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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その4

1名無しは星を見ていたい:2020/05/23(土) 19:46:51
短編、単発のミッションなどにお使いください。
長編やシリーズものの予定でしたら、自分のスレで行うことをお勧めします。

2『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/23(土) 20:49:17

   ――― ある日、15時ごろ ―――

星見町の、とあるファミレス。そこに客はほとんど居ない。

中央のテーブルには、
 茶髪ソフトモヒカン………『門倉良次』、

『門倉』のテーブルと通路を挟んだ隣のテーブルには、
  ブロンドの少女………『エヴァレット・ローレンス』。

やる気のなさそうに無駄話をしている
       学生店員たちを除けば、
       フロアに居るのはその二人のみだ。

 ………

 「―――ええ。ええ、分かります。
      『あの日』からもう、かなりの時間が経っていますもんね。
     そろそろ『理解』したいと思うのは当然の事です」

二人のうちの一人、『門倉』は『スマホ』を片手にペコペコと通話している。

 「―――ええ、もちろん。もちろんですよ。
      あれからずっと考えていますし、資料整理も抜かりなく!
      やってはいる、やってはいるんですが………
      なかなか難解でしてね。

                       お子さんの―――『スタンド能力』」

    少し大きめの『門倉』の声は、隣のテーブルまで届いている。

3エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/23(土) 21:00:09
>>2

「…………」

 通話しながら頭を下げる門倉を、しげしげと興味深そうに見つめている。

 ジャパニーズ・サラリマンは、たとえ相手の姿が見えなくても礼儀を欠かさない……
 そんな噂を聞いていたけれど、まさか本当だとは。

「…………」

 読み古した推理小説を持ってきたが、どうも頁を捲る気になれない。
 それよりも、彼の話に聞き耳を立てている方が、ずっと面白そうだ。

----------
【能力詳細(念のため)】

手に触れた『情報媒体』を一瞬で『灰』と化す、『焚書』のスタンド。

『ファーレンハイト451』

破壊力:E スピード:B 射程距離:E
持続力:E 精密動作性:A 成長性:A

ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453051228/151

4『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/23(土) 21:50:09
>>3(エヴァレット)

「―――ええ、『鈴元君』にも細かく状況はきいて、まとめてはみたんですが………

    ………え? 今ですか? 以前会ったファミレスですけども………

                 え、ええ。あのコンビニの近くの、ええ……

   ………え? 来る? 福助君と一緒に?

           ………はい ………はい

                          ……あと30分、ですか。


     ―――了解しました。それでは後程。


                          ………ええ、失礼します」


 興味深く、『門倉』の通話を聴く『エヴァレット』。
             ほどなくして話は終わったようだ。

                       「…………やれやれ」

通話を終えた『門倉』は軽い溜息と共に、眼前の『コーヒー』に口をつけた。

5エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/23(土) 22:11:25
>>4

「…………こんにちは」

 通話を終えたのを見計らって、声をかけてみる。

「……なんだか、大変そうですね。お仕事の電話ですか?」

 カフェは交流の場だ。(ここはファミレスだが。)
 見知らぬ仲だとしても、或いはだからこそ、世間話にも花が咲く。と、思う。

 もし、彼の話を聞きだすことが出来たなら。
 それは、何度も読み返した小説をぼーっと眺めているよりも、ずっと面白そうだ。

6『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/23(土) 23:27:50
>>5(エヴァレット)

「………ん? ああ」

 コーヒーカップを片手に『門倉』が『エヴァレット』の方を見やる。

「そうだね、『仕事』の話だ。そして、お察しのとおり上手くいってない。

 ―――いや、当初の『仕事』自体は上手くいったんだけど、
      ただ一つ、シミのように残った『謎』があってね。
      それに四苦八苦しているというわけだ」

 『門倉』はやや芝居かかった動作と共にそう返してくる。

「………だけど悪い事ばかりじゃあない。
     大変な仕事が、君に声をかけられる契機となったわけだからね」

7エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/24(日) 00:02:15
>>6

「へえ」

 『謎』。

「……よろしければ、どんなお話だったのか」
「教えてもらえないかしら。ちょっと退屈していたところで」

 芝居かかった動きと友好的な返事に、微笑みを返す。

「……そちらの席に行っても?」

8『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/24(日) 00:14:34
>>7(エヴァレット)

「………あー、とりあえず二つ目のお願いには『YES』だ。
     ただ、待ち合わせをしているんでね。
      30分程度のお茶会になってしまうとは思うけど」

『門倉』は自らの荷物を整理し、『エヴァレット』の為に席を空ける。

「そして、だ。
 残念ながら最初のお願いには応じられない。

  もちろん『守秘義務』という事もあるんだけど………

    それ以前に、そもそも『信じてもらえない』と思うんだよね」

 席に呼び寄せておきながら『門倉』はそんな事を言う。

9エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/24(日) 12:30:46
>>8

「……そう。『守秘義務』、なんてものが……」

 残念そうに目を伏せながら、門倉の空けてくれた席に移る。

「……本当に、大変なんですね。社会人って」

 職務を通じて知った秘密や、個人情報などをみだりに明かしてはならない。
 そんな、つまらないルールのせいで。

「……『鈴元君』、という方が、お仕事に携わったんですね」

「そして、仕事相手の方と、『福助君』が」
「ここに姿を現すんですね」

「『あと30分で』」

 そんな、つまらないルールのせいで、社会的信用を失ってしまうことがあるなんて。
 かわいそうな男性だ。どうにか内緒にしてあげたい。(この程度で漏洩となるかどうかは分からないが・・・)
 口止めに、全部洗いざらい吐いてくれればいいのに。

10『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/24(日) 15:45:07
>>9(エヴァレット)

 「………」

よどみなく『固有名詞』を挙げる『エヴァレット』。
それを聴いた『門倉』はわずかばかり目が泳いだが、数秒のちにニッコリと笑う。
.
「………色々言ってはみたが、
     君になら話してもいいとは思っていたんだ。
      本当さ、本当なんだよ。
                       ただ―――」

