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【場】『 大通り ―星見街道― 』 その2

1名無しは星を見ていたい:2020/04/15(水) 08:27:36
星見駅を南北に貫く大街道。
北部街道沿いにはデパートやショッピングセンターが立ち並び、
横道に伸びる『商店街』には昔ながらの温かみを感じられる。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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前スレ:
【場】『 大通り ―星見街道― 』
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453647631/

553風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/05/05(水) 15:00:04
>>552


「ん……」

見ず知らずの子供に話しかけられた風歌は、一瞬無限のトラブルを想起して怯えたが、直ぐに『今、負い目を抱く事はない』と思い直す。
そして、今、何をしているか――

「見ての通り、弁当を見てるんだよ。少しでも多いのを買いたいからな」

小学生の小遣いでも二つ三つは容易く変える弁当を『選ぶ』とは失笑を抱かれる言葉かもしれないが、事実としてそうであるから、仕方ない。
そして、風歌は――『ダストデビル・ドライヴ』の指先は、弁当の中、他のと比較して重い感触に触れた。見ただけでは違いは解らないだろうが、触れば僅かばかりに量が多いのは解るだろう。
『アタリ』を掴んだ風歌は、『ダストデビル・ドライヴ』が触れたままの弁当に、手を伸ばす。

554小翠『タキシードムーン』:2021/05/05(水) 15:20:13
>>553

「え、選ぶって・・・・」

比較的、恵まれた境遇の小翠にとって弁当の量の大小など気にした事はなかった
足りないのであれば、別のおかずも一緒に買えばいいのに、と思っているからだ

だからこそ、弁当の重みを・・・・・しかもスタンドを使って確かめるという発想は
この少年は今まで思いつく事もなかった

「で、でも、それならわざわざ、スタンドを使わなくてもいいじゃあないか
 普通に手に持って測れば・・・・・」

少年は無遠慮に、疑問を口にする

555風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/05/05(水) 15:58:37
>>554


「へぇ、坊やも『見える』くちかい」

スタンド使いになって、何度思ったか知らないが、この町のスタンド使いは本当に多い。
人混みに石を三回投げたら、一個はスタンド使いに当たるのではないか風歌は思う。
そして、少年の問いに、風歌はしばし考えると……

「アタシは見ての通りに薄汚くてな、下手にベタベタ触れば営業妨害だし、おまわりさんを呼ばれかねないんだ。たった二百円の弁当でも、アタシ見てーなもんが触ったもんは、容器の上からでもゴミだからな」

ホームレスは、臭く、汚い。これは社会的偏見ではなく、厳然たる事実である。
その様な存在が触れた弁当など、売れたものではなく、触れたという事実そのものが後々警察沙汰を呼ぶ可能性がある。
だから、『触れずに触れる』このやり方こそが、風歌にとって唯一の『測り方』なのだ。

「だから、『見て』、こうやって、測るしかねーのさ。ベタベタ触るよりも単純にはえーしな」

風歌は、普通のやり方が出来ない自嘲の笑みを浮かべた。

556小翠『タキシードムーン』:2021/05/05(水) 16:24:55
>>555

「似たような能力だったら・・・・俺も持ってるんだ」

ふわっ、と少年の背後から光る点のようなものが現れる
それはふよふよと周囲を漂いながら、やがて少年が伸ばした右手の上に降り立った
豆電球程度の大きさをした『蛍』のような姿をしたスタンド・・・・『タキシードムーン』だ

「そんな、薄汚いだなんて・・・・うっ!」

自分自身を卑下するような表現に、咄嗟に否定を重ねようとするが、
近づき、匂いを認識した瞬間に鼻を詰まらせたように息を止めた

「そんな・・・・ でも・・・・」

実体験として認識した臭さ、汚さ
それらの要素が、風歌の語る言葉が事実であるという事をわからせる
小翠の住んできた『きれいな世界』には存在しないものだった

少年は困惑したように風歌を見つめる

557風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/05/05(水) 17:39:57
>>556

困惑の眼差し、風歌は解らないでもなかった。
この世の中、幾つもの世界がある。収入、人種、能力、それらの違いは住まう世界の違いを生む。
少年と風歌の住まう世界は、紛うことなき別種であり、全塗豊かな子供と落ち果てたホームレスの世界は、交じるべきではないものである。
しかし――1つの世界を、少年と風歌は共有していた。

「坊主やのそれは、キレイなもんだな」

スタンドという、奇妙がある世界を。

「だがな、それも、アタシのこれも、結局の所は道具だよ。汚れる位に使って価値が出るもんだ――だが、それでも使い方ってのは、あると思う」

風歌は弁当を手に取り、店員の元に歩き出す。長いすべき場所ではない、それこそ他の客の迷惑になるのだから。
だから、風歌の出来ることは、少年に1つを伝える事だ。

「アタシのさっきは、眺めてみたら惨めだろうさ、けど、アタシはアタシに恥じちゃいない。『悪い』ことには使ってねえからな。坊やも『それ』を色々使うんだろうが……他人にゴミと思われても、自分で自分をゴミと思うような使い方は、しないほうがいいぜ。生きていくのが、辛くなるぞ」

人は、堕ちる。無力を理由にも、力を持つことを理由にも。
風歌は無力を落ちたが、力は昇るための道具である。更に己を恥じる為には使わないと決めていた。
この子供がどう使うかは、知ったことではないが、子供がゴミになるよりは、ならないほうがいいに決まっている。だから、らしくない口出しをしてみたのだ。

558小翠『タキシードムーン』:2021/05/05(水) 18:16:16
>>557

「え・・・・ あ、ありがとう・・・・」

少年の指先に止まった『光』・・・・『タキシードムーン』が
主人の感情に反応したかのように瞬く
少年もまた、恥ずかしそうに顔を赤らめ、『ダストデビル・ドライブ』を改めてじっと見た

『タキシードムーン』のように綺麗ではない・・・・
しかし、その『像』には力強い生命力の様なものを感じた

「俺も・・・・ 俺も『悪い事』に『タキシードムーン』の力を使うつもりはないよ
 おねえさんみたいに・・・・ちゃんとした事に使いたい、俺はそう思ってる」

「・・・・ごめん、俺、おねえさんの事を誤解してた
 何か、変な事をしてるのかもって思ってたんだ・・・・」

しゅん、とした顔を浮かべて、少年は素直に頭を下げた

559風歌鈴音『ダストデビル・ドライヴ』:2021/05/05(水) 18:47:40
>>558

「気にするなよ、恥じてはいねえが、変な事には変わりねえさ」

風歌は少年に向けて、朗らかな笑みを向けた。汚く、臭いホームレスであったが、その笑みを汚らしく思うものは無いだろう。
そして、それを向けられた少年の決意をも。

「その心持ちは大事だぜ、『ちゃんとした事』、人によって違うだろうが……誰かに、『僕はこんな事をしたんだぞ』って、自慢できる様な事なら、間違いねえさ」

そして、風歌は支払うために店員と向き合う前、最後の祝福を送った。

「それじゃあな、坊や。自分を誇れるような『使い手』になれよ!」

560小翠『タキシードムーン』:2021/05/05(水) 19:13:35
>>559

「ありがとう、おねえさん」

朗らかな笑み、例え両者がどんな世界に住んでいようと
それは通用する 『和』の象徴だ

「俺も・・・皆に誇れるような事にコイツを使いたい・・・・
 じゃあね、おねえさん!」

『祝福』を確かに受け取り、風歌に対して別れを告げて去って行った

561草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2021/05/08(土) 20:46:12
キー

  キー

古い『スーパーカブ』だ。二十歳くらいの青年が、それを押して歩いている。
壊れたのだろうか? なんか不景気な顔だ。
怒りだとか、情けなさだとかを通り越した、シケた面のお手本みたいな顔だ。

562クスモ『ロングナイツ&ヘヴィハーツ』:2021/05/08(土) 21:33:00
>>561
草摺の前方から大男が歩いてくる。
ジャケットにスラックスと硬い格好だが、その内の身体の分厚さは隠しきれていない。
その脇に抱えられているのは、一昔前に流行った北欧雑貨屋製の『サメの巨大ぬいぐるみ』だ。
男の醸し出すゴツさと、揺れるサメのふわふわさが、妙なアンバランスを生み出している。

「あー……」

草摺の姿を認めると、頭を一掻きした。

「なにか手伝えるかい、そこの君」

563草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2021/05/08(土) 21:49:47
>>563
「へぇあ!」

声をかけられると思っていなかったので、大変驚いた。
あんまり周りを見てなかったのもある――不注意だ。

「あっ・・・すんません」

一瞬、怒られていると思ったので謝ってから、善意の声だったことに気が付いたので、

「大丈夫ス・・・別に壊れたりガス欠じゃないんス・・・」

へらりと笑って、大男を見上げる。

「オレぇ・・・仕事帰りなんスけど・・・」 「いつもは職人さんとか、センパイとかと行くんスけどね」
「なんか届けモンだけだったんで、オレ一人で行ったンすけどね」「なんか」
「すげー盛り上がっちゃって」「雑談、的な」
「ついついよばれちゃったんですよね・・・」「ビール」

なんとなく呂律が回っていない。バイクには『羽白造園』とプリントされたシール。
田舎の個人向けの造園屋が、客先で酒を出されて飲んでしまったパターンだ!

「『飲酒運転』とかぜってーダメじゃないスか」「歩くしかねーなって」

いろいろとダメなことが重なって、沈みまくった顔でバイクを押していたというわけだ。
特に説明を求められていないのにズラズラと喋りまくるのは確かに酔漢の特徴である。

564草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2021/05/08(土) 21:57:22
>>593
>>592番号ミス!

565クスモ『ロングナイツ&ヘヴィハーツ』:2021/05/08(土) 22:02:44
>>563
「ああ……」

納得したが、さらに頭を掻いた。
確かに運転はしてないが、社名が入ったバイクでふらふらしていると、
どこかからおせっかいなクレームが入りやしないか。

「まあそれなら誰にも迷惑は確かにかからんが。
 酔いを醒ましがてら、帰り道付き合ってもいいかい。
 買い物帰りの散歩途中でね」

そう言いながら草摺の横に回り、草摺のペースに付き添って歩く。
抱えている『サメの巨大ぬいぐるみ』の位置を下げ、『バイク』の姿を隠すようにしながら。

566草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2021/05/08(土) 22:13:57
>>565
「あ、いや、すんません」

いい人だ。
見ず知らずの若造を心配してくれている・・・

「でもいいんスか? 方向・・・今、向こうから歩いてきたのに」
「帰り道とか・・・」

『サメの巨大ぬいぐるみ』に目をやりながら。

567クスモ『ロングナイツ&ヘヴィハーツ』:2021/05/08(土) 22:25:30
>>566
「『この子』に町の様子を案内してやらなくっちゃあな」

『ズイィ』
『フルフル』

『サメ』の頭を草摺に向け、辺りを見渡すジェスチャーをさせる。
酔いが回っている草摺の眼から見ても、滑稽な図だった。

「…………」
「今のは『マジ』だぞ……必要なことなんだ。
 『ブーム』が過ぎ去って数カ月も店の中に置き去りにされていたんだ。
 オレの家に迎える前に今の外の世界を見せておくべきだ」

568草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2021/05/08(土) 22:50:01
>>567
「この子」

『サメの巨大ぬいぐるみ』をそう呼んだのは明白だ。
ついおうむ返しになってしまった。

「必要スか」

ゴツいスーツの男が、『サメのぬいぐるみ』に対して、
小さな子がそうやるように接している―― 「そーいうもんスかね」。
いい人だし、やさしい人なのだな、と思った。
子供のプレゼント的なものかと予想していたのが外れたが、感想はそれだけだ。
『いい大人が、人様をむやみに馬鹿にするもんじゃない』。そう育った。

「オレこーいうの全然しらないスけど、ブームだったんスか。かわいいスね」

569クスモ『ロングナイツ&ヘヴィハーツ』:2021/05/08(土) 23:02:51
>>568
「そうだろ」

『サメ』を引っ込める。

「君もこーいうのは好きな方か?
 かわいい「ぬいぐるみ」か、カッコイイ「戦闘メカ」か……。
 「フワフワ」したものと「硬質」なもの、どちらかってことだが」

570草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2021/05/08(土) 23:16:31
>>569
「うーん」ちょっと考えてから、

