したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(2000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

投下用SS一時置き場

1名無しさん:2006/05/10(水) 23:41:46 ID:OKj1YCQ2
規制にあって代理投下を依頼したい場合や
問題ありそうな作品を試験的に投下する場所です。

522名無しさん:2006/06/17(土) 00:22:40 ID:VGGGYSJ2
>>518
最初に言ったけど「確定」するわけじゃなくて「仮定のひとつ」に過ぎないでしょ?
これで確定させるつもりで書いたんなら破棄を検討するのも仕方ないかもだけど
ただのフラグ撒きの段階なんだし構わないんじゃない?

523名無しさん:2006/06/17(土) 00:23:29 ID:/JoiYXOc
その前提覚悟があれば、投下しても良いんじゃないかなと。

<すいません、ついつい、短文レスしてしまいます。

524名無しさん:2006/06/17(土) 00:24:19 ID:iICX5lSk
そういっていただけるとありがたいです。
フラグ撒きとして投稿に踏み切ろうかと思います。
異存がある方は今のうちどうぞ。あと10分くらいで投下始めようかと。

525名無しさん:2006/06/17(土) 00:27:10 ID:/JoiYXOc
 ついつい、今後の展開に関わると熱くなる。
SSの結論が、三者ともダブったのは少しびっくりしたが。

526名無しさん:2006/06/17(土) 00:49:12 ID:/JoiYXOc
おつ!

527名無しさん:2006/06/17(土) 00:55:17 ID:9TsFhwRg
今気付いたけどフォズ知ってる奴みんな死んだのに思考がアルスたちを探すのままだね

528名無しさん:2006/06/17(土) 00:59:09 ID:VGGGYSJ2
乙です。これで寝れそうです。

529名無しさん:2006/06/17(土) 00:59:25 ID:/JoiYXOc
しまった。フラグの方ばかり、気を取られた。
頼りない読み手ですまん>書き手さん・・・。

530名無しさん:2006/06/17(土) 00:59:57 ID:/JoiYXOc
おつかれ〜

531名無しさん:2006/06/17(土) 01:05:53 ID:iICX5lSk
完了しましたありがとうございましたー

532魔王の闇、彼女の闇1/6:2006/06/19(月) 17:38:07 ID:DwWxTmj6
「さて、フォズ…といったか」
「は、はい」
突然に(その名を呼んだのは初めてのことだ)その名を呼ばれたフォズは驚いたようだった。
「当面の方針だが、近くで感じていた大きな魔力が一つ消失した。…恐らく殺されたのだろう。
 その代わりといっては何だが、ここから北西に二つ程、先のものほどではないにせよ、そこそこの魔力を感じる」
「魔力というと、呪文の使い手…ですか?」
「そうだ。ちょうどC−4があと数時間で禁止エリアになるから、迂回する必要もある。
 よってまずは北上し、北の森へ。その後西へと向かうことで、その両者との接触を試みる。
 山に続き森と辛いだろうが、しっかりついて来い。…また抱きかかえられたいのなら、それでも構わんがな」
「大丈夫です。ついて、いけます」
「そうか。では、行くぞ」

新たな目標を定め、アンバランスな二人は夜の山を往く。


――とは言ったものの、だ。

フォズに対し自らの首輪解除についての仮説を示し、さらにその為に行動を起こそうとしていたピサロであったが、
それとは別にもうひとつ、今回の「死者の数」を受けて思うところがあった。

僅か半日という期間であったにも関わらず、既に18もの命が失われていたこと。
ピサロが気になったのは、「あまりにも死者の数が多すぎるのではないか」、ということ。
もちろん、このゲームの参加者の中には自分のような魔族や魔物が何名か含まれていることも知っている。
中には、魔物に襲われてその命を散らした人間、人間に倒され命を散らした魔物も少なからず居たことだろう。
しかし、たかが数匹の魔物の活動のみで、ここまでの被害が出ているとは考え難い。
それはつまり、ゲームに乗り、人間を殺している人間が確実に存在していることを示しているに他ならない。

533魔王の闇、彼女の闇1/6:2006/06/19(月) 17:38:47 ID:DwWxTmj6
――「殺し合え」と言われて、簡単に同族を殺せる。人間とは、やはり愚かなものではないのか――?

フォズに問えば、確実に「違う、人間はそんなものではない」と反論されるだろう。
だがよくよく考えれば、ピサロがここで見かけた人間は、彼女を除けば悉くこのゲームに乗ったものでは無かったか。
例えば、既に二人を手にかけた金髪の天空の勇者。
例えば、魔王のかつての仲間、神官クリフト。

――果たして本当に「愚かでない人間」がこの地に存在し、なお生き残っているのか――?


残る生存者は25名。また翌朝までに、新たな死者が出るであろう。
死者が増えれば増えるほど、【シャナク】【アバカム】の使い手が死亡している可能性が増大する。
必然的に、彼が示した首輪解除方法の成功率は減少する。
死者が増えれば増えるほど、自らが手を下さねばならぬ数が減少し、優勝に当てる労力は少なくなる。
必然的に、彼が優勝出来る確率は上昇するし、そもそも首輪解除を目論む必要などなくなる。

534魔王の闇、彼女の闇3/6:2006/06/19(月) 17:39:22 ID:DwWxTmj6
ピサロにとって最優先は「ハーゴンを殺し、ロザリーの仇を討つ」ことである。
そのために彼は「ハーゴンに一泡吹かせるべく、首輪解除」という選択肢を選んでいるだけであり
「参加している人間たち全ての首輪を解除し、結束して脱出しよう」と試みているわけではない。
つまり「優勝者としてハーゴンのもとへ向かう」こともまた、彼にとって選択肢のひとつである。
まして勝手に人間どもが殺し合い、その数を減らしていくというのなら…。

――目処は、私たちを含め10名といったところか。
  もしこのままのペースで死者が増え行くのであれば、私はお前たちを滅ぼすことも考えねばならん。
  証明してみよ、人間よ。お前たちが愚かな種族でないことを。
  証明してみよ、人間よ。少女の言うことが真実であるということを――

フォズと出会い、抑えられたかに見えた魔王の中の大きな闇。それが再び静かに蠢きはじめていた。

〜〜〜〜〜

535魔王の闇、彼女の闇4/6:2006/06/19(月) 17:39:55 ID:DwWxTmj6
ふふ…ふふふふ…

ピサロが目指す北の森では、一人の女――フローラが笑いながら西へと歩みを進めていた。
やや右半身を気にした格好ではあったが、ゆっくりと確実に歩みを進めていた。

――先刻の放送にて。

リュカ様が死んだと告げられた。それは別に構わなかった。
愛する男を失った悲しみはあったが、優勝し、蘇生を願えばよかったから。
自ら彼を手にかける必要がなくなって、安堵しているくらいだった。

ビアンカが死んだと告げられた。
是非とも自らの手で仕留めてやろうとも思っていたからやや遺憾ではあったが、死は死だ。
もう二度とあの女の姿を見ることが無いと思うと、せいせいしたのだが…
許せないことが一つあった。それはリュカとビアンカが「同時」に放送で呼ばれたこと。
それはフローラに「二人は邂逅し、心中したのではないか」という疑惑を持たせるには十分であった。
(実際には別々のタイミングでその命を散らしているが、そんなことは分からない)

――現世で私から奪い取ったのに飽き足らず、死後の世界でまでリュカ様を奪おうというの?ビアンカ!
  そんなこと許さない許さない許さないッ…!!

536魔王の闇、彼女の闇5/6:2006/06/19(月) 17:40:30 ID:DwWxTmj6
ちりちりと痛み出した火傷が、リュカ様を奪ったビアンカが私を嘲笑っているかのようで鬱陶しい。
このままじゃ終わらせない。何かあの女を唸らせる事柄はないかと思案を巡らせ…ふと、閃く。
レックスだ。リュカ様とビアンカの息子、レックスだ。
放送でその名は呼ばれていない、ということは、未だ生存してこの場にいるではないか。
リュカ様を引き連れて死んだビアンカは許せなかったが、あの女が現世に戻ることはもうない。
ならば、あの女が手出しできないこの現世の中でレックスを痛めつけてやろうと。
レックスだけは、徹底的に痛めつけて殺してやろうと。
ビアンカ本人に復讐することがかなわないのなら、ならばその息子にその憎しみをぶつけてやろうと。

ふふ…ふふふふ…

ビアンカ。どうか、指をくわえて見ていて下さいな。
痛めつけられるレックスを見ながら、先に逝ったことを大いに悔やむがいいわ。
そして感謝して頂戴ね。
あなたの大好きな息子さんを、私が貴方の元に連れて行ってあげるのだから。

リュカ様。どうか、ほんの少しだけお待ちくださいね。
すぐに私が優勝して、貴方のことを蘇生して差し上げますから。
そうしたら必ず、たっぷりと愛してくださいましね?


――そして、今。
元々追いかけていた逃避行二人の片割れ、ルーシアの名前が放送で呼ばれたことなど既に覚えていない。
レックス以外の誰が死のうと、もう彼女にはどうでもよかった。
他人の死など、最早何の感慨ももたらさない。全ては彼女の優勝の為、輝かしい未来の為の贄に過ぎないのだから。

537魔王の闇、彼女の闇6/6:2006/06/19(月) 17:41:12 ID:DwWxTmj6
フローラは狂ってはいない。
彼女の中にあるのは、ただただ大きな闇。それだけ。


【C-5/北側の山/夜】

【ピサロ@DQ4】
[状態]:健康 MP6/7程度
[装備]:鎖鎌 闇の衣 アサシンダガー
[道具]:エルフの飲み薬(満タン) 支給品一式  首輪二個
[思考]:ロザリーの仇討ち ハーゴンの抹殺 襲撃者には、それなりの対応をする
     【シャナク】【アバカム】の使い手を捜す 更なる首輪解除方法調査
     北西に居る魔力の持ち主と接触する
     首輪解除の目処が立たずに生存者が10名を切ったら、ゲームに乗ることも視野に――?

【フォズ@DQ7】
[状態]:疲労(時間経過で回復)
[装備]:天罰の杖
[道具]:炎の盾  アルスのトカゲ(レオン) 支給品一式
[思考]:ゲームには乗らない ピサロを導く


【B-5/西側の森林地帯/夜】

【フローラ@DQ5】
[状態]:HP MP:睡眠をとり回復 ゼシカに変化 顔から右半身にかけて火傷の跡 徐々に火傷から痛み
[装備]:山彦の帽子  毒針 ベレッタM92(残弾15)
[道具]:変化の杖 マガジン(装弾数15)×1 神鳥の杖 エッチな下着 未確認(一つ)
[思考]:西に向かう ゲームに乗る(ただしレックスのみ痛めつけて殺す)
     永遠の若さとリュカの蘇生を願う

※フローラの火傷には定期的な回復治療が必要です。 治療しないと半日後くらいからじわじわと痛みだし、悪化します。
 完治にはメガザル、超万能薬、世界樹の雫級の方法が必要です

538名無しさん:2006/06/19(月) 17:43:07 ID:DwWxTmj6
以上です。
ピサロの思考を右往左往させすぎなので、大丈夫かどうか気になります。

あと所持品の「首輪二個」が入手した話以降道具欄に記載されていなかったので追記しました。

539名無しさん:2006/06/19(月) 18:01:25 ID:Dn.42LAA
乙!