 『門倉』は少しだけ言葉を切った後、

「少年が視えない力で『顔を崩す』、

            その『条件』を探る仕事をしている―――

                      なんて言われても、困っちゃうだろう?」

                             『エヴァレット』にそんな事を告げた。

11エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/24(日) 18:18:36
>>10

「……あら、本当に?」

 門倉の返答に、笑みがぱっと花やいだ。
 よかった、内緒にしてあげられそうで……。

「……私、『霊感』が強い方なんです」

 荒唐無稽な話を信じるか、それとも信じないか。
 そんな門倉の懸念に対して、エヴァレットはどこか胸を張るように返す。

「……そのせいで、昔から不思議な体験もしてきた。
 多少の奇怪な話なら、耐性もあるつもり、なんですけど……」

 とある『条件』で、『顔を崩す』、『視えない力』を操る少年。

 その言葉を聞くたびに。
 瞳の輝きが。
 どんどんと、増していって――――


      「素敵!」


「……あ、ごめんなさい。
 ええと……だから、『信じられない』ような話でも、馬鹿にしたりしません。
 ……どうしても『信じられない』って思ったら、そうね。
 小説や映画のような、『架空の物語』の設定、と思って、黙って聞いているわ」

「……もしかしたら、人に聞かせるように話すことで。
 頭の中で、情報を改めて整理することも、出来るかもしれないし」

「……そうだ。お話をしてくれるなら、その時間のコーヒー代は私が出す、というのはどうかしら」


「………………駄目?」

12『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/24(日) 21:33:45
>>11(エヴァレット)

 「そう……
        そう……
                そうか―――」

『門倉』は新雪を踏みしめるかのようにゆっくりと『エヴァレット』の言葉を?みしめる。

「そうだね、君がそういうのなら。そうだ、これはあくまで『仮定』の話。
  あるいは『物語』、『おとぎ話』の類だと思ってくれればいい。
            これから俺が話すストーリーについてはね。

 あと、コーヒー代については必要ないよ。
  君のような年齢の娘(としのこ)に、ご馳走になるほど落ちぶれちゃあいない。

  そして、こうしよう。この話には一つの『謎』が残っている。
   もし君がそれを解けたのなら、君の注文の支払いはこの俺、
            『門倉良次(かどくら りょうじ)』がしようじゃあないか」

13エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/24(日) 23:00:49
>>12

「……そう? 年齢は関係ないと思うけれど……」

 とはいえ、この国にはこの国のしきたりがあるし、彼にも彼の信条がある。
 無理に主張するのは、ちょっとはしたない。コーヒー代に関しては引っ込めた。

「……『物語』、の……『謎』ね」

 興味はあるけれど、「解いてみせる」と断言もできない。
 ただ頷いて、門倉の提案に応じる。

「……私は、『エヴァレット・ローレンス』。よろしくお願いします、門倉さん」
「早速、その『謎』にまつわるお話を、聞かせてもらえるかしら」

14『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/25(月) 20:49:33
>>13(エヴァレット)
「『エヴァレット・ローレンス』ちゃん………
 いや、ちゃんづけは良くないか?

     ともあれ、それでは話を始めようか―――」

『門倉』は残ったコーヒーを飲み干し、語る為に喉を潤す。

「せっかくだから、順序だてて話そう。

 『依頼』があったのは一月の事だった。
  とある『美容外科』の院長からの『依頼』。

人気のある『美容外科』だったんだが、
そこではときたま『顔が崩れる』という、奇妙な事件が起こっていたんだ。
『顔が崩れる』というのは文字通りの意味で―――
口や目や鼻などのパーツがくるくると無分別に踊り狂うという『怪奇現象』。
その騒動により、患者が激減しているという話だった。

依頼主である院長はこれを『呪い』だと考え、
そういうのに強い、この俺と、もう一人の相棒、
 ………『Sくん』とでもしておこう………
この二人で直接、『美容外科』に乗り込み、調査する事になったんだ」

少々、長くなりそうな話だ。疑問点や意見があれば気軽に述べてみてもいいだろうし、
逆に要点だけ話して欲しければそう促すのがいいかもしれない。

15エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/25(月) 22:19:43
>>14

「……『ちゃん』でも『さん』でも『呼び捨て』でも、
 貴方が呼びやすい方で構わないわ。『門倉さん』」

 居住まいを正して、話に耳を傾ける。

 美しさを求めるための施設、『美容外科』。
 それなのに『顔が崩れる』というのは、比喩表現であってもひどい話だ。

「……『呪い』、ね。霊媒師か何かのご職業?」

 今のところ、特に疑問はない。
 黙って聞いていよう。

 『30分』もあるのだし、じっくりと話を聞きたいものだが……
 そこは門倉のペースに任せたい。今は特に急かしたりはしない。

16『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/25(月) 23:49:42
>>15(エヴァレット)

「『霊媒師』―――
  まあ当たらずとも遠からずと言ったところかな。

               俺は実は『超能力者』なんだ」

 冗談めいた口調で『門倉』がそう告げる。

「だからこの現象、『呪い』も
 誰かの『超能力』なんじゃあないかという
     推測の元、俺達は調査にあたったというわけさ。

 『超能力』といっても『何でもあり』というわけじゃあない。
 その生物の『精神の発露』というべき一定の『法則』や『一貫性』があるのが普通なんだ。

 ………まあ全ての『超能力』に触れたわけじゃあないから、
      この論には『そうであってほしい』という願望も含まれているけどね。

 とにかく、俺達は『顔が崩れる』現象の『法則』を探そうと
        『院長』や『スタッフ』に聞き込みを行った」

 『門倉』の語りはなおも続く。

「『院長』や他のスタッフの話を総合すると『顔の崩れ』は
 大抵、患者が『話をする場所』で起きていたらしい。
 俺達はその際の『録音』を入手したり、実際に『話の場』に立ち会って
 『顔の崩れ』を目の当たりにする事で『顔の崩れる』現場のサンプルを増やしていった。

