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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その4

707『伝播のG』:2020/11/12(木) 21:15:34
>>705(林檎)

『録音機能』を動作させたスマホを、
抜け目なく鞄に忍ばせる。
鍋島は椅子に掛けていた。
机の上には、据え置き型のCDプレイヤーが置かれている。

「『過去の放送』を聴き直していたんですよ」

「『I Love Me』のリスナーが減っている事はご存知でしょう?
 だから、そうなる前のバックナンバーを確認していた訳です。
 何か『打開のヒント』がないかと思いましてね」

「番組の方向性を少し変えてみてはとも考えたんですが、
 如何せん弥生の反応が芳しくないものでして。
 私としても、何かと辛い所ですよ」

そう言いながら、鍋島は苦笑いを浮かべた。
二人の会話は全て録音されている。
それに対して、鍋島が気付いた様子もない。

>>706(空織)

「フ…………」

「そんなに『ロマンチスト』だなんて知らなかった」

弥生が空織に笑い掛けた。
ほんの僅かだが、表情の曇りは薄らいだようだった。

「…………いいわ。
 そんなに期待してた訳じゃないし…………」

「…………冗談。
 済んでしまった事は仕方がないから…………」

「…………『これからの事』を考えた方が建設的よ」

弥生は、軽く頭を振った。
空織と林檎を思ってか、
その顔色には珍しく気遣いの色が見えた。
それから彼女は椅子から立ち上がる。

          ――――ガタッ

「喉が渇いた…………」

「…………一杯付き合って。奢るわ」

制作室を出た弥生が向かうのは自販機の前だ。
彼女は五百円硬貨を投入し、缶コーヒーを購入する。
それから横に移動し、空織のために自販機の前を空けた。


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