ピサロは、ロザリーを殺されたんで不安定でいいと思います。

540名無しさん:2006/06/19(月) 18:10:41 ID:0NZf2ctY
うーん…、
〉ルーシアの名前が放送で呼ばれたことなど既に覚えていない。
〉レックス以外の誰が死のうと、もう彼女にはどうでもよかった。
てのは、まずくないかなぁ。
レックスを殺そうにも、彼の情報は一切無いし、
それだけに執着すると今後、行動するのに指針が無くなっちゃうわけだし。

ビアンカとリュカが心中したかも、というのも強引な気がする。
放送が、死んだ時刻順に読み上げで(その情報はないけど)、
リュカが最初で、ビアンカは最後の方なのに、同時というのは強引かと。

少々、書き手の望む展開に急かしすぎな気がする。


ピサロはイイ!(・∀・)

541名無しさん:2006/06/19(月) 18:40:59 ID:DwWxTmj6
>>540
納得です。ちょっとフローラのほうを書き直してみますね。

542名無しさん:2006/06/19(月) 19:30:34 ID:bhHipfUg
乙!
ピサロが良いです〜。
ゲームに乗ったら、一番最初に殺そうとするのは、隣にいるフォズだろうなw
足手まといにしか、ならないからなぁ

543名無しさん:2006/06/19(月) 19:33:12 ID:Xp74xaNA
投下乙です。
放送でゼシカの名前が呼ばれたことで、この姿ではアレフの騙まし討ちは無理だと悟るシーンを
追加してはどうでしょうか?

544名無しさん:2006/06/19(月) 19:40:37 ID:bhHipfUg
いま、感情が逝ってる状態だし。急に理性がでてきてもねぇ。

フローラが現実に帰ってきてから(笑)、
次の書き手さんが書いたほうが良いんじゃないかな。

545名無しさん:2006/06/19(月) 20:16:03 ID:Xp74xaNA
>>544
ナルホド。確かに今のフローラ感情的になってますね。
逆に、ピサロ&フォズがゼシカに変化したままのフローラに会って
「貴様は死んでいるはずだぞ」ってバトルに突入展開も面白くなるかも。

546名無しさん:2006/06/19(月) 20:44:23 ID:Fu8fQfIQ
ピサロの魔力感知能力ですが、精度が高すぎないですか?

遠くに高い魔力の反応がある、くらいならまだしも
そう高くない、しかも複数の魔力を感知できるのはちょとやりすぎでは。
あんまり詳細に魔力を追跡できるようだと今後の足枷となると思うのですが。

前回までの話とも整合性あやしくなりませんかね。

547名無しさん:2006/06/19(月) 20:56:20 ID:DwWxTmj6
>>543
一応作中に盛り込んで検討していますが、
ちょっと蛇足感が否めないかもわかりません。

>>546
一番気になってたのはそこなんです。
やはり精度を落として「おぼろげながら魔力を感じる」程度に留めるほうがよさそうですね。
(というか、既にそういう風に修正中)

修正後は本スレに落としてみようかと思ってます。
納得できる出来になるまでもう少し時間がかかりそうです。

548名無しさん:2006/06/19(月) 22:25:32 ID:DwWxTmj6
本投下終わりましたー。
意見ありがとうございました。

549名無しさん:2006/06/19(月) 22:26:16 ID:bhHipfUg
10人か微妙な数字だなぁ。
マーダ―8名(アトラス・フローラ・バーサ―カー・マルチェロ・サマンサ・テリー・レックス・クリフト)
微妙3名(竜王と対峙の可能性ありアレフ・マリア)ヒミコ
それ以外13名

550名無しさん:2006/06/19(月) 22:26:48 ID:bhHipfUg
乙!!

551名無しさん:2006/06/19(月) 22:56:23 ID:Xp74xaNA
>>549
エイトを上手く動かせば、『悪夢の種子』の同士討ちフラグをぶち壊せそうな気がする…

552LUNATIC MOON 1/15:2006/06/26(月) 00:28:32 ID:yUjxiwE6
突如として天空に鐘の音が響き渡った。
何事かとアリスたちは足を止めて空を見上げる。
聞こえてくるは悪魔の声。

(く、そのように余裕の声を出していられるのも今のうちです!
 必ずこの世界から抜け出して滅ぼして見せます!!)

アリスは強い決意とともに憎き敵の言葉を聞き漏らすまいと唇を噛み締める。
禁止エリアはカンダタが地図を取り出して書き留めていた。
次に流れるは死者の列。そして、アリスの身体が揺れた。

『フィオ』

「そ……ん、な」
アリスの脳裏にあの飄々とした僧侶の顔が浮かぶ。
常にマイペースだった彼女。どんな強敵を前にしてさえ慌てるといったことが無かった。
効率的な行動を旨とするサマンサとはそりが合わなかったようだが
彼女の僧侶呪文は幾度も旅の危地を救ってくれた。そんな彼女が……死んだ。

『ん、私を仲間にしたいって? そうだね、契約金3万G、月々1万Gで仲間になってあげるよ。
 ん、まあ出世払いでいいさね。世界を救ったら払ってくれるかい?』

ルイーダの酒場で最初に会った時、そうそうに気さくな冗談を言ってきた。
(実は冗談ではなかったのだがアリスは最後までそれに気付かなかった)
その後の旅でも他人に無関心な要でいて細かいところによく気がつき、補助してくれていた。
彼女がいなかったらアリスたちは世界を救うどころか途中で倒れていただろうことは想像に難くない。
とても頼りになる姉のような存在。それがフィオだった。
その彼女は……もういない。

「フィオ……ッ」

アリスは涙を堪え、空を見上げる。既に日は完全に落ち、白い月が浩々と大地を照らしていた。

553LUNATIC MOON 2/15:2006/06/26(月) 00:29:22 ID:yUjxiwE6
不安そうにカンダタが声を掛ける。
「姐さん……」
「大丈夫です、カンダタ……私は、勇者です。立ち止まりはしません。
 止まってはいけません」
そう、勇者は哀しみに立ち止まってはいけない。
どんな時も正義に邁進しなければならない。
目の前で父、オルテガが戦死した時も彼女は立ち止まらなかった。
だから今も彼女は全てを背負い、耐える。
今ここで立ち止まれば全ての犠牲を無にすることになるからだ。
「フィオ、仇は取ります」
ハーゴン打倒の決意をより高め、アリスの心の揺れは止まる。
気持ちを入れ替え、いざアリアハンへと進もうと仲間を振り返る。

そこには、魂の抜けた表情で膝を突いているクリフトの姿があった。



先程の放送から流れた一つの言霊。
それはクリフトを絶望の淵に追いやるには充分だった。
「私は……何の為に……」
ブツブツと力なく呟く。
全ては彼の女神、アリーナを生き残らせるためだった。
その為に幾人も襲い、少女を殺し、今またこのアリスという少女を利用しようとしていたのだ。
それは――全て無駄な行為だったのか。
どれだけの罪を犯そうとも、神に背こうとも、アリーナさえ幸せでいてくれるなら他には何もいらなかった。
無様な死を迎えようとも地獄に落ちようとも構わなかった。
他人にどう罵られようとそれは彼にとって殉教と言える行為だったのだ。
それなのに、それなのに!
自分はただ罪を重ねただけの愚か者に成り下がった。
側にいた誰かが何事かを話しかけてくる。
だがもうクリフトは関心を持たなかった。

554LUNATIC MOON 3/15:2006/06/26(月) 00:30:18 ID:yUjxiwE6

――――死のう

彼は答えを出す。
アリーナの居ない世界には何の未練もなかったから。
その時、肩を掴まれ揺さぶられた。
アリスはまだ何かを叫んでいる。
(もういいんですよ、何もかも。放っておいてください)
そう言おうとしたが何もかも億劫だった。
そして……ある言葉が耳に入ってきた。

「ハーゴンたちの言葉になんて惑わされないでください!」

なんでその言葉だけ耳に残ったのだろう。
ハーゴンの言葉? ハーゴンは何と言っていただろう。
ぼんやりとした頭でクリフトは最初の広間でのことを思い出していた。

―― このゲームに勝ち残り最後の一人となったものには私直々に褒美を取らせよう。
 元の世界に戻すのは当然、富も名誉も思いのままだ。そして……死者を甦らせることもな ――

―― 死者を甦らせることもな ――

急速に、脳が、覚醒していく。
自分の行動方針はなんだった?
アリーナを優勝させ、復活させてもらって元の世界へ帰る。
そう、復活させてもらって、だ。
なら逆でもいいではないか。アリーナを復活させてもらうのだ。

―― 自分が優勝して。

なんでこんな簡単なことに気付かなかったのだ。
心の奥から力が湧いてくる。どす黒く、濁った力が。

555LUNATIC MOON 4/15:2006/06/26(月) 00:31:00 ID:yUjxiwE6

「しっかりしてください! 私たちがここで負けてはいけません!!」

アリスの声もクリアになり、クリフトはようやく外界をハッキリと認識する。
彼は虚ろな瞳のまま、アリスに向かって微笑んだ。
「ええ、その通りですね。心配をかけたようで申し訳ありません」
「良かった、正気に戻ったんですね?」
安堵した表情のアリスを内心侮蔑しながらクリフトは頷いた。
「はい。かけがえのない人の死を知り、私はくじけそうになってしまいました。
 でもあなたの言うとおり、ここで負けてしまってはアリーナ様に申し訳が立ちません。
 私はもう大丈夫です。行きましょう」

そう、自分はもう大丈夫。生きる目的を見つけたのだから。
アリスと、カンダタと頷きあうと、彼はアリアハンへと向かって歩き始めた。
一つの狂気と共に。


「なあ、マリア王女。その竜王のことなんだが……」
「はい?」
空飛ぶベッドの上でのククールの言葉にマリアは訝しげな視線を向ける。
彼はなんだかとても言いづらそうに口をもごもごと動かしていたが、やがて意を決したように
マリアの瞳を見つめた。
「その竜王って奴と出会ったら、まず俺に話をさせてくれないか?」
「何故です?」
「先程はああ言ったが……どうも俺にはその竜王が、ゲームに乗ってアレンと戦っていたとは思えないんだ。
 王女から竜王のことを聞いた今でもそう思う。そう考えると不可解な部分がでてきてしまうんだ」
ククールはその時のことを思い返す。
あの時、アレンが強く踏み込んだと思ったその動き。明らかに不自然なものだった。
あれはククールに気付き、竜王を庇おうとしたのではないか。
だとしたら彼らが戦っていたのは、ゲームとはまた別の意図があったのではないか。
それにその後ククールは竜王の一撃によって気絶した。そう、自分が生きていること自体がおかしい。
ゲームに乗っていたなら自分に止めを刺さない筈がない。

556LUNATIC MOON 5/15:2006/06/26(月) 00:31:59 ID:yUjxiwE6
そして何故、アレンの遺体にマントが被せられていたのか。
「そんなことが……」
「俺にはわからない。竜王が真の悪なのか、それとも……」