  『謎』は大きく分けて三つあった。
   『何を象徴する能力なのか』、『犯人の動機』、そして、『発動条件』だ―――

 『顔の崩れ』………顔のパーツがバラバラになるなんていうのは
 このクリニックで『医療ミス』で『顔を崩された』恨みか何かの結果、出来た能力なんじゃあないか?
 なんて事も考えてはみたんだ。
 結果として『美容外科』の客足は途絶え、クリニックにダメージを与えているわけだからね。
 それなら『動機』としても、納得行く。

 ただスタッフや院長と話した結果、そんな事故が起こった雰囲気はなかったし、
 そもそも『復讐』というなら『スタッフ』だけを狙うのが筋だろう。
 話を聴く限りこの『呪い』は『復讐』というには『無差別』すぎる印象を受けた」

 ここで『門倉』は少しだけ話を切る。
 説明が足りない部分があれば確認してもいいだろうし、
 意見があれば述べてもいいだろう。もちろん更なる話を促してもいい。

17エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/26(火) 00:14:31
>>16

 『呪い』の次は、『超能力』。
 そこに加えて『法則』、『一貫性』。そして『精神の発露』。

 突飛な話かもしれないが、顔色を変えずに話を聞く。

「……『象徴』、『動機』、『条件』」

 そして、自分なりに門倉の話を噛み砕いてみる。

「……つまり、その施設に向けられた、誰かからの『悪意』や『恨み』。
 そして、その感情を理由にした『嫌がらせ』や『復讐』。
 それがこの事件の『真相』なのでは、と、最初に考えたということですね」

 『象徴』は医療ミス。『動機』は逆恨み。

 ありそうな話だ。

 例えば、かの有名な『ABC殺人事件』等では……
 本命のターゲットの命を奪うために、無関係の人間も巻き込んで、
 あたかも愉快犯的な犯行に見せかけていた、という。
 『無差別』の線も捨てきれはしない、かもしれないが……

「……続きを、お願いします」

 興味深そうに、身を乗り出す。
 門倉が話疲れたとかではなければ、そのまま耳を傾けたい。

18『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/26(火) 19:41:10
>>17(エヴァレット)

「………じゃあ、話を続けよう。
 ここで依頼主である『美容外科』の『院長』について簡単に語らせてもらうよ。

 彼女は30前半の独身の『女医』。
 仕事熱心な女性で、すぐ通えるように彼女の家はクリニックのすぐ隣にあった。
 『院長』を悪く言う者はスタッフにはおらず、
  それどころか熱心な崇拝者みたいなスタッフも居たんだ。

 『恨み』を買うタイプではない……とも言い切れないが、
 ――― 向上心のある者は不毛な『嫉妬』を受ける事もあるからね ―――
 少なくとも身近にいるスタッフから反感を買っているようにはみえなかった。

 こうなると『動機』の面から推し量るのは少々困難なように思えてきた。
 となると他のアプローチが必要になってくる」

  『門倉』は訥々と語る。

 「他のアプローチ、たとえばそれは、
 『象徴』―――『この能力が一体何を表現しているのか?』という問題だ。
 ただ、これに関しては必ずしも『これ』というものがない場合もあるんだけどね。
 『顔が崩れる』のはそういう能力なのであってそこには『モチーフ』なんて
 ややこしいものは存在しない!という可能性だって当然ある。

 だが、『象徴』があるのであれば、『犯人』に大きく肉薄できるかもしれない。
 拘泥しすぎてもいけないが、考える価値は十分にある問題と思えたんだ」

 『門倉』の話は続く。

「『顔が崩れる』のは、大体一分ほど。
 目や鼻や口がグルグルとランダムに動き回り、
 そして一分経つとそのパーツは固定され、しばらくは元に戻らない。

 逆に言えばある程度の時間が経つと自然に『元に戻った』ので、
  一時的なパニック・ショックを引き起こすが
   本当に深刻な問題にはなっていなかったんだ。

 ………そして、今言ったのはあくまで一般の人が見た場合の『現象』だ。
     『超能力者』である俺、および『Sくん』には、現場を『視た』事で
     この『現象』が『小さな手』によって引き起こされる事が分かったんだ。

    『顔が崩れる』現象が始まると『小さな手』がふっと現れ、
                     顔のパーツを掴んで動かす………
             一分ほどでその『小さな手』は消えてしまう………

                            ―――そんなカラクリさ」

19エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/26(火) 20:49:04
>>18

「…………なるほど」

 相槌を打ちながら、頭の中で話を整理する。

 『院長』は仕事の出来る女性で、部下を惹きつけるカリスマがあった。
 『悪意』や『嫌がらせ』が目的なら、院内の人物の犯行とは思い難い、という。

「……例えば、包丁を使って殺人事件が起こったなら、
 その犯人は料理人かもしれない、みたいなことかしら?」

 例えば、『傷を治す』能力。
 それを、『医療』によって治すのか、機械のように『修理』するのか。
 犯人の『精神』の発露が、その手段の差を生む。
 『象徴』が判明すれば、それが大きな手掛かりとなる。

 とはいえ、

「……『ちいさな手』。それが、超能力の『象徴』?」

 今のところ、皆目見当がつかない。首を傾げながら、話の続きを待つ。

20『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/27(水) 10:54:28
>>19(エヴァレット)

「まあ、そういう事だね。現実では包丁は誰にでも使えるんだけど、
 『超能力』においては『包丁をモチーフに使った必然性がある』可能性が高い。
 おそらく人間の精神に『一貫性』を求める本能みたいなものがあるんだろう。

 たださっきも言ったけど、そうじゃあない場合もあるから断定は出来ないんだけどね。
 『悪夢』みたいにすべてがちぐはぐな能力もある」

  『門倉』が『エヴァレット』に応える。

「『小さな手』………そしてそれによって齎される『顔が崩れる』現象。
 幸いな事に、今回の場合、この一連の現象は確かに『象徴』、何かを『モチーフ』にしたものだった。
 そして、正直、俺には見当もつかなかったが、相棒の『Sくん』が見事に『答え』を導き出してくれたんだ。

 ―――どうだろう? 今までの話で君には、
      この『超能力』が何を『象徴』、『モチーフ』にしているか分かるだろうか?

