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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その2

139小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/07/06(水) 23:23:46
>>138

  「『キリマンジャロの雪解け水』味――ここが『原産地』だったようね……」

ラポポの説明を聞いて、有菜と交わしたやりとりを思い出し、そう結論付けた。
あの味の元になったのが、この『ジオラマ版キリマンジャロ』で採取された『雪解け水』であったことは、
想像に難くない。
やはり他の場所と同じように、大きさこそミニサイズだが、その中身は限りなく本物に近いようだ。
もしかすると、本物と比較してみれば、両者の違いが分かるのかもしれない。
しかし、それを判定するのは困難を極めるだろう。
本物の『キリマンジャロの雪解け水』を口にした経験はないが、ここで採取されている『材料』が、
それこそ超越的な味覚のスタンド能力でも持っていない限り、
見分けがつかないレベルの精巧さを持っていることは確かだ。
少なくとも、『虫料理』味に関しては、本物と同等だったと自信を持って断言することができる。
とはいえ――ここにいても、これ以上の手がかりは得られそうにない。
『山脈』を出て、『グルメ』のドアを開ける……。

  「……!?」

ドアを開けた途端に流れ込んできた『匂いの奔流』に驚いて、思わず足を止める。
たとえるなら、香りで構成されたパレードを見ているようだった。
そして、それに酔いしれる間もなく、その匂いの源が視界に飛び込んできた。
ズラリと並べられた無数のキッチンで、数え切れない程のコック達が忙しく働いている様子は、
まるで巨大なレストランの厨房のようだ。
いくら小人に合わせたサイズとはいえ、巨人である自分から見ても、そこが大規模であることは理解できた。
もし、これが人間サイズだったとしたら、調理場としては並外れた大きさになることは間違いない。
自分が食べた『虫料理』味のように、
『金平糖』には料理の味も――もちろん大部分を占めるのは一般的な料理なのだろうが――存在する。
おそらくは、ここで作られている料理も『材料』の一部であり、
各種の料理を元にした味の『原産地』が、この部屋だと考えられる。
ふと――うなじの辺りにくすぐったい感触を覚えて、軽く身をよじるが、
居住まいを正して部屋の様子を観察することに集中する。
重要人物であろうコルボという名のコック長――彼の動きを見ていると、
出来上がった料理の良し悪しを決める審査員のような役割を担っていることが分かる。
そんなことを考えていると、小人らしからぬボリュームの中低音が響き渡り、
部屋の視線が自分に集中していることに気付いた。
コルボに向き直り、向けられた問いに答えるべく、おもむろに口を開く。

  「――お仕事の邪魔をしてしまい、大変申し訳ありません……。
   私は、あなた方の作る金平糖を愛する者です。あの金平糖の味は、他では決して味わえません。
   それが作られる過程を是非とも知りたいと思い、失礼ながらここまでやって来ました。
   どうか、この部屋を少し拝見させていただくというお許しを、いただけないでしょうか……?」

コルボの対応は、明らかに、部外者である自分を遠回しに非難する言葉だった。
しかし、そのこと自体には、あまり驚きは感じなかった。
むしろ、こういった言葉は、もっと早い段階で聞くことになると思っていたからだ。
なにはともあれ、今の状況を客観的に見ると、彼の言葉は正しい。
だからこそ、まずは自分の非を認め、その上で自分の意志を相手に示したい。
ただ、自信家らしいコルボに合わせるため、ほんの少し『脚色』はしているが……。
しかし、決して『嘘』ではない。
あの金平糖が他では食べられないことは確かだし、自分としてもあの金平糖は好きな方であり、
その生成法に興味があるのも事実なのだ。

もし、この申し出が却下されてしまったら――『その時はその時(ケースバイケース)』だ。


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