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その時、昔の事を思い出した。
幼稚園の時、とても仲の良かった女の子。
皆が色とりどりの洋服を着てる中、その子だけがモノクロームの和服を着ていて、これがまたすごく似合っていたのを覚えている。
幼稚園の隅っこで彼女を見つけて以来、俺はその子とよく遊ぶ仲となった。
どうやって遊んだかと言えば、いつもあの子のペース。
影踏み、ケンパ、鬼ごっこに飯事。
あの子の提案する遊びに俺は逆らう事無く楽しんでいた。
実家の押入れから出てきた、手書きの婚姻届。
あの子と俺の名前が書いてあるそれを見て、忘れかけていたその事を思い出した。
確か…あの子とはどうなったっけ…
そんな疑問が浮かび、俺はまた思考の海へ落ちてゆく。
小学校に上がり、初めて入った教室にあの子の姿を探した。
授業が始まってもあの子の姿はなく、俺は不思議に思ったものだ。
教師、親、友人などにも相談したが、そんな子はいないの一点張り。
誰もその子を知っている人はいなかった。
二十歳になった今、あの事を類推してみるに、
ひょっとするとあの子は幽霊の類なんじゃないかって思うわけだ。
そう思うといてもたってもいられず(オカ研部長)、小さい頃通った幼稚園へ走って向かった。
今日は祝日。園内に人の気配は無い。
門を乗り越えて、あの子とよく遊んだ裏庭へ向かう、
園内の一番北東──何の因果か知らんが、鬼門の方角──の隅に、白い装束を纏った小柄な少女が佇んでいた。
少女はあの時とまるで変わっていない。黒髪長髪、日本的な顔立ち。今思えば彼女は幼稚園時代から白装束だったっけな。
あの時と唯一違うのは、視線。少女の目はあの時と違い、凍りつくように冷たい目線を俺に向けている。
それは、おそらく祝日に幼稚園に忍び込む不審者へ向ける目なのだろう。
俺は、できるだけ当時と同じ顔を作りながら──
「15年振りだね。纏ちゃん」
──彼女の名を、呼んだ。
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