「この『羽白造園』ってのがウチで、つまり実家なんスけど」「見習いっス」
「で、実は先祖が『忍者』なんス…………」
「ってちっこい頃にオヤジが言って、オレ、マジになって『忍術の本』とかコッソリ買ったんスよね」
「もちろんウソだったんスけど、なんでオレ『忍者』好きな方なんスよね……
 忍者って『ふわふわ』の方スかね?」

忍者はふわふわでも硬質でもないが、人間なので『メカ』とは違うだろうと思った。

「でも、どちらかってことなら、『戦闘メカ』とかよりは、このサメのほうが好きっスね」

571クスモ『ロングナイツ&ヘヴィハーツ』:2021/05/08(土) 23:33:42
>>570
「『忍者』?」

(造園? 忍者?
城に潜入する仮の姿……ああいやそういう意味か)

途中まで真剣に考えてしまった。

「カッコイイという意味では「硬質」だが
 ファンタジーという意味では「フワフワ」……か?
 難しいがそれはそれでバランスがとれているのか」

「なに、雑誌で見た心理テストでね。
 「フワフワ」したものが好きなのは、どうも『ヤンキー』らしいんだ。
 外見とか内面とか……自分に足りてないものを補う『バランス』の意識だよ」

572草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2021/05/08(土) 23:41:43
>>571
「バランス、難しいスね」

「へー。『ヤンキー』……」

思い当たる節は……ないことも無い。が。
確かに『足りないものを補う』のはなるほどなーと思った。。
デニムを穿いて作業着ひっかけて単車を押している自分に
「ふわふわ」とか「かわいい」だとかの要素が一ミリもあるとは思えない。

「『バランス』、っスか。おもしろいスね」

もう一回繰り返した。

573クスモ『ロングナイツ&ヘヴィハーツ』:2021/05/09(日) 00:13:30
>>572
「まあだからどーだこーだということは無いが。
 四六時中バランスをとろうって訳にもいかんしな。」

草摺の服装に目をやると、自分も仕事のある日はそんなもんだと改めて気づく。
作業着の上からジャケットを羽織ったり、トラックの席にぬいぐるみを飾れるか。

「君の「フワフワ」は『忍者』ってことだが……ご実家は歴史が長いのかい。
 仕事で外回っている時に『羽白造園』って名前は見たような見てないような……」

引っ越し屋の仕事をしている時に、もしかして通りがかったことがあっただろうか……。

574草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2021/05/09(日) 00:29:11
>>573
単車の鍵穴には、丸っこいデフォルメがされた忍者のキーホルダーが揺れている。
まあ、そのくらいのものだ。

「古いのは古い家っスね。母屋とか築百年超えてるらしいス。半分農家っつーか。山手の方で。
 ここまで帰ってきたけど、ここからも結構遠いス」

具体的にどこそこと説明すれば、街中からもだいぶ離れた山の方だ。
ひょっとしたら立て看板くらいは見たことがあるかもしれない。
例えば、大学生が田舎の実家を出る、その引っ越しの仕事があれば。
個人商店とか自営業の小さな看板が立ってるのは、『田舎あるある』じゃなかろうか。

「迎えに来てもらおーかと連絡も入れたんスけど、今軽トラみんな動かしてて来れねーってんで」

それで押して歩いていたわけだ。
ポカミスと、ツキのなさでしょぼくれていた顔が、しゃべっているうちに少し元気を取り戻してきたようだ。

575クスモ『ロングナイツ&ヘヴィハーツ』:2021/05/09(日) 00:46:04
>>574
「ほお築百年……って。
 あそこまで帰るところだったのか?」

実家から独立する客の引っ越しで、見かけた気がする。
しかし、ここからあの山方面までバイクを転がしながらとは……。

「……こんなナリしてたんで悪かったが、オレは引っ越し屋勤めでな。
 会社に寄れば社長から軽トラ借りて乗っけて行けるが……。
 どおする?」

576草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2021/05/09(日) 00:50:53
>>575
いい人だなあ。

「ありがとうございます。でも大丈夫ス。体力は自信あるんで」

言うだけのことはあり、背は低いががっしりとした体つきだ。

「それに、初対面の人にそこまでしてもらうわけにもいかないス。
 ご厚意だけありがたくいただきます」

確かによく見れば汗一つかいていない。
疲れた風もなく、マジで『何でもない距離』だと思っているのがわかる。

577クスモ『ロングナイツ&ヘヴィハーツ』:2021/05/09(日) 00:59:01
>>576
「そうか」

礼儀正しい青年だ。
恐らくやせ我慢とかじゃあなく、時間さえかければ普通に帰れるんだろう、が。

「ま、通りを抜けるところくらいまでは付き合うさ。
 もう酔いも結構醒めたようだが一応な」

散歩をもう少しだけ続けることにした。

578草摺十三『ブレーキング・ポイント』:2021/05/09(日) 01:04:57
>>577
「なんか、すんません。ホント……」

そのままポツポツと言葉を交わしながら歩いて、
分かれるころには本当に酔いも醒めてはいたが、
アルコールが検出されたら非常に困るので、

「ありがとうございましたー。さよーならー」

挨拶をして、カブをキーキー押しながら歩いて帰った。

579桜井 憐『ワッキー・ディップ』:2021/05/12(水) 09:01:22
「はぁ……はぁ……」

中学生くらいのポニーテールの少女が街道をランニングしている

疲れ果てた憐は、ふと立ち止まり、着色料・保存料0の栄養ドリンクを飲んだ
しかし元気ハツラツにはならなかったのでもう1本いっとく事にした

580隼士 賢『パンテオン・ロココ』:2021/05/12(水) 13:47:58
>>579

俺の外見↓
ttps://picrew.me/image_maker/187524/complete?cd=MNm20yQIHq

 「うお〜〜! U・F・О! U・F・О!!
俺の元に降臨してくれーいぃyeahyeahyeah!」

スタンドっての貰えたし、まじサイコー! とりあえずUFОに見て貰う為に
最大サイズ10m×10mの『ベンチの地上絵』を『パンテオン・ロココ』で
作るぜぇ!! これで、UFОが俺と遭遇出来る確率がマジ上がったショ!


尚、隼士の居る場所は人気のない湖畔とかでない『街道』だ。
幸いにも今は人通りが少ないが、騒いでれば誰かに迷惑が掛かる可能性も高い。

581桜井 憐『ワッキー・ディップ』:2021/05/12(水) 14:11:54
>>580
「うおぉ!?な、何すか?」ガシャン
「あっ…」

突然の叫び声に驚いた憐は思わずオロナミンCを落としてしまい割ってしまった
あ〜あ、まだ飲んでない奴だし、割れた瓶も片付けなきゃだし散々だよ

怪我をしないようにハンカチで瓶を回収してその辺のゴミ箱に捨てに行く所で
声のした方に向かってみた、すると

「……こんなのあったっけ……?」

『パンテオン・ロココ』が作った『ベンチの地上絵』を発見

「いやマジで何すかこれ……?」

582隼士 賢『パンテオン・ロココ』:2021/05/12(水) 15:21:17
>>581

>いやマジで何すかこれ……?

「おっ! 早速宇宙人来たっ!?
んだよ、違うのか! 何って地上絵だよ、地上絵! ミステリー特集とかで見た事ない?
これでUFОに乗ってる宇宙人に、俺めっちゃフレンドリーだぜーって
交信するんだよ!」

振り返ってマジで宇宙人が来たかなって一瞬期待しちゃったよ!
けど、なんかふつーの地球人っぽいな。けど、もしかしたら
もしかして京分の1ぐらいの確立で宇宙人の知り合いだったりするかも!

「なぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁーーーなぁ!!
宇宙人の知り合いとかって居ない!?
 俺、めっっちゃ宇宙人と出会いたいんだよ!
けど、日が照らってて眩しいからかな? この地上絵作って十分ぐらい
ここで宇宙人にラブコールしてるけどUFОの影の一つも出ないんだ!

あーーーUFОUFОUFОこねーかっなぁあああ!!」

UFОと宇宙人のマジリスペクトを唱えつつ空を見上げるっ!

ほんのチラッとでも輝く未確認飛行物体が来るかも!!

583桜井 憐『ワッキー・ディップ』:2021/05/12(水) 15:34:26
>>582
>これでUFОに乗ってる宇宙人に、俺めっちゃフレンドリーだぜーって交信するんだよ!

「へ、へぇ〜…そうなんすか、自分、そういうのよく分かんないんで…
 詳しいっすねぇ〜…」

隼士の凄いテンションに圧されドン引きする憐

>なぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁなぁ(略)

「ひぇっ……
 ああああの、期待されている所悪いっすけど
 う、宇宙人の知り合いはいないっす……ごめんなさい……
 っていうか作った!?お宅さんが作ったんすか!?これを!?」

宇宙人に対するこの凄まじい執着…
一体何がコイツを突き動かしてるんだ…?

584隼士 賢『パンテオン・ロココ』:2021/05/12(水) 15:56:40
>>583

「おう! 作ったぜー、俺がこれを!
あと、もう一つ作れる! えーっと、なんだっけな
ファム・ファタール……っての? たぶん女の人っぽいのが
俺に地上絵を作ってUF0呼べれるようにしてくれるって話でさぁ!」

両手を広げつつ、饒舌に話すぜぇ!
やっぱUFО呼ぶには、みんなの力が必要っショ!
『パンテオン・ロココ』も隣で、俺と同じ両手を広げるポーズで説明だ!

「UFОはいるんだって絶対!
俺、絶対にUFО乗ってる宇宙人と一緒に宇宙船乗って人類が一度も言った事のない
宇宙の彼方に行くって決めてんだ!

俺、隼士 賢てぇ言うの!
良かったら宇宙人の情報を知ってたら俺に教えてっショ!
ぜってー居るから宇宙人! そしたら、そん時にUFО乗る時に
そっちも一緒に乗れるように頼むからさぁ!」

『パンテオン・ロココ』

585桜井 憐『ワッキー・ディップ』:2021/05/12(水) 16:18:42
>>584
隼士の隣にいる『パンテオン・ロココ』を凝視する憐
自分以外の能力者を見るのは初めてだ
それも自分の羽ペン型の物とは違う、人型とは

「わ、分かった、分かったからちょっと落ち着いてください……
 あの、悪いっすけど自分、ほんと宇宙人の事全然知らないっす、すいません……」

>そしたら、そん時にUFО乗る時にそっちも一緒に乗れるように頼むからさぁ!

「いや〜…その、自分はなんというか、そういうの別にいいんで、遠慮しときますね……」

何かどっと疲れた……
もう1本いっとくか、と、今度は懐からアスパラドリンクを取り出して飲み始める
飲みながら隼士に、気になった事を尋ねる憐

「えーと、隼士さん、でしたっけ…?
 何でそんなに宇宙人に拘ってるんすか?」

586隼士 賢『パンテオン・ロココ』:2021/05/12(水) 16:30:57
>>585

>何でそんなに宇宙人に拘ってるんすか?

「――だって地球人ってつまんねーじゃん」

澱みなく言い切る。

「いや、だってそーじゃん?
俺のダチとか、女ほしーだの金ほしーだのアレコレぶーむだから
欲しーとか。女子も似たよーな事ばっかりだし、大人は大人で
子供は勉強して部活真面目にやってまともに生きろーとか何とかかんとか。
全部ぜーんぶぜんぜんぜん全部定型文かって言う感じでつまんねーの!
退屈で死にかねない俺の日常をきっと壊してくれんのは宇宙人だって!!」

大空を見上げる。この空の向こう側に、きっと地球なんてちっぽけだって
思っちまうスゲーすげースケールでけー存在が宇宙船乗ってるって絶対!

狂信的な期待を込めた笑みを浮かべ、両手の指をにぎにぎ開いたり閉じたりしながら
うおーーーっ!! と気合一発で宣言するぜ!

