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【添削】小説練習スレッド【キボンヌ】

379 ◆vGygSyUEuw:2006/02/27(月) 18:07:57
「…有田…さん?」
唖然となって呟いた。
そんなような表現が正しいように思える。
「やー、どうも。ハローくん、だっけ?」
ひらひら手を振ると、にこにこ笑って近づいてきた。
焦って思わず身構える。攻撃には適さないことを忘れて、掴んだ石をかざす。
「おっとっと、ちょい待ちちょい待ち。
 別に手荒な真似はしないってえ。今日はお話…っていうかお取引に来たから」
「…取引?」
「そそ、悪い話じゃない。俺も仕事あるし、手短にすますけど」
ますます怪しい。白の幹部が、黒の下っ端に何の用だというのか。
有田さんが話を続ける。顔中ににやにや笑いが広がっている。
「実はさあ、ちょっと手伝ってほしいことがあんのよ。
 ちょっと前つかまえた黒の奴から聞いたんだけどさ、君の能力」
後輩か。自己紹介程度に能力を教えていた奴はそこそこいた。
「や、白に来いとかそんなんじゃなくて。ただ、ちょーっとボランティアにご協力。」
「…具体的に、どんなことについて?」
知らず声が固くなる。そんなことを言われて、信じられるはずがなかった。
にや、と大きく相手の口が歪む。
「目には目を大作戦。」
「…は?」
皮肉ではなく、純粋に問い返す。
「あ、この呼び方じゃわかんないか」
わかるはずがない。復讐、としか目星もつけられなかった。
こっちに話を持ってきたということは、自分の能力が何かしら役立つ部類のものか。
「んー、ちょっと話すと長いんだけど…」
そう前置きされた話の内容に、嘘臭い点は見あたらない。(話し方は冗談のようだったが)
象牙を見ても、警戒の光はなかった。どうやら信じられるらしい。
「どう?」
協力してくれる?とにっこり笑う相手に、
「わかりました」
と了承の返事を返す。
「…その代わりといっては何ですが、俺も白に入れてくれませんか。」
続けて自然とこぼれた言葉に、耳を疑った。いやこの場合は口か。
何を言っているんだ、正気か。我ながら思う。だがもう溢れ出た言葉は喉には戻らない。
そして、本心であった。ずっと願っていたことが向こうから来たのだ。
脱けたかった。どうやらここには耐えられなかったらしい。石も俺も。
誰かがきっかけを作ってくれれば、とずっと思っていた。
やっと踏ん切りが付いたのだ。
覚悟を決めた。戦う。たとえ、険しい道でも。
事務所違いの先輩は思わぬ収穫に驚いたのか目を見開くと、満足げに笑み、
「んじゃ、一応石浄化しとかないと。」
と象牙に手を伸ばし、曇り一つないその姿にまた驚いて、
「…本当に黒?」
ときょとんとした目で聞いてきて、俺を久々に笑わせたのだった。


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