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【ミ】『ワックワーク・フィールドワーク』【場】
548
:
『最中派』
:2021/10/20(水) 21:43:31
アリーナ、『最中派』の一派はかの若人との契約を果たすために、動き始めた。
その内の一人――紫木葉巻は、もう少々年の行った――と入っても過ぎて三十と行った所の――若い女を引き連れていた。
対象的な、二人であった。
紫木の装いは、ヤニの染み付いたジャージの上にジャケットを羽織ったラフ・オブ・ラフ。
深夜、近所のコンビニに買い物に行く以外にはまず許されないような装い。
対する女は、異様なまでに整った顔の女である。
ピンク色のシャツワンピースという装いそのものは、さして異常を感じさせるものではない。
その顔も、誰が見ても明らかに『作った』――メスを入れたとしか思えないような顔。
美しくはある、しかし、それは造形の美でしか無い。天然の美がない彼女を美女と呼ぶ人間は、少ないだろう。
欠片たりとも整わぬ女と、違和感を覚える程に整えられた女。陰陽の如く混ざらぬ二人は、湖畔の教会の前に立った。
「で、、紫木。どうすんのよ。いきなり使って待つ?」
「……まずは……素直に……頼む……」
「は? あんた、自分のカッコ解ってんの。あっちで飯タカってるくっさいジジババとそう変わんない不審者よ?」
最低な言い草であるが、正論であった。紫木の装いは、ヤニ臭く礼節の欠片もない。
これで、頼んで聞くような事があろうか――女のの眼差しの訴えを察した紫木は、口を開く。
「あの子には、煙草の貸しがある……だから、最中さんのアレを使わない努力ぐらいは、するべき……」
「ぷっ……それ、本気で言ってるの、あんたが、努力?」
せせら笑う女――紫木は意にも還さないが、女は言葉を続く。
「髪は千円カット、風呂はシャワーか行水、服はオンボロ、ガッコは中卒……自分を欠片も磨かない挙げ句に楽なおしゃぶりで食うようになったあんたが、努力?……仕事中に冗談はやめてよね」
せせら笑う女――紫木は意にも介さず、どんどんと門を叩いた。
「いますか……」
「聞きなさいよ!」
「花梗、うるさい……礼儀……考えろ……失礼、します……」
そして、紫木は喚く女を尻目に、教会へと入った。
誰かが『出迎える』ならば、まずは『交渉』を行うだろう。
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