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二つ名を持つ異能者になって戦うスレ避難所5

687 ◆21WYn6V/bk:2010/11/20(土) 18:00:33
>>162
「あ、あの!すみません…!」

突然かけられた声に首を傾け、虚ろな瞳を向ける。

「……」

菊乃は言葉を発しなかったが、その存在に疑問を感じていた。
自身の能力の影響で、今現在自分の周囲に"立って"いられる人間など存在しないはず――。
それがどうだ、目の前の人間は顔を歪めながらも"立って"いるではないか。
――何故?
今の菊乃にとって、その疑問に対する答えは一つしかなかった。
――この男は研究所の人間で、こちらの能力を知り尽くしているから対処法も分かっているんだ!
――と言うことは、この男は自分を連れ戻しに来た?

「あそこに帰るのはもうイヤだ…。家族に会いたい…」

鎌瀬は尚も話しかけてくる。しかし菊乃は既にその言葉を聞いてはいなかった。

「邪魔をするなら…潰す…」

相手が研究所の関係者である以上、その話を聞く必要はない。
そう判断した菊乃は、言葉を続ける鎌瀬を無視して一言忠告すると、再び歩を進めた。
街中に入ったことで、今度は菊乃が移動する度に一つ、また一つと建物が潰れていく。
"徐々に"ではなく、文字通り"一瞬で"潰れていく建物を見て、鎌瀬は暫し言葉を失っていた。
しかし再び菊乃の前に立ち、何かを喋りかけてくる。

「邪魔をするなら潰すと言った…」

それを見て、菊乃は足を止めて鎌瀬を正面から見据える。
そして徐に腰を落とし、鎌瀬に向かって突進する勢いで接近し、右腕を振り下ろした。
鎌瀬は咄嗟に転がるように――否、実際に転がってそれをかわす。
標的をなくした拳が地面に激突し、小規模の地割れが起こる。
菊乃は転がった鎌瀬の方を見て僅かに首を傾げた。

「……?」

攻撃が当たらなかったことが不思議なようだ。
あの避け方を見るに、向こうは大した能力者じゃない。
身体能力などを考えても、こちらの攻撃が避けられることはなかったはずだ。
――しかし実際は当たらなかった。
本来の菊乃であれば確実に当てていた。
いつもであれば、周囲を高重力にした場合、自身にかかる重力は緩和しているはずなのだ。
しかし半錯乱状態の今は、その緩和が上手くできていない。
そのため、菊乃自身も少なからず重力の影響を受けてしまっているのだ。
故に思い通りに体が動かず、結果的にかわされてしまったのだ。
当然菊乃にそれが分かっているはずもなく、ただ首を傾げるのみであった。
しかしかわされたことは認識している。そこで次の手を考えた。
――なら、かわせない様にすればいいじゃないか。
ここに来て、菊乃は初めて意識的にオーラを操作する。
今までは無意識状態でオーラが漏れているだけの状態だったが、今度は違う。
急速に有効範囲を広めていく。それに伴い、地響きと共に周囲の建物も潰れていく。
まるで街中に巨大な鉄球が落ちたかのように、菊乃を中心に半径凡そ30m程の、巨大なクレーターが出来た。

「……」

菊乃は中心部に立ち尽くし、虚ろな瞳を鎌瀬の方に向けた。
しかしその瞳からは、一筋の涙が流れていた――。

【神宮 菊乃:市街地の西で鎌瀬 犬斗と戦闘に。暴走状態は継続中。】




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