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「それにしても先輩はひどいッス!鬼ッス!童貞にもほどがあるッス!」
ナチュラルに失礼なことを言われた。童貞は関係ないし!
「プンプン・・・大人の男性ならあーいう時はしっかり受け止めるべきッス!先輩異常ッス!」
そんな漫画でしか使われないような擬音語を発しながら風花は文句を垂れている。
そもそも全力で人にフライングアタックをしてくる少女は異常じゃないのだろうか…
授業開始まで時間のあった俺たちは適当なベンチにかけて互いに時間潰しをしている。
「先輩喉渇きませんか?自分買ってくるッス!何がいいッスか?」
「あぁ・・・悪いね。缶コーヒーお願い」
そう言って俺はポケットから120円を取り出し風花に渡した。
「了解ッス!!風花は紅茶にするッス!」
風花は受け取った小銭を見ると不思議そうな顔をしている。
「ん?どうした」
「・・・・・・・・これじゃぁ先輩の分買えないッスよ?」
自分から誘っておいていつの間にか俺のおごりになっていた。
「・・・・」
「???」
俺は黙ってもう120円をポケットから風花に手渡した。
こいつどういう育ちをしてるんだ…
「♪」
風花は嬉しそうな表情を浮かべ颯爽と自販機へ向けて駆け出した。
「せんぱ〜い!いきますよ〜」
自販機から飲み物を取り出した風花はこちらを振り向き、大きく振りかぶった。
「しっかりキャッチするッス!」
ん?投げる気か…
まるでピッチャーのようなモーションから繰り出された缶コーヒーは放物線…
を描かずにまっすぐこちらへ一直線に向かって飛んできた。
―ガンっ・・・・ゴロゴロゴロ
「危なっ!」
缶一発…じゃなくて間一髪で顔面めがけてとんできた缶コーヒーを避ける。
「先輩だめッスよ。ちゃんとキャッチしなきゃッス」
「お前は俺をどうしたいんだ!!!危うく怪我するとこだったぞ!」
「でもー・・・先輩が初めてッスよ?わたしのパスを受け取れなかった人」
「いつもあんな危険なパスをしてるのかよ!悔い改めろ!!今すぐにっ」
「いえ、殺す気で本気になって投げたのは先輩が初めてッスよ?」
「本気なのかよ!!しかも殺す気だったんだ!!!」
「てへっ☆」
「てへっ☆じゃねぇ!」
だが悪戯っ子のように微笑む風花を見た俺は、不覚にも可愛らしいと思ってしまった。
「まぁまぁ、先輩怒ったらだめッスよ。仏の顔も三度までッス」
「・・・・ホントに反省してんのかよ・・」
「でも二度あることは百度あるみたいッス」
「まだあるんだ!!!反省してませんね!!」
ケラケラと笑いながら飲み終えた空き缶をゴミ箱に放り投げ、風花は立ち上がった。
「お茶ごちそうさまでしたッス!」
「おう。気にするな」
「魚心あれば下心ッスか?」
「人の好意をそんな風にとっちゃうの!?」
「先輩水難の相がでてるッス。充分気をつけるわん♪」
正しくは水心…である。
「水難の相って・・・しかも今時わんって・・・」
テクテクと離れていく風花を見つめながら、俺は先ほど投げつけられた缶コーヒーのふたを開ける。
―ブシュッ
俺の顔に勢いよく飛び出したのはコーヒーではなく炭酸飲料だった。
「あの野郎・・・」
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