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【お題で嫁を】お題で簡単にSSを作ってみようか【自慢するスレ】

284名前が無い程度の能力:2013/08/11(日) 14:28:41 ID:o81nE0Vs0
「咲夜、私の手に爪を立てて。私が咲夜と一緒に生きているって証を見せて……」
一瞬咲夜は困ったような哀しい表情を浮かべたが、すぐに私の要求に応えた。
小刻みに震える手。崩れてしまいそうなほど弱い握力で、それでも綺麗に磨かれていた爪が私の皮膚の表面を切り裂いた。
紅い血が一筋、私の手の甲を伝ってシーツに滴り落ちる。それは雪原に咲く薔薇のように鮮やかだった。
『私は一生死ぬ人間ですよ。大丈夫、生きている間は一緒にいますから』
かつて不老不死の人間と対峙した時、不老不死になってみないかと言った私に咲夜が答えた言葉が頭の中に響き渡る。
あの時、私の言葉は冗談半分だった。まだ咲夜の背後に「死」の影なんて視えていなかったから。
だけど私は不思議と後悔していない。今、こうして咲夜と痛みと苦しみと生きている実感を共有できた瞬間が嬉しかった。
花は咲いた瞬間、後は萎れて枯れて散る運命だ。そうだ、私たちの主従関係はこれまで青い蕾だった。
それが咲夜の死に際に高らかに咲き誇った。今この瞬間、私たちは確かに絶対的な絆で結ばれていた。
「愛しています、レミリアお嬢様……」
それが咲夜の遺した最後の言葉だった。嗚呼、遅咲きにもほどがある。私は力を失った咲夜の手をそっと自分の頬へ触れさせた。
冷たい手の平。私のために紅茶を淹れ、ナイフの弾幕を扱い、優しく頭を撫でてくれた手。私が愛した咲夜の手。
「バイバイ、咲夜」
穏やかな表情で永久の眠りに就いた瀟洒な従者へ、私が手向けた餞別の言葉は簡素だった。
バイバイ、咲夜。今やっと花開いた貴女との絆、貴方と過ごしてきた掛け替えのない時間は、このレミリア・スカーレットが死ぬまで咲き誇り続けるでしょう。【END】


きっと咲夜さんの手はお嬢様の涙で濡れていたと思う。

お題:お茶(種類を問わず)、剃刀、夏の終わり、ブランコ

285名前が無い程度の能力:2013/08/23(金) 22:38:19 ID:IO5HaAKk0
>>275 石油

開け放った窓から風が吹き込み、手元の灯りが明滅した。見上げると、ランプの炎が静かに揺らいでいる。
私は薬のデータを書き留めていた手を休め、愛用の万年筆を机の上へ置いた。時刻はもう午前二時を回っている。
この薬品臭い診療室が私の仕事場であり、個室でもある。窓の外は淡い月明かりに照らされて青竹が神経質に震えていた。
凝り固まった腰をほぐすように私は立ち上がり、窓辺まで歩いて行った。風は涼やかで、秋の気配がすぐ近くまで感じる。
この夏は熱中症の患者が多かった。幻想郷は42℃という最高気温を記録し、人間はもとより妖怪や妖精までへばっていた。
屋敷に住む妖怪兎たちも過半数がダウンし、弟子の鈴仙まで目を回した。あの子もまだまだ修行が足りないようだ。
ふと強い風が舞い込み、部屋の中で渦巻いた。バインダーに固定された書類がバサバサと音を立てている。
「んっ……ぅん」
紙の擦れる音が耳障りだったのか、机の真向かいにあるベッドの上で眠っていた人影が寝返りを打った。
揺らぐランプの炎で艶やかな黒髪が照らされる。真っ白なシーツに散るその黒髪は水墨画のように幽玄だった。
この永遠亭の姫君・蓬莱山輝夜が私の寝台を占領するのは、決まって藤原妹紅と一戦を交えて帰ってきた日の事だ。
服装は血と泥で塗れ、ほとんど炭化している。私は輝夜がベッドに辿り着いた直後に衣服を脱がして床の隅に置いておいた。
蓬莱の薬で瑕疵ひとつない、玉のような色白の肌だ。長い睫毛の刷いた瞼、薄紅色の唇。その寝顔は見蕩れるくらい可憐だ。
「……すぅすぅ」
私は肌蹴る輝夜の裸体にそっとタオルケットを掛け直した。華奢な四肢がランプに照らされ、小さな寝息が聞こえてくる。
ランプは石油を燃料にしているから炎は安定している。何億年前の生物の死骸で生成された『燃える水』。
私はふと、その石油の原料となった生物たちを偲ぶ気持ちになった。彼らが生まれるのを私は月から見届けているのだから。
輪廻から外れた不老不死の業を背負う者。石油どころか腐葉土にすら成れない逸脱者。それが私たち蓬莱人だ。
生きている者が死んでいく儚さを美しいと思うのは、不老不死の驕慢だろうか。私はそう思い少し苦笑する。
この診療室で、どれだけ多くの生命の終わりを見送ってきただろう。死の影を見つめる為に私は医者の真似事を始めたのだ。
死の影を哲学的に思う時、石油ランプのオレンジ色の灯火を通じて太古の生物たちすら愛おしく感じられる。
平和とは現状維持と同義だ。しかし、私たちの平和は光陰矢の如く過ぎ去り、容赦なく変質させるだろう。
終わりのない私たちを置き去りにして、見知った者たちの人生が終わっていく。それは妖怪でも同じ宿命だ。
私は最近、不老不死が自分だけだったらと仮定した世界を考えてしまう。輝夜が傍にいない世界を想像してしまう。
「輝夜……」
おもむろに私は眠っている輝夜の頭をそっと撫でた。絹糸のような髪の肌触りが、36.5℃の温もりが、確かに掌へ伝わる。
石油が切れかけているのが、ランプの炎は徐々に燻り始めた。そのまま炎が自然に消えるのに任せて今日はもう眠ろう。
私は大して広くないベッドに横たわり、そっと輝夜を抱きしめた。不変と言う浅はかな願いを込めて、私は目を閉じた。【了】

お題:かがり火 逃げ水 宿り木

286名前が無い程度の能力:2013/10/15(火) 15:09:15 ID:P0rOaYUQ0
ageついでにお題投下
「台風」「不作」「おみくじ」「ベッド」「買い物」「衣替え」「勝負」「風物詩」「流行り」「天気予報」
「来年やってみたいこと」「少女の嗜み」「好み」「劇場」「下剋上」「片付け」

とりあえず話題だけ投げておきます

287名前が無い程度の能力:2013/10/15(火) 16:34:28 ID:uZjHBbjM0
>>278ですが、>>281-282さん
ありがとうございます!!
情景描写が詳しくて素晴らしかったです。感想が遅れてすみませんでした。

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292名前が無い程度の能力:2014/04/13(日) 00:20:15 ID:1xY9johI0
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