「なんと、バーサーカーじゃ!!」

その時ククールの言葉を遮り、トロデが叫んだ。
寝入っているレックスを除いた全員がベッドからトロデの指差す方向を覗く。
バーサーカーは明らかにこちらを捕捉して近付いてきていた。
月明かりの中、左手に持つモーニングスターをぶんぶんと振り回していたかと思うと、大きく振りかぶる。

「不味い、ありゃ破壊の鉄球だ! ハッサン、もっと高度を上げろ!」
「無理だ、これ以上あがらねぇ!!」
「だったら速度を上げて振り切れ!!」
「無理だ、これ以上あがらねぇ!!」
「じゃあ転進だ!! 急――」

唸りを上げて鉄球が豪速で迫る。
鉄球は正確にベッドを捉え、粉々に打ち砕いた。

「うおおおおおおおおおおおおおおっっ!!?」

ベッドが盾になったおかげで直撃は避けられたものの、ハッサンたちは夜空に放り出されてしまう。
「くっ、レックス!」
ハッサンは咄嗟にレックスの腕を掴むと胸に抱え込み、地面へと墜落した。
受身を取りながらゴロゴロと転がり、何とかダメージを最小限に抑えたものの、身体のあちこちを擦り剥いてしまった。
「ふう、なんとか……ぶべっ!」
「ブギャアァ!?」
ホッと息をつこうとした所で、ゴィン、とハッサンの頭蓋を衝撃が襲った。
一足遅れて落ちてきたトロデ王がハッサンの頭に直撃したのだった。
トロデは目を回して気絶し、ハッサンの頭には大きなこぶができる。
「痛〜〜」

557LUNATIC MOON 6/15:2006/06/26(月) 00:32:41 ID:yUjxiwE6
レックスを降ろし、痛めた頭を抑えているとビュン、と風きり音が鳴った。
嫌な予感に咄嗟に頭を下げると、一瞬後にそこを鉄球が通過する。
鉄球はハッサンの背後の地面を大きく爆散させると、再びバーサーカーの下へと舞い戻っていく。
「てめぇ!」
ハッサンはトロデとレックスを戦闘に巻き込まないように廻り込みながら、バーサーカーへと駆けた。

「きゃあ!」
「マリア王女!!」
マリアはククールが抱きとめ、空宙で体勢を整えて華麗に着地した。
「お怪我はありませんか、お嬢さん?」
「はい、ありがとうございます」
マリアを地に立たせ、バーサーカーの方を見やる。
「奴のあの武装じゃハッサン一人じゃ荷が重い、加勢に行くから王女はトロデ王とボウズを頼む!」
「はい、バーサーカーはミラーシールドを持っている筈です! うかつに呪文を使わないよう気をつけてください!」
マリアの忠告を背に、ククールはハッサンの援護に向かう。

「ちぃ、破壊の鉄球も厄介だがあの隼の剣モドキも厄介だぜ!」
ハッサンは身かわし脚で攻撃の回避に専念していた。
それというのも遠距離では破壊の鉄球が、近距離では隼の剣とも思えぬ凄まじい威力を持つ剣によって
接近を阻まれているからだ。
鉄球を掻い潜り、拳の距離まで接近しても地面を抉り取るほどの斬撃が二連続で襲い来る。
「喰らえ!」
ハッサンは魔物使いの特技、火炎の息を吐いてバーサーカーの周囲を焼く。
大した痛手にはならずとも、火によって相手の激しい運動性を制限するのが目的だ。
だがバーサーカーは炎にも怯まず再び鉄球を放つ。
「何!?」
炎の壁を貫いて鉄球が迫る。意表を突かれたハッサンは回避することができない。
ハッサンは一瞬でその選択を捨てると、どっしりと地に腰を落としてかまえた。
「大地よ、俺に力を貸してくれ!」
自然を知り、一体となってその力を借りるレンジャー。その高位特技「大防御」。
ハッサンの筋肉が瞬時に膨張、硬化してその守備力を跳ね上げた。
ドォン、という衝撃とともにハッサンは両の腕で鉄球を掴み取る。

558LUNATIC MOON 7/15:2006/06/26(月) 00:33:46 ID:yUjxiwE6
その威力によって十数メートルもの距離を両足が擦り、土煙を巻き上げながら押し飛ばされるが、
見事にハッサンは破壊の鉄球を受け止めた。
しかし両の足は地面との摩擦によってボロボロになってしまい、両の腕も威力を殺しきれずに痺れて動かなくなっていた。
「ぐ……うっ」
ドスン、とハッサンはその場に鉄球を取り落とす。
すると鉄球は高速でバーサーカーの下へと帰還していった。
「しまった!」
破壊の鉄球を回収したバーサーカーは動けないハッサンに接近し、はかぶさの剣を振りかぶる。
死を覚悟した一瞬、バーサーカーは横合いから矢の一撃を右腕に受け、吹っ飛んだ。
「無事か、ハッサン!」
「お、おお」
駆けつけたククールに力なく受け応えたる。
今の一撃でのダメージはそれほどでもないが衝撃で四肢が動かなくなっていた。
「ち、ボロボロだな……ベホマ!」
ククールの回復呪文によって何とか腕の痺れは収まり、感覚がマヒしていた足にも痛みが戻ってくる。
「ありがとよ、ぐぅっ!」
「無茶するな、奴は俺がなんとかするからお前は下がってろ」
「心配いらねぇよ、伊達に鍛えちゃいねぇんだ。これくらいで動けなくなるハッサン様じゃねぇぜ!」
「言っても無駄か……! 見ろよ、奴さんも同じらしいぜ」
ククールの視線の先ではバーサーカーが起き上がり、腕に刺さった矢を抜いているところだった。
止血もせずに剣を握り締め、左手には再び鉄球を携え、二人を見つけるや否や飛び出してくる。
「来るぞハッサン! ここが正念場だ!」
「おおよ!!」
ハッサンは拳を打ち鳴らし、ククールは矢を番え狙いを定めた。



「おじさま! おじさま!」
「う〜ん、ムニャ……ハ!?」
気絶していたトロデはマリアに揺り起こされて目覚める。
ガバッと起き上がり、キョロキョロとあたりを見回した。
「バ、バーサーカーは!? あれからどうなったのじゃ!」

559LUNATIC MOON 8/15:2006/06/26(月) 00:34:36 ID:yUjxiwE6
「今ハッサンさんとククールさんが戦ってくれています。私も援護をしたいのですけれど……」
三者の動きが……正確にはハッサンとククールの間を駆け巡るバーサーカーの動きが激しすぎて
下手に攻撃呪文を使えば味方を巻き込んでしまうため、おいそれと手出しが出来なくなっていたのだ。
加えてミラーシールドで呪文を跳ね返されてしまうかもしれないという懸念もある。
その戦いぶりを観てトロデは唸る。
「むう、まさに狂戦士。説得は通じぬであろうな……ここで討つしかあるまい。
 頑張れ〜〜ハッサン、ククール!!」
大きく手を振ってトロデは二人を応援する。
その時、マリアは闇の気配を色濃く感じ取った。
ハッとしてレックスを見るが、少年はまだ眠りについたままだ。
(ならこの気配は一体……)
用心深く周囲を見渡す。そしてマリアは見た。
月下、黒い霧を身に纏いて一直線にこちらを目指して疾走る般若の姿を。
「おじさま!!」
「むう?」
マリアの悲鳴に振り向いたトロデもまたその姿を見る。
「その格好、もしやテリーか!?」
「なんですって?」
トロデはその背格好から一目で般若がテリーだと見抜く。
マリアもその言葉に改めてその姿を見る。
なるほど、黒いオーラに覆われて判断しにくいが確かに先程別れたテリーだった。
「テリーよ、その奇妙な面はなんじゃ!? 何故そのような……」
トロデはテリーに問いかけるが、答えは返ってこない。
だた真っすぐにテリーは駆けてくるのみだ。
だがマリアはその面から感じる闇の気配を感じ取っていた。
(今の彼は……邪悪な呪いに心を奪われている!!)
そう、あの可哀相な子供と同じように。

「おじさま下がって! バギ!!」
「マリア王女!?」

このままでは殺されると直感したマリアは牽制の為に威力を抑えたバギを放った。

560LUNATIC MOON 9/15:2006/06/26(月) 00:35:29 ID:yUjxiwE6
マリアの杖から生み出された無数の真空波がテリーを襲う。
しかしテリーはさざなみの剣を振るうと光の壁を生み出し、バギを弾き返した。
「しまった! きゃぁあああああああああ」
「うぎょえええええええええええええええ」
二人は弾き返された真空波を受け、吹き飛ばされる。
しかし威力を抑えていたのが幸いし、服はズタズタになったものの傷は浅く済んだ。
痛みを堪えてマリアは身を起こすが、そこにテリーが迫る。

「殺す……殺す……殺す……」

殺意の塊となったテリーは無情に剣を振りかぶった。



「な、トロデ王、マリア王女!?」
「ありゃテリーかよ!?」
マリアたちに起こった異変に気付き、ハッサンたちも焦る。だが――
目の前にいるバーサーカーが簡単に救援に行かせてくれそうもなかった。
破壊の鉄球とはかぶさの剣による遠近両方の即死結界が二人の攻撃を鈍らせ、
いまだにバーサーカーはピンピンしている。腕の矢傷の痛みも感じていないようだ。
だがこのままではマリアたちが危ない。
いつまでもバーサーカーに関わっているわけにはいかなかった。
「ハッサン、お前行け。ここは俺が食い止める」
「馬鹿言え! 二人掛りでようやく膠着状態に持ち込んでるってのに俺が抜けたら……」
そこに破壊の鉄球が来る。
タイミングを合わせて二人ともその攻撃を回避し、ククールはニードルラッシュを放った。
瞬時に放たれた四本の矢ははかぶさの剣によって全て中空で叩き落される。
「だったらどうする! ぐずぐずしてるとマリア王女たちが危ない、迷ってる暇はないんだ!」
「なら俺が……」
「お前の方があのテリーって奴のことをよく知ってるだろう! 逆にあのバーサーカーのことは
 俺のほうがよく知ってる、適材適所だ、行け!」
「ぐ……」

561LUNATIC MOON 10/15:2006/06/26(月) 00:36:17 ID:yUjxiwE6
ハッサンはそれでも迷いを見せる……だが。

「しまった! きゃぁあああああああああ」
「うぎょえええええええええええええええ」

そこにトロデとマリアの悲鳴が響き渡る。

(迷ってる、暇はねぇ!!)

ハッサンはククールを見る。
ククールはハッサンを見た。

「後は任せた!」
「後は任せろ!」

すれ違い様にパン、と手を打ち合い、二人はそれぞれの戦場に向かう。
駆け去るハッサンを見てバーサーカーはその背に破壊の鉄球を投げようとするが、
ククールはその足元に矢を撃ちこんでその動きを止めた。
「アイツは忙しいんだ。ダンスの相手なら俺がする。
 お前みたいな奴を相手にするのは趣味じゃあないが、この際は仕方がない。
 付き合ってもらうぜ!!」
「ギィャアアアアアアアア!!」
バーサーカーはククールに向き直ると再び鉄球を振りかぶった。
「ワンパターンなんだよ!!」
ククールは冷や汗をかきながら強がりを口にする。
(やれやれ、この俺がこんな雑魚を相手に死を覚悟しなきゃならんとはね……。
 だが、もう俺の仲間は死なせはしない! なぁエイトよ!)



