7 みかがみの盾@DQ8
[道具]:支給品一式、あぶないみずぎ、レースのビスチェ、あぶないビスチェ、まほうつかいの書@DQ9
[思考]:「まほうつかいの書」を使って竜王を止める。古代船のもとへ向かう

408 光の中に消え去った : 光の中に消え去った 
 光の中に消え去った 


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板