「きっと、俺の周りのつまんねー事ばっかり言う奴らを木っ端微塵にしちまう
ビックバン並みの思考をした存在が居る!!
 そーなると、この星に居るような奴じゃなくて絶対に地球以外の生命体の
宇宙人に決まってるッショ!」

587桜井 憐『ワッキー・ディップ』:2021/05/12(水) 16:52:19
>>586
「そっすねぇー……
 でも案外、宇宙人も宇宙人で
 地球人と同じように定型文で会話してたり勉強だとか仕事だとか
 宇宙憲法だとか色々柵があるんじゃないんすかねぇ……」

ボソボソっと小声で、聞こえるかどうかくらいの声で言う

「あ、あーっ、そうっすね、宇宙はとんでもなく広いっすから
 うん、地球なんて狭い世界から抜け出して宇宙中を隈なく探せば
 どっかにはきっととんでもないスケールのお方がいるかもしれないっすね!
 会えるといいっすね!」

「っていうか、宇宙人宇宙人って言うけど、宇宙人からすれば地球人だって宇宙人じゃん…」(小声)

アスパラドリンクも飲み終わったな
やはり疲れが取れないので次はモンスターエナジーを飲みだす

「あー、あのアドバイスなんすけど、UFOにあんま詳しくない自分が言うのもあれなんすけど……
 こんな所でやるより、もっとこう、宇宙人の目につきやすいような、高い所とか
 目立つところでやったらどうっすかね?」

588隼士 賢『パンテオン・ロココ』:2021/05/12(水) 17:05:00
>>587(了解、お付き合い有難う御座いました)

>宇宙人の目につきやすいような、高い所とか目立つところでやったらどうっすかね?

「おぉ! そりゃそうっショ!
此処じゃー宇宙人もどうも交信難しそうだし、次はスカイモールとか
高層ビルかなー!」

街の通りが好きな宇宙人とか物見雄山で通るUFОとかワンちゃん
あるかも知れねーって思ったけど、どーも会えないっぽいから
とりあえず場所を変えるっショ!


「そんじゃー、宇宙人の情報がわかったら清月のミステリー研究会に
来てくれっショ!
 あーーーUFО UFО 来てくれーー!!」

ベンチの地上絵を解除させて、走りつつ空に叫びながら移動するぜ!

589桜井 憐『ワッキー・ディップ』:2021/05/12(水) 17:59:28
>>588
「あ、どうもー……」

嵐のように去って行く隼士に手を振り見送る憐

「自分にとってはお宅さんも宇宙人みたいな人っす…」

本当に、本当に疲れた!
モンエナを飲み干した憐は疲れを取るためにもっとレッドブル
デカビタ、G-zone等を次々と飲ん……

バタリ

倒れた

憐は二つの間違いを犯していた
一つは、運動時に飲むべきはアクエリアス等のスポーツドリンクであって、栄養剤やエナジードリンクではない
もう一つは、疲れが取れないからと言って大量に飲んでしまった事だった
そんな事も分からない憐にスポーツをやる資格は無かったのだ!

590喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』:2021/05/15(土) 02:15:17
『場所』が環境で決まるというのならば、『時刻』はこの私が決めさせてもらおう。

薄闇が救いを求めて光を探す『4時38分』。
私は、ここ―――『始発前』の駅周辺に居た。
別に電車に乗り過ごしたわけじゃあない。
わざわざ自宅からふらふらと落ち着かない足取りで
ここまで来てしまったというだけだ。

『陽』が這い出るようにその姿を現し、
始発電車が憂鬱な会社員を運び出しはじめるまでの
ほんのわずかの時間だけ、私はここに居ようと誓った。

591御影憂『ナハトワハト』:2021/05/15(土) 09:29:39
>>590

前方から、一人の女が歩いてきた。
白いワンピースを着た髪の長い女。
特に目立つのは、異様に長い前髪だ。
顔の大部分を覆い隠し、隙間から片目だけが覗いている。
その姿は『ジャパニーズホラー』の亡霊を想起させた。

(もう『朝』………………)

    ザッ ザッ ザッ

(………………帰らなきゃ)

             ザッ ザッ ザッ

『御影憂』は、他者に『恐怖』を与える事に執着する。
『夜の帳』が下りる度に街を徘徊しては『獲物』を物色し、
その心に『恐怖』という名の爪痕を残す。
それは『狩り』である。
だが、その日は、なかなか『獲物』が見つからない。
『狩り』を終える頃には、
いつの間にか『夜』が明けようとしていた。

(『朝』は嫌い………………)

『御影憂』にとって、『夜』は『狩り』の時間。
一日の内で、最も『安らぎ』を得られる時間帯だった。
だから、『朝』は嫌いだ。
この身を優しく包んでくれる心地良い『闇』が、
無情にも取り払われてしまう。
『光』など無くなればいい。

                ――――――ザッ

前から歩いてきた女は喜古と擦れ違い、
そのまま歩き去っていった。

(今日は講義に出て………………。
 それからバイト行かなきゃ………………)

592御影憂『ナハトワハト』:2021/05/15(土) 09:50:28
>>591

(………………)

擦れ違った後で、『さっきの女』について、
ぼんやりと考えていた。
この時間は『表の活動』をするには早いし、
『裏の活動』をするには遅すぎる。
そこまで考えて、
『自分自身』に当てはめてしまっている事に気付いた。
実際は、特別な理由など無いのかもしれない。
大方『朝帰り』か?

「………………『お疲れ様』」

          ボソッ

歩みを止める事無く、呟くような声色で、
それだけを言い残した。

593喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』:2021/05/15(土) 14:07:11
>>591-592

たとえば電車でどこかに通っているとして、
朝おきてから夜ねむるまで、どれだけの人間とすれ違う?

夜露のように儚い『すれ違い』が、
『人の出逢い』の『圧倒的多数』を占めている。

『一期一会』なんて言葉があるが、すれ違い、
もう二度と出会う事のないマジョリティの『出逢い』に
一体どんな真摯さをこめればいいというのだろうか?

人が覚えていられる『出逢い』は、一生の中で限りなく少ない。

 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ●

それでも『彼女』が私の胸に残ったのは、その風貌ゆえだ。

クラシックな『日本ホラー映画』を連想させるその姿は、
失礼だとは思うけれど純度の高い『闇』を想起させる。
時間に例えるならば、『丑三つ時』―――
疑いようのない『深夜』は、私にとって『安寧』の時である。

………よもや、本当に、『幽霊』だったのか?

            『明け方の幽霊』。

『彼女』も私と同じように『朝』と『夜』の狭間の不安定さに我慢ならず、
そそくさと『現世』から一時退場しようとしているところだったのかもしれない。

 (まさか、でしょう?)

苦笑とともに、私は自分の考えを否定する。
これでは昨日湖畔で会った『双子の妹』と同じ。
愚にもつかない幻想に身をひたすのは十代のころだけで十分だ。

当然だが、『彼女』は人間。
足もあったし、『存在感』だってあ

                    「………………『お疲れ様』」

  ・・・・・・・・・・・・・・・・

すれ違った後の『彼女』のほんのささやかな呟き。
私の耳に届いたのは、ひとえに始発前の静寂さゆえだろう。

      おつかれさま………

           おつかれさま……

           『 お 憑 か れ 様 』………?

思わず、『彼女』の方を振り向くが、そこにはすでに姿はない。
こいつはマズい事になった。

いつのまにか『始発』は動き始め、まごうことなき『朝』がやってきた。
しかし私の心は、『時の変わり目』とは違う理由で『不安定』になっていた―――

594喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』:2021/05/16(日) 22:39:16
【個】『烏兎々池神社』【場】
(ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1549033452/349-357)
を経て>>593の続き。

昼食時もすこし過ぎた『13時59分』。
私は再度、『駅前』にやってきた。

                 「―――ここだ」

『魔法使い』を得てから、私は『時刻』について敏感になっている。
それが『時の変わり目』のころならば、なおさらだ。
つまり私は、『彼女』と何時にすれ違ったのか、正確な時間まで覚えている。

すこし待って人通りが少なくなった頃をねらおう。
『魔法使い』自体は特異な者にしか見えないとしても、
私の『再現』は、誰にでも見えてしまうものだから―――

595喜古美礼『ビトウィーン・2・エンズ』:2021/05/17(月) 01:27:05
>>594

「『ビトウィーン・2・エンズ』」

私の横からそっと這い出る『魔法使い』。
ズシリとズシリ。『夕暮れ』と『明け方』が
しっかりと掌内で分かれているのは、安心でしかない。

今回用いるのは『明け方』を煮つめたような『球体』。
自分が思い出すよりずっと明瞭に、『明け方』の『駅前』をよみがえらせる。

                        .  ‥   .
                 .:             .: .
             .                     .. .
             ..                  ... .
          ∵.                     ...∵
        ∴..                     : : : :∴
          ....                         : : : : : .
.       .....                   : : : : : : .
..        .: : : : .               .: : : : : ∴: .
.        : : : : : : : .               .: : : : : : ∴:∵:
.        : :∴∵: : : : : : ......: : : : : ::∵∴:∵: :
       .:∴:∴:∵: : : : : : : : : : : ∵:∴:∵:∴:∵ .
.       .∵:∴:∵:∴:∵:∴:∵:∴:∵::∴:∵:∴:∵: .
.       . : : :∴:∵:∴:∵:::::::::: :::::∴∵:∴ .
        ∵ : : : : :∵:∴:∵:∴:::::::∴:∵: : : ∵
           ∴ .. : : : : : :∵:∴:∵:∴: : : : : ∴
            .  .....: : : : : : : : : : : : :..
            . . . ....: : : .. . . .
               .   . . . . . ..
                 ‥∴.   .∴‥

『半径1メートル』のささやかな『過去遊覧』。
なんどか『時刻』を微調整したところでようやく、
彼女………『明け方の御影憂』を炙り出す。

                「―――よし」

     私が思わず安堵の声を吐いたのは、

                       ・ ・ ・
     『彼女』の姿を透過する事が出来たからだ。

私の『魔法』において『透過』できるのは
『幽霊』じゃあなく『生きた人間』である証となる。
あとは『スタンド』だという可能性もあるんだろうが………
『スタンド』は私にとって、すでに『既知』。
すくなくとも過度に不安がる事はないはずだ。

もっとも―――『幽霊』が私の『魔法』でどう扱われるかは、
         『知らない』のが本当のところだけれど。
         今はこの『安寧』に浸かって帰路につきたい。

予想外の『怪異』にあてられて、今日の私はいつもよりもアクティブでした。

596十字路荒野『ジャンクション001』:2021/05/20(木) 21:24:32
大通り、『クレープ屋台』の前――――

「………………………………………………」

一人の青年が、熱心にメニュー看板と睨めっこをしている。
もう、どれほどそうしているだろうか。
かれこれ数分は間違いないし、下手すると十分以上はそうしているかもしれない。
通りがかる他の客は青年を無視して注文しているが……まぁ、邪魔と言えば、邪魔だ。

597更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/05/20(木) 22:14:12
>>596

「並んでンのかい」
 
クレープ屋台の前で悩む青年に、後ろから声がかかる。
ハイトーンな、ともすれば女性のそれとも聴こえかねない調子だが、
一方で無理矢理に裏声を作っているかのような硬質な声音。
 
「いや、注文が決まってるってンなら、こう、チョイと脇に避けてもらってさ。
 見せてくれないモンかね、その『メニュー』」

発音に独特な節回しはあるものの、これといった訛りも見られない。
単純に、『そういう声』ということもあるのだろう。
 
「こういう……ナニ?『移動販売』っての?
 初めて見るよ。この辺は多いんだな。
 『クレープ』ってのも、一度食ってみたかったんだけど、こんなに種類が多いと思わなくて」
 
「よくよく見ないと、自分がナニ食いたいのか決められないんだよな」

598十字路荒野『ジャンクション001』:2021/05/20(木) 22:33:58
>>597

「ん……あっ、ああ」

声をかけられ、振り向いて。
そこでようやく、客観的な自分の立ち位置に気づく。
しまったな。
確かに、こうして立っていると、邪魔か。
並んでいるようにも見えるし、店にも迷惑だ。急に居心地が悪くなる。