ギン、と金属音が鳴り響きマリアの手から杖が弾き飛ばされる。
最初の斬撃はかろうじて防いだが、次の攻撃を防ぐ手段はない。

562.:2006/06/26(月) 00:36:33 ID:4vSVsys6
.

563LUNATIC MOON 11/15:2006/06/26(月) 00:37:01 ID:yUjxiwE6
「く……」
「テリー止めるんじゃ!!」
トロデの制止を気にも留めず、テリーは再び剣を……
「うるぁッ、疾風突きぃ!!」
突如として巨体がテリーの前に躍り出て、目にも留まらぬ拳打で斬撃よりも速く喉元をを打ち貫く。
テリーはそのまま地面に叩きつけられ、ゴロゴロと転がった。
「ハッサンさん!」
「ようやった、ハッサン!」
マリアの絶体絶命の窮地を救ったのは後をククールに任せて救援に来たハッサンだった。
「起きやがれテリー! それがお前の出した答えだってのかよオイ!?」
その怒号に応えるようにテリーはむっくりと起き上がる。
足取りはしっかりしていてまるでダメージを受けていないかのようだ。
「ハッサンさん、おそらくテリーさんはあの面の呪いによって正気を失っています!
 なんとかあの面を壊してください!」
「レックスの時と同じかよ……テリー、なら俺の拳骨でお前の目を覚ましてやるぜ!!」
「……殺す」
ハッサンは聖なるナイフを構えるとテリーの斬撃を受け止めた。
そしてまわしげりでテリーを再び吹っ飛ばす。
(これ以上、俺は仲間を失うわけにはいかないんだ! バーバラ、ミレーユ、ドランゴ!
 力を貸してくれ!!)


7つの命が交差する戦いの野を、高台から一人見つめる影がある。
「くくく、これはこれは……中々盛大にやりおうておるのう」
テリーの後を追っていたヒミコである。
「しばし高みの見物と行くか……」
(1人2人喰えれば上等と思っていたが案外と多く食せそうであるな)
ズルリ、と舌なめずりをするとヒミコはその場に腰を下ろした。

彼女は知らない。運命が、近付いてきているのを。

564LUNATIC MOON 12/15:2006/06/26(月) 00:37:40 ID:yUjxiwE6
「姐さん、ありゃ戦闘の音ですぜ!」
「解っています! クリフトさん、あなたはこの辺りに隠れていてください!
 私たちは戦闘を止めに行きます!」
「はい、解りました。私は戦闘の役には立ちませんからね……ご武運を祈ります」
「ああ、こうなったら姐さんは止めらんねぇ……」
「カ・ン・ダ・タ・?」
「へい、行きやす!」
そういってカンダタとアリスはファルシオンに飛び乗ると、森を駆け抜けていく。
駆け去っていくアリス達を見送り、クリフトは思う。
(やれやれ、戦闘に巻き込まれるのはゴメンです。私は生き延びなくてはなりませんからね。
 しかし好機でもある。全てが終わった後に現れて、残った者を殺すのが理想ですが……さて)
どちらにしろ、戦闘の様子は見守らなくてはならない。
クリフトは先を行くアリス達に気付かれぬよう、そっと後を追い始めた。


少年はずっと身を伏せている。
柄のみしか残っていない呪いの剣を握り締め、彼はずっと機を窺っていた。
レックスはベッドが粉砕された直後に目覚めていたが、何度も眠らされた経験から今は動くべきではないと判断したのだ。
常に周囲の状況を気付かれぬよう観察し、いつでも逃げられる体勢はとっている。
しかし、この状況を利用すれば一気に自分以外の者を全滅させることも不可能ではない。
(とりあえず、あの魔物も、仮面の人も僕には関心持ってないみたいだから今は大丈夫だね。
 とにかくチャンスが来るまでは大人しくしていよう)
冷静にそう判断する。
全てを――壊す為に。

(殺すしかない……僕はもう、戻れないんだから)

誰も気付かなかった。レックスの右手が剣の柄を強く握り締めたことに。

戦いは尚も続く。狂気を呼ぶ月に照らされて。
夜はまだ、始まったばかりだった。

565.:2006/06/26(月) 00:37:57 ID:4vSVsys6
.

566LUNATIC MOON 13/15:2006/06/26(月) 00:38:29 ID:yUjxiwE6
【D-4/アリアハン北の平原/夜】

【トロデ@DQ8】
[状態]:HP4/5 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(不明の品が1?) 大錬金釜 聖者の灰 空飛ぶベッド ミレーユの通常支給品
[思考]:この状況を打破する方法を考える レックスの呪いを解く方法を探す 打倒ハーゴン
【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP4/5 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(不明の品が1〜2?) ※小さなメダル トゲの鞭 毒薬瓶
[思考]:この状況を打破する方法を考える レックスの呪いを解く方法を探す
    打倒ハーゴン 竜王(アレン)を倒す
【レックス@DQ5王子】
[状態]:呪われている(呪いの効果弱)  気絶した振り 打撲
[装備]:折れた皆殺しの剣 王者のマント
[道具]:祈りの指輪×1(一回でも使えば限界)
[基本行動方針]:気絶した振りをしながら機を窺う ゲームに乗る

【ハッサン@DQ6】
[状態]:HP3/5 両足に擦過傷と軽度の火傷 疲労
[装備]:聖なるナイフ
[所持]:まだらくも糸 魔物のエサ
[思考]:テリーを止める レックスの呪いを解く方法を探す 打倒ハーゴン
【テリー@DQ6】
[状態]:呪いの効果により防御力が大幅に上昇
[装備]:さざなみの剣 般若の面
[道具]:ボウガン(鉄の矢×30)  イーグルダガー
[思考]:殺戮

567LUNATIC MOON 14/15:2006/06/26(月) 00:39:13 ID:yUjxiwE6
【ククール@DQ8】
[状態]:HP2/3 右腕に火傷(半分回復)  疲労
[装備]:ビッグボウガン(矢 4)
[道具]:天馬の手綱 インテリめがね アリアハン城の呪文書×6(何か書いてある)
[思考]:バーサーカーを倒す レックスの呪いを解く方法を探す マルチェロを止める
     竜王(アレン)と話す
【バーサーカー@DQ2】
[状態]:HP4/5 右腕に矢傷
[装備]:破壊の鉄球 はかぶさの剣
[道具]:ミラーシールド
[思考]:目の前の男を殺す 闘争本能のままに獲物を求める

◆はかぶさの剣…破壊の剣の威力とはやぶさの剣の二回攻撃を併せ持つ。
  一度手放してしまうと効力を失ってしまう。

【D-4/アリアハン北の平原 高台/夜】

【ヒミコ@DQ3】
[状態]:HP3/5
[装備]:なし
[道具]:きえさりそう ホットストーン
[思考]:戦闘を見物 幾人か喰らい傷を癒す サマンサ、アリス、フィオを喰らう

568LUNATIC MOON 15/15:2006/06/26(月) 00:39:50 ID:yUjxiwE6
【D-4/森の中/夜】

【アリス@DQ3女勇者】
[状態]:HP4/5 MP2/3
[装備]:白馬ファルシオン 炎のブーメラン
[道具]:支給品一式
[思考]:戦闘を止めに向かう アリアハンへ向かう
【カンダタ@DQ3】
[状態]:健康
[装備]:ロトのしるし(聖なる守り)
[道具]:支給品一式
[思考]:戦闘を止めに向かう アリアハンへ向かう 姐さんについていく

【クリフト@DQ4】
[状態]:左足に火傷(ある程度治癒) 背中に火傷(ある程度治癒) MP1/2程度
[装備]:なし
[道具]:祝福サギの杖[7]
[思考]:戦闘の様子を見る アリスとカンダタを利用し、自分の護衛をさせる
     自分が優勝し、アリーナを復活させてもらって元の世界へ帰る

※いかづちの杖はマリアの近くに転がっています

569.:2006/06/26(月) 00:40:19 ID:4vSVsys6
566 名前:LUNATIC MOON 13/15 投稿日: 2006/06/26(月) 00:38:29 [ yUjxiwE6 ]

570 ◆hFGszBJYFE:2006/06/26(月) 00:40:29 ID:yUjxiwE6
前編の投下終了です。
15分ほど休憩して後編を投下します。

571.:2006/06/26(月) 00:41:31 ID:4vSVsys6
おつ。
最後の支援ミスった・・。

572名無しさん:2006/06/26(月) 00:42:36 ID:akqpHjls
とりあえずここに投下したらageたほうがいいとは思う。
試験投下、だしね。
ということで、age。

ってか、これ前編かよ!
この状況、続きがものすごく気になるな。

573THE BATTLE ROYALE 1/20:2006/06/26(月) 00:56:45 ID:yUjxiwE6
テリーの鋭い斬撃をナイフで受け止め、拳で、蹴りで、ぶっ飛ばす。
幾度かそれを繰り返すがテリーは一向にダメージを受けた様子を見せない。
その顔を覆う般若の面にも何度か攻撃を加えたが、それはまるで鋼鉄で出来ているかのように
ビクともしなかった。
焦れたようにハッサンは叫ぶ。
「畜生、テリー! いつまでこんなこと続ける気だよ!?」
「お前たちが死ぬまでだ」
「? 意識があるのか!?」
今まで殺意以外の意志をぶつけて来なかったテリーから意味のある言葉が飛びでたことに驚愕する。
「俺はこの面に乗っ取られたわけじゃない。この面から湧き出る殺意、怨念、憎悪に身を任せているだけだ」
「それを乗っ取られてるって言うんだよ!!」
「違う。この面の意志と俺の意志は相反しない。俺は俺の目的の為にこの面を被った。
 いいぞ、ハッサン。あれほど強い忌避を感じていたお前への攻撃も全く躊躇いがない。
 俺はお前を、そこにいる全員を一片の迷いなく殺すことが出来る。憎むことが出来る。
 フフフ……これだ。これこそが俺の求めていた力だ!」
「お前は、ミレーユがそれを望んでいないって解ってて!!」
「俺はそれを望んでいる!! 姉さんがどう思おうと、どんな形であれ俺は姉さんに生きていて欲しいんだ!!」
「この、馬鹿野郎がぁ!!」
再び、剣とナイフが火花を散らす。二合、三合と打ち合い、再び両者は間合いを取った。
その時、トロデが叫ぶ。
「ハッサン、受け取れぃ!」
トロデが投げた小袋をテリーに隙が見えないように受け取る。
「なんだよ、コレ?」
「聖者の灰じゃ! 本来、錬金釜と共に使用して呪いの武具を聖なる武具に変える効果を持つ!
 灰単体の効果は未知数じゃがそれでも幾らかの効果は期待できる! 賭けになるが使ってみい!」
「無駄だ!」
テリーは再び斬り込んでくる。
ハッサンは袋から灰を掴み取ると、テリーに向かって振り撒いた!
その瞬間、テリーの剣から炎が迸って降り注ぐ灰を薙ぎ払う。
「火炎斬り!」
炎に包まれた灰は燃え尽きてテリーにまで届かない。
「無駄だと言った……何!?」

