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スタンド小説スレッド3ページ
514
:
さ
:2004/06/01(火) 17:01
@ @ @
「あれは、一体…?」
『フィッツジェラルド』の艦橋のてっぺんに立つしぃ助教授。
その目は、『ヴァンガード』の後部に激突した戦艦を見据えていた。
『ビスマルク級戦艦… なぜ、あんな骨董品が?』
無線機から丸耳の声が聞こえる。
彼のいるCICにも画像が届いているようだ。
しぃ助教授は、その戦艦の武装を注意深く観察した。
「…主砲をよく見てみなさい。あれが、60年も前の艦装ですか?
砲口制退器や排煙器、水冷式砲身に垂直鎖栓式砲尾…
発射速度や反応時間は、このイージス艦に搭載されている127mm単装艦載砲と変わらないはず。
威力だけが38cm砲クラスです。あの連装高角砲も、おそらく30mmクラスのCIWS…!」
『最新装備で身を固めた戦艦… もしかして、『教会』の艦…?』
丸耳は、信じられないように呟いた。
「…」
しぃ助教授は答えない。
おそらく、その可能性が一番高いからだ。
正面を見据えるしぃ助教授。
その空は、先程までとは打って変わって静かである。
「ミサイル攻撃が止んだ… 向こうにも、何かあったのか…」
『フィッツジェラルド』が大きく揺れた。
艦体に、ミサイルを3発ほど喰らっているのだ。
『セブンス・ヘブン』で直撃は避けたとはいえ、決して軽いダメージではない。
「丸耳、被害状況は…?」
しぃ助教授は訊ねる。
『後部甲板への一撃が効いていますが… まだ何とか』
丸耳は、暗い声で言った。
この艦も、余り長くは持たないようだ。
「退艦命令は、丸耳の判断で出しなさい。無駄な犠牲は避けるように」
しぃ助教授は告げる。
『しぃ助教授はどうする気です…? まさか、艦と共に…!』
丸耳は慌てたように言った。
ため息をつくしぃ助教授。
「艦と運命を共にする気はありませんよ。ですが、ギリギリまでは…」
突然、丸耳は声を上げた。
『…ちょっと待って下さい! 南西方向から接近物あり! 速度は… マッハ7だって…?』
「馬鹿な! 極超音速飛行を可能とする航空機は、まだ実用化されていないはず…!」
しぃ助教授が叫ぶ。
『航空機じゃありません…! 人間大の大きさです!!』
丸耳は興奮した口調で言った。
『凄まじく速いです! この艦に到達するまで、あと10秒…!!』
「一体、何が…!!」
しぃ助教授は、南西の方向に視線をやった。
風を切るような音。
音速域での轟音が響く。
『それ』は、凄まじい速度で飛来してきた。
間違いなく、このまま突っ込んでくる…!!
「『セブンス・ヘブン』!!」
しぃ助教授はスタンドを発動させた。
マッハ7で激突されては、艦が危うい。
「逸れろォッ!!」
しぃ助教授は叫んだ。
そして、飛翔物の移動方向に修正を加える。
艦から20mほど離れた位置で、『それ』の動きが止まった。
まるで、見えない力に抑えつけられるように。
凄まじい風圧が周囲に吹き荒れ、海は大きく波立った。
艦がグラグラと揺れる。
「くッ…!!」
しぃ助教授は唇を噛んだ。
『セブンス・ヘブン』による指向性の操作でも、その勢いは殺しきれない。
その余りの圧力に、しぃ助教授の腕が震える。
「ASA三幹部を… 舐めるなァッ!!」
しぃ助教授は、両腕を思いっきり上げた。
飛翔物は大きく上に逸れる。
そのまま、『それ』は天高くすっ飛んでいった。
しぃ助教授は確認した。
『それ』は、確かに人型をしていたのを…
すかさず、『それ』が吹っ飛んでいった方向に視線を向ける。
「…凄いなァ。僕の突進を止めるなんて…」
ゆっくりと。
それは降臨する天使のように、天からゆっくりと降りてきた。
その背には、大きな羽根。
しかし、しぃ助教授が思わず連想した『天使のように』という表現は誤っている。
その背中に生えているのは、天使の羽根などではない。
確かに、月光が透け虹色に輝く羽は美しい。
だが、それは蝶の凶々しい羽だった。
羽の男は、艦橋に立つしぃ助教授を見下ろす。
ニヤニヤとした、下卑た笑みを浮かべて。
「…凄い凄い。良く頑張ったよアハハハハハハハハハハハハ…………………じゃあ死ね」
その羽から、虹色の光が放たれる。
鮮やかな光が周囲に照散した。
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