「す、すみません、どきます」

頭を下げて、一歩横に避ける。
とりあえずこれで、『メニュー看板』がこの人からも見えるようになっただろう。
この男性――――男性だろう。少し声に違和感はあるが――――も、注文で迷っているらしい。

「…………俺も、注文で迷ってまして」

言い訳めいた会話を続けたのは、親近感か、それとも迷惑をかけた罪悪感か。

「どうにも『優柔不断』というか……苦手なんです。こういうの、選ぶの」

チョコ、バナナ、クリーム、カスタード、イチゴ……オーソドックスな甘味から、ツナやらなんやらの『おかずクレープ』まで。
メニューに書かれたクレープの種類は膨大で、どうにも決めがたい。

「どれも魅力的だし、どれ選んでも後悔しそうだ。……ズバッと決められれば、いいんでしょうけど」

599更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/05/20(木) 22:48:51
>>598

「ああいや、俺こそ悪かった」

素直に横へと避けてくれる青年に対し、こちらも謝罪を返す。

「ものには言い方ってモンがあるもんな。
 『すみません、並んでらっしゃいますか』とでも言うのが良かったのかな?」

振り返る青年の目に映るのは、長身痩躯の男の姿。
年の頃は二十代半ばから後半か。
柔らかくウェーブしたブラウンのミディアムヘアーに、白い肌。
臙脂色のシャツの胸元をゆるくはだけ、シルエットに張り付くボトムスが下半身を包んでいる。

「いや、でも分かるよ。
 こんなに色々あると、『そもそも自分が何を食べたかったのか』ってのが分からなくなるもんな。
 甘いのも食べたい、でも、しょっぱいのも食べたい。ああでも……・なンて考えるとキリが無い」
 
目元を薄いオレンジ色のレンズのサングラスで覆っているところも含め、
人によっては『胡散臭い』……あるいは直接的に『嘘臭い』という印象を抱いても仕方のない出で立ちだ。
 
腰を折り、覗き込むようにメニュー票に顔を寄せる。
『優柔不断』を自称する青年ほどではないだろうが、それでも注文に迷っていることに間違いは無さそうだ。
 
「参考までに聞きたいんだけどさ。
 君が最後に食べた『クレープ』ってのは、どンなヤツだったんだい。
 できればその時の、味の感想も教えてもらえたら嬉しいけど」

600十字路荒野『ジャンクション001』:2021/05/20(木) 23:04:33
>>599

「……はは」

……参ったな。

と、少し思った。
失礼な考えではあるが、なんというか……『クセ』の強そうな人物だ。
自分から会話を試みておいて何を、という話なのはわかっているけれども。
できるだけ思考を表情に出さないように努めつつ、その努力が実を結んでいることを祈る。

「……そうなんですよね」
「俺は多分『クレープ』が食べたかっただけで、『味』とか『具材』とか、ちゃんとイメージしてきたわけじゃないんですよ」
「だからなんでしょうね。いざメニューを前にすると、自分の中の『クレープ』がちゃんと定まらない……」

話しながら、こちらも横からメニューを見る。
あれだけ睨めっこしていたのだから、ラインナップはおよそ覚えてしまったけど。

「もしかすると、俺の希望100%を叶えてくれる『完璧なメニュー』を見落としてないか、なんて」

そんなことはあるわけないとわかっちゃいるが、そう思いたくなるほどに悩んでいた。

「最後に食べたのは……ええと、確か『バナナチョコクリーム』だったかな」
「『バナナ』が健康にいい……なんて、あんまりにも漠然とし過ぎたイメージで選んだんだったかな……」
「バナナとクリームの甘さに、チョコのビターな味わいがトッピングされて、美味しかった……はずです」
「ちょっと結構前なんで、そこまで正確に覚えてるわけじゃないんですけど」

601更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/05/20(木) 23:23:45
>>600
 
「俺も『優柔不断』を自称する方じゃあないけれど、
 それなりに悩みやすく、迷いやすい方だからね。
 ただ、」
 
メニュー表から顔を離し、サングラスの位置を直す。
青年の態度を気に留める様子は無い……どこへ行っても似たような扱いなのだろう。
 
「もう何年も悩んでるうちに、気付いたんだ。
 『こんなに悩むような選択肢なら、どれを選んでも大して変わらないンじゃないか』ってね」
 
メニューの前から体ごと移動し、青年を促す。
『どうぞ、続きを御覧ください』とでも言うように。

「だってそうだろう?
 大嫌いなものはすぐに除外できる。大好きなものにも飛びつける。
 ただ、何年も悩み続けた俺がそれでも『どれがいいか分からない』っていうんなら、
 それは『どれもある程度嫌い』で、『どれもある程度好き』ってことになるンじゃないか?」
 
「だったら後は『キッカケ』だけだと思ったんだ。
 ありがとう。俺はその『バナナチョコクリーム』にするよ」

「君は俺と違ってそういう『妥協』はできないかも知れないけど……アレだぜ。
 悩みすぎるのも勿体ないぜ。若い時期なんて一瞬だ。
 うかうかしてると寿命で即死、ってこともあるからね」

602十字路荒野『ジャンクション001』:2021/05/20(木) 23:46:22
>>601

「…………!」

その動きを、視線だけが追った。
なんとなく手が前に出て、何もつかめずに空を切る。

別になんてことはない。
ただ一人の男性がクレープ屋に来て、少し会話して、注文を決めただけ。
別にどうってこともない、ごくありふれた光景――――――――なのに、だからこそ。

「…………『キッカケ』、か」

がつん、と。
『ハンマー』で殴られたような気分だった。
ついさっき『クセが強そう』と思った男性が――――なんだかとても、『カッコイイ』人物に見えた。

「……すごいな。俺には多分……できない考えだ」
「多分俺はどれを選んでも、後から『これでよかったのか』って考えることになる……」
「でも、アナタの言うことが『正しい』って感じてる自分もいる」

敗北感にも似たショックが、全身を打ち据えていた。
打球を真芯で捉える『四番打者』の姿を、目の前で見せつけられた時の気分だった。
……そして多分、理解できた。

「なら――――それが俺の『キッカケ』だ」

この人の言うとおりだ。
今決めないと、俺は多分一生悩み続ける。
たかがクレープの注文ひとつで大げさな話だが……でも、そう思った。

「俺は、………………………………『ストロベリーカスタード』、だ」
「決めた。それに……する。これにする!よし!」

くだらない意を決する。
気付けば握りしめていた拳が本当にバカバカしくて、なんだか笑えてきた。

「……ありがとうございます」
「おかげでようやく、俺の注文も決まりました」

603更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/05/21(金) 00:01:55
>>602
 
「ヒヒヒ……いくらなんでも大袈裟だぜ。
 ちょっと説教臭かったかな?やっぱりダメだな」
 
軽薄に笑いながらも、満更でも無さそうに応える。
青年の決意の程が少なからず伝わったのかも知れない。
 
「俺だって後悔はするし、してばっかりなンだから。
 でも目が前にしか付いてないから、やっぱ前進して、決断してくしか無いンだよな」
 
そう言って自分の目を示すように、軽くサングラスを叩く。
動きが一々気障ったらしく、その顔の彫りの深さ、鼻の高さも相まって、どこまでも胡散臭い。
 
「『ストロベリーカスタード』もいいな。
 『甘いの』と『甘いの』でちょっとした『オソロイ』みたいになっちまったけど、
 クレープってのは甘いのの方が多いンだろ?仕方ないよな」
 
注文待機列の最後尾につき、ちょいちょいと青年を手招きする。
後ろに並べ、というジェスチャーなのだろう。
 
「しっかし……ヒヒ。説教臭い上に馴れ馴れしくって災難だよな?
 俺、兄弟って下しかいないから、若いオトコノコにはチョッカイ掛けたくなっちまうのよ。
 いくつ?みたとこ日本のガクセーさん、って感じだよな?」

604十字路荒野『ジャンクション001』:2021/05/21(金) 00:29:53
>>603

「はは……すみません。俺も大袈裟だと思います」
「でも、ほっといたらあのまま『足踏み』し続けてたんだろーなっていうのも、マジですから」

苦笑する。
握りしめていた拳を広げれば手汗が滲んでいて、シャツの裾でそれを拭う。
『クセの強い人物』……という評は、多分間違っていないのだろう。
けど、『頭のいい人』だ。ちゃんと自分の考えを持っている人。

「クレープ、『しょっぱい』のもありますけど……いわゆる『変わり種』って奴ですからね」
「『スイーツ』って言うからには、基本は『甘い』わけで」

手招きされるまま、列に並ぶ。
警戒心は、もうだいぶ薄れていた。

「『高二』です。17歳。『十字路荒野』って言います」
「そういう『お兄さん』は…………いや、難しいな」
「なにやってる人、って言われても信じちゃいそうだ」

年齢はともかく、国籍とか、人種とか、職業とか。
言われたらそのまま信じることも、そのまま疑うこともできそうな印象だった。

605更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/05/21(金) 00:51:38
>>604
 
礼儀正しい青年だな、と思う。
同じ調子で話しかけて、邪険にされたことだって勿論あるのだ。

「そういうの、ちゃんと言葉にできるのカッコイイよな。
 『葛藤は10代の特権だ』なンて言葉もあるくらいだから、
 悩むのが全部悪いってわけでもないんだろうけど」
 
列に続く青年を見て、満足そうに頷く。
表に見せる態度とは裏腹に、嫌われずに済んだようで良かった、と内心胸を撫で下ろしていた。
 
「『荒野くん』……か。 『荒れた野っ原』の『荒野』かな。
 17歳だと、下の弟と同じくらいだな。俺が馴れ馴れしくなってしまうのも無理はないと諦めてくれ」
 
「俺は『ヨシハル』。
 ええと……『更山』。『更山好陽』、26だ。
 散々色々やってきたけれど、今は田舎から出てきたばっかりで、恥ずかしながらようやく職にありついたばかりって感じだ」

本当に恥ずかしいと思っているのだろう。
笑みは曖昧なものになり、照れたように頭を掻く。 
  
「ケチな仕事だよ。
 『パソコン教室兼スマホ教室』とでもいうのかな。
 おばあちゃんの『らくらくスマホ』にアプリの設定して、
 孫とチャットやらビデオ通話やらできるようにしてやって五千円、とか。
 起動しなくなったパソコンをフォーマットしてOS入れ直して八千円、とか」
 
「ガクセーさんからすればサギみたいなもんだろうけど、
 まあこれはこれで、必要としてる人がいるンだぜ」

606十字路荒野『ジャンクション001』:2021/05/21(金) 22:28:27
>>605

「多分明日には、またくだらないことで悩んでる気がしますよ」
「ちょっとずつでも変わっていけたらな……って思いますけど」

いや、変わるのだ。
少しずつでも、『キッカケ』を作っていこう。

「あ、はい。十字の路地で『十字道』。荒れた野で『荒野』」
「『好陽さん』は……兄弟が多いんですね」
「俺は一人っ子だから、なんだか羨ましいな。こういうの、『隣の芝』なのかもですけど」

『下の』というからには、自然と『上』にもいるはずで。
先ほどからのいい方からするに、少なくとも『二人』は弟さんがいるのだろう。
下の弟さんが自分と同じぐらいとなると、それこそひとつふたつ『上の世代』という感じだ。

「ああ……わかりますよ」
「俺のじいちゃんも、たまに『メール』の打ち方がわからない、って言ってますし」
「俺も『パソコン』は授業とかでしか触りませんし」
「身近に聞ける人がいればそれで済む話ですけど、そうとも限りませんしね」

正直、俺たちの世代は『スマホ』があれば十分世界と繋がれる。
パソコンなんてなくても……という考えは珍しくなくて、クラスでも持ってる生徒の方が少ないんじゃないか。
まぁ、実際には確認したこと無いし、わからないけれども。

607更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/05/22(土) 21:59:40
>>606
 