  ………これに関しては当初言っていた残された『謎』じゃあないし、
      馴染みのない概念に関するいきなりの『問題』だ。
      分からなくて当然だろうし、気楽に考えてみてくれていいよ」

                    『門倉』がこんな問いかけをしてきた。

21エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/27(水) 21:37:48
>>20

「……優秀なんですね、その『相棒』の方」

 『ちいさな手』が現れて、顔のパーツを動かしてしまう。
 それが超能力の『象徴』だというが……自分には、まだ当てられる気がしない。

 しかし、『相棒』は見事に言い当てた。
 冴えていれば、これだけの情報でも十分に推理が可能、ということなのだろう。

「……『顔が崩れる』、というと、まるで自然に溶けてしまったみたいだけれど。
 これはきっと、その『ちいさな手』が見えない、超能力を持たない人々の表現なのね」

「……どちらかというと、『顔を弄られる』、といった感じかしら?
 現場が『美容外科』というのなら、『整形手術』とか『お化粧』とか……
 ……けれど、そうすると『ちいさな手』というイメージが、ちょっと合わないかも」

「……パーツを掴んで動かす、というのは『パズル遊び』みたい。
 でも、『パズル』って、むしろ『正しい位置』を探すゲームよね。
 もともと『正しい位置』にあったものを、どうして崩してしまうの……?」


「…………、分からないわ。降参」

 答えを待つ。

22『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/27(水) 22:41:12
>>21(エヴァレット)

「優秀―――そう、優秀なんだ、『Sくん』は。
 そして君も、これだけの情報でそこまでの推理が出来るのは素晴らしいと思うよ」

   『門倉』はその顔に軽い笑みを浮かべる。

「『パズル遊び』―――その発想はとても良いね。
 『顔が崩れる』様は確かに何か遊んでいるような動きをしていたんだ。
  そして、日本には『顔のパーツを動かして楽しむ伝統遊戯』があるだろう。

     ………

   ここまで言えばもう分かったと思うけど―――
                               ・ ・ ・
                   そう、この現象は『福笑い』を象徴していたんだ」

23エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/27(水) 23:29:54
>>22

「……『福笑い』。ええ、やったことがあるわ」

「……のっぺらぼうのような顔の上に、目や鼻、口を並べていくパズル。
 日本では、新年の伝統的な遊び……だったかしら。
 確かに、これならパーツが『正しい位置』からズレていても、それが完成図になる……」

 答えに納得して、頷く。

 『福笑い』というお遊びに興じる『ちいさな手』。
 愛らしい能力だ。……場所とタイミングが最悪だった、というだけで。

「……けれど、つまり。その超能力の使い手は、
 『美容外科』の人々の顔で『福笑い』をしていた……そういうこと?」

 しかし、そうなると、難しいのは『動機』じゃないだろうか。

「……『悪意』にしては、ちょっと微笑ましいわ。それとも、『遊び半分』みたいなことかしら」

24『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/28(木) 00:03:42
>>23(エヴァレット)

「そうだね。『悪意』というには違和感がある能力。
 『遊び半分』………そちらの方がまだしっくり来る。
 となると『愉快犯』あたりか? とも思えるけど―――」

  『門倉』の話はもう少し続く。

「さて、最初に口を滑らせてしまったし、
 あまり勿体ぶっても冗長になるからズバリ言ってしまうと、
 この事件の『犯人』は『少年』だったんだ。

 つまり『少年』がこの『超能力』を行使し、
    『美容外科』で『顔のパーツを入れ替えて』いた―――

  そして、この『少年』は実は『院長』の子供だったんだ。

 『独身』である『院長』は、この『少年』の存在を隠していた。
 『未婚の母』という形になるし、仕事をする上で子供の存在が
 支障になってしまった事もあったようだからやむを得なかったのかもしれないが………。
 『子供』を実の祖母に任せきりで『院長』は仕事に没頭していたんだ。

  というところで………

 これも解決している『謎』ではあるんだが、折角だから訊いてみようか。
 この事件の『子供』の『動機』―――これは一体なんだったのか?

         この『謎』も本題ではないし、気楽に考えてくれればいいよ」

25エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/28(木) 19:58:37
>>24

「……『子どものいたずら』だった、ということ?」

 獅子身中の虫、というのは、確か「身内の犯行」を示す言葉だったか。
 それにしたって、院長にとっては予想外の内部犯だったに違いない。

「……祖母がお世話をしていた、ということは、たぶん相応の年齢でしょうね」

 超能力が『精神の発露』というのならば。
 『ちいさな手』や『福笑い』という『象徴』は、少年自身の未成熟な心をそのまま反映したものだろうか。

「……そうね。父親はその姿さえ知らず、母親はいつも仕事で忙しい。
 子どもの心は、大人が思うよりもずっと敏感だから……
 自分の存在が母親にとってどういうものなのか、なんとなく察していたのかも……」

「……寂しい。つまらない。構ってほしい。お母さんと一緒に遊びたい。
 だから、『福笑い』が『母親の職場』に現れた。……そんなところじゃないかしら」

 少年の境遇に同情する。
 誰が悪い、ということも、ないのだろうけれど。

26『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/28(木) 20:55:47
>>25(エヴァレット)

「君の推測は、やはりなかなか冴えているね。
 彼、ふくす………『Fくん』は、5才くらいだったはず。

 彼の『能力発動』の根底には確かに君の言う通り、
 『母親と一緒に遊びたい』という思いがあったんだ。
 単純に『母親』が居ない『寂しさ』もあっただろうし、
 古めかしい遊具を用いた老婆との遊びは『退屈』だったのもあるだろう」

  『門倉』は『エヴァレット』の答えを受け、語る。

「だが、気を引きたいと思いからの『いたずら』だったわけじゃあないんだ。
 彼には彼なりの『論理』があり、『思いやり』があった。

               ・ ・ ・ ・
 つまり、彼は彼なりに『手伝って』いたんだ。母親の『顔のパーツを整える』という仕事をね。

 『Fくん』は自分が手伝えばその分仕事が早く終わり、
 『母親』が彼のもとに早く帰って来るようになると思った。
 そして、実際、『母親』は早く帰れるようになり、『Fくん』の思いは達成された。

