したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

●事情によりこちらでSSを投下するスレ●

668以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/12/27(水) 14:58:00 ID:W1pMcFoo
彼を見たのは、結局その連絡から3時間後だった。
その間に彼の親族に連絡を入れたが、二年に一度くらいにある定期的な儀式を流すような受け答えだった。
私が何か言う権利はない。理由だって、見つからない。ただただどす黒い曖昧な感情が全身を侵していった。

簡単な防腐処理を済ませるまではただ見る事以外出来ない。
もう彼に触れるのは、最後の別れの時だけだった。

彼が最後に抱えていたという「サラダ記念日」をおもむろに開いた。
本は綺麗なままだった。貸して3日なんだから当然と言えば当然だったが、彼はもう一回は読んでしまっていたようだった。
ベッドにある物を捨てる事は許せなかったので参考書や人形など、私が持って行った物を私が引き取る形となった。
ポストイットが裏表紙に張ってあり、ただ「どうも」とだけ書かれていて。
封筒が挟んであって、そこには私への手紙が入っていた。
涙は出なかった。

それから、殆ど何も覚えていない。周りが、いくら焦っていたといっても
何か安定した上で大騒ぎしているようで、何だか自分が滑稽だった。

お葬儀も、まさに質素だった。淡々と参列者が彼の写真の前に一礼していく。
泣いている人もいた。その人を見て初めて自分がまだ泣いていない事に気付いた。
クラスメートも来ていたが、私に話しかけてくる人はいなかった。
クラス内で仲良くしたつもりもないし誰かに話したわけでもないのだが
有り難かった。今話しかけられても答えるという事は出来ない気がした。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板