「何も無理に変わることはないケドな……悩むのも一つのスタイルだぜ。
 『こんなに悩んだ俺が選ぶんだから間違いない』って、胸張るのもカッコイイだろ」
 
丁寧に言葉を返してくれる青年に対して、ついつい言葉数も多くなる。
説教臭さと語りたがりは癖のようなもので、少々意識したくらいでは引っ込まないのだろう。
 
「ヘェ……苗字も『四つ辻』の、『クロスロード』か。イカしてンな。
 突然ブルースマンにはならないでくれよな……ヒヒ。縁起でも無いか」
 
「ま、兄弟に関しちゃ親父が気張りすぎたってだけなンだけどな。
 どいつもこいつも、騒がしいやらやかましいやらでロクなコト無かったし、
 俺は俺で、『一人っ子』ってのに憧れたりする部分もあるンだぜ」

話している間に列は進み、前に並ぶ更山の注文する番となる。
既にオーダーは決まっている為、些かも迷うこと無く、会話の合間に注文を済ませてしまう。 

「『バナナチョコクリーム』と『ストロベリーカスタード』を。
 まあ、あいつらの事は嫌いじゃないけど。
 ヒヒ……実は『荒野くん』みたいな学生さん向けに、
 『レポートの書き方講座』みたいな企画も考えてンだぜ。
 大学生が、小銭落としてくれりゃ儲けモンだろ?」
 
『パソコン』の需要が下火になっている今の内に、
稼げる所から稼げるだけ稼いでおこうという魂胆だ。
勿論誰を騙しているということもない正当なビジネスだが、生産性は限りなく低い。
 
「おっ、ホラホラ来たぜ。
 コッチが『ストロベリーカスタード』だ。
 『ショクレポ』っての?期待してるんだぜ」
 
代金と引換に店員から手渡された包みの一つを『荒野』へ差し出し、白い歯を見せて笑う。

608十字路荒野『ジャンクション001』:2021/05/22(土) 22:37:44
>>607

「はは、やっぱり『隣の芝』だ」
「『悩み癖』も、そういうもんなのかな。見る角度の問題っていうか……」

ちょっとだけ、気が楽になった気はする。
今だけかもしれないが、今だけは。

……そうこう言っている内に、自分たちの番だ。
好陽さんの次に注文を、と思っていると、なんか一気に注文されてしまって。
まぁ、その方がスムーズなのは確かだ。
こういうのが自然とできるんだから、本当にカッコイイ大人だなと思う。

「あーーー……『レポート』」
「大学行ったらそういうのあるんですもんね」
「高校じゃあ大して教えてくれないから、確かにそーいうのあったら助かるカモ」
「……大学かぁ。もう来年には『受験』なんですよね、俺も」

なんだか実感のない話だ。
進路、進路か。少し憂鬱になる。

「あ、すみません、ありがとうございます」
「ええと、お代出しますね」

『ストロベリーカスタード』を受け取って、ポケットから財布を取り出す、
片手がパフェで埋まっているからちょっと出しにくいが、お代の小銭を出さなくては……

609更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/05/22(土) 22:57:18
>>608

「人生って一回っキリしかないもんな。
 『一人っ子の俺をちょっとだけ体験して……』ってワケにいかないから難儀だよ」
 
くつくつと笑いながら包みを開き、自らのクレープに齧りつく。

「『レポート』の書き方って言ったってアレだぜ、、
 『バレないパクり方』とかを教えるワケじゃないんだけどな。
 ワープロソフトの使い方とか、便利なショートカットキーとかだけ教えて数千円、みたいなな。
 親の金で私大に通うようなボンボン相手ならイケると思うンだよ」
 
会話の合間にも、息継ぎのようにクレープを食べ進めていく。
もう半分ほどは胃に収めただろうか……特に味についてコメントする様子はない。
 
「そもそも俺が大学出てないかンな、レポートの書き方も何も知らないワケ。
 『荒野くん』はちゃんと勉強して、イイ大学行って、スゲー仕事するんだぜ?」
 
過剰なほどに口の端を歪めて笑い、空いた方の手で『荒野』の財布を制す。
 
「ンでもってそんときゃ俺に『クレープ屋』を買ってくれよ。
 俺、こういう店持つの、ちょっと憧れてンだよな。
 その為の投資なんだぜ、コレは」
 
自分の台詞が自分のツボに入ったのか、喉の奥で数度笑い声を上げた後、
改めてサングラス越しに『荒野』と目を合わせる。
 
「悩むなら今だったンだぜ……『このまま奢られて良いモンか』ってな。
 ヒヒ……君の素直な人柄が、バッチリ俺に伝わっちまったじゃンか。
 期待してるぜ、『クレープ屋台』」

610十字路荒野『ジャンクション001』:2021/05/22(土) 23:21:40
>>609

「さっきも言いましたけど、俺らはもう『スマホ』で大体解決しますからね」
「必要な『パソコン』の使い方ってのは、案外需要があるのかも……っと」

財布を制されて、すぐにその意味を理解する。
参ったな。
困ったような、恥ずかしいような、バツが悪いような、嬉しいような。
複雑な表情を浮かべて、数瞬の間財布を行き場なく持て余して、意を決してしまいこむ。

「…………参ったなぁ。それ言われたら、素直に『奢られる』しかないじゃないですか」
「期待に添える自信はありませんよ、正直」

袖振り合うような、ちょっとした出会いだ。
もちろん好陽さんだってマジで言ってるわけじゃないのはわかるし、だからこそ敵わないなぁと思う。

「わかりました。頑張ってみますよ、『クレープ屋』」
「なんなら『ビル一棟』買って見せますって。ははっ」

冗談めかしてそう言って、『クレープ』を食べ始める。

「……うん。『カスタード』が甘くて、『ストロベリー』の酸味がいい感じで……」
「これも『おいしい』です。『正解』でした」
「…………ありがとうございます、好陽さん」

611更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/05/22(土) 23:49:53
>>610
 
「不思議だよな。
 電車の中で乗客がみんなして板っ切れ撫でてるなんて、未来も未来ってカンジだ。
 『スマートフォン』、本当に凄いと思うよ」
 
ヒヒヒ、と笑いながら財布を制する手を引っ込める。
意図が伝わった、ということが伝わった、ということなのだろう。

「そ。素直に奢られておけばいいんだぜ、学生サン。
 この手口は別に特許取ってないから、君が大きくなってから、また学生捕まえて吹っ掛けてやったっていい」
 
そう言いつつもクレープを食べ進める。
身長に応じたようにその食欲は旺盛で、みるみる内に最後の一口を飲み込んでしまった。
 
「ただ……期待はさせてもらうぜ。
 立派なキッチンの付いたでっかい屋台を、俺にプレゼントしてくれるってさ。
 『ビル』が貰えりゃ……一家で引っ越しちまうけどな」
 
『荒野』が発する笑いを受けて、互いのジョークが通じたものと安心する。
数百円で恩が売れれば安いものだ。地元から持ち出してきた金は決して少なくない。
 
「ヒヒヒ……俺の『バナナチョコクリーム』も、かなりイケるぜ。
 キッカケ貰って良かったってカンジだ。
 コレ凄いな。もう一個食べたいって気持ちと、次はしょっぱいの行くぞって気持ちを起こさせる良いバランスだ」

包み紙を小さく丸めながら、満足したように笑みを深める。
お世辞でもなんでもなく、舌に合ったということだろう。
 
「『どういたしまして』だな。
 やっぱりダメだな、年下のオトコノコに弱い俺だ。
 たくさん食べるところを見せてくれたら嬉しいぜ」

612十字路荒野『ジャンクション001』:2021/05/23(日) 00:13:49
>>611

「先行投資、ですか。覚えておきます」

くつくつと笑いながら、クレープを食べる。
好陽さんは食べるのが早いから、なんとなく急がないといけない気がする。
いや、もちろんそんなことはないんだけれども。

「うん、投資の分は頑張らせてもらいますよ」
「……『お代』もですけど、『キッカケ』の分もお礼しなきゃですから」

再会ができるかとか、そういうのはわからないけども。
色々と、頑張ってみよう、という気にはなれた。
食べ始めると、クレープはあっという間に胃の中に納まっていった。

「…………やっぱり、次もまたメニューで悩むんだろうなぁ。ははは」
「それこそ、『出世』したら『両方』ってのもいいのかもしれませんケド」

そしたら、立派になるのは腹回りだな、なんて笑いつつ。
手元についたクリームを舐めとって、完食だ。
名残惜しく包装紙を畳んでから、好陽さんと視線を合わせて。

「――――何回目かになっちゃいますけど、今日はありがとうございました」
「助かりましたし、楽しかったです」

ぺこりと、頭を下げた。

613更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/05/24(月) 00:16:01
>>612
 
「たくさん頑張って、俺にたくさんトクさせてくれよな。
 頼りにしてるぜ『荒野くん』。
 俺、貯金とかだいぶ使っちまって結構厳しいンだぜ?」
 
おどけたように笑いながら、丸めたクレープの包み紙をボトムスのポケットにねじ込みつつ、
手の甲で乱暴に口元を拭う。
 
「こちらこそ『ありがとう』だ。
 俺なんかと喋るのは面倒だったろ?
 オッサンは若者とオシャベリする機会が少なくってさ、どうにも寂しいモンなのよ」
 
頭を下げる『荒野』へ応じるように腰を折る。

「俺がどこにいても見えるような、でっかいビルを買ってくれ。
 そいつを目印に、また会いに来ることにするさ」
 
そこまで行うと、唐突に『荒野』に背を向けてしまう。
背後へ向けてひらひらと手を振りつつその場を去るがしかし、
勝手に声を掛けては勝手に去っていく、どこまでも自分勝手な男であった。
 
「せっかく若いんだ。
 俺より長生きしてくれなきゃ嘘だぜ──」

614十字路荒野『ジャンクション001』:2021/05/24(月) 19:12:45
>>613

「ハハ……頑張ってみますよ」

笑いながら顔を上げれば、既に好陽さんはくるりと背を向けていて。
去っていく背中を見送りながら、その背に声を投げかける。


「――――好陽さんこそ、俺が『ビル』買うまでは元気でいてくださいね!」


言って、自分でおかしくなって、ぷっと噴き出した。
死ぬとか死なないとか、元気だとか元気じゃないとか、そもそもビルがどうとか。
いやまったく、現実味の無い話だ。
茶番みたいなやり取りに、奇妙な居心地の良さを感じつつ。
……本当に、不思議な人だったなとその背に感想を抱きつつ。

不思議な背中が見えなくなるまで見送ってから、俺も帰ることにした。
いつかに折って退部の『キッカケ』になった足が、今日はいつになく軽い感じがした。

615石動 遥道『アルター・ブリッジ』:2021/05/24(月) 20:36:37
『星見町』の陸の玄関、星見駅。
駅から出てくる一人の男の姿があった。

「星見町か……ずいぶん久しぶりに帰ってきた気がするな」

安物のスーツに身を包んだ男は、久しぶりに5月らしく晴れた青空を睨みながら言った。
冴えない雰囲気をしており、大企業や証券会社のような高給取りには見えない……零細企業の営業マンといったところか。

しばらく歩いていたが、やがて駅前に据え置かれた自販機の前で足を止め、何を買おうか悩みだした。

「コーラ……いや、サイダーがいいか……乳酸菌も捨てがたいな」

616石動 遥道『アルター・ブリッジ』:2021/05/24(月) 23:48:09
>>615
「……俺ももう若くないしな。
ちったあ健康のことも考えるか……」


ガコン


けっきょく無糖の紅茶を買って、その場を去っていった。

「さーて、ぼちぼち仕事を始めますかねー!」

617円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/05/27(木) 00:02:14

待ち合わせの最中で…………

           バサバサバサバサーーーz_______

ベンチに座っていると、
大量のハトが集まってきた。

「うそうそうそ! なんで!?
 わーっ、どーしよどーしよ!?」

手に持ったポップコーンが原因なのは、
最早火を見るより明らかだった(近くに屋台がある)

その光景は勿論、周りにいる人間にも見えるだろう。

618ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2021/05/27(木) 00:48:07
>>617

