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汎用スレpart1

82【3】 ◆Tg./UqnJ52:2012/11/16(金) 08:20:13 ID:276WmNrY

「それから一分も経たないうちに、その「不可視の剣」の威力をまざまざと見せつけられました。
 結果はアベルとほぼ同じ。ミリアの剣に対応できないまま、棒立ちで右の小手をとられました。
 …………ええ、「見えなかった」のです。ミリアはもともと小柄な娘で、剣も力よりは早さを売りにしている剣士でしたが、
 それを差し引いてもあの「見えない」というのはひどく奇妙なものでした。
 何せ、目の前にいた相手が瞬きするかしないかの、本当に短い刹那に姿が消えて、自分に剣を当てたのですからね。
 得意げな表情のミリアを、しばらく呆然と眺めていましたよ」

その時のことを思い出しているのか、三輪老人は小さく笑った。

「その後も何度か彼女の剣を試しましたが、結果は全て同じでした。
 彼女の剣筋どころか、姿さえ見えなくなった私を剣で捉えることなど、彼女にとっては容易なことだったでしょう。
 私はミリアの「不可視の剣」を認めました。認めざるを得ませんでした。
 …………ええ、仰るとおり、私がミリアを始めとする弟子達に剣を教えたのは、あくまでAMでの格闘戦にその技術を使うためです。
 ですので、私は上層部の方に無理を言って、彼女の「不可視の剣」が機上での戦闘で使えるのかどうかを試しました。
 結果は驚くべきもので、ミリアの操るガーリオンも、その姿を消しました。
 機体のセンサー、モニター類は彼女の機体がそこに居ると合唱しておりましたが、それでも見えなかったのです」

弟子の編み出した技で倒される師匠としての自分を語る三輪老人であったが、その顔は晴れやかで、どこか嬉しそうだった。

「ミリアの「不可視の剣」はそんな不思議で凄まじい技でした。
 心が平静で澄み渡り、敵からどんな攻撃を受けてもそれに対応し、即座に「後の先」を打ち込むことが出来るような心の境地を「水月」と呼びますが、
 その境地に至ったいかなる剣豪でも、ミリアの「不可視の剣」を受けては冷静ではいられますまい。
 ゆえに私は「不可視の剣」を「水月」を斬る剣、「斬月剣」と呼んではどうか、とミリアに勧めましたが、ミリアは難しい顔をして唸った後、
 「どちらかというと自分の剣は暗殺剣っぽいから、そんな必殺技みたいな名前は相応しくない。だから、「新月剣」と名付けることにする。
 ほら、新月の夜には閃く白刃が見えない的な話があるだろう」と言って、「不可視の剣」を「新月剣」と呼ぶことに決めたようでした」

自分の剣を学んだ者に、自分を超える傑物が出た。三輪老人は、それを喜ばしく思うタイプの人間であった。

「その後、他の弟子達と同様にミリアはAM用の日本刀が装備されたガーリオンに乗って各地を転戦しましたが、運悪く遠くに離れている時に、
 あのアイドネウス島の事件が起こり、彼女はゾルダーク総帥と運命を共にすることは出来ませんでした。
 ですが私に言わせれば、それは幸運なことです。あなたがここに来たということは、彼女はまだ生きているのでしょう?
 だから話を聞きに来た。違いますか? …………なるほど。もし見つかったら、何卒、良きにはかられますよう、お願い申し上げます。
 あの子は連邦に対して収まりきれぬ怒りを抱いておりますが、それは逆に言えば、家族想いの優しい子であるということ。
 あのような子が復讐の炎に身を焦がすことなどは、本来あってはならぬことなのです。
 怨みを飲み込み、世のため人のためにミリアが「新月剣」を振るうようになるのでしたら、それはこの老いぼれにとって、最上の冥土の土産になりましょう」


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