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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その2

173小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/07/26(火) 12:45:29
>>172

ある日の夕暮れ――商店街で数軒の店を回り、夕食の買い物を済ませて家路に就いた。
ここ数日は落ち着いた精神状態を保っているので、『発作』を抑えるための『鎮静剤』に頼る必要もない。
これも、あの一件のお陰だ。
しかし、この穏やかな状態が永遠に続いてくれるとは思えない。
時が経つにつれて、いずれは『発作』も再発することになるだろう。
それでも、あの場所で得た『想い』がある限り、決して自分に負けることはないと信じている。

「――?」

投函された雑誌を見つけて手に取り、付箋の貼られたページを開いて、その部分に目を通す。
予想した通り、そこには有菜の書いた記事が掲載されていた。
真偽はともかく――読む人に活力を与える豪快で勢いのある内容であることは間違いない。

――そう……これでいいのよね……。

おそらくは、これが最善の結末なのだと思いたい。
少なくとも、誰も傷ついてはいないのだから。
きっと、あの『工場』の秘密は、これからも守られていくのだろう……。

クスッ

思わず笑いが漏れた。
メモ用紙を通してでさえ、彼女の明るい顔が容易に想像できる。
こうして新しい友人と知り合えたことは、自分にとっても有り難いことだ。

――……?誰かが訪ねてくるという話は聞いていなかったと思うけど……。

家の中に気配を感じて、首を傾げる。
鍵は掛かっていたし、合い鍵を持っている人間もいない。
奇妙なことだと思った。
けれど、不思議と恐怖は感じなかった。
雑誌と買い物袋を抱えて部屋に入っていく。

そこには誰がいるのだろうか――?


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