  ただ、それは『患者』が来なくなるという
   『Fくん』の考えとは真逆の現象から引き起こされたものだった、というわけさ」

27エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/28(木) 21:23:24
>>26

「…………名前を隠しているの、もう意味がないと思うわ……」

 ビジネス=マンたるもの、体裁というのは大事なのだろうか。
 それ以上は、敢えてツッコまない。

「……なるほど。『顔のパーツを整える』、ね。
 『美容外科』のお仕事なんて、子どもには難しいもの。
 もしかしたら、母親や祖母からの仕事の説明が、その程度だったのかも」

「……お母さんの仕事を手伝いたい。健気なイイ子ですね」

 幼い子どもにとって、親というのは世界のすべてだ。
 父親のいない『Fくん』にとって、たった一人の肉親である母親の存在は、どれほど重要なものだったか。
 その役に立ちたい、と思うのは、心の成長のあらわれだろう。

「でも」

「……『手伝っていた』。それ、『Fくん』が自分で言ったのかしら」
「その子、何歳くらいだったんですか?」

 話の続きを待ちながら、その二つを尋ねる。

28『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/28(木) 22:25:31
>>27(エヴァレット)

「今の話は、『Fくん』は聞いた話ではあるよ。
 そして彼は『5才』………うん、『5才』だったはずだ」

 『門倉』が応える。

「まあ表面上での話なのかもしれないけどね―――
 俺は『超能力者』ではあるけども、『読心術』を持っているわけじゃあない。
 心の本当の内の内までは分からないのさ。

                ………『でも』、と言ったけど、何かひっかかる事がある?」

『門倉』が『エヴァレット』の様子を窺う。

29エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/28(木) 22:47:01
>>28

「…………いいえ。話を遮って、ごめんなさい」

 『5才』。

 自身の幼少期に思いを馳せる。
 それほどに幼い時分、果たして母の手伝いなど申し出ただろうか。
 遊びたい盛りで、迷惑ばかりをかけていた気がする。

「……利口な子なのね。頭が下がる思いだわ」

 それだけに、裏目に出てしまったというのが不憫だ。

「……続きを、お願いします」

30『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/28(木) 23:35:50
>>29(エヴァレット)

「賢い子であると思うけど
   このケースでは裏目に出たという感じだね。

  そして、だ。そろそろ本題に入ろう。

   さっき言った三つの『謎』というのは覚えているかい?

    『何を象徴する能力なのか』、『犯人の動機』、『発動条件』―――

    このうちの前二つはすでに説明したね。
     この二つが分かった事で一応、
        『呪いの正体をつきとめ、これを止めさせる』という
                  任務は『達成』出来たわけなんだけど………」

  『門倉』が少しだけ眉をひそめる。

「『発動条件』―――
  これだけが結局分からずじまいだったんだよ。

 『超能力』の理解というのは本当に個々人で違ってね、
   すぐに完全に理解出来る者もいれば、ずっとよく分からない者もいる。
     『Fくん』に確認しても、『発動後』に『小さな手』を動かすというコントロールは出来るものの、
     いつ『発動』、つまり『小さな手』が使える状況になるのか、
              その条件は本人にも分からないんだというんだ。

 『超能力』の発動条件というのは様々でね、
  『常人には見えない像を作り、それで触る』とか
  『見たものに発動する』あたりがわりとメジャーな発動条件かな。
   ただ、今回、『Fくん』は少し離れた場所から
    相手を認識せずにいきなり能力を発動させていた。
    この場合、『何かしらの条件を満たした対象に能力を発動させる』、
     『条件発動』の可能性が高いと思われる。

  そして『顔が崩れる』のは崩れた本人が『話している時』だった。
  この事から『話している内容』の中に『発動条件』があるんじゃあないかと推測される―――

    されるんだが………そこからが問題でね。
     その『条件』が結局よく分からないまま現在に至るというわけだ。
      母親である『院長』には続けてその解明も『依頼』されているんだが、
              どうにも成果が上がっていない、とまあそういうわけなのさ」

31エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/29(金) 18:14:33
>>30

 『象徴』は『福笑い』。
 『動機』は『母の手伝い』。

 そして、残るは『条件』だが……

「『Fくん』の意思は関係なくて、特定の条件を満たした時に発動する、ということね」

 門倉の説明を、ある程度かみ砕いて理解する。
 それにしても、確かに厄介な事態だ。
 分からないまま放ってはおけないだろうし、母親の心配する様子が目に浮かぶ。

「……つまり、その『超能力』のトリガーになっているのが、
 何かを『見た』とか、何かに『触れた』のではなくて。
 誰かが何かを『言った』、もしくはそれを『Fくん』が『聞いた』んじゃないか、ということね」

「……その『美容外科』と『Fくん』のいた場所って、結構近くだったのかしら。
 それとも、『Fくんの聴力』とその『超能力』の効果の範囲って、分けて考えるべき?」

 『言った』のか、それとも『聞いた』のか。
 これは、結構大きな違いだ。……いや、そんな気がする、というだけだが。

 というのも、もし『聞いた』ことで発動するというのなら、対処が簡単だからだ。
 母親には、「『Fくん』が職場の会話が聞いてしまわないように工夫してください」、と言えばいい。
 万が一、謎が解けなかったとしても、一先ずの処方にはなる。

 ……まあ、その辺りは自分には関わりのあることではなく、門倉の領分となってしまうだろうか。
 男の人の仕事に、あまり口を挟みすぎてもはしたない。
 謎解きに意識を戻す。

 『超能力』とやらが、本人の『精神の発露』というならば。
 たとえ、その発動自体は、『Fくん』本人の意思に寄らないものであったとしても、
 そのトリガーは、彼の精神と深くかかわりのあるものかもしれない。

「……その、『話している内容』。いったい、どんなことを話している最中に『崩れた』のかしら」

 門倉の返答を待つ。

32『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/29(金) 21:37:43
>>31(エヴァレット)

