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FFDQかっこいい男コンテスト 〜いただきストリート部門〜

29羽衣 1/4:2008/04/28(月) 00:07:37
 俺がその声を聴いたのはマイエラ修道院に戻ってきて宿舎に戻ろうとした時だった。かすかな泣き声と何かを打つ音。
舌打ちして振り返る。例の拷問部屋でまた誰かが誰かを責め立てているようだ。
日常茶飯事であることを、何故か今日だけは気に掛かり、気まぐれに地下へと下りて声の主を確かめてみた。
 聖堂騎士団のメンバーの1人が、若い男を裸に剥いて何かを無理矢理飲ましている。ズボンははいているがこれが脱がされるのも時間の問題だろう。
団員の男は1人だけで楽しんでいたようで、他には誰も居なかった。

「どうかしたのか?この男は何だ?」
 声を掛けると騎士団の男は驚いたように振り返った。手にしていた瓶が床へ落ちて転がった。
「ククールか…。別にたいしたことは無い。
 この男、ドニの村で重傷を負って死んだヤツをザオリク唱えて蘇らせたんだ。
 ここらじゃ見ない制服だし、異教徒のくせして死者を蘇らせるなんぞ、きっと異国の密偵に違いない。
 自白させてやろう、と思ってな。」

 ザオリク。俺にもまだ唱えられない高等呪文だ。男の足元に草色の制服のような衣服が散乱している。
確かに見慣れない制服だ。少なくとも同じ宗派の制服ではないようだった。
「ここは俺1人で大丈夫だ。戻ってくれ。」
 そう言いながらも男の顔は引きつっている。うずくまって、むせている神官に視線を落とすと、背中に何本も走った鞭の痕跡が痛々しかった。

「あんたがドニで暴れている噂は聴いているぜ。
 大方、死んだ村人に重傷を負わせたのはあんただろう。
 自分も使えない蘇生呪文をこの兄さんが唱えられたから腹が立っただけじゃないのか。」
「何だと!?」
「黙っててやるから、もう許してやれよ。
 この薬飲ませて、あんたいったい何するつもりだったんだ。」

 転がっている瓶のラベルは俺も見たことがあった。最近この辺で出回っている媚薬だ。なかなかに利きがいいんだよな。
 男はなかなか立ち去らない。この神官によほど未練があるらしい。悩んだ挙句、俺がマルチェロの弟だということに思い当たったのか、そのまま、乱暴に扉を閉じて部屋を出て行った。
「おい、大丈夫か?」
 神官らしき男に声を掛けると、相手は恐る恐る顔を上げた。思いのほか若い。青ざめているその顔は色が白く、整った顔立ちをしていた。
両手を手錠で戒められている。背中や胸部に走る傷を目立つ部分だけ回復呪文を掛けてやったら、ようやく、
「ありがとうございます…。」
と小さな声で呟いた。どうやら魔法も封じ込められているらしい。ご丁寧なことだ。
「俺はこの修道院の騎士団のククールだ。あんた神官なのか?名前は?」
「クリフトといいます。城付きの神官です。」
 誠実そうな男だった。俺を信頼したのか、真っ直ぐな視線を向けてくる。ああ、この男は俺とは違う人種だ、となんとなく思った。


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