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2113/5:2005/12/24(土) 07:31:52 ID:5YmKs1X2
「……バキ?」
『……どうかしたの? 何か、音がしたけど』
 ああ。何かとても嫌な予感がする。別府君が下を見る。釣られて私も下を見る。
 その視線の先には――
 私の愛用の眼鏡が、再起不能な姿で転がっていた。
 私は、壊れた眼鏡を拾い上げた。レンズは割れ、フレームもひしゃげている。どう見て
も、買い直すしかないようだ。
『(この眼鏡…… お気に入りだったのにな……)』
 私は軽くため息をついた。
 高校受験の時に視力が落ちて買って以来、ずっと使っていたので愛着がある。コンタク
トが嫌いな私としては、肌身離すことの出来ない持ち物だったのだ。
「あの……いや、その…… マジでゴメン……」
 本当に申し訳無さそうな声で、別府君が謝罪を述べる。こんな元気の無い彼の声は聞い
た事が無かった。
 私は別に、別府君を責める気持ちは無かった。もちろん、彼に責任はあるのだけど、悪
気があってやった事ではないし、むしろ親切心が裏目に出た格好なのだから。
 ただ、コンタクトを付けなければならない事を考えて、ちょっと憂鬱になった。
 何故か、私は直接目に何かを付ける、という事に抵抗感があって、そのせいか今でもコ
ンタクトには馴染めずにいた。それに付けるのも慣れていなくて時間が掛かる。古文の授
業は、コンタクトなしで受けなければならないだろう。
『……どうしよう。これが無いと、ほとんど見えないのに……』
 そんな言葉が、自然に出た。
「そんなに目、悪かったのか?」
 別府君が聞いてくる。私は、コクリ、と頷いた。
『黒板の字も見えないし、ノートも取れないもの』
 別府君を見つめると、彼は申し訳無さそうな顔をして廊下に正座している。
「一応聞くけど……替えの眼鏡とか、そういうの持ってる訳……ないよな?」
 聞きにくそうに、彼は言った。




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