「『Fくん』が聞いたというわけじゃあないな。
 『Fくん』は基本的にクリニックの隣の家に居た。
 といっても『超能力』によっては離れていても声を聴く事は可能なんだけどね。
 『Fくん』自身に確認したら、聞こえてはいなかったようだからこれは確かだ。

 だから、本人の認知に関わらず、
  『クリニックでの発言』が対象になっている可能性が高い」

  『門倉』はそう言いつつ、
   自身のビジネスバッグから、『スマホ』を取り出した。

「そして、『話している内容』についてだけど、
 録音したものだったり、改めて本人から確認したり、
 『Sくん』に覚えているのを教えてもらったりして
 時間をかけてなんとかほぼ『録音』を集める事が出来た。
 これを何回かリピートするから、ちょっと考えてみて欲しい」

 そう言うと『門倉』はスマホを操作し、いくつかの『音声』をそれぞれ何回か、再生した。

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1534589466/648n

(※上記URLの六つの例を再生※)

33エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/30(土) 04:04:36
>>32

「……なるほど。離れた場所の声を聴くことも、『超能力』の一部に含まれる、ということね」

 頷きつつ、スマホから流れてくる『音声』に耳を澄ませる。
 英国出身の淑女なので、他人の話を淑やかに聞いていることは得意だ……。


 ……………………。


  一件目、『戸葉 彩絵』。
  収入に関する自論と、ライバル視していた女性への嘲笑。

    => 「……自論は面白いけれど、フツーに軽蔑するわ。
           『Sくん』という方、よく黙って聞いていましたね。大人なのかしら」

  二件目、『板槻 羽音』。
  「自信をつけたい」という相談、睡眠不足に関する悩み。

    => 「…………どっちかというと、鬼塚さん。
           彼女の方に、カウンセリングを受けさせた方がいいんじゃない?」

  三件目、『上条 沙織』。
  姑と夫から受けている仕打ちと、離婚について。

    => 「……同情はするけど、ちょっと被害妄想が入ってそう。
           そんなに周りから責められて、自分に省みるところはないのかしら」

  四件目、『多摩川 糸子』。
  職場での待遇の不満。

    => 「……何故そんなひどい職場に、ずっと留まっているの?」

  五件目、『玉置』。
  自分を騙した元恋人についての思い出。

    => 「この人、絶対にまた引っかかるわ。『絶対』。」

  六件目、『斉出 進太』。
  女性への偏見と、モテることへの執着。

    => 「……『モテる』ためにやってるから、『モテない』のだと思うわ」


 ……………………。


「……『話題』には、共通点になりそうなものは見つからないですね」

 散々に好き放題ぶった切ったので、喉が渇いた。
 店員を呼び止めて、お冷水を頼みたい。

「……この話の最中に、『顔が崩れた』のですよね。
 他にも、これまでの『推理』のようなものってあるかしら?」

34『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/30(土) 13:15:03
>>33(エヴァレット)

『エヴァレット』が水を頼むと気だるげな店員が力なく頷く。
『エヴァレット』の『感想』には、いちいち『門倉』が大げさに頷いてくれた。

「そう―――『内容』についてはバラバラ。

 まあ、『愚痴』や『悩み』が多いといえばそうだが、
 この美容外科では『カウンセリング』と称して
 たくさんの患者の『悩み』を聴いている。
 その中で能力が発現したのは、ごくごく一部。
 また、ただの雑談時に能力が発現した事もあるらしい。

 そうなると単純に『悩み』や『相談内容』がトリガーだとは考えづらいと思うね。

 ………もちろん、見抜けていない『共通点』があるという
                     可能性は否定出来ないが………」

 『門倉』が持論を述べる。

「幼児の能力だし、そういう大人の話題や感情の機微を
 対象にしていると考えるより、もっとシンプルな話なんじゃあないかとも思うんだ。

 もっとこう幼児にふさわしいような………

  つまり抽象的な『話題』や『感情』に反応しているわけじゃあなく、
   もっと具体的な『単語』のようなもの。
    ただ、単純に一つの『単語』ならすぐ分かるだろうし、
      『複数』存在するようなもの………
        たとえば『果物の名前』とかそういうものなんじゃあないか?

    あとは、それは『意図せずに発した言葉』なんじゃあないか?
     という考えもある。皆が意識的にその単語を出しているのなら、
      わりとすぐに見つかりそうなものだからね。

   ………

       とまあ、色々意見を踏まえここまで考えてはいるんだが、

                          それ以上がなかなかね………」

 『発動条件』―――

    『門倉』の言う残された『謎』―――

                  その正体はいかに―――

35エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/30(土) 22:46:40
>>34

「……『悩み』や『相談内容』とは、関係ない『発動条件』」

 これまでの門倉の推論を、頭の中で反芻する。

 『特定の条件』で発動する超能力。
 そして、被害者になったのは『美容クリニック』にいた、『ごくごく一部』の人々。

 つまり、本来ならば、『美容クリニック』では通常は出にくい、関係ないような『条件』。
 彼らが、『たまたま』踏んでしまったというだけで……
 会話が長引いてしまった中で、『文字列』として入ってしまったのかもしれない。

 そして、超能力の主は、まだ5歳の『Fくん』。
 その『精神の発露』ということを考えると、彼にとって馴染み深いもの。

「……そして、能力の象徴は『福笑い』」


「…………、……」


     > 「…………『それだけで儲かる、大金が入る』」

       > 「……『ハハハ、寝つきの悪い日々が続いていた』」

         > 「……『時折ガミガミ言うだけなら可愛げがあった』

     > 「『ハケン黙ってろ』」

       > 「『更科ケン、騙せるような男じゃない』」

         > 「『確実に落とす語録集』」


「…………『遊び道具』?」

36『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/30(土) 23:21:21
>>35(エヴァレット)

「………『あそび』

        ……『どうぐ』……?
                    ・ ・ ・ ・
                  『遊び道具』だって!?」

 『門倉』は目を見開き、『エヴァレット』の言葉を反芻する。

「………確かに。
  ………確かに『Fくん』の部屋に初めに入った時に
        目についたのはたくさんの『遊具』だった。
      ただ、それは『当たり前』すぎる光景だったんで、
                特に気には留めていなかったが………

  そもそも能力の『福笑い』自体が『遊具』、『遊び』だ。
   そして、彼が、母親と『一緒に遊ぶ』事を求めていたというのであれば―――

 ………しかし、
          しかしだよ?

