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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

1名無しさん:2004/11/25(木) 19:54
「自分も小説を書いてみたいけど、文章力や世界観を壊したらどうしよう・・・。」
「自分では面白いつもりだけど、うpにイマイチ自信がないから、
読み手さんや他の書き手さんに指摘や添削してもらいたいな。」
「新設定を考えたけど矛盾があったらどうしよう・・・」

など、うpに自身のない方、文章や設定を批評して頂きたい方が
練習する為のスレッドです。

・コテンパンに批評されても泣かない
・なるべく作者さんの世界観を大事に批評しましょう。
 過度の批判(例えば文章を書くこと自体など)は避けましょう。
・設定等の相談は「能力を考えようスレ」「進行会議」で。

376 ◆vGygSyUEuw:2006/02/27(月) 18:05:48
ハローさんの話。添削お願いします。


手の中に、つるりとした固形状の感触がある。
なめらかで冷たくて無機質なような有機質なような、そういう触感だ。
つい先日手に入れたものだ。欲しくもなかったが。
それが高価なのも、最近知った。
そして、何かしらの力を秘めていること…は、大体勘付いていたか。
ともかく、どちらかといわずとも歓迎できない部類の贈り物だ。もっとも突っ返そうにも送り主は不明なのだが。
ため息をつきかけて、ふと頭に浮かんだ迷信にそれを躊躇し、結局飲み込んだ。
信じてはいない。けれど、皆不意に出て来ることはあるだろう。
北に枕を置くと駄目だとか、夕暮れ時は魔物が出る、だとか。
方便としての活用だけで、毒にも薬にもならない、いわゆるそういうものだ。
右手を開く。待ち構える左手にすとんと収まる。自然な落下だ。
どうやらこういう不可思議な石も引力や重力に逆らうことはないらしい。
白、というかごく薄いクリーム色の、硬質なもの。
石にも大きめの飴玉のようにも見えるが、これは象の牙だ。
つまり、今この手中にあるものの後ろには、一頭の象の死がある。
それだけならまだしも、と思い、一呼吸置く。
「…厄介な。」
それだけ一言つぶやく。後を追うように息が出て行き、はたと苦笑する。
ため息は幸せを一口分連れて逃げ、うっすらと白く消えた。

しかし、この寒い中屋外で人を待つのも辛いものだ。
電柱に寄り添うようにして往来に突っ立っていると不審人物に間違われないかと心配なのだが、幸い人通りも少ない。
二十分ほどここにいるが、その間犬を連れた爺さんが一人通っただけだ。
見回すとすぐそばに喫茶店が見えたが、そこでぬくぬく待っていたら怒られそうな気がする。待ち合わせるならもっと時節も考えてほしい、とひとりごちた。
手持ち無沙汰となり、何の気なしに象牙をつまみあげて観察する。
簡素な白は、ただ磨かれただけで少々寂しい。
判子にでもしてしまうか、と思ったが、ふと考える。これは戦闘用だ。
ハンコ片手に戦う。…滑稽だ。いや、芸人たるもの面白くないよりは面白い方がいいのだが、下手を打てば死ぬような場面で無理して笑いを取るのもどうかと思う。
「山崎」と彫ろうと「ハロー」と彫ろうと、馬鹿馬鹿しいことにあまり変わりはない。
第一、割と芸風と違う。