574THE BATTLE ROYALE 2/20:2006/06/26(月) 00:58:43 ID:yUjxiwE6
その時、ハッサンの身体が発光し、テリーの目を灼いた。
「オメー相手に簡単にいくとは思ってねぇよ! おら、まぶしい光ぃ!!」
眼が眩み、テリーの動きが一瞬止まる。
そして再び撒かれた聖者の灰は今度こそテリーの身体に降りかかった。
灰はテリーの身体を覆う黒いオーラに触れるや否や、まるでその力を吸収するように発光して
彼の黒いオーラを減衰させていく。そして同時にマホカンタも効果がきれ、光の壁は消滅した。
「な、なんだこれは!? ハッサン、何をした!」
「へ、トロデのおっさんの言うとおり効果はあったようだな!」
「クソォおおお!!」
苦し紛れに放ったテリーの袈裟斬りをハッサンはその首の僧房筋で受け止める。
「……大防御。どうした、テリー。剣筋が鈍ってるぜ!」
ハッサンは腰を深く落とし、真っすぐに相手を突いた!
渾身の力を込めた正拳突きが正確に般若の面を捉える。
面は鋭い音を立てて亀裂が入った。


「ギィア!」
「ちぃ!」
幾度目かのバーサーカーの猛襲をやり過ごし、ククールは肩で息をする。
ハッサンが前線を抜けたことで明らかに負担が大きい。
(くそ、アイツは疲れってものを知らないのか、全く攻撃が衰えない!
 このままじゃあ次の攻撃は凌ぎきれないな)
だが自分が抜かれれば、目の前の魔物は後ろにいる仲間に襲い掛かるだろう。
テリーを相手にしたまま、後ろから襲われたのでは一たまりもない。
(勝負に出るしか……ない!)
ボウガンの矢は残り4本。一発も無駄に出来ない。
(遠距離から射掛けたのでは奴の反射速度とあの剣に叩き落される。
 鉄球を回避し、接近した上で剣を振るわせてその隙を突くしかない!)
ククールは矢を番えて駆ける。
そこに思惑通り鉄球の攻撃がきた。
(まずこれを避ける!)
大きく避けるわけにはいかない。その分だけ相手に余裕を生むからだ。

575名無しさん:2006/06/26(月) 00:59:13 ID:srkefzw2


576THE BATTLE ROYALE 3/20:2006/06/26(月) 00:59:50 ID:yUjxiwE6
ギリギリで回避する。その際に左耳が削ぎ落とされ、血が舞うが気にしている暇はない。
(鉄球が奴の下に舞い戻る前に決着をつける!)
一発目。
そして瞬時に矢を番えて二発目を放つ。
時間差で放たれた二本の矢をバーサーカーははかぶさの剣で迎撃する。
ククールの背後で鉄球が着弾する音がした。
猶予はもう半秒もない。ククールは再び瞬速で矢を番える。
バーサーカーは最初の斬撃で一発目の矢を、続く斬り返しで二発目を叩き落した。
(こいつで終わりだ!)
そしてククールが止めの矢を放つ。
鉄球の帰還は間に合わない。手に持つ剣も二連撃を放ち硬直している。
バーサーカーにこの三発目の矢を防ぐ手段はない……筈だった。
バチィン、と弾ける様な音がして矢はバーサーカーの顔面に命中し、跳ねさせる。
「ぃよし!」
勝利を確信したククールの顔は一瞬後に青褪めた。
ぐるん、とバーサーカーの顔が仰け反った状態から元に戻る。
その口には……矢がしっかりと歯で受け止められていた。
「んな馬鹿な!?」
普通のボウガンならいざ知らず、このビッグボウガンの矢を歯で受け止めるなど常識で考えられない。
受け止めた瞬間に歯と顎を砕いて口腔を貫くはずだ。
しかしバーサーカーの強靭な顎はその衝撃に耐えたのだ。
代償として何本かの歯が砕け、顎にヒビが入ったがバーサーカーは気にも留めなかった。
そして硬直から抜け出した右手を振り上げられ、はかぶさの剣がククールを襲う。
最初の斬撃はかろうじて胸部に赤い筋を一つ残すだけで済んだ。
しかし瞬時に続く二回目の残撃は……ククールの左腕を斬り飛ばした。
「ぐっぅああああああああああああああああああああああああああ」
痛みにのたうち、バーサーカーから逃れようと無様に地面を転がる。
しかしバーサーカーは容赦なく鉄球を持つ左腕を振りかぶった。鉄球は既に帰還している。

そして――振り下ろされた。

「ククールさん!」

577THE BATTLE ROYALE 4/20:2006/06/26(月) 01:00:59 ID:yUjxiwE6
しかし鉄球は飛ばなかった。破壊の鉄球を繋ぐ鎖になにかが絡み付いている。
加勢に来たマリアが振るう棘の鞭だった。
「ぎぅあ!」
「きゃああ!」
しかしバーサーカーの膂力の前にマリアは振り回され、地面に倒される。
そこに致命の刃が振り下ろされる……が、横合いから矢の一撃を受け、剣は地に落ちた。
「ぎゃお?」
「俺の、目の前で……レディを傷つけようとは……いい度胸だぜ」
「ぎぃあああ!!」
バーサーカーは地に落ちた剣を拾おうともせず、鞭が絡みついたままの破壊の鉄球を放り捨てて、
ただ狩りを邪魔された怒りだけを持ってククールに襲い掛かった。
「待、……ってたぜ!」
ククールは未だ血を噴出している左腕の痛みを無視し、飛び掛ってくるバーサーカーに蹴りを放った。
バーサーカーは爪でその蹴りを受け止めようとするが、ククールの足は逆にその腕を絡め取るように
変化し、大腿部とふくらはぎに腕を挟みこむと突進の勢いを利用して地面へ引き倒した。
その瞬間ククールは体重をかけてバーサーカーの右腕を折る。
「ぎぃおおお!」
これには流石のバーサーカーも苦悶の声を上げ、残った左腕でククールを払おうとする。
しかしククールも右膝で左腕を押さえつけ、バーサーカーの動きを完全に拘束した。
「悪いな。例えお前が絶世の美女だったとしてもこの場は情けをかけるわけにはいかないんだ。
 だが……せめて俺のとっておきをくれてやる!」
バーサーカーに馬乗りになった状態でククールは祈りを込めて十字を切った。
聖なるオーラがククールの右手に生まれ輝き叫ぶ。
攻撃の隙が大きく、今の今まで使えなかったククールの最大戦闘技。

「グランドクロス!!」

「ギャォ ――― 」
超至近距離から放たれた聖なる十字は、バーサーカーに断末魔を上げさせる間もなく
その身体を完全に分解し、消滅させた。

578名無しさん:2006/06/26(月) 01:01:12 ID:srkefzw2


579THE BATTLE ROYALE 5/20:2006/06/26(月) 01:02:50 ID:yUjxiwE6
(むう、ククールめ。大分重傷を受けたようじゃがなんとか勝ったようじゃな)
気絶したククールに駆け寄るマリアを見てトロデは彼の勝利を確信する。
マリアは回復呪文の光を当て、介抱している。後は任せるしかない。
「ハッサン、向こうはケリがついたぞ! 心配するな!」
「おう!」
ハッサンはその報に力強く頷くと、再びテリーと向き合う。
「あとはお前だけだ、テリー。いい加減に目を覚ましやがれ」
「黙れ。俺はお前たちを皆殺しにするまで止まるわけにはいかないんだ」
テリーの被る般若の面は左目の部分が欠け、素顔の一部が覗いている。
しかし一時的に減退していた黒の気は再び力を盛り返しており、呪いは未だ強くテリーを覆っていた。
「ううむ、やはり聖者の灰といえどそれだけでは一時的に呪詛を緩和するのみか。
 完全に呪いを消し去るにはやはり破壊するか、錬金釜を使わなければ……」
「その必要はないよ」
「な……グボォッ」
突然聞こえた声に振り向くと、トロデの腹部には柄のみの剣を握った拳がめり込んでいた。
「な、おぬし……」
柄の突起が腹部の皮膚を裂き、紫の鮮血と肉を露出させる。
トロデはその場に倒れ、うずくまる。気絶はしなかったがまともに動くことはできない。
「後で殺してあげる、今は……」
トロデを倒した少年、レックスはハッサンとテリーの方を向くと掌を翳す。
その時、戦っていたハッサンとテリーもその存在に気付いた。
「ああ、レックス? ! トロデのおっさん!!」
「あいつは姉さんを殺した……!」
テリーはハッサンの脇を抜けると剣を振りかざして突進する。
ハッサンもまた一呼吸遅れて走り出す。

しかし……全ては遅かった。

「ギガ、デイ〜〜ン!!」

甲高い声と共に青銀の稲妻が迸る。
それと同時に少年の指に嵌っていた指輪が澄んだ音を立てて砕け散った。

580THE BATTLE ROYALE 6/20:2006/06/26(月) 01:04:32 ID:yUjxiwE6
「くぅああああああっ」
「ぐぅおおおおおおっ」
至近に迫っていたテリーも、その背後にいたハッサンもまともに電撃を浴びて倒れる。
衝撃でテリーの面はさらに亀裂が走り、砕け散って左半面が露出する。
ビクン、ビクンと痙攣し、全身を焦がしたその二人の姿は明らかに致命傷だった。
その二人の姿を見て、トロデはうずくまりながらも嘆く。
「おおお、ハッサンよ……テリーよぉ……なんということじゃ」
「あれあれ、まだ生きてるね。しぶといなぁ」
レックスは酷薄な笑みを浮かべると二人に止めを刺そうと近付いてく。
動くことも出来ないトロデは黙ってそれを見続けるしかなかった。
(幼子と思い、手足を縛るまではしなかったワシのミスじゃ……。
 許せ、ハッサン……テリーよ……)
そしてレックスがテリーの握っていたさざなみの剣を取り上げた時、彼は、立ち上がった。
ハッサン。彼はもはや長くはない命の最期の力を振り絞って立ち上がっていた。
「へぇ、ギガデインを喰らって立ち上がるなんて凄い体力だね。驚いちゃった」
「レ……ックス。呪いの力は……半減してるはずだ……目ぇ覚ませ!
 お前は……本当は……こんなことが出来る奴じゃねぇはずだろう……」
「うん、でもこうなっちゃったからには仕方ないんだ。もう後戻り出来ないなら前に進むしかない。
 そして全てをなかったことにしてタバサと暮らすんだ。それしかないんだよ」
「違う! お前は、まだ……ミレーユだって……」
「違わないよ」
ずぶり、と鈍い音と共にさざなみの剣がハッサンの心臓を貫く。
ごぶり、と喉から血を溢れさせて、ハッサンはその場に崩れ落ちた。
「畜生……俺は、何も……できないで……畜、生……」
それが、ハッサンの最期の言葉だった。
レックスはハッサンの死体を一瞥すると今度はテリーに向き直った。
剣を振り上げる。
「お姉さんと同じ場所に送ってあげるよ。やっぱり姉弟は仲良くしなきゃね」
そして振り下ろす瞬間、レックスは振り向いて呪文を唱えた。
「フバーハ!」
レックスの前面に生まれ出る光の幕が炎の波を追い返す。
しかしそれでもいくらかの火炎は幕を突き破り、レックスの肌を炙った。