               『録音』に入っていたかい? そんな単語」

  『門倉』の半信半疑という表情。
   『遊び道具』の単語を彼は見つけられていないようだ。

37エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/30(土) 23:56:22
>>36

「……いいえ。そんな『単語』は入っていないわ」

「……入ってしまったのは、『文字列』。
 『意図せずに発した言葉』だと、門倉さんが言っていた通りよ。
 別々の単語を繋げたなかで、偶然にも……その『文字列』が出来上がってしまった」


「例えば、【門倉さん、スーツが似合いますね】という言葉の中に、『さんすう』が入っているように」


    「……『戸葉 彩絵』。 【それだけでもう『カル タ』いきんがはいる】」

    「……『板槻 羽音』。 【はは『ハ ネツキ』のわるいひびが】」

    「……『上条 沙織』。 【とき『オリ ガミ』ガミいうだけなら】


    「……『多摩川 糸子』。 【は『ケン ダマ』ってろ】」

    「……『玉置』。 【さらしな『ケン ダマ』せるようなおとこじゃない】」

    「……『斉出 進太』。 【かくじつにおと『ス ゴロク』しゅう】」


    「……いずれも、『福笑い』と同じ。日本における、伝統的な遊戯よね」


「……子どもの遊びだもの。
 『美容クリニック』では、なかなか触れる話題ではないでしょう。
 被害者の人々も、その『単語』を認識して言葉を発したわけではないから、気づかれにくい。
 ……そして、まだまだ幼いはずの『Fくん』が知っていても、まったく不自然ではない言葉たち」


「……『お手伝いがしたい』、だなんて。『5才』にしては、健気な建前よね」


「……本当は、『母親と遊びたい』、という気持ちの方が強かった。
 超能力が『精神の発露』だというのなら、この『発動条件』こそが、その『動機』を裏付ける証拠に見えるわ」

38『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/31(日) 00:24:06
>>37(エヴァレット)

 会話の中の『遊び道具』の文字列を次々に指摘する『エヴァレット』。
  その言葉にあわせ『門倉』が自身のスマホを操作し、
  録音を再生、『答え合わせ』を行う。

 ………
      ………

                   そして。

「―――本当だ。まったくもって君の言うとおり。
     『発動』時にはすべて『遊び道具』の名が入っている。

    そしてこれらはすべて、『Fくん』の部屋にあった………
                  『老婆』が用意した昔ながらの玩具………。

   『動機』の補強も筋が通っているし、
         そもそもこれだけ合致しているのに、
              間違いというのはまずありえないだろう」

        ふ ゥ ゥ  ゥ

 『門倉』がついた溜息は感嘆によるものだ。

「いや―――『凄い』。
 事件の大半を解いた『Sくん』も凄かったが『Eちゃん』も凄い。

  この町の若者は本当に素晴らしいよッ!」

すでに事件の関係者にされてしまったのか、
興奮して『Eちゃん呼ばわり』してくる『門倉』をよそに
やる気のない『店員』が『お冷』を『エヴァレット』に運んでくる。

………何はともあれ、『エヴァレット』が
     残った最後の『謎』とやらを解きあかしたのは間違いがないだろう。

39エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/31(日) 00:43:24
>>38

「……なら、よかった。
 現場を見ていない私には、当て推量しかできないから……
 より詳しく事件を知っている門倉さんが『正解だ』と思うのなら、きっと正解なんでしょうね」


 ……この事件の『探偵』は、きっとその『Sくん』だ。

 エヴァレットには、『福笑い』という象徴を見抜くことは出来なかっただろう。
 『院長』に子どもがいることだって想定外だし、そもそも院内で上手く立ち回ることだって、出来たかどうか。

 『岡目八目』――――『読者』という立場だったからこそ、最後の謎だけは俯瞰で解くことが出来た。
 ちょっとしたズルみたいなものだが……とはいえ、それは口には出さない。

「……まあ、名前なら好きに呼んでいい、とは言いましたけど」

 何故か? 今から、恩を着せるためだ。

「……ええ、でも、本当によかったです。『お役に立てて』」

 店員がやってきたのを見計らって、ファミレスの『メニュー』に手を伸ばす。

「……支払っていただける、んですよね? 謎が解けたなら…………『なんでも』 」


  ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ・ ・ ・

40『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/31(日) 00:57:13
>>39(エヴァレット)

「え………?
  ………まあ
         いや………
              それは………」

 『門倉』は不穏な空気を察知する。
  『エヴァレット』はもう食べ終わっていた、と思い込んでいたようだ。

「………
      も……もちろんさ。
        君のような『頭脳明晰』、
          『容姿端麗』な女の子におごれるなんて
                      おれはしあわせだなああ」

『門倉』も店員に『お冷』を頼む。
喉が渇いたというより落ち着く為に、といった様子だ。

―――そろそろ『30分』が経とうとしている。
     『依頼主』と『Fくん』はまもなく来るのだろうが、
     それはそれ。別に何を頼んだって問題ないだろう。

41エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/31(日) 22:59:36
>>40

「……それじゃあ、お言葉に甘えて」

 にっこりと笑う。ニッコリ。

 メニューを広げて、デザートの欄を見つけると……

「……『レアチーズケーキ』を2つ。『テイクアウト』で、支払いはこの人に」

 注文して、メニューを閉じた。
 ついでに、隣のテーブルにあった『紙片』を引っ手繰って、門倉に差し出す。

 『伝票』だ。


       『 アイスコーヒー (L) ×1  ¥230 』


「……『ごちそうさま』」

 この話は、きっと自分の知らないどこかで結末を迎えたのだろう。
 ならば、『部外者』の自分は顔を合わせず、早々に去るべきだ……とはいえ、名残惜しいが。

「……とても楽しかったわ、門倉さん。縁があれば、また」

 一礼をして、会計に向かう。
 テイクアウト注文を受け取り次第、店を出よう。

42『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/06/01(月) 00:11:44
>>41(エヴァレット)
『エヴァレット』は『レアチーズケーキ』を二つ頼み、『伝票』を『門倉』に渡す。
常識的なその値段に、『門倉』はほっと胸を撫で下ろす。