377 ◆vGygSyUEuw:2006/02/27(月) 18:06:29
そもそも誰が笑ってくれるというのだ。敵か?
敵も芸人だ。敵も命がけだ。しかもそれどころではないような状況にいるだろう。
嘲り笑いならいただけるかもしれないが、それは多分腹が立つだろう。
結論、判子は却下。
そう寒さのせいで薄ぼんやりとしたとりとめのない思考が結論づいたあたりで、丁度待ち人がやってきた。
とはいえ、色気のあるものではない。石をポケットに突っ込む。
「どうも。」
軽く会釈すると、よ、という短い返事が返る。
「今日も寒いな。」
「そうですね。」
会話とも呼べないような他愛もないやりとりをして、男が鞄を開けた。
「ほらよ、いつもの。」
「…どうも。」
出て来たのは、いつも通りの黒い紙袋。
もっと違うものであればいいのに。
ぼんやりと思うが、具体的に何がいいとも浮かばない。
要はこれでさえなければいいのだ。そうであれば。
…言い換えよう。「これは嫌だ。」
浮かんだ言葉も思考の波に流れて飲み込まれ、声に出すこともないまま何事もなかったように消えていく。
ずしりとした黒い袋を受け取る。どうせ中身もいつもの黒いものだ。
黒に黒、というのはいかがなものかと思う。別に外見が何色であってもそのものの本質は変わらないのだが、人間はごまかしが好きなものだ。
袋を渡して、名前も知らないいつもの男は去っていった。
いや、毎回違うのかもしれないが、そんなことお互い気にも留めないので分からない。
どこかのスタッフなのかもしれないし、見知らぬ芸人かもしれない。
しかし待たせておいて、あっさりとしたものだ。…いや付き合わされても困るので別にいいのだが。
袋はじゃらりと、小さく硬いものがいくつもぶつかる音を立てて揺れる。
中身をそっと確認する。いつものように、といっても未だ慣れない禍々しい黒がいくつも入っていた。
ぶるりと震え、袋を鞄に突っ込むとさっさとその場を離れる。
これがまた誰かを狂わせるのだろう。触れた手や鞄まで汚れたような気がした。
いや実際汚れている。使ったことはないにせよ、今こうして関わっているのだ。
けれど、どうすることもできないではないか。
知っている親しい誰かが苦しむかも、死ぬかもしれなくても。
己には何もできない。痛いほど分かっている。弱いから従っている。駄目な自分だ。
割に広い道は人とすれ違うこともない。平日の午後一時、町はどうにも力が抜けていた。
ふと、ポケットで揺れる軽い重さに、布越しに手を触れる。
こいつはまだ白いままだ。いつか黒ずむのかもしれないが、まだ何も言われていない。
…そういえば、まだあの黒いもの―正式な名前も知らないが、あれはどうやって使うのだろう。
袋の中に石を入れる。白地にじわりとまわりの黒が広がっていく。
想像をしただけで寒気がして、今すぐ象牙を乱暴に磨き上げたくなった。
拒否反応が出るということはまだ迷っているのだろう。
黒に。いや、そもそも石に。
戸惑いがあった。善良とは言えないにせよ、ただの一市民だ。
…少々自分勝手ではあるにせよ、ただ人を笑わせるのが好きな男だ。

378 ◆vGygSyUEuw:2006/02/27(月) 18:07:19

紙袋に大量に詰まった黒いものの欠片を指定されたテレビ局の控え室へ届けて、トイレへ行って手だけ洗って出て来た。迷信と同じく、意味はない、まじないのようなものだ。
弁当の紙袋の隣に放ってきたアレは、きっとスタッフが分配するのだろう。
我も我もとたかってくるのだろうか。それとも自分のように迷いがあるのだろうか。
あってほしいと思う。まだ引き返せると。
可能動詞と実際にできうることは別物だと知っていて、それでも。
つい他人事のように見てしまうのは、そう切羽詰まっていないからだろうか。
断って危害を加えられるのが怖いから、黒に入っただけだ。大それた野望も欲望もない。
完全に長い物に巻かれている。情けなくはあるが、怪我をしたくはなかった。
まだあのおぞましい欠片も直接もらってはいない。それもそうか、運び屋が薬漬けになっては困る。許されればずっと運び屋でいたい気分だ。
象牙を取り出して握りしめると、少し落ち着いた。
手が震えていたことに気付く。それほどあの欠片が嫌なのか。
…お前は、どうだ。いつか「黒」になる時が来たら、受け入れてくれるか。
もちろん石が喋りかけてくれるはずもなく、ただしんと白くそこにあるだけだった。
俺は嫌だ、と思う。
きっと流れには抗えないけれど。