581THE BATTLE ROYALE 7/20:2006/06/26(月) 01:05:41 ID:yUjxiwE6
「く、くそ、一体誰?」
目の前にいたのはいつの間にかいかずちの杖を拾い上げていたマリアだった。
「おじさま、逃げてください!」
「む……う、そうしたいのじゃが身体が動かん……マリア王女。
 どうせワシは助からん……この上はおぬしだけでも逃げるのじゃ。ククールも同じ気持ちじゃろう」
「弱気になってはいけませんわ、おじさま。ならばこの場でレックス君を無力化します!」
マリアはトロデを庇うようにレックスの前に立ちはだかる。
トロデは魔物になったことで人間の身体よりも多少頑丈になっていたが、それでも腹部の傷は深く
今しばらくは動くことは出来ない。
ククールはマリアの呪文と応急処置によって止血だけは終わっているが、未だ予断を許さない重傷だ。
ハッサンは既に息絶え、テリーも最早長くはない。
そんな絶望的な状況で脂汗を垂らしながらもマリアは敢然と立っていた。
「へぇ、そうだね。そういえばお姉さんには何度も眠らされちゃったっけ……」
ニヤリと笑うとレックスは剣を翳し、光の壁を生み出す。
それを見てマリアの顔はいっそう蒼醒めた。
「これで呪文は僕には効かない。さぁ、どうやって僕を無力化するつもりなのかな?」
「そ、それは……」
「もちろん悪い子には折檻です!!」
「「!?」」
近くの丘の向こうから突如として聞こえてきた声に驚き、みな一斉にその場所を見た。
馬の嘶きが聞こえ、蹄の音が鳴り響き、そして……それは現れた。
小さな丘を軽々と飛び越える白馬。その背に乗っているのは覆面を被った変態と、旅装の少女だった。
近くまで来ると二人は馬から飛び降りて、レックスと対峙する。
「な、なんなの?」

「なんだかんだと聞かれたら!」
「答えてあげるが世の情け!」

少女が、覆面が、交互に口上をあげ始める。

582名無しさん:2006/06/26(月) 01:05:53 ID:srkefzw2


583THE BATTLE ROYALE 8/20:2006/06/26(月) 01:07:26 ID:yUjxiwE6

「世界の破壊を防ぐため」
「世界の平和を守るため」
「愛と真実の正義を貫く」
「ラブリィー、チャーミィーな主人公!」

「アリス!」 「カンダタ!」

「世界を駆けるロトの勇者の行く手には!」
「光溢れる、白い明日が待ってるぜ!」

「ヒヒ〜〜〜ン」

最期に白馬がいななき、彼女達の口上は終わったらしい。
アリスと名乗った少女は周囲の惨状を確認し、眉を顰めた。
「な、なんですの?」
急に現れて場違いな名乗りを上げる少女達にマリアは狼狽する。
(しかもロトですって? あんな少女が?)
まさか大男の方ではないと思いたい。
アリスは悲しそうな顔でレックスに尋ねる。
「この惨状は君がやったんですか?」
レックスは少しビックリしていたようだったが、その質問に薄く笑みを浮かべると楽しそうに答えた。
「うん、半分くらいはそうだよ。そっちに倒れてる二人のお兄さんは僕がやっちゃった。
 向こうにいるお兄さんは別の魔物と戦ってやられたみたいだね。ま、すぐに殺すつもりだったけど」
アリスはレックスが指差した方向をチラリ、と見る。
そして今度はマリアに尋ねた。
「あなたはこのゲームに乗っているんですか? 魔物を庇うようにしていますが」
「な、おじさまは魔物ではありません! 呪いによって姿を変えられているだけです!」
マリアは慌てて抗弁する。その必死さを見て――
「なるほど」
アリスは素直に頷く。
嘘を言っているようには見えないし、何よりも何故か彼女に親近感が持てた。

584THE BATTLE ROYALE 9/20:2006/06/26(月) 01:09:13 ID:yUjxiwE6
「カルロスやサブリナと同様の呪いですか。カンダタ!」
「へい!」
「向こうに倒れている人と魔物をファルシオンに乗せなさい! そしてあなた……」
「マリアです」
「マリアさんはファルシオン、あの白馬を引いてアリアハンまで……」
テキパキと指示を出すアリスを慌てたように遮る声がある。
「ちょっと、何を勝手に話を進めているのさ。僕を無視しないでよ!
 ここにいる全員、僕が殺すんだ!」
斬りかかってきたレックスを手に持つブーメランで受け止める。
「何故です!? そんなことをしてもあのハーゴンが喜ぶだけでしょう!
 倒すべきはハーゴンであり、私たちが殺しあうべきではありません!!」
アリスは力任せにレックスをはじき飛ばす。
体重差で劣るレックスは軽々と飛ばされるが、空中で体勢を整え、危なげなく着地した。
「アリスさん、と仰いましたわね。あの少年は皆殺しの剣の呪いに囚われているんです!」
その言葉にアリスはレックスの右手に握られている剣の柄を見る。
確かに禍々しい邪気がそこから漏れ出ているのが解った。
「そうさ、僕は呪いに苦しめられている可哀相な子供なんだ。そんな子供と戦える? お姉さん」
からかうように笑うレックスを無視してアリスはマリアに質問する。
「呪いを解く方法は?」
「解りません。あの剣の柄を完全に破壊するか……神父さまと同じ解呪の力を持つアイテムか
 呪文くらいしか……」
「サマンサならシャナクが使えますけど、都合よくここに現れてくれるはずはないでしょうね……」
その時、ククールとトロデをファルシオンに乗せ終えたカンダタがやってきた。
「姐さん、準備できました。それとこれを……」
カンダタは拾った隼の剣をアリスに渡す。自身は破壊の鉄球を携えていた。
「ええ、ありがとう。マリアさん、あなたは彼らを連れてここを離れてください。
 後は私たちが何とかします」
その言葉にマリアはいくらか逡巡していたようだが、意を決すると深々と頭を下げた。
「申し訳ありません。宜しくお願いします」
手綱を取るとアリアハンの方に向けて駆け出す。
(あの青い服の武器を持った男がいる可能性がありますけど、おじさまとククールさんの治療するには
 町の方がよりよいのは事実。ここは仕方ありません)

585THE BATTLE ROYALE 10/20:2006/06/26(月) 01:11:11 ID:yUjxiwE6
マリアは倒れたハッサン、テリーの方を見て少し目を閉じると、手綱を引いて走り出した。
(ハッサンさん、テリーさん、このような企ては必ず止めて見せます。だから……安らかに……)


馬を引いてこの場を離れるマリアを見て、レックスは呪文を唱える。
「逃がさないよ! ベギラマ!!」
レックスの掌から焦熱波が迸り、マリアへと疾走る。
しかしその間にアリスが立ちはだかり、また呪文を唱えた。
「竜の吐息よ、この掌に宿れ! ベギラマ!」
全く同じ呪文が全く同じ威力でぶつかり合い、互いの威力を相殺する。
「邪魔しないでよ!」
「いいえ、邪魔させてもらいます。カンダタ、援護を!」
「了解っす!」
破壊の鉄球が唸りをあげ、レックスを強襲する。
レックスはそれを横飛びに回避するが、そこにアリスが走りこんでいた。
「二人がかりなんてズルイよ!」
「競技ならいざ知らず、仲間と共に悪を討つのはズルではありません!」
二人の勇者が振るう刃が撃ち鳴り、周囲の空気を震わす。
(この子、強い! でも、このままなら!)
(うわぁああ、このお姉さん強いよ! このままじゃ……)
レックスは状況の劣勢に、逃走を考え始める。
しかし即席の連携といえど、アリスとカンダタはレックスにその余裕を与えなかった。
結果、レックスはよく戦ったといえる。
しかし呪文を詠唱する暇も与えられず、アリスとカンダタの前についに力尽きた。
キン、と金属音が鳴ってさざなみの剣が跳ね飛ばされる。
武器を失ったレックスは力なくその場にぺたん、と尻餅をついた。

「僕を、どうするの?」
「安心してください、どうもしません。戦意が無くなればそれで充分、一緒に行きましょう」

その言葉にレックスとカンダタは驚愕する。
「本気なの! 僕をそのままにしておいたらまた誰か殺すよ!?」

586名無しさん:2006/06/26(月) 01:11:20 ID:srkefzw2
しえん

587THE BATTLE ROYALE 11/20:2006/06/26(月) 01:12:58 ID:yUjxiwE6
「姐さん、どういうつもりですかい? せめて手足縛って猿轡くらいは……」
一気にまくし立てる二人にフルフルと首を横に振るとアリスは優しい声でレックスに告げる。

「君は、もう呪われていないでしょう?」

心臓を、貫かれた、気がした。

ブルブルと震えながら、レックスはその言葉を否定する。
「ち、違うよ……僕は呪われてるんだ。だから今までたくさんの人を殺して……、
 もう、戻れないんだよ」
それを聞いてアリスは諭すように語り掛ける。
「確かにその剣を手にした時はそうだったかも知れません。
 でもその剣が折れたとき、君はその呪縛から抜け出せていたのではないですか?」
「違う! だったら僕は勇者としてハーゴンと戦おうとしていた筈だよ!
 でも僕はそれからも人を……もう僕は戻れないんだよ!!」
「いいえ、そんなことはありません」
アリスには確信があった。
レックスと剣を撃ちあい、生死を賭けた戦闘の中で悟った真実。
彼の剣は、それに込められた意思は邪悪なものではなかった。
アリスが感じ取ったレックスの思念。それは、後悔と懺悔、そして恐怖。
彼の精神は呪いが弱まった時に既にそれを無効化していた。
そして彼は自分の行いを全て呪いに責任転嫁をして、罪の意識から逃れようとしていたのだ。
レックスは強い。しかし、その心は年相応な弱さを持っていた。
だから本当の自分を心の奥底に閉じ込め、呪われた自分というもう一人の自分を生み出した。
その根幹にある思いは一つ。

死にたくない。

その思いが、彼に自分自身さえも欺かせた。
もう戻れない、そう暗示をかけて彼は真実の心を覆い隠した。

彼は、もう呪われてなどいなかった。既に解放されていたのだ。

588THE BATTLE ROYALE 12/20:2006/06/26(月) 01:14:12 ID:yUjxiwE6

「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! そんなの嘘だ!
 僕は呪われてなきゃいけないんだ! じゃないと、じゃないと……」

レックスは涙をボロボロと流して必死に否定する。
そんな彼をアリスはゆっくりと抱きしめた。
「レックスくん。人は間違いをするものです。私だって何度間違ったか知れません。
 ここにいるカンダタもかつては大悪党だったのです。でも、今ここにいます。
 君は、もう戻れないといった。でもそんなことはありません。手遅れなんてありません」
レックスはもう応えない。ただ嗚咽を繰り返すのみだ。
カンダタは何も言わずにじっと立っていた。
「人は生きている限り償えます。君が犯してしまった罪はとても重いものかもしれない。
 一生かかっても許してもらえないかもしれない。ずっと責められ続けるかもしれない。
 でも、戻れないなんて事は無い。償う心がある限り、私たちは正しい道に戻れるのです」
アリスはレックスを胸から離すとその瞳を見つめる。
「君は、間違ってしまいました。でも、やり直せます。
 私も、このカンダタも手伝います。…… 一緒に、行きましょう?」
レックスはしゃくりあげながらも、アリスを見る。
「ヒック、……いいのかなぁ? ヒック、ヒック、僕は、本当に……戻れる、のかな?」
「ええ、きっと」
アリスは力強く頷く。
カラン、とレックスの手から皆殺しの剣の柄が零れ落ちる。

