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2135/5:2005/12/24(土) 07:32:34 ID:5YmKs1X2
『ちょ、ちょっと! 何を……』
「目、良く見えないんだろ? だから、俺が教室まで先導するよ」
 事も無げに言われた。
 私は、こんなにも胸をドキドキさせているのに。
 何だかちょっと腹が立つ。がしかし、抵抗できず、私は引かれるがままに立ち上がった。
『い、い、いいわよ……。そそ、そ、そこまでしなくても……』
「だって、怖いだろ? そのままで歩くの」
 さらっと受け流された。やっぱり、手を握るくらいじゃ、何とも思っていないのだろう。
何だか少し落ち込みつつ、私はさらに、断る理由を懸命に考える。
『そ、それはそうだけど…… でも、このまま教室とか入ったら、ただでさえ遅くなって
注目を浴びるのに……』
「大丈夫。手は教室に入る前にちゃんと離すし、それに誤解されないように俺から説明するから」
『け、けど……』
 これ以上断る理由も見つからず、私はうつむいてしまう。恥ずかしくって膝がガクガク
して、前に踏み出せない。
 すると、グイッ、と手が引かれ、半ば強引に私は前に足を一歩踏み出した。
「けど、このままここにいたってしょうがないだろ? それとも、このまま俺と一緒にサボるか?」
 その言葉に、私は一瞬ポカン、とした。それから我に返ると、首を激しく横にブンブンと振る。
 授業をサボって、このまま二人でどこかに行く。ほんの僅かだけ、私の心にそんな誘惑
が襲い掛かった。けれど、そんな事、出来る訳ない。
 彼だって、本気で言った訳じゃなくて、ただグズグズしている私にイライラして言っただけだろう。
「だろ? だったらちょっとだけ、我慢してくれよ」
 ついに諦めて、私は首を縦に振る。彼は安心したように微笑むと、そのままクルリと踵
を返し、私の手を引いて歩き出した。私は、無言のまま、彼に手を引かれて後に続いた。
 教室までの、ほんの僅かな距離だけど。
 大好きな人に手を引かれて歩ける。それは、眼鏡一つを代償にして余りある程に幸運な
事だな、と私は心からそう思った。




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