    「♪♪♪」

            「♪♪♪」

                    「♪♪♪」

   バサササササササササササササササ

          ササササササササササササ

                  サササササササササササササァッ

突如、後方から『鳥のような声』が聞こえてきた。
その『声』に釣られるように、
大量のハトが円谷から離れて飛び立っていった。
振り向けば、『奇妙な女』が立っているのが見えるだろう。
『湖畔』で出会った事のある女だ。
呼び寄せられたハト達は、その女の周りに集まっている。

「お困りのようでしたので、『お声掛け』をさせて頂きました」

白・青・紫の色を持つ髪は、
『ポンパドールヘア』に纏められている。
その身を包むのは、古代ギリシャの装束である『キトン』だ。
背中に『翼』、両腕に『羽毛』、踵には『蹴爪』が生えている。
『鳥人』を思わせる奇妙な風貌の女。
『人間界』では『ハーピー』と名乗り、
『ストリートパフォーマー』を生業としている。

        スッ

「――――御機嫌麗しゅう」

『ストリートパフォーマー・ハーピー』が、
両腕を広げて恭しくお辞儀をする。

619円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/05/27(木) 01:01:55
>>618

あわやと思われた、その瞬間に――――

   バサササササササササササササササ

          ササササササササササササ

                  サササササササササササササァッ

「あれ!? あれーっ、何何、みんな行っちゃった」

思わず驚きの声を上げた。
そして少し遅れて、
その原因らしき『声』に振り返ると――――

「わーっ、ハーピーさんだ! お久しぶりー!
 鳥……さん達連れてってくれてありがとネ。
 おかげさまであたし、ご機嫌でーす! あはーっ!」

久々に見た顔に、満面の笑みを浮かべ、手を振る。

「なんかお礼しなくっちゃですねー。
 ハーピーさんハーピーさん、ポップコーン好き!?」

そして立ち上がり、ハーピーの元にトトト、と駆け寄った。

パンダのような帽子にパーカーのファッション。
ショートパンツに、大きなシルエットのスニーカー。
抑えられた色彩の中で、唯一鮮やかな水色のネクタイ。
肩にかかる長さの茶色い髪、いわゆる『猫系』の顔立ち。

      ――あの時会った『リングの少女』で間違いない。

620ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2021/05/27(木) 01:24:42
>>619

    「『ポップコーン』――――」

               グリンッ

オーバーな程に大きく首を傾げ、
少女の手の中にあるポップコーンを見つめる。
人間で言う『利き手』のように、
鳥類には『利き目』が存在する。
鳥の目は、人のように『顔の正面』ではなく、
『左右』に位置している。
より広い範囲を見る事で、
危険な捕食者を発見しやすくするための進化の結果だ。
逆に、目の前の物を観察する時には、
『片目』の方が見やすくなる。

                 「――――ですか」

もっとも、『今』は必要のない動作だが、
『本能的な習性』というのは、なかなか変えられないものだ。

「可も無く不可も無くといった所でしょうか。
 ワタクシ、『トウモロコシ』は好物ですので」

「『ヒエ』や『アワ』でも結構で御座いますよ」

トウモロコシが材料のポップコーンは、
鳥も食べられる食品だ。
もちろん『人間用』ではなく、
油や塩を使っていないものに限る。
幸いにして、『この姿』の時には、
『人間用』であっても害にはならない。

621円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/05/27(木) 01:32:10
>>620

「そうそう! ポップコーンでーす。
 塩キャラメル味! 映画館の匂いするでしょー!
 ほんとはチョコミント味がよかったんだけど、
 今年はもう無くなっちゃったんですってー!」

       「あーあ、ざんねーん。
        これも美味しいんですけどネ」

色々知ってる前提で話しているが、
セララがこれを買って屋台はたまに出ており、
少し前までチョコミント味があったのだ。

      スッ

「あはは! ヒエとアワなんて持ってないですって!
 あはーっ、ハーピーさんってほんとおもしろーい。
 はい、どーぞ。これ、食べていーですよ!」

てらてらとしたキャラメルソースを纏うポップコーン。
鳥が食えば糖分過多は不可避の人間の味だが、
幸い、今のハーピーなら食べられる。

それを、差し出した。

「あたしの食べかけでごめんねなんですけどー、
 すっごく美味しいから、ハーピーさんもきっとビックリしちゃうよ」

622ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2021/05/27(木) 02:05:14
>>621

「『塩キャラメル味』――――」

「『チョコミント味』――――」

「お陰様で『勉強』になりました」

新しく覚えた単語を『自分の辞書』にインプットする。
『ブリタニカ』の名の由来は『ブリタニカ百科事典』。
世界で最も権威ある百科事典として知られる書物だ。
それを自らに冠したのは、
『先進的鳥類』を自称する自らの知性を、
何よりも誇りに思っているからだけではない。
現状に満足せず、さらに知識に磨きを掛けようという、
高い『志』の表れでもある。

「それでは、ワタクシ僭越ながら、
 『塩キャラメル味ポップコーン』を頂戴したいと思います」

『ニンゲン』を研究する事で『進化の秘密』を解き明かし、
いつか『同胞達』に『制空権』を握らせるために――――。

        パクッ

ともあれ、今はポップコーンが先。
まず感じたのは『甘さ』。
そして、多少の『しょっぱさ』も感じられる。

「なるほど――――結構なお味で御座いますね」

味を分析しつつ、感想を述べる。
もしかすると、
これも『ニンゲンの進化』に関係しているのだろうか?
確かに、この濃い味は『我々の世界』には存在しない。
こういった食物の摂取が急激な進化を促した?
いや、おそらく逆だろう。
高い知能を持つように進化したからこそ、
これを口にするようになったと考えるのが自然か。
『高級な頭脳』ほど『高カロリー』を必要とするのは、
確かに筋が通っている……。

      パク パク パク パク パク

次々に『塩キャラメルポップコーン』を食べながら、
アレコレと考えている途中で、ある事を思い出した。

「ところで、『ハーブのど飴』ですが――
 ワタクシから『変な色の鳥』に渡しておきました」

以前出会った時、飴玉を預かった。
『変な色の鳥』とは『ブリタニカ』の事だ。
当然ながら、預かった飴を食べたのも『自分』だ。

623円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/05/27(木) 02:25:43
>>622

「あはーっ! ハーピーさんってば勉強熱心ー!
 まーあたし、このお店のポップコーンには詳しいですからねー。
 このお店のポップコーンのことはなんでも聞いてくれていーですよ!」

非常に狭い範囲の知識を誇るセララ。
少なくとも『学習意欲』については、
そして秘めたる野心については、
ブリタニカの方が遥かに上を行くだろう。

「あー! 飴! ありがとネ、ハーピーさん。
 あの後ね、ママに聞いてみたんですよ。
 そしたらねー、それって絶対羽衣インコよって!」

      「あれあれ、羽衣セキセイインコだっけ?
       そーゆー珍しい鳥らしいでーす。
       あはーっ、ハーピーさんは知ってますよネ」

知ってるも何も本人だが……
もちろんそれには気づいていない。

「でねー、普通はペットでしかいない鳥なんだって!
 ねえねえ、どっかの人が逃しちゃったのかなー!?
 ハーピーさんなら仲良くできるだろうけど、
 鳥ってすぐ逃げちゃいそうですもんねーっ」

「でもでも、羽衣インコからしたら、
 自由になれてよかったんでしょーか? どーなのかなー」

空を眺めながら、そんなことを言う。
セララに深い意図はないし、ただ、なんとなく思っただけだ。

「あはーっ、なんか難しくって、つまんないですね!
 あーあ、そーゆーのはやめやめ! あたしもポップコーン食べまーす」

盛り上がらない話題にこだわることはない。
ポップコーンを2粒取って、一つずつ口の中に入れ、それで話を切る。

624ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2021/05/27(木) 02:54:33
>>623

「そうで御座いますね。あの鳥は『羽衣セキセイインコ』です」

食べる手を止め、少女の言葉に同意する。
品種改良によって固定化された種であり、
野生には生息していない。
言わば、人間の手によって作り出された存在とも言える。

「おそらく逃げ出したものが『野生化』したのでしょう。
 『安定』と『自由』を引き替えにする訳ですので、
 『それなりの苦労』はあったかと思います」

出奔してから今に至るまでの過程が脳裏をよぎる。
最初に考えなければならなかったのは、
何よりも『食料の確保』だ。
しかし、大抵の『餌場』は既に手を付けられている。
いわゆる『縄張り』という奴だ。
部外者である自分が無断で立ち入っては、
悪戯に敵を作る事になってしまう。

「ですが、今は元気に暮らしているようで御座いましたので、
 ご心配には及びません」

しかし、ブリタニカには『ハロー・ストレンジャー』があった。
そして、一計を案じた。
『ストリートパフォーマー』として『人間界』に紛れ込み、
『バードショー』というビジネスを立ち上げたのだ。
『キャスト』である『同胞達』と交渉を行い、
『食料の安定供給』を条件に、契約を成立させた。
最初は難色を示されたものの、ビジネスが軌道に乗ると、
次第に賛同する者達の数も増えていき、
今では群れのトップからも一目置かれるまでになっている。

「そういえば、まだ『お名前』を伺っておりませんでしたね」

『ニンゲン』である少女の隣で、『鳥類』であるブリタニカは、
彼女と同じように空を見つめる。

625円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/05/27(木) 22:04:04
>>624

「やったやったー正解だー!
 あたしの正解じゃなくって、ママの正解だけどネ」

「鳥の世界もいろいろ大変なんですねー。
 でも、元気だったらよかったよかった!
 ちょっと心配してたんですよー、元気かなー? って」
  
夜も眠れないような心境ではない。
ただ、たまに思い出すことはあった。
ほんのそれくらいの話だ。こだわることではない。

「あれれれ! そうだったっけ!
 そーいえば、この前は自己紹介してなかったかも!?」
 

        パッ

自分の存在を示すように、体を大きく開く。

「それじゃー改めまして、
 あたし円谷 世良楽(つぶらや せらら)って言いまーす」

            「セララちゃん、って呼んでいーですよ!
              あたしのこと、そー呼ぶ人多いんです!」

自己紹介を済ませると、満面の笑みを浮かべて、
あとはただハーピーの反応を待った。もう、空のことは見ていない。

626ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2021/05/27(木) 22:29:46
>>625

自らの領域である『空』を見上げながら、
ほんの少しだけ『ブリーダー』の事を思い出していた。
そこに深い感慨や特別な感情などはない。
しかし、短い間とはいえ世話を掛けさせたのも事実だ。
何の前触れもなく姿を消した自分を捜しただろうか?
今となっては分からないが……。

「『セララ』――――覚えました」

また一つの『新たな単語』が、
『ブリタニカの辞書』に書き加えられる。

「ワタクシは『ストリートパフォーマー』だと御説明致しましたね」

     スッ

        バサバサバサバサバサァ――――――ッ

羽毛に覆われた片手を上げると、
周囲に控えていた『ハトの群れ』が一斉に舞い上がる。

「丁度この近くで『パフォーマンス』を行う所でした」
 
              クルリッ

   バササササササササササササササ
          ササササササササササササササ             
               サササササササササササササァッ

持ち上げた手を『指揮者』のように振ると、
それに合わせて群れが『空中旋回』を披露する。

「――――御観覧されますか?」

どこか人間的とは違う『謎めいた笑み』を浮かべた。

627円谷 世良楽『リトル・スウィング』:2021/05/27(木) 23:51:44
>>626

「あはーっ、覚えてたらきっといーことありますよ!」

何の根拠もない。
セララからすれば、自分自身が根拠なのかもしれない。

「うんうん、ストリートでパフォーマンスしてるんですよネ。
 駅前とかでジャグリングしてる人みたいなー」
 
               「え!」

舞い上がったハトの群れを目で追う。

「うそーっ、ほんとに!? 見たい見たい!
ポップコーン食べるしかする事なくてヒマだったんです!」

そして――――
旋回する鳥の群れを見て、無邪気な笑みが浮かんだ。

「あはーっすごーい!
 あたし、ラッキー!!
 今日ここで待ち合わせしててよかった」

「ハーピーさーん! それじゃーパフォーマンス、よろしくお願いしまーす」

その後は――――待ち合わせの時間まで、それを見て過ごすだけだ。

628ブリタニカ『ハロー・ストレンジャー』:2021/05/28(金) 02:00:31
>>627

「それでは参りましょう。
 しばし現実の世界から『離陸』し、
 大空に描かれる『翼の芸術』をお楽しみ下さいませ」

     ザッ

「お見逃しの無いよう、
 どうぞ『瞬き』は控え目にお願い致します」

           スッ

鳥が翼を広げるように両腕を開き、恭しくお辞儀をする。
芝居がかった動作は、
『パフォーマー』としての演技の一環だ。
『人間界』を調査する間に身に付けた所作。

              「まずは『こちら』から――――」

                    クルッ

          バサバサバサバサバサバサバサッ

     「続いては『あちら』を――――」

           クルッ

  バサバサバサバサバサバサバサッ

両手の人差し指を立て、悠然とした仕草で指先を回す。
その『指示』を受けたハトの群れが、
二つのグループに分かれて『編隊飛行』を開始する。
『キャスト達』による『翼のショー』が幕を開けた――――。

