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【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』 その2
573
:
『照光が灼き焦がす』
:2023/06/09(金) 10:55:15
>>571
(斑鳩)
「あぁ、鍵ね〜。はいはい、こっちこっち」
女性教師はどちらかと言えば扉に近い位置だったが、
斑鳩が入室してくると立ち上がって近づいて来た。
「一応、間違ったところに返したりとか、
いろいろあるから……見とく事になっててねえ」
『鍵の返却』――このばかでかい学校となると、
それをするにもある程度のケアは必要ということか、
単に、この女教師が教師らしい節介焼きの気質なのか。
とはいえ――スタンド使いでもなんでもない教師だし、
『斑鳩』のプランとして『足止め』をするのと理屈は同じだ。
ルート選定も、『斑鳩』の能力と知性なら何ら難しくはなかった。
職員室のルールを超えるような警戒はこの部屋の中に何も無いのだ。
ドドドド ドォーーーン
「あらっ、すごいノック……」
――――『朝山』にスタンド会話で意図は伝えられた。
そして、『佐川先生』は難しい顔で『ノック』を見に行ってくれた。
とりあえず『朝山をフリーにする』目的の方は無事に達成だ!
「……佐川センセが行ってくれたし、
私達は気にしなくてよさそうねえ?
さ、鍵箱開けたげるから、ちゃんと返しておいてね」
問題は…………鍵の返却が、ゆるいとは言え監視されている事だろう。
『鍵箱にも鍵がある』ような物いいだし、こうなると中身も検められていそうだ。
『鍵の入れ替え』作戦は……どうする? 実行するかどうかは、まだ決められる。
>>572
(朝山)
『真心』と『スマホ禁止』を持ち出した『朝山』。
前者には一瞬、『佐川』の仏頂面が緩んだ気がした。
生徒のやさしさを一概に否定はしない教師らしい。
しかし……後者を口にすると、彼の眉根に皺が寄る。
「……あ、朝山君。そんなルールはウチには無いよ。
昨日見たドラマか何かと混同していないか?
君が個人的に持ってきていないという意味なら、
それはまあ…………学生として正しいとは思うけど」
2020年7月以降、文科省はスマホ禁止を解禁し、
学校でのスマホは『条件付き容認』となっている。
そして繰り返すようだが『自由な校風』の清月では、
少なくとも……全面的なスマホの禁止などしていない。
これまで学園で綴られてきた多くの交流の中で――
ごくごく真面目な生徒達も『スマホ』を持ち出して、
連絡先の交換をする一幕があったのは、確かな事実だ。
「そもそも。小角君のお見舞いに行くという子は、
彼女と同じ部活の生徒だけでもう何人かいるんだ。
それだって本当はどうかと思うが……ともかく。
君の『優しさ』は十分に伝わっているけど……
住所も連絡先も知らない間柄の君が来たとして、
病床の彼女には、負担になってしまうと思うんだ」
「……お話はそれだけかな?」
ほとんど子供を諭すような口調で『佐川』は返す。
この神経質な教師にパワフル理論は響かない。
あるいは理屈を持ち出さず『若さ』だけで行けば、
少なくとも絆される可能性くらいは『あった』か?
ドドドド ドォーーーン
重い空気を引き裂くのは『ドアの激しいノック音』
――『斑鳩』の作戦だ!
「……全く。
朝山君。私は少し様子を見てくるが……
用事が他にあるならそこで待っていてくれるかな」
狙い通り、『佐川』が立ち上がってそちらに向かった。
他の教師より率先して動くあたり、
神経質さもある種『熱意』による物なのかもしれない。
「……『見らレますよ』」「『画面』」
ボソ
朝山にだけ聞こえる声で『ケゲラパニ』が声を掛けた。
その声色はやはり感情が読めないが……事実を伝えていた。
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