このとき、本当の意味でレックスは呪いから解き放たれた。

どれだけの時間が経ったか。
レックスはしばらくアリスの胸で泣き続けた後、両手でグシャグシャになった顔を拭う。
そしてしっかりとアリスを見た。
「ありがとうお姉さん……僕、何ができるか解らないけど、まずあの人たちに謝ります。
 そしてハーゴンと戦います。そして……そして、僕は……」
アリスは嬉しそうにその言葉にうん、うん、と頷く。
カンダタも微笑ましくその光景を眺めていた。

589THE BATTLE ROYALE 13/20:2006/06/26(月) 01:15:55 ID:yUjxiwE6
そして、レックスは、何かを、言おうとして――――


暗い……暗い……暗い……ここはどこだ。
俺は一体何をしている。
そうだ、俺はハッサンと戦っていて……姉さんの仇が……。

薄っすらと目を開ける。まず目に入ったのは月だった。
視界が白く染まり、眩しい。
仰向けの状態からごろん、と転がりうつぶせになる。その際に全身を激痛が走った。
ぼんやりとした視界が痛みでハッキリとする。
側にはハッサンが倒れていた。

……死んでいた。

誰に、とは思わなかった。自分が犯人でない以上、殺した相手は決まっている。
ゆっくりと辺りを見回した。
見分けられないほど遠くではなく、手の届くほど近くでもない。
そんな場所に三人の男女がいた。二人は知らない奴だった。
しかし、最後の一人。忘れられるはずも無い。
姉さんの、ハッサンの……そして自分の仇。
彼の右半面に張り付いている般若の面の残骸が殺意を伝えてくる。
自分はもう死ぬ。ならば、せめて仇を討たなければ。

奴を、殺さなければ。

彼……テリーはザックからボウガンを取り出すと矢を番えた。
ボロボロの腕が震えて、上手く狙いを定めることが出来ない。
そうしている間にも彼の命はポロポロと零れ落ちていく。
ただでさえ、ぼんやりとしていた視界が更にぼやけていく。
意識が朦朧として、今にも死の淵から足を踏み外しそうだ。
彼の力はどんどんと削ぎ落とされ、すでに狙いをつけられるような状態ではなかった。

590THE BATTLE ROYALE 14/20:2006/06/26(月) 01:17:19 ID:yUjxiwE6
そして……彼の命の灯が消えるその瞬間。
テリーの視界に色が戻った。腕に力が戻った。それは燃え尽きるろうそくの最期の燃焼。
そして、彼は……矢を――はなった。


その矢は一直線に疾走し、レックスの胸を背後から刺し貫いた。
何かを口にしようとしていたレックスは言葉の代わりに血を零し、倒れた。
一瞬、何事が起こったのか理解できなかったアリスは事態を悟ると慌てて回復呪文を唱え始めた。
「レックスくん、レックスくん、しっかりしなさい! 君は生きなければいけません!!」
必死に呼びかけ、傷口に治癒の光を当て続ける。

致命傷、だった。

カンダタは一つ吼えると、矢の飛んできた方向に駆け出していった。
ボウガンを構えていたテリーを見つけ、引き摺り起こし、拳を振りかぶって……そして止まった。
既に、死んでいたから。
カンダタはテリーを地に下ろすと、力なくアリスの元へと戻っていった。

「い、やだよ……お姉さん、死にたく、ない……僕は……まだ、償って……ない……」
「大丈夫、助けます! 死なせるものですか!」
アリスはそういって呪文を唱え続ける。頭では無駄だとわかっていても。
彼女はその行動を止めようとはしなかった。
「死にたくないよ……お、父さん……母……さ、タバサ……僕は……」
「大丈夫、大丈夫、絶対に大丈夫です」

何度繰り返しただろう。

どれだけの時間が経っただろう。

気付いた時には ――ー 

            ――― もう、声は……聞こえなくなっていた。

591名無しさん:2006/06/26(月) 01:19:40 ID:srkefzw2
しえん

592THE BATTLE ROYALE 15/20:2006/06/26(月) 01:19:46 ID:yUjxiwE6
風が吹き、マリアは振り返った。
あのロトと名乗った少女は大丈夫だろうか。
その時、馬上から声が降ってきた。
「ぐ、なんだ、ここは? 俺は……ぐあ!」
「ククールさん、目が覚めましたか? 今はある人に助けられて馬でアリアハンに向かっているところです」
ククールは自分の身体を見て、状況を大体把握したようだ。
呪文を唱え、自分の傷を癒し始める。
「く、トロデ王も結構な重傷のようだな」
「はい、なんとか止血までは終わりましたけど早く安全な場所で治療しないと」
といってもククールもマリアも魔力に余裕がなくなってきている。
このままでは……危ないかもしれない。
「ハッサンは?」
「………」
マリアは静かに首を振り、それで全てを悟ったようにククールは天を仰いだ。
「馬鹿、野郎……」
その時、進行方向に一人の神官服の男が現れた。
「誰?」
「あやしいものではありません。私はアリスさんの仲間です!」
「彼女の?」
その実直そうな青年はマリアたちに駆け寄ると回復呪文を唱え始めた。
「私も治癒呪文はいくらかの心得があります。手伝わせてください」
「助かります! これでアリアハンまで持つでしょう、ありがとうございます」
深々と頭を下げるマリアに神官、クリフトは手を振って見せる。
「いえ、困った時はお互いさま。さぁ急ぎましょう、早く安全な場所へ行かなくては」
クリフトはマリアの代わりに手綱を引くと、歩き始めた。
(くく、この満身創痍の集団。すぐに殺そうかと思いましたが、やはり念を入れておかなくては。
 信用させて、元気なものから順に消していくべきですね)
心の中で彼は哂う。
その後姿をククールは目を細めて見つめていた。
(なんだ、胡散臭い野郎だ……だが回復呪文をかけてくれたのは事実。しばらくは様子を見るか……)
それぞれの思惑の中、彼らは進む。
そして、城門が見えてきた。

593THE BATTLE ROYALE 16/20:2006/06/26(月) 01:21:12 ID:yUjxiwE6

低く嗚咽する声が風に乗る。
カンダタはレックスを抱きしめたままのアリスに何も言えず、側に立ち尽くしていた。
ここを離れなければいけない。
しかし今のアリスに声を掛けることは躊躇われた。
死んでいった者たちの埋葬でもしよう。
そう考え、カンダタはゆっくりと周囲を見渡した。

それに気付いたのは偶然だった。

平原の、草を掻き分けて何かが移動している。
しかしそこには何も見えない。
草はひとりでに左右に分かれていっているのか。
しかしその方向はゆっくりと、しかし確実にアリスの方に近付いていた。
カンダタの背筋に悪寒が走る。
その時思い出した。きえさりそうという不思議な草の存在を。
何も、考えなかった。
ただ、飛び出して「それ」とアリスの間に躍り出た。

「姐さん!!」

アリスが振り向く。
その時には既にカンダタの右肩は食い千切られていた。
「ぐぎゃぁあああああああああああ」
「カンダタァ!!」

カンダタが絶叫をあげる。
アリスは呪文を唱えるとカンダタを銜えている見えない何かに向かって呪文を唱えた。

「姿を現しなさい、妖怪! メラ!」

小さな火の玉はその何か、に命中してその姿を浮かび上がらせる。

594THE BATTLE ROYALE 17/20:2006/06/26(月) 01:22:40 ID:yUjxiwE6
それは5つの首を持つ巨大な竜。

「あなたは……ヒミコ。いやさ、やまたのおろち!!」
「くくくくく、高みの見物を決め込んでみれば思わぬところで思わぬ獲物と出会えたものよ……。
 うれしや、うれしや」
「カンダタを離しなさい!」
アリスは隼の剣を構えるとおろちの首の一つに斬りかかった。
しかしおろちは銜えたカンダタをアリスの目の前に動かす。さながら盾にするように。
アリスが攻撃を躊躇ったその瞬間に別の首がアリスに体当たりをかまし、撥ね飛ばされた。
「あぁああ!」
「ぐ、あ、姐さん!!」
カンダタは見た。
アリスが血を流して宙を舞っているのを。
それは、カンダタが人質に取られたせいで起こった事態。

彼女の力になるのが望みだった。
理不尽な命令をされても嬉しかった。
姐さんの力になれていることが嬉しかった。

それが、今は、枷に、なっている。

「ふ、ざ、け、ん、なぁああああ!!!」

カンダタは全身に力を漲らせ、右肩に食い込んでいる顎を外そうとする。
しかし右腕に力が入らず、ビクとも動かない。
ならば、とカンダタは逆に左腕で竜の首を絞め始めた。
ビキ、っと骨にヒビが入る音がする。

「な、何をしておるか! 虫けら風情が、調子に……」
「調子に乗ってんなぁ……テメェだぁっ!!」

バキィっと言う音が響き、カンダタの肉と、骨と、竜の顎は砕け散った。

595THE BATTLE ROYALE 18/20:2006/06/26(月) 01:24:48 ID:yUjxiwE6
激痛におろちの残りの頭が咆哮をあげる。
そして支えを失ったカンダタは地面に落下した。
「へ、へへ……ざまぁみやがれ……」
そう呟いた後、カンダタの喉から血が溢れた。
ゴボゴボ、と嫌な音を立てて覆面が赤く染まっていく。
薄れいく意識の中、カンダタはアリスの幻影を見た。
カンダタを見て泣き叫んでいる。そんなのは有り得るはずないのに……。

――へへ、姐さん。何泣いてるんですかい……
――どうです? みてくれましか今の
――あんなでかい竜の頭をぶっ潰したんですぜ……
――格好よかったでしょ? あっしぁ、姐さんのためなら……


「馬鹿、格好よすぎなんですよ……子分が……私より目立つんじゃありません……」
アリスはカンダタに向かって苦言を吐く。泣きながら、もう答えないカンダタに。

ゆらり、と月明かりが遮られ、アリスに影が落ちた。
アリスはゆっくりと立ち上がりその影を生み出した存在へと振り向く。

「ゆ、油断したわ……だが……この好機、退きはせぬ、退きはせぬぞぉ!
 アリスよ、我が憎き仇よ。ゲームなどはどうでもよい。我が命もどうでもよい。
 ただ、おぬしを喰らう為にわらわはここに在るのじゃ!! わらわの糧となれぃ!!」

一つ欠けた四匹の竜が一斉にアリスへと向かって襲い掛かる。

「やまたのおろち。私からカンダタを奪ったこと、許せません!!
 再び冥府へと送り返してあげます!!」
アリスは襲い来る竜に臆することなく、悪意の真っ只中へと飛び込んでいった。


長かった戦いは最終局面を迎えようとしていた。

596名無しさん:2006/06/26(月) 01:25:36 ID:srkefzw2
しえん

597THE BATTLE ROYALE 19/20:2006/06/26(月) 01:26:00 ID:yUjxiwE6
【D-4/アリアハン北の平原→アリアハンへ/夜】

