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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その4

268『伝播のG』:2020/07/09(木) 22:40:42
>>266(空織)

「いえ――――私の考えが甘かったようです。
 どのような質問であろうと、
 解決のために必要であれば答えるべきなのでしょう」

「新調した機材は、
 『ミキシングコンソール用の拡張マルチエフェクター』です。
 細かい説明は省きますが、
 『ミキシングコンソール』というのは、
 マイクや楽器からの信号を受信して、
 音量や定位を調整する機器の事です」

「導入したのは『一ヶ月前』です。
 それまで使用していた型は古いタイプでした。
 機材の『更新』が新調の理由です」

空織の熱意が伝わったらしく、
露木は明瞭な口調で淀みなく質問に答えていく。
『解決』に向かおうとする真摯な態度が功を奏した。
同時に、空織の脳裏に『副調整室』の光景が蘇る。
そこで見た大小様々な『音響機器』。
新調されたのは、『その内の一つ』だと考えていいだろう。

「これは鍋島にお聞き下さった方が正確だと思いますが、
 私の見解としては、
 番組の存続が難しくなる程ではありません。
 ただ、『それ以上の事』までは分かりかねますので、
 その点はご理解下さい」

露木から得られた回答は、そのような内容だった。
『それ以上』――言い換えれば、
『先の事』までは予測出来ないという事だ。
今は番組が切られる程ではないにしても、
もし『減り続ければ』どうなるかは分からない。

    スタ スタ スタ

丁度その時、澤井が階段を上がってきた。
会話を交わす二人に軽く頭を下げ、
そのまま二階に歩いていく。
ふと、露木の後ろに来た辺りで、彼の足が止まった。

                 …………チラ

一瞬、澤井の視線が空織に向けられた。
だが、それは瞬きする程の僅かな時間に過ぎなかった。
次の瞬間には、彼は再び歩き出し、
曲がり角の向こう側に消えていった。

>>267(林檎)

「大丈夫よ。林檎さんは、立派にやってくれていると思うわ。
 私が林檎さんくらいの頃より、ずっとしっかりしてるもの」

「私は林檎さんの事を信頼してる。
 それに空織さんの事もね。だから、落ち着いていきましょう」

柔らかい口調で言うと、くるみは林檎の肩に、
そっと手を置いた。
そして、林檎は再び警備室の外に出る。
すると、そこに『意外な人物』が立っていた。

「あぁ、林檎ちゃん。見つかって良かったよォ〜。
 実は、あの後で『思い出した事』があったんだよね」

           スタ スタ スタ

「あれ?洋服、着替えたの?
 やっぱり可愛い子は何を着ても可愛いもんだねぇ〜」

待っていたのは『園部』だった。
相変わらず馴れ馴れしい調子で、林檎に近付いてくる。
何か話があるようだ。

「大した事じゃないかもしれないんだけど、
 何か少しでも林檎ちゃんの助けになりたいと思ってさァ。
 それで林檎ちゃんを探してたんだよ」

「――あ、美作さん。どもッス」

くるみは慣れているらしく、目線で挨拶を返した。
『これからの事』を考えると、窓の確認も無駄ではない。
どちらを優先するかは林檎の自由だ。


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