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イラスト・SSスレ

6空憂 愛:2011/07/17(日) 00:43:22
>>5


 喫茶店に亜貴と有為は来ていた。
 テーブルを挟んで二人の正面には、男が座っていた。
「もう、いい加減にしろよ」
 その男は、二人に冷たくそう言い放つ。その男は有為と亜貴の、古くからの親友だった。そんな彼がこんな風に、自分たちを突き放すなんて。彼の言葉を聞いた二人は、信じられないとでも言いたげに顔を見合わせる。
「おいおい。困ったことがあったら、頼ってくれってお前が言ったんじゃないか」
 亜貴は男にそう言う。男は有為の頬をちらりと視線を送る。
 男は有為のことが好きだった。
 男は、亜貴の「有為を必ず幸せにする」という言葉を信じて、有為を亜貴にまかせた。
「僕は、お前を信じてたんだぞ……」
 男は悲しそうな目を亜貴に向ける。
 これで、四度目だった。
 初めて、亜貴に頼まれた額は三万だった。それから二週間もしないうちに五万。そして、その三日後に十万。今回は……。彼は、二人を信じて金を貸した。だが、どんどん堕ちていく二人を前にして、男はもう二人を信じられなくなっていた。
 聞いた話によると、自分以外の同郷の友にも、金を借りようとしたらしい。
「俺も、お前を信じてるさ。それに、十万や二十万、お前なら安いモンじゃないか」
 しかし、男の悲痛な気持ちも一切考えず、亜貴はしれっとそんなことをのたまう。あげく有為を抱き寄せ、
「二人目を作るんだ……。金がいるんだよ」
 と笑った。
 男は有為の方を見た。有為はぽけーっと、亜貴に身を委ねている。
 そこに、かつて男が愛した有為の姿はなかった。
「僕の愛した有為も、亜貴も、もうッどこにも、いないんだなッ……!」
 男はそう呟き、すっと立ち上る。亜貴は慌てて、男の袖を掴んだ。
「金は?」
 男はその言葉に、深いため息をついた。
「本当に、いい加減にしてくれ……」
「親友だろう? なんとかしてくれよ。お前、金持ちじゃないか」
「……」
 男は掴まれた袖を無言で払った。
 そして、そのまま会計を済ませて喫茶店を出て行く。
「お腹、空いた」
 有為が亜貴に縋る。
「……クソッ」
 亜貴は窓ガラスの方に目をやる。その向こうに見えた、男の背に彼は舌打ちした。


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