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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その2

252『そらの異邦』:2016/09/19(月) 23:57:58
>>251

貴方は依頼前に貰った金銭を置いて、霊薬を貰う事を交渉とした。
 廃ビルに居る悪魔やら、真偽定まらぬ液体の価値など。まだ不信あるものの
その行為は、一定の信を置くものと。目の前の老人は判断したようだった。


 スゥー  ハァ…

「良かろう。 儂は お主が『信じた』と捉え 託す」

 『こうらさん』は、一度強く息を吸うと。力強い瞳と共にスクッと立つ。

そして貴方へと瓶を渡す……ではなく、近くの雑貨から小さな鍵らしきものを出した。

「この瓶が霊薬かと思ったか? いや、違う。見て解る通りの秘宝を堂々と誰でも
捕れるように置いておくほど儂は豪胆な性ではない。この瓶に入ってるのは……ただの炭酸水じゃ」

 こうらさんは、言い終わると同時に小さな気泡の弾ける音と共に瓶の液体を
近くにある比較的新しき鍋へと注ぐ。次に携えた鍵を持ちながら灯油ストーブのほうまで行くと
少し唸りつつストーブをずらし、そして屈んだ。

 「大切な物は、幾らかに分けて保管するべき。儂が生きた中で覚えた教訓の一つだ」

ずれた床には施錠された小さな仕切りがある。地下式収納の小さな保管庫であると
貴方が気づく頃には、節くれのある彼の手には薬品でも入れてるような小瓶が握られてた。
 ジャラジャラと何か固いものがこすれる音が響く。

「乾燥をさせたブルーベリー、幾つかの柑橘類、そして先ほど説明した薬草及び……」

小瓶を置いて、更に保管庫の奥に腕を伸ばす様子が見れる。そして取り出したのは
  ――あれは、黒いソラマメか?

「これは  『脾臓』じゃ。
誰のとも、何の生き物とも 儂は言わん。だが、これは脾臓であり、そしてあったものだ。
 誰かを活かす為には、何かの血を失わなければならん。それが、摂理なんじゃ
例えあんたには違っていも、この町にとっては……な」

 それは一種の黒魔術のような工程であった。

ストーブの上に置かれた炭酸水が茹でられる鍋に、幾つかの細かい手順と共に
真剣な様で老人はその小瓶をティースプーンのような物や普通のスプーンで幾らか
規則的に鍋へ注ぎ攪拌させる。

 彼はその作業を一通り終わらせると、懐から銀に光るナイフを出し
片手に収まる程度の、その黒いソラマメのようなものを鋭い眼光で睨みながら
酷く短いながらも長く感じる間と共に構え、そしてスッとナイフをその腎臓に滑らせた。

     ギュ  ォォ゛ォ゛……ォ

 裂かれたその黒い何かの塊から零れる液体も、黒ずんでいた。だが、奇妙な事に肉の腐った
ようなものでも鉄臭い匂いもしなかった。鍋の中へと黒は、ゆっくりと零れ落ちていく。
 透明な液体に黒いものが注がれれば、それは黒くなるに他ならない。鍋の中はすっかりと
コーラと遜色ない彩色となっていた。だが、貴方だけは知っている その黒さは
人工的な甘味料としてでなく、狂気が見え合いする、この倉庫内で行われた顛末である黒い血である事を。

 鍋の中から昇る蒸気には、その条理の外れた過程を感じさせぬ、数十分ほど前に貴方が試飲したであろう
コーラと似た香りが鼻の中に入っていた。
 こうらさんは、全てを終わらすと疲労を隠せぬ吐息と共に、鍋の中の黒い液体全てを
手近な汚れが見えないガラスの酒瓶へと注いだ。空であった酒瓶はすっかりと黒く染まる……。

 「持って行きなされ」

押し付けるように蛇喰へと、こうらさんは黒い酒瓶を渡す。

 「そして、気を付けなされ。誰の言葉を信じ、誰の行動を疑うべきか?
儂は、耄碌してしまった……肝心な時に、大切な者の事を信じれなかった結果が……『今』じゃ。
 ……おぉう 許してくれ・・・        ・・・」

 最後に、誰かの名を呟いたようであったが。霊薬を作るのに精神を費やしたのか
こうらさんは丸椅子に崩れ落ちるように座り込み、カクンと首を下げて瞼を閉じた。

 寝息が、少しして聞こえてくる。放っておいても命に別状は無いだろう。
依頼を完了して深夜になる前に戻るのなら、廃ビルには今からでも行くべきだろう。

 置いた三万は、すぐ近くにある……。


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