「………ああ、こちらこそ。楽しかったし、助かったよ。
     これから来る『依頼人』達に堂々と会う事が出来るし、
     『Fくん』もこれでもっと生きやすくなるだろう」

               『門倉』は本心から喜んでいるようだ。

 ほどなくして『レアチーズケーキ』は届き、
  そして、別れの時が来る。

                        立ち去る『エヴァレット』。
                        手をふる『門倉』。


  ………

           「―――ああ、やっと理解できたな」


去り際、『エヴァレット』を見送る『門倉』の独白が背後から聞こえる。
振り返り、『門倉』の顔をチラリと見た『エヴァレット』は、
自分の推理が本当に正しかった事を理解する。

         くるくると目まぐるしく動く『門倉』の顔のパーツ。

そして、『エヴァレット』と入れ違いになるように入ってきた女性と赤ら顔の男児。

          『福』を名前に有する『Fくん』の
          『笑い』顔はこれからの彼の輝かしい
           未来を祝福しているようにも思えた。


                             『せんせいのかくしごと』 〜その後〜 →『了』

43『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/06/01(月) 00:36:53
>>2-42
は、以下のミッションの『補足』として開催した。

『せんせいのかくしごと』
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1534589466/401-698

参加して下さった『鈴元』氏、今回参加して下さった『エヴァレット』氏両名に改めて多大な感謝。
以下、小ネタ。

※登場人物は全て『遊び』が元ネタとなっている※
※更に能力発動した患者の名前は『発動トリガーの遊び』が元ネタ※

<院長一家>
☆阿多 佳久子(おた かくこ)……女医。依頼人。
 名前は『お高く』止まっている、『オタ(絵を)描く』『オタ隠す(これはミスリード)』あたりの意味が籠められている。
 上記意味付けがメインの為、遊びとしての元ネタは少々苦しいが、あえて言えば『オタ描く』=『お絵描き』。
☆阿多 福助(おた ふくすけ)……主犯。依頼人の子。おたふく=『福笑い』が元ネタ。
☆阿多 ヌキ(おた ぬき)……院長の祖母にして福助の面倒を見る老婆。
                   名前の元ネタはタヌキ―――ではなく、ババ抜き(ヌキという名のババァ)。

<常勤スタッフ>
☆角田 連(つのだ れん)……ナースマンA。名前は、『角(かく)連(れん)ぼ』が元ネタ。
☆武藤 拓馬(むとう たくま)………ナースマンB。『武(たけ)馬(うま)』が元ネタ。武藤暮の弟。
☆鬼塚 郷子(おにづか きょうこ)……ナースA。ミスリード要員。『鬼』『郷子(ごうこ)』で『おにごっこ』が元ネタ。
☆武藤 暮(むとう くれる)……ナースB。武藤拓馬の姉。
                    『たけとんぼ(名前が【たけとうぼ】と読める)』が元ネタ。
☆水野 樹理(みずの じゅり)………タレ目の天然受付。『水』と『樹里(きり)』で『水切り』が元ネタ。

<被害者>
☆戸葉 彩絵(とば あやえ)………『絵戸(えど)』や『彩葉(いろは)』が元ネタ。
☆板槻 波音(いたつき なみお)……『板』や『波音(はね)』で『羽付き』が元ネタ。
☆上条 沙織(かみじょう さおり)………『上(かみ)』や『織(おり)』で『折り紙』が元ネタ。
☆多摩川 糸子(たまがわ いとこ)………『多摩(たま)』と『糸』で『けん玉』が元ネタ。
☆玉置(たまおき)………『玉』と『置く』で『けん玉』が元ネタ。
☆更科 健(さらしな けん)………『更(さら)』『健(けん)』で『けん玉』が元ネタ。
☆斉出 進太(さいで しんた)………『斉(さい)』で『進(すすむ)』で『双六』が元ネタ。

44『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/06/01(月) 00:45:00
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  禍福は糾える縄の如し。呪いも祝いも笑うが勝ち

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

戦隊ヒーローのような『お面』のヴィジョン。
『能力発動』時のみヴィジョンが現れる。

指定した場所で、本体の知っている『遊びの名前』を
口にした者の顔を『福笑い』にするのが能力。
『福笑い』になった相手に対し、本体の手の動きにあわせ、
自由に『顔のパーツ』を入れ替える事が可能。

入れ替える際には対象の顔の前に、
一対の本体と同じサイズの『小さな手』が浮かび、
その手が本体の手の動きと連動し、『パーツ』を入れ替える。
この『手』はヴィジョンというより能力の『象徴』に近く、
他スタンドによるものを含む、あらゆる物理的干渉を『透過』する。

入れ替え時間はおよそ『10秒』で、その時間が終わった後、
『顔のパーツ』は入れ替わった位置で『固定』される。
この際、顔のパーツがその機能を失う事はない。
(目や鼻や口がどの位置にこようが、見たり嗅いだり喋ったり出来るという事)
『固定』は一時間ほどで解除される。

『ディッシュ(笑)』 Dishwalla
破壊力:なし スピード:なし 射程距離:E(能力はA)
持続力:D 精密動作性:なし 成長性:A

・スタンド名の読み方は『ディッシュワラ』(スタンド名検索時に引っ掛かるように記載)。
 好きな戦隊モノのキャラクターから、事件後に本体が名付けた。
・(笑)にネットスラング的な悪意を感じない世代。
・能力下に入った者の大よその位置のみ本体は把握出来るが、
 肝心な『対象の顔』を把握する事が出来ない。
・また自分が何らかの方法で『視認している者』に能力施行は不可能。
 本体と対象との『距離』こそが『福笑い』における『目隠し』の役割を果たしている。


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