トイレの前で十分近く固まっていたのは、幸い誰にも見られていなかったようだ。
前は大丈夫だったのに。…今回は特に量が多かったからだろうか。
額から汗が一筋垂れるのを袖で拭うと、さっさと歩き出す。
今はただ帰りたかった。忘れたかった。どうせ逃れられないのだから。
局の正面玄関を出て、駅への道を行きかけ…ふと立ち止まる。
石の気配を感じた。少々不穏な、でも攻撃的ではない。
さっと振り向くと、テレビの中で見慣れた人が立っていた。
広めの額にしゃくれた顎に目の下の隈、人を食ったようなにやにや笑い。

379 ◆vGygSyUEuw:2006/02/27(月) 18:07:57
「…有田…さん?」
唖然となって呟いた。
そんなような表現が正しいように思える。
「やー、どうも。ハローくん、だっけ?」
ひらひら手を振ると、にこにこ笑って近づいてきた。
焦って思わず身構える。攻撃には適さないことを忘れて、掴んだ石をかざす。
「おっとっと、ちょい待ちちょい待ち。
 別に手荒な真似はしないってえ。今日はお話…っていうかお取引に来たから」
「…取引?」
「そそ、悪い話じゃない。俺も仕事あるし、手短にすますけど」
ますます怪しい。白の幹部が、黒の下っ端に何の用だというのか。
有田さんが話を続ける。顔中ににやにや笑いが広がっている。
「実はさあ、ちょっと手伝ってほしいことがあんのよ。
 ちょっと前つかまえた黒の奴から聞いたんだけどさ、君の能力」
後輩か。自己紹介程度に能力を教えていた奴はそこそこいた。
「や、白に来いとかそんなんじゃなくて。ただ、ちょーっとボランティアにご協力。」
「…具体的に、どんなことについて?」
知らず声が固くなる。そんなことを言われて、信じられるはずがなかった。
にや、と大きく相手の口が歪む。
「目には目を大作戦。」
「…は?」
皮肉ではなく、純粋に問い返す。
「あ、この呼び方じゃわかんないか」
わかるはずがない。復讐、としか目星もつけられなかった。
こっちに話を持ってきたということは、自分の能力が何かしら役立つ部類のものか。
「んー、ちょっと話すと長いんだけど…」
そう前置きされた話の内容に、嘘臭い点は見あたらない。(話し方は冗談のようだったが)
象牙を見ても、警戒の光はなかった。どうやら信じられるらしい。
「どう?」
協力してくれる?とにっこり笑う相手に、
「わかりました」
と了承の返事を返す。
「…その代わりといっては何ですが、俺も白に入れてくれませんか。」
続けて自然とこぼれた言葉に、耳を疑った。いやこの場合は口か。
何を言っているんだ、正気か。我ながら思う。だがもう溢れ出た言葉は喉には戻らない。
そして、本心であった。ずっと願っていたことが向こうから来たのだ。
脱けたかった。どうやらここには耐えられなかったらしい。石も俺も。
誰かがきっかけを作ってくれれば、とずっと思っていた。
やっと踏ん切りが付いたのだ。
覚悟を決めた。戦う。たとえ、険しい道でも。
事務所違いの先輩は思わぬ収穫に驚いたのか目を見開くと、満足げに笑み、
「んじゃ、一応石浄化しとかないと。」
と象牙に手を伸ばし、曇り一つないその姿にまた驚いて、
「…本当に黒?」
ときょとんとした目で聞いてきて、俺を久々に笑わせたのだった。

380 ◆vGygSyUEuw:2006/02/27(月) 18:10:04
ここまでです。ビット編から次の話までのつなぎ話。
ハローさんの言葉遣い等不安なので、ちょっと見ていただけるとありがたい。


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