629『幕間』:2021/05/29(土) 10:30:57

『地域課巡査』の『桐谷研吾』は、
浮かない表情で通りを歩いていた。
その日は非番であり、
身に着けているのは制服ではなく私服だった。
緩やかに歩みを進めながら、彼は、
『一派』に加わった時の事を思い出していた。
(ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453049221/805)

――――――――――――――――――――――――

「今、この街は『スタンド使い』に『支配』されている。
 無数の派閥から構成された巨大な組織。
 『アリーナ』――それが『奴らの名』だ」

桐谷を前にした『度会一生』は、
目深に被ったフードの下から、確固たる口調で語り始めた。

「『アリーナ』は規模が大きな分だけ、
 その活動内容も幅広い。
 最も大きなウェイトを占めているのは、
 『スタンド使い同士の試合』を『見世物』にした興行だ。
 奴らは、それを活動の資金源に利用している」

「『副業』として『スタンドを使う犯罪者』と敵対する事もある。
 拘束・尋問……状況によっては『命』も奪う」

「『番人気取り』で、だ」

そこで度会は、一度言葉を切った。

「『スタンド使い』が争うのは勝手にすれば良い。
 『化物同士』潰し合って共倒れになるなら結構な話だ。
 だが…………」

「多くの場合、『被害者』になるのは『力を持たない者達』だ」

               グッ

肘掛け椅子に座る度会が、両手で『杖』を握り締める。
その手には、多くの『傷』が刻まれていた。
新しいものではなく、それらは全て過去の古傷だ。

「『スタンド犯罪者』に限った話じゃあ無い。
 奴ら――『アリーナ』も『同類』だ。
 表向きは大義名分を掲げているが、
 連中にとって、そんな物に大した価値など有りはしない」

「『一般人』の一人や二人が巻き添えになった所で、
 『アリーナ』にとっては痛くも痒くも無い。
 それを揉み消して『無かった事にする』のも簡単だ」

「だからこそ――――我々は『スタンド使い』を『監視』する。
 『素性』と『能力』を調査し、奴らの動向を窺い、
 常に目を光らせておく。
 『力を持たない者達』を犠牲にさせない為に」

          バサッ

言葉と同時に、度会が片手でフードを取り去る。
その下に隠されていた素顔には、
幾つもの『傷跡』が残されていた。
それらを気にする様子も無く、
度会の両目が真っ直ぐに桐谷を見据えていた。

「――――――それが我々の『目的』だ」

――――――――――――――――――――――――

「ふぅ…………」

(そして、僕は『仲間』に加わった。
 彼の話に『嘘』は無いと思えたし、
 言葉からは『誠意』を感じられた)

                   スタ スタ スタ…………

(だけど…………。
 これは本当に『正しい事』なんだろうか…………)

         ――――スッ

その時、桐谷の背後から足音が近付いてきた。
気付いた桐谷が振り返ると、
白いワンピースを着た女が立っている。
異様に前髪が長く、『ジャパニーズホラー』を思わせる姿だ。

「――――…………君か」

    コク…………

桐谷に向き合いながら、『御影憂』は静かに頷いた。

「何か………………悩んでそうだったから………………」

「……まぁね」

やがて二人は並んで歩き出し、通りを進んで行く――――。

630美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/05/30(日) 16:26:02

  バァァァァァァァ――――――ッ

一台のスクーターが軽快な走りで駆け抜ける。
カナリアイエローの『ヴェスパ』――
鮮やかな黄色のボディが光を浴びて照り映える。
乗っているのは、メンズライクなアメカジファッションの女だ。

       バァァァァァァァ――――――ッ

晴れた空の下、風を切って走るのはとても気持ちがいい。
心なしか、『愛車』も喜んでいるように感じられる。
途中までは颯爽と走っていたが…………。

              プスンッ

                   「――――あら?」

急に勢いがなくなったかと思うと、
徐々にスピードが落ちていく。
どうやら、また『エンスト』してしまったようだ。
車体を路肩に停めて、シートから降りる。

631眠目倫『ノワール・デジール』:2021/06/02(水) 22:50:54
 バイクが車道の端を走っている。
 前を走っていたスクーターが減速したのを見て、なにかあったのかと後ろに止まった。
 美作の方へと、緑のヘルメットの女性――眠目が声をかける。

>>630

「大丈夫ですかぁ? 発煙筒焚きます?」

 なにか問題があったのか、気にしているようだ。

632美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/06/02(水) 23:27:10
>>631

「ふぅ――――『困ったちゃん』ね」

         ポン

スクーターを見下ろし、車体に軽く片手を置く。
美作くるみの愛車は、よく故障する。
ゆえに『対応』にも慣れていた。

            ガチャ

シートのロックを外し、その下から『車載工具』を取り出す。

「あぁ、その――『ちょっとしたトラブル』で……」

声のする方を振り向き、軽く頭を下げる。

「でも、大丈夫です。サッと直しちゃいますからね」

そう言うと、工具の中からレンチとドライバーを手にし、
スクーターの横にしゃがみ込んだ。

「ダメだったらレッカー呼ぶ事にはなりますけど、
 『その時はその時』って事で――――」

        カチャリッ

「あなたも乗ってらっしゃるんですね?」

言葉を返しつつ、同時に手も動かす。
自分で言うだけあって手馴れた様子だった。
発煙筒は必要なさそうだ。

633眠目倫『ノワール・デジール』:2021/06/02(水) 23:43:39
>>632

 手慣れている様子を見て、眠目はほっとしたようだった。
 シート下にある発煙筒から意識を外し、ひとまずバイクから降りた。

「直せるようならよかったです。
 もしぃ、ガソリン切れとかだったりしたらぁ
 ガソリンスタンドまで走ってこようかと思いましたが」

「はい、とはいっても最近買ったばかりなのですがぁ。
 初心者バイカーですねぇ」
「修理、慣れてらっしゃいますねぇ。長いんですか?」

 眠目のバイクは街乗り程度でしか使っていないらしく、あまり傷や汚れも見られない。丁寧に乗っているようだ。

634美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/06/03(木) 00:37:20
>>633

「そうですねぇ。それなりに長いですよ」

           カチャッ

「だから時々『ご機嫌』を損ねる事があって……」

       カチャッ

「その度に修理に出すのも大変なので、
 応急処置ぐらいは出来るようにしようと思いまして――」

              カチャッ

「あはは……そんな感じですかねぇ」

修理は淀みなく進んでいく。
手を動かしている最中も、喋りは止まらない。
その姿は会話しながらヘアカットを行う美容師を思わせる。

「女性で乗ってらっしゃる方って多くはないので、
 何だか『お仲間』に出会えたような気分です。
 私のは『スクーター』ですけど」

         ――――チラ

停車中のバイクを横目で見やる。
傷も汚れも目立たず、新車に近いピカピカのボディ。
『隣の芝生は青い』と言うが、ふと羨ましくなる事もある。
だが、買い換えようとは思わない。
やはり、長く乗った愛車に対する愛着が大きいからだ。

635眠目倫『ノワール・デジール』:2021/06/03(木) 05:36:05
>>634

「すごく大切に乗られてるんですねぇ…。
 やっぱり『相棒』には元気でいてもらいたいですもんねぇ」

 眠目は修理の様子を見ながら、後続の車等に警戒をする。
 しゃがみこんだりして作業していると、トラックなどの大型車から見えにくくなる危険がある。
 眠目は、自分がここに立っているだけでも多少は彼女たちを守ることに繋がるだろう、と考えているようだった。

「そうですねぇ。『お仲間』で嬉しいです」
「転んだりしたら危ないから。なんて言う人もいるんですけどぉ、
 乗ってるときの風とかぁ、本当に気持ちいいのに。もったいないですよね」

「私も『スクーター』買うか悩んだんです。いいですよねぇ…。
 足が置けるってそれだけでなんだか普段座ってる姿勢っぽくて、乗りやすそうで…」
「でもぉ、"身長が高いからバイクの方が似合う"って店員さんに勧められちゃって、
 この子にしちゃいましたぁ」

 眠目の身長は女性にしては長身だ。170は超えているだろうか。
 自転車のようにサドルを上下するわけにはいかないバイクでは身長は才能だ。女性にバイク乗りが少ないのはそういった面もあるのだろう。

636美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/06/03(木) 07:11:44
>>635

「そう!何ていうか、風と一つになったような感覚で。
 二輪車ならではの体験ですよねぇ」

          カチャッ

「事故の危険っていうのは勿論ありますけど、
 それを防ぐ努力をする事は出来ますし――――」

                カチャ

そこまで言った時、
眠目が傍に立ってくれている事に気付いた。
事故を防ぐ努力――今まさに、彼女はそれを行っている。
種類は違えど、同じ『二輪車乗り』として、
感謝の意を込めて目礼する。

           カチャッ

「荷物を載せたりするんなら車の方が向いてますけど、
 その代わり小回りが利きますから、
 街で乗るにも丁度いいですよね」

                カチャ

美作がスクーターに乗り始めたのも、
それがきっかけだった。
かつては『アイドル』だったが、
引退して『パーソナリティー』となってからは、
トークの『引き出し』を増やすために、
街の様々な場所に赴くようになった。
そのために、
軽快なフットワークで動くための『足』を必要としており、
それには『二輪車』が最適だったのだ。

「あぁ!それは分かりますよ。
 スラッとした女性が二輪に乗ってる姿って、
 とってもカッコいいですもんねぇ」

確かに彼女は背が高い。
乗っている時の姿は、さぞかし映えるだろう。
バイクの横に立っている姿でさえ絵になるのだから。

「――――よし…………と!」

工具を元の場所に戻し、
シートに腰を下ろしてキックレバーを力強く蹴る。

                ――――ドルンッ

二度目のキックでエンジンが始動し、
排気音と共に息を吹き返した。

「せっかくですし、もしお時間あったら一緒に走りません?
 ちょっとした『ツーリング』ってトコですね」

       フフッ

「『穴場』にご案内しますよ」

637眠目倫『ノワール・デジール』:2021/06/03(木) 08:06:42
>>636

「特に今の時期って、晴れた日は気持ちいいですよねぇ。
 桜が散ってる時期は走ると滑って怖いんですけどぉ、今は本当に爽やかで」

 桜にイチョウ、濡れたマンホール。横断歩道の白いところでさえ、バイクは滑る。
 事故を防ぐ為の意識は必要だが、それ以上に気持ちいいものだ。

「やっぱり、街乗りなら二輪ですよねぇ。
 車みたいにスカートでーとかは難しいですけどぉ、気楽でいいものです」

 そういう眠目の服装はメッシュジャケットにライディングパンツ、グローブと夏のバイク乗りそのものだった。

「あ、直ったんですねぇ。よかった。
 レッカー車呼ばなくてすみましたねぇ」

「『ツーリング』ですかぁ!
 いいですねぇ、もしよければご一緒させてください」

 眠目は声を弾ませ、いそいそとバイクをキックした。

638美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2021/06/03(木) 18:58:15
>>637

