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「……アンタ、悪食はほどほどにした方がいいわよ」
別に俺が食べたいわけではない。まぁ、無難に風邪薬だということにしておく。
「ふぅん。アンタみたいなのでも、風邪ひくのね」
「俺のような健康優良児でも、ということにしておこう。他の風邪ひかない種類、いわゆる○○とハサミは使いようの○○と同意のモノについては考えない方向で」
「……そこまで言ったら、もう言ってるも同然じゃない」
そう言ってかなみは苦笑した。
……んー、しかし、惚れ薬らしいのに、普段と別段変わりないなあ。てっきり、
『タカシきゅん、ちゅきちゅきー♪ ちゅっちゅしてー♪』
とかなると思ったのに。いや、別にそうなってほしい訳ではないけど。つーか、想像したら悪寒が。
「ところでさー、今日の授業……あれ、アンタなんか震えてない?」
「気のせいだぞ、かなみたん」
しまった、想像の余波が俺の言語中枢に。
「かなみたんー? なに、急にあたしのことラブラブな感じで呼びたくなったの?」
かなみはいやらしい笑みを浮かべ、俺の腕を自分の肘でツンツンつついた。
「うん」
もちろんそんな訳はないのだけど、仮に惚れ薬の効果が出ているのであれば、きゃっきゃうふふな感じで受け答えするだろう。どうだ?
「はー……最近暑いしねぇ」
ちっともきゃっきゃうふふじゃない。熱中症患者扱いだ。やっぱ惚れ薬じゃなかったのかなあ。おじさん、使えねー。
学校の帰り、叔父さんが勤める研究所に寄る。
「おじさん、惚れ薬の効き目ゼロだったぞ。このヤブ医者め!」
「いや、おじさんは医者じゃなくて研究者なんだけど……でも、あの薬は本当に惚れ薬だったんだけどなあ」
叔父さんはしきりに首を傾げていた。
「うーん……まぁ、薬を飲んだ子が既にタカシ君のことが好きだったら、効果がなくても仕方ないんだけどね」
「それはない」
即答する俺に、叔父さんは苦笑を浮かべた。
「それくらいしか、効かない理由が浮かばないんだけどね……」
「それは、おじさんがヤブ医者だからだぞ?」
「いや、だからおじさんは医者じゃなくて研究者で……」
なんかうにゃうにゃ言ってる叔父さんを放って、研究所を出る。
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