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スタンド小説スレッド3ページ
355
:
さ
:2004/05/17(月) 21:28
局長は身を翻した。
そのまま、一点を目指して駆け出す。
あの場所だ。あの場所へ行きさえすれば…!!
「スタンド使いとしては一流かもしれんが、戦場における兵士としては三流だったな」
モナークは、背を向けた局長に発砲した。
「くっ、『アルケルメス』――!!」
スタンドを発動させる局長。
しかし、タイミングがずれた。
弾丸が脇腹を貫通する。
「くっ…!!」
大きくよろけたが、なんとか体勢を立て直す。
「…まだ、私は死ぬ訳にはいかないんですよ。
私の事を想っているくせに、冷たい態度ばかり取る天邪鬼な部下がいますからね。
彼女を泣かす気はありませんので…」
そう言いながら、局長は足を進めた。
「それは羨ましい話だな。俺の周囲の女は、どうも棘が多い…」
背後からモナークの声。
彼の姿は既にない。再び姿を消して…
「!!」
右足を弾丸が貫通した。
大きく体勢が崩れる。
だが、何とかあの場所へ…
右足を引き摺って、局長は廊下を進んだ。
背後に『アルケルメス』を待機させ、時間をいつでもカットできるようにする。
これで、向こうも迂闊には近付いてこないだろう。
…この短期間に、何度も時間をカットした。
残されたスタンドパワーだと、せいぜいあと1回か2回…!
ようやく見えてきた。
モナークに討たれた、米兵15人の死体。
あそこへ行けば…!!
「やっと着きましたね…」
局長は、死んだ米兵が持っているM4カービンを手に取った。
そして、モナークが追ってきているはずの背後に銃口を向ける。
「カービンライフルなら、向かってくる方向さえ分かれば…!!」
局長は銃のセーフティーを解除すると、そのまま引き金を引いた。
――しかし、何も起こらない。
銃弾は発射されなかった。
それもそのはず、マガジンが装着されていない…
「忘れたのか? お前の仲間の少年が、銃弾を回収していただろう…」
背後から声がした。
――その通りだ。
確か、ギコが銃弾を回収して――
局長の思考は、首に巻きついた衝撃により中断する。
いつの間にか、背後のモナークは姿を現していた。
その強靭な腕が、局長の首に食い込む。
このまま、首の骨をヘシ折る気だ――
「さすが、『伝説の傭兵』…」
局長は呟いた。
喉が圧迫されて、しっかりとした声にならない。
「褒めても無駄だ。命乞いは――」
モナークの言葉を、局長は遮った。
「…そう来ると思ってましたよ」
局長のスーツから、何かが大量に落ちる。
30個以上ある『それ』は、床に落ちて乾いた音を立てた。
他にも、まだ懐に残っているようだ。
米兵の死体から手に入れる必要があったのは、M4カービンなどではない。
回収する時間は、『アルケルメス』でカットした――
「手榴弾か…ッ!!」
モナークは大声を上げた。
「『伝説の傭兵』と称される程の男なら、弾薬は節約するはず。
銃弾を使わずに倒せる相手なら、当然銃弾は使わないでしょう?」
局長は少し咳き込みながら言った。
先程まで自分を追い詰めていた戦い方は、戦場におけるスナイパーの戦法である。
首を折られていた米兵の死体からも、この男の傭兵としての実力は明らかだ。
そう、この男はあくまで傭兵の戦法で戦っている。
「――ミステイクですね。戦法のロジック化は、時に判断を甘くする」
局長は、背後のモナークに告げた。
「馬鹿な、自分もろとも…!!」
モナークは咄嗟に局長から離れる。
だが、もう遅い。
「それもミステイク。男と心中する趣味はありませんよ…」
局長の背後に、『アルケルメス』が浮かぶ。
「…吹き飛ぶのは、貴方1人です」
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