【トロデ@DQ8】
[状態]:HP1/5 意識朦朧 腹部に深い裂傷(止血) 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷 馬上
[装備]:白馬ファルシオン
[道具]:支給品一式(不明の品が1?) 大錬金釜 ミレーユの通常支給品
[思考]:??? レックスの呪いを解く方法を探す 打倒ハーゴン

【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP3/5 MP1/3 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷 徒歩
[装備]:いかずちの杖
[道具]:支給品一式(不明の品が1〜2?) ※小さなメダル 毒薬瓶
[思考]:トロデの治療 アリアハンに向かう 打倒ハーゴン 竜王(アレン)を倒す

【ククール@DQ8】
[状態]:HP1/6 MP1/2 右腕に火傷(半分回復)  疲労 左腕切断 馬上
[装備]:ビッグボウガン(矢 0)
[道具]:天馬の手綱 インテリめがね アリアハン城の呪文書×6(何か書いてある)
[思考]:自分の治療 クリフトを怪しんでいる マルチェロを止める 竜王(アレン)と話す

【クリフト@DQ4】
[状態]:左足に火傷(ある程度治癒) 背中に火傷(ある程度治癒) MP1/2程度  手綱を引いている
[装備]:なし
[道具]:祝福サギの杖[7]
[思考]:マリアたちと同行し、油断させて殺す アリスとカンダタを利用し、自分の護衛をさせる
     自分が優勝し、アリーナを復活させてもらって元の世界へ帰る

598THE BATTLE ROYALE 20/20:2006/06/26(月) 01:27:19 ID:yUjxiwE6
【D-4/アリアハン北の平原/夜】

【ヒミコ@DQ3】
[状態]:HP3/5 頭が一つ潰れている
[装備]:なし
[道具]:ホットストーン
[思考]:アリスを喰らう 幾人か喰らい傷を癒す サマンサ、フィオを喰らう

【アリス@DQ3女勇者】
[状態]:HP3/5 MP2/3
[装備]:炎のブーメラン  隼の剣
[道具]:支給品一式
[思考]:ヒミコを倒す

【バーサーカー@DQ2 死亡】
【レックス@DQ5王子 死亡】
【ハッサン@DQ6 死亡】
【テリー@DQ6 死亡】
【カンダタ@DQ3 死亡】
【残り20名】

※棘の鞭、ミラーシールド、破壊の鉄球、さざなみの剣、ボウガン、鉄の矢、聖なるナイフ
 その他、支給品はその場に放置されています。

599.:2006/06/26(月) 01:29:16 ID:4vSVsys6
おつ。
ヒミコとアリスのタイマン・・・。
ヤバい想像しかできねぇwアリス〜;;

600 ◆hFGszBJYFE:2006/06/26(月) 01:31:34 ID:yUjxiwE6
以上です。
後編は書き上げたばかりなので構成と推敲が甘いです。
長々と書いてしまいましたが、一応ここまで書いたのは理由があります。
十一人が入り乱れる話となったわけですが、次の人にバトンを渡すまでに
なんとか一度にかける人数を減らそうとした上でこうなってしまいました。
さすがに十一人が戦闘に突入して、はい次の人、では責任感がなさすぎるだろうと思ったからです。

一応、これでヒミコとアリス、そしてクリフト、マリア、トロデ、ククールの2人と4人に別れたわけで、
次の書き手さんに掛かる負担は軽減されたのではと思っています。

それでは本投下までに一日ほど待ちますので意見を宜しくお願いします。

601名無しさん:2006/06/26(月) 01:32:45 ID:akqpHjls
放送は聞いてるはずだから、フィオを喰らうの方針は消したほうがいいやも。
まあ、死体を喰うということかもしれないがw

602名無しさん:2006/06/26(月) 01:37:03 ID:ESMJpW1w

佳境だな…
道具欄はもう一度確認したほうがよい。
聖なる守りとか抜けてるから

603名無しさん:2006/06/26(月) 01:48:13 ID:srkefzw2

ヒミコがカンダタの右肩を食い千切ったのに
右肩を銜えたままなのが気になった
どうでもいい上に俺が間違ってるかもしれないが

604名無しさん:2006/06/26(月) 12:59:37 ID:1WCrAP0k
投下乙です。すげー力作だ!
それにしてもまさにバトルロワイヤル、随分死んだなぁ…。
個人的にはレックスが死ぬのが惜しいなぁ。フローラとの悪夢のマーダー対決を
読みたかった!
あとカンダタも惜しい!

605名無しさん:2006/06/26(月) 13:17:12 ID:ja986vSc
乙。
娘ってフォズのことだよな?
だったら、クリフトはフォズが瀕死になってたこと知らないんじゃなかったか?
違ったらごめん。

606名無しさん:2006/06/26(月) 19:29:01 ID:.kwVPLxE
5人殺し(うちマーダーが3人)かつベッドと聖者の灰を破棄か、随分冒険したねー。

ちょと気になったの何点か。
・ギガデイン強すぎない?
仮にも肉体派であるハッサンと設定上は名剣士な上に般若の面で防御性能上がりまくってるテリーを
一撃で共に致命傷を負わせるって、ちょと威力高すぎるような気がしたよ。
ハッサンはその後トドメ刺されたから仕方ないけど、テリーは完全に死因これだけでしょ?

・グランドクロスで持ち主が消滅したのに武器だけ残ってる
バーサーカーのものだったのをカンダタが拾うシーンなんだけど、
グランドクロスで「バーサーカーが分解し消滅した」んなら、普通は持ってた武器も消えそうな気がするな。


後は落ちてる支給品は「その他」扱いじゃなくて全部きっちり書いて欲しいことと
各キャラの行動方針についての推敲があれば良いと思います。力作乙です。

607名無しさん:2006/06/26(月) 19:34:29 ID:.kwVPLxE
って両方武器捨ててたか。
後者は忘れてください、ごめん

608 ◆hFGszBJYFE:2006/06/26(月) 19:40:45 ID:yUjxiwE6
般若は防御力は上がっても魔法抵抗力は上がらなかったと思います。

609名無しさん:2006/06/26(月) 19:45:01 ID:5V8b9Bwk
ギガデインはまともに喰らえば必死の威力だろ

610名無しさん:2006/06/26(月) 20:47:48 ID:akqpHjls
ギガデインどころか、メラミでもまともにくらえば死ぬだろうな。

611名無しさん:2006/06/26(月) 20:48:48 ID:akqpHjls
ああ、またageた…。

612 ◆hFGszBJYFE:2006/06/26(月) 21:22:42 ID:yUjxiwE6
一つ欠けた四匹の竜が一斉にアリスへと向かって襲い掛かる。

「やまたのおろち。私からカンダタを奪ったこと、許せません!!
 再び冥府へと送り返してあげます!!」
アリスは襲い来る竜に臆することなく、悪意の真っ只中へと飛び込んでいった。


長かった戦いは最終局面を迎えようとしていた。

【D-4/アリアハン北の平原→アリアハンへ/夜】

【トロデ@DQ8】
[状態]:HP1/5 意識朦朧 腹部に深い裂傷(止血) 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷 馬上
[装備]:白馬ファルシオン
[道具]:支給品一式(不明の品が1?) 大錬金釜 ミレーユの通常支給品
[思考]:??? レックスの呪いを解く方法を探す 打倒ハーゴン
【マリア@DQ2ムーンブルク王女】
[状態]:HP3/5 MP1/3 服はボロボロ 全身に軽度の切り傷 徒歩
[装備]:いかずちの杖
[道具]:支給品一式(不明の品が1〜2?) ※小さなメダル 毒薬瓶
[思考]:トロデの治療 アリアハンに向かう 打倒ハーゴン 竜王(アレン)を倒す
【ククール@DQ8】
[状態]:HP1/6 MP1/2 右腕に火傷(半分回復) 疲労 左腕切断(止血) 左耳喪失 馬上
[装備]:ビッグボウガン(矢 0)
[道具]:天馬の手綱 インテリめがね アリアハン城の呪文書×6(何か書いてある)
[思考]:自分の治療 クリフトを怪しんでいる マルチェロを止める 竜王(アレン)と話す
【クリフト@DQ4】
[状態]:左足に火傷(ある程度治癒) 背中に火傷(ある程度治癒) MP1/2程度  手綱を引いている
[装備]:なし
[道具]:祝福サギの杖[7]
[思考]:マリアたちと同行し、油断させて殺す アリスとカンダタを利用し、自分の護衛をさせる
     自分が優勝し、アリーナを復活させてもらって元の世界へ帰る

613 ◆hFGszBJYFE:2006/06/26(月) 21:23:27 ID:yUjxiwE6
【D-4/アリアハン北の平原/夜】

【ヒミコ@DQ3】
[状態]:HP3/5 頭が一つ潰れている
[装備]:なし
[道具]:ホットストーン
[思考]:アリスを喰らう 幾人か喰らい傷を癒す サマンサを喰らう

【アリス@DQ3女勇者】
[状態]:HP3/5 MP2/3
[装備]:炎のブーメラン  隼の剣
[道具]:支給品一式
[思考]:ヒミコを倒す

【バーサーカー@DQ2 死亡】
【レックス@DQ5王子 死亡】
【ハッサン@DQ6 死亡】
【テリー@DQ6 死亡】
【カンダタ@DQ3 死亡】
【残り20名】

※棘の鞭、ミラーシールドはバーサーカーの居た場所に放置されています。
※レックスの道具(折れた皆殺しの剣 王者のマント)ハッサンの道具(聖なるナイフ まだらくも糸 魔物のエサ)
 テリーの道具(ボウガン 鉄の矢(29) イーグルダガー)カンダタの道具(破壊の鉄球 ロトのしるし(聖なる守り))
 以上はそれぞれの場所に放置されています。

614 ◆hFGszBJYFE:2006/06/26(月) 21:24:07 ID:yUjxiwE6
すいません。
何故か本スレに書き込めなくなってしまったので
最後の2レスをどなたか代理投下お願いします。

615名無しさん:2006/06/26(月) 21:26:06 ID:1WCrAP0k
ノシ
よっしゃ!代行やってみるぉ!

616名無しさん:2006/06/26(月) 21:26:22 ID:yUjxiwE6
一応、age
誰か気付いてください……

617名無しさん:2006/06/26(月) 21:27:08 ID:yUjxiwE6
>>615
お願いします

618.:2006/06/28(水) 00:21:04 ID:9vDvO7HU
おつ〜。

619◇axTZF499Ow:2006/06/29(木) 00:03:17 ID:NVvSrLKg
フローラの「夜中まで」「B−4」の話を2レス程書きたいんだが、
企んでるwのに都合が悪い書き手さんがいたら、言ってくれ。
明日30日0時に予約をいれる。それまでに本スレで予約を入れるか、ココに書きこみよろ。

620◇axTZF499Ow:2006/06/29(木) 00:05:40 ID:NVvSrLKg
例によって烏がでてくる。
鳥好きなんだ・・・。

621名無しさん:2006/06/29(木) 00:11:43 ID:jiFjgx6.
>>619
フローラ単体?




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板