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【個】『サロン』【他】

126空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2025/02/27(木) 14:34:52
>>125 (空井イエリ)

「ほう……」

 カップをソーサーの上に戻し、感嘆の吐息。
 イエリ氏の背後に現れた半可視の『像』に、
 静かに精神のピントを合わせる。


  そうか、イエリ氏の『心の図像』は……
  『旅人』か。


 空白のピースが収まるように、
 不思議と妙に合点が行った。


「……君の言う通りだな」

 わたしはどこか清々しい気分になって、
 ニヤリと片頬だけで笑みを作る。


  「『わたしたち』の場合、
   相互理解に千の言葉を尽くすよりも、
   『そいつ』を見せる方が『話が早い』」


 瞬間、脳裡で自らの『魂の形』の図面を引き、
 その像を虚空の中に織り上げてみせる。


  すると『そいつ』はわたしの背後に、
  黙視の従者のように立っている。
  数多の『糸車』を備えた『機械人形』。


   「『エラッタ・スティグマ』。
    わたしの悪食な愛機の名だ」


 言うなり、卓上の『カヌレ』を一摘み。
 振り向かず背後に向かってポイッと投げ渡すと、
 ヴィジョンの『右手』で受け止めさせる。


  直後、カヌレを掴んだ『右掌』の糸車が、
  音を立てて回り始めた。


     ギャルルル ル ル ルルルル……


 わたしの精神の風が回す糸車の上で、
 カヌレは風色にほどけるように消えていく。

 そして従者はわたしから『名刺』を一枚受け取ると、
 精緻な『左手』の指先でその表面を弾いていく。


      トトトトトトト  …… トン!


 「『わたしにやれること』はこの通り」

  糸始末を終えた名刺を卓上に起き、
  イエリ氏の前へと滑らせる。


 その名刺には……世にも珍しい『カヌレの糸』によって、
 最初からそう印字されていたかのような自然さで、
 美しい『英文』のカリグラフィが『刺繍』してあった。


 その内容はこうだ―――


    " What’s your move? "
        さて、君は?


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