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イラスト・SSスレ

14空憂 愛:2011/07/17(日) 00:48:19
>>13



 手が引き抜かれた刹那――。巨大な質量をもった何かが、私の全身を激しく打ちつけた。あまりの衝撃に、私は宙を舞う。
 眼下には、巨大な黒い影が広がっていた。牛のような二本の角を持つ巨体の病魔。
 黒服たちの悲鳴と爆音とが反響する。
 
 だから言ったんだ。

 そんなことを思うと同時に、宙を舞っていた身体は地面に叩きつけられた。
「……ッ痛ゥ……」
 体中が痛い。
 眼前では、黒服たちが懸命に戦っている。
 やつらは死ぬ気だ。何せあいつらは……。
 私は立ち上がり、彼らに背を向けた。
「私は、付き合ってられない」
 独り言のようにそう言い残し、私は出口へ向かって走り出した。


 ――私が命を懸ける理由なんて無いから――


「大丈夫?」
 その言葉に目を開ける。
 みずっちが私の髪を撫でていた。
 上体を起こそうとして、全身に痛みが走る。
「あ、じっとしてていいよ」
 みずっちが慌ててそう促す。周りを見渡すと、可愛らしいぬいぐるみがたくさん飾ってある。
 ここは――みずっちの部屋だ。
「午後の授業が始まっても来ないから、心配になって戻ったんだよ」
 私はあの後、なんとかあの屋敷から抜け出ることが出来た。そして、痛みを抱えながらも、なんとか元いた場所までは戻ってこれた。
 しかし、戻ってこれたのはいいが、そこで気を失ってしまったらしい。
 頭がくらくらする。
 私はかけ布団で顔を半分隠した。
「……みずっちの匂いがする」
 みずっちは恥ずかしそうに微笑んだ。
「もう、何言ってんのー?」
「……みずっち、愛してるぜ」
 ちょっとキザっぽい感じでそう言って見る。
「もう、そんな状態で言ったって、全然カッコよくなんかないよー?」
 みずっちは顔を真っ赤にして俯いた。
 そうは言っておきながら照れてるみずっちが可愛くて、私はみずっちをだた黙って見ていた。
 そうして生まれた長い沈黙の後、お互いに顔を見合わせ、プッと噴出しあう。
「私たち、バッカみたい!」
 みずっちがお腹を抱えてゲラゲラ笑うので、
「違うよ、本当にバカだよ!」
 私はそう言ってやる。
 ここが、好き。この空気が大好き。
「みずっち、だいすきだぁーッ!」
 私は起き上がり、ぎゅっと彼女を強く抱きしめる。
 たった、それだけのことで、身体中の痛みがまるではじめから無かったかのように、すぅーっと引いていくように感じられた。
「よしよし、いい子いい子」
 そんな私をみずっちは優しく迎え入れてくれるから。
 だから、ここが私の居場所。


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