「決まりですね――――じゃあ、行きましょうか」

眠目に笑い掛け、愛車の『ヴェスパ』を発進させる。
向かう先は穴場のツーリングスポットだ。
そこは『職場』の近くでもあった。

            バァァァァァ――――…………ッ

ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1619194604/
(※次レスはこちらで行います)

639名無しは星を見ていたい:2021/06/13(日) 22:33:37
大通りの一角に、真新しい看板が一つ。
近すぎず遠すぎない絶妙な立地、綺麗にリフォームされた外観、広い間取り。
自分の大きな体躯に合わせた余裕のある水場。シンクには水垢の一つも浮いていない。

 「さ、『ブルース』。ここが今日からのぼくたちの城だ。仲良くやっていこうじゃあないか。」

 『コケッコ』

 「そうだね。そろそろぼくも君も『羽ばたく時』だ。
 ここから始めよう。ぼくらの『フルコース』を。」

→ 【衣笠料理教室】、開業。

640更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/06/15(火) 21:10:05
 
「多分、この辺……で、間違いないハズなンだよな」
 
薄いオレンジ色のサングラスを掛けた痩身の男が一人、昼食時の大通りで何事かを呟き歩いている。
その両手には一台ずつ『スマートフォン』が握られており、それぞれを同時に操作しながら、
左右のディスプレイに交互に視線を走らせているようだ。
 
周囲に気を払う様子は無い。
『歩きスマホ』の中でも、とびきりに危険な状況。
 
次の瞬間に向かいから来た誰かと衝突してしまうかもしれないし、
その行為自体を咎める親切な人物が、現れないとも限らない。
 
「確かにここが『最後』で……そっからだ。
 多分、間違い無いンだ」

641更山 好陽『イルーシヴ・エデン』:2021/06/18(金) 20:27:53
>>640
 
「『IT先進国』じゃあなかったのか……?
 いくらなんでも情報が、少なすぎるだろ。
 『レビューサイト』の類にはそもそも載っちゃいないしよ」
 
苛立ち混じりに吐き捨てるように呟いて、通りを抜けて何処かへと向かう。
 
「『SNS』には多少の、本当に多少の、『それらしいそれ』があるっちゃあるが、
 そもそもこのアカウントは、アレだろ……」
 
両手のスマートフォンを同時にスリープさせ、ボトムスの左右のポケットに乱暴に捩じ込んだ。
 
「『何があったのか』は知らないけどよ、 『何かがあった』のは間違いないんだ。
 『借り』は返してもらう」
 
誰に向けるともなく決然と放たれたその言葉は、ある意味ではこの町そのものに対する、
ささやかな宣戦布告ですらあったのかも知れない。
 
「俺のこの、『イルーシヴ・エデン』の能力で」
 
 
 /|_________ _ _
〈  To BE CONTINUED…//// |
 \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~ ~  ̄

642稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/06/19(土) 14:54:40
パラ パラ…


大通りに接した位置にある、猫の額程の広さもない小さな児童公園。
眼鏡をかけた女が、公園内の古びたベンチに腰掛けハードカバーの本を読んでいる。


      「ふむ」   パタムッ


「やはり、この【綴り手】の【儚きも美しき感情】の【魔導書】は【魔力】が溢れるなぁ…

 描写された【叙事詩】は【真夏に流す汗】の如くだが、
 【綴り手】の【術式】の基礎がしっかりとしており、すっと【月の秘箱】に入り【我】の感情を揺さ振る。

 【遠くない未来】に、【真名】は失明したがあの面の良い【憑かれ者】が【糸を手繰られ】、現世の【布】に【召喚】されるらしいからな。
 いやぁ…非常に【二十四の次の世界線】だな…」

643大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/06/19(土) 20:38:01
>>642
黄色リボン付シルクハットを頭に乗せた、緑髪で、右目が青で、左目が赤で、清月学園の黒制服(改造済)を着た男装少年(16歳 女子)が通りかかった。
買い物の帰りなのか、手には『洋菓子屋 甘城』の箱を持っている。

「いやはや、先日、甘城さんにお世話になってしまったから、
ご実家の洋菓子屋さんを訪ねてスイーツショッピングしてしまったわけだけども、
これはこれは大正解だったかもしれない」(↓ハスキーボイス↓)

「ややや、箱の中からボクの鼻腔まで甘い香りが漂って来るではないか」(↓ハスキーボイス↓)

 〜〜〜甘い香り
  〜〜〜甘い香り
   〜〜〜甘い香り  ←おいしそうな匂い

「これは寮の誰かか、その辺りの誰かでもいい、他の誰かと美味しさを共有せねば、人類文化の損失というものだ。
人間、最大多数の最大幸福を追求したいものだ、ホントかな?」(↓ハスキーボイス↓)

「おっと、ちょっとそこの方、前をシ・トゥ・レィー」(↓ハスキーボイス↓)

甘い香りと共に前を通りかかる。
ついでなので、読んでいる本の背表紙を覗いていこう。
なんだろなんだろ?

644稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/06/19(土) 22:11:07
>>643


  「むむッ」

目の前を横切りながら奇妙な言動と出立ちの少年に思わず眉を顰めたが、
鼻腔を刺激する甘い香りに強張った顔を緩めた。


「なぁに、構やしない。
 此処は【大衆の機関】(公共の施設)だ…。
 気にせず【進撃の旋風】(通り過ぎれば)すれば良い」


女が読んでいる本は、最近書店で平積みされている著名な作家の恋愛小説だ。
 (どの様な捉え方をするかは『大神』次第だが)

645大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/06/20(日) 13:01:05
>>644
>女が読んでいる本は、最近書店で平積みされている著名な作家の恋愛小説だ。
> (どの様な捉え方をするかは『大神』次第だが)

   了解いたした。

「む、あの本は、アマゾンで大人気の

 『25の瞳・勇者パーティを追放された恥知らずの俺がケーキの切れないワクワクワクチン脳の織田信長の膵臓を食べたい猟奇的な方法パーフェクトガイド〜僕がダンサーになった理由は動かない〜』 (著者:東尾 革命)

ではないか。」(↓ハスキーボイス↓)

   こうですか。

「もしもし、そこのお嬢さん、『その本』って面白いですか?
 題名は見たことがあるんですけど、中身までは読んだことがなくて……」(↓ハスキーボイス↓)

   投げるぞ。
   いや、もしかしたら、背表紙に書いてある題名とは、別の本が挟まれているかもしれないな。(安全策)

※質問
ところで、メタ的な質問なのですが、【】内は『音』としては聞こえない、という理解でいいでしょうか?
例えば、

>此処は【大衆の機関】(公共の施設)だ…。

の場合、実際の『音』として出ている・聞こえるのは、

 正解:○ ここは こうきょうの しせつ だ…

 不正解:× ここは たいしゅうの きかん だ…

という理解でいいでしょうか?

646稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/06/20(日) 13:25:47
>>645
(※不正解が正解です。
 【】内が実際に発声している台詞で()内は聴こえていません)

「ムムッ」

「【我】が【魔力掌握】(読んで)しているのは、
 その様な【最終幻想】な【題名】の【魔導書】(本)ではないが…」


女が手に持っているハードカバーの本には『恋愛』と簡素な題名が書かれている。
その『25の瞳(略)』というタイトルは--『見間違い』だろう。



「まぁ、非常に【魔力が満ちた】(面白かった)な。
 やはりこの【綴り手】(作者)の【術式】(文章力)はしっかりとしており、
 悲しきも儚き【クリスタルに導かれし世界の顛末を眺めている気分】(読後感)を得たな。

 最も、それは【索超】(急に現れた)な【汝】によって【皿ごと落としたミートパイ】(台無し)にされたが…」

647大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/06/20(日) 14:07:20
>>646
※台詞の件、承知しました!

「ああ、失礼。間違えてしまったか。
 アマゾンの表紙と実物が違うのはよくあることだから、しょうがないかもしれない、すまないな。」 (↓ハスキーボイス↓)

「しかし、さてはて……ボクが【皿ごと落としたミートパイ】だって?」 (↓ハスキーボイス↓)

「ふむ、言い得て妙だね。
 初対面で、ボクが『小麦の薄皮に包まれ炎で焼かれた薄っぺらい挽肉にも似た存在』であることを見抜くなんて、流石だ。」 (↓ハスキーボイス↓)

流石だ。

「まさに彗眼と言える。」 (↓ハスキーボイス↓)

慧眼だ。

「この状況をあえて例えるなら、さきほど『洋菓子屋 甘城』で買ってきた、
 『山形県辻野市の 梅澤さんちの 台風に耐えたド根性りんごで作った 自然淘汰と適者生存と幸運と強さのひとかけら アップルパイ 580円 そして幸せが訪れる』
 のごとし。」 (↓ハスキーボイス↓)

アップルパイだ。

648稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/06/20(日) 16:00:52
>>647

「【汝】は【カンパネラ】や【新世紀】(よくわからない)だな…。
 つまり、その手に持っている【禁断の果実だったもの】(アップルパイ)を、
 【我】に施すという腹なのか…?」


この手の人種は得意じゃあないのだろう。
ベンチから立ってこそいないが目の前の女は明らかに『大神』に対してヒいている。

649大神 或真『ネヴァー・グローイング・アップ』:2021/06/20(日) 18:18:02
>>648
「ん?」 (↓ハスキーボイス↓)
若干ヒいてる稲崎を見て、首をかしげる。

「ああ、もしかしてアレかね。」 (↓ハスキーボイス↓)

「ボクのコレはどちらかと言うと『演技性』なのだが、もしかしてキミのソレは『素』なのか?」 (↓ハスキーボイス↓)

「それは失礼した……
 てっきり、『同輩』かと……」 (↓ハスキーボイス↓)

申し訳無さそうな顔をした。

650稲崎充希『ショッカー・イン・グルームタウン』:2021/06/20(日) 21:47:47
>>649

「……」

口をへの字に曲げ、露骨に「何この人」と言わんばかりの表情を見せた。


「この【語り口】をしてから【冷霊】や【炎霊】の類いには【魔力耐性】を備えているつもりではいたが、
 【星王の盾】を構えた所でやはり【限界】はあると言う事か…
 【過負荷を背負いしモノ】の【相手】をするにはこの【世界】の四季は些か【巡り過ぎた】し、
 せっかくの【ライム酒の飲み口】の【余韻】を【シヴァ】に侵略されたくないので、
 【汝】には悪いが【我】はこれにて【帰還】するさ」

ベンチから立ち上がると足早に去っていった。

651ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/06/25(金) 06:23:36

    トッ トッ トッ

5歳くらいの女の子がいた。
『有名私立幼稚園』の制服を身に着け、
大きな『テディベア』を持って歩いている。
彼女の名は『ダイアナ』。
思い込みの激しさと勘違いしやすい性格で、
出会う者達にケンカを売っては、
ことごとく『ワンパン』でノックアウトされ続けてきた。
エメラルドグリーンの瞳は足元を睨み、
三つ編みにしたプラチナブロンドが揺れる。

        ムスッ

見るからに不機嫌そうな表情だが、
事実ダイアナは苛立っていた。
通っている幼稚園で、
『イス取りゲーム』をやって負けたからだ。
それ自体もムカついたのだが、
何よりも勝った相手の態度が気に食わなかった。

「ふんぞりかえってエラソーに!ナニ様のつもり?」

            フンッ

「しょせんコドモのお遊びじゃない!ガキよガキ!」

本当は自分も同じようなもの(勝った時は威張る)なのだが、
本人は気付かないものだ。
そして、愚痴をこぼしながら歩いているため、
前方にも気付いていない。
ゆえに、『誰か』とぶつかってしまうのは、
ある意味で自然の成り行きだった。

    「――――わぷっ!?」

地面に尻餅をつきながら、ぶつかった相手(>>652)を睨む。

652ダイアナ『オンリー・ガール』:2021/06/27(日) 07:10:44
>>651

「このォ〜〜〜〜〜」

「わざとぶつかったわねそうねそうに決まってる」

        キッ

「ボッコボコにしてや…………」

睨んだ相手は『街路樹』だった。
植物に八つ当たりするのはカワイソーなので、そのまま帰った。
代わりにテディベアに八つ当たりしたらしい。


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